事件番号平成22(行ウ)278
事件名損害賠償(住民訴訟)請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成25年12月19日
事案の概要本件は,渋谷区の住民である原告らが,① 同区の長の職にあるBについて,同区の職員が,同区の行政財産である渋谷区立勤労福祉会館(以下,単に「勤労福祉会館」という。)の2階部分を地方自治法238条の4第7項の規定による行政財産の使用許可によることなく違法に本件法人に使用させ,その使用につき渋谷区行政財産使用料条例(昭和39年渋谷区条例第17号)の規定に違反して本件法人から使用料等を徴収しなかったことにより,渋谷区に勤労福祉会館の2階部分の使用料等に相当する474万0212円の損害を被らせたこと,及び,本件法人に勤労福祉会館の2階部分を使用させるため,本来渋谷区において実施する必要のない改修工事をし,その費用を支出したことにより,渋谷区にその改修工事費用に相当する1254万7500円の損害を被らせたことにつき,上記職員に対する指揮監督上の義務の懈怠があると主張するとともに,② 本件法人について,上記のとおり勤労福祉会館の2階部分を使用することにより,法律上の原因なく上記使用料等に相当する利益を受け,そのために渋谷区に同額の損失を及ぼし,また,渋谷区の職員ないしBと共同して上記改修工事をしたことにより,渋谷区に上記改修工事費用に相当する損害を被らせたと主張し,(1) 渋谷区の執行機関である被告は,本件法人に対する上記使用料等及び上記改修工事費用に係る不当利得返還請求権及び不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとして,被告に対し,地方自治法242条の2第1項3号の規定により,本件法人に対する上記合計1728万7712円の不当利得返還請求権及び損害賠償請求権の行使を怠る事実の違法確認を求めるとともに,(2) 同項4号の規定により,被告に対し,本件法人に対する上記不当利得返還請求権及び損害賠償請求権並びにBに対する不法行為(上記指揮監督上の義務の懈怠)に基づく損害賠償請求権に基づいて,本件法人及びBに対し,上記合計1728万7712円及びこれに対する平成22年7月7日(本件法人による不当利得の日の翌日並びに本件法人及びBによる不法行為の日のいずれよりも後の日である本件訴状の送達の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息の連帯支払をすることを請求するよう求める事案である。
判示事項1 普通地方公共団体との間でその権能に属する事務の一部に関する業務委託協定を締結している私人は,当該普通地方公共団体の所有する行政財産を排他的に使用するに当たり,地方自治法238条の4第7項の規定による使用許可を受けることを要するか
2 普通地方公共団体が青少年健全育成に関する事務の一部を法人に委託し,その委託費用の支払に代えてその所有する建物の一部を当該法人に無償で使用させたことが違法でないとされた事例
裁判要旨1 普通地方公共団体との間でその権能に属する事務の一部に関する業務委託協定を締結している私人は,当該協定が違法かつ私法上無効でない限り,当該協定に定められた範囲内において当該普通地方公共団体の所有する行政財産を排他的に使用することができ,必ずしも地方自治法238条の4第7項に規定による使用許可を受けることを要しない。
2 普通地方公共団体が地域における青少年健全育成活動に携わる民間団体の設立及び運営を支援する事業を特定非営利活動法人に委託し,その委託費用の支払に代えてその所有する建物の一部を当該法人に無償で使用させたことは,当該普通地方公共団体が青少年健全育成を総合的に推進するため地域との連携が不可欠であるとの方針の下で施策を行ってきたこと,当該法人の設立趣旨及び活動方針がこれに沿うものであったこと,一般に前記事業に係る特別な知識経験等が普通地方公共団体において十分に蓄積し承継されていないことなど判示の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したとはいえず,違法でない。
事件番号平成22(行ウ)278
事件名損害賠償(住民訴訟)請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成25年12月19日
事案の概要
本件は,渋谷区の住民である原告らが,① 同区の長の職にあるBについて,同区の職員が,同区の行政財産である渋谷区立勤労福祉会館(以下,単に「勤労福祉会館」という。)の2階部分を地方自治法238条の4第7項の規定による行政財産の使用許可によることなく違法に本件法人に使用させ,その使用につき渋谷区行政財産使用料条例(昭和39年渋谷区条例第17号)の規定に違反して本件法人から使用料等を徴収しなかったことにより,渋谷区に勤労福祉会館の2階部分の使用料等に相当する474万0212円の損害を被らせたこと,及び,本件法人に勤労福祉会館の2階部分を使用させるため,本来渋谷区において実施する必要のない改修工事をし,その費用を支出したことにより,渋谷区にその改修工事費用に相当する1254万7500円の損害を被らせたことにつき,上記職員に対する指揮監督上の義務の懈怠があると主張するとともに,② 本件法人について,上記のとおり勤労福祉会館の2階部分を使用することにより,法律上の原因なく上記使用料等に相当する利益を受け,そのために渋谷区に同額の損失を及ぼし,また,渋谷区の職員ないしBと共同して上記改修工事をしたことにより,渋谷区に上記改修工事費用に相当する損害を被らせたと主張し,(1) 渋谷区の執行機関である被告は,本件法人に対する上記使用料等及び上記改修工事費用に係る不当利得返還請求権及び不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとして,被告に対し,地方自治法242条の2第1項3号の規定により,本件法人に対する上記合計1728万7712円の不当利得返還請求権及び損害賠償請求権の行使を怠る事実の違法確認を求めるとともに,(2) 同項4号の規定により,被告に対し,本件法人に対する上記不当利得返還請求権及び損害賠償請求権並びにBに対する不法行為(上記指揮監督上の義務の懈怠)に基づく損害賠償請求権に基づいて,本件法人及びBに対し,上記合計1728万7712円及びこれに対する平成22年7月7日(本件法人による不当利得の日の翌日並びに本件法人及びBによる不法行為の日のいずれよりも後の日である本件訴状の送達の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息の連帯支払をすることを請求するよう求める事案である。
判示事項
1 普通地方公共団体との間でその権能に属する事務の一部に関する業務委託協定を締結している私人は,当該普通地方公共団体の所有する行政財産を排他的に使用するに当たり,地方自治法238条の4第7項の規定による使用許可を受けることを要するか
2 普通地方公共団体が青少年健全育成に関する事務の一部を法人に委託し,その委託費用の支払に代えてその所有する建物の一部を当該法人に無償で使用させたことが違法でないとされた事例
裁判要旨
1 普通地方公共団体との間でその権能に属する事務の一部に関する業務委託協定を締結している私人は,当該協定が違法かつ私法上無効でない限り,当該協定に定められた範囲内において当該普通地方公共団体の所有する行政財産を排他的に使用することができ,必ずしも地方自治法238条の4第7項に規定による使用許可を受けることを要しない。
2 普通地方公共団体が地域における青少年健全育成活動に携わる民間団体の設立及び運営を支援する事業を特定非営利活動法人に委託し,その委託費用の支払に代えてその所有する建物の一部を当該法人に無償で使用させたことは,当該普通地方公共団体が青少年健全育成を総合的に推進するため地域との連携が不可欠であるとの方針の下で施策を行ってきたこと,当該法人の設立趣旨及び活動方針がこれに沿うものであったこと,一般に前記事業に係る特別な知識経験等が普通地方公共団体において十分に蓄積し承継されていないことなど判示の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したとはいえず,違法でない。
このエントリーをはてなブックマークに追加