事件番号平成27(行ヒ)75
事件名法人税更正処分取消請求事件
裁判所最高裁判所第一小法廷
裁判年月日平成28年2月29日
裁判種別判決
結果棄却
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成26(行コ)157
原審裁判年月日平成26年11月5日
事案の概要本件は,平成21年2月24日にa株式会社(以下「a社」という。)からb株式会社(同月2日に変更されるまでの商号はB株式会社。以下「b社」という。)の発行済株式全部を譲り受け(以下「本件買収」という。),同年3月30日にb社を被合併会社とする吸収合併(以下「本件合併」という。)をした上告人が,同20年4月1日から同21年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)に係る法人税の確定申告に当たり,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下「法」という。)2条12号の8の適格合併に適用される法57条2項によりb社の未処理欠損金額を上告人の欠損金額とみなして,これを損金の額に算入したところ,麻布税務署長が,組織再編成に係る行為又は計算の否認規定である法132条の2を適用し,上記未処理欠損金額を上告人の欠損金額とみなすことを認めず,本件事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件更正処分等」という。)をしたため,上告人が,被上告人を相手に,本件更正処分等(上記更正処分については申告額を超える部分)の取消しを求める事案である。
判示事項1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義及びその該当性の判断方法
2 甲社が乙社の発行済株式全部を買収して乙社を完全子会社とし,その後乙社を吸収合併した場合において,甲社の代表取締役社長が上記買収前に乙社の取締役副社長に就任した行為が,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるとされた事例
3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」の意義
裁判要旨1  法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいい,その濫用の有無の判断に当たっては,①当該法人の行為又は計算が,通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり,実態とは乖離した形式を作出したりするなど,不自然なものであるかどうか,②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮した上で,当該行為又は計算が,組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって,組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である。
2 甲社が乙社の発行済株式全部を買収して完全子会社とし,その後乙社を吸収合併した場合において,甲社の代表取締役社長Aが上記買収前に乙社の取締役副社長に就任した行為は,乙社の利益だけでは容易に償却し得ない多額の未処理欠損金額を上記の買収及び合併により甲社の欠損金額とみなし,甲社においてその全額を活用することを意図して,上記合併後にAが甲社の代表取締役社長の地位にとどまってさえいれば法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)112条7項5号の要件が満たされることとなるよう企図されたものであり,その就任期間や業務内容等に照らし,Aが乙社において同号において想定されている特定役員の実質を備えていたということはできないなど判示の事情の下では,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たる。
3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」とは,更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限られるものではなく,同条各号に掲げられている法人の行為又は計算を意味する。
事件番号平成27(行ヒ)75
事件名法人税更正処分取消請求事件
裁判所最高裁判所第一小法廷
裁判年月日平成28年2月29日
裁判種別判決
結果棄却
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成26(行コ)157
原審裁判年月日平成26年11月5日
事案の概要
本件は,平成21年2月24日にa株式会社(以下「a社」という。)からb株式会社(同月2日に変更されるまでの商号はB株式会社。以下「b社」という。)の発行済株式全部を譲り受け(以下「本件買収」という。),同年3月30日にb社を被合併会社とする吸収合併(以下「本件合併」という。)をした上告人が,同20年4月1日から同21年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)に係る法人税の確定申告に当たり,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下「法」という。)2条12号の8の適格合併に適用される法57条2項によりb社の未処理欠損金額を上告人の欠損金額とみなして,これを損金の額に算入したところ,麻布税務署長が,組織再編成に係る行為又は計算の否認規定である法132条の2を適用し,上記未処理欠損金額を上告人の欠損金額とみなすことを認めず,本件事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件更正処分等」という。)をしたため,上告人が,被上告人を相手に,本件更正処分等(上記更正処分については申告額を超える部分)の取消しを求める事案である。
判示事項
1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義及びその該当性の判断方法
2 甲社が乙社の発行済株式全部を買収して乙社を完全子会社とし,その後乙社を吸収合併した場合において,甲社の代表取締役社長が上記買収前に乙社の取締役副社長に就任した行為が,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるとされた事例
3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」の意義
裁判要旨
1  法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいい,その濫用の有無の判断に当たっては,①当該法人の行為又は計算が,通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり,実態とは乖離した形式を作出したりするなど,不自然なものであるかどうか,②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮した上で,当該行為又は計算が,組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって,組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である。
2 甲社が乙社の発行済株式全部を買収して完全子会社とし,その後乙社を吸収合併した場合において,甲社の代表取締役社長Aが上記買収前に乙社の取締役副社長に就任した行為は,乙社の利益だけでは容易に償却し得ない多額の未処理欠損金額を上記の買収及び合併により甲社の欠損金額とみなし,甲社においてその全額を活用することを意図して,上記合併後にAが甲社の代表取締役社長の地位にとどまってさえいれば法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)112条7項5号の要件が満たされることとなるよう企図されたものであり,その就任期間や業務内容等に照らし,Aが乙社において同号において想定されている特定役員の実質を備えていたということはできないなど判示の事情の下では,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たる。
3 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」とは,更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限られるものではなく,同条各号に掲げられている法人の行為又は計算を意味する。
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