事件番号平成21(行ウ)6
事件名一般乗用旅客自動車運送事業経営許可処分等差止請求事件
裁判所札幌地方裁判所
裁判年月日平成25年5月9日
事案の概要本件は,札幌市,江別市,北広島市及び石狩市(ただし,平成17年10月1日に編入された旧α村及び旧β村の区域を除く。)(以下「札幌交通圏」という。)における一般乗用旅客自動車運送事業(以下「タクシー事業」ということがある。また,一般乗用旅客自動車運送事業を営む者を「タクシー事業者」ということがある。)の健全な発展を図ること等を目的とする原告一般社団法人A協会(以下「原告協会」という。)及び札幌交通圏においてタクシー事業を営むその余の原告ら(以下「原告事業者ら」という。)が,北海道運輸局長(以下「本件局長」という。)が行った,道路運送法(昭和26年6月1日法律第183号。以下「運送法」という。なお,法令並びに告示及び公示については,特に断らない限り処分当時のものを指す。)4条に基づく参加人に対する前記第1,1の一般乗用旅客自動車運送事業の許可(以下「本件許可」という。)及び前記第1,2の運送法9条の3に基づく参加人に対する一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の認可(以下「本件認可」といい,本件許可及び本件認可を「本件各処分」という。)はいずれも違法であるとして,本件各処分の取消しを求める事案である。
判示事項1 特定の交通圏における一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)の健全な発展を図ること等を目的とする一般社団法人(協会)及び同交通圏においてタクシー事業を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法4条に基づく新規参入事業者に対するタクシー事業の許可は違法であるとして,同許可処分の取消しを求めて提起した訴えにつき,いずれも原告適格が否定された事例
2 特定の交通圏における一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)の健全な発展を図ること等を目的とする一般社団法人(協会)及び同交通圏においてタクシー事業を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法9条の3に基づく他事業者に対するタクシー事業の運賃及び料金の認可は違法であるとして,同認可処分の取消しを求めて提起した訴えにつき,前記既存事業者らの原告適格が肯定され,前記協会の原告適格が否定された事例
3 一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法9条の3に基づく新規参入事業者に対する一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の認可は違法であるとして提起した同認可処分の取消請求が,棄却された事例
裁判要旨1 特定の交通圏における一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)の健全な発展を図ること等を目的とする一般社団法人(協会)及び同交通圏においてタクシー事業を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法4条に基づく新規参入事業者に対するタクシー事業の許可は違法であるとして,同許可処分の取消しを求めて提起した訴えにつき,同法は,平成12年法律第86号による改正並びに平成18年法律第19号及び同第40号による改正により,公正な競争の確保や道路運送に関する秩序の確立といった点を法の目的から除外し,輸送の安全確保とともに利用者の利益保護及び利便の増進を目的として掲げ,事業者間の競争により利用者の利益が図られるようにしたもので,事業者の利益の保護は目的ではなく,目的実現のために常に必要とされるものでもないことを明らかにしているというべきであるから,タクシー事業の許可については,同法が,個々のタクシー事業者の営業に関する利益を一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず個別的利益として保護していると解することはできず,また,同法8条は,特定の地域においてタクシー事業の供給輸送力が輸送需要量に対し著しく過剰となっていて,当該供給輸送力が更に増加すれば輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがある場合,輸送の安全及び旅客の利便の確保という目的のために,その地域のタクシー事業への新規参入を認めないこととし,その限度では既存のタクシー事業者の利益を保護しているものといえるが,同法の目的や事業許可についての規定の趣旨等からして,これは,特定の地域が緊急調整地域として指定された場合についていえるもので,そのような指定がない状態で一般的に既存のタクシー事業者の利益を保護する趣旨を含んでいると解することはできず,また同法が前記協会のような事業者団体の利益を個別的利益として保護していると解すべき根拠はないとして,前記協会及び前記既存事業者らの原告適格を否定した事例
2 特定の交通圏における一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)の健全な発展を図ること等を目的とする一般社団法人(協会)及び同交通圏においてタクシー事業を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法9条の3に基づく他事業者に対するタクシー事業の運賃及び料金の認可は違法であるとして,同認可処分の取消しを求めて提起した訴えにつき,同法9条の3第2項3号の趣旨並びに同法89条1項2号及び同法施行規則56条2号が運賃等の認可の申請者と同一交通圏のタクシー事業者を利害関係人として規定していることからすると,同法は,運賃等の認可については,不当な競争を引き起こすこととなる低額の運賃等を認めず,競争関係にある事業者のこのような運賃等が認可されないという限度では,申請者と競争関係にあるタクシー事業者の具体的な利益を保護しているものと認められ,同法は,このようなタクシー事業者の利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々の事業者の個別的利益としてもこれを保護すべきものとしているというべきであり,また,運賃等の認可については,輸送の安全確保等の一般的公益を守るためにも,処分の適法性を的確に争うことができる者として,競争関係にあるタクシー事業者に取消訴訟の原告適格を認めることが相当であるとする一方,前記協会は,不公正な競争となる低額の運賃等が認可されることによって,道路運送法9条の3第2項3号の規定によって保護されるべき利益が害されるものではなく,運賃等の認可について,同法の規定等が,前記協会のような事業者団体の利益を個別的利益としてこれを保護すべきものとする趣旨を含んでいるとは解されないとして,前記既存事業者らの原告適格を肯定し,前記協会の原告適格を否定した事例
3 一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法9条の3に基づく新規参入事業者に対する一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の認可は違法であるとして提起した同認可処分の取消請求につき,運輸局長は,自ら行った査定に基づき,前記新規参入事業者の申請運賃等によっても採算割れは起きないものと認めて前記認可をするとともに,混乱が生じないよう万全の措置を講じること等を指導したこと,前記査定は,運輸局長が定めて公示した認可基準に従い適法に行われたこと,前記認可に係る申請は同法9条の3第2項所定の基準に適合するものであったことが認められるから,前記認可は適法に行われたとして,前記請求を棄却した事例
事件番号平成21(行ウ)6
事件名一般乗用旅客自動車運送事業経営許可処分等差止請求事件
裁判所札幌地方裁判所
裁判年月日平成25年5月9日
事案の概要
本件は,札幌市,江別市,北広島市及び石狩市(ただし,平成17年10月1日に編入された旧α村及び旧β村の区域を除く。)(以下「札幌交通圏」という。)における一般乗用旅客自動車運送事業(以下「タクシー事業」ということがある。また,一般乗用旅客自動車運送事業を営む者を「タクシー事業者」ということがある。)の健全な発展を図ること等を目的とする原告一般社団法人A協会(以下「原告協会」という。)及び札幌交通圏においてタクシー事業を営むその余の原告ら(以下「原告事業者ら」という。)が,北海道運輸局長(以下「本件局長」という。)が行った,道路運送法(昭和26年6月1日法律第183号。以下「運送法」という。なお,法令並びに告示及び公示については,特に断らない限り処分当時のものを指す。)4条に基づく参加人に対する前記第1,1の一般乗用旅客自動車運送事業の許可(以下「本件許可」という。)及び前記第1,2の運送法9条の3に基づく参加人に対する一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の認可(以下「本件認可」といい,本件許可及び本件認可を「本件各処分」という。)はいずれも違法であるとして,本件各処分の取消しを求める事案である。
判示事項
1 特定の交通圏における一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)の健全な発展を図ること等を目的とする一般社団法人(協会)及び同交通圏においてタクシー事業を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法4条に基づく新規参入事業者に対するタクシー事業の許可は違法であるとして,同許可処分の取消しを求めて提起した訴えにつき,いずれも原告適格が否定された事例
2 特定の交通圏における一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)の健全な発展を図ること等を目的とする一般社団法人(協会)及び同交通圏においてタクシー事業を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法9条の3に基づく他事業者に対するタクシー事業の運賃及び料金の認可は違法であるとして,同認可処分の取消しを求めて提起した訴えにつき,前記既存事業者らの原告適格が肯定され,前記協会の原告適格が否定された事例
3 一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法9条の3に基づく新規参入事業者に対する一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の認可は違法であるとして提起した同認可処分の取消請求が,棄却された事例
裁判要旨
1 特定の交通圏における一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)の健全な発展を図ること等を目的とする一般社団法人(協会)及び同交通圏においてタクシー事業を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法4条に基づく新規参入事業者に対するタクシー事業の許可は違法であるとして,同許可処分の取消しを求めて提起した訴えにつき,同法は,平成12年法律第86号による改正並びに平成18年法律第19号及び同第40号による改正により,公正な競争の確保や道路運送に関する秩序の確立といった点を法の目的から除外し,輸送の安全確保とともに利用者の利益保護及び利便の増進を目的として掲げ,事業者間の競争により利用者の利益が図られるようにしたもので,事業者の利益の保護は目的ではなく,目的実現のために常に必要とされるものでもないことを明らかにしているというべきであるから,タクシー事業の許可については,同法が,個々のタクシー事業者の営業に関する利益を一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず個別的利益として保護していると解することはできず,また,同法8条は,特定の地域においてタクシー事業の供給輸送力が輸送需要量に対し著しく過剰となっていて,当該供給輸送力が更に増加すれば輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがある場合,輸送の安全及び旅客の利便の確保という目的のために,その地域のタクシー事業への新規参入を認めないこととし,その限度では既存のタクシー事業者の利益を保護しているものといえるが,同法の目的や事業許可についての規定の趣旨等からして,これは,特定の地域が緊急調整地域として指定された場合についていえるもので,そのような指定がない状態で一般的に既存のタクシー事業者の利益を保護する趣旨を含んでいると解することはできず,また同法が前記協会のような事業者団体の利益を個別的利益として保護していると解すべき根拠はないとして,前記協会及び前記既存事業者らの原告適格を否定した事例
2 特定の交通圏における一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)の健全な発展を図ること等を目的とする一般社団法人(協会)及び同交通圏においてタクシー事業を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法9条の3に基づく他事業者に対するタクシー事業の運賃及び料金の認可は違法であるとして,同認可処分の取消しを求めて提起した訴えにつき,同法9条の3第2項3号の趣旨並びに同法89条1項2号及び同法施行規則56条2号が運賃等の認可の申請者と同一交通圏のタクシー事業者を利害関係人として規定していることからすると,同法は,運賃等の認可については,不当な競争を引き起こすこととなる低額の運賃等を認めず,競争関係にある事業者のこのような運賃等が認可されないという限度では,申請者と競争関係にあるタクシー事業者の具体的な利益を保護しているものと認められ,同法は,このようなタクシー事業者の利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々の事業者の個別的利益としてもこれを保護すべきものとしているというべきであり,また,運賃等の認可については,輸送の安全確保等の一般的公益を守るためにも,処分の適法性を的確に争うことができる者として,競争関係にあるタクシー事業者に取消訴訟の原告適格を認めることが相当であるとする一方,前記協会は,不公正な競争となる低額の運賃等が認可されることによって,道路運送法9条の3第2項3号の規定によって保護されるべき利益が害されるものではなく,運賃等の認可について,同法の規定等が,前記協会のような事業者団体の利益を個別的利益としてこれを保護すべきものとする趣旨を含んでいるとは解されないとして,前記既存事業者らの原告適格を肯定し,前記協会の原告適格を否定した事例
3 一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を営む既存事業者らが,運輸局長が行った道路運送法9条の3に基づく新規参入事業者に対する一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の認可は違法であるとして提起した同認可処分の取消請求につき,運輸局長は,自ら行った査定に基づき,前記新規参入事業者の申請運賃等によっても採算割れは起きないものと認めて前記認可をするとともに,混乱が生じないよう万全の措置を講じること等を指導したこと,前記査定は,運輸局長が定めて公示した認可基準に従い適法に行われたこと,前記認可に係る申請は同法9条の3第2項所定の基準に適合するものであったことが認められるから,前記認可は適法に行われたとして,前記請求を棄却した事例
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