事件番号令和3(わ)843
事件名現住建造物等放火
裁判所京都地方裁判所 第3刑事部
裁判年月日令和4年7月6日
事案の概要本件施設の入居者1名は気道熱傷等のけがにより10日間の入院を余儀なくされた。犯行態様からすると、迅速な119番通報や入居者による避難誘導等がなければ、本件施設2階部分が更に燃え広がり、より多くの負傷者が出る危険があった。もっとも、本件施設運営者と負傷した入居者は、いずれも被告人のことを許し、被告人が重い処罰を受けることを求めていない。このことは、被告人に対する刑罰を決める上で、被告人に有利な事情として十分考慮する必要がある。被告人が犯行に及んだのは、本件施設での生活にストレスや不満を抱えるようになり、そこから逃げ出したいと思ったからである。そこには、被告人の自閉スペクトラム症及び統合失調症が長年見落とされ、本件施設での対応を含め、これまで適切な治療や処遇を受けることができなかったことが影響している。また、本件施設から逃げ出すための手段として、放火することを着想するや実行してしまった短慮には、自閉スペクトラム症の特性及び統合失調症の陰性症状や認知機能の低下の影響が認められる。しかし、火を大きくするための工夫が見られることや、犯行後に逃亡したり犯行道具等を隠したりしていることに照らせば、被告人の精神障害が犯行に及ぼした影響は限定的である。したがって、被告人が犯行に及んだことに対する非難は、少し弱まる程度にとどまる。以上の被告人がした罪の重さ等に基づいて、検察官と弁護人らがそれぞれ指摘する同種事案の量刑傾向も参考にしながら、被告人に対する刑罰を検討すると、本件は刑の執行を猶予することもあり得る事案である。
事件番号令和3(わ)843
事件名現住建造物等放火
裁判所京都地方裁判所 第3刑事部
裁判年月日令和4年7月6日
事案の概要
本件施設の入居者1名は気道熱傷等のけがにより10日間の入院を余儀なくされた。犯行態様からすると、迅速な119番通報や入居者による避難誘導等がなければ、本件施設2階部分が更に燃え広がり、より多くの負傷者が出る危険があった。もっとも、本件施設運営者と負傷した入居者は、いずれも被告人のことを許し、被告人が重い処罰を受けることを求めていない。このことは、被告人に対する刑罰を決める上で、被告人に有利な事情として十分考慮する必要がある。被告人が犯行に及んだのは、本件施設での生活にストレスや不満を抱えるようになり、そこから逃げ出したいと思ったからである。そこには、被告人の自閉スペクトラム症及び統合失調症が長年見落とされ、本件施設での対応を含め、これまで適切な治療や処遇を受けることができなかったことが影響している。また、本件施設から逃げ出すための手段として、放火することを着想するや実行してしまった短慮には、自閉スペクトラム症の特性及び統合失調症の陰性症状や認知機能の低下の影響が認められる。しかし、火を大きくするための工夫が見られることや、犯行後に逃亡したり犯行道具等を隠したりしていることに照らせば、被告人の精神障害が犯行に及ぼした影響は限定的である。したがって、被告人が犯行に及んだことに対する非難は、少し弱まる程度にとどまる。以上の被告人がした罪の重さ等に基づいて、検察官と弁護人らがそれぞれ指摘する同種事案の量刑傾向も参考にしながら、被告人に対する刑罰を検討すると、本件は刑の執行を猶予することもあり得る事案である。
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