事件番号平成21(行コ)2
事件名生活保護変更決定取消等(甲事件),同参加事件(乙事件)控訴事件
裁判所広島高等裁判所
裁判年月日平成26年3月26日
事案の概要本件は,原判決別紙(1)処分一覧表1の「処分庁」欄記載の各行政庁(以下「本件各処分庁」という。)から平成16年ないし平成17年に生活保護法(以下「法」という。)に基づく保護決定(以下「本件各決定」という。)を受けた同表「氏名」欄記載の一審原告32名(以下「一審原告ら」という。)が,本件各決定は違法であると主張して,その取消し(無効確認の趣旨の取消しを含むものと解される。)と,これに基づいて減額された生活保護費と従前の保護費との差額の支払(本件各決定まで及びその後の保護期間に対応するもの。以下「本件金銭請求」という。)を求めた事案である。
判示事項1 生活保護基準の改定により老齢加算が減額又は廃止されたことに伴ってされた生活保護費を減額する内容の生活保護決定の取消し等を求める請求が棄却された事例
2 生活保護基準改定の告示前にされた,これに対応する保護基準に基づく生活保護費を減額する内容の生活保護決定が適法とされた事例
裁判要旨1 生活保護基準の改定により老齢加算が減額又は廃止されたことに伴ってされた生活保護費を減額する内容の生活保護決定の取消し等を求める請求につき,前記保護基準改定に当たっては,生活保護法56条の不利益変更の禁止の規律は適用されず,また,厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められ,その判断の過程及び手続における過誤,欠落の有無等の観点からみて,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に保護基準改定は違法となるところ,裁量権の逸脱,濫用の有無は,統計等の客観的な数値等との合理的関連性,専門的知見との整合性等の観点から検証すべきであるとした上で,老齢加算を段階的に廃止するとした厚生労働大臣の判断は,省内に設置された専門委員会の提言や各種統計的数値を踏まえたものであり,激変緩和のための措置に係るものも含め,前記の観点からの裁量権の逸脱,濫用は認められないことから,これに基づく当該保護決定も適法であるとして,前記請求を棄却した事例
2 生活保護基準改定の告示前にされた,これに対応する保護基準に基づく生活保護費を減額する内容の生活保護決定につき,生活保護法8条に定める保護基準は,その改定によって直ちに具体的な保護費の額の変更を来すものではなく,保護の実施機関による具体的な保護決定によって初めて保護費の額の変更が生じるものであることからすれば,保護基準は,保護の実施機関たる下級行政庁に対する通達ないし職務命令の性質を有するものであって,直接国民の権利義務に係る法規たる効力を有するものとはいえないのであるから,保護に関する決定が時間的に保護基準の改定を公示する告示前になされたとしても,内容的にみて改定された保護基準に違背するものでない限り,直ちに当該処分が違法となるものではないというべきであるとした上,当該生活保護決定は,対応する改定告示の適用開始時以降の保護費に関するものであり,内容的に前記保護基準改定の趣旨に沿うものであったことが認められ,告示前に決定を行うことが事務手続上やむを得ないものであったなどの経緯に照らせば,改定告示前に前記決定がされたとしても,当該処分が違法であるとまではいえないとした事例
事件番号平成21(行コ)2
事件名生活保護変更決定取消等(甲事件),同参加事件(乙事件)控訴事件
裁判所広島高等裁判所
裁判年月日平成26年3月26日
事案の概要
本件は,原判決別紙(1)処分一覧表1の「処分庁」欄記載の各行政庁(以下「本件各処分庁」という。)から平成16年ないし平成17年に生活保護法(以下「法」という。)に基づく保護決定(以下「本件各決定」という。)を受けた同表「氏名」欄記載の一審原告32名(以下「一審原告ら」という。)が,本件各決定は違法であると主張して,その取消し(無効確認の趣旨の取消しを含むものと解される。)と,これに基づいて減額された生活保護費と従前の保護費との差額の支払(本件各決定まで及びその後の保護期間に対応するもの。以下「本件金銭請求」という。)を求めた事案である。
判示事項
1 生活保護基準の改定により老齢加算が減額又は廃止されたことに伴ってされた生活保護費を減額する内容の生活保護決定の取消し等を求める請求が棄却された事例
2 生活保護基準改定の告示前にされた,これに対応する保護基準に基づく生活保護費を減額する内容の生活保護決定が適法とされた事例
裁判要旨
1 生活保護基準の改定により老齢加算が減額又は廃止されたことに伴ってされた生活保護費を減額する内容の生活保護決定の取消し等を求める請求につき,前記保護基準改定に当たっては,生活保護法56条の不利益変更の禁止の規律は適用されず,また,厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められ,その判断の過程及び手続における過誤,欠落の有無等の観点からみて,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に保護基準改定は違法となるところ,裁量権の逸脱,濫用の有無は,統計等の客観的な数値等との合理的関連性,専門的知見との整合性等の観点から検証すべきであるとした上で,老齢加算を段階的に廃止するとした厚生労働大臣の判断は,省内に設置された専門委員会の提言や各種統計的数値を踏まえたものであり,激変緩和のための措置に係るものも含め,前記の観点からの裁量権の逸脱,濫用は認められないことから,これに基づく当該保護決定も適法であるとして,前記請求を棄却した事例
2 生活保護基準改定の告示前にされた,これに対応する保護基準に基づく生活保護費を減額する内容の生活保護決定につき,生活保護法8条に定める保護基準は,その改定によって直ちに具体的な保護費の額の変更を来すものではなく,保護の実施機関による具体的な保護決定によって初めて保護費の額の変更が生じるものであることからすれば,保護基準は,保護の実施機関たる下級行政庁に対する通達ないし職務命令の性質を有するものであって,直接国民の権利義務に係る法規たる効力を有するものとはいえないのであるから,保護に関する決定が時間的に保護基準の改定を公示する告示前になされたとしても,内容的にみて改定された保護基準に違背するものでない限り,直ちに当該処分が違法となるものではないというべきであるとした上,当該生活保護決定は,対応する改定告示の適用開始時以降の保護費に関するものであり,内容的に前記保護基準改定の趣旨に沿うものであったことが認められ,告示前に決定を行うことが事務手続上やむを得ないものであったなどの経緯に照らせば,改定告示前に前記決定がされたとしても,当該処分が違法であるとまではいえないとした事例
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