事件番号平成20(行ウ)602
事件名都市計画決定無効確認等請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成27年11月17日
事案の概要本件は,別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定(以下「本件都市計画決定」といい,これによって定められた都市計画を「本件都市計画」という。)に係る都市計画施設である幹線街路外郭環状線の2(以下「外環の2」という。)の区域内に別紙2物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)及び同2の建物(以下「本件建物」といい,本件土地と併せて「本件不動産」という。)を所有して居住していたX2(平成21年▲月▲日死亡。以下「承継前原告」という。)から本件不動産を相続した原告らが,外環の2に係る本件都市計画は,別紙1都市計画目録記載2の都市計画決定に係る都市計画施設である都市高速道路外郭環状線(以下「外環本線」という。)の構造形式が嵩上式(高架式)であることを基礎となる重要な事実としていたところ,別紙1都市計画目録記載2(4)の平成19年4月16日付けの都市計画変更決定(以下「平成19年外環本線変更決定」という。)において外環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたことにより,本件都市計画は重要な事実の基礎を欠くこととなって違法なものになったなどとして,① 行政事件訴訟法3条4項所定の無効等確認の訴えとして,本件都市計画決定が無効であることの確認を求め(以下,この請求に係る訴えを「本件無効確認の訴え」という。),② 行政事件訴訟法3条6項1号所定のいわゆる非申請型の義務付けの訴えとして,本件都市計画の廃止手続の義務付けを求め(以下,この請求に係る訴えを「本件義務付けの訴え」という。),③ 行政事件訴訟法4条所定の公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,(a) 本件都市計画が違法であることの確認,(b) 原告らが本件不動産について都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を受けない地位にあることの確認,及び,(c) 被告が本件都市計画の廃止手続をとらないことが違法であることの確認を求める(以下,これら(a)ないし(c)の各請求に係る訴えを併せて「本件各法律関係確認の訴え」という。)ほか,承継前原告から本件不動産以外の全ての遺産を相続した原告X1が,④ 承継前原告において,外環の2に係る都市計画の廃止義務の懈怠という被告による不作為の違法な公権力の行使により,承継前原告が,本件不動産を収用されるという不安を抱いたり,同項の規定する建築物の建築の制限等がされたりして,財産権(憲法29条1項),居住の自由(憲法22条1項)及び平穏に生活する自由(憲法13条)を侵害されたことにより,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料100万円及びこれに対する遅延損害金の支払請求権を有していたところ,これを相続したとしてその支払を求め(以下,この請求に係る訴えを「本件国家賠償請求の訴え」という。),⑤ 少なくとも平成19年外環本線変更決定において外環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたことにより,外環の2に係る都市計画の根拠とされた公共的必要性が消滅し,本件都市計画決定に伴う都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限が承継前原告に対して特別な犠牲を課すものとなったため,承継前原告が,憲法29条3項に基づき,建築物の建築の制限による本件土地の価格の下落分2118万円の損失補償の請求権を有していたところ,これを相続したとして当該損失補償及びこれに対する遅延損害金の支払を求める(以下,この請求に係る訴えを「本件損失補償の訴え」という。)事案である。
判示事項1 都市施設である幹線街路外郭環状線の整備に係る都市計画決定の処分性の有無 
2 都市計画の違法確認,都市計画法53条1項の規定する建築制限を受けない地位にあることの確認,都市計画決定の廃止手続を執らないことの違法確認の各訴えの確認の利益の有無 
3 都市計画の廃止義務懈怠を理由とする国賠法1条1項に基づく損害賠償請求の可否
4 都市計画法53条1項の規定する建築制限を理由とする損失補償の要否
裁判要旨1 都市施設である幹線街路外郭環状線の整備に係る都市計画決定による都市計画法53条1項の規定する建築制限は一般的抽象的な効果を持つものにすぎず,同計画区域内の土地所有者等の権利を直接的,具体的に制限するものとはいえないし,同所有者等が都市計画決定によって当然に都市計画事業の手続に従って土地の収用を受けるべき地位に立たされるとはいえないから,同都市計画決定は,行政処分に当たらない。
2 上記都市計画決定に係る都市計画の違法確認,都市計画法53条1項の規定する建築制限を受けない地位にあることの確認,同都市計画決定の廃止手続を執らないことの違法確認の各訴えは,同都市計画につき,現時点においてもその内容が変更される可能性が多分にあり,いまだ不確定な状態にあること,都市計画決定がされているというだけでは,同計画区域内の土地所有者等について事後の回復が困難な不利益が生じているとはいえず,同都市計画の適法性等を確認の訴えによって争う切迫した必要性があると認めることはできないことなどからすれば,即時確定の利益を欠き,確認の利益を欠く。
3 都市計画を廃止しないという不作為が国賠法1条1項の適用上違法と評価されるのは,都市計画決定についての行政庁の広範な裁量を前提としてもなお,都市計画を廃止すべきことが明確に義務付けられるような事情がある場合に限られるところ,幹線街路の整備に係る都市計画について,同街路と事実上一体のものとして計画された外環本線の構造形式が変更されたとしても,外環本線と幹線街路の計画とが別個の手続を経て決定されたものであって法的に一体のものとはいえないことや,幹線街路は外環本線の有していない独自の機能を有する道路であることなどから,同街路の都市計画が明らかに重要な事実の基礎を欠くに至ったと認めることはできないことなど判示の事情の下では,同計画を廃止すべきことが明確に義務付けられたとはいえないから,不作為の違法は認められず,国賠法1条1項に基づく損害賠償請求には理由がない。
4 都市計画による都市計画法53条1項の建築制限が長期間にわたっているとしても,同計画区域内の土地につき高度な土地利用が予定されているとは認められないことなど判示の事情の下では,都市計画決定による建築基準法(昭和43年法律第101号による改正前のもの)44条及び都市計画法53条1項の規定する建築制限から生じた損失が,一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということは困難であるから,憲法29条3項を根拠として上記損失につき補償を請求する権利を有するものとはいえない。
事件番号平成20(行ウ)602
事件名都市計画決定無効確認等請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成27年11月17日
事案の概要
本件は,別紙1都市計画目録記載1の都市計画決定(以下「本件都市計画決定」といい,これによって定められた都市計画を「本件都市計画」という。)に係る都市計画施設である幹線街路外郭環状線の2(以下「外環の2」という。)の区域内に別紙2物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)及び同2の建物(以下「本件建物」といい,本件土地と併せて「本件不動産」という。)を所有して居住していたX2(平成21年▲月▲日死亡。以下「承継前原告」という。)から本件不動産を相続した原告らが,外環の2に係る本件都市計画は,別紙1都市計画目録記載2の都市計画決定に係る都市計画施設である都市高速道路外郭環状線(以下「外環本線」という。)の構造形式が嵩上式(高架式)であることを基礎となる重要な事実としていたところ,別紙1都市計画目録記載2(4)の平成19年4月16日付けの都市計画変更決定(以下「平成19年外環本線変更決定」という。)において外環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたことにより,本件都市計画は重要な事実の基礎を欠くこととなって違法なものになったなどとして,① 行政事件訴訟法3条4項所定の無効等確認の訴えとして,本件都市計画決定が無効であることの確認を求め(以下,この請求に係る訴えを「本件無効確認の訴え」という。),② 行政事件訴訟法3条6項1号所定のいわゆる非申請型の義務付けの訴えとして,本件都市計画の廃止手続の義務付けを求め(以下,この請求に係る訴えを「本件義務付けの訴え」という。),③ 行政事件訴訟法4条所定の公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,(a) 本件都市計画が違法であることの確認,(b) 原告らが本件不動産について都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限を受けない地位にあることの確認,及び,(c) 被告が本件都市計画の廃止手続をとらないことが違法であることの確認を求める(以下,これら(a)ないし(c)の各請求に係る訴えを併せて「本件各法律関係確認の訴え」という。)ほか,承継前原告から本件不動産以外の全ての遺産を相続した原告X1が,④ 承継前原告において,外環の2に係る都市計画の廃止義務の懈怠という被告による不作為の違法な公権力の行使により,承継前原告が,本件不動産を収用されるという不安を抱いたり,同項の規定する建築物の建築の制限等がされたりして,財産権(憲法29条1項),居住の自由(憲法22条1項)及び平穏に生活する自由(憲法13条)を侵害されたことにより,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料100万円及びこれに対する遅延損害金の支払請求権を有していたところ,これを相続したとしてその支払を求め(以下,この請求に係る訴えを「本件国家賠償請求の訴え」という。),⑤ 少なくとも平成19年外環本線変更決定において外環本線の構造形式が嵩上式から大深度地下方式に変更されたことにより,外環の2に係る都市計画の根拠とされた公共的必要性が消滅し,本件都市計画決定に伴う都市計画法53条1項の規定する建築物の建築の制限が承継前原告に対して特別な犠牲を課すものとなったため,承継前原告が,憲法29条3項に基づき,建築物の建築の制限による本件土地の価格の下落分2118万円の損失補償の請求権を有していたところ,これを相続したとして当該損失補償及びこれに対する遅延損害金の支払を求める(以下,この請求に係る訴えを「本件損失補償の訴え」という。)事案である。
判示事項
1 都市施設である幹線街路外郭環状線の整備に係る都市計画決定の処分性の有無 
2 都市計画の違法確認,都市計画法53条1項の規定する建築制限を受けない地位にあることの確認,都市計画決定の廃止手続を執らないことの違法確認の各訴えの確認の利益の有無 
3 都市計画の廃止義務懈怠を理由とする国賠法1条1項に基づく損害賠償請求の可否
4 都市計画法53条1項の規定する建築制限を理由とする損失補償の要否
裁判要旨
1 都市施設である幹線街路外郭環状線の整備に係る都市計画決定による都市計画法53条1項の規定する建築制限は一般的抽象的な効果を持つものにすぎず,同計画区域内の土地所有者等の権利を直接的,具体的に制限するものとはいえないし,同所有者等が都市計画決定によって当然に都市計画事業の手続に従って土地の収用を受けるべき地位に立たされるとはいえないから,同都市計画決定は,行政処分に当たらない。
2 上記都市計画決定に係る都市計画の違法確認,都市計画法53条1項の規定する建築制限を受けない地位にあることの確認,同都市計画決定の廃止手続を執らないことの違法確認の各訴えは,同都市計画につき,現時点においてもその内容が変更される可能性が多分にあり,いまだ不確定な状態にあること,都市計画決定がされているというだけでは,同計画区域内の土地所有者等について事後の回復が困難な不利益が生じているとはいえず,同都市計画の適法性等を確認の訴えによって争う切迫した必要性があると認めることはできないことなどからすれば,即時確定の利益を欠き,確認の利益を欠く。
3 都市計画を廃止しないという不作為が国賠法1条1項の適用上違法と評価されるのは,都市計画決定についての行政庁の広範な裁量を前提としてもなお,都市計画を廃止すべきことが明確に義務付けられるような事情がある場合に限られるところ,幹線街路の整備に係る都市計画について,同街路と事実上一体のものとして計画された外環本線の構造形式が変更されたとしても,外環本線と幹線街路の計画とが別個の手続を経て決定されたものであって法的に一体のものとはいえないことや,幹線街路は外環本線の有していない独自の機能を有する道路であることなどから,同街路の都市計画が明らかに重要な事実の基礎を欠くに至ったと認めることはできないことなど判示の事情の下では,同計画を廃止すべきことが明確に義務付けられたとはいえないから,不作為の違法は認められず,国賠法1条1項に基づく損害賠償請求には理由がない。
4 都市計画による都市計画法53条1項の建築制限が長期間にわたっているとしても,同計画区域内の土地につき高度な土地利用が予定されているとは認められないことなど判示の事情の下では,都市計画決定による建築基準法(昭和43年法律第101号による改正前のもの)44条及び都市計画法53条1項の規定する建築制限から生じた損失が,一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということは困難であるから,憲法29条3項を根拠として上記損失につき補償を請求する権利を有するものとはいえない。
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