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2018/09/03 13:00 更新

事件番号平成28(う)983
事件名殺人,商標法違反,銃砲刀剣類所持等取締法違反
裁判所東京高等裁判所 第5刑事部
裁判年月日平成30年8月3日
結果破棄自判
原審裁判所宇都宮地方裁判所
原審事件番号平成26(わ)245
事案の概要本件殺人の公訴事実は,「被告人は,平成17年12月2日午前4時頃,茨城県常陸大宮市甲字乙丙番丁所在の山林西側林道において,A(当時7歳。5以下「被害者」という。)に対し,殺意をもって,ナイフでその胸部を多数回突き刺し,よって,その頃,同所において,同人を心刺通(心臓損傷)により失血死させた」というものである。被害者は,平成17年12月1日午後2時38分頃に栃木県今市市(現日光市)内で下校中,何者かによって拉致され,翌2日午後2時頃,上記山林10内でその遺体が発見された。被害者を拉致し,その遺体を遺棄した各所為に係る罪については,いずれも公訴時効が完成しており,殺人の事実についてのみ公訴提起されたが,原審検察官は,被害者を拉致し,殺害し,遺体を遺棄したという一連の行為の犯人が被告人であると主張し,被告人及び原審弁護人は,上記一連の行為に15被告人は一切関わっていないとして争った。原判決は,本件の事実に関する争点は,被害者を殺害した犯人(以下「殺害犯人」という。)と被告人との同一性(被告人の犯人性)であるとした上,まず,原審検察官の指摘する客観的事実(情況証拠)のみによって被告人の犯人性を認定できるか検討し,結論として,被告人が殺害犯人である20蓋然性は相当に高いものと考えられるが,客観的事実のみから被告人の犯人性を認定することはできないとした。そして,原判決は,被告人が検察官に行った本件自白供述(原審乙55から58まで)につき,任意性を認めた上,本件殺人の一連の経過や殺害行為の態様,場所,時間等,事件の根幹部分に関する供述は,十分に信用することができるとし,原審関係証拠から認めら25れる客観的事実に,同供述を併せれば,被告人が被害者を殺害したことに合理的な疑いを入れる余地はないとして,原判示第1のとおり,公訴事実と同旨の事実を認定し,区分審理した他の事件との併合事件審判により,被告人を無期懲役に処した。2 情況証拠に基づく被告人の犯人性の判断について原判決の要旨5ア 犯人性の判断の前提として認定した事実原判決は,(事実認定の補足説明)において,殺害犯人と被告人との同一性に関わる情況証拠を検討する前に,「被害者の失踪,不審車両の目撃状況」「本件拉致現場付近における不審車両の目撃状況」「遺体の発見」「遺体発見現場の位置」及び「遺体の状況」の各項目に分け,原審関係証拠に基づき,10客観的な事実を認定している。原判決が認定した上記客観的な事実からは,被害者が,栃木県今市市内で下校中,古い白色のセダン車を運転する若い感じの男により拉致され,その後,拉致行為が行われた栃木県内,遺体発見現場である茨城県内又はそれらの周辺において,胸部をナイフ様のもので多数回刺突されて殺害され,その15遺体が,前記のとおり発見される以前に,遺体発見現場の山林内に遺棄されたことが認められる。そして,上記のとおり,被害者の拉致からその遺体の発見までの間には24時間も経過しておらず,一連の行為が接着している上,当時7歳であった被害者を拉致し,殺害し,その遺体を山林内に遺棄したという各行為の性質20に照らしても,被害者を拉致した犯人が,被害者を殺害し,その遺体を山林内に遺棄した蓋然性が高く,一連の犯行は同一人物によるものと推認される。原審記録を精査しても,上記推認に合理的な疑いを生じさせる事情は見いだせない。原判決は,明示的な判断を示してはいないが,前記客観的事実の認定に引25き続き,殺害犯人と被告人との同一性に関する情況証拠を検討するに当たっては,上記一連の犯行が同一人物によるものであることを前提としているものと考えられる。なお,弁護人は,被害者が拉致された場面の目撃者はおらず,古い白色のセダン車を運転する男性が拉致の犯人であるとは断定できないなどと主張する。しかし,原判決も認定するとおり,原審関係証拠によれば,被害者が同5級生と下校中に,古い白色のセダン車が被害者らの脇をいったん通り過ぎてから,折り返して戻ってくるなどの不審な動きをしたことが同級生により目撃されており,さらに,付近を自動二輪車で走行していた郵便局員が,本件拉致現場で被害者を追い越した後,後方から白色セダン車が接近するのを確認し,先に行かせるために停車して降車し,後ろを振り返ったが白色セダン10車は来ず,しばらくしてから同車が高速度で疾走していくところを目撃していることが認められ,これらの事実によれば,白色セダン車を運転する男性が被害者を拉致したものと推認され,この認定に合理的な疑いを生じさせる事情は見当たらない。イ 間接事実に基づく被告人の犯人性の検討について15原判決は,被告人の犯人性に関し,情況証拠に基づいて,以下の客観的事実を認定した。①いわゆるNシステムによる通行記録等によれば,被告人車両が,平成17年12月2日午前1時50分頃に宇都宮市i町の県道宇都宮楡木線(第1地点)を宇都宮市街方向へ,同日午前2時20分頃に同市j町の国道12320号線上の特定の地点(第2地点)をk町方向へ走行し,同日午前6時12分頃に同地点を宇都宮市街方向へ,同日午前6時27分頃に同市 m 町の国道121号線上の地点(第3地点)を鹿沼市方向へ,同日午前6時39分頃に第1地点を鹿沼市方向へそれぞれ走行した記録が確認されたことが認められ,これ以外に被告人車両による第2地点の通行記録は,同月6日の深夜から朝25にかけて通行したもの以外には全く存在せず,上記第1ないし第3地点は,当時の被告人方と遺体発見現場とを結ぶ経路上にあり,被告人方から第1,第2地点を経由した遺体発見現場までの自動車での所要時間は,同一時間帯に実施した再現実験において約1時間47分(約78.7キロメートル)であった。また,被告人は,実母とともに,平成11年頃から平成14年頃までの間,茨城県内のB院で開催される骨董市に宇都宮市から月1回の頻度で5通っており,その際の経路は,第2地点や遺体発見現場に近い場所を通過するものであった。本件当時,被告人が第三者に被告人車両を貸与した事情は見当たらない。②遺体の右手拇指基節部には獣毛様のもの1本が付着していて,鑑定の結果,猫の毛で,DNA型は被告人の本件当時の飼い猫のミトコンドリアDNA型と同一のグループに属すると認められる。③遺体の右頸部10に認められた損傷は,被告人が当時所持していたスタンガンによって生じたものとして矛盾がない。④被告人車両は,平成4年式の白色4ドアセダン車で,拉致現場で目撃された古い白色セダン車と同色・同型であり,また,被告人は,被害者が拉致された時間帯にその現場まで自動車で行くことが可能な場所にいた。⑤被告人は,平成6年8月から平成9年4月までの間,今市15市内に居住し,C小学校及び隣接するD中学校に通学していて拉致現場付近の土地鑑があった。⑥被告人が,事件当時,多数の児童ポルノ画像を収集しており,複数のナイフを所持していたこと,事件後も児童ポルノ画像や猟奇的殺人の動画,ナイフを収集していたことなどは,女児に対する性的興味や残虐行為,刃物に対する親和性を示すもので,本件の犯行態様から想定され20る犯人像に整合的である。⑦被告人は,本件殺人の取調べが開始された直後に,実母に対し「事件」を起こしたことを謝罪する手紙(原審甲209。以下「本件手紙」という。)を送っている。また,原判決は,遺体の後頭部に貼り付いていた粘着テープ(以下「本件粘着テープ」という。)の鑑定により検出された被害者のものと一致しない25DNA型が本件殺人の犯人に由来するものである蓋然性が高い,とする原審弁護人の主張を排斥した。原判決は,以上の①から⑦までの間接事実について,被告人が犯人であることを推認させる程度を個別的に評価し,前記②の獣毛様のものが被告人の飼い猫のものである蓋然性が相応に高いといえること,前記①の通行記録が存在することなど,被告人が本件殺人の犯人でないとすれば説明が困難とま5ではいえないものの,犯人である蓋然性が高いことを推認させる複数の事実が認められ,加えて,推認力としては限定的なものを含め,本件殺人に関係する証拠の中に,犯人が被告人であることと整合的と評価できる事情が多数存在する一方で,矛盾する証拠は見当たらないことからすれば,客観的証拠からみても,被告人が本件殺人の犯人である蓋然性は相当に高いものと考え10られるが,これらの証拠から認められる客観的事実をそれぞれ具体的にみれば,被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているとまではいえず,そうすると,客観的事実のみから被告人の犯人性を認定することはできないとした。15当裁判所の判断の骨子原判決が,それぞれの間接事実を認定したことに不合理なところはなく,それらの証明力の評価も,以下の点を除けば是認することができ,本件粘着テープの鑑定結果に関する判断も不合理とはいえない。しかし,前記②の本件獣毛について,それが被告人の飼い猫のものと矛盾しないとする以上に,20ミトコンドリアDNA型の出現頻度に基づき被告人の飼い猫のものである蓋然性が相応に高いとした証明力の評価は是認することができない。他方,前記⑦の本件手紙に記載された「事件」が何を指すのかは必ずしも明白とはいえないとして,「手紙の存在のみでは,被告人の犯人性を直接的に基礎付ける事情とはなり得ない」とする判断も,是認することができない。その「事25件」が本件殺人を指すことは明らかであり,犯人でないにもかかわらず,母親に対し,自ら手紙を書いて,自分が本件殺人を犯したことを謝罪することは通常あり得ないものと考えられるから,被告人が本件手紙を作成したことは,被告人が殺害犯人でないとすれば合理的に説明することが困難というべきである。また,原判決が,「客観的事実をそれぞれ具体的にみれば,(中略)被告5人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているとまではいえず」とした点は,認定した個々の間接事実のうちに被告人の犯人性について決め手となるものが存在しないことから,「客観的事実のみから被告人の犯人性を認定することはできない」との結論を導いたもののように読めるが,10そうであるとすれば,判例(最高裁平成19年(あ)第80号同22年4月27日第三小法廷判決・刑集64巻3号233頁)の趣旨にそぐわないもので,情況証拠によって認められる間接事実を総合して事実認定すべき場合の判断手法として不合理なものといわざるを得ない。また,仮に,原判決の趣旨が上記のようなものでなかったとしても,本件獣毛及び本件手紙のそれぞ15れの証明力に関する判断を是正した上で間接事実を総合して判断した場合,原判決の上記結論は合理的なものといえず,これを支持することはできない。以上の判断の理由については,個々の間接事実に関する所論に対する判断を示す中で説明する。Nシステムによる通行記録等について20ア 当事者の主張弁護人は,Nシステムで読み取った被告人車両の通行記録(原審甲208)に証拠能力を認めた原審の訴訟手続には法令違反があり,仮に同通行記録に証拠能力が認められるとしても,原判決は,その推認力を過大に評価して事実認定を誤っていると主張する。25すなわち,①Nシステムで読み取った通行記録は,それだけでは情報の正確性が担保されているとはいえず,都道府県警察本部等が管理している原データと照合して,初めてその正確性が裏付けられ,自然的関連性が認められ得るのであり,②Nシステムの通過車両データに対する法的な取扱いを整備し,明らかにしないまま同データを証拠として用いることは,刑訴法全体の精神及び同法1条の趣旨からして許容されないのに,原審が,Nシステムで5読み取った通行記録(原審甲208)に証拠能力を認めたことには,判決に影響を及ぼす訴訟手続の法令違反がある。また,③仮にNシステムによる通行記録が正確であったとしても,原審甲208号証から読み取ることができるのは,被告人車両が,平成17年12月2日午前2時20分にj町をk町方面に通過し,その後,同日午前6時12分に同町を宇都宮市街方面に通過10したという事実にすぎず,この事実から,被告人が,j町から40キロメートル以上離れた遺体発見現場に行ったという事実を推認することはできない,④原審甲208号証からは,本件通行記録の検索対象が栃木県及び埼玉県だけなのか,日本国内にあるあらゆるNシステムが検索対象になっているのかは分からず,被告人の経路は特異なものとはいえない,⑤被告人が,平成1151年ころから平成14年ころまでの間,茨城県内のB院で開催される骨董市に月1回の頻度で通っていた際の経路が第2地点や遺体発見現場に近い場所を通過するものであったことは,Nシステムによる被告人車両の通行記録の推認力を補強することはできない,⑥遺体発見現場に進入するための林道は狭路であり,入口付近には草木が生い茂っているため,日中でも認識困難な20場所であり(原審甲218添付の写真4),過去に遺体発見現場に行ったことのない被告人が,深夜に林道の存在を認識し,進入することは困難であり,同現場にはたどり着けない,などとして原判決には事実誤認がある,というのである。これに対し,検察官は,①Nシステムが長年にわたり各種警察活動に25利用されていることは公知の事実であり,昭和56年から約5年間,延べ数千人がその開発に従事した上,昭和61年度から導入され,その仕組みは,全て機械的,自動的に処理されるものであるから,その信頼性には何らの疑念も見いだせず,証拠能力を認めた原判決に不合理はないとし,また,②当時の被告人方から遺体発見現場までは,鹿沼インター通り,宇都宮環状線北周り,国道123号線等を経由した場合,約78.7キロメートルであり,5計測実験によれば,自動車での所要時間は1時間47分で,被告人車両は,第2地点を,東方向に平成17年12月2日午前2時20分,西方向に同日午前6時12分にそれぞれ通過しており,その間の3時間52分以内に第2地点と遺体発見現場を往復することは十分可能であり,この通行記録からは,被告人が犯人であるとして矛盾しないといえる,③本件は,栃木県内で被害10者が拉致され,その約1日後に茨城県内で遺体が発見された事案であって,犯人は犯行に自動車を使用した疑いが濃厚であり,相当広範囲の移動が可能であったことを念頭に,捜査に携わる者としては,Nシステムデータの照会に当たり,少なくとも栃木県及び茨城県に隣接するすべての県を検索対象に入れるはずであり,現に埼玉県内での通行記録も認められる,④原判決は,15遺体発見現場に関する被告人の土地鑑をもって被告人車両の通行記録の推認力を補強していると判断したものではなく,被告人が事件当日に遺体発見現場に行ったのではないかとの疑いを生ぜしめる間接証拠としたものである,として原判決には事実誤認はない,と主張する。イ 当裁判所の判断20そこで検討すると,原審甲208号証は,本件犯行当時における被告人車両の通行記録をNシステムにより読み取ったデータを印刷した証拠物たる書面であり,本件との関連性を認め,これを採用した原審の訴訟手続に違法はない。弁護人は,その自然的関連性を争うが,原審証人Eの証言によれば,Nシ25ステムは,主に幹線道路に固定されたカメラで,通過する自動車のナンバー付近を撮影し,コンピュータ処理でそのナンバー情報だけを文字情報として記録することが,機械的,自動的に行われるものと認められ,今日の我が国の技術的な水準の下において,その信頼性,正確性に基本的な疑いを生じさせるようなものではない。また,原審甲208号証は,同システムから機械的に抽出された結果と認められ,その作成過程で何らかの過誤や恣意的な加5工が加わったことを疑うべき理由は存在しない。したがって,その自然的関連性を争う弁護人の所論は失当である。また,Nシステムで読み取られた通行記録について,捜査に及ぼす影響等から警察庁の通達によって秘密保持が徹底され,刑事裁判の証拠として用いないこととされているとしても,それは内部的な規律にすぎず,具体的な事10案において,それを秘匿することにより守るべき利益と,証拠とする必要性とを比較考量した上で,一般原則による禁止を解除し,例外的に証拠とするという処理を行うことが刑訴法により禁じられているものとはいえないし,そのようにして証拠請求する場合について,何らかの基準や規範が整備されていないからといって,原審甲208号証の取調べ請求が,刑訴法全体の精15神又は同法1条の趣旨により禁止されるものとは解されない。また,Nシステムによる通行記録について,捜査機関が,通常,弁護人からの開示請求にも応じないとしても,本件の訴訟手続において,例えばアリバイ主張の裏付けとなるべき他の通行記録の開示には応じなかったなど何らかの不公正な措置がとられたというわけでもないから,原審甲208号証の取調べ請求が,20具体的な訴訟における信義則に反することはない。したがって,上記証拠の採用決定に関し,訴訟手続の法令違反があるとする弁護人の所論は失当である。次に,原審甲208号証の証明力について検討すると,本件の捜査に当たり,被告人車両の通行記録について,拉致の行われた栃木県,遺体発見25現場である茨城県及びその周辺につき調査したことは合理的に推定される。そして,被告人が,被害者を被告人車両で拉致して,当時の被告人方に運び,いずれかの場所で殺害した上,その遺体を遺体発見現場に投棄した疑いが問題となる本件において,被告人車両のNシステムに示された他の通行記録に照らしても,被告人が日常的に通行するとは認められない経路を深夜から未明の時間帯に走行していること,しかも,それらの通行が,日時及び場所の5いずれの点でも,被害者が失踪した日の翌日で遺体が発見された日の未明に,当時の被告人方と遺体発見現場との間を往復し,その間に遺体を発見現場に遺棄したことと矛盾することなく整合するものであることが,被告人の犯人性を推認させる有力な間接事実であることは明らかである。したがって,上記通行記録によって,被告人が遺体発見現場に行ったことが直接推認できる10ものでないことは所論のとおりであるとしても,上記通行記録を,被告人が犯人である蓋然性が高いことを推認させる事実の一つとした原判決の判断に不合理な点はない。また,原判決が,茨城県内のB院で開催される骨董市に被告人らが月1回の頻度で通っていた際に,第2地点や遺体発見現場に近い場所を通過するも15のであったことを,被告人の同現場付近に関する土地鑑を示す間接事実として認定した上で,Nシステムにより認められる被告人車両の通行記録と併せて考慮したことも,不合理とはいえない。なお,弁護人が進入することが困難と主張する林道の入り口は,幅約2.6メートルの舗装道路となっており(原審甲218),夜間でも自動車の前20照灯で発見することに障害はないものと考えられる。さらに,弁護人は,被告人の土地鑑では遺体発見現場に到達できないなどというが,同所が山林内であることに照らせば,殺害犯人は,遺体の発見が困難と考えられる場所を求めて走行するうちに結果的に同所に至ったにすぎないと考えるのが相当であるから,殺害犯人が遺体発見現場を目的地として同所に至ったことを前提25とする弁護人の所論は,その前提を欠く。本件獣毛のミトコンドリアDNA型についてア 当事者の主張弁護人は,本件獣毛に関するF教授の原審証言について,証拠能力及び証明力を争う。すなわち,同証言は,同教授が実施した鑑定(当審弁158。以下「F鑑定」という。)の結果に基づくところ,F鑑定は,①同教授が平5成16年に発表した論文(当審甲20)とは異なるプライマーすなわちDNA断片を用い,②忠実度が低いPCR用酵素を用いて,クローン・シークエンシングを行って塩基配列を判定し,③多様性のあるリピート領域をミトコンドリアDNA型の判定に用いている。また,④猫のミトコンドリアDNA型の出現頻度のデータの信頼性に疑問があり,⑤母系遺伝するミトコンドリ10アDNAについて,その地域的偏在性を考慮に入れていない,というのである。これに対し,検察官は,弁護人の主張にはいずれも理由がなく,①本件におけるポイントは,第1に本件獣毛と被告人が飼っていた猫とのミトコンドリアDNA型の異同,第2にこれが同じであった場合の出現頻度であって,15所論指摘の点は,F教授の原審証言の証拠能力や信用性に全く影響を及ぼさない,②猫のミトコンドリアDNA型に地域的偏在性があることは否定できず,F教授が述べる出現頻度は,決して絶対的なものではないが,原判決も,地域的偏在性があり得ること,F教授のデータが570にすぎないことを前提として判示しており,この点に事実誤認があるとはいえない,と主張する。20イ 当裁判所の判断原判決は,F鑑定に基づくF教授 イのように認定したものであるところ,弁護人は,当審証人G准教授の見解を援用して,上記アのとおり,F教授の判断の信頼性を争うものである。そこで,上記各証拠のほか,F教授の当審証言,当審弁158号証,同160号証,当25審甲21号証,同31号証も踏まえ,検討する。当審弁158号証によれば,F教授による本件獣毛に関する鑑定は,資料のミトコンドリアDNAのチトクロームb遺伝子領域をPCR増幅して,その部分の塩基配列を調べ,猫の毛であると判定し,また,資料のDループ領域のうちのRS2領域をPCR増幅して,その部分の塩基配列を調べ,ミトコンドリアDNA型の判定をし,被告人の飼い猫から採取された毛のミトコ5ンドリアDNA型との異同を調べ,同教授が従来行ってきた調査に基づき,判定したミトコンドリアDNA型の出現頻度を示したものである。このうち,前者の本件獣毛が猫の毛であるとする判定については,弁護人が依拠するG准教授も特に信頼性を争うものではなく,その所論①から⑤までの点を指摘して信頼性が争われているのは,後者のミトコンドリアDNA10型の判定及びその出現頻度に関する点である。そして,弁護人の所論は,F教授の原審証言の証明力に関連するものとはいえるが,以下のとおり,F証言の証拠能力を左右するような主張とはいえない。すなわち,所論①及び②の点は,F教授が平成16年の論文を作成した際15の手法と本件鑑定を行った際の手法が一部異なっていることを指摘するものであるが,F教授の当審証言によれば,F鑑定は,本件獣毛1本という限られた資料のミトコンドリアDNA型の判定を主眼として行われた鑑定であり,手法が一部異なるのは,研究として行われる場合に比べ,条件に制約があることによるものと認められ,合理性のある措置といえ,学術論文の作成では20ない刑事事件の鑑定において,従前の研究における手法と一部異なる手法をとったことが,その証拠能力を失わせることにはならないし,証明力に部分的な影響があるとしても,それを大幅に減殺するものともいえない。また,所論③の点は,G准教授の証言及び当審弁157号証によれば,F教授が鑑定に用いたDループ領域のうちのRS2領域については,いわゆる25ヘテロプラスミー(同一個体の細胞内に,変異したミトコンドリアDNAが混在すること)によって高い頻度で遺伝子配列の変異が認められ,同一の個体においても,毛ごとにDNA型が異なる可能性があるから,同領域の遺伝子配列を分析することによって猫のミトコンドリアDNA型を判定することは危険であり,実際,F教授が検査対象とするRS2領域について,被告人の飼い猫から20本の毛などを採取して検査した結果,約5パーセントに変5異が見られたというのである。そこで検討すると,関係証拠によれば,猫のミトコンドリアDNAにおける塩基配列については,科学者の間で何通りかの方法による研究が行われていて,検査対象とする領域に違いがあるが,F教授による塩基配列の判定手法も,そのうちの一つとして,変異が存在する領域について,多数のサンプ10ルを調査し,同一個体においては安定的と認められる部分の塩基配列を調べるものと認められる。そして,同一個体において,ヘテロプラスミーによって複数のミトコンドリアDNA型が混在するとしても,鑑定資料と対照される資料との間でミトコンドリアDNA型が一致する限りは,両者が同一個体に由来するとしても矛盾がないといえ,少なくとも,そのような判断を行う15限度では,F教授による鑑定手法には定型的な信頼性があるといえる。そして,当審甲158号証によれば,本件獣毛のミトコンドリアDNA型の塩基配列を調べた際,F教授は,同時に,被告人の使用車両内から採取されたと推認される獣毛様のもの20本,被告人方の床から採取したと推認される獣毛様のもの3本及び被告人の飼い猫の毛若干のミトコンドリアDNAの塩基20配列を調べており,その結果,本件獣毛を含む合計24本のうち増幅産物を得られなかった3本を除く21本について,その全ての塩基配列が被告人の飼い猫のミトコンドリアDNAの塩基配列と同一であったと判定されていることが認められる。このような結果が偶然に生じたものとは考え難く,本件獣毛が被告人の飼い猫に由来するとしても矛盾がないという点では,F教授25による鑑定の証明力には疑いがない。したがって,F教授の鑑定手法について,科学的原理の理論的正確性や,現に行われたミトコンドリア型判定の基本的な信頼性に疑いを抱くべき事情は見いだせず,それに基づくF教授の原審証言の証拠能力を争う所論は理由がなく,前記限度での証明力も認められる。次に,所論④の出現頻度の点についてみると,従来,F教授により行われ5てきた猫のミトコンドリアDNA型の分類については,共同研究者はあるものの,それ以外の第三者による追試等が行われている状況はうかがわれず,分類された型の中に,G准教授が指摘するように,同一個体の中でヘテロプラスミーにより塩基配列に変異を生じた型を判定したものも含まれていた可能性もないとはいえない。また,鑑定の時点におけるサンプル調査の数もな10お570頭にとどまる。そうすると,F教授による型分けに基づく出現頻度については,少なくとも現時点においては,刑事裁判の証拠としての証明力を慎重に考えるのが相当と考えられる。さらに,所論⑤の地域的偏在性の点についてみると,そもそも,ミトコンドリアDNAは,母系遺伝するものであるから,母猫の系統を共通にすれば15型が同一になり,対照された資料の塩基配列が同一であることが確認されたとしても,それらが同一の個体に由来するものと判断することはできない。しかも,同一の母系に属する猫が地域的に偏在する可能性も否定できず,被告人の飼い猫は野良猫を拾ったものであったことも踏まえれば,これと同じミトコンドリアDNAの塩基配列を持つ猫が本件事件のあった地域に多数存20在した可能性も否定できない。以上によれば,F教授の原審証言は,遺体から採取された獣毛様のものが猫の毛であり,これが被告人の飼い猫に由来するものとして矛盾しないという限度で証明力を認めるのが相当というべきである。したがって,本件獣毛と被告人の飼い猫のミトコンドリアDNAの塩基配25列が同一であると確認されたことの外,F教授の570頭のサンプル調査の結果に基づくその型の出現確率が0.53パーセントであったことに依拠して,「遺体から採取された獣毛様のものが,被告人の本件当時の飼い猫のものであるとして矛盾がないというに留まらず,これらが一致する確率はその出現確率からみて相当に低く,これが被告人の飼い猫のものである蓋然性は相応に高い」と評価し,ミトコンドリアDNA型の地域的偏在等があるので5本件獣毛が被告人の飼い猫に由来するものとは認められないとしつつも,「被告人の飼い猫のものである蓋然性は相応に高い」とする原判決の判断は,証明力を慎重に評価すべきF教授による型分けに基づく出現頻度に依拠している上,同一のDNA型を有する猫の地域的偏在の可能性を適切に踏まえた判断といえないから,是認することはできず,弁護人の所論は,その限度で10理由がある。遺体の右頸部の損傷についてア 当事者の主張弁護人は,原判決は,原審証人H教授の証言等に基づき,被害者の右耳介の下方に3.5センチメートル間隔で生じている2対の損傷はスタンガンに15よるものであること,この傷が,被告人が本件当時所持していた電極の間隔が3.8センチメートルのスタンガンによって生じたものとして矛盾がないことが認められるとしたが,①スタンガンの電極先端の形状は,球状でなめらかであり,このような電極で表皮剥奪を発生させるためには,相当強い力で被害者の頸部をこすらなければならず,被害者の右頸部に認められる表皮20剥奪がスタンガンによるものであるとするH教授の証言は不自然,不合理であって信用することができず,②原審甲154号証のスタンガンは,被告人方から押収されたスタンガンの箱を手掛かりに,これと同型のスタンガンを購入したというのであり,同号証のスタンガンの電極の間隔が,被告人が本件当時所持していたスタンガンの電極の間隔と同じかどうかは分からない,25と主張する。これに対し,検察官は,①H教授は,遺体の右頸部に認められた損傷について,2つの電極に応じた対となった損傷であること,電極が当たる部分が通電しないことにより白抜けの状態となるという特徴を有していること,その周囲は毛細血管が収縮して血液が染み出ることで皮下出血の発赤が生じることなどから,スタンガンの放電による損傷と判断したものであり,多数の5症例に接して,これに関する論文発表まで行い,内外から意見を求められるなど,高度の知見を有するH教授による証言の信用性には何ら疑問はなく,②被告人が所有していたスタンガンと原審甲154号証のスタンガンとは商品名こそ違え,同種のものであることは明らかである,と主張する。イ 当裁判所の判断10そこで検討すると,原判決が認定したとおり,遺体の右頸部には,いずれも3.5センチメートル間隔の2対の損傷が存在したところ,そのような等間隔の2対の損傷が偶然に形成されたことは通常考え難く,その間隔に相当する突起部分を備えた成傷器が2回患部に当てられて形成された蓋然性が高いと考えられ,スタンガンはそのような突起部分を備えている。そして,ス15タンガンにより形成される傷害について専門的な知識と経験を有すると認められるH教授の原審証言に基づき,その特徴から,上記損傷がスタンガンの電極部分を当てられて通電されたことにより形成されたものと認めた原判決の判断に不合理なところは認められない。さらに,被告人方から押収されたものがスタンガンの箱のみであったこと20を踏まえても,その箱に入っていたスタンガンを被告人が所持していたこと,I警察官が入手した本件証拠物のスタンガンは被告人が所持していたものの商品名を変えたものであることに基づき,遺体の右頸部の損傷が,被告人所有のスタンガンにより形成されたものとして矛盾しないとした原判決の判断に不合理な点はない。25原判決が認定した前記 イ④から⑥までの事実についてア 拉致現場所在の可能性弁護人は,原判決は,被告人が,平成17年12月 1 日午後1時58分頃にレンタルショップであるJに所在したことから,被害者が拉致された時間帯に拉致現場付近まで自動車で行くことが可能な場所にいたとするが,同所に自動車で行くことが可能な場所にいた者は無数に存在することが推測され5るから,上記事実から被告人が本件殺人の犯人であると推認することは誤りである,と主張する。原判決がJの貸出記録から認定した事実は,被告人が,平成17年12月1 日午後1時58分頃にJに所在したことであり,その事実から,被告人が,被害者が拉致された時間帯に拉致現場付近まで自動車で行くことが可能な場10所にいたことを認定し,被告人に犯行の機会があったことを判示するものであり,被告人の犯人性を積極的に推認したものではないから,弁護人の所論は,検察官も主張するとおり,原判決の趣旨を理解しないもので,失当である。イ 不審車両の目撃供述15弁護人は,郵便局員Kは,目撃した自動車の特徴として白い4ドアセダンタイプの自動車とする以上の特徴を述べていないし,被害者と共に下校した女児らも「白色のボロイ車」「車の横が泥で汚れた古い白色のセダン車」を目撃したというだけであるから,以上の事実から,被告人が当時所有していた車両が平成4年式の白いセダン車であったことに基づき,被告人の犯人性20を推認することは不可能である,と主張する。これに対し,検察官は,女児らの目撃供述及びKの目撃供述を合わせ考えれば,白色4ドア自動車の運転者が,被害者を拉致した犯人である可能性は相当に高く,原判決は,その意味で不審車両としているのであるし,その特徴が被告人車両と矛盾しないと判示しているにすぎず,弁護人の主張には理25由がない,とする。この点についても,検察官の主張が正当で,原判決は自動車の同一性を認定して被告人の犯人性を推認するものでなく,弁護人の所論は,原判決の趣旨を正しく理解しないもので,失当である。ウ 拉致現場の土地鑑弁護人は,被告人がC小学校及びD中学校に在籍したのは,せいぜい約155か月間にすぎず,その間も友達と活発に遊び回ることなどを通じて,周辺の土地鑑が養われるような素地はなかったのであるから,拉致現場付近の土地鑑を有していたとする原判決には事実誤認があり,拉致現場付近の土地鑑を有する者は無数に存在するから,被告人に拉致現場の土地鑑があったとして被告人の犯人性を推認することはできないのに,限定的とはいえ推認力を10認めた原判決は,論理則,経験則に照らして不合理である,と主張する。これに対し,検察官は,合計15か月間同じ場所に居住すれば,周囲の地理に明るくなることは当然である上,被告人の供述調書(原審乙55)には,「今回Aちゃんをさらった細い道を含め,あそこら辺の裏道は,ほぼ全部知っていました」などと録取されており,また,原判決は,被告人が拉致現場15に関して土地鑑を有していることは,本件殺人の犯人であることと整合的であるとしているにすぎず,弁護人の主張には理由がない,と主張する。原判決は,被告人の犯人性に関わる間接事実の一つとして,現場付近に1年以上も通学したことのある被告人に拉致現場に対する土地鑑があったことを認定するものであり,しかも,そのことをもって積極的に被告人の犯人性20を推認したものではなく,その判断に論理則,経験則等に照らして不合理な点はない。エ 推定される犯人像との整合性弁護人は,犯人による被害者に対するわいせつ行為の存在を積極的に基礎付ける客観的証拠は一切存在せず,ナイフや猟奇的殺人の動画を所持してい25る人物が,直ちに実際の殺人事件を引き起こす必然性は全く存在せず,これらを所持していたことを本件殺人の犯人性を推認する事実とすること自体が,論理則,経験則に照らして不合理である,と主張する。原判決は,検察官もその旨を述べるとおり,所論指摘の点も踏まえ,本件殺人の犯行から推認される犯人像と被告人が整合的であるとするものであり,被告人の犯人性を積極的に推認しているわけではないから,弁護人の所論は5原判決の趣旨を理解しないもので,失当である。本件手紙についてア 原判決の判断の要旨原判決は,被告人が,本件殺人の取調べが開始された直後に,実母に対して「事件」を起こしたことを謝罪する本件手紙を送っていることを認定し,10留置担当警察官に書き直しを命じられ,言われるままに記載したために手紙の内容が支離滅裂となったとする被告人の弁解は,不自然・不合理であって信用できないとした上,「その記載内容をみても,被告人が公判廷で述べるような,商標法違反事件について,あるいは,やってもいない本件殺人の自白調書に署名してしまったことについて,実母に謝罪する趣旨の内容である15と読み取ることは困難である一方,これが本件殺人を自ら引き起こしたことを謝罪する内容であるとすれば,その発出時期や記載内容とも整合的であるといえる」とする。しかし,これに引き続き,原判決は,「しかしながら,手紙の記載内容のみからでは,「事件」が何を指すのかは必ずしも明白とはいえないから,被20告人が本件殺人を自認するものと断定することはできず,この手紙の存在のみでは,被告人の犯人性を直接的に基礎付ける事情とはなり得ない」として,本件手紙の存在を「犯人が被告人であることと整合的と評価できる事情」の一つにとどめている。イ 当事者の主張25弁護人は,事件後の被告人の言動は,多義的な解釈の余地があるのが通常であり,その推認力は慎重に判断されなければならない,とした上,原判決の上記ア前段について,多義的な解釈が可能であるにもかかわらず,特段の理由も示さずに,判断者の主観で一方的に決めつけ,有罪方向への推認力のみを働かせている,と論難する。これに対し,検察官は,原判決の上記ア後段及びこれを援用する弁護人の5主張に対し,本件手紙における「事件」が本件殺人を意味することは,手紙の文面自体からでも,ほぼ確定的に読み取ることができ,そのことは,Y検察官の証言等により裏付けられている,と主張する。ウ 当裁判所の判断原判決が,前記ア前段のように判断しながら,同後段で「本件手紙の10記載内容のみからでは,「事件」が何を指すのかは必ずしも明白とはいえない」と評価した理由は判然としないが,本件手紙が持ち得る証拠価値に照らせば,その内容が真に犯行を自認するものといえるかどうかを慎重に検討しようとすること自体は正当である。しかし,本件手紙について問題となるのは,その作成により,被告人が,本件殺人の犯行を行ったことを母親に謝罪15したと認められるかどうかであり,本件手紙を受け取った母親やそれを読む第三者が,その記載内容のみによって,「事件」の趣旨が本件殺人を意味すると理解できるかどうかではない。そして,手紙の文言の意味について,その記載内容に加え,作成当時の状況等も併せて解釈することが,文言の客観的な解釈に反するわけではない。したがって,本件手紙にいう「事件」が本20件殺人を指すものかどうかについて,原判決のように,「手紙の記載内容のみから」判断しようとすることに合理的な理由はないというべきである。そこで,以上のような観点から,本件手紙の趣旨を検討すると,本件手紙には冒頭で「こんなに親不孝な息子でごめんなさい」などとする謝罪文言に続き「中に入っている間,今回でその間がもしばれなかったら,うまれ25かわろうと思ってたげと(「けど」の誤記と思われる。)……ておくれ……今まで,本当のちゃんとした親孝行をしてこなかったことを,今ははけしく(「はげしく」の誤記と思われる。)後悔しています」と記載され,次の段落に,自分がちゃんと働き始めれば,偽ブランドの販売などしなくてよかったとして謝罪した後,「今回,自分で引き起こした事件,お母さんや,みんなに,めいわくをかけてしまい,本当にごめんなさい,僕がした事は,世間5やマスコミなどは,お母さんの育て方が悪いとかいうと思うげと(「けど」の誤記),でも,お母さんは何一つ悪くありません,お母さんは,しっかりと,僕を育てました,僕が自分の意思で,自分で,まちがった選択をしてしまったのです」などと記載されている。このうち,前段の記載については,被告人が,商標法違反で起訴された当10日である平成26年2月18日の午前中に,Y検察官から本件殺人につき取調べを受け,その犯人であることを認める簡略な供述調書(当審弁17)の作成に応じたことに符合しており,その趣旨は,上記事件で勾留中に本件殺人について発覚しなかったら,生まれ変わろうと思っていたが,もはや手遅れであるという趣旨と認められる。また,後段の記載のうち「今回,自分で15引き起こした事件」という文言は,「自分で引き起こした」という以上,母親と共同で行った商標法違反事件を指すとは考えられず,「僕が自分の意思で,自分で,まちがった選択をしてしまった」と記載されていることからしても,自分が単独で行った事件を指すものと理解され,しかも,被告人がそれを行ったことについて,世間やマスコミなどが,母親の育て方が悪いと言20うと思うというのであるから,それだけ重大な事件であるということになり,前段の記載と併せ,本件殺人を指すものと読むのが合理的であり,関係証拠上,他に被告人が起こした事件として想定し得るものはない。そして,最後の段落は「こんな親不孝な息子で本当にごめんなさい,もう,息子じゃないと思われてもかまいません,あんな事をしてしまって,本当に25ごめんなさい,こんな親不孝な息子でも,お母さんの残りの人生を大事に過ごしてほしいです,お体をお大事に」と結ばれている。この記載は,それ以前の記載内容と併せれば,本件殺人を犯すという親不孝をし,その罪の重さにより将来にわたって親孝行をする機会がなくなったなどという気持ちから,母親に謝罪するものと理解することができる。しかも,Y検察官の原審証言によれば,被告人は,同月21日の取調べに5おいて,被告人が本件殺人の犯人であることが公になれば,マスコミに報道されるなどして,姉や母に大きな迷惑が掛かることが気になるので,姉と面会して大変なことをしたことを告げた後でなければ供述することができない旨を説明したことが認められ,そのような時期に作成された本件手紙が,同月24日に被告人と接見した姉を介して母親に渡されたものである。10上記被告人の言動やその後の経過は,本件手紙の趣旨を前記のように理解することと極めてよく整合するものである。そして,本件手紙において「事件」の内容が具体的に記述されていないことは,商標法違反事件で共同被告人となっている母親宛ての手紙であることや,被告人自身としても具体的に記述しづらいことなどによるものと合理的15に考えることができる。以上によれば,本件手紙にいう「事件」が本件殺人を意味するものであることは明らかであって,弁護人が主張するように,多義的な解釈の余地があるなどとは到底いえない。すなわち,本件手紙の趣旨は,本件殺人について取調べを受けて犯行を自認し,供述調書(当審弁17)の作成に応じた被告20人が,さらに供述を求められる中で,自分が殺害犯人であることが公になれば,母親らに大きな迷惑が掛かるので,その前に本件殺人を犯したことを謝罪したいと考えて作成したものと認められる。これに対し,弁護人は,本件手紙において被告人が謝罪しているのは,それまで働いていなかったことと,Y検察官の取調べの際,やっていない殺25人の事実を認める供述調書(当審弁17)に署名をしてしまったことであると主張する。そして,最初,自分の言葉で謝罪の手紙を書いたが,看守に事件のことが詳しく書いてあるからこの内容ではだめだといわれ,マジックペンで黒塗りにされてしまい,書き直しを命じられた,内容が分からなくなってしまったと看守に訴えると,看守から手伝ってあげるから書きなさいよと言われ,言われるがまま文章を書いていったもので,そのために内容が支離5滅裂になった旨をいう被告人の原審及び当審における公判供述には信用性があるという。しかし,本件手紙は,前記のように,文面そのものからして,その趣旨を理解することに困難はなく,支離滅裂な内容とはいい難いのであって,前記2月21日のY検察官による取調べの際の被告人の言動等とも10極めて整合的な内容として理解できるものである。また,被告人が働いていなかったことを謝罪する箇所は確かにあるが,それは,働いていれば偽ブランド品を売る必要もなく,「今の情況にはならなかったと思う」ということ,すなわち商標法違反事件で検挙され,その中で本件殺人について追及されることもなかったという文脈で無理なく理解することができる。そして,働い15ていなかったことの謝罪とは別に,被告人が,「今回,自分で引き起こした事件」について,母親に謝罪していることは前記のとおり明らかであって,その文言や「僕が自分の意思で,自分で,まちがった選択をしてしまった」という文面から,被告人が働かなかったことや,当審弁17号証に署名,指印したことを謝罪する趣旨を読み取ることは困難である。さらに「中に入っ20ている間,今回でその間がもしばれなかったら,うまれかわろうと思ってたけど……ておくれ」という記載の趣旨について,前記所論とつじつまの合う説明は全くされていないし,「あんな事をしてしまって,本当にごめんなさい,こんな親不孝な息子でも,お母さんの残りの人生を大事に過ごしてほしいです,お体をお大事に」という締めくくりの文言についても,殺害行為そ25のものでなく,上記供述調書に署名,指印してしまったことをいうものとする弁護人の主張は明らかに不合理である。また,本件手紙が弁護人の主張するような理由で書かれたものとすれば,供述調書に署名するに至った事情を説明し,真実は犯行を行っていない旨を伝えるのが通常と考えられるが,本件手紙には,それらのことをうかがわせる記述は一切存在しない。被告人は,当初書いた手紙が黒塗りにされ,内容が分からなくなり,看守に言われるが5まま文章を書いた旨をいうのであるが,母親に伝えるべき重要な事柄を記載したはずの手紙について,黒塗りにされて書くべき内容が分からなくなって,看守の言うとおりの内容を書いたというのは,それ自体が著しく不合理である。さらに,仮にそのような状況で作成され,記載内容が本来の趣旨と変わってしまったのであれば,手紙を母親に渡す意味はなくなったはずであるが,10それにもかかわらず,作成した本件手紙を接見した姉に託して母親に渡したことも不合理といわざるを得ない。また,弁護人は,今市警察署留置管理係長であった原審証人Lは,原審公判において,本件手紙の発信を検査する際に,国家公安規則や栃木県警察留置管理規程に従い捜査主任官の意見を聴取しなければならないのに,それら15の規程は知らず,捜査主任官に対する意見聴取をせずに発信の是非を判断したと証言しており,これは,捜査主任官から,信書の発受の当否に関する意見を超えた指示又は要望を受けたため,それを隠す目的で不自然,不合理な証言をしたと考えられるという。しかし,L証人の供述内容に留置管理業務に関する規程に反するところが20あったとしても,そのことが記載内容を指示した事実はないとする供述部分の信用性に疑いを抱かせるものとはいえず,所論は牽強付会というほかない。前記のとおり,本件手紙の内容は,その作成前における被告人の言動等と整合的であり,捜査主任官が,そのような内容の手紙を被告人に書かせることによってねつ造するということも非現実的である。25なお,被告人は,当審において行われた被告人質問で,本件手紙を作成した直前におけるM警察官の取調べで被害者に対する謝罪文言を繰り返し言わされたことにより,自分が犯人であるような気持ちになった旨を供述し,弁護人は,そのために本件手紙の記載が本件殺人を行ったようなものになった旨を,当審の弁論において主張している。しかし,そうであれば,本件殺人の犯人であることを告白し,その親不孝を謝罪する気持ちで本件手紙を書い5たということになるはずであるが,原審において,そのような供述や主張は一切されておらず,以上のとおり検討してきた従前の主張と両立し得ない新たな主張であって,採用する余地はない。以上のとおり,本件手紙にいう「事件」が本件殺人を指すことは明白であるにもかかわらず,手紙の記載内容のみからは「事件」の趣旨が必ずし10も明らかとはいえないとして,「この手紙の存在のみでは,被告人の犯人性を直接的に基礎付ける事情とはなり得ない」とした原判決の判断は,その前提及び内容において不合理であって,是認することはできない。そして,被告人が自主的に作成した母親宛の手紙であることや,その後本件自白供述が行われるまでに長期間が経過していること等を踏まえれば,本15件手紙には,本件自白供述とは独立した証拠価値があるというべきである。すなわち,前記のとおり,商標法違反の容疑で勾留中,その起訴がされる直前に,Y検察官によって,本件殺人に関する取調べが初めて行われ,犯行を自認する供述調書(当審弁17)が作成されたことが契機となってはいるものの,本件手紙は,その後,被告人が自らの意思によって作成したものと認20められる。被告人が,取調官によって,本件手紙を書くように強いられ,あるいは,その偽計等により書かされたというような状況はうかがえない。また,被告人は,本件手紙の作成後,本件殺人について,商標法違反による起訴後の勾留中に1か月以上にわたる取調べを受けているが,その間,殺害の事実やその態様等につき供述することを基本的に拒んでおり,その後,本件25殺人に関する取調べが中断された約50日間を挟んで,本件殺人の容疑で逮捕,勾留された後に本件自白供述をするまでには,本件手紙の作成から3か月以上が経過しているものである。結局,本件手紙は,被告人がその意思に基づき作成したものであることに疑いがなく,犯人でないにもかかわらず,母親に対し,本件殺人を犯したことを謝罪するということは通常はあり得ないものと考えられ,何らかの例外5的な事情があったこともうかがえないから,被告人が殺害犯人でないとすれば,被告人が本件手紙を作成したことを合理的に説明することは困難である。間接事実の総合評価による判断弁護人は,以上の間接事実を個別に分析しても,そのどれもが被告人の犯人性に対する推認力を有しないか,極めて微弱な推認力しか有しないものば10かりであり,これらを積み重ねて複合的に評価しても,推認力は認められないにもかかわらず,客観的証拠からみても,被告人が本件殺人の犯人である蓋然性は相当に高いとする原判決には,重大な事実誤認があると主張する。しかし,前記のとおり,被告人が日常的に通行するとは認められない経路を深夜から未明の時間帯に走行していること,しかも,その通行が,日時及15び場所のいずれの点でも,事件のあった頃に,当時の被告人方と遺体発見現場との間を往復し,その間に遺体をその発見現場に遺棄したことと矛盾することなく整合するものであることは,被告人の犯人性を相当程度推認させるものといえる。また,被害者が平成17年12月1日の下校中に失踪した際に付近で目撃された古い白色セダン車が当時の被告人車両と似ており,その20運転者であった若い感じの男と被告人とは特徴が矛盾しないことと,拉致行為が行われた時刻の前に被告人が所在していた場所からして,被告人が被害者の失踪した時点にその場所に自動車を運転して赴くことが可能であったこととを併せれば,被告人が拉致行為を行った可能性が相応に推認される。さらに,遺体から採取された獣毛が被告人の当時の飼い猫に由来するものとし25て矛盾しないことは,被告人が被害者を当時の被告人方に連行した可能性を示し,被告人には,拉致現場及び遺体発見現場付近に土地鑑があることは,拉致行為及び遺体の遺棄行為が被告人によるものと推認しても不合理でないことを示し,遺体の頸部に当時被告人が所持していたスタンガンの電極を当てたことによって形成されたとして矛盾のない傷があることは,被告人が本件の際にスタンガンを被害者の頸部に当てた可能性を示し,当時7歳であっ5た被害者の胸部を10回以上にわたりナイフ様の刃物で突き刺して殺害したという犯行態様は,児童ポルノ画像や猟奇的殺人の動画に興味を持ち,ナイフを収集していた被告人によるものとして特に違和感を覚えさせるところはないものである。そして,弁護人の指摘する,本件粘着テープ等の鑑定により判定されたDNA型の点については次に検討するとして,その点を除けば,10以上の間接事実に基づいて,被告人が殺害犯人であると推認することと矛盾し,あるいはその推認に疑いを生じさせる事情に関する主張や証拠は存在しない。このように,事件当時の被告人車両の通行記録という,被告人の犯人性を相当程度推認させる間接事実が存在し,他にも,被告人が犯人である可能性を示し,あるいはこれと矛盾しない多数の間接事実が存在し,かつ,こ15れらの事実が相互に独立したものであって,反対に被告人を犯人とすることに疑いを生じさせる事情が見当たらないことは,被告人が犯人である蓋然性が相当に高いことを示すものといえる。以上のとおり,情況証拠によって認められる間接事実を総合すると殺害犯人である蓋然性が相当に高いと認められる被告人が,本件殺人の取調べを受20けるようになった直後の時期に,本件殺人を行ったことを母親に謝罪する本件手紙を作成したことは,被告人が殺害犯人でないとすれば,合理的に説明することは極めて困難というべきである。したがって,本件粘着テープ等の鑑定により検出されたDNA型の点で,被告人を殺害犯人とすることに合理的な疑いを生じることがない限り,殺害25犯人と被告人との同一性が認められる。そこで,次に,本件粘着テープ等から判定されたDNA型について検討し,被告人を犯人と認定することに合理的な疑いがあるかどうかにつき判断する。3 本件粘着テープ等から検出されたDNA型に関する所論について本件粘着テープに関するDNA型鑑定についてア 原判決の要旨等について5原判決は,本件粘着テープにつき栃木県警察本部刑事部科学捜査研究所で行われたDNA型鑑定,すなわち鑑定人Nによる第1回鑑定,鑑定人Oによる第2回,第3回鑑定(原審職14,16,18。以下,3件の鑑定を合わせて「粘着テープ鑑定」という。)のうち,第2回,第3回鑑定では,本件粘着テープから被害者のDNA型とは一致しない複数のDNA型が検出され10ていることについて,「これらは,いずれも鑑定人N及び同Oに由来するDNA型として十分に説明が可能なものであり,鑑定を実施する過程で鑑定人に由来する細胞組織が資料に混入した蓋然性が高いものと認められる」とした上,第2回鑑定で検出された鑑定人N及び被害者のいずれにも一致しないDNA型は真犯人に由来する可能性が高い,などとする原審弁護人の主張を,15次のとおり判示して排斥した。すなわち,原判決は,第2回鑑定において検出された被害者及び鑑定人Nのものとしては説明できない2つの型は,被告人に由来するものとしては説明できないが,鑑定人Oに由来するものとして矛盾はなく,そもそも検出されたDNA型が一部の座位にとどまり,2座位でそれぞれ1つの型が検出さ20れたにとどまるものであることからすれば,第三者の細胞組織が混入した可能性も厳密には排除はできないものの,これが殺害犯人に由来するものである蓋然性が高いと判断することもできないとした。原判決の上記判断に,論理則,経験則等に照らして不合理なところはなく,この結論は,当審における事実取調べの結果を踏まえても,左右されない。25イ 当事者の主張弁護人は,原判決後に証拠開示を受けた,粘着テープ鑑定の際に作成されたエレクトロフェログラムを精査すると,同鑑定において型判定されたもの以外のDNA型(アリル)を読み取ることができ,それは真犯人に由来するものである可能性が高い,と主張する。これに対し,検察官は,本件粘着テープは,不特定多数人とのコンタミネ5ーションを起こしている可能性があるので,粘着テープ鑑定のエレクトロフェログラムに現れているアリルには,犯人以外のものも含まれている可能性が高く,その鑑定結果は,被告人の犯人性の積極的な証拠にもならなければ,消極的な証拠にもなり得ない,と主張する。ウ 当裁判所の判断10そこで検討すると,当審で取り調べた関係証拠によれば,粘着テープ鑑定の際に作成されたエレクトロフェログラムには,検出限界値を150RFU以上とし,同一の型が複数回検出されることを条件とする同鑑定で型判定されたもの以外にも,型判定の基準を満たさないピークを示す箇所が幾つか存在することが認められる。しかし,次に述べるように,上記ピークが殺15害犯人に由来する可能性が高いとする弁護人の主張には理由がない。本件粘着テープが遺体の後頭部に付着した状態で発見されていることや,粘着テープを貼った痕跡として矛盾しないものが遺体の顔面等に認められることからすれば,本件粘着テープは,殺害犯人が犯行の際に使用した粘着テープの一部が遺留されたものである蓋然性が高いと考えられる。しかし,20犯行の際に犯人が遺留した蓋然性が高い資料であることと,その資料から犯人の細胞組織が検出されるはずであると考えることの間には飛躍がある。すなわち,遺体の表面を拭うなどして採取された資料等に関するミトコンドリアDNA型鑑定に関する箇所で後に詳述するとおり,DNA型鑑定は,犯行現場等で採取された資料から検出されたDNA型と容疑者のDNA型の異同25を判定するものであるが,上記資料が犯人に由来するものであるかどうかについては,何ら証明力を持たないものである。したがって,DNA型鑑定の資料が犯人に由来するものであることは,当該鑑定以外の証拠により判断する必要がある。例えば,被害者の身体や衣服から採取された精液又は血液で,かつ,そのDNA型が被害者のものと一致しない資料のように,その性質,遺留状況等から,犯人の遺留した細胞組織である蓋然性が高いと認められる5資料の場合には,そのことによって,検出されるDNA型は犯人に由来するものと推認される。しかしながら,本件粘着テープの場合には,そもそも,その表面に殺害犯人の細胞組織が付着していたかどうかが問題となるものであって,次に判示するとおり,その蓋然性が高いとは認められない。しかも,後述のように粘着テープ鑑定が行われる以前にコンタミネーションが生じて10いた可能性が高いから,その資料からは,被害者及び鑑定人以外には,殺害犯人に由来するDNA型しか検出されないはずであると考える合理的な理由もない。したがって,被害者又は鑑定人のものと一致しない型判定基準外のDNA型が,殺害犯人に由来するものである蓋然性が高いとはいえない。そもそも,関係証拠によれば,粘着テープ鑑定の資料にDNA型の判定が15可能な状態で殺害犯人の細胞組織が付着していた蓋然性が高いとはいえない。すなわち,上記付着があったといえるためには,①殺害犯人が,手袋をしない状態で本件粘着テープに触れるなどし,②そのことにより,殺害犯人の手指等の細胞組織が本件テープの表面に付着し,③それが,粘着テープ鑑定の資料に,DNA型の判定が可能な状態で残されていた,という条件がいずれ20も満たされなければならない。しかし,上記①の条件については,関係証拠上,殺害犯人が粘着テープを使用した際に手袋を使用していなかったかどうかは不明である上,本件粘着テープが遺体の後頭部に付着した状態で遺留された機序も不明であり,使用した粘着テープのうちの本件粘着テープの箇所に殺害犯人の手指等が直接触25れた蓋然性が高いと考える合理的な理由はない。しかも,当審証人Pの証言によれば,遺体が発見された日の翌日である平成17年12月3日,茨城県警察鑑識課において,本件粘着テープを資料として,特に粘着面に留意して指紋検出を試みたが,指紋検出には至らなかったことが認められる。これは,殺害犯人が本件粘着テープに指紋を残すような態様で触れてはいなかったことを示すものということができ,手指等の接触がそのようなものであれば,5接触したとしても,細胞組織が付着した蓋然性が高いとはいえない。前記②の条件については,当審証人Q医師の証言によれば,痴漢事件に関する研究として,手の接触により細胞組織が接触先に付着するかどうか実験したところ,細胞組織が付着する可能性には個人差が大きく,軽い接触でも付着する者と,強く接触しても全く付着しない者があるということである。10そうすると,手指等を触れることにより接触先に細胞組織が付着するのが通常であるとはいえず,指紋検出ができなかったことに照らしても,殺害犯人が本件粘着テープに手指等を直接触れたとしても,その細胞組織が本件粘着テープに付着した蓋然性が高いと考えることは合理的といえない。以上の①②の各条件が満たされたと仮定しても,本件においては,さらに15前記③の条件も問題になる。すなわち,前記P証言によれば,平成17年12月3日に行われた指紋検出の際には,その手法としてエマルゲンブラック法が採用され,その検出作業において,水道水,四三酸化鉄及びエマルゲンという化学物質を入れた容器に資料を浸し,刷毛で拭って四三酸化鉄を付着させるなどの作業が何度か繰り返されたことが認められる。そうすると,仮20に,本件粘着テープが遺体から採取された時点では犯人の細胞組織が付着していたとしても,上記指紋検出の作業の過程で型判定不能となり,その状態で粘着テープ鑑定が行われた可能性も否定できない。以上の3つの条件がいずれも満たされ,粘着テープ鑑定の資料に殺害犯人の細胞組織が型判定の可能な状態で付着していた蓋然性は,相当に低いもの25と考えられる。加えて,前記P証言によれば,本件粘着テープからの指紋検出の作業をした際,DNA型鑑定を想定してコンタミネーションを防止する措置が取られていなかったというのである。弁護人は,DNA型鑑定が当時から一般的な捜査手法であったことに照らせば,その証言は信用できないなどというが,捜査は常に遺漏なく行われるものと考える合理的な理由はなく,P証人の供5述の信用性に疑いがあるとはいえない。そうすると,それまで繰り返し使用されていた器具等に付着していたDNAやその断片が,指紋検出作業の際に本件粘着テープに付着した可能性が認められ,それらがエレクトロフェログラムで確認されたアリルであるとして不合理なところはなく,本件粘着テープから検出された被害者又は鑑定人に由来すると認められるもの以外のDN10A型は,殺害犯人に由来する蓋然性が高いものと推認することはできない。エ 以上のとおり,粘着テープ鑑定により判定された各DNA型は,被害者及び鑑定人に由来するものとして矛盾せず,殺害犯人に由来する蓋然性が高いとはいえないとする原判決の判断に不合理なところはなく,また,その際に作成されたエレクトロフェログラムに現れた型判定基準外のピークにつ15いても,それが殺害犯人に由来するDNA型を示す蓋然性が高いと考える合理的な理由は見いだせず,被告人を殺害犯人と推認することに合理的な疑いは生じないから,その旨をいう弁護人の所論は失当である。遺体の表面を拭うなどして採取された資料等に関するミトコンドリアDNA型鑑定について20ア 当事者の主張弁護人は,蒸留水を含ませたガーゼで遺体の表面を拭うなどして採取された多数の資料につき警察からR教授に委嘱して行われた4件のミトコンドリアDNA型の鑑定(当審弁166,167,168,176。以下,4件の鑑定を合わせて「R鑑定」という。)によれば,被告人,被害者,捜査関係25者以外の,第三者のミトコンドリアDNA型が検出されており,それは真犯人に由来するものである可能性が極めて高いと考えられる,と主張する。これに対し,検察官は,R鑑定について,その資料から検出されたミトコンドリアDNA型は,被害者が,本件被害に遭う前に接触するなどした人物や,捜査関係者の細胞組織に由来する可能性があり,それが犯人のものであるとするのは早計である,そもそも,ある人物が他人の皮膚に触れた場合に,5必ずしもその体表にDNAが付着するわけではなく,その部分に付着したとしても,別人のDNAが大量に付着すれば,検出されるのは後者のDNA型となるのであり,弁護人の所論は理由がない,と主張する。イ 当裁判所の判断ミトコンドリアDNAは母系遺伝するものであるから,その点を踏ま10えつつ検討すると,犯人と容疑者の同一性の立証において,DNA型鑑定が果たす役割は,遺体や犯行現場等から採取された資料(以下「現場資料」という。)と容疑者による資料とのDNA型の異同を判定することである。その結果,現場資料と容疑者による資料の型が一致する場合(一致事案)と現場資料と容疑者による資料の型が一致しない場合(矛盾事案)に分かれる。15そして,現場資料が犯行の際に犯人の遺留したものと認められる場合,ミトコンドリアDNA型鑑定における一致事案では,現場資料が容疑者に由来するものとしても矛盾しないと認められ,矛盾事案では,現場資料は容疑者に由来するものでなく,容疑者は犯人でないと認められることになる。しかし,以上は,関係証拠により現場資料が犯行の際に犯人の遺留したも20のと認められることが前提であり,その前提について,DNA型鑑定そのものは,何ら証明力を有しない。現場資料が犯行時に犯人の遺留したものであるかどうかが不明である限り,一致事案,矛盾事案のいずれにおいても,容疑者の犯人性について,DNA型鑑定は積極,消極のいずれの方向にも証明力を有しない。25例えば,現場資料が,被害者の身体や着衣に付着した精液や血液で,そのDNA型が被害者のみならず,容疑者とも一致しないことにより,容疑者は犯人でないと認められる場合があるが,それは,その性質及び遺留状況等に照らし,現場資料が犯行時に犯人により遺留されたものである蓋然性が高いと認められるからである。したがって,本件のように,他の情況証拠によって犯人と被告人との同一5性が推認される事案において,現場資料と被告人とのDNA型が一致しないからといって,その事実だけで,被告人を犯人と認めることに疑いを生じることにはならない。このような場合,現場資料が犯行の際に犯人が遺留したものである蓋然性が,被告人を犯人と認めることに合理的な疑いを生じさせる程度に高ければ,被告人を有罪とすることはできないことになる。10結論として,R鑑定により検出された被害者や捜査関係者等と型の一致しないミトコンドリアDNA型が真犯人に由来するものである可能性が極めて高いとする弁護人の主張には理由がなく,R鑑定の資料に本件犯行の際に犯人が遺留したものが含まれている蓋然性は,被告人を殺害犯人と認めることに合理的な疑いを生じさせる程度に高いとはいえない。15そのように判断する理由は,以下のとおりである。本件遺体の創傷等に関する関係証拠から推定される殺害行為の態様は,被害者の胸部をナイフ様のもので多数回突き刺すというもので,その間,被害者が抵抗するなどした様子はうかがえず,そのような犯行態様から,殺害犯人の細胞組織が被害者やその遺体の体表に付着する蓋然性が高いと考える20ことはできない。また,遺体の後頭部には本件粘着テープが付着しており,その顔や腕などに粘着テープを巻いた跡として矛盾しない痕跡が認められることから,殺害犯人は,犯行の際に,被害者の身体に粘着テープを巻いた蓋然性が高いと考えられるが,そのような行為の際に,殺害犯人の細胞組織が被害者の身体に付着する可能性がないとはいえないとしても,その蓋然性が25高いとはいえない。R鑑定は,遺体の表面を拭うなどして採取された資料に基づき,ミトコンドリアDNA型の判定を行ったものであるところ,一つの細胞内には数百個のミトコンドリアが存在し,それぞれに数個のDNAがあるため,一つの細胞の核内に1個のみ存在する核DNAを用いる場合よりも,はるかに少量の細胞組織でDNA型の判定が可能であり,理論上は,1個の細胞組織か5らでも,増幅により,ミトコンドリアDNA型の判定は可能とされる。R鑑定においては,資料とされた6本の毛髪様のもののうち2本につき鑑定が不能であったほか,遺体の前頸部及び後頸部から採取した微物2点及び遺体の様々な箇所を拭ったガーゼ片等の鑑定資料合計48点のうち,29点はPCR増幅が不可能,1点は解析が不可能であった。R教授は,その原因10は,量的に分析可能なDNA量が抽出できなかったことによるものと考えられるとしている。このように,R鑑定における鑑定資料のうちミトコンドリアDNA型を判定することができたのは一部にとどまることは,型判定が可能であったものを含め,各資料に含まれる細胞がかなり微量であったことを示すものと考えられる。15そして,R鑑定の資料については,犯人に由来するミトコンドリアDNA型が検出されたものと推認する根拠が,粘着テープ鑑定の資料以上に希薄であるといえる。すなわち,既に判示したように,本件粘着テープについては,遺体の後頭部に付着していたという発見状況や殺害犯人が粘着テープを使用した蓋然性20が高いことにより,それが犯行の際に犯人の使用した粘着テープの一部が遺留されたものである蓋然性が高いと考えられるから,粘着テープ鑑定の資料と殺害犯人とを結び付ける事情が認められる。しかし,R鑑定の場合には,水を含んだガーゼ等で遺体の体表を拭うなどして採取したものが資料とされたにすぎないから,それらの資料と殺害犯人との結び付きを認めることにつ25き,その基礎となる事情は認められない。現場資料が,被害者の身体や着衣に付着した精液や血液であるような場合とは,根本的に事情を異にする。そして,R鑑定の資料から検出された単独のミトコンドリアDNA型のうち4種類が被害者の型と異なるが,さらに9個の資料から複数のミトコンドリアDNAが混在して検出されていて,これらの混在型の中には,単独で検出された型には含まれない変異も含まれている。そうすると,R鑑定の資料から5判定されたミトコンドリアDNA型には,被害者以外の者に由来するものが多数含まれていたことが明らかである。これは,既に述べたように,わずかな量の細胞組織からでもミトコンドリアDNA型の判定が可能なことが関係しているものと思われる。すなわち,R鑑定の資料で型判定されたミトコンドリアDNAは,①被害10者に対し,その生前に接触した者,②遺体の遺棄行為を行った者,③遺体の発見,収容,移送などに関与した者,④遺体からR鑑定の資料を採取した者,⑤採取されたR鑑定の資料を扱った者のいずれかに由来する可能性があるものと考えられる。このうち②の遺棄行為を行った者は殺害犯人と同一である蓋然性が非常に高いが,③から⑤までは殺害犯人以外の者である。また,①15の被害者に生前に接触した者には,殺害犯人も含まれるが,前記のような殺害行為の態様等に照らし,検出されたミトコンドリアDNA型が,殺害犯人に由来する蓋然性が,それ以外の被害者に生前に接触した第三者に由来する蓋然性を大きく超えるものと考えるべき合理的な根拠は見いだせない。結局,R鑑定により検出されたミトコンドリアDNA型は,上記①から⑤のいずれ20に由来するものであるか明らかでなく,鑑定資料の中に,殺害犯人に由来する細胞組織が存在した蓋然性が高いということはできない。これに対し,弁護人は,R鑑定により単独で検出された,被害者の型と一致しない4種類のミトコンドリアDNA型のうち,これらと型の一致する捜査員の存在が確認されていない2つの型のいずれか,とりわけ遺体の2箇所25で採取された資料から検出されたものは,殺害犯人に由来する蓋然性が高い旨の主張をする。しかし,そもそも,前記のとおり,本件で想定される犯行態様や鑑定資料の性質及び遺留状況などから,殺害犯人が遺体に細胞組織を遺留した蓋然性が高いと考える合理的な根拠は見いだせないのであるから,弁護人の主張する型のミトコンドリアDNAを遺留した者が殺害犯人である蓋然性が高いと考えるのは,単なる憶測にすぎないというべきである。5以上のとおり,R鑑定で検出された幾つかのミトコンドリアDNA型の中に,殺害犯人に由来するものが含まれている可能性も否定することはできないが,それらは全て殺害犯人以外の者に由来するという可能性も十分にあるのであって,殺害犯人に由来するものが含まれている蓋然性が,被告人を犯人とすることに合理的な疑いを生じさせる程度に高いとはいえない。10結局,R鑑定の結果として検出されたミトコンドリアDNA型に殺害犯人に由来するものが含まれる蓋然性が高いと考える合理的な理由はなく,被告人のミトコンドリアDNA型が検出されていないことを含め,同鑑定の結果は,被告人が殺害犯人であると推認することに合理的な疑いを生じさせるものではないから,その旨をいう弁護人の所論は失当である。154 本件各供述調書(原審乙55から58まで)の証拠能力に関する判断について以上のとおり,本件においては,情況証拠から認められる間接事実を総合すれば,殺害犯人と被告人との同一性が認められ,粘着テープ等のDNA型鑑定の結果は,この認定に合理的な疑いを生じさせるものではなく,他に上20記認定に合理的な疑いを生じさせる事情もない。そして,既に判示したとおり,本件の殺害行為は,被害者の拉致からその遺体の発見までの間に,栃木県内,茨城県内又はそれらの周辺で行われたものと推認されるところ,上記認定に基づき,被告人が殺害犯人であることを前提にすれば,被告人車両が,j町内の前記第2地点を宇都宮市方面に向け25て12月2日午前6時12分に通過していることに照らし,被告人は,同日午前4時頃には遺体発見現場を離れたものと推認されるから,被害者の殺害は同時刻頃以前に行われたものと推認される。しかし,本件各供述調書以外の証拠の中に,それ以上に,殺害行為の日時,場所を示すものはないから,同供述調書に基づき公訴事実と同旨の犯罪事実を認定した原判決の当否を審査するためには,その証拠能力及び信用性を検5討する必要がある。そこで,次に,本件各供述調書の証拠能力及び信用性に関する原判決の判断について,順次検討する。本件各供述調書の証拠能力に関する原判決の判断の要旨等ア 被告人は,平成26年2月18日(以下,本項において,年は同じで10ある。)に商標法違反(所持)の事実で起訴され,同日から本件殺人につき取調べを受けるようになり,これが4月9日まで継続されたが,同月10日以降6月3日に本件殺人の容疑で逮捕されるまでは,その取調べは中断され,同容疑で勾留中の同月20日から同月22日までにZ検察官の取調べにより本件各供述調書が作成され,原裁判所においては,それらの証拠能力が争わ15れた。原判決は,本件各供述調書の証拠能力に関する原審弁護人の主張について,「弁護人は,殺人罪で逮捕される前の任意の取調べには種々の違法があり,こうした違法がZ検察官の取調べにも影響を与え,被告人に虚偽の自白をさせたことから,Z検察官に対する自白供述には任意性が認められないと主張20する」と整理した上で,要旨,以下のように判断した。商標法違反(所持)の嫌疑は,起訴相当の事案であり,逮捕,勾留の理由及び必要性があったと認められ,起訴当日を除いて本件殺人の取調べは行われていない点でも,商標法違反(所持)による逮捕は,本件殺人の取調べを目的とした別件逮捕とはいえない。25起訴後勾留中に余罪の取調べを行うことも,任意取調べの範囲にとど受忍義務がないことなどに配慮しつつ行われており,任意取調べの限界を超えるものとはいえない。被告人が本件殺人で逮捕,勾留される前に本件殺人に関する取調べを受けた期間が多少長期化したのは,取調べにおける被告人の曖昧な供述態度5によるところが大きく,4月10日から6月2日までの間の身柄拘束については,商標法違反(所持)の公判手続が進行する中で,商標法違反(輸入)等の捜査や取調べに充てられ,これらの事実については順次起訴されており,被告人に対する身柄拘束が不当に長期に及んだとはいえない。Y検察官の取調べ状況の録音録画(原審甲234)によれば,同検察10官は,被告人の弁解にも耳を傾ける姿勢を示すとともに,被告人が取調べを拒絶する意思を明確にしていると認められる場合には,直ちに取調べを中止しているし,2月25日の取調べにおいては,被告人が,従前の約束を翻し,Y検察官に厳しく追及された挙げ句,席を立ち上がり,窓に向かって駆け出そうとするなどの様子も見られるが,被告人は,取調べの当初から精神的に15不安定な面を見せていたことから,2週間に1回程度の割合で医師の診察を受けて精神安定剤を処方されるなどしていた上,Y検察官が被告人の体調を気遣いながら取調べを進めていた様子も見られることからすれば,被告人に対する取調べは,適切な権利告知,任意の取調べであることへの配慮,体調への配慮が十分になされた形で進められており,供述の強要があったとは認20められない。Z検察官による取調べの録音録画(原審甲235)等により認められる取調べ状況,被告人の応答,態度等によれば,被告人が従前の取調べの影響を受けて本件殺人について自白供述したとは到底いえない。原判決は,要旨,以上のように判示して,本件各供述調書の証拠能力を肯25定した。イ から までに判示するところは,その取調べの実相を適切に捉えたものといえず,任意取調べとしての限界を超えるものとはいえないとする評価も是認することはできない。しかし,本件各供述調書の証拠能力については,当裁判所も,結論としてこれを肯定すべきものと考える。そのように考える理由は,以下の5当事者の主張に対する判断において説明する。当事者の主張ア 弁護人は,次の理由から,本件各供述調書には証拠能力がないと主張する。すなわち,①(起訴後勾留中の余罪取調べ)被告人が,2月18日に商標法違反で起訴されて以降4月9日まで,及び5月29日に行われた殺人10に関する取調べは,起訴後勾留を利用し,取調べ受忍義務を課した取調べとして違法であり,逮捕,勾留が許される23日間を超えて取調べが行われているから,再逮捕・再勾留禁止の原則により,もはや殺人の容疑で逮捕,勾留することは許されず,その後,本件殺人の容疑で6月3日に逮捕,同月5日に勾留されてから同月23日までの間も取調べ受忍義務を課しての取調べ15は許されないにもかかわらず,実質的にこれを課した状態で,黙秘権を侵害する形で取調べが行われているから,本件各供述調書には証拠能力がない,また,②(任意性のない自白)本件各供述調書に係る供述は,上記のように起訴後勾留を利用した違法な余罪取調べによって,身柄拘束から140日以上経過した後に得られたもので,不当に長く抑留又は拘禁された後の,捜査20機関による自白の強要,身体的暴力,利益誘導があった上での自白であり,慢性的な不眠・頭痛等により精神的に疲弊し肉体的に苦痛を与えられた状態にあった被告人が,今後も再逮捕等されることにつき恐怖心を抱いている状態で不安に駆られてしたものであって,Z検察官が,先行する取調官らによる脅迫等の影響を遮断する措置を講ずることなく録取したものであるから任25意性がなく,本件各供述調書には証拠能力がない,というのである。イ これに対し,検察官は,①起訴後勾留中の本件殺人についての取調べは,任意であって取調べ受忍義務がないことを告げて行われ,現に被告人の要望を受けて取調べを中断しているのであり,被告人の意思を確認するために質問や説得を続けることは当然であって,これをもって受忍義務を課しているかのように評するのは失当で,任意捜査として適法に行われており,ま5た,②本件自白は,不当に長く抑留又は拘禁された後の自白とはいえず,弁護人が主張する自白の強要,身体的暴力,利益誘導は存在せず,被告人の健康状態に気を配って取調べが行われており,原審弁護人による接見も頻繁に行われていた中で,弁護人が主張するような不安を被告人が抱いたとは認め難く,Z検察官の取調べに先立つ警察官及び検察官の取調べにおいて脅迫等10が行われたとの前提がなく,Z検察官は,それまでの供述と同じことを言う必要はないと注意しており,黙秘権を侵害する取調べがされたとの事実は認められず,原審甲235号証の記録媒体からも,被告人の自白に任意性が認められることは明らかであるから,刑訴法319条1項に該当せず,証拠能力が認められる,と主張する。15当裁判所の判断ア 起訴後勾留中の余罪取調べに関する所論(弁護人の所論①)について弁護人は,本件の起訴後勾留中の余罪取調べが,取調べ受忍義務を課した違法な取調べである上,刑訴法における逮捕,勾留の期間として許容される23日間を超過して行われているから,再逮捕,再勾留禁止の原則によ20り,もはや本件殺人の被疑事実による逮捕,勾留は許されず,6月3日の逮捕及び同月5日の勾留後も受忍義務を課しての取調べは許されないのに,実質的に取調べ受忍義務を課した状態で行われた取調べにより作成された本件各供述調書の証拠能力は否定されるべきであると主張する。しかし,起訴後勾留中の本件殺人の取調べの許容性等に関する事後的な評25価によって,後に行われた本件殺人の被疑事実による逮捕,勾留の許容性が左右され,その間における取調べ受忍義務の有無が定まり,その結果として,現に行われた取調べの適法性や本件各供述調書の証拠能力が定まるとする弁護人の主張は,問題の解決に不必要な法律構成を介在させる迂遠な解釈論で,しかも,被告人の身柄に関する法律関係を不安定にするものであるから,合理性が認められず,採用することはできない。本件では,起訴後勾留中に行5われた本件殺人の取調べの許容性と,その結論が本件各供述調書の証拠能力に影響するかどうかが問題となるのであるから,端的に,それらの点について判断するのが相当である。そこで,以下,上記の点について検討する。起訴後勾留中の余罪取調べの許容性について10起訴後勾留中の被告人すなわち別件容疑者(以下,本件被告人との混同を避けるため,本項においては,この用語を用いる。)についても,起訴に係る事件の審理に支障を及ぼさない範囲において,任意捜査として余罪取調べを行うことが許容されるのは,検察官の主張するとおりである。しかし,その余罪取調べはあくまでも任意捜査として許容されるものであ15るから,起訴後勾留で身柄を拘束された状態を利用して,余罪で逮捕,勾留した場合と実質的に同様の取調べを行うことは許されず,そのようなことが行われた場合には,起訴後勾留の趣旨や刑訴法198条1項ただし書の趣旨に反し違法となる。すなわち,起訴後勾留中の別件容疑者は,当該余罪について逮捕又は勾留されているのではないから,在宅の被疑者の場合(刑訴法20198条1項ただし書)と同様に,取調べに任意に応じたものと認められること,換言すれば,捜査官による取調べの求めに対し,出頭を拒み,又は出頭後,いつでも退去することができる状態にあったと認められなければならない。しかも,任意捜査である以上,別件容疑者が取調べに応じる姿勢であっても,取調べは,事案の性質,別件容疑者に対する容疑の程度,別件容疑25者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において,許容される(最高裁昭和57年(あ)第301号同59年2月29日第二小法廷決定・刑集38巻3号479頁参照)。なお,弁護人及び検察官は,起訴後勾留中の別件容疑者に対する取調べの許容性について,それが取調べ受忍義務を課したものと認められるかどうかを基準に判断すべきものとしているが,具体的な取調べが任意捜査として許5容されるかどうかを判断するに当たり,「取調べ受忍義務」とか「取調べ受忍義務を課した取調べ」というような,法律に規定された文言でもなく,しかも,多様な解釈を可能とする概念を用いることには疑問がある。そして,余罪取調べに任意に応じたものと認められるかどうかを判断する際には,別件容疑者が,起訴後勾留により身柄を拘束された状態にあること10から,在宅の被疑者の場合よりも,捜査官による取調べの求めに対し,出頭を拒み,又は出頭後,いつでも退去することが容易でないことに留意すべきであり,別件容疑者が捜査機関の施設に勾留されている場合には,捜査官による取調べの求めを拒むことが一層困難な環境にあることを踏まえるべきものと考えられる。15他方,起訴後勾留中の余罪については,起訴に係る罪との関連性が認められることにより,その罪の犯情とも関連して捜査機関が余罪取調べを行うことに一定の正当性が認められる場合があり,また,別件容疑者にとっても,起訴後勾留中に余罪の取調べを受け,追起訴を経て併合審判を受けることで,別途逮捕,勾留を受けるよりも迅速な裁判を受けられるのであれば,利益に20なるといえるから,前記判例の示す考慮要素を検討するに当たっては,以上のような事情の有無も踏まえるのが相当というべきである。さらに,本件においては,起訴後勾留中の余罪取調べについて,Y検察官による取調べのうちの一部ではあるが,取調べの録音録画記録媒体(原審甲234)が本件各供述調書の証拠能力の関係で証拠とされているので,同証25拠により再現された取調べ状況を踏まえ,被告人が任意に取調べに応じたものと認められるか,また,その取調べが,前記判例の指摘する諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度にあると認められるかどうかの判断をするのが相当である。商標法違反による起訴後勾留中の本件殺人の取調べについてa 商標法違反による起訴後勾留中の本件殺人の取調べについて,起訴に5係る事実(商標法違反・偽ブランド品の所持)と余罪事実(本件殺人)との関係についてみると,上記各事実の間には,社会的事実として関連性はなく,商標法違反事件の解明に本件殺人の取調べは関係がなく,一方の捜査が他方の捜査に事実上,法律上何らかの影響を及ぼすという関係も認められないから,捜査機関において,商標法違反による起訴後の勾留中に本件殺人の取調10べを行うことを正当化できる事情はない。また,これを被告人の側からみると,取調べの対象となる余罪が殺人であることに照らせば,同事実で逮捕,勾留されることなく追起訴が行われるとは通常考え難いところであるし,起訴された犯罪と同種の犯行であるなど,起訴後勾留の中で余罪の取調べを受け,追起訴された上で併合審判を受けることに利益があるといい得るような15場合等と異なり,商標法違反事件による起訴後勾留中に本件殺人の取調べに応じることに利益は認められない。なお,当裁判所が,検察官に対し,本件殺人の容疑で逮捕,勾留することなく,起訴後勾留中に本件殺人の取調べを行った特別の事情の有無について釈明を求めたところ,検察官からは,任意捜査として許容される任意の取調20べである旨の外に特別の事情についての主張はされなかった。b そして,被告人が,商標法違反による起訴後も警察署の留置施設内に勾留されていたことに照らせば,在宅の被疑者の場合との比較においてはもちろん,拘置所に勾留された場合と比べても,被告人において,取調官による余罪の取調べの要求に対し,出頭を拒むこと,すなわち取調べのために警25察署や検察庁の取調室に連行されることを拒むことや,出頭後に取調室から退去することなどは,困難な状態にあったと認められる。c 以上を踏まえ,起訴後勾留中の本件殺人の取調べ状況につき具体的に検討すると,検察官は,その取調べは,任意であって取調べ受忍義務がないことを告げて行われ,被告人は,拒否することなく取調べを受けており,被告人の要望により取調べは中断しているから,任意捜査として適法に行われ5ていると主張する。確かに,取調べの録音録画記録媒体(原審甲234)によれば,商標法違反の事実で2月18日に起訴が行われて以降の取調べにおいて,Y検察官は,取調べを開始するに当り,取り調べる事実の内容,黙秘権の告知に続き,取調べを受ける義務がないことの告知を行っていることが認められる。10そして,商標法違反による起訴が行われた同日の午前中におけるY検察官による起訴前の取調べでは,およそ1時間半程度という短時間で被害者を殺害したことを認める内容の供述調書が作成されている上,同日午後における同検察官による起訴後の取調べにおいて,被告人は,午前中の取調べで犯行を自供したことについて記憶がないと述べるなどしたが,供述を求める同検15察官に対しては,気持ちの整理をしたいので少し時間がほしい旨を述べ,その取調べは終了している。その後,Y検察官は2月21日の取調べにおいて,気持ちを整理する時間を与えたのだからとして供述を求めたところ,被告人は,思ったより気持ちの整理に時間がかかる,事件につき報道される前に,母や姉に自分がとんでもないことをやったと言っておきたいなどと述べ,姉20との接見を希望し,その後であれば供述することの確認を求めるY検察官に対し,「早く話して楽になりたい」とか,「早く言いたい」などとも述べている。以上によれば,この段階までの取調べは,被告人が任意に応じたものであったと評価することができる。25d しかし,その後の2月25日の取調べにおいて,Y検察官は,供述を渋る被告人に対し,姉に面会して説明などすれば本件殺人について供述すると約束し,既に前日に姉との面会が行われたことを指摘するなどして,本件殺人につき供述するように迫った。すると,被告人は,姉と面会した後に原審弁護人と接見して気持ちが揺らいだ旨や,そのアドバイスで黙秘権を行使したい旨を述べた。これに対し,Y検察官は,弁護人に言われたからとか,5そういうことじゃなくて,被告人がどうなんだってことだ,この間ちゃんと話すと約束したのだから,話すべきだろうなどと述べ,30分間以上にわたり取調べを続け,被害者や遺族よりも自己の利益しか考えていないとして被告人に対する人格的非難を加えるなどして,「どうしても供述できない」旨を述べる被告人に対して供述を執ように迫った。すると,被告人は,「もう10無理」などと叫びながら立ち上がり,検察官席の後方にある取調室の窓から脱出しようとして戒護の警察官らに引きとどめられた。この2月25日の取調べは,任意の取調べの範囲を逸脱したものであるというべきである。すなわち,Y検察官は,被告人に対し,取調べの開始に当たり,取調べに応じる義務はない旨を形の上では告げているが,その言葉ど15おりの取調べを行ったとはいえず,実際には,被告人が黙秘権を行使したいと述べ,取調べに応じる意思がないことを明らかにしたにもかかわらず,それを意に介せず,30分間以上にわたり,供述することを執ように求めている。その結果,被告人は,遂に取調室から脱出しようとする行動に出るに至っている。この脱出を試みた際の心境について,被告人は,同月27日の取20調べにおいて,その場を立ち去って「飛び下りたら楽だなあと思った」旨の説明をしており,精神的に追い詰められた被告人が,取調べを逃れるために自殺を試みたものと認められる。これは,黙秘権を行使したいと述べても受け入れられず,なおも供述を求める検察官から逃れるための究極的な手段を選択しようとしたものということができる。被告人が脱出を試みた後,Y検25察官によるその日の取調べはそれ以上続けられていないが,それは,取調べを続行できる状況になかったのであるから当然である(なお,当日,さらに警察官による取調べは行われている。)。そして,Y検察官は,2月25日以降の取調べにおいても,被告人が「今日,これ以上は無理」とか,「もう終わりにしたい」などと述べた場合でも,質問を変えるなどして取調べを続行し,被告人がどうしても供述できないよ5うな様子と認められるまで取調べをやめていない。その取調べは,被告人が供述拒絶の姿勢を示しているにかかわらず,何とか説得して自供させようとし続けるものであり,検察官が主張する「被告人の意思の確認」と評価できるような範囲を超えている。2月25日に被告人が自殺を試みて以降3月28日まで,Y検察官による取調べが行われたのは,実質12日間で合計1710時間30分余りに及ぶが,その間,被告人は,本件殺人の状況等について供述するように迫られても,ほとんど供述を拒んでいて,積極的に何らかの弁解をするような様子もみられない。このことは,本件殺人の取調べに任意に応じる意思が被告人に終始なかったことを示している。そもそも,前記a,bで指摘したとおり,商標法違反(所持)の事実と本15件殺人の事実との関係に照らし,被告人が本件殺人の取調べに任意に応じたものと推定すべき利益状況はなく,かつ,警察の留置所に勾留されている被告人にとって,捜査官からの取調べの要求を拒むことは容易でない状況にあったものと考えられる。以上のとおり,2月25日以降のY検察官の取調べにおいて,その意向に20反し,被告人が,取調べを受けることを拒絶するのは,非常に困難な状況にあったことは明らかである。一連の取調べは,基本的に被告人の意思如何にかかわらず殺害の犯行及びそれに関連する事柄について供述を求める取調べであって,被告人の供述拒否の意思が固く,あるいはその精神状態から続行が困難と認められる段階で取調べが中断されていることもあるが,それは取25調べの実効性を考え,あるいは,供述の任意性に抵触する取調べを回避する上で当然に必要なことといえる。このような中で,取調べの開始に当たり,取調べを受ける義務はない旨を形式的に告知された上で取調べが開始され,その後の発問や説得に対し,2月25日のような行動に出ることなく,被告人が取調室にとどまり,取調官の問いかけに対して,何らかの反応が示され,あるいは何らかの供述がされたとしても,そのことから取調べに任意に応じ5る意思が被告人にあったと推認することはできず,被告人が,出頭を拒み,又は出頭後,いつでも退去することができる状態にあったものと認めることはできない。なお,被告人は,2月27日の取調べにおいて,「ずっと話さないつもりはない」と述べ,「どうしても話したくなったら,どうやって連絡すればい10いの」とY検察官に尋ねるなどしており,当時,被告人は,供述を拒み続けることに苦痛や葛藤を感じていたものと考えられる。しかし,その後も,被告人の申し出や要望により取調べが行われた様子は認められず,むしろ,Y検察官の発問に対し,被告人がほとんど応答することもなく,黙秘権を行使する態度を示しても,これが顧慮されないまま,取調べが続行されるという15状況が明らかであって,上記言動を踏まえても,被告人が取調べに任意に応じたものとは認められず,拒絶することが困難な状態で,取調べが継続されたことは明らかである。e 次に,2月18日から3月25日までは,Y検察官による取調べと並行して,M警察官による取調べが行われている。20起訴後勾留中に行われた検察官による余罪の取調べが任意の取調べと認められないとしても,同じ時期に行われた警察官による取調べが任意の取調べとされることが,一般的にあり得ないとはいえないであろうが,被告人は,原審公判において,M警察官の取調べは,Y検察官の取調べよりも格段に過酷であった旨を供述する。25M警察官の原審証言によれば,被告人の取調べに当たり,特に供述の任意性に配慮するようにとの指示を受けたというのであるが,取調べの際に,黙秘権の告知と区別する趣旨を明確にして取調べ受忍義務に関する告知が行われていたかどうかは,同証言によっても,必ずしも明らかではない。また,2月18日から3月25日までの間にM警察官が本件殺人の事実について被告人を取り調べた時間は,S警察官との共同によるものを含め,同時期にお5けるY検察官の取調べ時間のおよそ5倍以上の長さに及んでいて,深夜まで取調べが行われた日もある。2月25日のY検察官による取調べで被告人が自殺を試みる事態が生じた当日にも警察署に戻った後にM警察官による取調べは行われており,それ以降,1か月後にM警察官が担当を外されるまでの取調べは,実質21日間で85時間余りに及ぶ。Y検察官の取調べの場合と10同様,この間の取調べにおいて,被告人が,積極的に供述する状況にあったことをうかがわせる証拠はない。しかも,M警察官による取調べは,被告人が身柄を拘束された警察署内において行われている。そして,当時の警察における運用に基づくものと思われるが,M警察官による取調べでは,録音録画がされていない。15以上によれば,M警察官の取調べは,Y検察官の取調べよりも格段に過酷であった旨の被告人の原審公判供述の信用性を否定すべき理由を見いだすことはできない。そうすると,M警察官による取調べが,任意の取調べとして,被告人の意思によって出頭を拒み,又は出頭後,いつでも退去することができる状態で20行われたものと認めることはできない。f 次に,3月26日から4月9日まで行われたS警察官やT警察官らによる取調べについても,被告人は,人格的な非難をされるなどして厳しい取調べを受けたと原審公判で供述している上,前記のようなY検察官及びM警察官による取調べの延長線上で,特に,後者の取調べを引き継いで行われた25ものであり,取調官の交替により本件殺人の取調べの状況が大きく変化したものと認めることはできない。なお,被告人は,4月8日頃の取調べにおいて,T警察官に対し,被害者を拉致したことなどは認めつつ,殺害行為は当時の被告人方を訪れた第三者によるものであるとの供述を行っており,この供述は,被告人が起訴後1年近くの間にわたり,原審弁護人を通じて主張していた内容に沿うものであり,5それ自体は被告人が主体的に行った弁解供述と見ることができる。しかし,上記主張が原審の公判前整理手続の途中で全面的に撤回されていることに照らし,明らかな虚偽供述であるとしても,そのような供述が本件殺人についての自供を求められる中でされたものであることは明らかであり,その弁解供述があったからといって,当時の取調べが,被告人の任意によるもの,す10なわち,被告人の意思によって出頭を拒み,又は出頭後,いつでも退去することができる状態に変わっていたと認めることはできない。g 以上に加え,本件においては,原審弁護人から,Y検察官に対し,3月4日に,法的な問題を指摘した上で,起訴後勾留を利用した本件殺人の取調べには応じられないとの申入れが書面で行われている(原審弁書40,4151)。これは,起訴後勾留中における本件殺人の取調べに任意に応じる意思がないことを原審弁護人が明確に示したものである。Y検察官らは,2月25日の取調べにおいて,前記のような状況を生じ,その一週間後に,上記申入れがされたにもかかわらず,なお取調べを継続していたところである。そして,Y検察官が他庁に異動して担当を外れた後も,商標法違反被告事件の20第1回公判期日(所持の事実の審理)の2日後である4月9日に,原審弁護人が,宇都宮地検検事正に対し,3月4日と同旨の申入れを書面で再度行った日まで(原審弁書42,43),S警察官らによる本件殺人の取調べが継続されていたものである。h 以上によれば,起訴後勾留を利用して行われた2月25日以降の本件25殺人の取調べは,任意の取調べとして,すなわち被告人の意思によって出頭を拒み,又は出頭後,いつでも退去することができる状態で行われたものとは認められない。また,前記昭和59年判例の示す考慮要素に基づき,任意捜査として社会通念上相当と認められる範囲内にあるかどうかにつき検討すると,まず,本件は,当時7歳の児童を殺害したという重大事案である。

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