事件番号令和4(行ウ)41
事件名公費返還請求事件
裁判所札幌地方裁判所
裁判年月日令和7年5月15日
事案の概要本件は、北海道の住民である原告らが、亡C元首相の国葬儀(以下「本件国葬儀」という。)の実施は、憲法13条、14条、19条、20条2項、3項、89条、21条及び41条に反し違憲かつ違法であり、北海道知事であるA及び北海道議会議長であったBが本件国葬儀に参列したことも違憲かつ違法であるとして、A及びBの本件国葬儀への参列に係る公金の支出は違法な財務会計行為である旨主張し、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき、被告に対し、A及びBに対する支払請求をするよう求める事案である。
判示事項の要旨1 判決主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
2 事実及び理由の骨子
⑴ 事案の概要等
本件は、北海道の住民である原告らが、亡C元首相の国葬儀(以下「本件国葬
儀」という。)の実施は、憲法13条、14条、19条、20条2項、3項、89
条、21条及び41条に反し違憲かつ違法であり、北海道知事であるA及び北海
道議会議長であったBが本件国葬儀に参列したことも違憲かつ違法であるとし
て、A及びBの本件国葬儀への参列に係る公金の支出は違法な財務会計行為であ
る旨主張し、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき、
被告に対し、A及びBに対する支払請求をするよう求める事案である。
本件における主要な争点は、A及びBの本件国葬儀への参列に係る支出の適法
性である。
⑵ 当裁判所の判断
ア 本件国葬儀の実施が違憲かつ違法である旨の原告らの主張について
(ア) 本件国葬儀の実施が、原告らの思想及び信条の自由を直接的又は間接
的に制約するものであるということはできないから、本件国葬儀の実施が憲
法19条に反し違憲である旨の原告らの主張は採用することができない。
(イ) 本件国葬儀の実施によって原告らの尊厳が毀損されたなどということ
はできないから、本件国葬儀の実施が憲法13条前段に反し違憲であるとい
うことはできない。
(ウ) 本件国葬儀の実施が合理的な理由に基づかない取扱いであるというこ
とはできず、憲法14条に反するということはできない。
(エ) 本件国葬儀の実施の目的の重点が宗教的儀式を実施することにあった
ということはできないこと、本件国葬儀の実施が、宗教に関する布教、教化、
2
宣伝に寄与する目的、性格を有するものとはいえず、本件国葬儀の実施によ
って参列者及び一般人の宗教的関心又は宗教的意識が特に高められること
になるものとも考えられないことに照らせば、本件国葬儀の実施が憲法20
条3項及び89条に反するものということはできない。
(オ) 原告らが本件国葬儀という宗教的行事の主催者となることを強制され
たということはできないから、本件国葬儀の実施が憲法20条2項に反し違
憲である旨の原告らの主張は採用することができない。
(カ) 本件国葬儀は、亡C元首相に対する敬意と弔意を表す儀式を催し、こ
れを国の公式行事として開催することが適切であるという考えの下実施さ
れているところ、このような考え方を採ることの当不当については、基本的
には内閣の政治的な責任を通じて判断されるべきものであること等に照ら
せば、本件国葬儀の実施が憲法21条に反するということはできない。
(キ) 本件国葬儀の実施について内閣府設置法のほかに法律の根拠は要しな
いと解するのが相当であるから、本件国葬儀の実施が憲法41条に反する旨
の原告らの主張は採用することができない。
イ A及びBが本件国葬儀に参列することが違法である旨の原告らの主張につ
いて
(ア) 前記アのとおり、本件国葬儀の実施が違憲又は違法であるということ
はできないから、A及びBが本件国葬儀に参列したことは本件国葬儀の実施
の違憲性を助長するもので違法である旨の原告らの主張は採用することが
できない。
(イ)a Aの本件国葬儀への参列は、国との友好、信頼関係の維持増進を図
ることを目的とすると客観的に見ることができ、社会通念上儀礼の範囲に
とどまるものということができるから、法2条2項に規定する「地域にお
ける事務」に該当する。
b Bの本件国葬儀への参列は、合理的な理由がある公務として適法である
3
ということができる。
以上
事件番号令和4(行ウ)41
事件名公費返還請求事件
裁判所札幌地方裁判所
裁判年月日令和7年5月15日
事案の概要
本件は、北海道の住民である原告らが、亡C元首相の国葬儀(以下「本件国葬儀」という。)の実施は、憲法13条、14条、19条、20条2項、3項、89条、21条及び41条に反し違憲かつ違法であり、北海道知事であるA及び北海道議会議長であったBが本件国葬儀に参列したことも違憲かつ違法であるとして、A及びBの本件国葬儀への参列に係る公金の支出は違法な財務会計行為である旨主張し、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき、被告に対し、A及びBに対する支払請求をするよう求める事案である。
判示事項の要旨
1 判決主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
2 事実及び理由の骨子
⑴ 事案の概要等
本件は、北海道の住民である原告らが、亡C元首相の国葬儀(以下「本件国葬
儀」という。)の実施は、憲法13条、14条、19条、20条2項、3項、89
条、21条及び41条に反し違憲かつ違法であり、北海道知事であるA及び北海
道議会議長であったBが本件国葬儀に参列したことも違憲かつ違法であるとし
て、A及びBの本件国葬儀への参列に係る公金の支出は違法な財務会計行為であ
る旨主張し、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき、
被告に対し、A及びBに対する支払請求をするよう求める事案である。
本件における主要な争点は、A及びBの本件国葬儀への参列に係る支出の適法
性である。
⑵ 当裁判所の判断
ア 本件国葬儀の実施が違憲かつ違法である旨の原告らの主張について
(ア) 本件国葬儀の実施が、原告らの思想及び信条の自由を直接的又は間接
的に制約するものであるということはできないから、本件国葬儀の実施が憲
法19条に反し違憲である旨の原告らの主張は採用することができない。
(イ) 本件国葬儀の実施によって原告らの尊厳が毀損されたなどということ
はできないから、本件国葬儀の実施が憲法13条前段に反し違憲であるとい
うことはできない。
(ウ) 本件国葬儀の実施が合理的な理由に基づかない取扱いであるというこ
とはできず、憲法14条に反するということはできない。
(エ) 本件国葬儀の実施の目的の重点が宗教的儀式を実施することにあった
ということはできないこと、本件国葬儀の実施が、宗教に関する布教、教化、
2
宣伝に寄与する目的、性格を有するものとはいえず、本件国葬儀の実施によ
って参列者及び一般人の宗教的関心又は宗教的意識が特に高められること
になるものとも考えられないことに照らせば、本件国葬儀の実施が憲法20
条3項及び89条に反するものということはできない。
(オ) 原告らが本件国葬儀という宗教的行事の主催者となることを強制され
たということはできないから、本件国葬儀の実施が憲法20条2項に反し違
憲である旨の原告らの主張は採用することができない。
(カ) 本件国葬儀は、亡C元首相に対する敬意と弔意を表す儀式を催し、こ
れを国の公式行事として開催することが適切であるという考えの下実施さ
れているところ、このような考え方を採ることの当不当については、基本的
には内閣の政治的な責任を通じて判断されるべきものであること等に照ら
せば、本件国葬儀の実施が憲法21条に反するということはできない。
(キ) 本件国葬儀の実施について内閣府設置法のほかに法律の根拠は要しな
いと解するのが相当であるから、本件国葬儀の実施が憲法41条に反する旨
の原告らの主張は採用することができない。
イ A及びBが本件国葬儀に参列することが違法である旨の原告らの主張につ
いて
(ア) 前記アのとおり、本件国葬儀の実施が違憲又は違法であるということ
はできないから、A及びBが本件国葬儀に参列したことは本件国葬儀の実施
の違憲性を助長するもので違法である旨の原告らの主張は採用することが
できない。
(イ)a Aの本件国葬儀への参列は、国との友好、信頼関係の維持増進を図
ることを目的とすると客観的に見ることができ、社会通念上儀礼の範囲に
とどまるものということができるから、法2条2項に規定する「地域にお
ける事務」に該当する。
b Bの本件国葬儀への参列は、合理的な理由がある公務として適法である
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ということができる。
以上
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