事件番号平成24(行ウ)106
事件名原爆症認定申請却下処分取消等請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日平成26年3月20日
事案の概要本件は,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)1条に定める被爆者である原告が,厚生労働大臣に対し,同法11条1項に定める厚生労働大臣の認定(以下「原爆症認定」という。)を受けるため,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令(以下「被爆者援護法施行令」という。)8条1項に定める申請(以下「原爆症認定申請」という。)をしたが,厚生労働大臣が「現に医療を要する状態にある」とはいえないとして,上記申請を却下した(以下「本件却下処分」という。)のが違法であるなどとして,本件却下処分の取消しを求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づき300万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年6月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
判示事項1 被爆者援護法10条1項の要医療性の要件の解釈
2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定申請に係る骨髄異形成症候群について,同法10条1項の要医療性が認められた事例
判示事項の要旨1 要医療性が認められないことを理由にされた原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の申請を却下する処分が違法であるとして取り消された事例
2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の申請につき,原爆症認定の要件の充足に関する判断を誤って却下したことが国家賠償法上違法とはいえないとされた事例
裁判要旨1 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定申請に係る申請疾病について,定期検査等によって当該疾病が悪化していないかどうか経過観察をするにとどまり,積極的な治療行為を伴わないような場合については,基本的には,同法10条1項にいう「医療を要する状態にある場合」に当たらないが,そのような場合であっても,当該申請疾病の予後として一般に悪化することが予想され,その悪化の度合いに応じてそれに的確に対処するための積極的な治療行為を行うことを要することとなる場合などは,医師による定期的な経過観察自体が当該疾病を治療するために必要不可欠な行為といえるのであって,そのようなものとして医師による定期的な経過観察を受けているような場合には,当該申請疾病につき「現に医療を要する状態にある」ものとして,要医療性が認められる。
2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定申請に係る骨髄異形成症候群について,その申請時及び却下処分時において積極的な治療を受けておらず,経過観察がされているにとどまっている状態にあったものの,骨髄異形成症候群の予後は一般に悪化することが予想されることに加え,血液検査の結果においては,白血球数,赤血球数,ヘモグロビン量,血小板数,好中球数のいずれもが減少傾向にあり,その数値の推移からは,今後も血球数等が更に減少していくことが十分に予想され,赤血球減少に伴う貧血,白血球減少に伴う易感染状態,血小板減少に伴う出血傾向といった臨床症状を呈し,赤血球輸血,血小板輸血等の積極的な治療が必要になることが想定される状態にあるといえることからすると,当該骨髄異形成症候群は,その悪化の度合いに応じてそれに的確に対処するための積極的な治療行為を要することとなるような場合であったといえ,同法10条1項の要医療性が認められる。
事件番号平成24(行ウ)106
事件名原爆症認定申請却下処分取消等請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日平成26年3月20日
事案の概要
本件は,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)1条に定める被爆者である原告が,厚生労働大臣に対し,同法11条1項に定める厚生労働大臣の認定(以下「原爆症認定」という。)を受けるため,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令(以下「被爆者援護法施行令」という。)8条1項に定める申請(以下「原爆症認定申請」という。)をしたが,厚生労働大臣が「現に医療を要する状態にある」とはいえないとして,上記申請を却下した(以下「本件却下処分」という。)のが違法であるなどとして,本件却下処分の取消しを求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づき300万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年6月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
判示事項
1 被爆者援護法10条1項の要医療性の要件の解釈
2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定申請に係る骨髄異形成症候群について,同法10条1項の要医療性が認められた事例
判示事項の要旨
1 要医療性が認められないことを理由にされた原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の申請を却下する処分が違法であるとして取り消された事例
2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の申請につき,原爆症認定の要件の充足に関する判断を誤って却下したことが国家賠償法上違法とはいえないとされた事例
裁判要旨
1 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定申請に係る申請疾病について,定期検査等によって当該疾病が悪化していないかどうか経過観察をするにとどまり,積極的な治療行為を伴わないような場合については,基本的には,同法10条1項にいう「医療を要する状態にある場合」に当たらないが,そのような場合であっても,当該申請疾病の予後として一般に悪化することが予想され,その悪化の度合いに応じてそれに的確に対処するための積極的な治療行為を行うことを要することとなる場合などは,医師による定期的な経過観察自体が当該疾病を治療するために必要不可欠な行為といえるのであって,そのようなものとして医師による定期的な経過観察を受けているような場合には,当該申請疾病につき「現に医療を要する状態にある」ものとして,要医療性が認められる。
2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定申請に係る骨髄異形成症候群について,その申請時及び却下処分時において積極的な治療を受けておらず,経過観察がされているにとどまっている状態にあったものの,骨髄異形成症候群の予後は一般に悪化することが予想されることに加え,血液検査の結果においては,白血球数,赤血球数,ヘモグロビン量,血小板数,好中球数のいずれもが減少傾向にあり,その数値の推移からは,今後も血球数等が更に減少していくことが十分に予想され,赤血球減少に伴う貧血,白血球減少に伴う易感染状態,血小板減少に伴う出血傾向といった臨床症状を呈し,赤血球輸血,血小板輸血等の積極的な治療が必要になることが想定される状態にあるといえることからすると,当該骨髄異形成症候群は,その悪化の度合いに応じてそれに的確に対処するための積極的な治療行為を要することとなるような場合であったといえ,同法10条1項の要医療性が認められる。
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