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カテゴリー > 総合裁判例集 (アーカイブ : 平成22年7月 ; 降順 ; 裁判年月日で整列)

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事件番号/事件名裁判年月日/裁判所判決書
[行政] 平成22(行コ)40  1144Views
建築確認処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成19年(行ウ)第161号)
平成22年7月30日
大阪高等裁判所
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[行政] 平成20(行ウ)265  863Views
賦課決定処分取消請求事件
平成22年7月30日
東京地方裁判所
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[知財] [民事] 平成20(ワ)34464  956Views
報酬金請求事件(著作権・民事訴訟)
平成22年7月30日
東京地方裁判所
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[最高裁] [刑事] 平成20(あ)720  2311ViewsMoreinfo
詐欺被告事件
平成20(あ)720
第三者を搭乗させる意図を秘して国際航空運送に係る航空会社関係係員から自己に対する搭乗券の交付を受ける行為が詐欺罪に当たるとされた事例
裁判要旨
平成22年7月29日
最高裁判所第一小法廷
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[知財] [民事] 平成22(ワ)5728  1000Views
(特許権・民事訴訟)
平成22年7月29日
東京地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成22(わ)335  1326ViewsMoreinfo
殺人被告事件
平成22(わ)335
当時83歳の被告人(第1回公判前に保釈)が,当時56歳で複数の難病を抱えた長男を他人に迷惑はかけられないと1人介護していたが,煙草の本数を巡る悶着から激高して,靴下等で首を強く絞めつけて殺害した殺人被告事件について,事件の経緯,被告人の年齢,境遇などをみれば,酌むべき点があり,本件の責任を一人被告人にだけ負わせ,厳しく断罪することには躊躇を覚えざるを得ないなどとして,刑の執行を猶予する判決を言い渡した事例。
判示事項の要旨
平成22年7月29日
さいたま地方裁判所 第3刑事部
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[労働] 平成22(行コ)159  1048Views
賃金請求控訴,同附帯控訴事件(通称 東京都職員超過勤務手当請求)
平成22年7月28日
東京高等裁判所
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[下級] [刑事] 平成21(う)202  2070ViewsMoreinfo
強制わいせつ致死,殺人,死体遺棄,出入国管理及び難民認定法違反被告事件
平成21(う)202
本件は,被告人の前科の点においては,特に悪質性が高く,非難の程度が高い事案であるというには足りない旨説示している。確かに,検察官の主張によっても,被告人に前科はない。しかし,検察官の主張に差戻前控訴審で検察官から提出された意見書等をも併せて検討すると,被告人について,ペルー共和国の裁判所で審理が開始されたという2件の犯罪は,いずれも被害児童と年齢が似通った少女に対する性犯罪であって,被告人について予審が請求され,うち1件については,予審裁判所の最終報告書及び高等検察庁検察官の求刑意見書が提出されて,未だその事件がペルー共和国の裁判所に係属中であり,もう1件についても,求刑意見書が作成され,郡検察庁検察官が裁判所に略式の裁判手続による公訴を提起したものの,被告人が裁判所に出頭しないまま,時効により刑事裁判が終了した,というのである。そして,同国における検察官の意見書は,当該事案における犯罪事実及び犯罪について被疑者が有罪か無罪かという点にまで及ぶ内容のものとなる,というのである。ところで,被告人が,前に罪を犯して検挙されるなどしたものの,公訴を提起されなかったために,刑罰を受けるには至らなかった,いわゆる前歴についても,被告人が罪を犯したことが確実である場合においては,その内容に応じて,被告人に対する刑を量定するに当たり適切に考慮すべき場合があることは明らかである。第一審判決は,嫌疑を受けたことだけをもって,量刑上,前科があるのと同様の不利な取扱いをすることは許されない旨説示しており,その説示する限りにおいては正当であるものの,被告人のペルー共和国における前歴について,およそ考慮する必要がないかのようにも受け取れる点は,賛同することができない。そこで,被告人が,第一審公判において,ペルー共和国における前歴につき,その嫌疑自体を否認し,差戻前控訴審公判においては,検察官からの質問に対して黙秘したこと,被告人自身が,第一審公判において,裁判長からの質問に対し,同国の方から被告人の前歴について既に確認しているはずであり,裁判所や訴訟関係者は,被告人の同国での前歴について知っているはずである,自分は一切罪を犯していないという趣旨の供述をしており,これは,同国での前歴関係の書類が,裁判官や検察官に読まれることを前提とした供述であることなどを踏まえ,かつ,被告人の前歴に関する証拠を取り調べることは,量刑判断に資するだけでなく,被告人の第一審及び差戻前控訴審における各公判供述の信用性を判断する上でも有用であることも考慮して,検察官の量刑不当の主張を調査するについて必要があると認められる限度において,刑訴法393条1項本文により,採用し取り調べたものである。イ しかし,当事者主義を前提とし,合理的期間内に充実した審理を行って事案の真相を解明するとの要請を実現するべく,公判前整理手続における証拠の整理を実効あらしめるために定められた刑訴法316条の32第1項による証拠調べ請求の制限が及ぶとされる証拠について,控訴審でその制限に配慮することなく取り調べることになれば,同条項の意義を損ない,ひいては,上記の要請にも反することになり,そのような証拠については,基本的に刑訴法382条の2第1項にいう「やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかった証拠」には当たらないというべきであり,さらに,同法393条1項本文により取り調べるか否かを判断する場合にも,同法316条の32第1項による証拠調べ請求の制限が及んでいることを考慮することが必要であり,第一審が同条項による証拠調べ請求の制限に抵触するとして証拠調べ請求を却下している場合には,その第一審の判断が,違法又は同条2項による職権での証拠調べの裁量を逸脱している場合であり,あるいは,違法又は裁量を逸脱しているとまではいえないとしても,実体的真実の発見,具体的妥当性の観点から,その妥当性,合理性に疑問が存するというような場合に限り,取調べを行うのが相当であると考えられる。そして,本件において,第一審裁判所が,刑訴法316条の32第1項にいう「やむを得ない事由によって公判前整理手続において請求することができなかったもの」には当たらないとして,その証拠調べ請求を却下した前歴関係証拠及び第一審判決後にペルー共和国から受理した被告人の前歴に関する証拠については,検察官が,公判前整理手続において,前歴関係証拠を証拠調べ請求をする必要性を検討するべく手立てを講じることが困難であったというような事情は見当たらないにもかかわらず,そのような手立てを講じておらず,そもそも,当時,「ICPOリマ(ペルー共和国)に対する捜査協力要請について(追加回答)」と題する書面(検乙12)のほかには,被告人の前歴関係についての立証をしない意思であったと考えざるを得ないところ,証拠の内容自体も,前科ではなく,前歴にとどまるものであり,この検察官の立証方針が,およそ誤っており,実体的真実発見ないし具体的妥当性の観点から,その是正が必要であったとはいい難く,刑訴法316条の32第1項による証拠調べ請求の制限が及んでいるとして前歴関係証拠を却下した第一審裁判所の判断が妥当性,合理性を欠いているとすることもできず,この前歴関係証拠及び第一審判決後にペルー共和国から受理した被告人の前歴に関する証拠が,刑訴法393条1項本文により取調べをするのが相当であると解するのは困難である。さらに,第一審判決が,「量刑の理由」の項4(3)ウ(イ)において,有罪の判決を受けたという立証がなされていないにもかかわらず,嫌疑を受けたことだけをもって,量刑上,前科があるのと同様の不利な取扱いをすることは許されない旨説示するところは,正当という以外になく,この説示が,被告人のペルー共和国における前歴について,およそ考慮する必要がないかのようにも受け取れるとする差戻前控訴審判決の指摘は,当を得ないものといわざるを得ない。のみならず,ペルー共和国の刑事手続については,本件の審理において十分な検討がされているとはいい難く,そもそも,同国における前歴を,我が国における前歴と同様のものとして評価できるのかを判断するために,ペルー共和国の刑事手続に関する十分な検討に時間を費やすべきであるともにわかに考え難いところ,検察官作成の平成19年10月31日付け「疎明資料の提出について」と題する書面添付のF作成の「ペルー刑事裁判制度の概要」によれば,ペルー共和国の刑事手続上,予審裁判官は被疑者に対して,被疑者の黙秘は有罪性の推定を導く可能性があることを告げなければならないと定められているとされており(「ペルー刑事裁判制度の概要」9頁・「(2)黙秘権」),黙秘権の実質的な保障がされていないのではないかという看過できない疑問を抱かざるを得ないことなどにも照らせば,量刑上,同国における前歴について,少なくとも,我が国における同内容の前科がある場合と同程度にまで不利な取り扱いをすることが許されないことは無論のこと,我が国における同内容の前歴がある場合と同程度にまで不利な取り扱いをすることも許されないものと考えざるを得ない。また,被告人が特段前歴の存在を争っていないというならともかく,本件の如く前歴に当たる罪を犯していないとして真っ向から争っている場合に,上記のとおり,十分な検討がされているとはいい難く,看過できない疑問も抱かざるを得ないペルー共和国の刑事手続における前歴の存在を,十分な原証拠を検討することもなく,その刑事手続上の書面だけで認定するのが適切とも考えられず,そのような認定に基づいて被告人の供述の信用性を判断するのが相当とも考えられない。加えて,被告人が真実同国において前歴に当たる罪を犯したか否かはさておき,同国において前歴に当たる刑事手続がとられているとの事実のみを認定するに過ぎないというのであれば,そのことに量刑上どれほどの意味があるのかとの疑問も抱かざるを得ない。差戻前控訴審判決は,前歴についても,被告人が罪を犯したことが確実である場合においては,その内容に応じて,被告人に対する刑を量定するに当たり適切に考慮すべき場合があることは明らかであるとしており,それ自体は当然というべきであるが,他方,これは,我が国における前歴を念頭に置いたものであれば格別,十分な検討もされておらず,看過できない疑問も抱かざるを得ない他国の刑事手続における前歴を,我が国における前歴と同様のものとして評価し,刑の量定に当たり考慮することが適切であるなどとはいえないことは明らかであり,そのような刑事手続における前歴の内容を,被告人が否定しているにもかかわらず,刑事手続上の書面だけをもって,罪を犯したことが確実であるなどとすることもできない。以上のような検討,考慮の結果,当裁判所としては,差戻前控訴審において採用された被告人のペルー共和国における前歴関係の証拠(差戻前控訴審検22,29,30,32,38,39)については,量刑に関する心証形成上の資料として用いないものとする。第3 弁護人の事実誤認の主張について弁護人の論旨は,(1)被告人の供述及び関係各証拠から,本件犯行が行われた場所は,C荘北側敷地内階段下付近であると認定すべきであるにもかかわらず,「C荘及びその付近において」と認定した第一審判決には,事実の誤認があり(2)被害児童の窒息死の機序について,被告人が被害児童の口鼻や頚部に手を置いたことにより,被害児童が頚動脈洞反射を起こしてショック死した可能性や,ギャグリフレックスにより窒息死した可能性があるにもかかわらず,被告人が,被害児童の頚部を片手で絞め付け,被害児童を頚部圧迫による窒息により死亡させた旨認定した第一審判決には,事実の誤認があり,(3)被告人は,被害児童の口,首付近に手を置いただけに過ぎず,また,その他の事情を考慮しても,被告人には被害児童に対する殺意はなかったにもかかわらず,被告人が殺意をもって被害児童を殺害した旨認定した第一審判決には,事実の誤認があり,(4)被告人が被害児童の陰部等を触る行為に及んだのは致死行為の後であり,致死行為の際,被告人にはわいせつ目的はなく,また,被告人には,致死行為に及んだ後,被害児童が死亡したとの認識の下に陰部等を触る行為に及んだものであるにもかかわらず,被告人が,被害児童に対し,強いてわいせつな行為をすることを企て,わいせつな行為に及んだ旨認定した第一審判決には,事実の誤認があり,(5)被告人の一連の行動を合理的に説明することは到底困難であり,被告人が何らかの要因によって異常な精神状態にあったとの疑いが払拭できず,被告人の完全責任能力を否定すべきであるにもかかわらず,被告人の完全責任能力を肯定した第一審判決には,事実の誤認があり,これらの誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。そこで,検討する。1 関係証拠により認められる事実(1) 被告人は,本件犯行当時,C荘2階D号室に単身で居住しており,C荘1階には,被告人の親戚であるGがその父親及び息子と共に居住していた。被告人は,平成16年4月に来日してから,本件に至るまでの間,兄であるHやGに対して,異常な言動を示すこともなく,同人らから見ても,普通の日常生活を送っていた。(2) C荘は,1階及び2階にそれぞれ2戸ずつが並んでいる木造モルタル2階建てのアパートであり,被告人方であるD号室は,2階の西側にある。各階北側には,幅約1.2メートルの通路があり,2階の通路のほぼ真ん中辺りに,東方向に下る形で幅員約0.9メートルの鉄製階段が外付けされており,この階段下には,洗濯機や自転車が置かれている。なお,被告人方には,ディズニーの日本語ビデオやぬいぐるみが置かれていた。C荘の北側敷地は,C荘1階に接する幅員約1.2メートルの通路部分を含んでおり,その北側で接する幅約3.4メートルの市道の路面よりも約0.7メートル高くなっており,市道との間を隔てる形で高さ約0.62メートルのブロック塀が設置されているが,この北側ブロック塀が途切れた西端からC荘の西隣の敷地を含めて約4.3メートルの開放部分があり,ここからC荘敷地内に出入りすることが可能となっている。C荘東側敷地は,幅約0.64ないし0.7メートルであり,隣接する民家との間に沿って,高さ約0.63メートルから1.1メートルのブロック塀が設置されており,前記市道からの見通しは良くない。C荘南側敷地は,幅約0.83ないし0.88メートルであり,民家と接しており,上記市道から見通すことはできない。C荘西側敷地は,幅約0.77ないし0.82メートルであり,民家と接しており,上記市道から見通すことはできるが,日中でも薄暗い。C荘付近には,一般民家やアパート等が密集している。なお,被害児童が通学していた小学校からC荘までは,直線距離で500メートル余である。(3) 平成17年11月22日(以下「本件当日」という。),被害児童が通っていた小学校では,就学前検診実施のため,3時間目の授業終了後には,児童を下校させることになっており,被害児童も,給食を食べた後,午後零時40分ころに下校した。被告人は,本件当日午後零時50分前後ころ,C荘と市道を挟んで向かい合う形となっている民家(以下「I方」という。)前の石段に腰掛け,携帯電話を開いて見るなどしながら,下校途中の被害児童と,手の届くほどの距離で向き合い,スペイン語のあいさつである「オーラ」という言葉を言うなどして,被害児童と言葉を交わした。なお,被告人は,当時,携帯電話を見たりしていたこと,被害児童と言葉を交わしたことは認めているものの,腰掛けていたのは,C荘の西隣にある民家の石段であって,I方前の石段ではない旨第一審公判廷において供述しているが,このころの状況を目撃したJの第一審公判供述及びKの警察官調書写し(弁1)から,I方前の石段に座っていたものと認定できることは,第一審判決が「争点に対する判断」の項2(1)ウに説示しているとおりである。(4) 被告人は,本件当日午後零時50分ころから,同日午後1時40分ころまでの間,被害児童に身体的に接触し,被害児童は窒息により死亡した。被告人は,被害児童の死亡後,その死体を,自ら購入したガスコンロが入れられていた段ボール箱に入れ,ビニールテープで梱包した上,これをC荘から約118メートルないし149メートル離れた空き地まで自転車で運び,そこに遺棄した。そして,被告人は,C荘に戻り,被害児童の帽子を被害児童のランドセルに入れ,このランドセルを紙袋に入れ,これを放置するために上記の空き地まで自転車で運んだが,そこには人がいたので怖くなり,C荘から見て,その空き地とは反対方向に約375メートル離れたところにある駐車場付近まで赴き,そこにこの紙袋を放置した。その後,被告人は,コンビニエンスストアで買い物をしてC荘に戻る途中,Gに出会い,同女にどこに行くのかと尋ね,おむつを買いに行くという同女と共に薬局に行き,一緒にC荘に戻って,被告人方でコーヒーを入れ,料理をし,Gと食事をしたりした。その間,被告人がGに対して異常な言動を示すようなことはなく,また,Gは,C荘1階にある同女方に下りた際,警察官や新聞記者が大勢来ているのを見かけ,そのことを被告人に伝えたが,これに対し,被告人が特に変わった様子を見せることもなかった。被害児童の死体は,本件当日午後1時40分ころから同日午後3時ころの間に,被告人が遺棄した上記空き地において,段ボール箱の中に,膝を抱え込むような形で横臥した状態で発見された。その着衣の状態は,両手に黄色手袋をし,左足にのみ靴下を履き,小学校の制服のほか,ポロシャツ,シャツ,パンツを着用していたが,パンツは前後逆に着用されていた。また,被害児童のランドセルは,本件当日午後10時40分までの間に,被告人が放置した上記駐車場付近から発見されたが,その中には,被害児童の帽子のほか,被害児童のブルマーも入っていた。(5) 本件犯行の4日後となる平成17年11月26日,被告人は,ガスコンロを別の段ボール箱に入れて梱包し,被告人方からロープで下に降ろし,C荘南側敷地に置いた。同月27日,被告人は,C荘の大家に対し,このガスコンロについて,多分盗まれたと言った。同日,翌日から広島にある会社で働く予定であった被告人は,三重県に居住する姉方に行った。(6) 被告人は,逮捕された直後,本名を偽り,虚偽のアリバイを述べるなどした。2 本件犯行が行われた場所について(弁護人の論旨(1))(1) 被告人方の押入れ天袋内から発見され,押収された毛布には,極めて高い蓋然性で被害児童のものと認められる毛髪1本が付着しており,また,被害児童のDNA型と被告人のDNA型が混在したものと見ても矛盾しないと判断される人血も付着しており,これらを主な根拠として,検察官は,本件犯行が,被告人方において行われたものと主張するが,一方で,被告人は,この毛布について,本件当日に被害児童に会う前に,C荘1階階段下に置いてある洗濯機で洗濯するため,被告人方から持ち出したが,洗濯機に入らないことが分かったので,洗濯機の横に置いていたところ,本件犯行後,この毛布で被害児童の死体をくるみ,その後に段ボール箱に死体を移したと供述しており,この供述内容自体が,およそ不自然であって信用できないとして排斥するに足りるものではないことからすると,検察官が種々主張するところを検討しても,本件犯行は,C荘敷地内あるいは被告人方を含むC荘及びその付近を越えない範囲で行われたものと認めることができるものの,更にそのうちのいずれかを確定することはできず,本件犯行が行われた場所は,C荘及びその付近の限度で認定できるにとどまることは,第一審判決が「争点に対する判断」の項2(4)にその認定,判断を説示するとおりである。(2) 差戻前控訴審判決は,その理由中4(4)において,C荘に接する市道を通行する者が,ブロック塀越しにC荘北側敷地内の様子を見通すことができないような状況にはなかったし,このブロック塀が途切れたところから西隣の敷地を含めた開放部分があり,そこから,C荘北側敷地内に被告人及び被害児童がいれば,その姿が丸見えであることは明らかであり,また,本件犯行態様からして,被害児童は,被害にあった際,抵抗したり暴れたり声を出したりしたはずであるが,C荘1階の住人は,いずれも異常な物音を聞いたことはなかった旨供述しており,さらに,被告人は,そのような被害児童の抵抗等があることを予想していたと考えられ,C荘1階に人がいないと確信していたともいえず,加えて,犯行直前,複数の通行人がいたという事情もあることなどからすると,被告人が,白昼,C荘北側敷地内において,被害児童を殺害してわいせつなことをするという行為を真実しようとしたのか,同敷地内でそのような行為をすることが,心理的又は精神的に果たして可能であるのかという疑問は否定し難く,C荘敷地内は,C荘階段下付近も含めて,市道からの見通しは良くなく,極めて人目に付きやすい場所であるとまではいえないし,昼間であっても付近を通行する人や車の量は多くないという第一審判決は,事実を誤認しているといわざるを得ず,本件犯行が行われた場所は,被告人が供述するC荘敷地内北側階段下ではなかったのではないかという疑問を払拭することができないのであり,C荘北側敷地の見通し状況等についての認定を誤り,かつ,被告人の第一審公判供述の信用性を否定せず,同供述によって,本件犯行の場所がC荘敷地内北側階段下である可能性を肯認した第一審判決には,疑問を呈せざるを得ないと指摘している。この点,確かに,差戻前控訴審判決が指摘するように,C荘に接する市道を通行する者が,ブロック塀越しに,C荘北側敷地内の様子を見通すことができないというわけではなく,この北側ブロック塀が途切れた西端からC荘の西隣の敷地を含めた開放部分方向であれば,C荘敷地内北側階段下付近で犯行が行われた場合,少なくとも,被告人の姿は丸見えになるものといわざるを得ず,この意味において,第一審判決が「争点に対する判断」の項2(4)イ(ア)において,C荘敷地内は,C荘階段下付近も含めて,市道からの見通しが良くない旨説示するのは,措辞適切とはいい難い面もないではない。しかし,C荘敷地内北側階段下付近が,市道からブロック塀である程度遮へいされた形になっているのは事実であり,本件犯行が,計画的なものであると断定できるのであればともかく,後記5に説示するとおり,少なくとも,後先を考えることなく,衝動的に敢行されたものであることを否定できないのであれば,そのような衝動に駆られた被告人において,それでもI方前で直ちに犯行に及んだりはせずに,被害児童と共に,I方前から,上記のようにある程度市道から遮へいされているC荘敷地内北側階段下付近に移動し,なお人目に付くのではないか,あるいは,被害児童が抵抗等するなどし,C荘の住人に気付かれるのではないかということまでは考慮することもなく,犯行に及んだとしても,直ちに不自然,不合理であるとまではいえない。また,成人男性である被告人が,上記の開放部分に面した市道に背を向ける形で,身長125.0センチメートル,体重22.5キログラムの被害児童に対する犯行に及んだのであれば,上記の開放部分方向からC荘敷地内を見た者にとって,被害児童の存在,さらには,犯行が行われていることを認識することが容易であるともいえないのみならず,被告人が,C荘敷地内で本件犯行に及ぶところを目撃した者がいない一方,本件犯行当時,被告人が,外から丸見えとなるC荘の階段を上り,2階にある被告人方に被害児童を連れ込む様子や,被告人方から段ボール箱を抱えてこの階段を下りる様子などを目撃した者も見当たらないことからすると,要するに,本件犯行当時,C荘近辺ないし被告人の行動を視認している者がいなかったと認めざるを得ない。そして,C荘が特段の防音設備等を施されていたというような事情は全く見当たらず,犯行場所がC荘北側敷地内であれ,被告人方であれ,被害児童が大声を出したり,激しく抵抗したりした場合は,いずれにせよC荘の住民がそれに気付くのではないかという疑問を抱かざるを得ないのであり,むしろ,被害児童は,突然の被告人の凶行により身がすくむなどし,圧倒的に体格,体力に勝る被告人に押さえ込まれ,さらには,後記3のとおり,被告人により,頚部を圧迫されて短時間のうちに窒息死させられたため,大声を出したり,激しく抵抗したりすることがほとんどできなかった,あるいは,その暇がほとんどなかったと見るのが相当である。なお,C荘付近の人通りが日中頻繁であったなどという事情はうかがわれず,日中のC荘及びその付近を撮影したビデオテープ(弁9)から,付近を通行する人車や付近の家屋からの人の出入りは多くはなかったと認定した第一審判決が誤っているとはいえない。そして,第一審判決は,毛布及びこれに付着していた毛髪や人血に関する前記(1)の事実関係から,本件犯行が被告人方で行われたものと推認することにも相応の合理性はあるものの,他方で,本件犯行当時,この毛布をC荘敷地内北側階段下付近にある洗濯機の横に置いており,同階段下付近での本件犯行後,被害児童の死体をこの毛布でくるんだという被告人の供述について,全くの虚偽であると断ずることができるほどの事情も見当たらず,さりとてこの供述に,上記の相応の合理性ある推認を排斥できるほどの信用性も見出せないとして,結局本件犯行が行われた場所は,C荘及びその付近の限度で認定できるにとどまるとしたものであると解されるのであり,後記のとおり,被告人が,被害児童を殺害した態様や,殺意及びわいせつ目的の有無という本件犯行の核心部分について,信用できない供述をしていることにもかんがみれば,第一審判決の判断は相当なものと認められる。本件犯行が行われた場所について,C荘敷地内あるいは被告人方を含むC荘及びその付近を越えない範囲以上に確定することができず,C荘及びその付近の限度で認定できるにとどまるとした第一審判決の認定は正当であり,このことは,差戻前控訴審判決の上記指摘によっても左右されない。(3) 所論は,①毛布に付着していた毛髪及び人血に関するDNA鑑定関係の証拠は,それ自体証拠能力も信用性もなく,また,毛布に付着していたとされる毛髪及び人血以外の,被害児童の失禁の痕跡,被害児童の帽子やブルマーと同一の繊維等,被告人方で本件犯行が行われたことと結び付く客観的証拠が存在せず,②被告人の日本語での会話能力や当時の状況からは,被害児童を被告人方に連れ込めず,③被告人が,被害児童を被告人方に連れ込んだり,被告人方から,被害児童の死体を入れて梱包した段ボールを運び出したりしたとすれば,その状況を目撃されているはずであるのに,そのような目撃者がいないのは不自然であり,④被告人と被害児童がC荘周辺にいた後,被害児童の死体が入った段ボール箱が目撃されるまで,最短で約50分間であるところ,被告人が犯行等の全行動に要した時間からすれば,被告人方での犯行は不可能であり,また,仮に,被害児童を被告人方に連れ込むことができたのであれば,これほどまでの短時間で犯行等の全行動を行う必要性や合理的理由がなく,不自然であり,被告人が,被害児童を被告人方に連れ込み,そこで本件犯行を行ったという事実と整合せず,⑤C荘の他の居住者は,本件犯行当時の被告人方からの不審な物音や声等を聞いておらず,これらに照らせば,本件犯行の現場が,被告人方でないことは明白であり,被告人の供述を前提に,本件犯行の現場をC荘敷地内北側階段下付近である旨認定すべきであると主張する。しかし,①については,DNA鑑定関係の証拠には証拠能力も信用性もないとして,毛髪の収集や保管過程,DNA鑑定そのものの証拠能力や信用性,毛髪の形態,血液型,DNA鑑定の方法,結果等(検甲24,67),毛布に付着していたという体液のDNA鑑定(検甲27)について,所論がるる掲げる事情は,いずれも抽象的な危険性ないし可能性を問題とするか,独自の見解に立脚して論難するものに過ぎず,それ自体によって直ちに証拠能力あるいは信用性に疑問を抱かせるものではない。また,前記のとおり,毛髪や人血が付着していたのは毛布であり,しかも,この毛布が被告人方の押入れ天袋内から発見されていることに照らせば,本件犯行が行われた現場が被告人方で行われたものと推認することにも相応の合理性があることは否定できず,毛布の上で犯行を行ったのであれば,本件犯行による遺留物と認められる毛髪や人血が毛布以外の場所に残っていなくても不自然ではなく,また,毛髪及び人血以外の遺留物が必ず残っていなければならないはずであるとまで決め付けられるほどの事情も見当たらない。②については,確かに,被告人が,日本語に通じず,また,一見して外国人の風貌を有しており,被害児童とは一面識もない一方,被害児童が,幼いなりにもしっかりとした性格であったことなどは,第一審判決も指摘するとおり,被告人が被害児童を被告人方に誘い込んだとするのは不自然ではないかと疑わせる事情ではあるものの,他方で,強引な手段も含め,被告人が被害児童を被告人方に連れ込むことがあり得ないとまでいえるほどの事情でもない。③については,所論の指摘する事情がある一方,被告人が,本件犯行を含む一連の行動を,屋外であるC荘敷地内北側階段下等で行ったとして,それを他者が視認することは困難であるとはいえないのに,結局のところ,視認している者は見当たらないことからすれば,前記(2)でも述べたとおり,要するに,本件犯行当時,C荘近辺ないし被告人の行動を視認している者がいなかったということであり,被告人において,被害児童を被告人方に連れ込んだり,被告人方から段ボールを運び出したりするところを目撃している者がいないから,そのような事実はなかったとすることもできない。④については,被告人が本件犯行に及び,その後被害児童の死体を段ボールに入れて梱包し,遺棄するに至るまで,約50分間に満たないほどの時間であったとして,そのことにより,本件犯行が,被告人方で行われたのであれば不可能であり,C荘敷地内北側階段下で行われたのであれば不可能ではないほどに有意的な差が生じるとはおよそ認め難く,また,本件犯行が,後先を考えずに敢行された衝動的なものであったことは否定できないのであり,犯行等の全行動を短時間のうちに行ったとしても,不自然とはいえない。⑤については,前記(2)で述べたとおり,犯行の場所がC荘北側敷地内であれ,被告人方であれ,被害児童が大声を出したり,激しく抵抗したりしたというのであれば,いずれにせよC荘の住民が気付いたのではないかという疑問は生じるのであり,被害児童は,突然の被告人の凶行により身がすくむなどし,圧倒的に体格,体力に勝る被告人に押さえ込まれ,頚部を圧迫されて短時間のうちに窒息死させられたため,大声を出したり,激しく抵抗したりすることがほとんどできなかった,あるいは,その暇がほとんどなかったと見るのが相当である。そして,本件犯行を行った場所に関する被告人の供述について,全くの虚偽とまで断ずることもできないが,本件犯行が被告人方で行われたのではないかという,毛布及びこれに付着していた毛髪や人血に関する事実関係に基づく相応に合理的な推認を排斥するほどの信用性も見出せないとして,結局本件犯行が行われた場所は,C荘及びその付近の限度で認定できるにとどまるとしたものである第一審判決の判断は,前記(2)のとおり適切なものと認められるから,所論主張のごとく,被告人の供述を前提として,本件犯行場所をC荘敷地内北側階段下付近と特定して認定することはできない。3 被害児童が窒息死した原因について(弁護人の論旨(2))(1) 前記1で認定したとおり,被告人は,下校途中の被害児童に声を掛け,言葉を交わしてからさほど時を置かずして,被害児童を窒息死させているところ,A作成の鑑定書(検甲51)及びAの第一審公判供述のほか,関係証拠によれば,被害児童の死体の状況として,身長125.0センチメートル,体重22.5キログラム,顔面が全体にややうっ血し,左眼瞼結膜に十数個,右眼瞼結膜に数個,右眼球結膜に数個,心臓前面に9個,後面に二十数個,左肺胸膜下に十数個,右肺胸膜下に多数,右腎盂粘膜下に数個の溢血点(右肺胸膜下については溢血斑)があり,心臓内血液は暗赤色流動性であり,左肺粘膜,口腔・頚部器官の粘膜にうっ血,左右側頚リンパ節に腫大及びうっ血(一部出血状)がそれぞれあったが,舌骨や甲状軟骨の骨折は認められなかったこと,被害児童の脳には,くも膜下血管の強度の拡張,くも膜下腔の浮腫が見られたこと,被害児童の頚部には,左前頚下部から前頚下部及び右前頚下部を経由して,不鮮明ではあるものの,幅約1センチメートルの蒼白帯があり,左下顎下部に米粒大以下の淡褐色表皮剥脱1個,左側頚部中部にごま粒大以下の暗褐色表皮剥脱十数個,右側頚下部から前頚下部にかけて,ごま粒大以下の赤褐色表皮剥脱十数個が認められたが,電気コードや縄ひものようなもので頚部を圧迫したような表皮剥脱ないし出血は見られず,また,典型的な扼痕も認められなかったこと,被害児童の左右胸鎖乳突筋後面上部(左右の耳の下辺り),胸骨舌骨筋後面(のど仏の辺り),左胸骨甲状筋下部,左頭最長筋(左後頚部)に筋肉内出血があり,それが上から下へ点々と広がっていたことが認められる。(2) そして,上記(1)の被害児童の死体の状況からすれば,少なくとも,被害児童が窒息死した原因は,被告人によって,比較的柔らかい物で,被害児童の頚部を圧迫したことによるものと十分に認定でき,A作成の鑑定書における疑問点を鑑定した弁護人の申請証人であるBも,差戻前控訴審公判廷において,被害児童の死因が頚部圧迫であることは間違いない旨明言していること(差戻前控訴審第2回B114項)に照らしても,この認定に疑いをいれる余地はない。他方,上記(1)の被害児童の死体の状況からすると,第一審判決が「争点に対する判断」の項2(2)イ(ア)に説示するように,被告人が,被害児童の頚部を片手で絞め付けた可能性も相応に認めることができるものの,そこに認定するように,被告人が,片手を広げた状態で,被害児童の首を前から突き上げるように握って絞めた場合に,被害児童の側頚部の後ろにあると認められる蒼白帯(差戻前検53の写真番号9号)が形成されるのか(なお,首を握っている手を,首の前から後方に移動させたのではないかとも考えられるが,そのような行為がなされたと疑いなく認定できるほどの的確な証拠は見当たらない。),あるいは,そもそも,この蒼白帯が指で圧迫したことによって生じたものなのか(差戻前控訴審第2回B34,118ないし133項)について,いずれも疑問がないわけではないこと,前記第2の1(2)のとおり,Bは,頚部圧迫による窒息死の場合,手指によるものか,ひも状のものによるものかの区別は非常に難しい場合もあるとし,索条物による頚部圧迫による絞死の可能性が高いと供述しており,Aも,当初は,被害児童の頚部圧迫痕について,その形状から,幅の広い柔らかい索条物によって成傷されたものと推測したことがうかがわれることに照らすと,被告人において,被害児童の頚部を圧迫することにより,被害児童を死亡させたことに疑いはないものの,その方法については,柔らかい索状物ないし手指によるものであるという以上に特定することが困難であり,その限度で,第一審判決には誤認があるといわざるを得ない。しかし,この誤認は,要するに,柔らかい索状物ないし手指による頚部圧迫であると認定すべきを,手指による頚部圧迫と特定して認定したものであり,犯行の態様がより概括的なものとなるにとどまり,後記のとおり,殺意の点も含めた罪体の認定に大きな影響を及ぼすものではなく,なお,量刑判断に当たっても,柔らかい索状物で圧迫したのか,手指で圧迫したのかは特定できないという限度でしか認定できないとの前提に立つことになるのであり,その誤認により量刑上特段の差異を生じるものとも認め難く,判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。(3) 所論は,被害児童が被告人により頚部を圧迫されて窒息死したと認定できないとし,頚部を圧迫することによって,舌骨が折れることが多いところ,被害児童の舌骨は骨折しておらず,頚部の筋肉内出血は頚椎捻挫によっても生じ得るのであり,Aの第一審公判供述によれば,被告人が,被害児童の頚部に手を置いて,気道の閉塞が起こらない程度に頚部を圧迫することでもリンパ節が腫大することがあることは否定されず,胸骨舌骨筋の裏側の出血について,この筋肉に対して,より圧迫がかかったと見られる表面側には出血の存在が確認されておらず,その部位の表面側の外表においても,表皮剥脱が存在しておらず,Aの第一審公判供述では,頚部圧迫によって引き起こされるはずの頚動静脈が詰まるということがなかったことを認めていると主張し,さらに,窒息死の機序について,被告人が,被害児童の口鼻や頚部に手を置いたことにより,被害児童が頚動脈洞反射を起こしてショック死した可能性があり,あるいは,猿ぐつわで鼻と口を同時に覆われた場合などに誤嚥が生じ,異物により気道が塞がれ窒息死するギャグリフレックスという現象があるところ,被害児童が嘔吐した結果,胃内容物が気管や気管支内に逆流することでギャグリフレックスが生じ,これにより被害児童が窒息死した可能性があると主張する。しかし,前記(1)のとおり,被害児童について,顔面が全体にややうっ血していること,左右側頚リンパ節に腫大及びうっ血があること,左右胸鎖乳突筋後面上部,胸骨舌骨筋後面,左胸骨甲状筋下部,左頭最長筋に筋肉内出血があることからすると,被害児童が頚部圧迫により短時間のうちに窒息死させられたことが認められ,差戻前控訴審において弁護人申請証人として供述したBも,被害児童の死因が頚部圧迫であることは間違いない旨明言しているところであって,この点に疑いをいれる余地はない。そして,Aは,第一審公判廷において,強く頚部を圧迫したとしても,舌骨骨折を生じないことは幾らでもあると供述している(第一審第2回A34丁)のみならず,Bも,差戻前控訴審公判廷において,被害児童のような小学校低学年の幼児の場合,むしろ頚部圧迫による舌骨骨折はあまり起きない旨供述している(差戻前控訴審第2回B33項)こと,被害児童が本件犯行当時に頚椎捻挫を起こしたのではないかと具体的に疑わせる事情はないこと,そもそも気道の閉塞が起こらない程度の頚部圧迫によるリンパ節の腫大自体が想定困難なものといわざるを得ず,Aは,弁護人が指摘する第一審公判供述において,圧迫によってリンパ節の腫大が生じる旨述べているに過ぎないこと,胸骨舌骨筋は,その裏側で硬度のある箇所と接しており(検甲51添付の写真24,25),柔らかい索状物ないし手指で頚部を圧迫された結果,その表面側ではなく,裏側に出血が生じたとしても不自然ではなく,その表面側の外表に当たる前頚下部に表皮剥脱が存在することは明白である(検甲51)こと,Aは,頚部圧迫により頚動静脈が詰まるはずであるなどとは述べておらず,頚部圧迫により,気道が塞がれることと頚動静脈の圧迫とが両方とも死亡の原因になり得るものであるとした上で,被害児童について,頚動静脈が圧迫された場合に著明に起こるクモ膜下の血管の充血とクモ膜下腔の浮腫が認められるが,頚動静脈が詰まった場合に生じる脳梗塞による脳軟化症は認められなかったと述べているものである(第一審第2回A20ないし21丁)ことからすると,所論が主張するところを検討しても,上記の認定は左右されない。なお,被害児童が頚動脈洞反射を起こしてショック死した可能性があり,あるいは,ギャグリフレックスにより被害児童が窒息死した可能性があるとの所論については,第一審判決が「争点に対する判断」の項2(2)イ(イ)dに適切に認定,判断を説示するとおりであり,そもそも,被害児童の頚動脈洞に出血がなく,頚動脈洞反射が起こったことを具体的にうかがわせる所見はなく,また,そもそも,そのような事態があったことを具体的にうかがわせる事情は存在しない。そして,被害児童の胃内容物として,本件犯行の直前に食べた給食と推認される米飯,こんにゃく,にんじん片,のり,豆腐片,菜片等を含む淡黄色粥状物350ミリリットルが存在し,一方で,被害児童の嘔吐をうかがわせる外部的痕跡も見当たらないこと(なお,被害児童が本件犯行当時着用していたポロシャツの右前腕部に,ご飯粒が多数付着しているが,これらは,その付着態様からして,嘔吐によるものではないことが明らかである〔検甲4添付の写真第12号〕。)からすれば,所論が主張するような被害児童の嘔吐による胃内容物の気管ないし気管支内への逆流を具体的にうかがわせる事情もない。4 被告人の殺意について(弁護人の論旨(3))(1) 本件犯行において,被告人は,前記3のとおり,被害児童に対し,柔らかい索状物ないし手指により,頚部及びその近辺の筋肉内出血並びに左右側頚リンパ節の腫大及びうっ血を生じさせるほどの力を加え,その頚部を圧迫し,被害児童を窒息死させたのであり,この行為態様からして,確定的な殺意を有していたものと十分に推認できる。そして,被告人については,後記5に説示するとおり,本件犯行当時にわいせつ目的も有していたものと優に認定できるものの,本件犯行直前ころ,被害児童と何らかの言葉を交わすうちに,この目的を抱いた疑いを払拭できないところ,殺意を抱いた動機については,第一審判決が「争点に対する判断」の項2(2)ウ(イ)に認定,判断するとおり,被告人が,被害児童に対して,頚部圧迫行為に先行ないし並行してわいせつ行為を行っていたと認められることからすれば,そのわいせつ目的を遂げるため,あるいは,顔を知られた被害児童を殺害して,自身が犯行を犯したという事実の発覚を免れるためであったと推認できるが,その殺意を抱いた時期については,わいせつ目的を抱いたのが,本件犯行直前ころであることを否定できず,また,被告人の殺意を認定する主要な根拠が,被告人の被害児童に対する致死行為である頚部圧迫の態様であることからすれば,第一審判決が同項2(5)イに認定,判断するとおり,この頚部圧迫の行為を始めるまでには生じていたものと推認できるにとどまる。(2) これに対し,検察官は,控訴趣意書の量刑不当の論旨中において,本件犯行では犯跡を隠ぺいするために殺害したことを認める証拠は一切なく,事前に被害児童の抵抗を排除する行動があったと考えられること,肛門部への指の挿入は,被害児童の心臓がわずかに拍動している死戦期に行われていたことからすると,被告人は,殺害行為に着手し,これと並行して,ないしは,殺害の実行行為の後に,わいせつ行為に及んでいたものと優に認定でき,このことからすれば,わいせつ行為をする目的で殺害に及んでいたこともまた明らかというべきであって,第一審判決が,犯跡隠ぺいをも殺害の動機としている点は誤りというほかないと主張し,一方,当審における公判手続の更新に当たっての意見として,「意見書」と題する書面において,第一審判決は,強制わいせつ致死及び殺害の各犯行状況について,①生前のわいせつ行為と頚部圧迫行為とが並行して行われ,頚部圧迫行為の際に死戦期のわいせつ行為が行われた,②生前のわいせつ行為と頚部圧迫行為が並行して行われ,その直後,死戦期のわいせつ行為が行われた,③生前のわいせつ行為に引き続いて,頚部圧迫行為が行われ,その際,死戦期のわいせつ行為が行われた,④生前のわいせつ行為,頚部圧迫行為,死戦期のわいせつ行為が順次行われたかのいずれかであると認定しているものと考えられるところ,①,②の場合,生前のわいせつ行為と頚部圧迫行為とは並行して行われているのであるから,被告人が頚部圧迫行為に及んだのは,わいせつ行為を遂行するためか,せいぜい犯行の発覚を免れる目的もあったかのいずれかであったと解され,③,④の場合,わいせつ行為を遂行する意思は継続しているのであるから,頚部圧迫行為は,わいせつ行為を遂行するためか,あるいは,犯行発覚を免れる目的もあって行われたかのいずれかであると解するべきであり,いずれの場合であっても,頚部圧迫行為は,わいせつ行為を遂行するために,あるいは,犯行の発覚を免れる目的も併存して行われたものと考えるべきであると主張している。これらの検察官の主張は,必ずしも一貫していないようにも思われるが,量刑不当の論旨中の主張については,後記5(3)に説示するとおり,殺害行為がわいせつ行為に先行して始まったとまで断定できるほどの事情はなく,被告人が,頚部圧迫行為に先行ないし並行してわいせつ行為を行っていたものと認めるべきであるところ,これを前提としても,わいせつ行為を目的として頚部圧迫行為を行ったものと見る余地が十分あるものの,後記6のとおり,被告人が被害児童の死体を段ボールに入れ,C荘から百数十メートル離れた空き地に遺棄したのは自身の犯跡の隠ぺい行為であると認められ,本件犯行を開始してから,この隠ぺい行為を終えるまで,最短で約50分間に満たない程度であること,被告人が被害児童の抵抗を排除してわいせつ行為を行うこと自体は,殺害行為を行うまでもなく,容易になし得たものと認められることにもかんがみれば,被告人が,犯跡隠ぺいを目的として殺害行為に及んだものではないとまで断定することは困難であり,この目的が,わいせつ目的との択一的な形で殺害の動機に含まれ得るものとした第一審判決の認定が誤りであるとすることはできず,さらに,公判手続更新の際の意見中の主張については,これは,わいせつ行為と殺害行為とが並行して行われていれば,あるいは,わいせつ行為を遂行する意思が継続している状態で殺害行為が行われれば,殺害の動機として,必ずわいせつ行為を遂行することが含まれているものと断定できるということが前提になっているものといわざるを得ず,この前提自体に飛躍があり,いずれの主張についても採用できない。(3) さらに,弁護人の所論は,被害児童が被告人による頚部圧迫で窒息死したものであれば,被害児童の抵抗の結果,その四肢等が壁や地面に衝突することにより擦過傷などの外傷が必然的に発生しているはずであり,また,被害児童が被告人の手や衣服をつかむなどして抵抗することにより,被害児童の爪片に被告人の皮膚片や着衣の繊維等が残っているはずであるのに,被害児童の左右上肢,胸部,腹部,背面に何ら外傷は残っておらず,爪片からも被告人の皮膚片や着衣の繊維等は発見されておらず,これらは被害児童が抵抗していなかったことを如実に表しているものであることからすれば,被告人の供述するとおり,被告人は,被害児童の口,首付近に手を置いたに過ぎず,被害児童の死因については,頚動脈洞反射によるショック死,あるいは,ギャグリフレックスによる窒息死が考えられるのであり,また,被告人は,その供述しているとおり,あらがうことのできない声を聞き,その声に従って行動したに過ぎず,さらに,本件犯行が行われた場所は,C荘階段下付近という外部から認識しやすい場所であったこと,被告人と被害児童との接触が偶発的なものであったこと,被告人は,犯跡隠ぺい行為を行っていないこと,被告人には,暴力癖も幼児性愛性向などもないことなどからすれば,被告人に殺意はなかった旨主張する。しかし,前記3のとおり,被告人は,被害児童の頚部を,柔らかい索状物ないし手指で圧迫することにより,被害児童を窒息死させたものと十分認定でき,被害児童の死因が,頚動脈洞反射によるショック死,あるいは,ギャグリフレックスによる窒息死ではないかなどと疑う余地はなく,加えて,前記2(2)のとおり,被害児童は,突然の被告人の凶行により身がすくむなどし,圧倒的に体格,体力に勝る被告人に押さえ込まれ,頚部を圧迫されて短時間のうちに窒息死させられたため,大声を出したり,激しく抵抗したりすることがほとんどできなかった,あるいは,その暇がほとんどなかったものと見るのが相当であることにもかんがみれば,被害児童に抵抗による外傷が見当たらず,その爪片からも被告人の皮膚片や着衣の繊維等は発見されていないことが不自然であるとはいえず,被害児童の口,首付近に手を置いたに過ぎないとする被告人の供述は信用できないという以外にない。また,前記2(2)のとおり,被告人が,後先を考えることなく,衝動的に本件犯行の実行を決意したことを否定できず,被害児童と共に,I方前からC荘北側敷地内階段下付近まで移動した上で,本件犯行に及んだとしても不自然不合理とはいえないことからすれば,被告人がC荘階段下付近で犯行に及んだことや,被告人と被害児童との接触が偶発的なものであったことが,殺意の存在に疑問を抱かせるものともいえない。そして,後記6のとおり,被告人が被害児童の死体を段ボールに入れて空き地に遺棄したのは,自身の犯跡の隠ぺい行為であると認められ,本件犯行当時,被告人が,あらがうことのできない声を聞き,その声に従って行動したに過ぎないのではないかなどと疑う余地はなく,その他所論が主張するところを検討しても,被告人に殺意がなかったのではないかとの疑いは残らない。5 わいせつ目的について(弁護人の論旨(4))(1) 被害児童において,その膣口部には,約0.2ないし0.3センチメートルの亀裂が入り,外子宮口の周囲に点状の出血が多数あり,肛門部やや上部には,はっきりとした出血が認められる米粒大の赤褐色表皮剥脱が1個あり,また,肛門部には,少量の出血が認められる1センチメートル前後の表皮亀裂部4個があったこと,被害児童の肛門の表面及び表面から約1センチメートル内部並びに被害児童のパンツの表面に人精液が付着しており,そのDNA型は,被告人の精液のDNA型と矛盾しなかったこと,これらの状況に加え,被告人自身が,被害児童の陰部を手で触れた旨自認していることからすれば,被告人は,被害児童の陰部である膣口部から外子宮口,肛門部に手指を挿入したものと推認でき,さらに,上記の膣口部の亀裂及び肛門部やや上部の表皮剥脱は,生活反応である出血を伴っていることから,被害児童の生前に生じたもの,上記の肛門部の4個の表皮亀裂は,弱い生活反応があることから,被害児童の心臓がわずかに拍動している死戦期に生じたものとそれぞれ推認できること,上記の人精液の付着状況及びそのDNA型が被告人の精液のDNA型と矛盾しないことに,本件犯行当時に自慰をしたとの被告人の第一審公判供述を併せ考慮すると,被告人において,被害児童の陰部等に手指を挿入した前後ころ,自慰をして射精したと認められ,これらの被告人の行為態様にかんがみれば,被告人にわいせつ目的があったことが推認できることは,第一審判決が「争点に対する判断」の項2(3)に適切にその認定,判断を説示しているとおりである。そして,本件犯行当日,被害児童の通学していた小学校の下校時間は,就学前検診のため早まっており,被害児童がC荘付近を通りかかったのは,いつもの下校時間よりも早かったと認められ,単身で日本語にも十分に通じない被告人が,そのような事情を知っていたとは認め難いこと,被告人が日中屋外で携帯電話を操作していたことから,直ちにわいせつ行為をするために女児を物色していた根拠とするには足りないこと,この携帯電話の画像も格別子供の興味を引くようなものではなく,ディズニーのビデオ等も被告人方に置いてあったのであり,日本語に十分に通じない被告人がどのようにして巧みに被害児童の警戒心を解いたのかについて,検察官も証拠に基づく具体的な主張をなし得ないこと,被告人は,被害児童と言葉を交わした後,短時間のうちに被害児童をC荘敷地内に向けて連れ込む行為を開始したものと推認でき,自己の劣情の赴くままに,後先を考えずに衝動的に犯行に及んだとしても不自然とはいえない犯罪形態であることからすれば,被告人は,本件犯行直前ころ,被害児童と何らかの言葉を交わすうちに,衝動的に被害児童に対する劣情を抱き,その欲望の赴くままに,被害児童に対して強いてわいせつな行為をしようと企てた疑いを払拭できず,遅くとも被害児童をC荘敷地内に向けて連れ込む行為を開始した時点において,わいせつ行為の犯意が生じたと推認できるにとどまることは,第一審判決が「争点に対する判断」の項2(5)に適切にその認定,判断を説示しているとおりである。(2) これに対し,検察官は,量刑不当の論旨中において,第一審判決は,被告人があらかじめ幼児にわいせつな行為をすることをたくらんでいたか否かの点について否定的な認定をしたが,被告人が,I方前の石段にわざわざ腰を掛け,少なくとも,数分以上は座っていたものと認められること,その後,被害児童に携帯電話を見せるなどの行動をしていること,被害児童に声を掛けた後,短時間に,殺害行為に着手するとともに,わいせつ行為をも敢行し,自慰行為をして射精までしているのであり,こうした声掛け後のわずかの時間で,殺害行為やわいせつ行為に着手していることを併せ考えれば,被告人は,被害児童にうまく接触できればわいせつなことをしようと考えていたことは優に推認できるとし,また,差戻前控訴審における事実取調べの結果に基づく弁論において,事件の全体を総合的に見れば,被告人は,性的対象とする下校途中の女児を待ち受け,たまたま通りかかった被害児童に声をかけて本件犯行に及んだと見ることも十分可能であるとし,さらに,公判手続更新の際の意見中において,仕事先の電話番号を入力するため携帯電話を操作していた旨の被告人の供述と,その際に自身がいた場所についての被告人の供述は一体のものであるから,第一審判決が,後者の供述の信用性を否定する一方で,前者の供述の信用性を否定しないのは不合理であるといわざるを得ず,被告人は,あらかじめI方前石段に座って,通行人の目からは携帯電話を操作している様子をとりながら,わいせつ行為の対象となる女児を物色し,あるいは,そのような女児に対し,携帯電話の画像等を口実に声を掛けようと考えていたという事実が推認されることをおそれているなどと主張する。しかし,そもそも,被告人が,事前にわいせつ目的を抱いていたと認定するためには,単にその可能性があるというだけでは足りず,そのような目的がなかったのではないか,すなわち,衝動的にわいせつ行為に及んだのではないかとの疑いが残らないことまで求められるのであり,このことは量刑上の評価として検討する場合においても,何ら異ならないところ,検察官の主張は,結局,検察官自身が,差戻前控訴審における事実取調べの結果に基づく弁論で自認するとおり,被告人において事前にわいせつ目的を有していたと見ることも可能であるというにとどまり,衝動的にわいせつ行為に及んだのではないかという疑いを排斥できるものではない。なお,第一審判決も指摘するとおり,被告人が被害児童に声を掛けてから短時間で犯行遂行に至っている事実は,犯意が衝動的なものであったこととむしろ符合する面もあるといわざるを得ず,この事実に,本件犯行の直前,被告人が,自身の居住するC荘の向かいにあるI方の石段に数分以上は座っていたことと,被害児童に携帯電話を見せるなどの行動をしたこととを併せ考慮すれば,被告人は,被害児童にうまく接触できればわいせつなことをしようと考えていたことが優に推認できるとする主張は採用できない。また,仕事先の電話番号を入力するため携帯電話を操作していた旨の被告人の供述と,その際に自身がいた場所についての被告人の供述は,必ずしも一体とはいい難く,仮に,被告人において,真実わいせつ行為の対象となる女児を物色したり,あるいは,そのような女児に対して携帯電話の画像等を口実に声を掛けようと考えたりはしていなかったとしても,そのような事実が推認されてしまうのをおそれることは当然あり得るといわざるを得ないのであり,この点についての検察官の主張も,被告人が衝動的にわいせつ行為に及んだものではないかとの疑いを排斥するものではない。(3) 弁護人の所論は,第一審判決が,被告人は,被害児童に対し,殺意をもって致死行為を行った前後,いまだ被害児童が生存しているときに,被害児童の陰部である膣口部から外子宮口,あるいは,肛門部に自己の手指を挿入するなどしたと認定し,また,膣口部の亀裂及び肛門部やや上部の表皮剥脱を生じさせた行為が,致死行為に先立って行われた可能性を含めた上で認定するのが相当である旨説示しているのは,陰部等を触る行為が,致死行為に先立って行われたことについて,確信に至っていないことの証左であることに加え,被害児童の身体には,被害児童の抵抗を阻止するためにできたと思われる圧迫痕や,被害児童が抵抗した際にできたと思われる擦過傷等の外傷が残っておらず,被害児童の爪片から被告人の皮膚片等も発見されておらず,これらは,被告人が被害児童の陰部等を触った際,被害児童は抵抗できる状態になかったこと,つまり,被告人が被害児童の陰部等を触る行為に及んだ時期が,致死行為を行った後であることを強く推認させるものであり,また,被告人が被害児童の陰部等を触る行為を中断して致死行為を行うことは常識的に考え難いことから,被告人が被害児童の陰部等を触るなどした行為は,致死行為後に行われたことが明白であるところ,仮に,被告人が,被害児童を死に至らしめた行為に及ぶ当初からわいせつ目的を有していたのであれば,人目に付きにくい場所に移動してわいせつ行為に及んでいるはずであり,しかも,被害児童の死体を短時間で遺棄していること,被害児童を全裸にしていないこと,陰部等を触ったにもかかわらず,被害児童の肛門部に付着した糞便を払拭することもしていないこと,被告人方から幼児性愛者であることを裏付けるビデオ等が発見されていないこと,被告人は,当時成人女性と交際していたこと,被告人は,悪魔の声が聞こえ,その声の指示に従って他動的に行動していたことからすると,致死行為に及んだ際,被告人には,わいせつ目的がなかったことは明白であり,強制わいせつ致死罪は成立しないと主張する。しかし,既に繰り返し説示しているとおり,被害児童は,突然の被告人の凶行により身がすくむなどし,圧倒的に体格,体力に勝る被告人に押さえ込まれ,頚部を圧迫されて短時間のうちに窒息死させられたため,大声を出したり,激しく抵抗したりすることがほとんどできなかった,あるいは,その暇がほとんどなかったものと見るのが相当であり,このような状況下では,被害児童に所論主張のような外傷等の痕跡が残っていないことはもとより,その頚部付近以外に被告人による圧迫痕が見当たらないことも不自然とはいえず,かつ,被害児童の陰部等に自己の手指を挿入するわいせつ行為が,頚部圧迫行為に先立ってされたとしても,特段不自然とはいえず,また,被告人が,被害児童の陰部等を触る行為を中断し,頚部圧迫行為を行うことが常識的に考え難いなどともいえないのであるから,生活反応である出血を伴っている被害児童の膣口部の亀裂及び肛門部やや上部の表皮剥脱は,被害児童の生前に生じたもの,弱い生活反応がある被害児童の肛門部の4個の表皮亀裂は,被害児童の心臓がわずかに拍動している死戦期に生じたものとそれぞれ推認できることを踏まえ,所論の指摘する第一審判決の説示でも明らかにしているとおり,本件犯行当時,被害児童に対する殺意とわいせつ目的とを有していた被告人において,被害児童に対する頚部圧迫行為を行い,この行為前,あるいは,その行為中,そして,行為後の時点で,いまだ生存している被害児童に対し,陰部あるいは肛門部に自己の手指を挿入するなどしたとして,膣口部の亀裂及び肛門部やや上部の表皮剥脱を生じさせた行為が,頚部圧迫行為に先立ってなされた可能性をも含めた上で,本件におけるわいせつ行為が行われたものと認定し,強制わいせつ致死罪及び殺人罪の成立を認めることに何ら問題はない。そして,前記(1)のとおり,被告人は,遅くとも被害児童をC荘敷地内に向けて連れ込む行為を開始した時点において,わいせつ行為の犯意が生じたと認定でき,本件犯行が衝動的なものであることが否定できないこと,後記6のとおり,本件犯行当時,被告人が,悪魔の声の指示に従って他動的に行動していたのではないかなどと疑う余地はないことにも照らせば,所論がるる指摘する点は,第一審判決が「争点に対する判断」の項2(3)ウ(ウ)に判断,説示するとおり,上記認定を左右するものではない。6 責任能力について(弁護人の論旨(5))(1) 前記1,3ないし5に認定したとおり,被告人は,平成16年4月に来日してから本件犯行に至るまでの間,兄であるHや親戚のGに対して,特段異常な言動を見せたりすることもなく,同人らから見て普通の日常生活を送っており,被告人の犯行態様,動機は,それ自体不当ではあっても,その目的に照らせば了解可能なものであり,被告人は,被害児童殺害直後,その死体を,最近購入したガスコンロの梱包材であった段ボール箱に入れて梱包した上,犯行場所であるC荘から100メートル以上離れた場所まで運んで遺棄し,被害児童のランドセルも,いったん同じ場所に遺棄しようとしたが,人がいたため断念し,C荘から見て反対方向に400メートル近く離れた場所まで運んで放置し,その後,上記のガスコンロを,人目に付きにくいC荘南側敷地に置いており,また,広島の就職先に働きに出る前日に,三重県に住む姉方に赴き,逮捕当初は,本名を偽り,虚偽のアリバイを述べるなどしていたものである。これらの事実に加え,第一審公判廷においても,意識は清明で,記憶の欠落があるとはうかがわれず,自身が行った行為の結果に対して,被害児童の遺族に謝罪する一方,殺意やわいせつ目的はなかったと主張していること,被告人が第一審公判廷で供述するような異常体験が真実あり,それが何らかの精神障害に由来するものであれば,被告人の日常生活においても,そのような精神障害をうかがわせる行動となって現れるのが自然であるのに,犯行前後の行動に不自然な点がないばかりか,生活歴においても,そのような行動があったとはうかがえないことにかんがみれば,被告人が,本件犯行当時,是非善悪を弁別し,これに従って自己の行為を制御する能力を有していたことは明らかであり,その責任能力を肯定することができることは,第一審判決が「争点に対する判断」の項3に適切にその認定,判断を説示しているとおりである。(2) 所論は,①C荘北側通路階段下付近は,C荘の敷地北西角部のブロック塀が途切れている箇所から,完全に見通せる状況にあり,このブロック塀の高さも約62センチメートルでしかなく,ブロック塀越しに上記階段下付近をのぞき見ることが可能な状態であったのであり,このように誰にでもすぐに目撃される可能性のある屋外において,被告人が本件犯行を行ったことは,異常であり,また,被告人は,本件犯行直前に,被害児童と一緒にいる場面を第三者に目撃されており,犯行が発覚した際に,まず犯行への関与を疑われてしまう可能性が高いことは当然理解できるはずであるのに,本件犯行に及んでおり,これも異常であり,②被告人は,被害児童の死体を入れて梱包した段ボール箱を,遺棄した場合に発見されにくいと考えられる近所のゴミ捨て場を通過し,目立つ場所であって早期の発見が確実な空き地内に遺棄しており,また,ガスコンロを隠したとされる場所であるC荘南側通路も,当時捜査機関がC荘付近で大規模な捜索を行っており,大勢の報道関係者もいたことからすれば,すぐに見付かってしまう場所であり,しかも,このガスコンロが被告人のものであると容易に判明してしまう場所でもある上,被告人は,ガスコンロの処分について周囲に漏らした形跡もあり,これらのことからも被告人の精神に障害が生じていたことが強くうかがわれ,③被告人は,自己の意思で身体をコントロールすることができなかった旨を供述しているのであり,記憶を喪失した旨を供述しておらず,また,被告人の主張は,それが受け入れられない場合には,かえって反省が不十分であるなどとして,罪責を重くしかねないものであることは明らかであり,にもかかわらず,あえて殺意やわいせつ目的を否認していることは,ある意味リスキーな主張なのであり,これを自己の罪責を軽減するための防御活動を行っていると評価することは,刑事裁判において被告人が置かれている立場をよく理解しようとしていないことを示すものであり,④被告人は,本件犯行当時,日本で職を転々とするなどし,日本での生活になじめない状況にあったことは明らかであり,このような来日後の状況と,幼児期における実父からの虐待,さらに15歳で入隊した軍隊から脱走を余儀なくされ,その後逃亡生活を送ったことが相まって,被告人にPTSDや解離性同一障害ないしそれに類する障害を引き起こした可能性があることは否定できず,精神鑑定が行われていれば,本件以前の段階でその徴候が認められていた可能性は否定できないのであり,精神鑑定が行われていない以上,そのような徴候がなかったのかは不明といわざるを得ず,⑤Gは,本件犯行後,被告人の様子が普通であったと供述しているが,被告人としては,自らの犯行がGに発覚しないように努めて平静を装っていたであろうことは想像に難くなく,自らが被害児童を死に至らしめてしまった現実をなかなか理解することができなかった被告人が,被告人自身さえもよく理解できない状態のままで,Gに相談することはしなかったとしても特段不自然とはいえず,⑥第一審公判廷におけるHの供述により,被告人の実姉に悪魔が入ったような状態に陥っていたことが明らかになっており,この症状は,精神科医による治療によってではなく,牧師や教会関係者の祈りによって治癒しているが,このことによって精神障害に由来するものとは考え難いとすることは,精神科医による治療と牧師等による治療を全く別物としている点で誤りであり,精神的な安定をもたらす点では共通しているはずであり,被告人にも同じような異常状態が生じていた可能性は十分考えられ,⑦第一審公判廷において,被告人は,要領を得ない発言をしたり,突然泣き出し,「ごめんなさい。ごめんなさい。」などと言ったり,被告人質問の際に問われた質問に対して回答せず,突然自分の供述態度についての考え方を述べ始めるなど,不自然な言動が多々あり,拘置所においても,奇声を発したり,窓を叩いたりするなどの異常行動に及び,その理由について,実際には認められない他の収容者の声や物音が聞こえると言っており,統合失調症の特徴的症状の1つである幻聴が生じている可能性が高く,当審第1回公判廷においても,不規則発言や不可解な言動に及んでおり,被告人が重篤な精神疾患に罹患していることを十分に疑わせるとし,被告人の一連の行動を合理的に説明することは到底困難であり,被告人が何らかの要因によって,異常な精神状態にあったという疑いは到底払拭できないと主張する。なお,弁護人は,当審における事実取調べの結果に基づく弁論において,当裁判所が,弁護人による被告人の精神鑑定の請求を却下し,これに対する弁護人の異議も棄却したことについて,訴訟手続の法令違反,審理不尽の違法があると主張する。しかし,①については,前記2(2)のとおり,本件犯行が,衝動的に敢行されたものであることが否定できず,C荘敷地内北側階段下付近が,市道からブロック塀である程度遮へいされた形になっていること(なお,C荘北側敷地は,市道よりも約0.7メートル高くなっており,市道側から見て,遮へい部分の高さは約1.3メートルほどあることになる。)も併せ考慮すれば,被告人において,I方前でそのまま犯行に及んだというならともかく,被害児童と共に,I方前からC荘北側敷地内に移動した上で,なお人目に付くのではないかなどということまで最早考慮することもなく,犯行に及んだとしても,直ちに不自然,不合理であるとはいえない。さらに,このように自らの性的欲望を押さえられずに衝動的に敢行された犯行であるからこそ,直前に被害児童と一緒にいる場面を第三者に目撃されているという自身の認識により,犯行を思いとどまることができなかったものと見て不自然,不合理ではなく,また,直前に目撃されているという認識もあったがために,後記のとおり,本件犯行後直ちに,被害児童の死体を段ボールに入れて梱包した上,C荘から離れた空き地に遺棄するなどの,自身の犯跡隠ぺいを目的としたものと認められる行為に及んだものと見るのがむしろ自然である。所論が指摘する点は,いずれも責任能力に疑問を抱かせるような精神の異常さを感じさせるものとはいえない。②については,前記1(4)ないし(6)のとおり,被告人は,本件犯行直後,被害児童の死体を,購入したガスコンロが入れられていた段ボール箱に入れた上,これを梱包し,本件犯行場所であるC荘から100メートル以上離れた空き地まで運んで遺棄し,被害児童のランドセルも紙袋に入れた上,これも同じ場所に放置しようとしたものの,人がいたので怖くなり,C荘から見て,その空き地とは反対方向に400メートル近く離れた駐車場付近にこの紙袋を放置し,さらに,本件犯行から4日後,上記ガスコンロを,別の段ボール箱に入れて梱包した上,被告人方からロープで下に降ろすことにより,市道から見通すことができないC荘南側敷地に置き,翌日には,C荘の大家に対し,このガスコンロが多分盗まれたと虚偽の内容を告げ,同日,次の日から広島で働く予定があったにもかかわらず,三重県に住む姉の元に行き,逮捕された当初においては,本名を偽った上,虚偽のアリバイを述べるなどしたものであり,これら一連の行動を併せ考慮すると,本件犯行の罪責を免れるべく,被害児童の死体を梱包して遺棄し,この梱包に用いた段ボールと結び付けられかねないガスコンロを梱包して遺棄するなどの犯跡隠ぺい行為に及び,広島から離れて捜査の手を逃れようとしたものと認められるのみならず,被告人が,このように,十分な考慮ないし検討に基づいているとはいい難い場当たり的な犯跡隠ぺい行為等に及んでいること自体,本件犯行が衝動的に敢行されたものであり,それ故に被告人が動揺し,慌ててそれらの行為に及んでいるものであることを強くうかがわせるものということができ,そこに不自然なところはなく,所論の主張するような精神の異常さを見出すことなどできない。所論は,被告人が,ガスコンロの処分について周囲に漏らしたことは精神の障害をうかがわせるとも主張するが,被告人が,事前に十分な計画を練って本件犯行に及んだというならまだしも,衝動的に本件犯行に及んでしまい,動揺し,慌てて何とかその罪責を免れようと犯跡隠ぺいを図る中,被害児童の死体を入れた段ボール箱と結び付けられかねないガスコンロについて,何とか自身から遠ざけたい,このガスコンロと自身とが結び付けられないようにしたいという思いの余り,ガスコンロを処分したいということを周囲に漏らしてしまったとしても,不自然ではなく,そこに精神の障害をうかがうことなどできない。なお,被告人は,第一審公判廷において,ガスコンロを梱包した上でC荘南側敷地に置いたのは,ガスコンロを盗んだと疑われていると思ったためであると供述し,さらに,翌日から広島で働く予定があったにもかかわらず,三重県に住む姉の元に行ったのは,新聞記者にうんざりしたのでリラックスするためであったなどと供述しているが,それ自体がいずれも不自然である上,上記の一連の行動に照らしても,信用できないというしかないことは,第一審判決が「争点に対する判断」の項3(3)イ(ウ)に適切にその認定,判断を説示しているとおりである。③については,被告人が,当時の記憶を喪失することなく保持していること自体,精神に障害が生じていなかったことを推認させる一事情となることは明らかである。そして,殺人やわいせつの罪に問われている被告人が,殺意やわいせつ目的について否認していることから,被告人は,事の是非善悪を理解して,防御活動を行っているものと評価することは,何ら不合理なものではない。④については,前記(1)のとおり,本件犯行当時及びその前後における被告人の言動を中核とする諸事情からすれば,被告人の責任能力に疑問を持つ余地はないというべきであり,所論が指摘する実父からの虐待や軍隊からの脱走とその後の逃亡生活等の事情は,本件犯行がそれから相当期間経過後に敢行されたものであり,本件犯行前後において,被告人に心身の障害をうかがわせる言動も見られないことからすれば,被告人の精神障害を疑うべき根拠にならないといわざるを得ないことは,第一審判決が「争点に対する判断」の項3(3)エに適切にその認定,判断を説示するとおりである。所論は,精神鑑定が行われていれば,被告人についてPTSDや解離性同一障害ないしそれに類する障害の徴候が認められていた可能性を否定できないと主張するが,それ自体,抽象的な可能性を問題とするものに過ぎず,そもそも採用し難い上,第一審判決が「争点に対する判断」の項3(4)イ(ウ)に適切に説示するとおり,身体が少し持ち上がったような感じがして,座っている自身の姿を上から見るような形になり,被害児童だけがスポットライトを浴びたように映し出され,逆らうことのできない声が聞こえてきて,その声に従い,被害児童に対する加害行為や,自慰行為を行うなどしたという,被告人が第一審公判廷で供述する異常体験が真実あり,それが精神障害に由来するというのであれば,相当重度の精神障害であるという以外になく,本件犯行前後のみならず日本に来てからの生活歴の中での他者に対する言動において,その精神障害をうかがわせるだけの異常な徴候がにわかに出てこないというほうがむしろ不自然であり,およそ考え難いことであり,精神鑑定を行わない限り,そのような重度の精神障害の徴候がなかったとはいえないとする所論を採用する余地はない。⑤については,上記のとおり,本件犯行当時,被告人が,自身で供述するような異常体験をもたらしたほどの重篤な精神障害に罹患していたのであるならば,犯行直後に行動を相当時間共にしたGに対して,そのような重篤な精神障害をうかがわせる異常な言動を全く示さなかったなどとはおよそ考え難い。また,所論が主張するように,被告人が,自身が犯行を犯したという事実の発覚を防ぐため,Gに対して努めて平静を装っていたというのであれば,そのような振る舞いができたこと自体が,被告人の責任能力に問題がなかったことを強く推認させるものであるといえる。⑥については,精神的な安定をもたらす点では共通しているはずであるから,牧師等の祈りによって治癒する症状を,精神科医による治療を要する精神障害に起因するものとして扱うべきであるとする主張自体採用し難く,これまで述べてきたところから明らかなとおり,被告人が,自身の供述するような異常体験をもたらした重篤な精神障害に罹患していたのではないかなどと疑う余地はない。⑦については,被告人は,第一審公判廷において,要領を得ない発言をしたことがあったり,質問に答えることなく自身の主張を述べることがあったりしたことは認められるが,これらが直ちに精神障害を疑わせるものであるなどとはいえず,さらに,被告人は,兄であるHが,第一審公判廷において,被害者の遺族に対し,謝罪の思いと,被告人に対する宥恕を乞い願う気持ちとを懸命に供述した際,所論が指摘するように,泣き崩れ,「ごめんなさい。ごめんなさい。」などと述べたものであり,これが精神の異常をうかがわせるものなどとは到底いい難く,むしろ,その精神に特段の異常がないことをうかがわせるものというべきである。さらに,被告人は,確かに,当審第1回公判廷において,床に座り込み,人定質問において奇声を発するなどし,ボールペンのキャップをかじった後口の中に入れ,サンダルを持ち奇声を発し,自身の車であると発言し,自身の車でみんなで海に行こうと発言するなどしたが,他方,開廷に当たり,裁判長が,被告人に対し,法廷にふさわしくない言動があれば,直ちに退廷させることになる旨注意を与えた当審第2回公判廷においては,そのように奇声を発したり,不可解な行動ないし発言をしたりすることは全くなかったものであり,これらの奇声や不可解な行動ないし発言は,詐病なのか,それとも母国ではない国において刑事裁判を受け,死刑を求刑されていることによる不安な心情ないしそれ故の現実逃避の表れなのかは判然としないが,少なくとも,精神障害に由来するのではないかなどと疑うべきものでないことは明らかであり,拘置所での振る舞いも同様のものと考えざるを得ない。そして,以上に説示してきたところからすれば,当裁判所が,弁護人による被告人の精神鑑定の請求を却下し,これに対する弁護人の異議も棄却したことについて,訴訟手続の法令違反,審理不尽の違法がないことも明らかである。弁護人の論旨はいずれも理由がない。第4 弁護人の法令適用の誤りの主張について論旨は,殺意を有しつつ,強制わいせつ行為を行い,強制わいせつの機会に被害者を殺害した場合には,強制わいせつ罪と殺人罪との観念的競合が成立すると解すべきであるのに,第一審判示第2の事実について,強制わいせつ致死罪と殺人罪との観念的競合として処理している第一審判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。そこで,検討するに,13歳未満の被害者に対し,殺意をもってわいせつ行為に及び,被害者を死亡させた場合には,強制わいせつ致死罪と殺人罪が成立し,両罪は観念的競合の関係に立つものと解される(最高裁昭和31年(あ)第1219号昭和31年10月25日第一小法廷判決・刑集10巻10号1455頁参照)ところ,同様の見解に立って,第一審判示第2の事実について,強制わいせつ致死罪と殺人罪が成立し,両罪が観念的競合の関係にあるとした第一審判決に法令適用の誤りはない。所論は,強制わいせつ致死罪と殺人罪との観念的競合とすることは,1つの行為によって生じた1人の死の結果を過失的かつ故意的な殺害と評価している点で理論的に破綻していると主張するが,採用できない。論旨は理由がない。第5 検察官及び弁護人の量刑不当の各主張について検察官の論旨は,本件の殺人,強制わいせつ致死,死体遺棄の各犯行の罪質は劣悪であり,殺害された被害者が1名の事案の中でも格段に悪質な事案であること,これらの犯行の動機に酌量の余地は一片もなく,本件は,被告人の幼女への異常な性癖と,願望達成のためなら手段を選ばない悪辣極まりない性格に基づく犯行であること,犯行の態様は,冷酷残忍極まりなく,殺害行為をわいせつの手段として冷徹に利用した犯行であること,犯行の結果は,悲惨,重大であり,社会全体で育み守るべき対象である幼い生命を抹殺している点で,単純に殺害された被害者は1人に過ぎないと数量化し得ないこと,遺族の処罰感情は,峻烈を極め,無期懲役とした第一審判決に不満を抱いていること,本件の社会的影響は余りにも甚大であり,国民感情においても極刑を望む声が多く,この種事犯においては,同種事犯の再発防止のためにも,従来にも増して重い刑罰を科すことが司法の務めであること,被告人に反省悔悟の情は一切認められないこと,被告人のペルー共和国での前歴に照らし,この種事犯の犯罪性向は根深く,再犯のおそれも極めて高く,被告人の反社会的性格,性向の矯正改善は困難であることなどの情状を総合勘案すれば,本件は,死刑をもって臨むのがやむを得ない重大事犯であり,第一審判決が死刑回避の事由として挙示した諸点はいずれも理由がなく,死刑の選択を回避して,被告人を無期懲役に処した第一審判決の量刑は著しく軽きに失し不当である,というのである。弁護人の論旨は,第一審判示第2の事実について,被告人に強制わいせつ致死,殺人罪が成立するとしても,犯行に至る経緯,動機,犯行態様,犯行後の被告人の行動等,犯行結果,第一審判示第1の不法入国,在留事件,被告人の生育環境,来日後の状況,家族との関係の各情状を考慮すると,有期懲役が選択されるべきであり,第一審判決の上記量刑は不当に重い,というのである。そこで,記録を調査し,差戻前を含む当審における事実取調べの結果を併せて検討する。1 本件は,ペルー共和国国籍の被告人が,有効な旅券又は乗員手帳を所持せずに我が国に入国し,引き続き,1年7か月余の間不法に在留し(第一審判示第1の犯行),当時7歳の女子児童に強制わいせつ行為をして殺害し(第一審判示第2の犯行),その死体を遺棄した(第一審判示第3の犯行)出入国管理及び難民認定法違反,強制わいせつ致死,殺人,死体遺棄の事案である。
事案の概要
平成22年7月28日
広島高等裁判所 第1部
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審決取消請求事件(特許権・行政訴訟)
平成22年7月28日
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審決取消請求事件(特許権・行政訴訟)
平成22年7月28日
知的財産高等裁判所
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審決取消請求事件(特許権・行政訴訟)
平成22年7月28日
知的財産高等裁判所
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[知財] [民事] 平成22(ネ)10021  813Views
商号使用禁止等請求控訴事件(その他・民事訴訟)
平成22年7月28日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成21(行ケ)10343  686Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟)
平成22年7月28日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成21(行ケ)10382  651Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟)
平成22年7月28日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成21(行ケ)10252  686Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟)
平成22年7月28日
知的財産高等裁判所
詳細/PDF
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[知財] 平成22(行ケ)10083  732Views
審決取消請求事件(商標権・行政訴訟)
平成22年7月28日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成21(行ケ)10294  624Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟)
平成22年7月28日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成21(行ケ)10293  593Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟)
平成22年7月28日
知的財産高等裁判所
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[行政] 平成20(行ウ)624等  967Views
障害者介護給付支給決定取消等請求事件(甲事件),訴えの追加的併合申立事件(乙事件)
平成22年7月28日
東京地方裁判所
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[知財] [民事] 平成22(ワ)12742  791Views
商標権侵害差止等請求事件(商標権・民事訴訟)
平成22年7月28日
東京地方裁判所
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