事件番号平成27(行ウ)625
事件名生活保護返還金決定処分等取消請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成29年2月1日
事案の概要本件は,生活保護を受けている原告が,東京都A福祉事務所の職員の過誤により,原告が収入として申告していた原告の長女に係る児童扶養手当について収入認定がされていなかったこと及び原告について冬季加算の削除の処理がされていなかったことによる生活保護費の過支給が生じていたことにつき,保護の実施機関である東京都知事の権限の委任を受けた東京都A福祉事務所長から,生活保護法(以下「法」という。)63条に基づき,過支給に係る生活保護費59万1300円の全額を返還すべき額とする旨の決定(以下「本件処分」という。)を受けたことから,①現に資力のない被保護者に対する返還決定は同条に違反して違法であり,②仮にそうでないとしても,本件処分には裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり,③さらに,手続上の瑕疵として聴取・調査義務違反があるから,本件処分は違法である旨主張して,その取消しを求める事案である。
判示事項保護の実施機関である都道府県知事の権限の委任を受けた福祉事務所長が生活保護法63条に基づいて被保護者に対してした,同福祉事務所の職員の過誤により過支給となった生活保護費の全額を返還すべき額とする旨の決定が,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法とされた事例
裁判要旨保護の実施機関である都道府県知事の権限の委任を受けた福祉事務所長が生活保護法63条に基づいて被保護者に対してした,同福祉事務所の職員の過誤により過支給となった生活保護費の全額を返還すべき額とする旨の決定は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,同福祉事務所長に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして,違法である。
(1)上記決定に至る過程で,上記福祉事務所長において,同決定当時の上記被保護者の資産や収入の状況,その今後の見通し,過支給に係る生活保護費の費消の状況等の諸事情を具体的に調査し,その結果を踏まえて,上記生活保護費の全部又は一部の返還をたとえ分割による方法によってでも求めることが,同被保護者に対する最低限度の生活の保障の趣旨に実質的に反することとなるおそれがあるか否か,同被保護者及びその世帯の自立を阻害することとなるおそれがあるか否か等についての具体的な検討をしなかった。
(2)専ら上記福祉事務所の職員の過誤により相当額に上る生活保護費の過支給がされたのに,上記決定に当たり,上記の過誤に係る職員に対する損害賠償請求権の成否やこれを前提とした当該職員による過支給費用の全部又は一部の負担の可否についての検討がされなかった。
事件番号平成27(行ウ)625
事件名生活保護返還金決定処分等取消請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成29年2月1日
事案の概要
本件は,生活保護を受けている原告が,東京都A福祉事務所の職員の過誤により,原告が収入として申告していた原告の長女に係る児童扶養手当について収入認定がされていなかったこと及び原告について冬季加算の削除の処理がされていなかったことによる生活保護費の過支給が生じていたことにつき,保護の実施機関である東京都知事の権限の委任を受けた東京都A福祉事務所長から,生活保護法(以下「法」という。)63条に基づき,過支給に係る生活保護費59万1300円の全額を返還すべき額とする旨の決定(以下「本件処分」という。)を受けたことから,①現に資力のない被保護者に対する返還決定は同条に違反して違法であり,②仮にそうでないとしても,本件処分には裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり,③さらに,手続上の瑕疵として聴取・調査義務違反があるから,本件処分は違法である旨主張して,その取消しを求める事案である。
判示事項
保護の実施機関である都道府県知事の権限の委任を受けた福祉事務所長が生活保護法63条に基づいて被保護者に対してした,同福祉事務所の職員の過誤により過支給となった生活保護費の全額を返還すべき額とする旨の決定が,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法とされた事例
裁判要旨
保護の実施機関である都道府県知事の権限の委任を受けた福祉事務所長が生活保護法63条に基づいて被保護者に対してした,同福祉事務所の職員の過誤により過支給となった生活保護費の全額を返還すべき額とする旨の決定は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,同福祉事務所長に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして,違法である。
(1)上記決定に至る過程で,上記福祉事務所長において,同決定当時の上記被保護者の資産や収入の状況,その今後の見通し,過支給に係る生活保護費の費消の状況等の諸事情を具体的に調査し,その結果を踏まえて,上記生活保護費の全部又は一部の返還をたとえ分割による方法によってでも求めることが,同被保護者に対する最低限度の生活の保障の趣旨に実質的に反することとなるおそれがあるか否か,同被保護者及びその世帯の自立を阻害することとなるおそれがあるか否か等についての具体的な検討をしなかった。
(2)専ら上記福祉事務所の職員の過誤により相当額に上る生活保護費の過支給がされたのに,上記決定に当たり,上記の過誤に係る職員に対する損害賠償請求権の成否やこれを前提とした当該職員による過支給費用の全部又は一部の負担の可否についての検討がされなかった。
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