事件番号平成23(行ウ)103等
事件名一般疾病医療費支給申請却下処分取消等請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日平成25年10月24日
事案の概要本件は,広島市に投下された原子爆弾により被爆し,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)に基づく被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者である原告A,承継前原告B及びE(以下「本件被爆者ら」という。)が,大韓民国(以下「韓国」という。)に居住し,韓国の医療機関(病院,診療所及び薬局をいう。以下同じ。)で医療を受けて現実に負担した医療費について,原告A,承継前原告B及び原告D(以下「本件申請者ら」という。)が大阪府知事に対し被爆者援護法18条の一般疾病医療費の支給を申請したところ(以下「本件各申請」という。),大阪府知事によって本件各申請を却下された(以下「本件各却下処分」という。)ことから,原告らが,①被告大阪府に対し,本件各却下処分の各取消しを求めるとともに,②被告らに対し,本件各却下処分が違法である(被告大阪府関係),在外被爆者(被爆者であって国内に居住地及び現在地を有しないものをいう。被爆者援護法の改正に係る平成20年法律第78号附則(以下「平成20年改正附則」という。)2条1項参照。以下同じ。)に対して一般疾病医療費の支給を認めてこなかったこと及び本件各却下処分に先立ち被告大阪府に在外被爆者からの一般疾病医療費支給申請は却下が相当である旨回答したことが違法である(被告国関係)などとして,国家賠償法に基づき各110万円及びこれらに対する本件各却下処分の日である平成23年3月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
判示事項原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律1条にいう「被爆者」であって国内に居住地及び現在地を有しないものがその居住国の医療機関で医療を受けた場合が,同法18条1項にいう「緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたとき」に当たるか
判示事項の要旨1 大韓民国に居住し,現在する在外被爆者が同国の医療機関から受けた医療についてした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律18条に基づく一般疾病医療費支給申請に対して大阪府知事がした却下処分を違法として取り消した事例
2 上記却下処分等が国家賠償法上違法であるとはいえないとして被告国及び被告大阪府に対する国家賠償請求が棄却された事例
裁判要旨原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律は社会保障と国家補償の性格を併有する特殊な立法と解され,その趣旨や性格に鑑みれば,同法の第三章「援護」の規定が在外被爆者にも適用があるか否かについては,当該規定を在外被爆者に適用することはおよそ予定されていないものと限定解釈するのが合理的であると認められる場合でない限りは,当該規定は在外被爆者にも適用されるものと解するのが相当であるとした上で,同法18条に基づく一般疾病医療費の支給に対する適正性の制度的な担保は重要であるものの,当該適正性を担保する手段の不存在を理由として同規定を在外被爆者に適用することがおよそ予定されていないと限定解釈することが合理的であるとは認められず,また,同法の立法者意思としても同法18条に基づく一般疾病医療費の支給対象から在外被爆者を排除することが明らかであったともいえない以上,同条は,社会保険各法に加入していない在外被爆者が国外の医療機関で医療を受けた場合を一般疾病医療費の支給対象から除外するものではないと解するのが相当であり,在外被爆者がその居住国の医療機関で医療を受けた場合は,日本に渡航して被爆者一般疾病医療機関での医療を受けることが容易であり,かつ,当該居住国の医療機関での医療を受けずに日本で医療を受ける方が合理的であるなどの特段の事情がない限り,被爆者援護法18条1項にいう「緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたとき」に当たるとし,韓国に居住し,現在する前記原子爆弾被爆者らが韓国の医療機関で受けた医療に係る同法18条の一般疾病医療費の支給申請について,前記特段の事情も見受けられないから,前記申請を却下した大阪府知事による同申請却下処分はいずれも違法であるとして,その取消請求を認容した事例
事件番号平成23(行ウ)103等
事件名一般疾病医療費支給申請却下処分取消等請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日平成25年10月24日
事案の概要
本件は,広島市に投下された原子爆弾により被爆し,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)に基づく被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者である原告A,承継前原告B及びE(以下「本件被爆者ら」という。)が,大韓民国(以下「韓国」という。)に居住し,韓国の医療機関(病院,診療所及び薬局をいう。以下同じ。)で医療を受けて現実に負担した医療費について,原告A,承継前原告B及び原告D(以下「本件申請者ら」という。)が大阪府知事に対し被爆者援護法18条の一般疾病医療費の支給を申請したところ(以下「本件各申請」という。),大阪府知事によって本件各申請を却下された(以下「本件各却下処分」という。)ことから,原告らが,①被告大阪府に対し,本件各却下処分の各取消しを求めるとともに,②被告らに対し,本件各却下処分が違法である(被告大阪府関係),在外被爆者(被爆者であって国内に居住地及び現在地を有しないものをいう。被爆者援護法の改正に係る平成20年法律第78号附則(以下「平成20年改正附則」という。)2条1項参照。以下同じ。)に対して一般疾病医療費の支給を認めてこなかったこと及び本件各却下処分に先立ち被告大阪府に在外被爆者からの一般疾病医療費支給申請は却下が相当である旨回答したことが違法である(被告国関係)などとして,国家賠償法に基づき各110万円及びこれらに対する本件各却下処分の日である平成23年3月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
判示事項
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律1条にいう「被爆者」であって国内に居住地及び現在地を有しないものがその居住国の医療機関で医療を受けた場合が,同法18条1項にいう「緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたとき」に当たるか
判示事項の要旨
1 大韓民国に居住し,現在する在外被爆者が同国の医療機関から受けた医療についてした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律18条に基づく一般疾病医療費支給申請に対して大阪府知事がした却下処分を違法として取り消した事例
2 上記却下処分等が国家賠償法上違法であるとはいえないとして被告国及び被告大阪府に対する国家賠償請求が棄却された事例
裁判要旨
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律は社会保障と国家補償の性格を併有する特殊な立法と解され,その趣旨や性格に鑑みれば,同法の第三章「援護」の規定が在外被爆者にも適用があるか否かについては,当該規定を在外被爆者に適用することはおよそ予定されていないものと限定解釈するのが合理的であると認められる場合でない限りは,当該規定は在外被爆者にも適用されるものと解するのが相当であるとした上で,同法18条に基づく一般疾病医療費の支給に対する適正性の制度的な担保は重要であるものの,当該適正性を担保する手段の不存在を理由として同規定を在外被爆者に適用することがおよそ予定されていないと限定解釈することが合理的であるとは認められず,また,同法の立法者意思としても同法18条に基づく一般疾病医療費の支給対象から在外被爆者を排除することが明らかであったともいえない以上,同条は,社会保険各法に加入していない在外被爆者が国外の医療機関で医療を受けた場合を一般疾病医療費の支給対象から除外するものではないと解するのが相当であり,在外被爆者がその居住国の医療機関で医療を受けた場合は,日本に渡航して被爆者一般疾病医療機関での医療を受けることが容易であり,かつ,当該居住国の医療機関での医療を受けずに日本で医療を受ける方が合理的であるなどの特段の事情がない限り,被爆者援護法18条1項にいう「緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたとき」に当たるとし,韓国に居住し,現在する前記原子爆弾被爆者らが韓国の医療機関で受けた医療に係る同法18条の一般疾病医療費の支給申請について,前記特段の事情も見受けられないから,前記申請を却下した大阪府知事による同申請却下処分はいずれも違法であるとして,その取消請求を認容した事例
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