事件番号 | 令和6(わ)277 |
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事件名 | 殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件 |
裁判所 | 高松地方裁判所 |
裁判年月日 | 令和7年4月25日 |
事案の概要 | (犯行に至る経緯) 1 被告人は、令和5年5月24日、技能実習生として来日した。A及びBは、被告人の実習先である造船会社に、通訳や技能実習生の日本語指導、生活面のサポート等を行うために派遣されている者らであり、被告人の日本語教育や日本における生活全般の世話役を担っていた。 2 令和6年2月16日、被告人が、実習先で鉄を切断する作業中、左手及び顔面に火傷を負う事故が発生した。同日、A及びBは、被告人が作業中に火傷をしたことの報告を受けたが、Aは、被告人に対し、誰かに火傷について聞かれた際には、料理中に油で火傷をしたと説明するよう指示し、その後、被告人の皮膚科の受診に付き添ったBは、医師に対し、火傷の原因は、被告人が調理中に油が手にかかったものである旨説明した。被告人は、顔の包帯が取れるまでは出勤しないよう指示を受け、同月19日及び20日に休暇を取得した。同月21日、顔の包帯が取れて出勤した被告人は、上司から、傷などを日本人に見られないよう、工具保管庫の中で座って待機するよう指示を受け、仕事を与えられず、トイレや昼食以外の時間は、暗い工具保管庫の中で待機して過ごした。同日以降、被告人が出勤したにもかかわらず工具保管庫で過ごした日数は、合計13日であった。この間、被告人は、不安な気持ちがどんどん大きくなり、絶望に近い気持ちになって、夜に眠ることができなくなった。 3 令和6年3月11日、被告人は、職場に向かう途中、同僚から無視されたと感じ、出勤するのをやめて寮の自室に戻った。また、寮に戻る途中、Bから冷たい対応をされ、Bに見捨てられたものと感じた。その後、Aが、自室で過ごす被告人を訪ね、被告人のタイムカードを渡すように伝えたところ、被告人は、会社がカードを取り上げて被告人を解雇したいのだと考えた。加えて、Aに、中国に帰りたいことを伝えたが、帰国のための手続をしてもらえなかった。また、同日、被告人が、ウィチャットを通じて妻に対して送金したはずの10万円が送金できておらず、被告人の携帯電話機からウィチャット等のアプリが消えてしまうなどの出来事があった。被告人は、同日夜から翌朝にかけ、一睡もできなかった。同月12日、国際電話が通じなくなったため、被告人は、Aに携帯電話を借りることを依頼するとともに、中国に帰りたいことも伝えたが、対応してもらえず、Aの態度を冷たいと感じた。また、携帯電話機が誰かに遠隔操作されてアプリが消えているなどと考え、恐怖心を抱くとともに、家族との連絡方法が途絶え、不安や絶望感を感じた。被告人は、身を守るために、寮の部屋にあった包丁を持ち出し、ベッドの下に隠れるなどした。B及びAが被告人の部屋を訪ねたところ、部屋の中から被告人の泣き声や叫び声が聞こえた。被告人は、ウィチャットでの送金ができなかったことから、ATMで預金口座の残高を確認しようと、包丁をズボンのウエストに差し入れてコンビニに向かったが、ATMの操作手順が分からなくなり、残高を確認することはできなかった。被告人は、コンビニから寮の自室に戻る途中でBと会い、Bから車に乗るよう指示され助手席に乗ろうとしたが、Bから後部座席に座るよう言われ、冷たく、悪意をもって言われたと感じたことで、それまでためこんでいたものが爆発した。 (罪となるべき事実) 被告人は 第1 令和6年3月12日午前11時5分頃から同日午前11時8分頃までの間に、香川県仲多度郡(住所省略)a 敷地内及び同所に停車中又は走行中の自動車内において、B(当時47歳)に対し、殺意をもって、手に持った包丁(刃体の長さ約14.3cm。令和6年高松地検領第761号符号1)で同人の顔面等を多数回切り付けるなどして同人を殺害しようとしたが、同人に加療約3か月間を要する顔面多発切創等の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった 第2 令和6年3月12日午前11時5分頃から同日午前11時20分頃までの間に、前記 a 敷地内において、A(当時49歳)に対し、殺意をもって、手に持った前記包丁で同人の頭部を複数回切り付けて同人を殺害しようとしたが、同人に全治3週間を要する頭部切創等の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった 第3 業務その他正当な理由による場合でないのに、令和6年3月12日午前11時5分頃から同日午前11時20分頃までの間、前記 a 敷地内及び同所に停車中又は走行中の自動車内において、前記包丁1本を携帯した。 なお、被告人は、本件各犯行当時、重度のうつ病のため心神耗弱の状態にあった。 |
事件番号 | 令和6(わ)277 |
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事件名 | 殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件 |
裁判所 | 高松地方裁判所 |
裁判年月日 | 令和7年4月25日 |
事案の概要 |
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(犯行に至る経緯) 1 被告人は、令和5年5月24日、技能実習生として来日した。A及びBは、被告人の実習先である造船会社に、通訳や技能実習生の日本語指導、生活面のサポート等を行うために派遣されている者らであり、被告人の日本語教育や日本における生活全般の世話役を担っていた。 2 令和6年2月16日、被告人が、実習先で鉄を切断する作業中、左手及び顔面に火傷を負う事故が発生した。同日、A及びBは、被告人が作業中に火傷をしたことの報告を受けたが、Aは、被告人に対し、誰かに火傷について聞かれた際には、料理中に油で火傷をしたと説明するよう指示し、その後、被告人の皮膚科の受診に付き添ったBは、医師に対し、火傷の原因は、被告人が調理中に油が手にかかったものである旨説明した。被告人は、顔の包帯が取れるまでは出勤しないよう指示を受け、同月19日及び20日に休暇を取得した。同月21日、顔の包帯が取れて出勤した被告人は、上司から、傷などを日本人に見られないよう、工具保管庫の中で座って待機するよう指示を受け、仕事を与えられず、トイレや昼食以外の時間は、暗い工具保管庫の中で待機して過ごした。同日以降、被告人が出勤したにもかかわらず工具保管庫で過ごした日数は、合計13日であった。この間、被告人は、不安な気持ちがどんどん大きくなり、絶望に近い気持ちになって、夜に眠ることができなくなった。 3 令和6年3月11日、被告人は、職場に向かう途中、同僚から無視されたと感じ、出勤するのをやめて寮の自室に戻った。また、寮に戻る途中、Bから冷たい対応をされ、Bに見捨てられたものと感じた。その後、Aが、自室で過ごす被告人を訪ね、被告人のタイムカードを渡すように伝えたところ、被告人は、会社がカードを取り上げて被告人を解雇したいのだと考えた。加えて、Aに、中国に帰りたいことを伝えたが、帰国のための手続をしてもらえなかった。また、同日、被告人が、ウィチャットを通じて妻に対して送金したはずの10万円が送金できておらず、被告人の携帯電話機からウィチャット等のアプリが消えてしまうなどの出来事があった。被告人は、同日夜から翌朝にかけ、一睡もできなかった。同月12日、国際電話が通じなくなったため、被告人は、Aに携帯電話を借りることを依頼するとともに、中国に帰りたいことも伝えたが、対応してもらえず、Aの態度を冷たいと感じた。また、携帯電話機が誰かに遠隔操作されてアプリが消えているなどと考え、恐怖心を抱くとともに、家族との連絡方法が途絶え、不安や絶望感を感じた。被告人は、身を守るために、寮の部屋にあった包丁を持ち出し、ベッドの下に隠れるなどした。B及びAが被告人の部屋を訪ねたところ、部屋の中から被告人の泣き声や叫び声が聞こえた。被告人は、ウィチャットでの送金ができなかったことから、ATMで預金口座の残高を確認しようと、包丁をズボンのウエストに差し入れてコンビニに向かったが、ATMの操作手順が分からなくなり、残高を確認することはできなかった。被告人は、コンビニから寮の自室に戻る途中でBと会い、Bから車に乗るよう指示され助手席に乗ろうとしたが、Bから後部座席に座るよう言われ、冷たく、悪意をもって言われたと感じたことで、それまでためこんでいたものが爆発した。 (罪となるべき事実) 被告人は 第1 令和6年3月12日午前11時5分頃から同日午前11時8分頃までの間に、香川県仲多度郡(住所省略)a 敷地内及び同所に停車中又は走行中の自動車内において、B(当時47歳)に対し、殺意をもって、手に持った包丁(刃体の長さ約14.3cm。令和6年高松地検領第761号符号1)で同人の顔面等を多数回切り付けるなどして同人を殺害しようとしたが、同人に加療約3か月間を要する顔面多発切創等の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった 第2 令和6年3月12日午前11時5分頃から同日午前11時20分頃までの間に、前記 a 敷地内において、A(当時49歳)に対し、殺意をもって、手に持った前記包丁で同人の頭部を複数回切り付けて同人を殺害しようとしたが、同人に全治3週間を要する頭部切創等の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった 第3 業務その他正当な理由による場合でないのに、令和6年3月12日午前11時5分頃から同日午前11時20分頃までの間、前記 a 敷地内及び同所に停車中又は走行中の自動車内において、前記包丁1本を携帯した。 なお、被告人は、本件各犯行当時、重度のうつ病のため心神耗弱の状態にあった。 |