事件番号平成25(ワ)822
事件名損害賠償請求事件
裁判所仙台地方裁判所 第3民事部
裁判年月日平成28年3月24日
事案の概要本件は,平成23年3月11日午後2時46分に発生した「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(以下,この地震を「本件地震」といい,本件地震及びその余震による震災(東日本大震災)を「本件震災」という。)に伴う津波(以下「本件津波」という。)に襲われて死亡した原告Bの母D,原告Cの母E及び原告Aの子Fの各相続人である原告らが,東松島市立野蒜小学校(以下「本件小学校」という。)を設置し運営するとともに災害時の避難場所に指定していた地方公共団体である被告に対し,本件小学校の校長G(以下「本件校長」という。)が,本件津波に関する情報収集を懈怠し,本件小学校に避難したD及びEを本件小学校の校舎(以下「本件校舎」という。)の2階以上に避難誘導しなかったという過失によって,D及びEが本件小学校の体育館(以下「本件体育館」という。)において本件津波に襲われて死亡し,また,本件小学校に避難した同校在籍の児童であるFを災害時に児童(F)の引渡しを受ける責任者として登録されていた者以外の者に引渡後の安全を確認せずに引き渡したという過失によって,Fが本件小学校よりも海側の場所で本件津波に襲われて死亡したとして,それぞれ,国家賠償法1条1項に基づき,上記3名から相続した各損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨1 東日本大震災の地震発生後,市である被告が設置し運営するとともに災害時の避難場所に指定していた小学校の体育館へ避難した住民らが津波に巻き込まれて死亡した事案において,同校の校長が,津波が事前に想定されていた大地震による津波浸水域を超えて同体育館に到達することを予見し得たとはいえず,避難住民を校舎の2階以上に誘導しなかったことについて過失は認められないとされた事例。

2 東日本大震災の地震が発生し,市である被告が設置し運営するとともに災害時の避難場所に指定していた小学校の体育館へ避難した同校在籍の児童が,同校の校長により同級生の親に引き渡されて同児童の保護者不在の自宅に帰された後,津波に巻き込まれて死亡した事案において,同校長は,同児童を同級生の親に引き渡した時点で,同児童を引き渡して同体育館から自宅に帰宅させると,帰宅途中ないし帰宅後に津波に巻き込まれ,同児童の生命又は身体に危険が及ぶという結果を具体的に予見することができ,同校長には,同児童を引き渡すに当たり,津波により同児童の生命又は身体に危険が及ぶかどうかの安全を確認し,その安全が確認できない限り引き渡してはならないという注意義務に違反した過失が認められるとして,被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が認容された事例。
事件番号平成25(ワ)822
事件名損害賠償請求事件
裁判所仙台地方裁判所 第3民事部
裁判年月日平成28年3月24日
事案の概要
本件は,平成23年3月11日午後2時46分に発生した「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(以下,この地震を「本件地震」といい,本件地震及びその余震による震災(東日本大震災)を「本件震災」という。)に伴う津波(以下「本件津波」という。)に襲われて死亡した原告Bの母D,原告Cの母E及び原告Aの子Fの各相続人である原告らが,東松島市立野蒜小学校(以下「本件小学校」という。)を設置し運営するとともに災害時の避難場所に指定していた地方公共団体である被告に対し,本件小学校の校長G(以下「本件校長」という。)が,本件津波に関する情報収集を懈怠し,本件小学校に避難したD及びEを本件小学校の校舎(以下「本件校舎」という。)の2階以上に避難誘導しなかったという過失によって,D及びEが本件小学校の体育館(以下「本件体育館」という。)において本件津波に襲われて死亡し,また,本件小学校に避難した同校在籍の児童であるFを災害時に児童(F)の引渡しを受ける責任者として登録されていた者以外の者に引渡後の安全を確認せずに引き渡したという過失によって,Fが本件小学校よりも海側の場所で本件津波に襲われて死亡したとして,それぞれ,国家賠償法1条1項に基づき,上記3名から相続した各損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨
1 東日本大震災の地震発生後,市である被告が設置し運営するとともに災害時の避難場所に指定していた小学校の体育館へ避難した住民らが津波に巻き込まれて死亡した事案において,同校の校長が,津波が事前に想定されていた大地震による津波浸水域を超えて同体育館に到達することを予見し得たとはいえず,避難住民を校舎の2階以上に誘導しなかったことについて過失は認められないとされた事例。

2 東日本大震災の地震が発生し,市である被告が設置し運営するとともに災害時の避難場所に指定していた小学校の体育館へ避難した同校在籍の児童が,同校の校長により同級生の親に引き渡されて同児童の保護者不在の自宅に帰された後,津波に巻き込まれて死亡した事案において,同校長は,同児童を同級生の親に引き渡した時点で,同児童を引き渡して同体育館から自宅に帰宅させると,帰宅途中ないし帰宅後に津波に巻き込まれ,同児童の生命又は身体に危険が及ぶという結果を具体的に予見することができ,同校長には,同児童を引き渡すに当たり,津波により同児童の生命又は身体に危険が及ぶかどうかの安全を確認し,その安全が確認できない限り引き渡してはならないという注意義務に違反した過失が認められるとして,被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が認容された事例。
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