事件番号 | 令和2(許)10 |
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事件名 | 検証物提示命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 |
裁判所 | 最高裁判所第一小法廷 |
裁判年月日 | 令和3年3月18日 |
裁判種別 | 決定 |
結果 | 破棄自判 |
原審裁判所 | 東京高等裁判所 |
原審事件番号 | 令和1(ラ)2230 |
原審裁判年月日 | 令和2年2月12日 |
事案の概要 | 1 記録によれば,本件の経緯等は次のとおりである。 (1) 相手方は,映像等の開発及び販売等を業とする株式会社であり,抗告人は,電気通信事業を営む株式会社である。 (2) 相手方は,動画配信サービス等の提供に係るウェブサイトを管理運営しているところ,同ウェブサイトに設けられていた顧客からの問合せ用のフォームを通じて,脅迫的表現を含む匿名の電子メール(以下「本件メール」という。)を受信した。本件メールは,抗告人の管理する電気通信設備を用いて送信されたものであった。 (3) 相手方は,本件メールの送信者(以下「本件送信者」という。)に対する損害賠償請求訴訟を提起する予定であり,本件送信者の氏名,住所等(以下,電気通信の送信者の特定に資する氏名,住所等の情報を「送信者情報」という。)が記録され,又は記載された電磁的記録媒体又は文書(以下「本件記録媒体等」という。)についてあらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると主張し,訴えの提起前における証拠保全として,本件記録媒体等につき検証の申出をするとともに抗告人に対する検証物提示命令の申立て(以下「本件申立て」という。)をした。 2 原審は,電気通信事業に従事する者には民訴法197条1項2号が類推適用されるとした上で,要旨次のとおり判断して,本件申立てを認容すべきものとした。 本件メールが明白な脅迫的表現を含むものであること,本件メールの送信者情報は本件送信者に対して損害賠償責任を追及するために不可欠なものであること,本件記録媒体等の開示により本件送信者の受ける不利益や抗告人に与える影響等の諸事情を比較衡量すると,本件記録媒体等に記録され,又は記載された送信者情報は保護に値する秘密に当たらず,抗告人は,本件記録媒体等を検証の目的として提示する義務を負う。 |
判示事項 | 1 電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者と民訴法197条1項2号の類推適用 2 電気通信事業者は,その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名,住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され,又は記録された文書又は準文書を検証の目的として提示する義務を負うか |
裁判要旨 | 1 電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者は,民訴法197条1項2号の類推適用により,職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて証言を拒むことができる。 2 電気通信事業者は,その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名,住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され,又は記録された文書又は準文書について,当該通信の内容にかかわらず,検証の目的として提示する義務を負わない。 |
事件番号 | 令和2(許)10 |
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事件名 | 検証物提示命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 |
裁判所 | 最高裁判所第一小法廷 |
裁判年月日 | 令和3年3月18日 |
裁判種別 | 決定 |
結果 | 破棄自判 |
原審裁判所 | 東京高等裁判所 |
原審事件番号 | 令和1(ラ)2230 |
原審裁判年月日 | 令和2年2月12日 |
事案の概要 |
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1 記録によれば,本件の経緯等は次のとおりである。 (1) 相手方は,映像等の開発及び販売等を業とする株式会社であり,抗告人は,電気通信事業を営む株式会社である。 (2) 相手方は,動画配信サービス等の提供に係るウェブサイトを管理運営しているところ,同ウェブサイトに設けられていた顧客からの問合せ用のフォームを通じて,脅迫的表現を含む匿名の電子メール(以下「本件メール」という。)を受信した。本件メールは,抗告人の管理する電気通信設備を用いて送信されたものであった。 (3) 相手方は,本件メールの送信者(以下「本件送信者」という。)に対する損害賠償請求訴訟を提起する予定であり,本件送信者の氏名,住所等(以下,電気通信の送信者の特定に資する氏名,住所等の情報を「送信者情報」という。)が記録され,又は記載された電磁的記録媒体又は文書(以下「本件記録媒体等」という。)についてあらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると主張し,訴えの提起前における証拠保全として,本件記録媒体等につき検証の申出をするとともに抗告人に対する検証物提示命令の申立て(以下「本件申立て」という。)をした。 2 原審は,電気通信事業に従事する者には民訴法197条1項2号が類推適用されるとした上で,要旨次のとおり判断して,本件申立てを認容すべきものとした。 本件メールが明白な脅迫的表現を含むものであること,本件メールの送信者情報は本件送信者に対して損害賠償責任を追及するために不可欠なものであること,本件記録媒体等の開示により本件送信者の受ける不利益や抗告人に与える影響等の諸事情を比較衡量すると,本件記録媒体等に記録され,又は記載された送信者情報は保護に値する秘密に当たらず,抗告人は,本件記録媒体等を検証の目的として提示する義務を負う。 |
判示事項 |
1 電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者と民訴法197条1項2号の類推適用 2 電気通信事業者は,その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名,住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され,又は記録された文書又は準文書を検証の目的として提示する義務を負うか |
裁判要旨 |
1 電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者は,民訴法197条1項2号の類推適用により,職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて証言を拒むことができる。 2 電気通信事業者は,その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名,住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され,又は記録された文書又は準文書について,当該通信の内容にかかわらず,検証の目的として提示する義務を負わない。 |