事件番号平成30(行コ)50
事件名戒告処分取消等請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第12民事部
裁判年月日令和元年5月23日
原審裁判所大阪地方裁判所
原審事件番号平成27(行ウ)224
事案の概要本件事案の概要本件は,大阪府立学校の教員である,又は教員であった控訴人らが,入学式・卒業式の国歌斉唱時に起立して斉唱すべき旨を命ずる職務命令(以下,控訴人らに対する個別の各職務命令を併せて「本件各職務命令」という。)に違反したことなどを理由に,大阪府教育委員会(以下「府教委」という。)からそれぞれ戒告処分(以下,控訴人らに対する各戒告処分を併せて「本件各戒告処分」という。)を受けたことにつき,本件各戒告処分は違法であると主張して,これらの取消しを求めるとともに,本件各職務命令や本件各戒告処分等により精神的苦痛を被ったと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料の一部請求として各10万円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成27年7月23日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨(1) 大阪府の国旗国歌条例,同条例に基づき府教委の教育長が発した,学校行事における国歌斉唱の際に式場内の教職員に起立斉唱を命じる旨の通達,v高校のh校長を除き,各府立学校の校長らが教職員に対して発令した上記同旨の各職務命令は,憲法の諸規定や関係法令,国民主権原理,自由権規約等に反するものでなく,教育長の上記通達及び各校長の職務命令に違反して,入学式あるいは卒業式における国歌斉唱の際に着席し,起立斉唱しなかったことを理由に,控訴人gを除く控訴人らに対して府教委がした戒告処分は,いずれも裁量権を逸脱・濫用するものではなく,適法である。
(2) v高校の職員会議におけるh校長の言動や同校長と控訴人gとの面談内容等からすると,同高校の平成26年度の入学式における国歌斉唱に関し,同校長が控訴人gに対して国歌斉唱時に起立斉唱すべき旨の職務命令を発したとは認められない。
 控訴人gに対して府教委がした戒告処分は,教育長の上記通達及び校長の職務命令に違反して,国歌斉唱時に着席し,起立斉唱しなかった行為が地方公務員法に規定する上司の職務上の命令に従う義務に違反したことを理由とするものであるところ,校長の職務命令があったと認められない以上,その懲戒事由の一部に誤りがある。また,上記戒告処分当時,教育長の通達のみに違反したことを理由に懲戒処分を受けた事例があったとは認められず,当時の府教委の指導方針ないし運用も,教育長の通達のほかにこれを踏まえた校長等の職務命令が存在する場合において,これらに従わないときに初めて懲戒処分の対象となるとの認識・予測を教職員らに抱かせるものであったと認められることに照らせば,上記戒告処分は,府教委の裁量権を逸脱・濫用してされた違法なものと認められる。
 もっとも,府教委は,必要な調査を経た上で,校長による職務命令の発令があったことを前提に上記戒告処分を行ったものであり,職務上尽くすべき注意義務を尽くさなかったとは認められないから,同処分に国家賠償法1条1項にいう違法があったとはいえない。

※参考のため,別紙として原判決を添付した。
事件番号平成30(行コ)50
事件名戒告処分取消等請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第12民事部
裁判年月日令和元年5月23日
原審裁判所大阪地方裁判所
原審事件番号平成27(行ウ)224
事案の概要
本件事案の概要本件は,大阪府立学校の教員である,又は教員であった控訴人らが,入学式・卒業式の国歌斉唱時に起立して斉唱すべき旨を命ずる職務命令(以下,控訴人らに対する個別の各職務命令を併せて「本件各職務命令」という。)に違反したことなどを理由に,大阪府教育委員会(以下「府教委」という。)からそれぞれ戒告処分(以下,控訴人らに対する各戒告処分を併せて「本件各戒告処分」という。)を受けたことにつき,本件各戒告処分は違法であると主張して,これらの取消しを求めるとともに,本件各職務命令や本件各戒告処分等により精神的苦痛を被ったと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料の一部請求として各10万円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成27年7月23日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨
(1) 大阪府の国旗国歌条例,同条例に基づき府教委の教育長が発した,学校行事における国歌斉唱の際に式場内の教職員に起立斉唱を命じる旨の通達,v高校のh校長を除き,各府立学校の校長らが教職員に対して発令した上記同旨の各職務命令は,憲法の諸規定や関係法令,国民主権原理,自由権規約等に反するものでなく,教育長の上記通達及び各校長の職務命令に違反して,入学式あるいは卒業式における国歌斉唱の際に着席し,起立斉唱しなかったことを理由に,控訴人gを除く控訴人らに対して府教委がした戒告処分は,いずれも裁量権を逸脱・濫用するものではなく,適法である。
(2) v高校の職員会議におけるh校長の言動や同校長と控訴人gとの面談内容等からすると,同高校の平成26年度の入学式における国歌斉唱に関し,同校長が控訴人gに対して国歌斉唱時に起立斉唱すべき旨の職務命令を発したとは認められない。
 控訴人gに対して府教委がした戒告処分は,教育長の上記通達及び校長の職務命令に違反して,国歌斉唱時に着席し,起立斉唱しなかった行為が地方公務員法に規定する上司の職務上の命令に従う義務に違反したことを理由とするものであるところ,校長の職務命令があったと認められない以上,その懲戒事由の一部に誤りがある。また,上記戒告処分当時,教育長の通達のみに違反したことを理由に懲戒処分を受けた事例があったとは認められず,当時の府教委の指導方針ないし運用も,教育長の通達のほかにこれを踏まえた校長等の職務命令が存在する場合において,これらに従わないときに初めて懲戒処分の対象となるとの認識・予測を教職員らに抱かせるものであったと認められることに照らせば,上記戒告処分は,府教委の裁量権を逸脱・濫用してされた違法なものと認められる。
 もっとも,府教委は,必要な調査を経た上で,校長による職務命令の発令があったことを前提に上記戒告処分を行ったものであり,職務上尽くすべき注意義務を尽くさなかったとは認められないから,同処分に国家賠償法1条1項にいう違法があったとはいえない。

※参考のため,別紙として原判決を添付した。
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