事件番号令和2(行ウ)195
事件名所得税更正処分等取消請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日令和4年7月14日
事案の概要本件は、原告が、自らが全ての株式を保有する外国法人に対して外貨建てで貸付けを行い、同貸付けをしたこと及び同貸付けに係る債権の一部に対する弁済を受けたことにより為替差益を得たが、同為替差益を雑所得の金額に含めないで平成26年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、同為替差益が雑所得に含まれるものとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、所得税法51条4項に基づき、上記貸付けに係る債権の一部を放棄したことで原告に生じた損失を雑所得の金額の計算上必要経費に算入することができるとして、上記更正処分の一部及び同処分を前提とする過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。
判示事項1 所得税法51条4項にいう「(雑)所得の基因となる資産」の意義
2 居住者が、自らが全ての株式を保有する外国法人に対して外貨建ての貸付けを行い、当該外国法人が、当該貸付けに係る貸付金によって船舶を購入及び維持管理した上、当該船舶を売却し、その代金を上記貸付けに係る債務の一部に対する弁済に充てた後、上記居住者が当該貸付けに係る残債権を放棄した場合において、当該残債権が所得税法51条4項の「(雑)所得の基因となる資産」に該当しないとされた事例
裁判要旨1 所得税法51条4項にいう「(雑)所得の基因となる資産」とは、その性質上雑所得を発生させる原因となる資産を意味するが、当該資産の抽象的性質からは雑所得を発生させる抽象的な可能性を有する資産であっても、当該資産の客観的性質に照らして雑所得を発生させる具体的可能性がない場合には、「(雑)所得の基因となる資産」に該当しない。
2 居住者が、自らが全ての株式を保有する外国法人に対して外貨建ての貸付けを行い、当該外国法人が、当該貸付けに係る貸付金によって船舶を購入及び維持管理した上、当該船舶を売却し、その代金を上記貸付けに係る債務の一部に対する弁済に充てた後、上記居住者が当該貸付けに係る残債権を放棄した場合において、当該貸付けにつき、無担保かつ無利息で、借主が十分な資金を有するまで貸主が弁済を求めない旨が合意されていたこと、当該貸付けに係る債務に対する弁済の原資となり得る上記外国法人の資産は貸付金の残額を除けば上記船舶又はその売却代金のみであったこと、当該外国法人は弁済に充てる原資を獲得するための活動を行っておらずその能力も有していなかったことなど判示の事情の下においては、上記放棄に係る残債権は、その客観的性質に照らし、弁済による為替差益等の雑所得が発生する具体的可能性がなかったから、所得税法51条4項にいう「(雑)所得の基因となる資産」に該当しない。
事件番号令和2(行ウ)195
事件名所得税更正処分等取消請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日令和4年7月14日
事案の概要
本件は、原告が、自らが全ての株式を保有する外国法人に対して外貨建てで貸付けを行い、同貸付けをしたこと及び同貸付けに係る債権の一部に対する弁済を受けたことにより為替差益を得たが、同為替差益を雑所得の金額に含めないで平成26年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、同為替差益が雑所得に含まれるものとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、所得税法51条4項に基づき、上記貸付けに係る債権の一部を放棄したことで原告に生じた損失を雑所得の金額の計算上必要経費に算入することができるとして、上記更正処分の一部及び同処分を前提とする過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。
判示事項
1 所得税法51条4項にいう「(雑)所得の基因となる資産」の意義
2 居住者が、自らが全ての株式を保有する外国法人に対して外貨建ての貸付けを行い、当該外国法人が、当該貸付けに係る貸付金によって船舶を購入及び維持管理した上、当該船舶を売却し、その代金を上記貸付けに係る債務の一部に対する弁済に充てた後、上記居住者が当該貸付けに係る残債権を放棄した場合において、当該残債権が所得税法51条4項の「(雑)所得の基因となる資産」に該当しないとされた事例
裁判要旨
1 所得税法51条4項にいう「(雑)所得の基因となる資産」とは、その性質上雑所得を発生させる原因となる資産を意味するが、当該資産の抽象的性質からは雑所得を発生させる抽象的な可能性を有する資産であっても、当該資産の客観的性質に照らして雑所得を発生させる具体的可能性がない場合には、「(雑)所得の基因となる資産」に該当しない。
2 居住者が、自らが全ての株式を保有する外国法人に対して外貨建ての貸付けを行い、当該外国法人が、当該貸付けに係る貸付金によって船舶を購入及び維持管理した上、当該船舶を売却し、その代金を上記貸付けに係る債務の一部に対する弁済に充てた後、上記居住者が当該貸付けに係る残債権を放棄した場合において、当該貸付けにつき、無担保かつ無利息で、借主が十分な資金を有するまで貸主が弁済を求めない旨が合意されていたこと、当該貸付けに係る債務に対する弁済の原資となり得る上記外国法人の資産は貸付金の残額を除けば上記船舶又はその売却代金のみであったこと、当該外国法人は弁済に充てる原資を獲得するための活動を行っておらずその能力も有していなかったことなど判示の事情の下においては、上記放棄に係る残債権は、その客観的性質に照らし、弁済による為替差益等の雑所得が発生する具体的可能性がなかったから、所得税法51条4項にいう「(雑)所得の基因となる資産」に該当しない。
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