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事件番号平成17(行コ)187
事件名事業認定取消・各収用裁決取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成14年(行ウ)第296号(甲事件)・平成16年(行ウ)第291号(乙事件)・平成16年(行ウ)第341号(丙事件))
裁判所東京高等裁判所
裁判年月日平成20年06月19日
判示事項1 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定の取消しを求める訴えにつき,前記起業地内の不動産又は立竹木等について財産上の権利を有しない者の原告適格が,否定された事例
2 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定の取消しを求める訴えにつき,いわゆる環境保護団体の原告適格が否定された事例
3 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定が,土地収用法20条3号の要件に適合しているとされた事例
4 「騒音に係る環境基準について」(昭和46年5月25日閣議決定の旧環境基準及び平成10年環境庁告示第64号の新環境基準)における「道路に面する地域」の意義
5 平成13年法律第103号による改正時の土地収用法の改正附則2条と憲法29条3項及び31条
6 収用委員会が,土地収用法48条4項ただし書に基づき,土地の境界が不明であるとしてしたいわゆる不明裁決が,適法とされた事例
裁判要旨1 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定の取消しを求める訴えにおける,前記起業地内の不動産又は立竹木等について財産上の権利を有しない者の原告適格につき,土地収用法1条の規定からは,同法は,公共の利益と個々人の具体的な私有財産についての権利の調整を図ることを目的とするものであって,起業地内に具体的私有財産を有しない周辺居住者等の権利,利益を保護する趣旨,目的のものではないこと,前記事業認定の根拠規定である同法20条各号のうち,同条1号,2号及び4号は,土地収用の対象事業を定めたり,事業遂行能力,公益上の必要等について定めるものであって,公益的見地からの要件であり,同条3号の規定も,公益的観点から一般的に種々の社会的価値をも保護しようとしているものであること,前記事業認定の申請に適用のある同法(平成13年法律第103号による改正前)23条1項,25条1項の規定は,広く地域住民や何らかの利害関係のある者等の意見を収集して,できる限り公正妥当な事業の認定を行おうという公益目的の規定であること,環境影響評価法あるいは東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号)は,良好な環境を保護することを目的としており,前記土地収用法の目的とは大きく異にし,行政事件訴訟法9条2項にいう「当該法令と目的を共通する関係法令」には該当しないことからすれば,これらの規定が周辺居住者等の具体的利益を保護する趣旨を含む規定と解することはできず,また,道路供用によって生ずるおそれがある騒音,振動,大気汚染等による健康被害も,極めて大規模かつ深刻であって直接的であるとはいえず,法令の具体的規定を全く離れて,生命,身体の安全にかかわるような利益である限りは,法令により常に個別具体的な利益として保護されているとまで解することはできず,法律上保護された利益に当たるとはいえないとして,前記起業地内の不動産又は立竹木等について財産上の権利を有しない者の原告適格を否定した事例
2 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定の取消しを求める訴えつき,いわゆる環境保護団体固有の原告適格については,前記起業地内の不動産又は立竹木等について財産上の権利を有しない者であるとして,任意的訴訟担当としての原告適格については,前記団体の構成員自身が原告となり得るのであって,構成員が前記団体に訴訟追行権を授与しなければ訴訟の提起,追行が困難であるなどの事情が存するとは認め難く,また,前記訴えの原告適格を基礎付ける権利ないし法律上の利益の管理処分権能を前記団体が構成員から,有効に譲り受け,ないしは授権されていると見るべき根拠もなく,そのほか,構成員が前記団体に訴訟追行権を授権することを許容すべき合理的必要が存在するとは認められないとして,前記団体の原告適格を否定した事例
3 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定につき,前記起業地が前記事業の用に供されることによって得られる公共の利益は,都心部流入交通の分散による都区部の交通混雑の緩和,首都圏全体の交通の円滑化,地域間の交通の拡大と産業活動の活性化,地域の幹線道路の交通混雑の緩和,周辺の市街地生活道路に流入していた通過車両の排除及び交通事故の減少であり,その利益は極めて大きく,一方,失われる利益については,大気汚染,騒音,振動,低周波空気振動につき,騒音,次いで大気汚染を中心に,前記起業地周辺での悪影響が予測されるものの,環境基準内のものであって,いずれも,極めて深刻なもの,あるいは過大視すべきものであるとまではいえないこと,その他の自然環境(景観,水質汚濁,陸上動植物,水生生物及び地形地質)については,東京都環境影響評価条例に基づく環境影響評価等において,適切な環境保全のための措置を講ずることにより,環境への影響は少ないものとされていること,さらに,歴史的文化的環境への影響については,東京都教育委員会教育長からも特段の異議はなく,発掘調査等により保護されるべきものであり,また,国の史跡である八王子城跡の現状変更等についても文化庁長官から一定の条件の下で同意を受けていること,生活基盤への影響は極力少ない制限にとどめられていることなどの諸点を総合すると,前記公共の利益は,失われる利益に優越しているというべきであるとして,前記事業は,同法20条3号にいう「土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」との要件に適合しているとした事例
4 「騒音に係る環境基準について」(昭和46年5月25日閣議決定の旧環境基準)の「道路に面する地域」の環境基準の指針値については,道路の公共性を中心として,当該地域の道路による受益性,道路交通騒音の実態などを総合的に踏まえて,緩和された基準を適用することとしたものであり,基準の策定に際して道路の公共性が極めて重視されていることなどからすれば,「騒音に係る環境基準について」(昭和46年5月25日閣議決定の旧環境基準及び平成10年環境庁告示第64号の新環境基準)における「道路に面する地域」の意義は,道路からの距離にかかわらず,道路騒音の影響を受ける地域をいうものと解するのが相当である。
5 平成13年法律第103号による改正時の土地収用法の改正附則2条により,同法施行前に申請された同法16条所定の事業認定については,前記改正後の同法の適用を受けず,収用裁決手続については,前記改正後の同法が適用されるとしても,収用委員会における収用裁決の審理は,収用等を伴う土地等の権利者に対する補償額等を確定することを目的として行われるものであり,収用委員会には事業の認定手続の不服に関する事項を審査する権限を有しないことからすれば,収用裁決手続において,事業認定手続の不服に関する事項の主張は当然に制限されるべきであるとするのが前記改正前の同法の解釈というべきであり,前記改正後の同法43条3項及び63条3項に規定する収用委員会における事業認定手続の不服に関する事項の主張の制限は,前記解釈を確認的,注意的に規定したものであるから,前記改正附則2条の存否にかかわらす,前記改正前に申請された事業認定に係る関係人等の権利,利益を保護するための手続には,実質的には何らの変更もなく,前記改正附則2条は憲法29条3項及び31条に反しない。
6 収用委員会が,土地収用法48条4項ただし書に基づき,土地の境界が不明であるとしてしたいわゆる不明裁決につき,土地の境界につき争いがある場合には,争いのある境界の間にある土地については,その所有者を確定することができないこととなるのであるから,同項ただし書の「土地所有者又は関係人の氏名又は住所を確知することができない」場合に当たるとした上,収用委員会は,裁決の対象となる土地等について権利関係に争いがあるからといって,直ちに不明裁決をしてよいものではなく,可能であるならば,事実関係を把握した上で,法令及び確立された判例,通説に基づく法律判断を行わなければならないと解すべきところ,事実関係の正確な把握に努めたにもかかわらず,土地の境界を確定するに至らなかったとして,前記不明裁決を適法とした事例
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