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カテゴリー > 下級裁判所裁判例集 (降順 ; 裁判年月日で整列)

裁判年月日順 | データ登録日順 | 参照数順

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事件番号/事件名裁判年月日/裁判所判決書
[下級] [刑事] 平成30(わ)1002  155ViewsMoreinfo
平成30(わ)1002
被告人が氏名不詳者らと共謀の上,営利の目的で,覚せい剤約3キログラムを隠匿したボストンバッグを航空機の手荷物として,カンボジア王国所在の空港から北海道内の空港に持ち込み,覚せい剤を日本国内に輸入したとする覚せい剤取締法違反,関税法違反の事案について,上記バッグに覚せい剤を含む違法薬物が隠されているかもしれないと認識していたとして故意を認め,被告人に懲役9年及び罰金400万円を言い渡した事例
(裁判員裁判)
判示事項の要旨
令和元年9月2日
札幌地方裁判所
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[下級] [刑事] 令和1(わ)327  159ViewsMoreinfo
暴行・傷害
令和1(わ)327
本件は,被告人が,養子や実子の3名に対し,犬のしつけ用のスタンガンで通電させるなどの暴行を加え,長男に対しては怪我を負わせたという暴行4件,傷害1件の事案である。
事案の概要
令和元年8月28日
福岡地方裁判所 小倉支部 第2刑事部
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[下級] [刑事] 平成31(う)177  219Views
監禁,殺人,監禁致傷被告事件
令和元年8月23日
大阪高等裁判所 第2刑事部
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[下級] [刑事] 令和1(わ)549  145ViewsMoreinfo
過失運転致死被告事件
令和1(わ)549
本件は,中型特殊自動車を運転し,自動車専用道路を走行していた被告人が,スピードメーターに気を取られ,停止しようとしていた前方被害者車両の発見が遅れ,自車を被害者車両に衝突させ,被害者車両を自車と前方の大型貨物自動車との間に挟み込み,被害者車両の運転者及び同乗者である子供2名の合計3名を死亡させた過失運転致死の事案である。
事案の概要
令和元年8月22日
神戸地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成31(う)740  166Views
収賄
令和元年8月8日
東京高等裁判所 第6刑事部
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[下級] [刑事] 平成23(お)6  187Views
再審請求事件
令和元年7月31日
東京高等裁判所 第4刑事部
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[下級] 平成27(行ウ)325  180ViewsMoreinfo
納入告知処分取消請求事件
平成27(行ウ)325
本件は,大阪市道築港深江線(以下「築港深江線」という。)及び大阪府道15高速大阪東大阪線(阪神高速道路。以下「本件高速道路」という。)の各高架の下に位置する船場センタービル(地下2階,地上2~4階建て鉄筋コンクリート造のビル10棟。以下「本件ビル」と総称する。)の区分所有者の団体の管理者である原告が,主位的に,被告が原告に対してした,本件ビルを占用物件とする大阪市中央区船場中央1~4先(本件高速道路高架下)の占用に係る,20平成26年度から平成30年度までの各占用料の納入告知(以下,それぞれ「平成26年度納入告知」等といい,これらを総称して「本件各納入告知」という。)が,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決,決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)」に該当する旨主張し,同条2項所定の処分の取消しの訴えとして,25その取消しを求め,予備的に,不当利得返還請求権に基づき,原告が被告に支払った平成26年度から平成30年度までの占用料,延滞金及び督促手数料の合計額に相当する7355万0253円及びこれに対する本件各納入告知の取消しを求める訴えを提起し,又は請求を追加する書面が被告に送達された日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
令和元年7月31日
大阪地方裁判所 第2民事部
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[下級] [刑事] 平成30(う)421  160ViewsMoreinfo
A公契約関係競売入札妨害,贈賄,B入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害(変更後の訴因 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害,高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律違反)
平成30(う)421
本件控訴の趣意及び当審における事実取調べの結果に基づく弁論の要旨は,被告人Aについては,主任弁護人秋田真志,弁護人水谷恭史及び同高橋早苗連名作成の控訴趣意書,検察官答弁に対する反論,同補充書,控訴審弁論要旨及び同(補充)に記載されたとおりであり,被告人B見秀一,同新倉栄子及び同我妻路人連名作成の控訴趣意書,意見書及び弁論要旨に記載されたとおりであり,これらに対する答弁の要旨は,検察官大口康郎作成の答弁書及び意見書に記載されたとおりであるから,これらを引用する。被告人Aの論旨は,平成24年度入札( の事実)についての法令適用の誤り,訴訟手続の法令違反及び事実誤認,平成25年度入札1(同第1のの事実)についての法令適用の誤り,訴訟手続の法令違反及び事実誤認,平成25年度入札2( の事実)についての事実誤認及び法令適用の誤りの各主張であり,被告人Bの論旨は,公訴受理の違法(刑訴法338条4号違反),平成25年度入札1(原判示第2の2の事実)についての事実誤認及び法令適用の誤り,平成25年度入札2(同第2の3の事実)についての事実誤認及び法令適用の誤り,更には,量刑不当の各主張である。第1 判断の前提となる事実関係等1 本件事案の概要本件は,ソフトウエアの開発及び販売等を行うEの代表取締役であった被告人Aと,独立行政法人国立循環器病研究センター(以下「国循」という。)の部長職にあった被告人Bが,国循が平成24年度から平成25年度にかけて実施した情報システムの運用保守業務委託の一般競争入札ないし公募型企画競争入札において,①入札金額の積算根拠となる非公開情報を被告人Bが送付し,これを被告人Aにおいて利用して入札金額を減額し(平成24年度入札),②E以外の業者の参入が困難になり得る条項(本件2条項)を盛り込むなどした仕様書を作成し,同仕様書を公告して入札の用に供し(平成25年度入札1),③Eの受注を承諾していたFを競争に参加させた上,同社にEよりも高値で応札させるとともに,被告人BがEの企画提案書のみに助言・指導を行う(平成25年度入札2)などの態様で,これら入札の妨害等をしたとして,それぞれ公契約関係競売入札妨害に問われるとともに,被告人Bは官製談合防止法違反等にも問われている事案である。
事案の概要
令和元年7月30日
大阪高等裁判所 第1刑事部
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[下級] [刑事] 平成30(わ)188  186ViewsMoreinfo
殺人,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
平成30(わ)188
統合失調症と診断され中等度の知的障害もある被告人が,誰からも相手にされないと感じて自暴自棄となり人を殺すことを決意し,自宅を出て最初に見かけた通行人の後をつけて行き,バス停につくと包丁を取り出し,殺意をもって,被害者の左背部等を多数回突き刺すなどしたが,加療約1週間を要する傷害を負わせたにとどまり,さらにバス停付近ですれ違った別の被害者に対し,殺意をもってその腹部を包丁で1回突き刺して死亡させた事案において,弁護人が心神喪失又は心神耗弱を主張したが,完全責任能力を認定して懲役27年に処した事例
判示事項の要旨
令和元年7月30日
広島地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成31(う)75  134ViewsMoreinfo
廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
平成31(う)75
伐採木を野焼きした廃棄物処理法違反の事案について,懲役と罰金を併科した一審判決を量刑不当により破棄し罰金刑に処した事例
判示事項の要旨
令和元年7月25日
広島高等裁判所
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[下級] [民事] 平成30(ネ)628  176ViewsMoreinfo
損害賠償請求控訴事件
平成30(ネ)628
本件(原審甲事件及び乙事件)は,一審被告又は一審被告と合併したオーツタイヤ株式会社の従業員として一審被告の神戸工場又は泉大津工場においてタイヤ製造業務等に従事していた,一審原告G以外の一審原告らの被相続人ら及び一審原告G(本件被用者ら)が,作業工程から発生する石綿及び石綿を不純物として含有するタルクの粉じんに曝露し,これによって石綿関連疾患(悪性胸膜中皮腫,肺がん,石綿肺)に罹患し,一審原告G以外は死亡したと主張して,一審原告らが,一審被告に対し,債務不履行(安全配慮義務違反)又は不法行為に基づき,本件被用者ら1人当たりの慰謝料を3000万円とし,特別補償金を控除するなどして(相続人については,それぞれの相続分に応じ),別紙2「請求・認容金額一覧表」の各一審原告に対応する請求額欄記載の各金額の損害賠償金及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
事案の概要
令和元年7月19日
大阪高等裁判所 第3民事部
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[下級] [刑事] 平成31(う)70  128ViewsMoreinfo
廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
平成31(う)70
本件控訴の趣意は,弁護人橋本亮作成の控訴趣意書に記載されているとおりであるから,これを引用する。論旨は,被告人を罰金50万円に処した原判決の量刑は,焼却物の重量の認定を誤り,保護法益の対象外である焼却に伴う公共の危険の発生を重視するなどしており,重過ぎて不当であるというのである。そこで,記録を調査して検討する。2 検討本件は,被告人が,被告人方敷地内において,廃棄物である木材等を焼却したという廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)違反の事案である。
事案の概要
令和元年7月18日
広島高等裁判所
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[下級] [民事] 平成28(ワ)1903  128ViewsMoreinfo
築炉じん肺損害賠償請求事件
平成28(ワ)1903
本件は,築炉業を営む被告に雇用され,築炉工として,その作業に従事することにより当該労働者がじん肺にかかるおそれがあると認められる作業である炉の新築・補修・解体(以下「築炉作業」という。)に従事したことにより,けい肺若しくは石綿肺(以下「じん肺等」ともいう。)にり患したと主張する者又はその承継15人である原告らが,被告に対し,被告には雇用者として,従業員に築炉作業を行わせるに際して適切な粉じん対策を講じ,その従業員が,じん肺等にり患することのないよう配慮すべき義務があるのにこれを怠ったため,被告の築炉工であった原告E(以下「原告E」という。),同D(以下「原告D」という。)及び亡F(以下「亡F」といい,原告E及び同Dと併せて「本件築炉工ら」という。)が,じん肺20等にり患し,各3300万円(慰謝料3000万円及び弁護士費用300万円の合計額。)の損害が生じたと主張して,債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償請求として,原告A(以下「原告A」という。),同B(以下「原告B」という。)及び同C(以下「原告C」といい,原告A及び原告Bと併せて「原告相続人ら」という。)については各1100万円(うち550万円は亡Fより相続〔原25告相続人らの法定相続分は各6分の1。〕したもの,うち550万円は亡G〔以下「亡G」という。〕が亡Fより相続〔亡Gの法定相続分は2分の1。〕した1650万円につき原告相続人らが亡Gよりそれぞれ相続〔原告相続人らの法定相続分は各3分の1。〕したもの。),原告D及び同Eについては各3300万円,並びにこれらに対する本訴状送達の日の翌日である平成28年6月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める事案である。
事案の概要
令和元年7月18日
福岡地方裁判所 第2民事部
詳細/PDF
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[下級] [刑事] 平成31(わ)1105  228ViewsMoreinfo
有印公文書偽造・同行使
平成31(わ)1105
本件は,弁護士である被告人が,業務の放置を隠ぺいするため,5度にわたって判決書を偽造し,依頼者に対して,FAX送信するなどして行使したという事案である。
事案の概要
令和元年7月17日
大阪地方裁判所 第5刑事部
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[下級] [刑事] 平成30(う)1849  211ViewsMoreinfo
覚せい剤取締法違反
平成30(う)1849
本件控訴の趣意について1 本件は,被告人が,平成29年11月上旬頃から同月15日までの間に,東京都内又はその周辺において,覚せい剤を自己の身体に摂取したという事案である。
事案の概要
令和元年7月16日
東京高等裁判所 第10刑事部
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[下級] [刑事] 平成29(う)547  147ViewsMoreinfo
殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反
平成29(う)547
本件においては,結審後の令和元年6月3日に,被告人から控訴取下書が提出されているが,当裁判所は,次のとおり,控訴取下げの効力は生じていないものと判断した。本件は,検察官及び被告人双方からの控訴申立ての事案であるため,被告人による控訴の取下げは,訴訟手続の終了の効果をもたらすものではなく,被告人にとって全く利益のないものである。後述するA鑑定によれば,被告人は自閉スペクトラム症の障害のため,物事を客観的にみることができず,自分に都合よく解釈する特性のあることが認められる。本件控訴取下書が提出されたのは,被告人が不本意と受け取ってもおかしくない状況で本件が結審になって間もない時点のことで,その頃から,被告人は弁護人や家族等との接触も一切拒否するようになっている。その時期や,弁護人への相談もなく行われたものであることからすると,被告人が上記障害のために,本件控訴取下書を提出することで,不本意な本件訴訟を終わらせられるものと勝手に解釈して行ったものである可能性が高い。そうすると,本件控訴の取下げは,自己の権利を守る能力が著しく制限された状態で行われた疑いが否定できず,これは無効と解される。第2 本件公訴事実の要旨と原判決の概要1 本件公訴事実の要旨は,原判示の空き地において,当時11歳の被害者に対し,殺意をもって,持っていた鉈様の刃物で,その右前胸部,左腰背部等を突き刺し,その頭部を切り付けるなど当な理由による場合でないのに,刃体の長さ約48.2センチメートルの前記鉈様の刃物を携帯した,というものである。2 原審の審理経過検察官は,原審第1回公判前整理手続期日に先立つ平成27年7月17日提出の証明予定事実記載書において,上記公訴事実に沿った犯行状況等を主張するとともに,当時,被告人が心神耗弱状態であったことを主張していた。これに対し,原審弁護人は,平成28年4月25日に,被告人が公訴事実のとおりの犯行を行ったことと心神耗弱状態であったことは争わない旨の予定主張記載書面を提出し,原審第18回公判前整理手続期日において,罪体及び当時被告人が心神耗弱の状態にあったことは当事者間に争いがなく,争点は情状及び量刑であるとの争点整理の結果がまとめられた。原審第1回公判期日(平成29年3月6日),被告人は,公訴事実についての意見として,「違います。全部違います。」などと陳述したが,直後に原審弁護人の求めで一時休廷となり,原審弁護人と打ち合わせを経ての再開後には「(被告事件を)認めます。」と陳述し,原審弁護人は,被告人と同様であるとしながら,心神耗弱状態であったことを主張した。原審第3回公判期日(同月9日)での被告人質問において,原審弁護人から,被害者を殺したことは間違いないかと問われると,被告人は,「やってません。」「この前ももっと罪重くなるよて言われたんで認めただけです。」「若干,脅迫,怖かったから認めた。」などと供述した。しかし,原審第4回公判期日(同月13日)の被告人質問では,被害者を殺害したことを認め,被害者を捕まえ,持っていた刃物でその身体を刺して殺害したことなどを供述した。原審第5回公判期日(平成29年3月15日)には,起訴前に被告人の精神鑑定を行ったB医師の証人尋問が行われた。同医師の原審証言(以下「B鑑定」という。)の要旨は,以下のとおりである。被告人は,中学2年生であったころから,関係妄想を特徴とする妄想や,当たり前のことを当たり前と受け止められない一種の思考障害などの精神障害が認められるようになり,これに伴って明るい人柄から内向的へと性格が変化し,社会から引きこもる傾向が生じている。被告人の症状からみると,統合失調症または妄想性障害と考えられるが,両者の鑑別を行うには今後の経過観察が必要になる。広汎性発達障害や知的障害は否定される。被告人は,平成26年10月頃から近隣に住む被害者とその兄の言動に関心を持つようになり,平成27年1月頃には,両名が自転車に乗って棒を振り回しているのを認めて,自分への嫌がらせである旨の被害妄想を抱くに至り,被告人は,被害者兄弟から叩かれるなどするとの危険を感じて追いかけるなどの行動に出るようになった。被告人の被害妄想の対象は,被害者兄弟以外にも拡散していき,本件犯行の約5日前には,被害者兄弟や近所の別の家族を名指しして,「違反者と思われる人」として入国管理局に通報した。この通報からは,被告人の被害妄想が確信的であることや,それに対する対応策を考える自由はあるものの,その思考には一定のまとまりの悪さがあることがうかがえる。被告人は,初回の鑑定面接では本件犯行の動機に関して,「棒を振ってたから殺しただけ」「あんなんに殴られたら嫌やなと(思った)」「(被害者が)うっとうしかった」などと述べたが,2回目以降の面接では犯行自体を否認したため,それ以上の説明は得られなかった。状況からみると,犯行動機の中核には,被害者に対する被害妄想があると考えられるが,被害者らから殺されるかもしれないというような切迫した危機感の訴えはなく,何がしかの被告人自身の考えで被害者の殺害を決意したと考えられる。妄想を前提とすれば,犯行動機は心理学的に了解可能であり,その動機に照らして犯行時の行動は合目的的といえる。犯行直前,直後の行動は,普段と変わらず,社会生活を送る上での判断,認識は保たれていて,易怒的な点は見当たらない。犯行後に洗濯したり,刃物を洗ったりした点は,自己防衛的な行動と評価できる。事後に犯行を否認したことも,自己防衛目的と考えられ,解離性現象によるとは考えられない。被告人には犯行前から家族に対する暴力があったから,本件犯行についての平素の人格との異質性はそれほど大きいとはいえない。被告人の被害妄想が犯行に及ぼした影響は無視できないものであるから,精神症状の本件犯行への影響の程度は著しかったといえるが,被害妄想の内容は切迫しておらず,意思決定の自由が保たれていて,易怒性などは出現しておらず,本人なりの意思決定に基づいて行動ができていたと評価できる。原審第6回公判期日(平成29年3月21日)には,論告・弁論が行われた。論告において,検察官は,B医師の供述を前提に,被告人の責任能力に関し,妄想にすっかり支配された精神状態ではなく,目的に向けて合理的な判断をして行動する能力が十分に残されていたなどとして,心神耗弱状態を前提にしても厳しい刑事的非難を与えることは十分可能であると主張した。これに対し,原審弁護人は,B医師は,被告人の心理面やこれまでどのような精神状態で過ごしてきたかを軽視しているなどとその判断を批判した上で,本件は,被害妄想に基づく犯罪で,劣等感,心理面での脆弱性,思考障害が不安を増幅していたことなどからすると,被告人に責任を問えない部分があると主張した。3 原判決の判断の要旨原判決は,被告人が公訴事実のとおりの犯行に及んだことと,当時,統合失調症ないし妄想性障害による被害妄想の影響により心神耗弱の状態にあったことを認定し,被告人を懲役16年に処したのであるが,犯行に至る経緯として,要旨,以下のとおり摘示している。被告人は,中学2年生の頃から,他人の言動など周囲で起こる出来事が被告人の家庭内での会話や言動と関連しているのではないか等という関係妄想を抱くようになり,家庭内の様子が他人から盗聴,盗撮されていると考えるようになった。被告人は,この頃から自宅に引きこもるようになり,高校を中退してからは,約半年間アルバイトをした以外は引きこもりの生活を送っていた。被告人は,平成26年夏頃に被害者及びその兄が近所に住むようになったことにより,その存在を強く意識するようになり,被害者兄弟からにらまれる,路上で奇声を上げられる等の嫌がらせを受けているように感じ,被害者が棒を持って遊んでいるところを見て,嫌がらせが一層悪化したと考え,いつか襲われるのではないかという被害妄想を抱くようになった。そして,被害者兄弟からの嫌がらせを止めるために,平成27年1月9日,被害者の兄を刃物を持って追いかけたり,同年2月1日,入国管理局に被害者兄弟の情報をメールで送信するなどしていた。第3 弁護人の訴訟手続の法令違反及び事実誤認の主張について1 控訴趣意の要旨被告人の原審における犯人性自認供述や捜査段階の自白は,精神症状の影響により,判断能力及び自らの行動を制御する能力が著しく損なわれた状態でなされたもので,任意性もなければ,事実認定の基礎として用いるに足る信用性もないから,事実認定の基礎から排除されなければならない。しかるに,原判決は,被告人の原審公判供述を事実認定の基礎的事情として用い,不利な量刑事情としても援用したから,判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反が認められる。また,上記の被告人の供述を証拠から排除すると,その余の証拠関係のみからは,本件の公訴事実が合理的疑いを差し挟む余地のないほどに証明されているとはいえないから,被告人は無罪であるのに,いずれも有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認がある。2 当裁判所の判断上記第2, でみたとおり,被告人が,原審第1回公判期日において,突然犯行を否認し始めたため,原審弁護人らが休廷を求めて被告人を説得し,その結果,被告人は犯行を認めたものの,原審第3回公判期日で再び犯行を否認し,先の公判期日に犯行を認めたのは,原審弁護人から否認すれば罪が重くなる旨言われて怖かったからだと述べたことが認められる。このような経緯に照らすと,被告人にとって,原審弁護人の説得が不本意なものであり脅迫的なものと受け取ったことは否定できない。しかし,公判前整理手続の経過や本件の証拠関係からすれば,原審弁護人が上記のような説得をするのはやむを得ないところであって,これを不当とすることはできない。しかも,被告人は,原審第4回公判期日では,犯行の経緯や動機,犯行状況等に関する,訴訟関係者からの質問に対し,被告人にとって答えやすい点は詳細に答える一方,答えにくい点は答えず,再度,原審弁護人に誘導されてしぶしぶ答えるなど,その意思に基づいて応答していたことが明らかである。その供述態度等には,後記A鑑定が指摘する,被告人の精神症状の特徴が表われているものの,それが判断能力等に及ぼす影響の程度は,後に検討するとおり,所論が前提とするほど大きなものではない。被告人が原審公判で述べた内容は,原審では任意性に争いがなかった被告人の検察官調書(原審乙2ないし5)を敷衍するもので,被告人特有の解釈等が含まれているため,その信用性等に慎重な配慮を要するとはいえても,任意性に疑いを生じさせるものではない。所論のうち,訴訟手続の法令違反の主張には理由がない。そして,これらを除く他の証拠から,被告人が原判示の各事実の犯人であることは優に認めることができるため,原判決の犯人性にかかわる点に関して事実誤認があるとはいえない。すなわち,被害者が,原判示第1記載の空き地において,何者かによって刃物で身体を突き刺したり,切り付けたりされ,搬送先の病院において死亡した事実は,原審において取り調べられた捜査報告書(原審甲1等)によって,優に認められる。被害に遭って倒れた被害者を発見したCは,原審に証人として出廷し,直前に被害者宅近くで刃物を携行してうろついていた男と会話したこと,その男が被害者の後ろをつけていったこと,被害者の叫び声を聞いた直後に男が立ち去るのを見たことなどを供述し,その日に見た男は被告人であるとも述べる。Cが,現場で見かけた男を被告人であるとした根拠(以前にも見かけたことがあった,肌荒れなどの特徴が一致)は,合理的なもので,捜査時点から一貫していることもうかがえ,その信用性は極めて高い。そして,捜査報告書(原審甲20,21)等によれば,本件発生の翌日,犯人として浮上した被告人方を令状に基づいて捜索した結果,被告人の自室の衣装ケースから刃物3本が発見され,そのうちの1本である鉈様の刃物(通称コピスマチェット)に被害者のDNA型と一致する血液が付着していることが判明したこと,被害者の遺体の傷の状況は,上記鉈様の刃物が成傷器であると考えて矛盾のないものであったことも認められる。したがって,上記鉈様の刃物が被害者殺害に用いられた凶器であると推認され,被告人は,それを犯行の翌日時点において自室内に隠匿保管していたとみられる。これらの事情を総合すれば,被告人が,上記鉈様の刃物を用いて被害者を殺害した事実を認定することができる。Cが当日に見かけた男の視認条件は良くなく,被告人が犯人である旨の報道に接するなどして先入観を抱いて証言に臨んだことを考慮すに被告人方に侵入し,被告人の自室に凶器を隠した可能性は否定できない,などと主張し,被告人の自白を除いた証拠関係のみをもってしては,被告人の犯人性を基礎づけることはできないと主張する。とは考えられない。すなわち,原審に証人として出廷した被告人の両親の証言等によれば,本件当時,被告人は,両親と同居していて,いわゆるひきこもり状態で,長時間自室を空けることがあまりなかったことが認められ,被告人以外の犯人が,被告人にもその両親にも気づかれることなく,被告人方に侵入し,被告人の自室の衣装ケースに刃物を隠匿することは,現実的には不可能であったと考えられる。また,犯行翌日に被告人方が強制捜査の対象とされたのは,その時点でCが目撃した男を被告人と同定したことによると考えられ,したがって,Cは,その当時から原審証言時まで一貫して見かけた男が被告人であることを供述しているとみるべきで,を考慮に入れてもなお,その点の信用性が揺らぐとは考えられない。所論は,いずれも採用できない。上記のとおり,本件犯行の犯人が被告人であることは他の証拠からも明らかであるから,これと整合し,体験したことや考え等を被告人の視点から述べた原審公判供述及び検察官調書(原審乙2ないし5)の内容は,そのようなものとして信用できる。以上のとおり,原判決が被告人の原審公判供述やその捜査段階の供述をもとに事実認定や量刑判断をしたことに特段の問題は認められないから,所論はいずれも理由がないというべきである。第4 職権判断(事実誤認)1 弁護人及び検察官の各控訴趣意には,原判決の責任能力の認定に関する主張はないものの,当裁判所は,この点について職権で調査を行い,そのために必要があると認めて当審において改めて被告人の責任能力の鑑定を行った。その結果,本件各犯行当時,被告人が統合失調症ないし妄想性障害による被害妄想の影響により心神耗弱の状態にあったとする原判決の責任能力の認定は,論理則,経験則に照らして不合理と認められるとの結論に達した。以下においては,その調査の経緯と判断の理由について述べる。2 原判決は,心神耗弱と認定した理由について,格別の補足説明をしているわけではないが,原審の審理経過や犯行に至る経緯の認定内容に照らせば,B鑑定に依拠したものと考えられる。しかし,B鑑定では,善悪の判断能力及びその判断に従って行動する能力が障害されており,その程度は著しかったとの表現が用いられる一方で,被害者に対する被害妄想の内容は,被害者らから重大な危害を加えられるというような切迫したものではなく,社会生活を送る上での判断,認識は保たれており,本人なりの考えに基づいて殺害を決意し,その意思決定に基づいて行動することもできていたとされており,これらを字義どおりに解するなら,妄想から犯行動機が形成されたといえるものの,是非善悪に関する判断能力や意思に基づいて行動を制御する能力は大きく障害などされてはいなかったとみるのが正当と考えられる。B鑑定自体も,被害妄想が大きく影響したといえるための指標として,被害妄想の内容の切迫性と易怒性の二つを上げながら,本件では双方ともに認められないとしている。また,B医師は,精神障害が本件犯行に及ぼした影響は無視できない,という意味で,「精神症状の本件犯行への影響の程度は著しかった」と判断できる旨を述べるのであるが,これを文字どおりにとらえれば,無視できないというだけで直ちに「著しい」影響があるとしたものと解されるのであり,このような解釈は一般的なものとはいえない。これらからすると,B鑑定の判断過程と結論の間には無視し難い不整合があり,独自の基準をもって精神症状の影響を著しいと評価したものである疑いがある。3 さらに,B鑑定については以下の問題点も指摘できる。B鑑定は,動機の背景事情として被告人が被害者から嫌がらせを受けているとの被害妄想を抱いており,棒で叩かれるなどの一定の危害を加えられるおそれを感じていたとするのであるが,そこから小学生児童にすぎない被害者への殺害の決意まではかなりの飛躍があるのに,その間の説明として「なにがしかの被告人の考えがあった」と述べるだけで,動機形成過程について十分な心理学的解明がなされているとはいい難い。B医師は,被告人が鑑定面接で十分な説明をしなかったこともあって,犯行時の心境が解明できなかったことを率直に認めつつ,妄想を前提とすれば心理学的に動機は了解可能であるとも述べていて,解明できていない動機が了解できるという判断は,やや拙速にすぎるように思われる。被告人は,本件犯行に先立って被害者兄弟らを入国管理局に通報しており,B鑑定は,入国管理局に問題解決を委ねたことは適切さを欠くものであって,対応策を考える自由はあるものの,思考のまとまりの悪さがうかがえると判断しているのであるから,殺害の決意についても同様に思考の問題点が影響を及ぼした可能性を検討する必要があるのに,この点についての説明もない。さらに,B医師は,被告人が犯行を否認するなどしている言動を自己防衛目的と説明するが,被告人は,原審公判においても否認と自白の態度をめまぐるしく変転させているのであって,知的障害が否定される被告人について,これを自己防衛のための打算とみるのは困難である。以上からすると,被告人の精神障害の有無や程度,これが犯行の心理学的要素に与えた影響の有無や程度に関するB鑑定の説明内容は,鑑定の前提となる事実関係のうちの犯意自体の奇妙さや事後の認否の態度の不可解さなどについて十分に説明するものとはなっておらず,しかも,動機の解明に至っていないのに安直に了解可能としている疑いを否定できない。したがって,B鑑定が被告人の責任能力を判断するに当たって依拠し得るものといえるかについても,疑問の余地が残るものというべきである。4 上述のとおり,B鑑定については,その内容に無視し難い不整合を指摘できるほか,幾つかの問題点があると思料されたため,当審において,新たにA医師を鑑定人として選任し,被告人の精神鑑定を実施した。同医師の鑑定書(当審職権2)及び当審証言を総合すると,その鑑定結果(以下「A鑑定」という。)の要旨は,次のとおりと認められる。被告人の精神面を精神医学的な見地から考察すると,次のような特徴が認められる。被告人には「心の理論」の障害に由来する特徴,つまり,ものごとを自分以外の者がその状況でどのように受け取るかを想像するのが不得手で,そのことが意思疎通の困難さをもたらしている。また,外界の事象と距離を置くことが苦手で,身の回りの出来事を自分にとって特別な意味があると理解してしまい,それが思うようにならないことから,被害妄想のような考えを結実させやすい。本人なりのこだわりが強く,臨機応変な対応が困難で,一定の行動パターンに固執しやすい。痛み刺激に鈍感である反面,音刺激には過敏という特徴もみられる。被告人は,中学生の頃から,自宅内での自分と家族の会話を他人が被告人に聞こえるように再現して話すという体験を繰り返しており,これは一種の幻聴といえるが,その機序は,過去の音声記憶が想起されるときに現在の出来事として体験されること(タイムスリップ現象)によるものと考えられる。被告人の鑑定面接での犯行に関する説明は,当初は単純な否認であったが,やがて,多人数で被害者を殺害したとか,他人に命令されて被害者を殺害したというような荒唐無稽なストーリーに変化しており,その内容からは,被告人に未熟で幼稚な空想にふけりやすい傾向があることが見て取れる。その他にも,被告人には,認知,作業の能力に偏りや障害があることが示唆されるエピソードも散見される。これらの特徴をDSM5の診断基準に照らすと,自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の診断基準を満たしており,そのうちの知能・言語の障害を伴わないもので,重症度はレベル1(支援を要する)に該当する。被告人は,かねて被害者兄弟が自転車やスケートボードに乗って会話するなどしているところに遭遇した折に,同人らが被告人の家族の会話を大きな声で再現していると認識していたが,これは,聴覚過敏やタイムスリップ現象の結果としての幻聴であったと考えられる。このような体験を重ねたことなどから,被告人は,被害者らがストーカー行為をしている悪人であるとの被害妄想を抱くに至っており,この妄想の形成には,聴覚過敏ゆえに被害者らの騒ぐ声がより気になりやすかったことが寄与している可能性も十分にある。その上で,被害者らは「暴力団員」,あるいは「不法入国者」であるとも考えていたが,これは,悪いことをする人は暴力団員ないし不法入国の外国人である,という整理されやすい図式が被告人によくはまったからと思われ,このように整理しやすい図式(パターン)を常に適用しやすいというのも自閉スペクトラム症の特徴である。本件犯行は,基本的に被害者による発声や行動に対する憤懣から攻撃したものと考えられるが,その憤懣は,聴覚過敏ゆえに被害者兄弟の発声を不快に感じやすかったこととともに,上記のような幻聴も加わり,被害者兄弟が被告人へのストーカー行為をする不法入国者,あるいは暴力団員であって,そうした悪人が自分の周りに数多くいるという妄想によって修飾ないし増幅され,動機の形成につながったものである。また,憤懣から犯行に移る過程には,殺害という行動がどのような結果を招き,社会的にどのように受け止められるかを推し量ることが正確にできていないという自閉スペクトラム症における想像力の障害が,行動選択面に影響を与えている。5 A医師は,これまで多数の重大事件で精神鑑定を手掛けてきた経験豊かな精神科医で,その識見や能力の高さは当事者双方も争っておらず,A鑑定は,意思疎通面の問題,聴覚の過敏さ,幻聴の特殊性など被告人の精神活動の特徴について,多方面から焦点を当てて考察したもので,鑑定の前提となった資料の選択も適切である。A鑑定をB鑑定と比較すると,被告人には被害者兄弟への被害妄想があり,それが動機の形成につながったこと,本件犯行時に易怒性などは出現しておらず,本人なりの意思決定に基づいて行動していたことなどの点では共通するが,被告人の抱えていた精神障害の内容が異なるのに伴い,被害妄想などが出現した機序やその内容,性質についての考察に相違がある。A鑑定では,B鑑定では疑問に思われた本件の犯意自体の奇妙さや事後の認否の態度の不可解さについても,得心がいく説明がなされているから,その信用性はより高いとみるべきである。A鑑定と原審関係証拠からすると,被告人の精神障害は,自閉スペクトラム症と診断できるものであること,本件の犯行の動機の中核は,被害者兄弟の発声や行動に対する憤懣が基本となり,それが,被害者兄弟が自分の家族の会話を再現しているというような幻聴,被害者兄弟がストーカー行為をしている暴力団員,あるいは不法入国者であるという妄想によって修飾ないし増幅されたと考えられること,このような憤懣を背景に,被告人は,遅くともCと会話した時点で,被害者の殺害を決意し,その意思に従って本件犯行に及んだこと,自閉スペクトラム症における想像力の障害が社会的に適切な行動選択を妨げ,被害者殺害という意思決定に影響していたものの,殺人が違法な行為であるとの認識自体は被告人にあったことなどを認めることができる。これらによれば,被告人には,被害者が悪人であるとの妄想があったとはいえ,その殺害が違法であることは理解できる程度の是非善悪の判断能力があり,自らの意思で行動を制御することにも支障はなかったから,犯行時には完全責任能力であったと解される。6 他方,弁護人は,弁論において,A鑑定を前提としても,以下の事情からすると,被告人の是非善悪の判断能力や行動の制御能力は,著しく障害されていたか,欠如していた疑いがある,と主張する。被告人は,自閉スペクトラム症ないしこれから派生した二次障害に起因する聴覚過敏,度重なる幻聴,これらの不快な体験に関する欲求不満や憤懣から生じた被害妄想,皮相的かつ訂正困難なパターン認識への囚われの影響によって,被害者に対する敵意ないし害意を抱くにいたっており,幻聴及び妄想という精神機能の障害が動機を形成したといえる。被告人は,自閉スペクトラム症に由来する心の理論の障害により,常識ないし道徳規範を共有し,内在化することが困難であるがゆえに,自分自身の行動を常識に即して合理的かつ規範的に選択し,制御する能力を著しく欠いていた。所論の指摘のうち,被告人には幻聴及び妄想と評価できる精神障害があり,これが動機の形成に寄与したことや,心の理論の障害により,自分の行動がどのような結果を招き,どのような評価を受けるかを常識に照らして判断する能力が劣っており,そのために合理的かつ規範的な行動選択に失敗して,被害者の殺害を決意したと考えられることは,A鑑定も示唆するところといえる。もっとも,A鑑定によれば,被告人の妄想の中核は,被害者兄弟が嫌がらせをしているというもので,同人らが暴力団員ないし不法入国者であるとの妄想で増幅等されたとはいえ,生命,身体に対する切迫感や危機感が生じていたわけではなく,動機の根本は,憤懣といえる。そして,被告人は,障害により他者の視点を持つことが困難であるため,自分が殺人をした場合,捜査から犯行を隠し通すことはかなり難しく,犯行が発覚すれば,周囲から厳しく非難されて罰を受けるということが現実的なものとして想像できず,自分だけの未熟な視点でもって憤懣を被害者の殺害の決意に結びつけてしまったのであるが,殺人が犯罪で,許されない行為であること自体は知っており,それゆえに甚だ不十分ながらも犯行直後に刃物や衣服を洗うなどの罪証隠滅工作を施したり,問い詰められない限りは犯行を否認する供述をしたりしているものと考えられる。また,被告人は,本件の数日前には,インターネットにより入国管理局に被害者兄弟を通報していることからすると,それが非常識な手段であることを考慮に入れても,殺害以外に憤懣を解決する方策を全く思いつくことができない状況であったとは解されない。以上からすると,被告人は,被害者兄弟への憤懣が根拠のないものであることが理解できず,殺人が被害者に与える苦痛や社会に与える影響についての理解や共感に基づいて自己の行動を規律するというような健全な違法性の意識がないため,容易に殺意を形成し,しかも,周囲から非難され,罰を受ける現実的なおそれが感じられなかったから,脆弱な反対動機しか形成できなかったと考えられ,それらが本件に大きく寄与したこと自体はそのとおりと考えられる。しかし,本件の直接の動機は,憤懣という了解可能なもので,被告人がともかくも殺人が処罰の対象となる犯罪であることは理解しており,適切さを度外視すれば他の行為を選ぶことも可能であったから,反対動機を形成して思い止まることがかなり困難であったとはいえず,是非善悪の判断能力が欠如していたとか,制限の程度が著しかったということはできない。そして,被告人が,被害者の殺害を決意した後,それを実現するために合理的な行動をとっていることは,関係証拠から十分に認めることができる。被害者を多数回突き刺したり,切り付けたりした場面では興奮状態になっていた可能性があるとしても,それは殺人の事案で通常あり得る事態であるし,以後の行動に特段の異常性はうかがえないから,行動を制御する能力に不足があったとも認められない。弁護人が,所論の中で指摘する妄想等の動機への影響や,常識や道徳規範の欠如が合理的な選択肢を狭めた可能性は,被告人の責任の程度を軽くする要素として量刑において十分に考慮すべき事情に当たるが,本件当時,被告人が心神喪失ないし心神耗弱状態にあったと認めるべき事情になるとはいえない。7 以上によれば,原判決の責任能力についての認定は,公判前整理手続段階で当事者双方が犯行時に被告人が心神耗弱であったと主張していたことに引きずられ,その前提となったB鑑定に,鑑定の前提となる事実関係について十分な考察を加えておらず,かつ,精神障害の犯行に対する影響の程度について一般的な基準によらずに判断している面があることを見落としたものというべきで,当審において採用したより信用性の高いA鑑定に照らしてみれば,それにより不合理な結論に至ったものといわざるを得ない。8 本件においては,弁護人からの控訴趣意はもとより,検察官からの控訴趣意も責任能力についての原判決の事実認定の誤認を主張しておらず,弁護人は,こうした場合に裁判所が職権判断で事実誤認を理由に原判決を破棄し,被告人に不利益となる自判をすることは,当事者主義の観点及び不利益変更禁止の趣旨から容認できないと主張する。不利益変更禁止の趣旨をいう点は,本件のように検察官側からも控訴されている事案では,説得的なものではないが,控訴審においても当事者主義が基調とされることは確かであり,それゆえに,一審判決のうちの被告人に有利な判断が分割可能であって,その判断に検察官が控訴せず,あるいは,控訴趣意での主張がないと,控訴審裁判所は,その判断に対して職権調査を行うことができなくなる場合がある(攻防対象論)。しかしながら,責任能力の認定の判断は,当該事件が控訴された以上,有罪・無罪のみならず,量刑を判断する上でも避けることはできない問題であるから,一審判決が心神耗弱を前提に有罪認定した判決に対し,当事者双方から責任能力の認定に対する主張がない場合であっても,責任能力の問題が攻防対象から外れることは考えられない。したがって,控訴審裁判所は,当事者の控訴趣意にかかわらず,一審判決の責任能力の認定に対して職権調査を及ぼし得ると解される。職権調査を行い得る以上,調査の結果,原判決のこの点の認定が不合理であるとの結論に至った場合,事実誤認を理由に原判決を破棄し得ることも当然であり,被告人に不利益な自判のみ禁じられるとする理由もない。本件では,原審の公判前整理手続段階から被告人が心神耗弱であったことは争いがなかったとはいえ,論告・弁論での当事者の主張をみると,B鑑定の信用性や被告人に刑事責任を問いうる程度については相当の隔たりがあったことがうかがえるから,原審裁判所は,これらを争点として明示し,事実認定あるいは量刑の理由の中で明確に判断する契機を与えられており,そうすべきであったといえる。しかるに,原判決は,これらを実質的な争点と自覚することなく,B鑑定の妥当性について問題があることを見過ごし,責任能力の障害の程度が著しいとの記載に漫然と依拠して,被告人が犯行当時心神耗弱状態にあった旨を認定したものと考えられ,その結果,実態とは異なる責任能力判断に至ったと認められるから,破棄を免れない。第5 破棄自判よって,検察官及び弁護人からの各量刑不当の控訴趣意に対する判断を省略し,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄する。その上で,原審で重要な量刑事情については立証が尽くされており,当審においてA鑑定が実施され,改めて被害者の実父の心情に関する意見陳述もなされ,量刑判断に必要な資料が出そろっていること,本件の発生から既に4年以上が経過していることなどを考慮し,同法400条ただし書により当裁判所において更に判決する。(当審において新たに認定した罪となるべき事実)被告人は,1 自閉スペクトラム症の影響により,かねて自分に嫌がらせをしている悪人と考えていた被害者(当時11歳)への憤懣を晴らすため,平成27年2月5日午後4時14分頃,和歌山県紀の川市 a 番地 b 東側空き地において,被害者に対し,殺意をもって,持っていた鉈様の刃物(刃体の長さ約48.2センチメートル)で,その右前胸部,左腰背部等を突き刺し,その頭部を切り付けるなどし,よって,同日午後7時5分頃,D病院において,同人を心臓刺創による失血により死亡させて殺害した。2 業務その他正当な理由による場合でないのに,同日午後4時14分頃,前記空き地において,前記鉈様の刃物1本を携帯した。(量刑の理由)本件は,自閉スペクトラム症を有していた被告人が,その影響で近隣に住む小学生の男児がストーカー行為をしているなどの妄想を抱き,憤懣から,男児を刃物で突き刺すなどして殺害した事案である。
事案の概要
令和元年7月16日
大阪高等裁判所 第1刑事部
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損害賠償請求控訴事件
平成30(行コ)15
本件は,愛知県豊橋市(以下「豊橋市」という。)の住民である被控訴人らが,控訴人補助参加人(以下,単に「補助参加人」という。)は,原判決別紙物件目録記載の各土地(以下「本件各土地」という。)のうち同目録記載2及び10の各土地を除くもの(以下「本件売却土地」という。)を豊橋市に返還すべき債務を負っていたにもかかわらず,補助参加人及びその連結子会社においてこれらの土地を積水ハウス株式会社(以下「積水ハウス」という。)に売却し,上記返還債務を履行不能としたものであり,これは補助参加人による債務不履行又は不法行為に当たるところ,豊橋市の執行機関である控訴人は補助参加人に対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,控訴人に対し,補助参加人に対して損害賠償金63億円(本件売却土地の売却代金相当額)及びこれに対する履行期限が到来した後又は不法行為の日である平成27年10月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することを求める住民訴訟である。
事案の概要
令和元年7月16日
名古屋高等裁判所 民事第1部
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[下級] [刑事] 平成30(う)2076  146Views
出入国管理及び難民認定法違反幇助
令和元年7月12日
東京高等裁判所 第5刑事部
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[下級] [刑事] 平成31(わ)2  169ViewsMoreinfo
殺人,死体遺棄被告事件
平成31(わ)2
被告人が,別居中の妻である被害者から復縁や子の引渡しを拒絶されたことなどから,被害者の殺害を決意し,被告人方において,ハンマーで背部を殴打した上,ハウスバンドで頸部を絞めるなどして被害者を殺害し,その死体を遺棄した殺人,死体遺棄の事案。裁判所は,被告人が,強固な殺意に基づき,予め犯行計画を立てて,それを確実に実行したこと,被害者が息子を虐待しているのではないかという懸念を抱いていたのだとしても,殺人以外の選択肢は多数あったはずであり,そうした他の選択肢を選択せずに,殺人,死体遺棄という手段を選択した被告人の判断は厳しく非難されるべきであること,被害結果が重大であることなどからすれば,被告人の刑事責任は重く,本件は家族関係を動機として配偶者を殺害した殺人の事案の中では最も重い類型のものとして位置づけられるなどとして,被告人に対し,懲役18年を言い渡した。
判示事項の要旨
令和元年7月12日
札幌地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成30(わ)971  163ViewsMoreinfo
現住建造物等放火被告事件
平成30(わ)971
被告人が,共同住宅に火をつけ,その一部を焼損した現住建造物等放火罪の事案において,懲役6年に処した事例。
判示事項の要旨
令和元年7月12日
札幌地方裁判所
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