事件番号平成24(行コ)184
事件名公金違法支出損害賠償請求控訴事件(原審・宇都宮地方裁判所平成17年(行ウ)第15号)
裁判所東京高等裁判所
裁判年月日平成25年5月30日
事案の概要本件は,栃木県の旧α町(以下「α町」という。)が浄水場用地として土地を購入したことについて,同土地を取得する必要性はなくその代金額も適正価格よりも著しく高額であるのに,控訴人補助参加人A(以下「A」という。)との間で同土地の売買契約(以下「本件売買」ともいう。)を締結したことが違法であるとして,α町と旧β町(以下「β町」という。)との合併により設置されたさくら市の住民である被控訴人が,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市の執行機関である控訴人に,上記売買契約の締結当時のα町の町長であった控訴人補助参加人B(以下「B」という。)に対して,不法行為に基づく損害金1億2192万円及びこれに対する平成17年1月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するように求める住民訴訟である。
判示事項合併前の町が適正価格を上回る額で浄水場用地の売買契約を締結し,代金を支出したことは違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,合併前の町長であった者個人に損害賠償の請求をすることを合併後の市長に対して求める請求に係る訴訟の係属中にされた,同法96条1項10号に基づく前記請求に係る損害賠償請求権を放棄する旨の議決が,有効とされた事例
裁判要旨合併前の町が適正価格を上回る額で浄水場用地の売買契約を締結し,代金を支出したことは違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,合併前の町長であった者個人に損害賠償の請求をすることを合併後の市長に対して求める請求に係る訴訟の係属中にされた,同法96条1項10号に基づく前記請求に係る損害賠償請求権を放棄する旨の議決につき,売買における代金額が高額に過ぎる結果に至った経緯について,合併前の町長にとって酌むべき事情も認められるから,同人の帰責性の程度は相応の程度にとどまっていると評価すべきであり,これを前提に,前記議決の趣旨及び経緯について検討すると,浄水場用地の取得は,町の水道事業に係る公益的な政策目的に沿って町の執行機関である町長が行うべき本来の責務として行う職務の遂行であるといえるし,売買の代金額は町議会の議決を得た用地購入費の予算の枠を下回るものであったところ,このような職務の遂行の過程における行為に関し,損害賠償請求権が行使されることにより直ちに多額の損害賠償責任の徴求がされ,執行機関が著しく重い個人責任の負担を負うことになった場合には,以後,執行機関においては,職務の遂行に伴い個人の資力を超える高額の賠償の負担を負う危険を避けようとして,長期的な観点から一定の政策目的に沿ったそのような危険を伴う職務の遂行に萎縮的な影響が及ぶなどの状況が生ずるおそれもあり,賠償責任につき一定の酌むべき事情が存するのであれば,その限りにおいて議会の議決を経て全部又は一部の免責がされることは,そのような状況を回避することに資する面もあるのであって,以上を総合すると,前記議決は,合併前の町長の賠償責任を何ら合理的な理由もなく免れさせることを企図したものでないということができるから,前記議決は,議会の裁量権の逸脱又はその濫用に当たるものとは認められないとして有効であるとされた事例
事件番号平成24(行コ)184
事件名公金違法支出損害賠償請求控訴事件(原審・宇都宮地方裁判所平成17年(行ウ)第15号)
裁判所東京高等裁判所
裁判年月日平成25年5月30日
事案の概要
本件は,栃木県の旧α町(以下「α町」という。)が浄水場用地として土地を購入したことについて,同土地を取得する必要性はなくその代金額も適正価格よりも著しく高額であるのに,控訴人補助参加人A(以下「A」という。)との間で同土地の売買契約(以下「本件売買」ともいう。)を締結したことが違法であるとして,α町と旧β町(以下「β町」という。)との合併により設置されたさくら市の住民である被控訴人が,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市の執行機関である控訴人に,上記売買契約の締結当時のα町の町長であった控訴人補助参加人B(以下「B」という。)に対して,不法行為に基づく損害金1億2192万円及びこれに対する平成17年1月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するように求める住民訴訟である。
判示事項
合併前の町が適正価格を上回る額で浄水場用地の売買契約を締結し,代金を支出したことは違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,合併前の町長であった者個人に損害賠償の請求をすることを合併後の市長に対して求める請求に係る訴訟の係属中にされた,同法96条1項10号に基づく前記請求に係る損害賠償請求権を放棄する旨の議決が,有効とされた事例
裁判要旨
合併前の町が適正価格を上回る額で浄水場用地の売買契約を締結し,代金を支出したことは違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,合併前の町長であった者個人に損害賠償の請求をすることを合併後の市長に対して求める請求に係る訴訟の係属中にされた,同法96条1項10号に基づく前記請求に係る損害賠償請求権を放棄する旨の議決につき,売買における代金額が高額に過ぎる結果に至った経緯について,合併前の町長にとって酌むべき事情も認められるから,同人の帰責性の程度は相応の程度にとどまっていると評価すべきであり,これを前提に,前記議決の趣旨及び経緯について検討すると,浄水場用地の取得は,町の水道事業に係る公益的な政策目的に沿って町の執行機関である町長が行うべき本来の責務として行う職務の遂行であるといえるし,売買の代金額は町議会の議決を得た用地購入費の予算の枠を下回るものであったところ,このような職務の遂行の過程における行為に関し,損害賠償請求権が行使されることにより直ちに多額の損害賠償責任の徴求がされ,執行機関が著しく重い個人責任の負担を負うことになった場合には,以後,執行機関においては,職務の遂行に伴い個人の資力を超える高額の賠償の負担を負う危険を避けようとして,長期的な観点から一定の政策目的に沿ったそのような危険を伴う職務の遂行に萎縮的な影響が及ぶなどの状況が生ずるおそれもあり,賠償責任につき一定の酌むべき事情が存するのであれば,その限りにおいて議会の議決を経て全部又は一部の免責がされることは,そのような状況を回避することに資する面もあるのであって,以上を総合すると,前記議決は,合併前の町長の賠償責任を何ら合理的な理由もなく免れさせることを企図したものでないということができるから,前記議決は,議会の裁量権の逸脱又はその濫用に当たるものとは認められないとして有効であるとされた事例
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