事件番号平成27(行ヒ)177
事件名法人税更正処分等取消請求事件
裁判所最高裁判所第二小法廷
裁判年月日平成28年2月29日
裁判種別判決
結果棄却
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成26(行コ)158
原審裁判年月日平成27年1月15日
事案の概要本件は,平成21年2月2日にb株式会社(同日に変更されるまでの商号はB株式会社。以下「b社」という。)から新設分割(以下「本件分割」という。)により設立された上告人が,本件分割は法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下「法」という。)2条12号の11の適格分割に該当しない分割(以下「非適格分割」という。)であり,法62条の8第1項の資産調整勘定の金額が生じたとして,同日から平成21年3月31日まで,同年4月1日から同22年3月31日まで,同年4月1日から同23年3月31日まで及び同年4月1日から同24年3月31日までの各事業年度(以下「本件各事業年度」という。)に係る各法人税の確定申告に当たり,上記の資産調整勘定の金額からそれぞれ所定の金額を減額し損金の額に算入したところ,四谷税務署長が,組織再編成に係る行為又は計算の否認規定である法132条の2を適用し,上記の資産調整勘定の金額は生じなかったものとして所得金額を計算した上で,本件各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各更正処分等」という。)をしたため,上告人が,被上告人を相手に,本件各更正処分等(上記各更正処分については各申告額を超える部分)の取消しを求める事案である。
判示事項1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義及びその該当性の判断方法
2 新設分割により設立された分割承継法人の発行済株式全部を分割法人が譲渡する計画を前提としてされた当該分割が,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるとされた事例
3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」の意義
裁判要旨1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいい,その濫用の有無の判断に当たっては,①当該法人の行為又は計算が,通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり,実態とは乖離した形式を作出したりするなど,不自然なものであるかどうか,②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮した上で,当該行為又は計算が,組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって,組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である。
2 新設分割により設立された分割承継法人が当該分割は適格分割に該当しないとして資産調整勘定の金額を計上した場合において,分割後に分割法人が当該分割承継法人の発行済株式全部を譲渡する計画を前提としてされた当該分割は,翌事業年度以降は損金に算入することができなくなる当該分割法人の未処理欠損金額約100億円を当該分割承継法人の資産調整勘定の金額に転化させ,これを以後60か月にわたり償却し得るものとするため,本来必要のない上記譲渡を介在させることにより,実質的には適格分割というべきものを形式的にこれに該当しないものとするべく企図されたものといわざるを得ないなど判示の事情の下では,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たる。
3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」とは,更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限られるものではなく,同条各号に掲げられている法人の行為又は計算を意味する。
事件番号平成27(行ヒ)177
事件名法人税更正処分等取消請求事件
裁判所最高裁判所第二小法廷
裁判年月日平成28年2月29日
裁判種別判決
結果棄却
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成26(行コ)158
原審裁判年月日平成27年1月15日
事案の概要
本件は,平成21年2月2日にb株式会社(同日に変更されるまでの商号はB株式会社。以下「b社」という。)から新設分割(以下「本件分割」という。)により設立された上告人が,本件分割は法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下「法」という。)2条12号の11の適格分割に該当しない分割(以下「非適格分割」という。)であり,法62条の8第1項の資産調整勘定の金額が生じたとして,同日から平成21年3月31日まで,同年4月1日から同22年3月31日まで,同年4月1日から同23年3月31日まで及び同年4月1日から同24年3月31日までの各事業年度(以下「本件各事業年度」という。)に係る各法人税の確定申告に当たり,上記の資産調整勘定の金額からそれぞれ所定の金額を減額し損金の額に算入したところ,四谷税務署長が,組織再編成に係る行為又は計算の否認規定である法132条の2を適用し,上記の資産調整勘定の金額は生じなかったものとして所得金額を計算した上で,本件各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各更正処分等」という。)をしたため,上告人が,被上告人を相手に,本件各更正処分等(上記各更正処分については各申告額を超える部分)の取消しを求める事案である。
判示事項
1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義及びその該当性の判断方法
2 新設分割により設立された分割承継法人の発行済株式全部を分割法人が譲渡する計画を前提としてされた当該分割が,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるとされた事例
3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」の意義
裁判要旨
1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいい,その濫用の有無の判断に当たっては,①当該法人の行為又は計算が,通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり,実態とは乖離した形式を作出したりするなど,不自然なものであるかどうか,②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮した上で,当該行為又は計算が,組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって,組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である。
2 新設分割により設立された分割承継法人が当該分割は適格分割に該当しないとして資産調整勘定の金額を計上した場合において,分割後に分割法人が当該分割承継法人の発行済株式全部を譲渡する計画を前提としてされた当該分割は,翌事業年度以降は損金に算入することができなくなる当該分割法人の未処理欠損金額約100億円を当該分割承継法人の資産調整勘定の金額に転化させ,これを以後60か月にわたり償却し得るものとするため,本来必要のない上記譲渡を介在させることにより,実質的には適格分割というべきものを形式的にこれに該当しないものとするべく企図されたものといわざるを得ないなど判示の事情の下では,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たる。
3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」とは,更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限られるものではなく,同条各号に掲げられている法人の行為又は計算を意味する。
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