事件番号令和2(ワ)5020
事件名損害賠償請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日令和3年10月7日
事案の概要本件は,原告(昭和▲年生まれの男性)が,①大阪府警察本部に対して暴力団からの離脱届を提出していたにもかかわらず,大阪府警察の警察官が,原告について暴力団構成員である旨記載した捜査報告書を作成し,これを訂正しなかったこと,②大阪府警察本部に対して3回にわたり書面を郵送して個人情報の開示請求をしたにもかかわらず,大阪府警察本部長又は上記書面を受け付けた大阪府警察本部の職員(以下「大阪府警察本部長等」という。)が何ら回答等をしなかったことにより,原告の権利が侵害され精神的苦痛を被ったなどと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料100万円の支払を求める事案である。
判示事項1 警察官が,暴力団からの離脱届を提出していた者について,暴力団構成員である旨記載した捜査報告書を作成したことが,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとされた事例
2 大阪府警察本部長等が,刑事施設に収容されている者から送付された文書について,大阪府個人情報保護条例12条1項に基づく個人情報の開示請求として扱うことなく,何ら回答等をしなかったことが,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
裁判要旨1 警察官が,暴力団からの離脱届を提出していた者について,暴力団構成員である旨記載した捜査報告書を作成したことは,次の⑴・⑵など判示の事情の下においては,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。
 ⑴ 上記捜査報告書は,原告に対する職務質問の状況を報告する目的で作成されたものであり,上記の者が暴力団構成員である旨の記載は,上記警察官が同人の犯歴を照会し,回答を得た経緯として記載されているにすぎないものであった。
 ⑵ 上記捜査報告書と同日付けで作成された別の捜査資料には,上記の者が「元」暴力団構成員である旨の記載があり,一連の捜査資料を通読すれば,同人が暴力団構成員である旨の上記捜査報告書の記載は,誤記であることが明らかであった。
2 大阪府警察本部長等が,刑事施設に収容されている者から送付された文書について,大阪府個人情報保護条例12条1項に基づく個人情報の開示請求として扱うことなく,何ら回答等をしなかったことは,当該文書が大阪府個人情報保護条例の施行に関する規則で定められた開示請求書を用いたものではなく,また,大阪府警察が作成した個人情報の開示請求等に係る事務処理要領に郵送による開示請求を受け付けないものとする旨定められていたとしても,次の⑴~⑷など判示の事情の下においては,国家賠償法1条1項の適用上違法である。
 ⑴ 上記の者が送付した文書には,同人の「情報」の「開示請求」をする意思が明示されていた。
 ⑵ 上記の者から送付された文書や当該文書が封入された封筒の記載等からすれば,大阪府警察本部長等において,同人が大阪拘置所に収容されており,同規則で定められた個人情報の開示請求書を入手したり,個人情報の開示請求の担当部署の窓口を訪れて個人情報の開示請求をしたりすることが不可能な者であることが,明らかであった。 
 ⑶ 同条例及び同規則には,開示請求を郵送により行うことを制限する旨の規定はなく,同条例に関して大阪府が作成した解釈運用基準には,多様な就業環境や生活環境により来庁が困難な府民等に対しても開示請求権を確保する必要を考慮して郵送による開示請求を認めることとした旨の記載があった。
 ⑷ 大阪府警察本部長等において,送付された文書を差し出したのが上記の者であると合理的に認定することができた。
事件番号令和2(ワ)5020
事件名損害賠償請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日令和3年10月7日
事案の概要
本件は,原告(昭和▲年生まれの男性)が,①大阪府警察本部に対して暴力団からの離脱届を提出していたにもかかわらず,大阪府警察の警察官が,原告について暴力団構成員である旨記載した捜査報告書を作成し,これを訂正しなかったこと,②大阪府警察本部に対して3回にわたり書面を郵送して個人情報の開示請求をしたにもかかわらず,大阪府警察本部長又は上記書面を受け付けた大阪府警察本部の職員(以下「大阪府警察本部長等」という。)が何ら回答等をしなかったことにより,原告の権利が侵害され精神的苦痛を被ったなどと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料100万円の支払を求める事案である。
判示事項
1 警察官が,暴力団からの離脱届を提出していた者について,暴力団構成員である旨記載した捜査報告書を作成したことが,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとされた事例
2 大阪府警察本部長等が,刑事施設に収容されている者から送付された文書について,大阪府個人情報保護条例12条1項に基づく個人情報の開示請求として扱うことなく,何ら回答等をしなかったことが,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
裁判要旨
1 警察官が,暴力団からの離脱届を提出していた者について,暴力団構成員である旨記載した捜査報告書を作成したことは,次の⑴・⑵など判示の事情の下においては,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。
 ⑴ 上記捜査報告書は,原告に対する職務質問の状況を報告する目的で作成されたものであり,上記の者が暴力団構成員である旨の記載は,上記警察官が同人の犯歴を照会し,回答を得た経緯として記載されているにすぎないものであった。
 ⑵ 上記捜査報告書と同日付けで作成された別の捜査資料には,上記の者が「元」暴力団構成員である旨の記載があり,一連の捜査資料を通読すれば,同人が暴力団構成員である旨の上記捜査報告書の記載は,誤記であることが明らかであった。
2 大阪府警察本部長等が,刑事施設に収容されている者から送付された文書について,大阪府個人情報保護条例12条1項に基づく個人情報の開示請求として扱うことなく,何ら回答等をしなかったことは,当該文書が大阪府個人情報保護条例の施行に関する規則で定められた開示請求書を用いたものではなく,また,大阪府警察が作成した個人情報の開示請求等に係る事務処理要領に郵送による開示請求を受け付けないものとする旨定められていたとしても,次の⑴~⑷など判示の事情の下においては,国家賠償法1条1項の適用上違法である。
 ⑴ 上記の者が送付した文書には,同人の「情報」の「開示請求」をする意思が明示されていた。
 ⑵ 上記の者から送付された文書や当該文書が封入された封筒の記載等からすれば,大阪府警察本部長等において,同人が大阪拘置所に収容されており,同規則で定められた個人情報の開示請求書を入手したり,個人情報の開示請求の担当部署の窓口を訪れて個人情報の開示請求をしたりすることが不可能な者であることが,明らかであった。 
 ⑶ 同条例及び同規則には,開示請求を郵送により行うことを制限する旨の規定はなく,同条例に関して大阪府が作成した解釈運用基準には,多様な就業環境や生活環境により来庁が困難な府民等に対しても開示請求権を確保する必要を考慮して郵送による開示請求を認めることとした旨の記載があった。
 ⑷ 大阪府警察本部長等において,送付された文書を差し出したのが上記の者であると合理的に認定することができた。
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