事件番号令和2(行ウ)344
事件名LINEを用いたオンラインによる住民票の写し交付請求サービス適法確認請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日令和4年12月8日
事案の概要原告は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対して、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者(以下「住民」という。)が当該市町村の長に対して行う住民票の写しの交付請求に係る手続につき、電子情報処理組織を使用する方法(以下この方法を「オンライン」という。原告の場合は、アプリケーションソフトウェアである「LINE」〔以下単に「LINE」という。〕を用いる。)によることができるサービス(以下「本件サービス」という。)の提供を開始した。しかしながら、①総務省自治行政局住民制度課長は、都道府県等に対し、電子署名による本人確認を行うことなくオンラインで住民票の写しの交付請求をすることは、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号。以下「住基法」という。)12条3項、総務省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則(平成15年総務省令第48号。以下「デジタル手続法総務省令」という。)4条2項等に違反する旨の通知(「電子情報処理組織を使用して本人から住民票の写しの交付請求を受け付ける場合の取扱いに係る質疑応答について(通知)」。以下「本件通知」という。)を発出し、その後、②住民基本台帳の一部の写しの閲覧並びに住民票の写し等及び除票の写し等の交付に関する省令(昭和60年自治省令第28号。以下「本件省令」という。)が令和3年総務省令第96号により改正され(以下この改正を「本件省令改正」という。)、本件省令22条において、住民票の写しの交付請求に当たっては、デジタル手続法総務省令4条2項ただし書の適用がない旨が規定された(これにより、電子署名及び電子証明書の併用による本人確認以外の方法によりオンラインで住民票の写しの交付請求をすることは、本件省令22条に違反することとなった。)
本件は、かかる事実関係の下において、原告が、①本件通知が違法であることの確認を求め(以下「本件通知違法確認請求」という。)、又は、②(本件通知及び)本件省令改正が違法であることを前提に、原告が(本件通知及び本件省令22条の存在にもかかわらず)本件サービスを適法に行い得る地位にあることの確認を求める(以下「本件地位確認請求」といい、本件通知違法確認請求と併せて「本件各確認請求」という。)事案である。
判示事項1 電子署名及び電子証明書の併用による本人確認を経ないオンラインでの住民票の写しの交付請求が住民基本台帳法及び総務省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則等に違反する旨の通知(本件通知)に対する違法確認訴訟の確認の利益
2 住民基本台帳の一部の写しの閲覧並びに住民票の写し等及び除票の写し等の交付に関する省令の改正(本件省令改正)により、電子署名及び電子証明書の併用による本人確認以外の方法によるオンラインでの住民票の写しの交付請求が省令違反となったとの事情の下で提起された、オンラインでの住民票の写しの交付請求サービス(本件サービス)を適法に提供することができる地位の確認訴訟に係る確認の利益
3 本件省令改正が、授権規定たる情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(デジタル手続法)6条1項の委任の範囲を超えるものか
裁判要旨1 本件通知は、本件サービスを市町村に対し適法に提供することができる原告の権利又は地位に対し実質的な影響を及ぼすものとまではいえないから、本件通知の違法確認請求に係る確認の利益は認められない。
2 本件省令改正により本件サービスは明示的に法令違反となり、実際にも、本件サービスを現に導入していた者が本件省令改正の施行と同時にこれを停止せざるを得なくなったなど判示の事情の下では、原告による地位確認請求には確認の利益が認められる。
3 本件省令改正の授権規定たるデジタル手続法6条1項は、オンラインによる申請手続の実現の具体化の方法を主務大臣の専門的・技術的な判断に委ねているところ、オンラインには対面と異なり常になりすましやデータの改ざん等の特有のリスクがある一方、住民票の写しの交付請求に当たっては、不当な手段による住民票の写しの交付を阻止することが住民基本台帳法上も要請されていることなどからすれば、電子署名及び電子証明書の併用による厳格な本人確認手続と同程度のもののみをオンラインによる住民票の写しの申請手続における具体的方法として許容し、それ以外の手段による申請手続を排除する旨を内容とする本件省令改正が住民基本台帳法及びデジタル手続法の趣旨目的等と適合しないものとはいえず、本件省令改正は、その授権規定であるデジタル手続法6条1項の委任の範囲を超えるものではない。
事件番号令和2(行ウ)344
事件名LINEを用いたオンラインによる住民票の写し交付請求サービス適法確認請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日令和4年12月8日
事案の概要
原告は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対して、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者(以下「住民」という。)が当該市町村の長に対して行う住民票の写しの交付請求に係る手続につき、電子情報処理組織を使用する方法(以下この方法を「オンライン」という。原告の場合は、アプリケーションソフトウェアである「LINE」〔以下単に「LINE」という。〕を用いる。)によることができるサービス(以下「本件サービス」という。)の提供を開始した。しかしながら、①総務省自治行政局住民制度課長は、都道府県等に対し、電子署名による本人確認を行うことなくオンラインで住民票の写しの交付請求をすることは、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号。以下「住基法」という。)12条3項、総務省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則(平成15年総務省令第48号。以下「デジタル手続法総務省令」という。)4条2項等に違反する旨の通知(「電子情報処理組織を使用して本人から住民票の写しの交付請求を受け付ける場合の取扱いに係る質疑応答について(通知)」。以下「本件通知」という。)を発出し、その後、②住民基本台帳の一部の写しの閲覧並びに住民票の写し等及び除票の写し等の交付に関する省令(昭和60年自治省令第28号。以下「本件省令」という。)が令和3年総務省令第96号により改正され(以下この改正を「本件省令改正」という。)、本件省令22条において、住民票の写しの交付請求に当たっては、デジタル手続法総務省令4条2項ただし書の適用がない旨が規定された(これにより、電子署名及び電子証明書の併用による本人確認以外の方法によりオンラインで住民票の写しの交付請求をすることは、本件省令22条に違反することとなった。)
本件は、かかる事実関係の下において、原告が、①本件通知が違法であることの確認を求め(以下「本件通知違法確認請求」という。)、又は、②(本件通知及び)本件省令改正が違法であることを前提に、原告が(本件通知及び本件省令22条の存在にもかかわらず)本件サービスを適法に行い得る地位にあることの確認を求める(以下「本件地位確認請求」といい、本件通知違法確認請求と併せて「本件各確認請求」という。)事案である。
判示事項
1 電子署名及び電子証明書の併用による本人確認を経ないオンラインでの住民票の写しの交付請求が住民基本台帳法及び総務省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則等に違反する旨の通知(本件通知)に対する違法確認訴訟の確認の利益
2 住民基本台帳の一部の写しの閲覧並びに住民票の写し等及び除票の写し等の交付に関する省令の改正(本件省令改正)により、電子署名及び電子証明書の併用による本人確認以外の方法によるオンラインでの住民票の写しの交付請求が省令違反となったとの事情の下で提起された、オンラインでの住民票の写しの交付請求サービス(本件サービス)を適法に提供することができる地位の確認訴訟に係る確認の利益
3 本件省令改正が、授権規定たる情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(デジタル手続法)6条1項の委任の範囲を超えるものか
裁判要旨
1 本件通知は、本件サービスを市町村に対し適法に提供することができる原告の権利又は地位に対し実質的な影響を及ぼすものとまではいえないから、本件通知の違法確認請求に係る確認の利益は認められない。
2 本件省令改正により本件サービスは明示的に法令違反となり、実際にも、本件サービスを現に導入していた者が本件省令改正の施行と同時にこれを停止せざるを得なくなったなど判示の事情の下では、原告による地位確認請求には確認の利益が認められる。
3 本件省令改正の授権規定たるデジタル手続法6条1項は、オンラインによる申請手続の実現の具体化の方法を主務大臣の専門的・技術的な判断に委ねているところ、オンラインには対面と異なり常になりすましやデータの改ざん等の特有のリスクがある一方、住民票の写しの交付請求に当たっては、不当な手段による住民票の写しの交付を阻止することが住民基本台帳法上も要請されていることなどからすれば、電子署名及び電子証明書の併用による厳格な本人確認手続と同程度のもののみをオンラインによる住民票の写しの申請手続における具体的方法として許容し、それ以外の手段による申請手続を排除する旨を内容とする本件省令改正が住民基本台帳法及びデジタル手続法の趣旨目的等と適合しないものとはいえず、本件省令改正は、その授権規定であるデジタル手続法6条1項の委任の範囲を超えるものではない。
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