事件番号令和3(行コ)112
事件名生活保護基準引下処分取消等請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第3民事部
裁判年月日令和7年3月13日
結果破棄自判
原審裁判所京都地方裁判所
原審事件番号平成26(行ウ)46
事案の概要本件は、厚生労働大臣が、平成25年5月16日付けで平成25年厚生労働省告示第174号(平成25年告示)を、平成26年3月31日付けで平成26年厚生労働省告示第136号(平成26年告示)を、平成27年3月31日付けで平成27年厚生労働省告示第227号(平成27年告示)をそれぞれ発出して、生活保護法による保護の基準(昭和38年4月1日号外厚生省告示第158号)における生活扶助の基準を改定し、これに基づき、各処分行政庁が対応する各控訴人(別紙処分一覧表参照)を名宛人として生活保護法25条2項に基づき支給する生活保護費の変更決定処分(本件各処分)を行ったことについて、控訴人らが、⑴ 被控訴人京都市に対し、本件各処分は、生活扶助を健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない水準とするものであり生活保護法3条等に違反するなどと主張して、対応する処分行政庁が行った本件各処分の取消しを求めるとともに、⑵ 被控訴人国に対し、平成25年告示による生活保護基準の改定が、控訴人らの健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を侵害し、国家賠償法上違法であると主張して、それぞれ1万円の損害賠償及びこれに対する平成25年告示の発出日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨平成25年厚生労働省告示第174号、平成26年同告示第136号及び平成27年同告示227号による生活扶助基準の改定は、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、同条1項による委任の範囲を逸脱してされた違法なものである。
⑴ 生活扶助基準の改定率を、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率と同じ-4.78%としてデフレ調整することは、保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造には実際には無視しえない相違があることを看過しており、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠く。
⑵ 平成20年から平成23年にかけての物価の下落率を算定することを目的とする生活扶助相当CPIを算出するに当たって、平成20年と平成22年の価格比の算出と、平成22年と平成23年の価格比の算出とでは、計算論理の異なる算式が使用されており、-4.78%という変化率は、統計上の正確性が担保されておらず、合理的なものであるとはいえない。
⑶ 上記改定においては、ゆがみ調整に関係する部分とデフレ調整に関係する部分は不可分一体である。
事件番号令和3(行コ)112
事件名生活保護基準引下処分取消等請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第3民事部
裁判年月日令和7年3月13日
結果破棄自判
原審裁判所京都地方裁判所
原審事件番号平成26(行ウ)46
事案の概要
本件は、厚生労働大臣が、平成25年5月16日付けで平成25年厚生労働省告示第174号(平成25年告示)を、平成26年3月31日付けで平成26年厚生労働省告示第136号(平成26年告示)を、平成27年3月31日付けで平成27年厚生労働省告示第227号(平成27年告示)をそれぞれ発出して、生活保護法による保護の基準(昭和38年4月1日号外厚生省告示第158号)における生活扶助の基準を改定し、これに基づき、各処分行政庁が対応する各控訴人(別紙処分一覧表参照)を名宛人として生活保護法25条2項に基づき支給する生活保護費の変更決定処分(本件各処分)を行ったことについて、控訴人らが、⑴ 被控訴人京都市に対し、本件各処分は、生活扶助を健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない水準とするものであり生活保護法3条等に違反するなどと主張して、対応する処分行政庁が行った本件各処分の取消しを求めるとともに、⑵ 被控訴人国に対し、平成25年告示による生活保護基準の改定が、控訴人らの健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を侵害し、国家賠償法上違法であると主張して、それぞれ1万円の損害賠償及びこれに対する平成25年告示の発出日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨
平成25年厚生労働省告示第174号、平成26年同告示第136号及び平成27年同告示227号による生活扶助基準の改定は、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、同条1項による委任の範囲を逸脱してされた違法なものである。
⑴ 生活扶助基準の改定率を、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率と同じ-4.78%としてデフレ調整することは、保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造には実際には無視しえない相違があることを看過しており、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠く。
⑵ 平成20年から平成23年にかけての物価の下落率を算定することを目的とする生活扶助相当CPIを算出するに当たって、平成20年と平成22年の価格比の算出と、平成22年と平成23年の価格比の算出とでは、計算論理の異なる算式が使用されており、-4.78%という変化率は、統計上の正確性が担保されておらず、合理的なものであるとはいえない。
⑶ 上記改定においては、ゆがみ調整に関係する部分とデフレ調整に関係する部分は不可分一体である。
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