事件番号平成29(ワ)170
事件名原爆被爆二世国家賠償請求事件
裁判所広島地方裁判所 民事第3部
裁判年月日令和5年2月7日
結果棄却
事案の概要本件は、昭和20年8月6日に広島市に投下された原子爆弾(以下「原爆」という。)により被爆した「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(以下「被爆者援護法」という。)1条所定の「被爆者」の子(親の被爆時に胎児であった者を除く。以下「被爆二世」という。)である原告らが、原告らは原爆による放射線被害の遺伝的影響と考えられる疾病に罹患するなど、親の受けた放射線被害による影響が否定できないことによる健康不安に苛まれており、被爆者援護法の被爆者等と同等の援護を受ける権利が憲法13条により保障され、また、被爆者等との差別的取扱いをすることは憲法14条1項に違反することから、被告には、被爆者援護法が制定された平成6年までには、下記⑴から⑶のとおり、被爆二世を援護の対象に含める法律の制定や改正を行う義務があるにもかかわらずこれを怠った旨主張して、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、慰謝料各10万円及びこれに対する訴状送達の日(第1事件につき平成29年3月15日、第2事件につき同年6月26日、第3事件につき令和元年12月23日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨1 いわゆる被爆二世である原告らにおいて、①被爆者援護法所定の被爆者等と同等の援護を受ける権利が憲法13条により保障され、②被爆二世と被爆者等とを差別的取扱いをすることは憲法14条1項に違反するから、被告には、被爆二世を援護の対象に含める法律の制定や改正を行う義務があるにもかかわらずこれを怠った(立法不作為)として、被告に対し、国家賠償法に基づく賠償を求めた事案につき、請求を棄却した事例
2 被爆二世である原告らが健康不安に対する措置を国に求める権利が憲法13条により保障されているとはいえないとされた事例
3 被爆者援護法が援護の対象とする原爆放射線に直接被曝した者(被爆者等)については健康被害が生じることには科学的な裏付けがあるのに対し、放射線被曝の遺伝的影響により健康被害が生じることについては、その可能性が明確に否定されてはいないものの、通説的見解や有力な見解となっておらず、被爆者等と被爆二世とでは、原爆放射線の影響を受けて健康被害が生ずる可能性がある者という広い意味では共通する部分があるが、その背景にある科学的知見の有無や精度には質的に大きく異なるものがあるから、被爆者等と同等の措置を被爆二世に行う立法的措置を講じないことは、直ちに合理的な理由のない不当な差別的取扱いであるとはいえず、憲法14条1項に違反するとはいえないとされた事例
4 国が被爆二世を援護の対象に含める法律の制定や改正をしていないことが国家賠償法上違法とはいえないとされた事例
事件番号平成29(ワ)170
事件名原爆被爆二世国家賠償請求事件
裁判所広島地方裁判所 民事第3部
裁判年月日令和5年2月7日
結果棄却
事案の概要
本件は、昭和20年8月6日に広島市に投下された原子爆弾(以下「原爆」という。)により被爆した「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(以下「被爆者援護法」という。)1条所定の「被爆者」の子(親の被爆時に胎児であった者を除く。以下「被爆二世」という。)である原告らが、原告らは原爆による放射線被害の遺伝的影響と考えられる疾病に罹患するなど、親の受けた放射線被害による影響が否定できないことによる健康不安に苛まれており、被爆者援護法の被爆者等と同等の援護を受ける権利が憲法13条により保障され、また、被爆者等との差別的取扱いをすることは憲法14条1項に違反することから、被告には、被爆者援護法が制定された平成6年までには、下記⑴から⑶のとおり、被爆二世を援護の対象に含める法律の制定や改正を行う義務があるにもかかわらずこれを怠った旨主張して、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、慰謝料各10万円及びこれに対する訴状送達の日(第1事件につき平成29年3月15日、第2事件につき同年6月26日、第3事件につき令和元年12月23日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨
1 いわゆる被爆二世である原告らにおいて、①被爆者援護法所定の被爆者等と同等の援護を受ける権利が憲法13条により保障され、②被爆二世と被爆者等とを差別的取扱いをすることは憲法14条1項に違反するから、被告には、被爆二世を援護の対象に含める法律の制定や改正を行う義務があるにもかかわらずこれを怠った(立法不作為)として、被告に対し、国家賠償法に基づく賠償を求めた事案につき、請求を棄却した事例
2 被爆二世である原告らが健康不安に対する措置を国に求める権利が憲法13条により保障されているとはいえないとされた事例
3 被爆者援護法が援護の対象とする原爆放射線に直接被曝した者(被爆者等)については健康被害が生じることには科学的な裏付けがあるのに対し、放射線被曝の遺伝的影響により健康被害が生じることについては、その可能性が明確に否定されてはいないものの、通説的見解や有力な見解となっておらず、被爆者等と被爆二世とでは、原爆放射線の影響を受けて健康被害が生ずる可能性がある者という広い意味では共通する部分があるが、その背景にある科学的知見の有無や精度には質的に大きく異なるものがあるから、被爆者等と同等の措置を被爆二世に行う立法的措置を講じないことは、直ちに合理的な理由のない不当な差別的取扱いであるとはいえず、憲法14条1項に違反するとはいえないとされた事例
4 国が被爆二世を援護の対象に含める法律の制定や改正をしていないことが国家賠償法上違法とはいえないとされた事例
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