事件番号平成27(行ウ)126
事件名扶助料請求申請棄却処分取消請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日平成29年9月29日
事案の概要本件は,原告が,その父である亡Z1(大正8年▲月▲日生。)が,軍務に服していた昭和21年(当時27歳)に公務により負った右第2~第5趾切断の傷害(以下「本件傷害」という。)により平成23年(当時92歳)に肺炎により死亡(以下「本件死亡」という。)したとして,恩給法10条ノ2に基づき,原告の母である亡Z2に係る同法75条1項2号所定の扶助料の請求をしたところ,総務省人事・恩給局長(以下「人事・恩給局長」という。)から,亡Z1が公務による傷病のために死亡したとは認められないことを理由に前記請求を棄却する旨の裁定(以下「本件裁定」という。)を受けたことから,本件裁定が違法である旨主張して,その取消しを求める事案である。
判示事項(1) 恩給法75条1項2号にいう「公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキ」の意義
(2) 公務に起因する傷病と死亡との間の相当因果関係が認められず,恩給法75条1項2号にいう「公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキ」に該当しないとされた事例
裁判要旨(1) 恩給法75条1項2号にいう「公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキ」に該当するには,公務と傷病との間及び傷病と死亡との間のいずれについても相当因果関係が存在することが必要であり,死亡に至る原因が複数競合している場合には,公務に起因する傷病が単に公務員の死亡の一要因となっているだけでは,当該公務に起因する傷病と死亡との間の相当因果関係を認めることはできず,当該相当因果関係が認められるためには,当該傷病が,当該公務員の死亡の発生に対して,当該傷病以外のその他の要因に比して相対的に有力な原因になっているという関係が必要である。
(2) 旧軍人が,①昭和21年に公務に起因して右第2~第5趾切断の傷害を負い,②平成18年(当時87歳)に右足部難治性潰瘍を発症してその治療を受け,③平成19年以降に肺炎による入退院を繰り返し,④平成23年(当時92歳)に肺炎を死因として死亡したという経過において,前記②の潰瘍の発症に対しては,閉塞性動脈硬化症が前記①の傷害に比して相対的に有力な原因と認められるから,前記①の傷害と前記②の潰瘍との間に相当因果関係は認められず,仮に当該相当因果関係が認められるとしても,前記①の傷害ないし前記②の潰瘍が,当該潰瘍の治療の後に生じた廃用症候群,前記③の肺炎,前記④の死亡の発生に対して,その他の要因に比して相対的に有力な原因になっていると認められないから,前記①~④の各間の相当因果関係,すなわち公務に起因する傷病と死亡との間の相当因果関係があるとは認められず,恩給法75条1項2号にいう「公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキ」に該当しない。
事件番号平成27(行ウ)126
事件名扶助料請求申請棄却処分取消請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日平成29年9月29日
事案の概要
本件は,原告が,その父である亡Z1(大正8年▲月▲日生。)が,軍務に服していた昭和21年(当時27歳)に公務により負った右第2~第5趾切断の傷害(以下「本件傷害」という。)により平成23年(当時92歳)に肺炎により死亡(以下「本件死亡」という。)したとして,恩給法10条ノ2に基づき,原告の母である亡Z2に係る同法75条1項2号所定の扶助料の請求をしたところ,総務省人事・恩給局長(以下「人事・恩給局長」という。)から,亡Z1が公務による傷病のために死亡したとは認められないことを理由に前記請求を棄却する旨の裁定(以下「本件裁定」という。)を受けたことから,本件裁定が違法である旨主張して,その取消しを求める事案である。
判示事項
(1) 恩給法75条1項2号にいう「公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキ」の意義
(2) 公務に起因する傷病と死亡との間の相当因果関係が認められず,恩給法75条1項2号にいう「公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキ」に該当しないとされた事例
裁判要旨
(1) 恩給法75条1項2号にいう「公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキ」に該当するには,公務と傷病との間及び傷病と死亡との間のいずれについても相当因果関係が存在することが必要であり,死亡に至る原因が複数競合している場合には,公務に起因する傷病が単に公務員の死亡の一要因となっているだけでは,当該公務に起因する傷病と死亡との間の相当因果関係を認めることはできず,当該相当因果関係が認められるためには,当該傷病が,当該公務員の死亡の発生に対して,当該傷病以外のその他の要因に比して相対的に有力な原因になっているという関係が必要である。
(2) 旧軍人が,①昭和21年に公務に起因して右第2~第5趾切断の傷害を負い,②平成18年(当時87歳)に右足部難治性潰瘍を発症してその治療を受け,③平成19年以降に肺炎による入退院を繰り返し,④平成23年(当時92歳)に肺炎を死因として死亡したという経過において,前記②の潰瘍の発症に対しては,閉塞性動脈硬化症が前記①の傷害に比して相対的に有力な原因と認められるから,前記①の傷害と前記②の潰瘍との間に相当因果関係は認められず,仮に当該相当因果関係が認められるとしても,前記①の傷害ないし前記②の潰瘍が,当該潰瘍の治療の後に生じた廃用症候群,前記③の肺炎,前記④の死亡の発生に対して,その他の要因に比して相対的に有力な原因になっていると認められないから,前記①~④の各間の相当因果関係,すなわち公務に起因する傷病と死亡との間の相当因果関係があるとは認められず,恩給法75条1項2号にいう「公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキ」に該当しない。
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