事件番号平成24(行ウ)849
事件名所得税更正処分等取消請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成27年5月14日
事案の概要本件は,競馬の勝馬投票券(以下「馬券」という。)の的中による払戻金に係る所得を得ていた原告が,平成17年分ないし平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い,その際,原告が得た馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「本件競馬所得」という。)は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ,所轄税務署長であった稚内税務署長から,本件競馬所得は一時所得に該当し,上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして,平成23年3月14日付けで平成17年分ないし平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を,平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を,それぞれ受けたため(以下,上記の各年分の所得税に係る各更正を併せて「本件各更正処分」といい,各年分の所得税に係る更正を「平成17年分更正処分」などという。また,上記の各無申告加算税賦課決定及び過少申告加算税賦課決定を併せて「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて「本件各処分」という。),① 本件競馬所得は雑所得に該当し,上記各年の雑所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金も必要経費として総収入金額から控除されるべきである,② 仮に本件競馬所得が一時所得に該当するとしても,その総収入金額から外れ馬券を含む全馬券の購入代金が控除されるべきであるから,本件各処分は違法であるとして,本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
判示事項競馬の勝馬投票券(馬券)の的中による払戻金に係る所得が一時所得に該当するものであり外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとされた事例
裁判要旨競馬の勝馬投票券(馬券)の的中による払戻金に係る所得について,レースの結果を予想して,予想の確度に応じて馬券の購入金額を決め,どのように馬券を購入するのかを個別に判断していたという馬券購入の態様は,一般的な競馬愛好家による馬券購入の態様と質的に大きな差がなく,自動的,機械的に馬券を購入していたとまではいえないし,馬券の購入履歴や収支に関する資料が何ら保存されておらず,網羅的に馬券を購入していたのかどうかを含めて馬券購入の態様は客観的には明らかでないことからすると,一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するものとはいえず,馬券の的中による払戻金に係る所得は,結局のところ,個別の馬券が的中したことによる偶発的な利益が集積したにすぎないものであって,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に該当し,また,払戻金の交付者に対して何ら役務が提供されていないため,労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものに該当するから,上記のような態様によって購入された馬券の的中による払戻金に係る所得は一時所得に該当し,馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するものとまではいえないことからすると,馬券が的中したことによる払戻金に関して「その収入を生じた行為をするため直接要した金額」又は「その収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」は,当該払戻金に個別的に対応する馬券の購入代金,すなわち,的中馬券の購入代金ということになるから,一時所得である馬券の的中による払戻金に係る所得の総収入金額から控除されるのは的中馬券の購入代金に限られ,当該払戻金に個別的に対応しない馬券の購入代金,すなわち,外れ馬券の購入代金は,何ら収入を発生させていない以上,馬券の的中による払戻金に係る所得の総収入金額からは控除されない。
事件番号平成24(行ウ)849
事件名所得税更正処分等取消請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成27年5月14日
事案の概要
本件は,競馬の勝馬投票券(以下「馬券」という。)の的中による払戻金に係る所得を得ていた原告が,平成17年分ないし平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い,その際,原告が得た馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「本件競馬所得」という。)は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ,所轄税務署長であった稚内税務署長から,本件競馬所得は一時所得に該当し,上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして,平成23年3月14日付けで平成17年分ないし平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を,平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を,それぞれ受けたため(以下,上記の各年分の所得税に係る各更正を併せて「本件各更正処分」といい,各年分の所得税に係る更正を「平成17年分更正処分」などという。また,上記の各無申告加算税賦課決定及び過少申告加算税賦課決定を併せて「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて「本件各処分」という。),① 本件競馬所得は雑所得に該当し,上記各年の雑所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金も必要経費として総収入金額から控除されるべきである,② 仮に本件競馬所得が一時所得に該当するとしても,その総収入金額から外れ馬券を含む全馬券の購入代金が控除されるべきであるから,本件各処分は違法であるとして,本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
判示事項
競馬の勝馬投票券(馬券)の的中による払戻金に係る所得が一時所得に該当するものであり外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとされた事例
裁判要旨
競馬の勝馬投票券(馬券)の的中による払戻金に係る所得について,レースの結果を予想して,予想の確度に応じて馬券の購入金額を決め,どのように馬券を購入するのかを個別に判断していたという馬券購入の態様は,一般的な競馬愛好家による馬券購入の態様と質的に大きな差がなく,自動的,機械的に馬券を購入していたとまではいえないし,馬券の購入履歴や収支に関する資料が何ら保存されておらず,網羅的に馬券を購入していたのかどうかを含めて馬券購入の態様は客観的には明らかでないことからすると,一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するものとはいえず,馬券の的中による払戻金に係る所得は,結局のところ,個別の馬券が的中したことによる偶発的な利益が集積したにすぎないものであって,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に該当し,また,払戻金の交付者に対して何ら役務が提供されていないため,労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものに該当するから,上記のような態様によって購入された馬券の的中による払戻金に係る所得は一時所得に該当し,馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するものとまではいえないことからすると,馬券が的中したことによる払戻金に関して「その収入を生じた行為をするため直接要した金額」又は「その収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」は,当該払戻金に個別的に対応する馬券の購入代金,すなわち,的中馬券の購入代金ということになるから,一時所得である馬券の的中による払戻金に係る所得の総収入金額から控除されるのは的中馬券の購入代金に限られ,当該払戻金に個別的に対応しない馬券の購入代金,すなわち,外れ馬券の購入代金は,何ら収入を発生させていない以上,馬券の的中による払戻金に係る所得の総収入金額からは控除されない。
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