事件番号平成25(行コ)202
事件名一般疾病医療費支給申請却下処分取消等請求控訴事件(原審 大阪地方裁判所平成23年(行ウ)第103号,第112号,第113号)
裁判所大阪高等裁判所
裁判年月日平成26年6月20日
事案の概要本件は,広島市に投下された原子爆弾により被爆し,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)に基づく被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者である原告A,承継前原告B及びC(以下「本件被爆者ら」という。)が,大韓民国(以下「韓国」という。)に居住し,韓国の医療機関(病院,診療所及び薬局をいう。以下同じ。)で医療を受けて現実に負担した医療費について,原告A,承継前原告B,原告D(以下,3名を総称して「本件申請者ら」という。)が大阪府知事に対し被爆者援護法18条の一般疾病医療費の支給を申請したところ(以下,これらの申請を「本件各申請」という。),大阪府知事によって本件各申請を却下された(以下,これらの却下処分を「本件各却下処分」という。)ことから,原告らが,①被告大阪府に対し,本件各却下処分の各取消しを求めるとともに,②被告らに対し,大阪府知事がした本件各却下処分が国家賠償法上違法である(被告大阪府関係),被告国の担当者が在外被爆者(被爆者であって国内に居住地及び現在地を有しないものをいう。被爆者援護法の改正に係る平成20年法律第78号附則(以下「平成20年改正附則」という。)2条1項参照。以下同じ。)に対して一般疾病医療費の支給を認めてこなかったこと及び本件各却下処分に先立ち被告大阪府に在外被爆者からの一般疾病医療費支給申請は却下が相当である旨回答したことが違法である(被告国関係)などとして,国家賠償法1条1項に基づき,各110万円(慰謝料及び弁護士費用の合計額)及びこれらに対する本件各却下処分の日である平成23年3月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律1条にいう「被爆者」であって国内に居住地及び現在地を有しないものがその居住国の医療機関で医療を受けた場合が,同法18条1項にいう「緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたとき」に当たるか。
裁判要旨原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律は,社会保障法としての性格をもつものであるが,国の責任により被爆者の救済を図るという国家補償的配慮を根底に有し,被爆者の資力や国籍による限定をせずに援護の対象とするものであり,同法18条に基づく一般疾病医療費の支給についても,国内に居住地又は現在地を有すること等を支給要件とする旨の明文の規定はなく,一般疾病医療費の支給に関する同法全体の構造,立法者意思等を考慮しても,法文上明記されていない条件を付加して,在外被爆者が国外の医療機関で医療を受けた場合を一般疾病医療費の支給対象から除外するものと限定解釈することが合理的なものということはできないとした上で,居住国の医療機関で治療を受けずにあえて時間と費用をかけて我が国の被爆者一般疾病医療機関での医療を受けるのでなければ一般疾病医療費の支給対象とすべきではないと評価することが社会通念上相当な場合はごく限られていると考えられることに照らすと,在外被爆者がその居住国の医療機関で医療を受けた場合は,我が国に渡航して被爆者一般疾病医療機関での医療を受けることが容易であり,かつ,当該居住国の医療機関での医療を受けずに日本で医療を受ける方が合理的であるなどの特段の事情がない限り,同法18条1項にいう「緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたとき」に当たるとし,韓国に居住し,現在する原子爆弾被爆者らが韓国の医療機関で受けた医療に係る同法18条の一般疾病医療費の支給申請について,前記特段の事情も見受けられないから,前記申請を却下した大阪府知事による同申請却下処分はいずれも違法であるとして,その取消請求を認容した事例
事件番号平成25(行コ)202
事件名一般疾病医療費支給申請却下処分取消等請求控訴事件(原審 大阪地方裁判所平成23年(行ウ)第103号,第112号,第113号)
裁判所大阪高等裁判所
裁判年月日平成26年6月20日
事案の概要
本件は,広島市に投下された原子爆弾により被爆し,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)に基づく被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者である原告A,承継前原告B及びC(以下「本件被爆者ら」という。)が,大韓民国(以下「韓国」という。)に居住し,韓国の医療機関(病院,診療所及び薬局をいう。以下同じ。)で医療を受けて現実に負担した医療費について,原告A,承継前原告B,原告D(以下,3名を総称して「本件申請者ら」という。)が大阪府知事に対し被爆者援護法18条の一般疾病医療費の支給を申請したところ(以下,これらの申請を「本件各申請」という。),大阪府知事によって本件各申請を却下された(以下,これらの却下処分を「本件各却下処分」という。)ことから,原告らが,①被告大阪府に対し,本件各却下処分の各取消しを求めるとともに,②被告らに対し,大阪府知事がした本件各却下処分が国家賠償法上違法である(被告大阪府関係),被告国の担当者が在外被爆者(被爆者であって国内に居住地及び現在地を有しないものをいう。被爆者援護法の改正に係る平成20年法律第78号附則(以下「平成20年改正附則」という。)2条1項参照。以下同じ。)に対して一般疾病医療費の支給を認めてこなかったこと及び本件各却下処分に先立ち被告大阪府に在外被爆者からの一般疾病医療費支給申請は却下が相当である旨回答したことが違法である(被告国関係)などとして,国家賠償法1条1項に基づき,各110万円(慰謝料及び弁護士費用の合計額)及びこれらに対する本件各却下処分の日である平成23年3月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律1条にいう「被爆者」であって国内に居住地及び現在地を有しないものがその居住国の医療機関で医療を受けた場合が,同法18条1項にいう「緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたとき」に当たるか。
裁判要旨
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律は,社会保障法としての性格をもつものであるが,国の責任により被爆者の救済を図るという国家補償的配慮を根底に有し,被爆者の資力や国籍による限定をせずに援護の対象とするものであり,同法18条に基づく一般疾病医療費の支給についても,国内に居住地又は現在地を有すること等を支給要件とする旨の明文の規定はなく,一般疾病医療費の支給に関する同法全体の構造,立法者意思等を考慮しても,法文上明記されていない条件を付加して,在外被爆者が国外の医療機関で医療を受けた場合を一般疾病医療費の支給対象から除外するものと限定解釈することが合理的なものということはできないとした上で,居住国の医療機関で治療を受けずにあえて時間と費用をかけて我が国の被爆者一般疾病医療機関での医療を受けるのでなければ一般疾病医療費の支給対象とすべきではないと評価することが社会通念上相当な場合はごく限られていると考えられることに照らすと,在外被爆者がその居住国の医療機関で医療を受けた場合は,我が国に渡航して被爆者一般疾病医療機関での医療を受けることが容易であり,かつ,当該居住国の医療機関での医療を受けずに日本で医療を受ける方が合理的であるなどの特段の事情がない限り,同法18条1項にいう「緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたとき」に当たるとし,韓国に居住し,現在する原子爆弾被爆者らが韓国の医療機関で受けた医療に係る同法18条の一般疾病医療費の支給申請について,前記特段の事情も見受けられないから,前記申請を却下した大阪府知事による同申請却下処分はいずれも違法であるとして,その取消請求を認容した事例
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