事件番号令和3(ヨ)449
事件名美浜3号機運転禁止仮処分命令申立事件
裁判所大阪地方裁判所 第1民事部
裁判年月日令和4年12月20日
事案の概要本件は、債務者が福井県三方郡美浜町丹生66号川坂山5番地3に設置、運用している発電用原子炉施設である美浜発電所3号炉(以下「本件発電所」という。)について、本件発電所から一定距離の範囲内に居住する債権者らが、本件発電所は、運転開始から40年以上経過して老朽化しており、特に地震に対する安全性を欠いているほか、避難計画にも不備があるから、その運転中に放射性物質を環境中に大量に放出する重大事故を起こし、債権者らの人格権が侵害される具体的危険があると主張して、人格権に基づく妨害予防請求権としての本件発電所の運転差止請求権を被保全権利として、本件発電所の運転を仮に差し止める仮処分命令を申し立てた事案である。
判示事項の要旨【判示事項の要旨】
1 事案の概要等
債務者が設置、運用している美浜原子力発電所3号炉は運転開始から40年以上経過して老朽化しており、特に地震に対する安全性を欠いているほか、避難計画にも不備があり、放射性物質が環境中に大量に放出される重大事故により人格権が侵害される具体的危険があるとして、同発電所から一定距離の範囲内に居住する債権者らが、同発電所の運転を仮に差し止める仮処分命令を申し立てたことについて、債権者らの人格権が侵害される具体的危険について疎明があるとはいえないとして、債権者らの申立てがいずれも却下された事例
2 判断要旨
(1) 本件発電所が運転開始後40年以上経過していることをもって、新規制基準が定める高経年化対策以上に、本件発電所の安全性を厳格、慎重に判断しなければならないとする事情は認められない。
(2) 耐震安全性の評価において、設計建設時に安全率が設定されておらず、基準地震動が引き上げられたとしても、債務者は耐震補強工事を実施し、機器等のばらつきや不確かさを保守的に考慮して評価しており、本件発電所の安全性に問題があるとは認められない。
(3) 新規制基準には「耐震重要施設は変位が生じるおそれがない地盤に設けなければならない。」と規定されているところ、債務者は各種調査を実施して、本件発電所について変位が生ずるおそれがない地盤であると評価しており、その評価に不合理な点は認められず、新規制基準への適合性を認めた原子力規制委員会の判断にも不合理な点は認められない。
(4) 新規制基準には「震源が敷地に極めて近い場合」は特別の考慮を求める規定があるところ、原子力規制委員会が震源から一定の距離がある本件発電所について上記場合に該当すると判断せず、同規定の適用を債務者に検討させなかったことは、不合理であるとはいえない。
(5) 基準地震動の策定に当たり、一般的な信頼性を有する松田式や入倉・三宅式の経験式を用いることが不適切であるとはいえず、債務者は、各種の不確かさを考慮した条件設定を行って地震動を評価しているから、経験式の有するばらつきを考慮していないとしても、新規制基準への適合性を認めた原子力規制委員会の判断に不合理な点は認められない。
(6) 新規制基準が、基準地震動が原子力発電所を繰り返し襲うことを想定していないとしても、不合理であるとはいえない。
(7) 債権者らが避難を要するような事態が発生する具体的危険について十分な疎明があるとはいえず、避難計画についての不備を指摘する債権者らの主張は前提を欠くというべきである。
事件番号令和3(ヨ)449
事件名美浜3号機運転禁止仮処分命令申立事件
裁判所大阪地方裁判所 第1民事部
裁判年月日令和4年12月20日
事案の概要
本件は、債務者が福井県三方郡美浜町丹生66号川坂山5番地3に設置、運用している発電用原子炉施設である美浜発電所3号炉(以下「本件発電所」という。)について、本件発電所から一定距離の範囲内に居住する債権者らが、本件発電所は、運転開始から40年以上経過して老朽化しており、特に地震に対する安全性を欠いているほか、避難計画にも不備があるから、その運転中に放射性物質を環境中に大量に放出する重大事故を起こし、債権者らの人格権が侵害される具体的危険があると主張して、人格権に基づく妨害予防請求権としての本件発電所の運転差止請求権を被保全権利として、本件発電所の運転を仮に差し止める仮処分命令を申し立てた事案である。
判示事項の要旨
【判示事項の要旨】
1 事案の概要等
債務者が設置、運用している美浜原子力発電所3号炉は運転開始から40年以上経過して老朽化しており、特に地震に対する安全性を欠いているほか、避難計画にも不備があり、放射性物質が環境中に大量に放出される重大事故により人格権が侵害される具体的危険があるとして、同発電所から一定距離の範囲内に居住する債権者らが、同発電所の運転を仮に差し止める仮処分命令を申し立てたことについて、債権者らの人格権が侵害される具体的危険について疎明があるとはいえないとして、債権者らの申立てがいずれも却下された事例
2 判断要旨
(1) 本件発電所が運転開始後40年以上経過していることをもって、新規制基準が定める高経年化対策以上に、本件発電所の安全性を厳格、慎重に判断しなければならないとする事情は認められない。
(2) 耐震安全性の評価において、設計建設時に安全率が設定されておらず、基準地震動が引き上げられたとしても、債務者は耐震補強工事を実施し、機器等のばらつきや不確かさを保守的に考慮して評価しており、本件発電所の安全性に問題があるとは認められない。
(3) 新規制基準には「耐震重要施設は変位が生じるおそれがない地盤に設けなければならない。」と規定されているところ、債務者は各種調査を実施して、本件発電所について変位が生ずるおそれがない地盤であると評価しており、その評価に不合理な点は認められず、新規制基準への適合性を認めた原子力規制委員会の判断にも不合理な点は認められない。
(4) 新規制基準には「震源が敷地に極めて近い場合」は特別の考慮を求める規定があるところ、原子力規制委員会が震源から一定の距離がある本件発電所について上記場合に該当すると判断せず、同規定の適用を債務者に検討させなかったことは、不合理であるとはいえない。
(5) 基準地震動の策定に当たり、一般的な信頼性を有する松田式や入倉・三宅式の経験式を用いることが不適切であるとはいえず、債務者は、各種の不確かさを考慮した条件設定を行って地震動を評価しているから、経験式の有するばらつきを考慮していないとしても、新規制基準への適合性を認めた原子力規制委員会の判断に不合理な点は認められない。
(6) 新規制基準が、基準地震動が原子力発電所を繰り返し襲うことを想定していないとしても、不合理であるとはいえない。
(7) 債権者らが避難を要するような事態が発生する具体的危険について十分な疎明があるとはいえず、避難計画についての不備を指摘する債権者らの主張は前提を欠くというべきである。
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