事件番号令和1(ワ)11273
事件名損害賠償請求事件
裁判所大阪地方裁判所 第18民事部
裁判年月日令和4年9月22日
事案の概要本件は、平成8年法律第105号による改正前の優生保護法(以下「旧優生保護法」という。)に基づく不妊手術(以下「優生手術」という。)を受けさせられたとする原告1及びその配偶者である原告2が、旧優生保護法が子を産み育てるか否かについて意思決定をする自己決定権、リプロダクティブ・ライツ、平等権等の憲法上の権利を侵害する違憲な法律であるにもかかわらず、国会議員において、旧優生保護法を立法したこと及び被害救済法の立法をしなかったことがいずれも違法である旨主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、それぞれ慰謝料及び弁護士費用相当額である1100万円ずつ(ただし、いずれも一部請求である。)及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である令和2年1月28日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下、特に断らない限り、同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨旧優生保護法下のいわゆる優生手術の規定が、自己決定権、リプロダクティブ・ライツ等の憲法上の権利を侵害する違憲な立法であったこと等を理由とする国に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求事件において、同規定の立法行為について国家賠償法上の違法性があるものとした上で、不妊手術の実施から20年以上の除斥期間が経過していることに関し、国が非人道的な優生手術を制度化して、広く優生思想及び優生政策の正当性を国民に認識させる状況を作出し、かねてからあった差別・偏見を正当化・固定化した上、これを相当に助長してきたため、優生手術に係る国家賠償請求訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境が続いたものというべきであり、除斥期間の適用をそのまま認めることは、著しく正義・公平の理念に反するから、権利行使を不能又は著しく困難とする事由がある場合に、その事由が解消されてから6か月を経過するまでの間、時効の完成を延期する時効停止の規定(民法158ないし160条)の法意に照らし、訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境が解消されてから6か月を経過するまでの間、除斥期間の適用が制限されるものと解するのが相当であるが、平成30年1月に提起された同種の訴訟の報道を契機として本件の訴訟提起を検討するようになった本件の具体的な事情に照らして、除斥期間の適用は制限されないと判断された事例
事件番号令和1(ワ)11273
事件名損害賠償請求事件
裁判所大阪地方裁判所 第18民事部
裁判年月日令和4年9月22日
事案の概要
本件は、平成8年法律第105号による改正前の優生保護法(以下「旧優生保護法」という。)に基づく不妊手術(以下「優生手術」という。)を受けさせられたとする原告1及びその配偶者である原告2が、旧優生保護法が子を産み育てるか否かについて意思決定をする自己決定権、リプロダクティブ・ライツ、平等権等の憲法上の権利を侵害する違憲な法律であるにもかかわらず、国会議員において、旧優生保護法を立法したこと及び被害救済法の立法をしなかったことがいずれも違法である旨主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、それぞれ慰謝料及び弁護士費用相当額である1100万円ずつ(ただし、いずれも一部請求である。)及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である令和2年1月28日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下、特に断らない限り、同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨
旧優生保護法下のいわゆる優生手術の規定が、自己決定権、リプロダクティブ・ライツ等の憲法上の権利を侵害する違憲な立法であったこと等を理由とする国に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求事件において、同規定の立法行為について国家賠償法上の違法性があるものとした上で、不妊手術の実施から20年以上の除斥期間が経過していることに関し、国が非人道的な優生手術を制度化して、広く優生思想及び優生政策の正当性を国民に認識させる状況を作出し、かねてからあった差別・偏見を正当化・固定化した上、これを相当に助長してきたため、優生手術に係る国家賠償請求訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境が続いたものというべきであり、除斥期間の適用をそのまま認めることは、著しく正義・公平の理念に反するから、権利行使を不能又は著しく困難とする事由がある場合に、その事由が解消されてから6か月を経過するまでの間、時効の完成を延期する時効停止の規定(民法158ないし160条)の法意に照らし、訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境が解消されてから6か月を経過するまでの間、除斥期間の適用が制限されるものと解するのが相当であるが、平成30年1月に提起された同種の訴訟の報道を契機として本件の訴訟提起を検討するようになった本件の具体的な事情に照らして、除斥期間の適用は制限されないと判断された事例
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