事件番号令和3(ネ)833
事件名地位確認等請求控訴事件、同附帯控訴事件
裁判所名古屋高等裁判所 民事第2部
裁判年月日令和4年11月15日
結果棄却
原審裁判所岐阜地方裁判所
事案の概要被控訴人(一審原告)は、平成26年4月10日、岐阜県公安委員会の認定を受けた警備会社(本件会社)との間で雇用契約(本件雇用契約)を締結し、工事現場や駐車場等での交通誘導警備業務に従事していたところ、平成28年11月9日、保佐開始の審判の申立てをし、同29年2月23日、被控訴人に対して保佐開始及び保佐人選任の審判がされ、同年3月16日に確定した。本件雇用契約は、警備業法の規定を受けて、警備員としての欠格事由の発生を解除条件としており、上記審判の確定により上記解除条件が成就したことから、本件会社は、同月20日、被控訴人に対して本件雇用契約の終了を伝え、被控訴人は本件会社を退職した(本件退職時点)
警備業法は、昭和47年7月5日に制定され、同57年の改正で、警備業者及び警備員の欠格事由として成年被後見人、被保佐人(当時は「禁治産者」、「準禁治産者」)を規定したが(14条、3条1号。本件規定)、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号。令和元年12月14日施行。一括整備法)により、本件規定は削除された。
被控訴人は、控訴人(一審被告)が本件規定を設けたことは憲法13条(個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉)、14条1項(法の下の平等)、22条1項(職業選択の自由)及び27条1項(勤労の権利)に違反し、本件退職時点までに本件規定を改廃せずに存置し続けたことは国家賠償法(国賠法)1条1項の「違法行為」に当たり、本件規定により本件会社を退職せざるを得なくなり精神的苦痛を被ったなどと主張して、控訴人に対し、国賠法1条1項に基づき慰謝料100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年1月25日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下、特記しない限り同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
判示事項の要旨(判示事項)
1 民法上の保佐(準禁治産)等の制度は、本人の財産権等を擁護することを目的とするもので、警備業法における規制とは制度の趣旨が異なり、これを借用して被保佐人(準禁治産者)であることを警備員の欠格事由と定めた警備業法の本件規定(14条、3条1号)は、その制定当初から、憲法14条1項(法の下の平等)、22条1項(職業選択の自由)に反するものであったとした事例
2 本件規定が憲法に違反していることは、平成22年7月頃には、国会にとっても明白であり、警備員をしていた被控訴人が被保佐人となり欠格事由に該当したことで退職した平成29年3月まで、約6年8か月にわたって本件規定を改廃しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法であり、その違法性は大きいとした事例
3 本件規定が職業選択の自由そのものを制約するもので、被控訴人が習熟しており、生計維持のためにも必要な社会経済活動を制限され、同程度の能力を有する法定後見制度を利用しない者との間で不平等な扱いを受け、社会生活をしていく中でその能力を発揮する主要な場を奪われ、個人としての自立等を妨げられ、自己実現のできる重要な機会を強制的に奪われたことなどを考慮すると、慰謝料は50万円が相当であるとして、原審の認容額(10万円)から増額した事例
事件番号令和3(ネ)833
事件名地位確認等請求控訴事件、同附帯控訴事件
裁判所名古屋高等裁判所 民事第2部
裁判年月日令和4年11月15日
結果棄却
原審裁判所岐阜地方裁判所
事案の概要
被控訴人(一審原告)は、平成26年4月10日、岐阜県公安委員会の認定を受けた警備会社(本件会社)との間で雇用契約(本件雇用契約)を締結し、工事現場や駐車場等での交通誘導警備業務に従事していたところ、平成28年11月9日、保佐開始の審判の申立てをし、同29年2月23日、被控訴人に対して保佐開始及び保佐人選任の審判がされ、同年3月16日に確定した。本件雇用契約は、警備業法の規定を受けて、警備員としての欠格事由の発生を解除条件としており、上記審判の確定により上記解除条件が成就したことから、本件会社は、同月20日、被控訴人に対して本件雇用契約の終了を伝え、被控訴人は本件会社を退職した(本件退職時点)
警備業法は、昭和47年7月5日に制定され、同57年の改正で、警備業者及び警備員の欠格事由として成年被後見人、被保佐人(当時は「禁治産者」、「準禁治産者」)を規定したが(14条、3条1号。本件規定)、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号。令和元年12月14日施行。一括整備法)により、本件規定は削除された。
被控訴人は、控訴人(一審被告)が本件規定を設けたことは憲法13条(個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉)、14条1項(法の下の平等)、22条1項(職業選択の自由)及び27条1項(勤労の権利)に違反し、本件退職時点までに本件規定を改廃せずに存置し続けたことは国家賠償法(国賠法)1条1項の「違法行為」に当たり、本件規定により本件会社を退職せざるを得なくなり精神的苦痛を被ったなどと主張して、控訴人に対し、国賠法1条1項に基づき慰謝料100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年1月25日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下、特記しない限り同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
判示事項の要旨
(判示事項)
1 民法上の保佐(準禁治産)等の制度は、本人の財産権等を擁護することを目的とするもので、警備業法における規制とは制度の趣旨が異なり、これを借用して被保佐人(準禁治産者)であることを警備員の欠格事由と定めた警備業法の本件規定(14条、3条1号)は、その制定当初から、憲法14条1項(法の下の平等)、22条1項(職業選択の自由)に反するものであったとした事例
2 本件規定が憲法に違反していることは、平成22年7月頃には、国会にとっても明白であり、警備員をしていた被控訴人が被保佐人となり欠格事由に該当したことで退職した平成29年3月まで、約6年8か月にわたって本件規定を改廃しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法であり、その違法性は大きいとした事例
3 本件規定が職業選択の自由そのものを制約するもので、被控訴人が習熟しており、生計維持のためにも必要な社会経済活動を制限され、同程度の能力を有する法定後見制度を利用しない者との間で不平等な扱いを受け、社会生活をしていく中でその能力を発揮する主要な場を奪われ、個人としての自立等を妨げられ、自己実現のできる重要な機会を強制的に奪われたことなどを考慮すると、慰謝料は50万円が相当であるとして、原審の認容額(10万円)から増額した事例
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