事件番号平成28(ネ)863
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第3民事部
裁判年月日平成30年9月20日
原審裁判所大阪地方裁判所
原審事件番号平成23(ワ)8942
事案の概要本件は,建築物の新築,改修,解体作業等に従事した建築作業従事者19名の本人又はその相続人である控訴人らが,上記従事者が建築現場において建築作業に従事する際,同所で使用された石綿含有建材から発生した石綿粉じんに曝露し,これによって石綿関連疾患(石綿肺,肺がん,中皮腫,びまん性胸膜肥厚)に罹患したとして,石綿含有建材の使用についての規制権限を有していた被控訴人国に対しては,労働関係法令及び建築基準法に基づく規制権限不行使の違法等を主張して,国家賠償法1条1項に基づき,石綿含有建材を製造・販売した建材メーカーである被控訴人企業ら22社に対しては,警告表示及び製造販売中止等の義務違反を主張して,民法719条1項及び製造物責任法3条に基づき,建築作業従事者一人当たり各3850万円(相続人又は受遺者による請求の場合は,相続した割合等に相当する金額)の損害賠償金及びこれに対する損害発生時からの年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
判示事項の要旨1 被控訴人国の国賠法1条1項に基づく損害賠償責任
(1) 国が,建築作業従事者が石綿含有建材の切断,穿孔等の作業により石綿関連疾患に罹患することを防止するため,労働安全衛生法(安衛法)上の規制権限を行使し,①昭和50年10月1日以降,事業者に対する防じんマスクの着用義務付け,作業現場における警告表示の義務付け並びに建材メーカーに対する石綿含有建材への警告表示の義務付けを行わなかったこと,②平成3年末以降,石綿含有建材の製造等を禁止しなかったことは,国賠法1条1項の適用上違法である。
(2) 国の安衛法55条,57条に基づく規制権限の不行使については,いわゆる一人親方も,国家賠償の保護範囲に含まれる。
(3) 国が国賠法1条1項に基づき被災者らに負うべき責任の範囲は,被災者らに生じた損害の2分の1とするのが相当である。
2 被控訴人企業らの民法719条1項に基づく損害賠償責任
(1) 建材メーカーは,昭和50年1月1日以降,建築作業従事者に対し,石綿含有建材の切断,穿孔等の作業により石綿関連疾患を発症する危険性等について警告表示する義務を負い,被控訴人企業らには警告表示義務違反が認められる。
(2) 共同不法行為の加害行為に当たるというためには,特定の被控訴人企業が警告表示義務に違反して製造販売した石綿含有建材が特定の被災者に到達したことの立証が必要であるが,マーケットシェアを利用した加害行為者の特定という方法も,建材使用が極めて多数回に及ぶ状況では合理性を有し,当該建材のシェアが10%以上を占める被控訴人企業の製造販売行為は,被災者らの就労した建築作業現場に到達する高度の蓋然性が認められる。
(3) 上記被控訴人企業らは,民法719条1項後段の類推適用により,被災者の曝露期間とメーカーの責任原因期間,主要原因企業以外のメーカーの寄与を考慮した範囲で,連帯して責任を負う。
事件番号平成28(ネ)863
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第3民事部
裁判年月日平成30年9月20日
原審裁判所大阪地方裁判所
原審事件番号平成23(ワ)8942
事案の概要
本件は,建築物の新築,改修,解体作業等に従事した建築作業従事者19名の本人又はその相続人である控訴人らが,上記従事者が建築現場において建築作業に従事する際,同所で使用された石綿含有建材から発生した石綿粉じんに曝露し,これによって石綿関連疾患(石綿肺,肺がん,中皮腫,びまん性胸膜肥厚)に罹患したとして,石綿含有建材の使用についての規制権限を有していた被控訴人国に対しては,労働関係法令及び建築基準法に基づく規制権限不行使の違法等を主張して,国家賠償法1条1項に基づき,石綿含有建材を製造・販売した建材メーカーである被控訴人企業ら22社に対しては,警告表示及び製造販売中止等の義務違反を主張して,民法719条1項及び製造物責任法3条に基づき,建築作業従事者一人当たり各3850万円(相続人又は受遺者による請求の場合は,相続した割合等に相当する金額)の損害賠償金及びこれに対する損害発生時からの年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
判示事項の要旨
1 被控訴人国の国賠法1条1項に基づく損害賠償責任
(1) 国が,建築作業従事者が石綿含有建材の切断,穿孔等の作業により石綿関連疾患に罹患することを防止するため,労働安全衛生法(安衛法)上の規制権限を行使し,①昭和50年10月1日以降,事業者に対する防じんマスクの着用義務付け,作業現場における警告表示の義務付け並びに建材メーカーに対する石綿含有建材への警告表示の義務付けを行わなかったこと,②平成3年末以降,石綿含有建材の製造等を禁止しなかったことは,国賠法1条1項の適用上違法である。
(2) 国の安衛法55条,57条に基づく規制権限の不行使については,いわゆる一人親方も,国家賠償の保護範囲に含まれる。
(3) 国が国賠法1条1項に基づき被災者らに負うべき責任の範囲は,被災者らに生じた損害の2分の1とするのが相当である。
2 被控訴人企業らの民法719条1項に基づく損害賠償責任
(1) 建材メーカーは,昭和50年1月1日以降,建築作業従事者に対し,石綿含有建材の切断,穿孔等の作業により石綿関連疾患を発症する危険性等について警告表示する義務を負い,被控訴人企業らには警告表示義務違反が認められる。
(2) 共同不法行為の加害行為に当たるというためには,特定の被控訴人企業が警告表示義務に違反して製造販売した石綿含有建材が特定の被災者に到達したことの立証が必要であるが,マーケットシェアを利用した加害行為者の特定という方法も,建材使用が極めて多数回に及ぶ状況では合理性を有し,当該建材のシェアが10%以上を占める被控訴人企業の製造販売行為は,被災者らの就労した建築作業現場に到達する高度の蓋然性が認められる。
(3) 上記被控訴人企業らは,民法719条1項後段の類推適用により,被災者の曝露期間とメーカーの責任原因期間,主要原因企業以外のメーカーの寄与を考慮した範囲で,連帯して責任を負う。
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