事件番号平成19(行コ)33
事件名墓地経営許可処分取消請求控訴事件
裁判所福岡高等裁判所 第3民事部
裁判年月日平成20年5月27日
結果棄却
原審裁判所福岡地方裁判所
原審事件番号平成18(行ウ)1
原審結果却下
判示事項の要旨1 Xらは,Yに対し,Y市長がA寺に対して行ったB霊園の経営許可処分(本件処分)には名義貸しや脱法的申請等の違法があるなどとして,その取消しを求めたのに対し,Yは,Xらに原告適格がないと主張し,訴えの却下を求めた。原判決は,ほぼYの主張を採用し,墓地,埋葬等に関する法律(以下「法」という。)やF県墓地等の経営の許可等に関する規則(以下「規則」という。)は専ら一般的利益を保護するものであり,Xらの個別的利益を保護するものではないから,Xらの原告適格は認められないと判断し,その訴えをいずれも却下した。
2 本判決も,Xらの原告適格を認めることはできないとして,Xらの控訴をいずれも棄却したが,その理由付けは,原判決とは大いに異なる。すなわち,原判決は,本件と同種の事案における判例(最高裁判所第2小法廷平成12年3月17日判決・判例時報1708号62頁)を踏襲したのに対し,本判決は,行政事件訴訟法9条1項所定の当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」の解釈について,同法の改正後に現れた判例(最高裁判所大法廷平成17年12月7日判決・民集59巻10号2645頁)と同様の立場に立つことを明らかにし,その上で,法及び規則の文言や立法趣旨等からすれば,第一次的には,国民の宗教的感情や公衆衛生といった社会公共の利益を保護する趣旨に出たものと解すべきであるとしつつ,他方で,墓地や火葬場といった嫌忌施設が自らの居住する住宅の周辺に設置されるということになれば,相応の精神的苦痛を受け,或いは,その設置によって,周辺の地価が下落するというような事態もまま見受けられるところであり,そのような精神的苦痛等は,当該嫌忌施設に近接すればするほど強くなる関係にあるものであるから,法や規則は,上記のような社会公共の利益と併せて,嫌忌施設であるがゆえに生ずる精神的苦痛等から免れるべき利益を個別的利益として保護していると解するのが相当であり,このような解釈は規則3条1号に具体的に住宅等が列挙されていることにも根拠を見出すことができるとした。
  その上で,本判決は,Xらの主張する被侵害利益について検討を加え,これらが法や規則によって保護されている個別的利益に当たらず,Xらの主張する被侵害利益がいずれも認められないなどとして,その原告適格を否定したものである。

                                 以  上
事件番号平成19(行コ)33
事件名墓地経営許可処分取消請求控訴事件
裁判所福岡高等裁判所 第3民事部
裁判年月日平成20年5月27日
結果棄却
原審裁判所福岡地方裁判所
原審事件番号平成18(行ウ)1
原審結果却下
判示事項の要旨
1 Xらは,Yに対し,Y市長がA寺に対して行ったB霊園の経営許可処分(本件処分)には名義貸しや脱法的申請等の違法があるなどとして,その取消しを求めたのに対し,Yは,Xらに原告適格がないと主張し,訴えの却下を求めた。原判決は,ほぼYの主張を採用し,墓地,埋葬等に関する法律(以下「法」という。)やF県墓地等の経営の許可等に関する規則(以下「規則」という。)は専ら一般的利益を保護するものであり,Xらの個別的利益を保護するものではないから,Xらの原告適格は認められないと判断し,その訴えをいずれも却下した。
2 本判決も,Xらの原告適格を認めることはできないとして,Xらの控訴をいずれも棄却したが,その理由付けは,原判決とは大いに異なる。すなわち,原判決は,本件と同種の事案における判例(最高裁判所第2小法廷平成12年3月17日判決・判例時報1708号62頁)を踏襲したのに対し,本判決は,行政事件訴訟法9条1項所定の当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」の解釈について,同法の改正後に現れた判例(最高裁判所大法廷平成17年12月7日判決・民集59巻10号2645頁)と同様の立場に立つことを明らかにし,その上で,法及び規則の文言や立法趣旨等からすれば,第一次的には,国民の宗教的感情や公衆衛生といった社会公共の利益を保護する趣旨に出たものと解すべきであるとしつつ,他方で,墓地や火葬場といった嫌忌施設が自らの居住する住宅の周辺に設置されるということになれば,相応の精神的苦痛を受け,或いは,その設置によって,周辺の地価が下落するというような事態もまま見受けられるところであり,そのような精神的苦痛等は,当該嫌忌施設に近接すればするほど強くなる関係にあるものであるから,法や規則は,上記のような社会公共の利益と併せて,嫌忌施設であるがゆえに生ずる精神的苦痛等から免れるべき利益を個別的利益として保護していると解するのが相当であり,このような解釈は規則3条1号に具体的に住宅等が列挙されていることにも根拠を見出すことができるとした。
  その上で,本判決は,Xらの主張する被侵害利益について検討を加え,これらが法や規則によって保護されている個別的利益に当たらず,Xらの主張する被侵害利益がいずれも認められないなどとして,その原告適格を否定したものである。

                                 以  上
このエントリーをはてなブックマークに追加