事件番号令和2(ネ)1683
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第9民事部
裁判年月日令和5年8月30日
結果破棄自判
事案の概要本件は、①買主原告らが、本件売却地の販売に携わった1審被告の職員らが、本件各地区の過去の浸水状況や今後の危険性の高さなどを買主原告らに適切に説明すべきであったのにこれを怠ったため、水害のリスクの高さを知らずに本件売却地を購入したことで平成25年台風等により損害を被ったと主張して、1審被告に対し、各売買契約における説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償として、1審原告Aにおいて控訴の趣旨1項⑵、同Dにおいて同1項⑶、同Gにおいて同1項⑷の内容の各支払(附帯請求は平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による損害発生後の遅延損害金の支払を求めるもの。以下「前記同旨の遅延損害金」という。)を、②石原地区原告らが、1審被告の職員らは、元々浸水被害が強く懸念される石原地区の土地区画整理事業(以下「石原地区事業」という。)をあえて推進して同地区が浸水被害に遭う危険性を作出し、平成16年に福知山市内に襲来した台風の後も減災措置が不十分で、由良川や大谷川が氾濫する可能性が軽減されていないことを認識していたのであるから、地方公共団体として、石原地区の住民や宅地の買受希望者等に対し、石原地区事業に係るウェブサイトにハザードマップを掲示するか、ハザードマップが閲覧できるウェブサイトへのリンクを張り、宅地が浸水被害に遭う危険性について注意喚起し、宅地の買受希望者に対し、宅地の嵩上げや水害保険の締結等、浸水被害を軽減するための情報を提供する義務を負っていたのにこれを怠り、これによって平成25年台風等により損害を被ったと主張して、それぞれ、1審被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、1審原告A及び同Dにおいて前記①と同内容の(選択的併合)、1審原告Bにおいて控訴の趣旨1項⑸、同Cにおいて同1項⑹、同Eにおいて同1項⑺、同Fにおいて同1項⑻の内容の各支払(附帯請求は前記①と同じ。)を、それぞれ求めた事案である(第1事件、平成27年(ワ)第3452号は1審原告A、同B及び同Cの3名、第2事件、平成28年(ワ)第2679号は1審原告D、同E及び同Fの3名、第3事件、平成28年(ワ)第2834号は1審被告Gがそれぞれ提起し、併合審理されている。)。原判決(令和2年6月17日言渡し)は、前記①の買主原告らの不法行為に基づく損害賠償請求について、1審被告の職員らに、買主原告らの各売買に際して説明義務違反があり、買主原告らに対する不法行為に当たるとした上で、過失相殺の上で、1審原告Aに係る請求を432万1743円及びこれに対する前記同旨の遅延損害金、同Dに係る請求を38万円及びこれに対する前記同旨の遅延損害金、同Gに係る請求を341万0400円及びこれに対する前記同旨の遅延損害金の各支払を求める限度で認容し、その余の各請求をいずれも棄却し、前記②の石原地区原告らの国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求について、1審被告が石原地区原告らに対して情報提供義務を負う法令上の根拠がなく、1審被告の職員らが職務上の法的義務に違背したとはいえないとした上で、同原告らの請求をいずれも棄却した。本件は、原判決の敗訴部分を不服として、1審原告ら及び1審被告がそれぞれ控訴した事案である。
判示事項の要旨本件は、(1)1審被告から福知山市内の石原地区又は戸田地区の造成地を購入した買主原告らが、宅地売買に携わった1審被告の職員らが上記各地区の過去の浸水状況や今後の危険性の高さなどを適切に説明すべきであるのにこれを怠ったため、平成25年台風等により損害を被ったと主張して、1審被告に対し、各売買契約における説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償を求めたほか、(2)石原地区の上記造成地を1審被告又は第三者から購入した石原地区原告らが、1審被告が殊更に石原地区事業を推進し、造成地が浸水被害に遭う危険性を作出したことなどを理由に、石原地区の宅地の買受希望者等に対して浸水被害を軽減するための情報提供義務を負っていたのにこれを怠ったとして、1審被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案である。
原審は、上記(1)の請求の一部を認容し、その余の請求をいずれも棄却し、1審原告ら、1審被告の双方が控訴した。
控訴審は、要旨、上記(1)について、1審被告が本件売却地について、比較的規模が大きく福知山市内に浸水被害を生じさせた平成16年台風と同程度の台風等の自然災害で浸水被害が生じることを具体的に認識、予見していたとはいえず、買主原告らが浸水被害を主張する平成25年台風は由良川流域で最大規模の降雨量、由良川本川の水位は観測史上最高となったが、そのような規模の自然災害によって由良川の大規模氾濫が生じ、本件売却地に浸水被害が生じることは想定外であったと認められる一方で、買主原告らも本件各売買に際し、ある程度は購入希望地やその周辺の浸水リスクを認識し、又は認識することができたもので、1審被告と買主原告らとの間で浸水被害のリスクに係る情報の格差がそれほど大きかったとはいえず、1審被告の職員らに説明義務違反は認められず、買主原告らに対する不法行為は認められない旨の、上記(2)について、浸水リスクに係る情報の格差についての上記(1)と同旨の理由からは1審被告が石原地区原告らに情報提供義務を負うとの前提を欠くほか、1審被告が、災害対策基本法や水防法等の趣旨に照らし、石原地区原告らが主張するような情報提供義務を法的に義務付けられていたといえるかも疑問が残り、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任も認められないとして、1審被告の控訴に基づいて原判決中1審被告の敗訴部分を取消し、同部分に係る買主原告らの請求をいずれも棄却し、1審原告らの控訴をいずれも棄却した。
以 上
事件番号令和2(ネ)1683
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第9民事部
裁判年月日令和5年8月30日
結果破棄自判
事案の概要
本件は、①買主原告らが、本件売却地の販売に携わった1審被告の職員らが、本件各地区の過去の浸水状況や今後の危険性の高さなどを買主原告らに適切に説明すべきであったのにこれを怠ったため、水害のリスクの高さを知らずに本件売却地を購入したことで平成25年台風等により損害を被ったと主張して、1審被告に対し、各売買契約における説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償として、1審原告Aにおいて控訴の趣旨1項⑵、同Dにおいて同1項⑶、同Gにおいて同1項⑷の内容の各支払(附帯請求は平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による損害発生後の遅延損害金の支払を求めるもの。以下「前記同旨の遅延損害金」という。)を、②石原地区原告らが、1審被告の職員らは、元々浸水被害が強く懸念される石原地区の土地区画整理事業(以下「石原地区事業」という。)をあえて推進して同地区が浸水被害に遭う危険性を作出し、平成16年に福知山市内に襲来した台風の後も減災措置が不十分で、由良川や大谷川が氾濫する可能性が軽減されていないことを認識していたのであるから、地方公共団体として、石原地区の住民や宅地の買受希望者等に対し、石原地区事業に係るウェブサイトにハザードマップを掲示するか、ハザードマップが閲覧できるウェブサイトへのリンクを張り、宅地が浸水被害に遭う危険性について注意喚起し、宅地の買受希望者に対し、宅地の嵩上げや水害保険の締結等、浸水被害を軽減するための情報を提供する義務を負っていたのにこれを怠り、これによって平成25年台風等により損害を被ったと主張して、それぞれ、1審被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、1審原告A及び同Dにおいて前記①と同内容の(選択的併合)、1審原告Bにおいて控訴の趣旨1項⑸、同Cにおいて同1項⑹、同Eにおいて同1項⑺、同Fにおいて同1項⑻の内容の各支払(附帯請求は前記①と同じ。)を、それぞれ求めた事案である(第1事件、平成27年(ワ)第3452号は1審原告A、同B及び同Cの3名、第2事件、平成28年(ワ)第2679号は1審原告D、同E及び同Fの3名、第3事件、平成28年(ワ)第2834号は1審被告Gがそれぞれ提起し、併合審理されている。)。原判決(令和2年6月17日言渡し)は、前記①の買主原告らの不法行為に基づく損害賠償請求について、1審被告の職員らに、買主原告らの各売買に際して説明義務違反があり、買主原告らに対する不法行為に当たるとした上で、過失相殺の上で、1審原告Aに係る請求を432万1743円及びこれに対する前記同旨の遅延損害金、同Dに係る請求を38万円及びこれに対する前記同旨の遅延損害金、同Gに係る請求を341万0400円及びこれに対する前記同旨の遅延損害金の各支払を求める限度で認容し、その余の各請求をいずれも棄却し、前記②の石原地区原告らの国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求について、1審被告が石原地区原告らに対して情報提供義務を負う法令上の根拠がなく、1審被告の職員らが職務上の法的義務に違背したとはいえないとした上で、同原告らの請求をいずれも棄却した。本件は、原判決の敗訴部分を不服として、1審原告ら及び1審被告がそれぞれ控訴した事案である。
判示事項の要旨
本件は、(1)1審被告から福知山市内の石原地区又は戸田地区の造成地を購入した買主原告らが、宅地売買に携わった1審被告の職員らが上記各地区の過去の浸水状況や今後の危険性の高さなどを適切に説明すべきであるのにこれを怠ったため、平成25年台風等により損害を被ったと主張して、1審被告に対し、各売買契約における説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償を求めたほか、(2)石原地区の上記造成地を1審被告又は第三者から購入した石原地区原告らが、1審被告が殊更に石原地区事業を推進し、造成地が浸水被害に遭う危険性を作出したことなどを理由に、石原地区の宅地の買受希望者等に対して浸水被害を軽減するための情報提供義務を負っていたのにこれを怠ったとして、1審被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案である。
原審は、上記(1)の請求の一部を認容し、その余の請求をいずれも棄却し、1審原告ら、1審被告の双方が控訴した。
控訴審は、要旨、上記(1)について、1審被告が本件売却地について、比較的規模が大きく福知山市内に浸水被害を生じさせた平成16年台風と同程度の台風等の自然災害で浸水被害が生じることを具体的に認識、予見していたとはいえず、買主原告らが浸水被害を主張する平成25年台風は由良川流域で最大規模の降雨量、由良川本川の水位は観測史上最高となったが、そのような規模の自然災害によって由良川の大規模氾濫が生じ、本件売却地に浸水被害が生じることは想定外であったと認められる一方で、買主原告らも本件各売買に際し、ある程度は購入希望地やその周辺の浸水リスクを認識し、又は認識することができたもので、1審被告と買主原告らとの間で浸水被害のリスクに係る情報の格差がそれほど大きかったとはいえず、1審被告の職員らに説明義務違反は認められず、買主原告らに対する不法行為は認められない旨の、上記(2)について、浸水リスクに係る情報の格差についての上記(1)と同旨の理由からは1審被告が石原地区原告らに情報提供義務を負うとの前提を欠くほか、1審被告が、災害対策基本法や水防法等の趣旨に照らし、石原地区原告らが主張するような情報提供義務を法的に義務付けられていたといえるかも疑問が残り、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任も認められないとして、1審被告の控訴に基づいて原判決中1審被告の敗訴部分を取消し、同部分に係る買主原告らの請求をいずれも棄却し、1審原告らの控訴をいずれも棄却した。
以 上
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