事件番号 | 平成30(あ)1381 |
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事件名 | わいせつ電磁的記録記録媒体陳列,公然わいせつ被告事件 |
裁判所 | 最高裁判所第二小法廷 |
裁判年月日 | 令和3年2月1日 |
裁判種別 | 決定 |
結果 | 棄却 |
原審裁判所 | 大阪高等裁判所 |
原審事件番号 | 平成29(う)635 |
原審裁判年月日 | 平成30年9月11日 |
判示事項 | 1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことの許否 2 警察官が日本国外に所在する蓋然性がある記録媒体にリモートアクセスをして電磁的記録を複写するなどして収集した証拠について証拠能力が肯定された事例 3 リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可した捜索差押許可状の執行に当たり個々の電磁的記録につき内容を確認せずに複写することが許されるとされた事例 4 インターネット上の動画の投稿サイト及び配信サイトを管理・運営していた被告人両名に上記各サイト上におけるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪の各共同正犯が成立するとされた事例 |
裁判要旨 | 1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し,同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に,国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことは許される。 2 警察官が,(1)リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可した捜索差押許可状記載の捜索場所においてコンピュータから記録媒体にリモートアクセスをして当該コンピュータの使用者のメールアドレスに係るメール等の電磁的記録を複写するなどし,(2)同所に所在するコンピュータの使用者からアカウントの付与を受けるなどして同所外のコンピュータからリモートアクセスをして電磁的記録の複写を行った場合,上記各リモートアクセスの対象である記録媒体が日本国外にあるか,その蓋然性が否定できないものであっても,(1)の手続は,コンピュータの使用者の任意の承諾に基づく任意捜査として適法であるとはいえず,サイバー犯罪に関する条約32条が規定する場合に該当するともいえないが,実質的には,司法審査を経て発付された同許可状に基づく手続ということができ,警察官は,同許可状の執行と同様の手続により,同許可状において差押え等の対象とされていた証拠を収集したものであって,同許可状が許可する処分の範囲を超えた証拠の収集等を行ったものとは認められず,警察官が,国際捜査共助によらずにコンピュータの使用者の任意の承諾を得てリモートアクセス等を行うという方針を採ったこと自体が不相当であるということはできない,(2)の手続についてのコンピュータの使用者の承諾の効力を否定すべき理由はないなど判示の事情の下においては,(1),(2)の各手続について重大な違法があるということはできず,警察官が各手続により収集した証拠の証拠能力を肯定することができる。 3 捜索差押許可状によるリモートアクセスによる複写の処分の対象となる電磁的記録に被疑事実と関連する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において,差押えの現場における電磁的記録の内容確認の困難性や確認作業を行う間に情報の毀損等が生ずるおそれ等があるという事情の下においては,個々の電磁的記録について個別に内容を確認することなく複写の処分を行うことが許される。 4 インターネット上の動画の投稿サイト及び配信サイトを管理・運営していた被告人両名が,上記各サイトに投稿・配信された動画が無修正わいせつ動画であったとしても,これを利用して利益を上げる目的で,上記各サイトにおいて不特定多数の利用者の閲覧又は観覧に供するという意図の下,上記各サイトの仕組み等を通じて動画の投稿・配信を勧誘し,投稿者及び配信者らが,上記の働きかけを受け,同様の意図に基づき,上記各サイトのシステムに従って投稿又は配信を行ったものであり,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪は,上記投稿者らが無修正わいせつ動画を上記各サイトに投稿又は配信することによって初めて成立し,上記投稿者らも,被告人両名らによる上記勧誘及び上記各サイトの管理・運営行為がなければ,無修正わいせつ動画を不特定多数の者が認識できる状態に置くことがなかったなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人両名について,上記投稿者らとの上記各罪の各共同正犯が成立する。 (1,2につき補足意見がある。) |
事件番号 | 平成30(あ)1381 |
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事件名 | わいせつ電磁的記録記録媒体陳列,公然わいせつ被告事件 |
裁判所 | 最高裁判所第二小法廷 |
裁判年月日 | 令和3年2月1日 |
裁判種別 | 決定 |
結果 | 棄却 |
原審裁判所 | 大阪高等裁判所 |
原審事件番号 | 平成29(う)635 |
原審裁判年月日 | 平成30年9月11日 |
判示事項 |
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1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことの許否 2 警察官が日本国外に所在する蓋然性がある記録媒体にリモートアクセスをして電磁的記録を複写するなどして収集した証拠について証拠能力が肯定された事例 3 リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可した捜索差押許可状の執行に当たり個々の電磁的記録につき内容を確認せずに複写することが許されるとされた事例 4 インターネット上の動画の投稿サイト及び配信サイトを管理・運営していた被告人両名に上記各サイト上におけるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪の各共同正犯が成立するとされた事例 |
裁判要旨 |
1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し,同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に,国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことは許される。 2 警察官が,(1)リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可した捜索差押許可状記載の捜索場所においてコンピュータから記録媒体にリモートアクセスをして当該コンピュータの使用者のメールアドレスに係るメール等の電磁的記録を複写するなどし,(2)同所に所在するコンピュータの使用者からアカウントの付与を受けるなどして同所外のコンピュータからリモートアクセスをして電磁的記録の複写を行った場合,上記各リモートアクセスの対象である記録媒体が日本国外にあるか,その蓋然性が否定できないものであっても,(1)の手続は,コンピュータの使用者の任意の承諾に基づく任意捜査として適法であるとはいえず,サイバー犯罪に関する条約32条が規定する場合に該当するともいえないが,実質的には,司法審査を経て発付された同許可状に基づく手続ということができ,警察官は,同許可状の執行と同様の手続により,同許可状において差押え等の対象とされていた証拠を収集したものであって,同許可状が許可する処分の範囲を超えた証拠の収集等を行ったものとは認められず,警察官が,国際捜査共助によらずにコンピュータの使用者の任意の承諾を得てリモートアクセス等を行うという方針を採ったこと自体が不相当であるということはできない,(2)の手続についてのコンピュータの使用者の承諾の効力を否定すべき理由はないなど判示の事情の下においては,(1),(2)の各手続について重大な違法があるということはできず,警察官が各手続により収集した証拠の証拠能力を肯定することができる。 3 捜索差押許可状によるリモートアクセスによる複写の処分の対象となる電磁的記録に被疑事実と関連する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において,差押えの現場における電磁的記録の内容確認の困難性や確認作業を行う間に情報の毀損等が生ずるおそれ等があるという事情の下においては,個々の電磁的記録について個別に内容を確認することなく複写の処分を行うことが許される。 4 インターネット上の動画の投稿サイト及び配信サイトを管理・運営していた被告人両名が,上記各サイトに投稿・配信された動画が無修正わいせつ動画であったとしても,これを利用して利益を上げる目的で,上記各サイトにおいて不特定多数の利用者の閲覧又は観覧に供するという意図の下,上記各サイトの仕組み等を通じて動画の投稿・配信を勧誘し,投稿者及び配信者らが,上記の働きかけを受け,同様の意図に基づき,上記各サイトのシステムに従って投稿又は配信を行ったものであり,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪は,上記投稿者らが無修正わいせつ動画を上記各サイトに投稿又は配信することによって初めて成立し,上記投稿者らも,被告人両名らによる上記勧誘及び上記各サイトの管理・運営行為がなければ,無修正わいせつ動画を不特定多数の者が認識できる状態に置くことがなかったなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人両名について,上記投稿者らとの上記各罪の各共同正犯が成立する。 (1,2につき補足意見がある。) |