事件番号令和5(う)79
事件名公職選挙法違反被告事件
裁判所広島高等裁判所 第1部
裁判年月日令和6年4月18日
結果棄却
原審裁判所広島地方裁判所
原審事件番号令和4(わ)125
事案の概要原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙に際し、広島県選出議員選挙の選挙人であり、同選挙に立候補する決意を有していたAの選挙運動者である被告人が、Aを当選させる目的で、同人への投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、同年5月29日頃、広島市(以下省略)の駐車場に駐車中の自動車内において、Aの配偶者であるBから現金10万円の供与を受けた、というものである。
原判決は、本件選挙におけるAの状況、Bの本件選挙におけるAの当選に向けた活動状況等、A及びBと被告人との関係性などの前提事実を認定した上、概要、Bは、被告人に対し本件10万円を個別具体的な対価性を明言することなく、被告人に利益を得させるものとして供与していること、B及び被告人は、被告人が本件選挙でも一定の選挙運動が可能な人物であり、本件選挙の選挙情勢やAを含めた互いの関係性から、本件選挙におけるAの当選のための種々の支援を現に期待し期待されていることを相互に認識していたこと、Bは、本件選挙の公示日が約1か月後に迫った時期に、被告人の仲立ちでAの当選に有利に影響し得るC会長との面会が実現し、Aのポスター掲示等を依頼した直後に二人きりの車中で被告人に本件10万円を渡しており、上記の期待が強く顕在化している経緯、時期、場所での供与となっていると指摘し、本件10万円がそうした期待と関わりがないことをうかがわせる事情は見当たらないし、寄附金である旨の主張はこの評価を妨げるものではなく、例年の寄付金と同額であることがこうした趣旨にとって過少ともいえないとして、本件10万円の供与には、Bにとって、被告人がかかる期待に沿う行為をすることを促進する目的、すなわち本件買収の趣旨があったと推認でき、同様に被告人もBが本件買収の趣旨を含む目的で本件10万円を供与したと認識していたと推認できるとの判断を示し、現金供与の趣旨にかかる原審弁護人の主張や本件買収の趣旨の認識にかかる被告人供述及び原審弁護人の主張を排斥して、原判示事実を認定したものである。
判示事項の要旨参議院議員通常選挙に際し、選挙人であり、かつ、特定の立候補予定者の選挙運動者であった被告人が、選挙運動の報酬として供与されるものであることを知りながら現金の供与を受けた、という公職選挙法違反被告事件について、現金が選挙運動の報酬として供与されたものであり、被告人もこのことを認識していたと認め被告人に受供与罪が成立するとした原審の判断を是認し、被告人の控訴を棄却した事例
事件番号令和5(う)79
事件名公職選挙法違反被告事件
裁判所広島高等裁判所 第1部
裁判年月日令和6年4月18日
結果棄却
原審裁判所広島地方裁判所
原審事件番号令和4(わ)125
事案の概要
原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙に際し、広島県選出議員選挙の選挙人であり、同選挙に立候補する決意を有していたAの選挙運動者である被告人が、Aを当選させる目的で、同人への投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、同年5月29日頃、広島市(以下省略)の駐車場に駐車中の自動車内において、Aの配偶者であるBから現金10万円の供与を受けた、というものである。
原判決は、本件選挙におけるAの状況、Bの本件選挙におけるAの当選に向けた活動状況等、A及びBと被告人との関係性などの前提事実を認定した上、概要、Bは、被告人に対し本件10万円を個別具体的な対価性を明言することなく、被告人に利益を得させるものとして供与していること、B及び被告人は、被告人が本件選挙でも一定の選挙運動が可能な人物であり、本件選挙の選挙情勢やAを含めた互いの関係性から、本件選挙におけるAの当選のための種々の支援を現に期待し期待されていることを相互に認識していたこと、Bは、本件選挙の公示日が約1か月後に迫った時期に、被告人の仲立ちでAの当選に有利に影響し得るC会長との面会が実現し、Aのポスター掲示等を依頼した直後に二人きりの車中で被告人に本件10万円を渡しており、上記の期待が強く顕在化している経緯、時期、場所での供与となっていると指摘し、本件10万円がそうした期待と関わりがないことをうかがわせる事情は見当たらないし、寄附金である旨の主張はこの評価を妨げるものではなく、例年の寄付金と同額であることがこうした趣旨にとって過少ともいえないとして、本件10万円の供与には、Bにとって、被告人がかかる期待に沿う行為をすることを促進する目的、すなわち本件買収の趣旨があったと推認でき、同様に被告人もBが本件買収の趣旨を含む目的で本件10万円を供与したと認識していたと推認できるとの判断を示し、現金供与の趣旨にかかる原審弁護人の主張や本件買収の趣旨の認識にかかる被告人供述及び原審弁護人の主張を排斥して、原判示事実を認定したものである。
判示事項の要旨
参議院議員通常選挙に際し、選挙人であり、かつ、特定の立候補予定者の選挙運動者であった被告人が、選挙運動の報酬として供与されるものであることを知りながら現金の供与を受けた、という公職選挙法違反被告事件について、現金が選挙運動の報酬として供与されたものであり、被告人もこのことを認識していたと認め被告人に受供与罪が成立するとした原審の判断を是認し、被告人の控訴を棄却した事例
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