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事件番号
平成28(う)176
事件名
各電子計算機使用詐欺,電子計算機使用詐欺未遂被告事件
裁判所
大阪高等裁判所 第2刑事部
裁判年月日
平成28年7月13日
原審裁判所
神戸地方裁判所
事案の概要
本件各控訴の趣意及び答弁被告人Aの弁護人の控訴趣意は,被告人Aが贖罪寄付を行ったことを付加するほか,同弁護人作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり,被告人Bの弁護人の控訴趣意は,同弁護人作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり,これらに対する答弁は,検察官作成の答弁書に記載されたとおりであるから,これらを引用する。論旨は,いずれも,要するに主刑及び追徴金額が重すぎるという量刑不当をいうものである。第2 控訴の趣意に対する判断1 原判決言渡し時における事情原審記録を調査して検討しても,被告人両名に対する原判決の量刑事情の認定,評価に誤りはなく,原判決の量刑は,その言渡し時点において,相当である。以下,補足して説明する。本件の概要と犯情について本件は,被告人両名が,共犯者や氏名不詳者らと共謀の上,社会保険事務局職員等になりすまし,各被害者に医療費の還付金を受領できる旨誤信させ,現金自動預払機の操作を指示し,送金操作と気付かせないまま被告人らの管理口座に現金を振込送金する操作を行わせて虚偽の情報を人の事務処理に使用する電子計算機に与えさせ,口座残高を増加させて不実の電磁的記録を作り,財産上不法の利益を得,うち一部の口座については虚偽の情報を与えさせたが取引停止措置が講じられたため,利益を得るに至らなかった電子計算機使用詐欺,電子計算機使用詐欺未遂の事案である。
判示事項の要旨
いわゆる還付金詐欺等の事案において,被告人Aは,いわゆるかけ子と出し子を中継する役割を専ら担ったほか,被告人Bを組織に誘った者,被告人Bは,現金運搬役や出し子の役割を担った者である。組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律に基づく没収・追徴は,不法な収益の循環を断ち切り,不法な収益を全面的に剥奪することにより,経済面から組織犯罪を禁圧する趣旨に出たものであるから,共同正犯が成立する以上,没収・追徴という付加刑についても,原則として全部の責任を負うべきであるが,同法に基づく没収・追徴は任意的なものであるから,科すか否か,科すとしてどの範囲で科すかについて,裁判所の裁量を認める趣旨と解される。本件では,確かに報酬分配割合が明らかではあるが,事案の性質,内容上,不法収益の流れ全てが解明されたとは到底いえない上,被告人両名及び共犯者においてなされた被害弁償についても,一連の行為の被害者を含めて公平に実施されたとは認められず,被害弁償により追徴の目的が達成されたとはいえない。また,被告人両名にそれぞれ被害金額全額を追徴することで超過追徴が生じるおそれがあるというが,超過追徴は執行段階で調整されるので理由とならない。被告人両名に対し,被害金額全額を追徴することとした原判決の判断は,相当であって,裁量の逸脱はない。
事件番号
平成28(う)176
事件名
各電子計算機使用詐欺,電子計算機使用詐欺未遂被告事件
裁判所
大阪高等裁判所 第2刑事部
裁判年月日
平成28年7月13日
原審裁判所
神戸地方裁判所
事案の概要
本件各控訴の趣意及び答弁被告人Aの弁護人の控訴趣意は,被告人Aが贖罪寄付を行ったことを付加するほか,同弁護人作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり,被告人Bの弁護人の控訴趣意は,同弁護人作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり,これらに対する答弁は,検察官作成の答弁書に記載されたとおりであるから,これらを引用する。論旨は,いずれも,要するに主刑及び追徴金額が重すぎるという量刑不当をいうものである。第2 控訴の趣意に対する判断1 原判決言渡し時における事情原審記録を調査して検討しても,被告人両名に対する原判決の量刑事情の認定,評価に誤りはなく,原判決の量刑は,その言渡し時点において,相当である。以下,補足して説明する。本件の概要と犯情について本件は,被告人両名が,共犯者や氏名不詳者らと共謀の上,社会保険事務局職員等になりすまし,各被害者に医療費の還付金を受領できる旨誤信させ,現金自動預払機の操作を指示し,送金操作と気付かせないまま被告人らの管理口座に現金を振込送金する操作を行わせて虚偽の情報を人の事務処理に使用する電子計算機に与えさせ,口座残高を増加させて不実の電磁的記録を作り,財産上不法の利益を得,うち一部の口座については虚偽の情報を与えさせたが取引停止措置が講じられたため,利益を得るに至らなかった電子計算機使用詐欺,電子計算機使用詐欺未遂の事案である。
判示事項の要旨
いわゆる還付金詐欺等の事案において,被告人Aは,いわゆるかけ子と出し子を中継する役割を専ら担ったほか,被告人Bを組織に誘った者,被告人Bは,現金運搬役や出し子の役割を担った者である。組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律に基づく没収・追徴は,不法な収益の循環を断ち切り,不法な収益を全面的に剥奪することにより,経済面から組織犯罪を禁圧する趣旨に出たものであるから,共同正犯が成立する以上,没収・追徴という付加刑についても,原則として全部の責任を負うべきであるが,同法に基づく没収・追徴は任意的なものであるから,科すか否か,科すとしてどの範囲で科すかについて,裁判所の裁量を認める趣旨と解される。本件では,確かに報酬分配割合が明らかではあるが,事案の性質,内容上,不法収益の流れ全てが解明されたとは到底いえない上,被告人両名及び共犯者においてなされた被害弁償についても,一連の行為の被害者を含めて公平に実施されたとは認められず,被害弁償により追徴の目的が達成されたとはいえない。また,被告人両名にそれぞれ被害金額全額を追徴することで超過追徴が生じるおそれがあるというが,超過追徴は執行段階で調整されるので理由とならない。被告人両名に対し,被害金額全額を追徴することとした原判決の判断は,相当であって,裁量の逸脱はない。
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