事件番号令和3(ネ)2139
事件名国家賠償請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所
裁判年月日令和5年3月23日
結果その他
事案の概要本件は、旧優生保護法に基づく優生手術を受けさせられたとする一審原告1、控訴人4及び控訴人5並びに一審原告1の配偶者である控訴人2及び控訴人4の配偶者である控訴人3(以下、同人らを「一審原告ら」という。)が、旧優生保護法は違憲無効であり、国会議員には旧優生保護法の規定を改廃しなかった立法不作為や偏見差別を解消する措置を講じなかった等の立法不作為があると主張するとともに、厚生大臣が優生手術を推進したことは違法であるし、厚生大臣及び厚生労働大臣には旧優生保護法を廃止し優生政策を抜本的に転換すべき義務等があるのにこれを怠った不作為があるなどと主張して、被控訴人に対し、国賠法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金1100万円(慰謝料3000万円のうち1000万円(一部請求)と弁護士費用100万円の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨1 旧優生保護法3条から13条まで(優生条項)は、優生手術の対象者の幸福追求権、自己決定権を侵害するとともに、特定の障害等を有する者について不合理な差別的取扱いを定めるものであるから、明らかに憲法13条、14条1項に反して違憲である。したがって、これらの規定に係る立法行為は国家賠償法上違法であり、これを立法した国会議員には少なくとも過失がある。
2 除斥期間の起算点である「不法行為の時」は、旧優生保護法に基づき優生手術が行われた時であるから、本件訴えの提起時には20年が経過している。
3 被控訴人は、前記旧優生保護法を改廃して、優生手術を受けた者に補償措置を講ずることを怠り、同法を合憲の法律として平成8年まで存続させ、また、優生手術を施行する際に、その法的根拠や理由を対象者が十分に理解できるように説明や通知をすることを怠った結果、控訴人らが優生手術を受けたことのみならず、優生条項が明らかに憲法上の権利等を違法に侵害するものであると認識することを妨げ、控訴人らの権利行使を著しく困難とする状況を殊更に作出し、その後も、旧優生保護法の違憲性やその責任を争い、その状況を解消しなかった。控訴人らについて、除斥期間の適用を認めることは、個人の尊厳を基本原理とする日本国憲法が容認せず、著しく正義・公平の理念に反するから、被控訴人が優生条項を憲法の規定に違反していると認めた時、又は優生条項が憲法の規定に違反していることを最高裁判所の判決により確定した時のいずれか早い時期から6か月を経過するまでの間は、除斥期間の経過による効果が発生しないものと解するのが相当である。
事件番号令和3(ネ)2139
事件名国家賠償請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所
裁判年月日令和5年3月23日
結果その他
事案の概要
本件は、旧優生保護法に基づく優生手術を受けさせられたとする一審原告1、控訴人4及び控訴人5並びに一審原告1の配偶者である控訴人2及び控訴人4の配偶者である控訴人3(以下、同人らを「一審原告ら」という。)が、旧優生保護法は違憲無効であり、国会議員には旧優生保護法の規定を改廃しなかった立法不作為や偏見差別を解消する措置を講じなかった等の立法不作為があると主張するとともに、厚生大臣が優生手術を推進したことは違法であるし、厚生大臣及び厚生労働大臣には旧優生保護法を廃止し優生政策を抜本的に転換すべき義務等があるのにこれを怠った不作為があるなどと主張して、被控訴人に対し、国賠法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金1100万円(慰謝料3000万円のうち1000万円(一部請求)と弁護士費用100万円の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨
1 旧優生保護法3条から13条まで(優生条項)は、優生手術の対象者の幸福追求権、自己決定権を侵害するとともに、特定の障害等を有する者について不合理な差別的取扱いを定めるものであるから、明らかに憲法13条、14条1項に反して違憲である。したがって、これらの規定に係る立法行為は国家賠償法上違法であり、これを立法した国会議員には少なくとも過失がある。
2 除斥期間の起算点である「不法行為の時」は、旧優生保護法に基づき優生手術が行われた時であるから、本件訴えの提起時には20年が経過している。
3 被控訴人は、前記旧優生保護法を改廃して、優生手術を受けた者に補償措置を講ずることを怠り、同法を合憲の法律として平成8年まで存続させ、また、優生手術を施行する際に、その法的根拠や理由を対象者が十分に理解できるように説明や通知をすることを怠った結果、控訴人らが優生手術を受けたことのみならず、優生条項が明らかに憲法上の権利等を違法に侵害するものであると認識することを妨げ、控訴人らの権利行使を著しく困難とする状況を殊更に作出し、その後も、旧優生保護法の違憲性やその責任を争い、その状況を解消しなかった。控訴人らについて、除斥期間の適用を認めることは、個人の尊厳を基本原理とする日本国憲法が容認せず、著しく正義・公平の理念に反するから、被控訴人が優生条項を憲法の規定に違反していると認めた時、又は優生条項が憲法の規定に違反していることを最高裁判所の判決により確定した時のいずれか早い時期から6か月を経過するまでの間は、除斥期間の経過による効果が発生しないものと解するのが相当である。
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