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カテゴリー > 総合裁判例集 (アーカイブ : 平成30年4月 ; 降順 ; 裁判年月日で整列)

裁判年月日順 | データ登録日順 | 参照数順

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事件番号/事件名裁判年月日/裁判所判決書
[知財] 平成29(行ケ)10013  305Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/乾麺およびその製造方法)
平成30年4月27日
知的財産高等裁判所
詳細/PDF
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[知財] 平成29(行ケ)10202  349Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/平底幅広浚渫用グラブバケット)
平成30年4月27日
知的財産高等裁判所
詳細/PDF
HTML/TEXT
[知財] [民事] 平成29(ワ)9779  258ViewsMoreinfo
商標権侵害行為差止請求事件(商標権・民事訴訟)
平成29(ワ)9779
本件は,別紙商標権目録記載の商標(以下「原告商標」という。)の商標権25を有する原告が,被告が別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)を付して日本酒を販売していること等が原告の商標権を侵害すると主張し,被告に対し,商標法36条1項に基づき「白砂青松」の標章を付した商品の販売等の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき同標章を付した同商品の宣伝用ポスター,チラシ,パンフレット,包装等の廃棄及びウェブサイト目録記載のウェブサイトから同標章の削除を求める事案である。
事案の概要
平成30年4月27日
東京地方裁判所
詳細/PDF
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[行政] 平成27(行ウ)229  116ViewsMoreinfo
政務活動費返還請求事件(住民訴訟)
平成27(行ウ)229
本件は,茨木市の住民である原告らが,平成25年度における茨木市議会の15政務活動費(以下「本件政務活動費」という。)に関し,別紙2の1の「請求一覧表(会派)」の各「相手方」欄記載の各茨木市議会会派(以下「本件相手方会派ら」という。)及び別紙2の2の「請求一覧表(議員)」の各「相手方」欄記載の各茨木市議会議員(以下「本件相手方議員ら」といい,本件相手方会派らと併せて「本件相手方ら」という。なお,本件相手方らは,全て,本件訴えに20補助参加している。)は,本件政務活動費の一部を茨木市議会政務活動費の交付に関する条例(以下「本件条例」という。)6条に反して違法に支出したから,同市は本件相手方らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を有するにもかかわらず,同市の執行機関である被告がその行使を怠っていると主張して,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基25づき,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得返還の請求として,本件政務活動費に関する支出のうち違法に支出されたものである旨主張する額に相当する金員及びこれに対する平成27年7月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による不法行為に基づく損害賠償請求に係る遅延損害金又は不当利得返還請求に係る利息の支払を本件相手方らに請求することを求める住民訴訟である。
事案の概要
平成30年4月27日
大阪地方裁判所
詳細/PDF
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[下級] [刑事] 平成29(わ)2348  274ViewsMoreinfo
犯人蔵匿被告事件
平成29(わ)2348
本件とは関連性がないと主張する。しかしながら,事実認定の補足説明において摘示するとおり,当裁判所は,いずれの証拠についても関連性があると判断した。2 違法収集証拠の主張について(1) 甲2号証ないし甲59号証について弁護人は,M号室に出入りする人物を撮影した写真(甲2ないし59)について,その撮影は被撮影者のプライバシーを侵害するものであるから,本来は令状を必要とするというべきであり,令状なしで撮影された前記写真は違法収集証拠として証拠能力が否定される旨主張するので,この点について検討する。なお,前記写真は,M号室前の廊下をビデオ撮影していたものを,静止画として切り出したものであるから,以下,当該ビデオ撮影(以下「本件ビデオ撮影」という。)の適法性について検討する。関係証拠によれば,以下の事実が認められる。すなわち,捜査機関は,○○委員会(通称「●●派」。以下「●●派」という。)の活動家として把握していた被告人について,兵庫県内のホテルに虚偽の住所と氏名で宿泊したという旅館業法違反の事実を認知した。そこで,捜査機関は,前記旅館業法違反の事実の捜査として,被告人の住所について捜査した結果,被告人がM号室に居住しているのではないかとの疑いを抱くに至った。捜査機関は,被告人がM号室に居住しているか否かを確認する目的で,平成29年2月14日から,同室への出入りを目視で確認することとした。そうしたところ,同月18日には被告人が,同月19日には氏名不詳の男が,それぞれM号室に出入りするのを確認したため,引き続き被告人が同室に居住しているか否かを確認する目的で,同月26日からは,同室への出入り状況をビデオ撮影して記録に残すこととし,当該撮影は,同年5月18日まで続けられた。その撮影態様は,捜査機関が,M号室の玄関ドア付近を見通せる場所にあるマンションの一室を賃借し,望遠のビデオカメラ2台を同所に設置して,24時間態勢で,M号室の玄関ドアやその付近の共用廊下を撮影したというものである。以上の事実関係によれば,本件において撮影対象とされたのは,M号室の内部ではなく,その出入口である玄関ドア及びその付近の共用廊下にとどまっており,かつ,これらの場所は,前記Nビルの周辺の建物から視認され得る状況にある。そうすると,本件において撮影対象となった場所は,通常,人が他人から容ぼう等を観察されること自体は受忍せざるを得ない場所といえ,プライバシーの保護の合理的期待が高い場所であるとはいえない。したがって,本件ビデオ撮影は,被撮影者のプライバシーを大きく制約するものとはいえないから,本件ビデオ撮影は強制処分には当たらない。更に進んで,本件ビデオ撮影が任意捜査として適法といえるかについて検討する。捜査機関においては,被告人が虚偽の住所と氏名でビジネスホテルに宿泊した前記旅館業法違反の捜査の一環として,被告人のM号室における居住の有無及びその実態を明らかにする必要があったと認められる。そして,同室には被告人のほかに氏名不詳の男も出入りしていたところ,両名による同室の使用頻度,状況等を明らかにして被告人の居住実態を確認するためには,相当期間継続して同室の出入り状況を把握する必要があったといえる。そして,その撮影態様は,前記のとおり必ずしもプライバシーの保護の合理的期待が高いとはいえないM号室の玄関付近を撮影したにとどまる上,その撮影期間も3か月に満たず,前記捜査の目的及び必要性に照らし,不相当に長いとはいえない。以上によれば,本件ビデオ撮影は,前記捜査目的を達成するため,必要な範囲において,相当な方法によって行われたものといえ,任意捜査としても適法である。よって,本件ビデオ撮影は適法であり,弁護人の前記主張は理由がない。(2) 甲69ないし71,75及び78について弁護人は,銀行の現金自動預払機に設置された防犯カメラにより撮影された映像を切り出した写真(甲69ないし71)及び店舗内に設置された防犯カメラにより撮影された映像を切り出した写真(甲75及び78)について,いずれも被撮影者のプライバシーを侵害するものであり,その押収について本来は令状を必要とするというべきであるのに,令状なしで任意提出されたものであるから違法収集証拠である旨主張する。そこで,以下,この点について検討する。近時,防犯や犯罪発生時の証拠保全等の目的から,金融機関の現金自動預払機や小売店の店舗内に防犯カメラが設置されているところ,その必要性は明らかである上,このような防犯カメラが設置されていることは,その利用者にとっても公知の事実であって,これを受忍しているといえるから,本件において,前記防犯カメラの設置,撮影に違法な点はない。そして,捜査機関は,本件の捜査遂行上の必要から,前記各防犯カメラの画像の任意提出を受けたものであり,これ自体に何ら違法な点はない。よって,弁護人の前記主張は理由がない。(事実認定の補足説明)第1 争点等弁護人は,M号室に被告人以外の者が居住していたことは立証されておらず,仮に同室に被告人以外の者が居住していたとしても,被告人が,その者が,逮捕状が発せられ逃走中の者であるXであることを認識していたことは立証されていないのであるから,被告人には犯人蔵匿の故意がなく,無罪である旨主張する。しかしながら,当裁判所は,被告人において犯人蔵匿の故意を有し,判示認定のとおり,犯人蔵匿罪が成立すると判断したので,その理由を補足して説明する。第2 前提となる事実(以下,特に断らない限り,日付は平成29年のそれを示す。必要に応じて証人の公判供述を示す際には,速記録における丁数を用いる。)1 関係者(1) 被告人について被告人は,以前,●●派のいわゆる非公然アジトとされる場所にいたとして検挙された者であり(a証人2丁),被告人の住民登録は,東京都n区内にある●●派の拠点とされる住所でなされている(b証人18丁)。また,後記のとおり,M号室における被告人の居室からは,●●派の機関紙である「▲▲」及び●●派と関係がある団体の新聞である「△△新聞」が多数押収され,被告人は,当公判廷においても,これらの機関紙等の記載内容に沿う供述をしている。(2)XについてXは,昭和46年(1971年)11月14日に実行された凶器準備集合,公務執行妨害,傷害,現住建造物等放火及び殺人の被疑事実(以下「渋谷暴動事件」という。)により,遅くとも昭和58年5月12日には逮捕状が発付され,昭和59年10月31日には公開指名手配となり,氏名や顔写真等が掲載されたポスターが貼られるようになった。また,判示の平成29年2月26日頃から同年5月18日までの間(以下「本件期間」という。)においても,前記被疑事実に係る有効な逮捕状が発せられている状態であり,Xには懸賞金もかけられていた(甲84,85,a証人39,40丁)。(3) 氏名不詳の男(A)についてア 捜査機関は,平成29年5月18日,M号室内において,有印私文書偽造・同行使,旅館業法違反の被疑事実により,被告人を逮捕するとともに(甲60),同被疑事実に関してM号室の捜索差押えを実施した。その際,氏名不詳の男(以下「A」という。)が同室内におり,同人は,浴室において,水溶紙と思料される紙片等を浴槽に投棄していた。警察官がこれを制止しようとしたところ,Aは,同警察官に体当たりする等の暴行を加えたことから,公務執行妨害により現行犯人逮捕された(甲61)。イ その後,捜査機関は,Aの人定を明らかにするため,AのDNA型(STR型及びアメロゲニン型)と,Xの母親であるOのDNA型(STR型及びアメロゲニン型)とを鑑定した。その結果は,両者のDNA型のSTR型15座位全てにおいて,少なくとも一方のDNA型を共有しており,AとOとの間に,生物学的な親子関係が存在するとしても矛盾しないというものであった(甲92,98,c証人8丁)。さらに,捜査機関は,母系遺伝,すなわち,母親からその子どもに遺伝するミトコンドリアDNAの性質を利用して,AのミトコンドリアDNA型と前記OのミトコンドリアDNA型を,また,AのミトコンドリアDNA型とXの姉に当たるPのミトコンドリアDNA型を,それぞれ比較・鑑定した。その結果は,それぞれ塩基配列の同じ箇所に変異が認められ,AとOとの間,及び,AとPとの間に,それぞれ母系の関係性があるとして矛盾しないというものであった(甲99,101,d証人9丁)。また,捜査機関は,父系遺伝,すなわち,父親からその男性の子どもに引き継がれるY染色体STR型の性質を利用して,Xの父親の兄弟の孫に当たるQ(f証人1丁)及びXの父親の弟の息子に当たるR(g証人2丁)の各DNA型(Y染色体STR型)とAのDNA型(Y染色体STR型)とを比較・鑑定した。その結果は,Y染色体STR型16部位のうち,DYS389Ⅰ型及びDYS389Ⅱ型を除く14部位が全て一致し,AとRとの間,及び,AとQとの間に,それぞれ生物学的な親族関係が存在する可能性が否定されないというものであった(甲106,110,c証人4ないし6丁)。2 M号室について(1) M号室の管理,使用状況ア M号室は,島根県内に住所を有する「Y」名義で賃借され,同人名義の水道,電気,ガス等の各契約が締結されており,その家賃や水道光熱費は,S銀行のY名義の口座(以下「Y口座」という。)から引き落とされていた。しかしながら,前記Yが本件期間中にM号室に居住していたことはない。また,同所に住民登録している者は存在しない(甲63,67,a証人3,40ないし41丁)。イ 捜査機関は,本件期間中,M号室に出入りする人物の入退室状況を24時間態勢で視察していたところ,その間,同室に出入りしたのは,被告人とAの2人のみであった。また,本件期間中,被告人が連日ないし1日おきに短時間の外出を繰り返していたのに対し,Aが外出したのは11回のみで,それぞれ短時間の外出であった(甲2ないし59,a証人8ないし37丁)。ウ 被告人は,平成29年4月19日,S銀行T支店の現金自動預払機からY口座に27万円を入金している(甲39,67,71,a証人42ないし43丁。なお,甲69及び70も,Y口座の利用者を特定するための証拠であり,本件との関連性が認められることは明らかである。)。(2) M号室内の状況ア M号室内には6畳洋室(以下単に「6畳洋室」という。)と6畳和室(以下単に「6畳和室」という。)があり,捜査機関による同室の検証時,6畳洋室には布団が1組敷かれており,6畳和室の押入には布団が片付けられていた(甲64)。同室内には,テレビや冷蔵庫など,一通りの生活用品が揃えられていた。イ 6畳和室からは,「n区oのp丁目q番r号 U(被告人の氏名)」宛てに送付された平成29年度国保健診無料受診券や,「u(被告人の氏)」と刻した印鑑が発見された(甲64押収目録番号48,b証人11,12丁)。また,同室からは,●●派の機関紙である「▲▲」(甲86,b証人10,11丁)及び●●派と関係がある団体の新聞である「△△新聞」(b証人11丁)が多数押収されている。同新聞の記載(2016年11月7日第20号参照)と被告人の公判供述に照らせば,「△△新聞」の△△とは,渋谷暴動事件に関与したとして無期懲役判決を受けたZ氏のことを指すものと解される。また,同新聞(2016年11月21日第21号)には,「Zさんと共に決起し指名手配と闘っているXさんに,警視庁が300万円の懸賞金をかけた」との記載がある。さらに,「▲▲」第2823号には,Z氏に関する1面にわたる記事があり,その中で,「X同志に対する300万円の賞金付き指名手配」との記載がある。なお,発見された「▲▲」には,多数の箇所に線が引かれている。さらに,6畳和室において,Y口座に係る総合口座通帳のほか,現金約46万円(e証人5丁),「FOODS」等と記載された封筒(甲79),「水光熱」等と記載された封筒(甲80)及び「備品」等と記載された封筒(甲81)が発見された(甲64,b証人7丁)。ウ 6畳洋室からも,6畳和室に置かれていたのと同じ前記「▲▲」(甲86,b証人10,11丁)や前記「△△新聞」(b証人11丁)が多数押収されたほか,現金約72万円が押収された(甲64)。なお,発見された「▲▲」には,多数の箇所に線が引かれている。また,Aは,現行犯人逮捕されてM号室を退出する際,6畳洋室に掛けてあったジャンパーを取り,それを着て出て行った(e証人6丁)。第3 当裁判所の判断1 はじめに弁護人の前記第1の主張に照らせば,本件の主要な争点は,①被告人がAをM号室に居住させていたといえるか,②AがXであるといえるか,③被告人が,Xについて,殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ,逃走中の者であることを認識していたといえるか,④被告人において,AがXであると認識していたといえるかの点にある。以下,これらの点について検討する。2 ①被告人がAをM号室に居住させていたといえるか前記認定したM号室内の状況や,本件期間中に同室に出入りしたのは被告人及びAの2人のみであり,前記捜索差押え時に同室内にいたのも被告人及びAの2人のみであることなどからすれば,本件期間中,被告人及びAが,M号室に居住していたことは明らかである。そして,6畳和室及び6畳洋室にはそれぞれ布団やパソコン,テレビ等が置かれていたところ,6畳和室には被告人の国保健診無料受診券や「u(被告人の氏)」と刻した印鑑があったこと,6畳洋室にはAのジャンパーが掛けられていたことからすれば,6畳和室を被告人が,6畳洋室をAが,それぞれ使用していたと認められる。そして,Aがほとんど外出しないのに対し,被告人は,連日ないし1日おきに外出し,食料品の購入を行ったり,M号室の家賃や水道光熱費が引き落とされるY口座に入金をしたりしていること,被告人の使用する6畳和室から,「水光熱」,「FOODS」,「備品」等と書かれ,それぞれ数字が記載された封筒が発見されていることなどからすれば,専ら被告人がM号室の維持管理を担っていると認められる。そうすると,そのような立場にある被告人が,AをM号室に居住させていたものと認められる。3 ②AがXであるといえるか前記DNA型鑑定の結果によれば,AがXであると考えて矛盾はしない。これに加えて,Aが,●●派の人物である被告人と同居し,かつ,前記「△△新聞」や「▲▲」を,これに線を引くなどして熱心に読んでいることなどに照らし,Aも●●派又はこれに近い思想を持つ人物であること,Aは,前記捜索差押えの際,水溶紙と思料される紙片等を浴槽に投棄し,これを制止しようとした警察官に対し妨害行為に出て,罪証隠滅工作をしていることも考慮すると,Aは,渋谷暴動事件で逮捕状が発付され,指名手配されているXであると認められる。4 ③被告人が,Xについて,殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ,逃走中の者であることを認識していたといえるか前記第2の1(1)で認定した事実に照らせば,被告人は●●派の活動家であると認められる。そして,Xは,●●派の活動家として渋谷暴動事件に関与したとされ,指名手配中の人物であるところ,被告人は,前記「△△新聞」や「▲▲」を定期的に読んでおり,Z氏が関与したとされる渋谷暴動事件についても相応の知識を有していると認められる。さらに,前記認定のとおり,被告人が使用していた6畳和室から発見された「△△新聞」及び「▲▲」には,Z氏の記載と共にXが指名手配されている旨の記載があることも併せ鑑みれば,被告人は,Xが,渋谷暴動事件に関与し,殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ,逃走中の者であることを認識していたと認められる。5 ④被告人において,AがXであると認識していたといえるか前記認定のとおり,被告人は,東京都内に住民登録しているにもかかわらず,他人名義で賃借された広島市内のM号室に,少なくとも約82日間(本件期間)の長期間にわたり,他人であるAと同居していたものである。その上,前記のとおり,AはほとんどM号室から出ることはない一方で,専ら被告人がM号室の維持管理を担い,Aとの共同生活を維持していたことが認められる。さらに,M号室における生活資金の原資についてみると,被告人及びAが就労により収入を得ていた形跡はうかがわれない。また,M号室からはY口座に係る前記通帳以外の預金通帳等は発見されておらず,被告人又はAがそれぞれの預貯金等により生活資金を拠出していた形跡もうかがわれない。そうであるにもかかわらず,M号室には多額の現金があった上,およそ2か月に1回の頻度で,18万円ないし27万円がY口座に入金され,光熱費等の支払も滞りなくなされているのである。このような事情に加え,被告人及びA(X)がいずれも●●派の活動家であることも併せ鑑みれば,被告人及びAは,第三者から,M号室における生活資金の提供を受けていたと認められる。このように,被告人は,M号室において極めて特異な生活を送っていたといえるところ,前記諸事情に照らせば,被告人は,このような形でAと同居生活を送る理由ないし必要性やAの素性について認識していたとみるのが自然であり,被告人が,これらの点について全く認識していなかったとみるのは不自然というほかない。よって,被告人は,AがXであると認識していたと認められる。6 まとめ以上検討したところによれば,被告人において,AがXであって,同人が殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ,逃走中の者であることを認識していたと認められる。以上の認識に加え,前記認定したM号室における生活状況も考慮すると被告人は,Xが逮捕されるのを免れさせる目的で同人をM号室に匿っていたものと認められる。そして,Y名義で賃借されたM号室を被告人及びXの利用に供することを許可した人物や,M号室における生活資金を援助していた人物の存在がうかがわれることからすると,本件犯人蔵匿の犯行は,被告人が,氏名不詳者らと共謀の上,実行したものと認められる。以上によれば,判示認定のとおり,被告人には犯人蔵匿罪が成立する。(法令の適用)罰 条 刑法60条,103条刑 種 の 選 択 懲役刑を選択未決勾留日数の算入 刑法21条訴 訟 費 用 の 不 負 担 刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,●●派の活動家である被告人が,氏名不詳者らと共謀の上,同じく●●派の活動家であり,殺人等の被疑事実で逮捕状が発付されていたXを,マンションの一室に住まわせて匿ったという犯人蔵匿の事案である。
事案の概要
平成30年4月27日
大阪地方裁判所 第2刑事部
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[下級] [民事] 平成25(ワ)267  265ViewsMoreinfo
朝鮮高校生就学支援金不支給違憲損害賠償請求事件
平成25(ワ)267
本件は,学校法人愛知朝鮮学園(以下「愛知朝鮮学園」という。)が,同学園の設置する愛知朝鮮中高級学校の高級部(以下「愛知朝鮮高校」という。)について,公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(平成25年法律第90号による改正前のもの。以下「支給法」という。)2条1項5号,同法律施行規則(平成25年文部科学省令第3号による改正前のもの。以下「本件省令」という。)1条1項2号ハによる指定を求める旨の申請(以下「本件申請」という。)をしたところ,文部科学大臣から本件省令1条1項2号ハによる指定をしない旨の処分(以下「本件不指定処分」という。)を受けたことに関して,当時,愛知朝鮮高校に在籍していた生徒である原告らが,本件不指定処分を含む被告の一連の行為は政治外交上の理由により朝鮮高校(各朝鮮中高級学校の高級部をいう。以下同じ。)の生徒を支給法の適用から排除しようとした違法行為であって,これにより就学援助が受けられなかっただけでなく,人格権を侵害されるという深刻な被害を受けた等と主張し,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,各自55万円(慰謝料50万円及び弁護士費用5万円)並びにこれに対する違法行為の後の日である訴状送達の日の翌日(原告1ないし5については平成25年3月20日であり,原告6ないし10については平成26年1月7日である。)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成30年4月27日
名古屋地方裁判所 民事第10部
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[最高裁] 平成29(行ヒ)216  682ViewsMoreinfo
議場における発言取消命令取消請求事件
平成29(行ヒ)216
本件は,愛知県(以下「県」という。)の議会の議員である被上告人が,県議会議長から,地方自治法129条1項に基づき,県議会の一般質問における県知事に対する発言の一部を取り消すよう命じられた(以下,この命令を「本件命令」という。)ため,上記発言は社会通念上相当な内容のものであるなどとして,上告人を相手に,本件命令の取消しを求める事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
最高裁判所第一小法廷
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[下級] [刑事] 平成29(う)750  266ViewsMoreinfo
殺人
平成29(う)750
本件の概要1 原判決が認定した罪となるべき事実の概要被告人は,当時7歳の男児であった被害者の母親(以下単に「母親」と言う。)から,被害者が罹患している1型糖尿病について相談を受けるや,母親及び被害者の父親(以下単に「父親」と言う。)との間でその治療を引き受けることを約し,両親(母親及び父親を指す,以下同じ。)に対し,インスリンは毒であるとして被害者に対するその投与の中止などを指示していたものであるが,被害者が定期的にインスリンを投与しなければ死亡するおそれがあることを知りながら,被告人が被害者にインスリンを投与することなく被害者の1型糖尿病の治療ができるものと母親が信じて被告人の指示に従っていることに乗じ,かつ,被害者を保護する責任を有しており,悩みながらも被告人の指示に従うことにした父親と意思を通じた上,殺意をもって,平成27年4月5日頃から同月27日までの間,栃木県内又はその周辺において,両親に対し,メール又は口頭の方法により,被害者に対するインスリンの投与の中止等の指示に従うよう命じ,両親をして,同月6日午後4時36分頃の投与を最後に,それ以降,被害者にインスリンを投与させずにこれを放置させ,よって,同月27日午前6時33分頃,同県所在の病院において,被害者を糖尿病性ケトアシドーシスを併発した1型糖尿病に基づく衰弱により死亡させて殺害した。2 本件控訴の趣意主任弁護人椎野秀之及び弁護人福田貴也の控訴趣意は,訴訟手続の法令違反,事実誤認及び理由不備の主張である。また,被告人の控訴趣意は,訴訟手続の法令違反及び事実誤認の主張と解される。第2 訴訟手続の法令違反の主張について1 この点の控訴趣意は,要するに,原審において,①原審弁護人が,録音録画記録媒体も含むことを明示して供述録取書等の類型証拠開示請求をしたのに,録音録画記録媒体及び警察官調書が開示されないまま,5名の証人に対する尋問が実施された点,②原審弁護人が,死体検案書を含むことを明示して類型証拠開示請求をしたのに,被害者の死体検案書が開示されないまま,解剖医に対する証人尋問が実施された点,③母親に対する証人尋問が実施された際に,原審裁判長が,被告人が直接尋問することを認めなかった点について,これらがいずれも判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反に該当するというものである。2 録音録画記録媒体及び警察官調書が不開示のまま証人尋問が実施された点について⑴ この点の所論は,検察官立証の中核が関係者らの証人尋問である本件において,原審における証人の中で,母親,父親,母親の母親,母親の妹,K(原判決の呼称。被告人の元交際相手である知人)の5名は,いずれも重要証人であるところ,原審検察官は,原審弁護人の録音録画記録媒体も含むことを明示したこれら5名の供述録取書等の類型証拠開示請求に対して,これら5名に関する録音録画記録媒体26枚及び父親の平成28年1月8日付け警察官調書1通が存在したのに,いずれも「不見当」として開示せず,原審において,そのまま,これら5名に対する各証人尋問が実施されたが,証人尋問より前の段階で証人予定者の録音録画記録媒体を含む供述録取書等の開示を受けて,その供述内容や他の証拠との整合性,供述相互の整合性等を検討しなければ,証言内容の信用性に関する適切な反対尋問はできないから,上記のとおり,開示されるべき証拠が開示されないまま行われた5名に対する原審における証人尋問は,反対尋問を経ていない証人尋問と同視でき,憲法37条2項及び刑訴法320条の定める伝聞証拠排除法則に違反する違法な手続であり,かつ,それらが開示されていれば重要証人の証言内容は異なったものとなった可能性が高く,重要証人の証言に依拠した原判決の内容も異なったものとなった可能性が高いから,上記手続の違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるというものである。⑵ 当審における事実の取調べの結果によれば,原審における公判前整理手続において,原審弁護人が,原審検察官が取調請求した所論指摘の5名の各供述調書の証明力を検討するために,刑訴法316条の15に基づき,原審検察官に対し,録音録画記録媒体も含むことを明示して供述録取書等の適式な証拠開示請求をしたのに対し,原審検察官は,該当する録音録画記録媒体26枚及び父親の平成28年1月8日付け警察官調書1通に関し,それらの証拠が存在するにもかかわらず,「既に開示済みの証拠を除き,該当証拠は不見当」であるとして,存在しない旨を回答し,開示しなかったことが認められる(なお,原審検察官が,上記回答後に,原審弁護人に交付した証拠一覧表においては,それらの証拠のうち,父親の警察官調書1通は記載されていたが,録音録画記録媒体26枚は記載されておらず,実際に,これらの警察官調書及び録音録画記録媒体が弁護人に開示されたのは,当審段階に至ってからである。)。関係証拠によれば,この点の不開示は,原審検察官がそれらの証拠の存在を知りつつ意図的に行ったものではないとは認められるが,刑訴法316条の15が定める類型証拠開示の制度が被告人側の防御権の実質的保障に関係する重要な制度であること及びそれらの証拠を開示することの相当性に疑問を生じさせるような事情が窺われないことからすれば,結局のところ,原審検察官は,正当な理由がないのに,法律上開示すべき証拠を開示しなかったと言う外はなく,このような原審検察官の措置を前提に上記5名の者に対する各証人尋問が実施された原審裁判所における訴訟手続には法令違反が認められる。⑶ しかしながら,他方において,上記の5名の証人尋問に先立って,それぞれの供述録取書については,所論指摘の父親の警察官調書1通を除き,原審検察官から原審弁護人に開示されており,原審における実際の反対尋問がそれらの内容を踏まえて行われたものであったことに加え,原審においてなされた母親,父親等の重要証人の各証言の内容が,関係者間でやり取りされたメール等の内容,領収書や振込み関係の書類,通話履歴といった客観的証拠との整合性等を主軸として認められる高い信用性を有するものであって,仮に未開示の上記記録媒体等の内容を踏まえて各証人の記憶の程度や供述の不合理性,他の証拠との関係等に関する別の反対尋問が行われたとしても,それによって信用性が左右され得るようなものではないことなどに照らすと,これら5名の者について行われた原審における証人尋問手続が,反対尋問を経ていない場合と同視すべき程度の瑕疵を帯びているとか,憲法37条2項に反する違憲の手続であるとは到底言い得ないし,また,上記第2の2 記載の訴訟手続の法令違反がなかったならば原判決と異なる判決がなされたであろうという蓋然性があるとは認められないから,原審裁判所のこの点に関する訴訟手続の法令違反は,判決に影響を及ぼすことが明らかなものとも言えない。3 死体検案書が不開示のまま証人尋問が実施された点について⑴ この点の所論は,本件では被害者の死亡原因,死亡に至る機序,死亡日時が争いとなっているところ,原審弁護人が類型証拠開示請求をした死体検案書が存在するのに,これが開示されないまま,司法解剖を行った医師の証人尋問が実施されたために,原審弁護人は,同解剖医の証人尋問において,死亡原因及び死亡日時が曖昧な内容となっている死体検案書の記載内容に基づいて供述の信用性を弾劾することができなかったから,この証人尋問は,反対尋問を経ていない証人尋問と同視でき,憲法37条2項及び刑訴法320条の定める伝聞証拠排除法則に違反する違法な手続であり,かつ,この手続の違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるというものである。⑵ 当審における事実の取調べの結果によれば,原審公判前整理手続において,原審弁護人が,原審検察官が取調請求した専門医の供述調書(1型糖尿病の概要及び救命可能性が認められる時点等が立証趣旨)の証明力を検討するために,刑訴法316条の15に基づき,原審検察官に対し,被害者の死体検案書等について,適式な証拠開示請求をしたのに対し,同死体検案書が存在するにもかかわらず,原審検察官は,正当な理由がなくこれを開示せず(なお,原審検察官が,意図的に開示しなかったとは認められない。),そのまま,同死体検案書を作成した解剖医に対する証人尋問が実施されたことが認められる。この点の原審裁判所の訴訟手続には,上記第2の2 に記載したところと同様に法令違反が認められる。⑶ しかしながら,原審弁護人の上記類型証拠開示請求に対し,原審検察官から,上記死体検案書を除く複数の証拠が開示されており,上記解剖医に対する原審における実際の反対尋問がそれらの内容を踏まえて行われたものであったことに加え,本件における被害者の死因及び死亡に至る機序等に関しては,原審において,上記解剖医の他に,上記の糖尿病に関する専門医及び被害者が入通院していた大学病院における1型糖尿病の主治医に対する各証人尋問も実施されていて,その点に関する上記解剖医の証言内容は,それらの立場の異なる2人の医師の証言内容と符合することによって信用性が認められるものであること,後記のとおり,死亡日時については,原判決は,これらの各医師の証言に依拠して認定しているわけではないことからすると,原審における上記解剖医の証人尋問手続が,反対尋問を経ていない場合と同視すべき程度の瑕疵を帯びているとか,憲法37条2項に反する違憲の手続であるとは到底言い得ない。そして,以上に述べたところからすれば,直接死因を「不詳」,死亡日時を「平成27年4月27日早朝(推定)」とする上記死体検案書が類型証拠開示によって開示され,それを踏まえた別の反対尋問が行われたとしても,それによって原判決と異なる判決がなされたであろうという蓋然性はなく,原審裁判所の上記第2の3⑵記載の訴訟手続の法令違反が,判決に影響を及ぼすことが明らかなものとも言えない。4 母親に対する証人尋問において,原審裁判長が,被告人の直接尋問を認めなかった点について⑴ この点の所論は,母親に対する証人尋問が実施された際,被告人の反対尋問の場面において,原審裁判長が,被告人が証人である母親に対し直接個別に質問することを全く認めず,ビデオリンク方式の下,母親のいる別室との音声を切った状態で(母親には原審裁判長と被告人とのやり取りが聞こえない状態で),被告人から全ての質問事項を包括的に聴き取った上で,その質問事項の趣旨を咀嚼して,被告人に代わって質問するという方法を採り,また,被告人の追加質問の要望を2回までしか認めなかったのは,明らかに行き過ぎであり,被告人の反対尋問権を実質的に奪うものであって,刑訴法304条及び刑訴規則199条の4に違反する違法があり,かつ,この手続の違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるというものである。⑵ そこで検討するに,既に述べているとおり,本件事案の内容は,被告人が母親らに対し1型糖尿病に罹患していた被害者へのインスリン投与の中止等の指示に従うよう命じて被害者を死亡させたというものであり,当該証人は,被害者の母親である。そして,原審記録によれば,原審検察官から,母親が,本件事件以降,精神状態が非常に不安定で医師から適応障害,うつ状態と診断され,被告人と同じ空間に存在するだけで,その精神状態が極めて不安定になることが必須であることなどを理由に,母親に対する証人尋問の際には刑訴法157条の4に基づくビデオリンク方式及び同法157条の3に基づく被告人及び傍聴人との間の遮蔽の措置を採られたい旨の申立てがあり,また,母親が本件事件について話をする際には泣き出したり,過呼吸になったりすることがあり得,証人である母親の心身の状態等を考慮し,刑訴法157条の2に基づき証人尋問の際には関係者を付き添わせることが必要かつ相当である旨の申立てもなされ,原審裁判所は,いずれの申立ても理由があるものとして,ビデオリンク方式及び遮蔽の措置を採る旨の決定並びに証人尋問の際に付添人を付する旨の決定をして(これらの決定内容は,いずれも相当である。),実際の母親に対する証人尋問は,以上の各措置等が採られた下で,まず主尋問が行われ,次に原審弁護人に先立って被告人の反対尋問の場面を迎えたものである。他方で,それまでの審理の経過において,被告人は,原審第1回公判期日の冒頭手続の際,原審裁判長の発言禁止命令を無視して,大声で不規則発言を繰り返し,起訴状朗読の手続に入る前の段階で,原審裁判長から退廷を命じられたばかりか,原審第2回公判期日の主治医に対する証人尋問の際には,途中で不規則発言を繰り返した挙句,原審主任弁護人が事件関係者に対して性犯罪を行ったという誹謗中傷発言をして,原審裁判長から退廷を命ぜられていた。また,被告人は,母親に対する証人尋問に先立って行われた,父親その他の者に対する証人尋問の際にそれぞれ直接個別に反対尋問する機会を与えられたが,いずれの機会においても,自己の主張を展開させるばかりでほとんど質問をしようとせず,原審裁判長が介入してかろうじて質問の体裁にはするものの,主尋問で証人が証言した事項と関係のない事項を取り上げようとするなど,刑訴規則に則った相当かつ適式な質問方法を採ることができていなかった。そうすると,母親に対する被告人の反対尋問の機会を迎えた際には,本件事案の性質,証人と被告人の関係,証人の精神状態等からすれば,ビデオリンク方式及び遮蔽の措置並びに付添人を付する旨の措置を採っていても,被告人が直接母親に対して事件に関する問い掛けを少し行っただけで,母親の不安定な精神症状を深刻化させるおそれが具体的に認められていたと同時に,それまでの原審公判廷における被告人の言動等から,被告人によって相当かつ適式な方法による質問が行われる見込みは極めて薄かったものであるから(そのことは,この場面で,原審裁判長が被告人の聞きたい事項を聴取しようとしたのに対して,相変わらず被告人が自己の主張のみを次々に述べる態度であったことからも疑いのないところである。),原審裁判長が,被告人の反対尋問の場面で,被告人が母親に直接個別に質問することを認めず,被告人が質問したい事項を包括的に聴き取り,それを咀嚼して証人に順次質問したことに,相当性及び必要性があったことは明らかである。また,このような方法を採ることに対して,被告人及び原審弁護人からは何の苦情や異議の申立て等もなされなかったし,原審裁判長が実際に行った質問内容は,それに先立つ被告人の発言内容と対比して,被告人の意に沿うものであったと認められ,かつ,原審裁判長は,被告人から聞き取った十数点の質問を行った後に,2回にわたる追加質問を認めているのでもあるから,実質的に見れば,被告人の反対尋問権の制約の程度は極く小さいものであったと認められる。したがって,所論指摘の原審裁判長の措置は,正当に保障される被告人の反対尋問権の行使を違法に制約したものであったとは言えず,訴訟手続の法令違反には該当しない。5 以上のとおり,原審裁判所の訴訟手続に所論が指摘する判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反は認められない。6 なお,念のために付言するに,原審記録によれば,本件では,原審裁判所における手続において,原審検察官が,主位的訴因として,被告人が両親を道具として本件殺人の犯行に及んだ旨の間接正犯を主張し,予備的訴因として,被告人が両親と共謀して本件殺人の犯行に及んだ旨の共謀共同正犯を主張したのに対し,原判決は,「主位的訴因を基にして認定した罪となるべき事実」として,上記第1の1記載のとおり,被告人について,本件被害者に対する殺人罪に関し,母親との関係では間接正犯になり,父親との関係では共謀共同正犯が成立する(ただし,父親に成立するのは保護責任者遺棄致死の限度の共同正犯)旨を判示した。この点に関し,原判決は,本件のような犯罪形態においては,間接正犯が成立する場合には,その前提として指示・命令及びこれへの追従といった共謀が内包されているから,間接正犯の訴因の縮小認定として共謀共同正犯の訴因を認定することが許容され,また,本件の訴訟経過に照らして,共謀共同正犯を認定することは,被告人及び弁護人に対する防御上の不意打ちとはならない旨を説示している。本件控訴趣意には,この点の原審裁判所の判断に関する主張はないところ,本件の事案及び訴訟経過等に照らせば,本件において,訴因変更等の格別の措置を採ることなく上記第1の1記載の事実を認定しても訴訟手続上の違法は生じないとする原判決の見解は,当裁判所としても是認できるところである。第3 事実誤認の主張について1 この点の控訴趣意は,要するに,原判決が,①母親との関係で殺人の間接正犯を認めた点,②父親との関係で共謀共同正犯の成立を認めた点,③被告人の殺意を認定した点,④誤って認定した多数の間接事実により,殺人の実行行為や殺意を推認している点について,いずれも原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるというものである。2 母親との関係で殺人の間接正犯を認めた点について⑴ 原判決の説示原判決は,この点の理由として,要旨,次のように説示する。ア 関係証拠によれば,母親は,主治医からの説明により,被害者にインスリンを投与しなければ被害者が死亡する現実的危険性を認識していたのに,被告人の指示に従って被害者にインスリンを投与しなかったことが認められる。母親が,このような行動をとった理由について検討すると,被害者が死亡するに至るまでの経緯について,母親は,①当初,被害者が1型糖尿病を発症したことに衝撃を受けたが,被害者の命を守るため,インスリンの投与を毎日続けていた,②その一方,被害者の現状と将来を悲観し,精神状態が不安定となり,医師からは治らないと言われた1型糖尿病を完治させたいとの一心から,藁をも掴む気持ちで,難病治療を標榜する被告人に被害者の治療を依頼した,③被告人からは,被害者を必ず治せる旨断言され,治療は全て被告人の言うとおりに従う旨を約束させられた上,日頃,電話やメール等により,頻繁に被告人の指示に従わなければ被害者が助からない旨の脅しめいた言動をとられていた,④被告人から,被害者の身体から緑のインスリンが出ているとして,インスリンの不投与を指示されたなどと証言する。このような母親の原審証言は,被害者が1型糖尿病と聞いた母親が失神した旨の主治医の原審証言,血糖チェック表,「願書」,カレンダー,メール等の証拠に整合し,裏付けられていることからすると,信用できる。そうすると,母親については,1型糖尿病に罹患した被害者の人生を守りたいとの一心から,被害者にとってインスリン投与が毒であると被告人から言われたことも相まって,被害者の1型糖尿病を完治させる治療の一環であると信じたからこそ,これに従い,インスリンの投与を中止したものと認められる。原審弁護人は,被告人が,母親に対し,病院へ行くのは自由だとか,被告人の治療を受けるか否かは両親の自由な判断だなどといったメールを送信していることをもって,被告人は両親の判断に委ねようとしていた旨主張する。しかしながら,被告人と母親とのメールのやり取り全体をみれば,被告人は病院へ行くことが被害者に害悪がある旨を脅しめいた言葉を交えて母親に送っているのであるから,病院へ行くのは自由だとの言葉は,被害者に害悪をもたらす病院へ行くことと,被害者を完治させるという被告人の治療とを天秤に掛けさせるものであって,むしろ,母親を自分の治療に応ずるよう仕向けたメールと認められる。イ 母親が,被害者(息子)の人生を守るため,1型糖尿病を完治させたいとの思いから,これを実現できると言う被告人を信じようとした心情は,市民感覚としても十分に理解できる。すなわち,母親は,被告人の指示に従いさえすれば,インスリンを投与しなくても,被害者の1型糖尿病が完治すると信じ込んでいた以上,その余の冷静で正常な判断が相当程度鈍った精神状況に陥っており,もはや被告人の指示以外の行動を取り難い心理状態にあったものと認められる。他方,被告人が母親を自分の意のままに動くよう強いていたことは明らかである。このような,本件当時の母親の心理状態と被告人の意図に照らせば,母親は,被害者にインスリンを投与させないとの被告人の意思を心理的抵抗なしに実現に移したものであると同時に,被告人にも利用意思があったものと認められる。ウ したがって,母親は,いわば道具であるとともに,被告人にもその旨の認識があった以上,母親との関係においては,被告人にインスリン不投与という実行行為の間接正犯が認められる。⑵ 当審の判断ア 原審記録に基づき検討すると,原判決の上記要約摘示した認定,判断に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。イ 所論は,母親は,被害者の病状と医学的治療法を正しく認識しており,また,母親と被告人とのメールのやり取りの内容によれば,原判決が実行の着手を認定した平成27年4月6日に至る過程において,母親にとって被告人は少しも疑問を述べられないほどの絶対的な存在ではなく,被告人も絶対に病院に行ってはならない旨の指導は行っておらず,同月6日以降においても,母親にとって,被告人は一切の疑念を差し挟むこともできないような絶対的存在ではなかったことなどからしても,同日頃の時点において,母親に自由意思がなく被告人の指示に機械的に従わざるを得ない状態であったと評価することはできないと主張する。しかしながら,原審記録によれば,母親は,被害者が現代医学では完治できずインスリンの投与を将来にわたって継続しなければならない1型糖尿病に罹患したことを知って衝撃を受け,藁をも掴む気持ちで,非科学的な力で難病を治癒させることを標榜していた被告人に被害者の治療を依頼して,すがっていたものであるが,平成27年4月6日に至るまでの間においても,被告人から,メール又は口頭で,頻繁に,被害者の病を治すためには,被告人の指導に全面的に従う必要があるなどと言われ,その後,インスリンは毒だから被害者へのインスリン投与は中止しなければならないなどと命じられ,病院へ行ったら3年はもたないなどと言われ,医師の指導に従うことも禁じられ,更には,父親が被告人の指導に半信半疑になると,被害者を死神の自縛(呪縛の意と解される。)から解きほぐして欲しかったら,被告人の指導に従うしかないなどと言われ,更には,被害者の症状悪化により,同年3月中旬に再入院することとなり,退院後に一時,インスリン投与を再開させると,被告人から,指導に従わなかったことを再三にわたって責め立てられた上,被害者の症状の悪化は被告人の指導を無視した結果であるなどとも言われて,同年4月6日,改めて被告人の指導に従うことを約束し,その後は,被害者を救うためには,被告人を信じてその指導に従う以外にないと一途に考えていたことが認められる。また,被告人は,同年2月初旬に一度被害者と会った以降は,被害者が重篤な状態となった同年4月26日夕方までの間,被告人の治療は神霊の世界で治すもので遠隔操作をしているという説明をし,メール等を用いて,インスリンを投与するな,医師の指導に従うな,被告人を信じなければいけないといった指示を出すだけといった対応であったのに,母親は,被告人から請求されるがままに,多数回にわたり,被告人に報酬として多額の金銭を支払い続けている。そして,同年3月中旬に被害者が再入院した際,担当医から,インスリンを投与しなければ,被害者が死ぬ危険性があることの説明を受けたにもかかわらず,その後もインスリンの不投与を続けている。加えて,母親は,一貫して被害者の快復を強く望んでいたのであるが,被害者の症状が悪化していたのに,病院の診察予定日であった同年4月22日に被害者を病院へ連れて行かず,その後,被害者が衰弱し,死亡の一,二日前に容態が深刻となった段階に至っても,被告人の指示を仰ごうとすることに必死で,最終的に駆けつけた母親の妹が被害者の容態を見て救急車を呼ぼうと言うまで,病院に連れて行こうとしていない。これらの事情によれば,同月6日の時点において,母親が被告人を妄信し,その指示に機械的に従わざるを得ない状態にあったと評価することができる。したがって,被告人に母親を道具とする間接正犯の成立を認めた原判決の認定,判断に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。3 父親との関係で共謀共同正犯の成立を認めた点について⑴ 原判決の説示原判決は,この点の理由として,要旨,次のように説示する。ア 父親は,①平成27年4月6日当時,インスリンの不投与という被告人の指示に従ったために被害者が発症当時と同様の病状となって同年3月中旬には再入院をせざるを得なかったという事実を踏まえ,血糖値の測定さえさせない被告人のやり方に疑問を持っていた,②その疑問を母親(妻)に言って話し合ってみたものの,母親から,もう一度信じて被告人の指示する治療に従って被害者の1型糖尿病を治したいなどと強く言われ,母親の一途な思いに負けて,被告人の治療には半信半疑の状態ではあったが,再びインスリンの不投与を決断した,③同時に,被告人の治療を疑っていることを被告人に見透かされれば,被告人から被害者の治療を駄目にされるのではないかとおそれたなどと証言する。このような父親の原審証言は,信用性に疑いを差し挟むべき点は見当たらず,信用できる。そうすると,父親については,被告人の治療には半信半疑ではあったものの,被告人の指示する治療に従いたいとの母親(妻)の強い思いに抗しきれず,また,被告人を疑っていることを見透かされれば被告人に被害者に対して害悪を加えられるのではないかとの思いから,インスリンの不投与という被告人の指示に従う決断をしたものと認められる。イ 以上によると,父親は,被告人の指示や言動による影響を相当程度受けてはいたものの,その程度は母親程大きくはなく,被害者にインスリンを投与するとか,被害者を病院へ連れていくといった行動をとることは不可能ではなかったと認められ,父親を道具として利用したとまで認定することには躊躇を覚える。ウ そして,関係証拠によれば,被告人は,①被害者の1型糖尿病を完治したいとの両親の依頼に応じて,その旨の契約を結び,被害者の治療を引き受けていること,②その治療に絡み数百万円に上る多額の金銭を得ていること,③母親に対し,日頃,電話やメール等で,病院の治療は害悪であるとか,インスリンは毒であると申し向けるなどして,自らの指示に従うよう積極的に働きかけていた中で,従前インスリンの投与をしていた両親に対し,インスリンの不投与を指示したことが認められる。そうすると,被害者へのインスリンの不投与の指示は,病院では行わない方法によって難病を治すことができると標榜する被告人の思いを実現しようとの積極的な働きかけの一つであったと認められる。したがって,被告人の上記指示は,被害者へのインスリンの不投与という殺人の実行行為に対して初動的かつ主導的に強い影響を与えたものとして,まさに正犯の行為と評価すべきである。また,被告人の上記指示は,母親を通じて父親に伝わり,父親がその指示に従う決断をしたのであるから,順次共謀となる。なお,父親については,殺意が認められず,保護責任者遺棄の認識・認容に止まるから,保護責任者遺棄致死の限度で共同正犯が成立する。⑵ 当審の判断ア 原審記録に基づき検討すると,原判決の上記要約摘示した認定,評価に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。イ 所論は,共謀共同正犯における「謀議」は,共同して犯罪を行う意思を形成するだけの共謀が必要であり,単なる意思の連絡又は共同犯行の認識の存在だけでは足りないと解すべきところ,父親は,少なくとも平成27年1月1日以降は,被害者が死亡するまで,一度も被告人と顔を合わせたことも,メールのやり取りをしたこともなく,また,被告人が母親を通じて父親に対し,具体的指示を行った形跡は窺われず,父親は,母親の熱意に押されて被告人の治療を受けるという母親の方針を容認したにすぎないのであって,被告人と父親の間に「単なる意思の連絡又は共同犯行の認識の存在」を超える共謀は認められないと主張する。しかしながら,被告人は,母親のみならず父親との間でも,被害者の治療を引き受ける旨の契約を結んだものである上,契約後に父親と直接話をすることはなく,メールのやり取りもなかったとはいえ,母親から被告人に伝えられた母親と父親の間のやり取りに関する事項の内容等からすれば,被害者の病状や治療に関して両親の間で日頃から意思の疎通が図られるであろう旨を十分に認識していたことは,関係証拠上容易に推認できるところである。被害者へのインスリン投与の中止という被告人の指示に反して父親がインスリンを投与したりすれば,いくら母親に指示を守らせても意味がないことからすれば,被告人は,母親に対してインスリンの投与中止等を指示したのみならず,父親に対しても,母親を介して,同様の指示をする意図を有し,その指示をしていたものと認めることができる。他方において,父親が,被害者へのインスリンの投与中止を継続するという実行行為に及んだのは,まさに被告人の母親に対する直接の指示を伝え聞いたからに外ならない。したがって,被告人に父親との間で母親を介した順次共謀による共同正犯の成立を認めた原判決の認定,判断に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。4 被告人に殺意を認定した点について原判決の説示原判決は,被告人に未必の殺意を認めた理由として,要旨,次のとおり説示する。母親やS(原判決の呼称)の原審証言等によれば,被告人は,平成26年12月末頃に被害者を治療する契約を結んだ当時から,被害者が1型糖尿病に罹患しており,定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性を認識していたと認められる。そして,母親の原審証言及び被告人と母親間でやり取りしていたメールの内容等によれば,被告人は,自らの指示により両親が被害者へのインスリン投与を中止した以降,被害者の容態が1型糖尿病発症当時と同様な状態に悪化して再入院せざるを得なくなった状況や,また,平成27年4月7日からのインスリン不投与以降,被害者の病状が再び再入院当時のような状態に悪化していく状況をいずれも認識していたにもかかわらず,被害者を病院で治療させようとせず,むしろ,自らの治療が成功しているとの態度をとり続けていたことが認められる。この点,被告人は,長年にわたってほぼ無償で,糖尿病を含む難病治療をしてきており,被害者に殺意を抱くはずがない旨を供述するが,未必の殺意を否定する理由にはならない。したがって,被告人は,定期的なインスリン投与がなければ被害者が死亡する現実的な危険性があると認識し,かつ,インスリン不投与の指示を継続し,被害者を病院に行かせようとしないなどしてその危険性が実現することを認容していたものと推認することができる。そして,この推認を覆すに足りる事情があるかどうかを検討しても,そのような事情は認められない。そうすると,被告人は,インスリン不投与による被害者の死亡を認識し認容していたもので,未必の殺意が認められる。当審の判断ア 原審記録に基づき検討すると,原判決の上記要約摘示した認定,評価に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。イ 所論は,まず,原判決がその認定根拠としている「願書」の記載等の点は,いずれも,平成26年12月末頃の契約当時,被告人が,被害者は定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性があることを認識していたと認定する根拠にはならず,被告人は,インスリン不投与により被害者が死亡する危険性を認識していなかったと主張する。しかしながら,母親は,原審公判廷で,平成26年12月末頃に被告人と「願書」を交わして被害者の治療に関する契約を結んだ際に,被告人に対し,1型糖尿病に罹患している被害者はインスリンを打ち続けなければ生きられないことを話したと証言しているところ,原判決は,要するに,信用できる母親の上記原審証言の外に「願書」の記載及び上記Sの原審証言等に基づき,被告人が,平成26年12月末頃には,被害者が1型糖尿病に罹患していることや1型糖尿病を罹患している者にはインスリンの投与が必要であることを認識していたという事実を認定するとともに,母親の上記原審証言に基づき,被告人がその頃から定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性についても認識していた事実を認定したものと解されるのであって,「願書」の記載等から後者の事実を推認しているわけではないから,所論の指摘は当たらない。本件では,原判決が,平成26年12月末頃の契約当時,被告人が,被害者は定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性があることを認識していたと認定した点に不合理な誤りは認められない。なお,被告人が,平成27年3月9日,母親に対し,被害者はインスリンを投与,注射しなければ生きられないなどとの記載のあるメールを送信していることからしても,遅くとも原判決が被害者の死亡につながる両親への指示を被告人が行ったとする期間の始期である同年4月5日頃に,被告人が,被害者が定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性があることを,認識していたことは明らかである。ウ 次に,所論は,①原判決は,父親は被害者の死の危険を認容したことがないとして殺意を否定しているが,そうであれば,被告人は,被害者と一緒に生活していた父親と異なり,母親を通じて間接的に被害者の様子を伝え聞いていたにすぎないのであるから,被害者の死の危険に対する事実認識において,被告人の認識の程度は父親の認識の程度を上回るものではなく,また,自らの「治し」行為により被害者が治癒するものと信じていたのであるから,なおさら被害者の死の危険を認容したことがなく,殺意がないと言うべきであり,また,②原判決は,母親はインスリン不投与の指示こそが被害者の1型糖尿病を完治させる治療であると信じていたから殺意がないとしているが,そうであれば,被告人も同様に,自らの「治し」が被害者の1型糖尿病を完治させる治療であると信じていたのであるから殺意がないと言うべきであって,両親の殺意を否定しながら,被告人の殺意を肯定することは整合性を欠く判断であると主張する。しかしながら,原判決は,父親や母親は,いずれも被害者の快復を強く願い,治療のために被告人の指示に従っていたものであって,殺意が認められないことは明らかであるのに対し,被害者を治癒させることができると信じて治療していたなどという被告人の原審公判供述はおよそ信用できないと判断したものであって,このような原判決の認定,判断に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められず,原判決の判断は整合性を欠くとの指摘は当たらない。エ また,所論は,被害者が平成27年2月10日頃にインスリンの投与を止めても1か月以上にわたって死亡することなく,その後の治療により回復したという事実について,被告人は同年3月下旬頃には認識していたのであるから,被告人によるインスリン不投与の指示の始期とされる同年4月5日から被害者が死亡した同月27日までの22日間において,インスリンを投与しなくても,その後適切な治療を受ければ死亡することなく回復すると考えていたと見るべきであると主張する。しかしながら,被告人と母親とのメールのやり取りによれば,被告人は,母親が被害者を病院に連れて行って医師の治療の下に置いたことを強く非難し,それを受けた母親から,改めて被告人の指導に従うことを約束する旨の返答を受けたことが明らかなのであるから,被告人が,同年4月5日以降の時点で被害者が再び医師の治療を受けることを念頭に置いていたという所論は採用できない。オ 更に,所論は,本件と同様に殺人の不真正不作為犯の成否が争いとなった事案について,東京高裁平成15年6月26日判決(高等裁判所刑事判決速報平成15年85頁)は,「殺人罪においても,具体的な動機が認定できなければ,故意が認定できないというわけではないが,少なくとも何らかの動機が合理的に想定し得るというのでなければ,行為者が殺意を有していたことには,通常合理的疑いが生じると考えられる」と判示しているところ,原判決は,被害者の死亡を容認するだけの強い動機や何らかの合理的に想定し得る動機を示すことなく被告人に殺意を認定している,また,被告人は被害者の死亡によって何ら利益を得ることができないどころか,これまで被告人の治療によって病気が治ったと信じてきた者からの信頼を失うなど多大な不利益を受ける立場にあったと主張する。しかしながら,所論が引用する上記裁判例は,当該被害者が医師による治療を打ち切れば死亡するおそれが大きいことを知りながら,病院から連れ出してホテルの一室に運び込んだ時点における殺意の有無が問題となった事案であり,被告人が,インスリンの投与をしなければ死亡することを知りながら,インスリンを投与することなく被害者の治療ができると母親が信じて被告人の指示に従っていることに乗じて,更に,母親にインスリンの投与の中止等の指示に従うように命じた本件とは事案を大きく異にする。上記裁判例の言うとおり,具体的動機が認定できなくても殺意を認定することは妨げられないのであり,また,同裁判例の表現になぞらえれば,本件は,動機の推認ができなくても合理的疑いなく未必の殺意を認定できる経過の事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
東京高等裁判所 第12刑事部
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[下級] [民事] 平成28(ネ)381  554ViewsMoreinfo
国家賠償等請求控訴事件
平成28(ネ)381
本件は,平成23年3月11日に発生した平成23年東北地方太平洋沖地震後の津波により,石巻市立大川小学校に在学していた児童74名及び教職員10名が死亡した事故に関して,死亡した児童のうち23名の父母である第1審原告らが,第1審被告市の公務員であり,第1審被告県がその給与等の費用を負担していた同小学校の教員等に児童の死亡について過失があるなどと主張して,第1審被告らに対し,国家賠償法1条1項,3条1項又は民法709条,715条1項に基づき,損害賠償として,総額22億6245万7642円(別紙2「請求額及び認容額一覧表」(以下「別表2」という。)の「原審請求額」欄に記載のとおり,第1審原告A11の請求は6245万7642円を限度とする一部請求,第1審原告A11を除くその余の第1審原告らの請求は,児童1名当たり1億円の一部請求)及びこれに対する遅延損害金(上記地震の日である平成23年3月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員)の連帯支払を求めるとともに,第1審被告市に対し,公法上の在学契約関係に基づく安全配慮義務違反等があったと主張して,債務不履行に基づき,同内容の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
仙台高等裁判所 第1民事部
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[知財] [民事] 平成29(ネ)10095  267ViewsMoreinfo
債務不存在確認本訴請求,特許権侵害差止等反訴請求控訴事件(特許権・民事訴訟/卵凍結保存用具および筒状部材保持器具)
平成29(ネ)10095
本件は,次の本訴請求及び反訴請求からなる事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成29(行ケ)10217  208Views
審決取消請求事件(商標権・行政訴訟/咲蔵)
平成30年4月26日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成29(行ケ)10010  200Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/分子のアレイから複製又は派生物を作製するための装置及び方法とその応用)
平成30年4月26日
知的財産高等裁判所
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[知財] [民事] 平成27(ワ)36405  229ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件(不正競争・民事訴訟)
平成27(ワ)36405
本件は,原告が,被告会社において原告の商品である婦人服の形態を模倣して婦人服を販売等したことが不正競争防止法(以下,単に「法」という。)2条1項3号所定の不正競争行為に当たり,被告Aは悪意・重過失により被告会社の代表取締役としての任務を懈怠して被告会社の上記行為を招いたと主張して,被告会15社に対しては法4条,5条1項に基づき,被告Aに対しては会社法429条1項に基づき,損害賠償金2億9098万0962円(法5条1項により推定される損害額2億6452万8147円及び弁護士費用相当額2645万2815円の合計額)の一部である2億6389万9139円及びうち2億4972万6270円(一部請求額から当初主張していた弁護士費用相当額を除いた額)に対す20る不正競争行為時以後である平成27年7月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
東京地方裁判所
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[知財] [民事] 平成28(ワ)44243等  256ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件(著作権・民事訴訟)
平成28(ワ)44243等
本件は,①原告が,自らの作成に係る別紙1(甲12の1。以下「本件本体部分」という。)及び別紙2(甲12の2。以下「本件ライブラリ部分」という。)5の各ソースコードから成るプログラム(以下「本件プログラム」という。)の著作権を有しているところ,被告において原告の許諾なく本件プログラムを複製して販売していることが,原告の上記著作権(複製権又は譲渡権)を侵害すると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金209万3600円及びこれに対する不法行為日以後である平成28年8月16日から民法所定の年5分の割10合による遅延損害金の支払を求める(本訴)のに対し,②被告が,原告において被告と交わした電話での通話内容(原告が被告による上記著作権侵害を主張する内容である。)を録音してインターネット上で配信等した行為が被告の名誉権及びプライバシー権を侵害すると主張して,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償金55万円及びこれに対する不法行為後である平成29年3月1日から支払15済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(反訴)事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
東京地方裁判所
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[知財] [民事] 平成29(ワ)5274  336ViewsMoreinfo
特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請求事件(特許権・民事訴訟)
平成29(ワ)5274
本件は,原告らが,被告らに対し,原告らによる原告製品の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための20展示を含む。)につき,被告クアルコム インコーポレイテッド(以下「被告クアルコム」という。)が保有する特許権の侵害に基づく損害賠償請求権及び上記特許権に基づく実施料請求権を被告らが有しないことの確認を求める事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
東京地方裁判所
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[知財] [民事] 平成28(ワ)25537  245ViewsMoreinfo
特許法に基づく職務発明の対価請求事件(特許権・民事訴訟/シールド電線およびその製造方法)
平成28(ワ)25537
本件は,原告が,被告在勤中に行った発明2件に係る特許を受ける権利を被告に承継したにもかかわらず,被告から各承継に係る相当対価額の支払を受けていない旨主張して,被告に対し,上記各承継時において適用される平成16年法律25第79号による改正前の特許法(以下,単に「特許法」という。)35条に基づき,職務発明の相当対価額合計3810万5187円,及び,うち後記1(2)ア記載の発明に係る相当対価額1584万5187円に対する平成3年9月30日(同発明について承継補償金が支払われた日から3年後の日)から,うち後記1(2)イ記載の発明に係る相当対価額2226万円に対する平成12年5月19日(被告が同発明について特許出願をしないと決定したとする日から3年後の日)から,5各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
東京地方裁判所
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[知財] [民事] 平成29(ワ)29099  298ViewsMoreinfo
損害賠償等請求事件(著作権・民事訴訟)
平成29(ワ)29099
本件は,法人格なき社団である原告が,被告に対し,被告が別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)を別紙書籍目録記載の各書籍(以下「本件書籍」と総称する。)に使用し,本件書籍を販売したことが本件写真に係る著作権5(複製権,翻案権,譲渡権又は著作権法28条に基づく二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)侵害に該当し,原告は本件写真の著作権者から本件写真の著作権及び被告に対する上記著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権(譲受日までに発生していた請求権)を譲り受けたと主張して,著作権法112条1項及び2項に基づく本件書籍の印刷,頒布の差止め及び本件書籍のうち本件写真10を掲載した部分の廃棄並びに民法709条及び著作権法114条3項に基づき,一部請求として,損害賠償金220万円及びこれに対する不法行為日(本件書籍の発行日)である平成21年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
東京地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成28(わ)1250  287ViewsMoreinfo
電子計算機使用詐欺,詐欺
平成28(わ)1250
本件各公訴事実の外形は争わないが,被告人Xは,A1グループのオーナーにしてA1及びA2の代表取締役会長でありいわゆるワンマン経営者として経営の主導権を掌握していたGから,両社の資金の管理及び運用を一任されていたのみならず,裏金を作るために会社資金を簿外で運用するよう指示もされており,これに基づき判示の送金及び小切手の発行依頼等をしたものであるから,電子計算機使用詐欺の各公訴事実において作成した電磁的記録は不実ではなく,また,詐欺の各公訴事実において小切手の発行依頼等の権限を有しており,いずれについても無罪であると主張するものと解され,同Xはこれに沿う供述をする。3 被告人Yについて弁護人は,要するに,被告人Yが関与したとされる電子計算機使用詐欺の各公訴事実の外形は争わないが,同Xの上記主張に加え,仮にGの指示等の事実が存しなかったとしても,同Yとしては,各公訴事実にかかる送金はいずれもGの承諾のもとでA1グループの正当な業務としてなされたものと認識していたから,電磁的記録が不実であることの故意も,同Xらとの共謀もなく,いずれについても無罪であるというもので,同Yはこれに沿う供述をする。4 争点の所在等ところで,被告人Xの主張は,自分はGの指示・承諾のもと判示の各行為を行ったというものであるが,A1もA2も株式会社であるから,代表者であるGといえども,無制限にその資産を流出させることはできない。他方,本件にかかる送金等につき取締役会の決議・委任がなかったことは関係証拠から明らかであり,争いもない。またGが判示インターネットバンキングの操作や小切手の振出しをする具体的担当者でなかったことも後記認定のとおりである。そうすると,被告人Xの主張は,A1やA2の資金を同社に無断で流出させたことにつき,これが判示の電子計算機使用詐欺等にあたるか業務上横領にあたるかはともかく,Gと共謀してこれを行ったというだけであるともいえる。しかし,本件では,弁護人らが主張するとおり,A1及びA2における最終的経営判断は,実際には,取締役会ではなく,A1グループのワンマン経営者として実権を握っていたGの一存に係っていたことが強くうかがわれる(この点,A1の常務取締役であるHは,主尋問の当初,同社等の取締役会が正常に機能していたかのような供述をしたが,関係証拠に照らし全く信用できない。)。そうすると,本件では,被告人らが主張するとおり,判示各行為についてGの指示ないし承諾があったとすれば,事後的に取締役会の承認を受けられる可能性が高く,かかる事情を知悉していたと認められる被告人らにおいては判示各犯行の故意が欠けることになるというべきである。そこで,まずは上記のGによる指示ないし承諾の有無を検討し,その上で,被告人Yの認識を検討することとする。第2 検討1 前提事実(信用性が争われていない同意書証等から容易に認め得る事実)A1及びA2についてA1は,その株主総会において議決権を行使することができる総株式の2分の1以上をGが所有している。また,A2は,その発行済み株式の過半数をG及びA1が所有する会社である。両社の代表取締役はGらが務め,また,A2の取締役は全員A1の取締役が兼任している。両社の目的は判示のとおりである。(以上,甲3,4,H3丁)被告人Xについて被告人Xは,平成16年4月頃にA1の総務部,財務,経理部の統括部長を,平成24年4月には同社の取締役を務めていた。また,被告人Xは,同時期に,業務委託契約により,A2の財務,経理についても担当していた。(以上,甲3,同X第11回2丁,6丁,H2から5丁,10,11丁)ZについてZは,A1の従業員であったもので,平成16年頃には,A2の財務,経理を担当し,A2が開設していた銀行口座のインターネットバンキング(本件に関するもの)の入力及び承認手続を一人で担当していた(甲26〔第5の事実について〕,39〔第1の2,第2,第4,第6の事実について〕,40〔第6の事実について〕,53〔第1の1の事実について〕,H5,6丁,Z1から3丁)。被告人Yについて被告人Yは,平成16年頃から平成25年5月10日(同月16日に登記)に解散するまでの間,A3(平成23年3月1日にA3’に商号変更。)の代表取締役(解散後,清算人となっている。)であった(甲15,16,18)。被告人Yは,A1グループに関連する施設等の建設工場等を受注していた(同Y第10回7丁以下,G7,8丁)。本件各公訴事実に関する資金の流れア 第1事実(平成29年2月27日付け公訴事実)関係被告人Yは,平成19年以降,知人のIの紹介で,J評議会が計画したサーキット場施設建設事業(以下「海外サーキット事業」という。)があることを知り,I並びにシンガポールの事業者及び弁護士との合計4名で同事業に共同参加することとして工事の受注業者としてK社を共同設立し(なお,A3の目的にも平成20年にモータースポーツに関するイベントの企画等が加わっている。甲15)て上記事業落札に向けた交渉等を進め,平成22年3月26日,K社等がこれを落札したことから,落札の条件となっていた上記事業予定地の賃借料の支払が必要となった(甲59,60,同Y第9回27から34丁)。その後,前記事業の資金集めを担当していたIが逮捕されることとなり,被告人Yが平成22年4月6日にそのことを同Xに伝えたところ,同Xは,翌7日,同Yに,A1から資金を準備する旨を伝えた(同Y第9回28丁,35から39丁,同X第11回42から50丁)。そして,被告人Xが,同月9日,A1の口座から1億円余りをシンガポール側に送金する手続をした(弁C19,20,同Y第9回43丁,同X第11回50丁)後,判示第1のとおり,同月28日(甲49別紙1-②,④,⑤参照),A2の2つの銀行口座から,同Yが管理する宗教法人D名義の口座(C銀行cc支店)に,簿外で,振込人名「α」名義で,28億円及び1億円の合計29億円につき判示第1(1,2)のとおり振り込まれる手続が行われ,同月30日にその入金手続がされた(甲49)。前記D名義の口座における,この振込入金直前の残高は483円であり,同日,同額が引き出されてそのほぼ全額に当たる金額がA3(A3’)の口座に入金され,このうち28億6800万円余りが外国送金されたほか,3167万円がA3の別の口座に入金され,内400万円が被告人Yらの役員報酬等に費消された(甲49,50)。イ 第2ないし第4の各事実(平成29年3月24日付け起訴状記載の各公訴事実)関係(被告人Xのみ関係)被告人Xは,Gを介して知り合ったLとともに,平成22年1月15日,Lを代表取締役として,ゴルフ場,ホテル等の経営やコンサルタント等を目的とするFを設立した(甲83,84,G3丁)。被告人Xは,同年11月頃,Lから,Fの事業として,「Mゴルフクラブ」の売却先の斡旋を持ち掛けられていたところ,平成23年5月10日頃に,Lに対し,上記ゴルフクラブの買収資金を海外のファンドから調達できるといった理由で,同クラブをFが買い取りたい旨伝えた(甲83,同X第11回64から66丁,72丁)。被告人Xは,同年7月15日以降,判示第2から第4のとおりの方法で,上記ゴルフクラブを買い取る資金として,A2の銀行口座から,「A4」という,同Yが設立し,同Xが役員・株主をしている会社(あるいはこれと同名の会社)名でFの銀行口座に簿外で送金し,あるいはA1名義の小切手の発行を簿外で受けるなどして,合計12億2000万円をFに支払った(甲69,70,83,乙15,同Y第10回30丁,同X第11回100丁,131,132丁)。ウ 第5の事実(平成28年12月21日付け訴因変更後の公訴事実〔被告人X〕及び同日付け起訴状記載の公訴事実〔同Y〕)関係被告人Yは,賃貸マンション建設資金としてE銀行から平成15年頃にA3名義(連帯保証人は同Y外1名)で借り入れていた債務の返済を滞らせ,平成24年6月の時点での借入残高が約3億5000万円となっていたが,その後も弁済が滞ったため,同年12月4日期限の利益を喪失した(甲23,24〔特に添付資料3〕)。被告人YやA3(A3’)の顧問であるというNは,その後,同銀行の担当者に「マレーシアからお金が入ってくるので,もうちょっと待ってくれ。」等と述べていたが,返済はなされず,同銀行は,A3が所有し,同銀行が根抵当権を設定し,その後同Yが実質的な経営者である株式会社O(甲17,18,以下「O」という。)に所有権が移転していた不動産(①京都市d区e町所在の物件と②京都市f区g町所在の物件。甲第24号証の添付資料参照。)について,平成25年11月,競売を申し立て,同年12月4日開始決定がなされた(甲24)。Nらは,その後も,同銀行の担当者に「マレーシアからお金が入ってくるから,そしたら競売を取り下げてくれよ。」等と述べ,また,その後,被告人Yは,Nとともに同銀行を訪れ,「3億9000万円は何とか用意できた。」とか,「①の方の物件だけでいいから競売を取り下げてくれ。一番最初に建てた物件やし,思い入れがあるんや。」等と述べた(甲24)。その後,平成26年9月24日,前記D名義の口座に,A2から振込人名「α´」名義で4億円の簿外送金がなされ(判示第5の事実にかかる送金),その内3億9000万円が被告人YによってE銀行の口座(融資雑預口)に振り込まれた(甲13,14,21,24,同Y第9回47から52丁)。同銀行は同日前記①の物件についての競売申立てを取り下げた(甲24〔特に添付資料5〕)。エ 第6の事実(平成29年2月6日付け起訴状記載の公訴事実)関係被告人Yは,上記E銀行への貸金債務を返済した際に,完済には3000万円足りない旨伝えられた(甲24,同Y第9回52,53丁)。そこで,被告人Xは,同Yから連絡を受けて,平成26年10月8日,前記借入金の返済資金として,Zに指示をして,A2から「α´」という振込人名で前記D名義の口座に3000万円を簿外送金し,同Yは,このうち2500万円を前記借入金の返済分に充てたほか,500万円を自己の経営する会社の従業員の給与の支払いなどに充てるなどした(甲36から38,同Y第9回47から54丁)。同銀行は,追加の弁済があったことから同年11月12日に上記②の物件についての競売申立ても取り下げた(甲24〔特に添付資料5〕)。本件各公訴事実後の事情上記の各送金後,平成27年1月21日,Gの自宅に,被告人XがA1の資金を横領している旨の内容が記載された書面が届き,これを契機に本件が発覚した(H6丁,G15,16丁,同X第11回73丁,114丁等)。2 G(A2)の指示ないし承諾の有無判断を要する事項被告人Xは,上記のとおり,A1及びA2の経営者であるGから,A1及びA2の会社資金の管理及び運用を一任され,さらに,Gが自由に使える裏金を作るために資金の簿外運用を指示されたと供述する。これに対して,Gは,そのような一任の事実や簿外運用の指示はしていないと供述している(G5丁,7丁等。)しかしながら,関係証拠によれば,GはA1の創業者であり,いずれも非上場会社である同社及びA2の株式の過半数を所有するとともに両社の代表取締役の地位にあり,前記(第1の4)のとおり,意のままにその経営を行い,実権を掌握していたと認められ,被告人Xはその部下としての立場にあったのであるから,仮にGが同Xに両社の資金の管理及び運用を委ねたとしても,それは両社(あるいはA1グループ)ないしGの利益のためであったことは明らかであり,同Xが全くの自由裁量を許されていたものでないことは当然である。被告人Xの弁護人は,Gが第三者に対し「会社の財務・経理・資金は全て同Xに任せている」旨よく話していた旨主張し〔弁論要旨5丁,12丁等〕,同Xもこれに沿う供述をしている〔同X第11回9,10丁,86,87丁等〕が,そのような発言が仮にあったとしても,これが経営判断に属する資産運用等まで同Xに一任しているという趣旨などでないことも経験則上明らかである。加えて,本件にかかる送金及び小切手の振出等はいずれもいわゆる簿外取引であったと認められることも併せ考慮すると,本件において決定的に重要なのは,これらの取引が,GやA1グループのための裏金作りの一環としてなされたとの合理的疑いが生じるか否か,Gの前記証言にこの観点からの疑いを差し挟む余地があるか否かである。裏金作りの方法として不合理であることそこでこのような観点から検討を続けるが,関係証拠によれば,A1及びA2はいわゆる無借金経営の状態にあり,業績は好調であったと認められ(甲51,52。甲67,71も参照),現に,被告人Xも,Gやその妻(A1の副会長)の求めに応じるまま,それぞれ数億円もの金銭を退職金や役員報酬名下に渡していたなどと供述しており(同X第11回11,12丁),それだけの十分な資金を有していたことは一層明らかである。さらに,被告人X自身も,過去に,取引先業者と通謀して伝票を操作するなどの方法により,Gの裏金を用立てたことがあると供述している(弁A1〔11,12丁〕,同X第11回121丁)。そうすると,Gがいわゆる裏金を欲し,被告人Xがこれに応じようとしたというのであれば,同様に,適宜の名目を設け,あるいは会計帳簿を操作し,さらには営業上の利益を分散させて一部を隠す(同Y第9回61丁,同X第11回135丁)などするのが合理的かつ自然であるというべきである。ところが,被告人Xの弁解は,本件においては,例えば海外サーキット事業では銀行から有利子で資金を調達した上で,以後30年間に渡り海外サーキットに関する印刷業務を受注することで投資を回収しようとしたというのであって,裏金目的の会計操作としてはあまりにハイリスクかつ迂遠で,不合理かつ不自然というべきである。なお,A2からG個人の口座に平成23年12月29日に5000万円が送金されている(甲95)が,この点についても,同年8月31日に,G個人の口座からA2の銀行口座に1億円が送金されていること(甲95)に照らすと,Gの私財の一部が戻されたにすぎないというべきであって,被告人Xの行為によって利益を得たとみることはできない。また,被告人Yの会社の債務処理に用いられており,他の投資目的の支出とは性質を異にする面がある判示第5及び第6の各送金についてみても,同Xは,「Gの意向を受けて,同Yが所有し,同Yの経営する建設会社の負債を担保する抵当権が実行されようとしていた賃貸マンションを取得するために,同Yに支払った。」旨弁解する。しかし,それらのマンションを担保とするA3の債務の弁済に関して銀行(担当者)との間でA1の名が出たことはない(甲24〔13丁〕)ばかりか,各送金(平成26年9,10月)によって債務の弁済がなされた後も,当該マンションの抵当権は債権者である銀行から被告人Yに移転し,担保権の実行は回避されたものの,所有権は依然としてGあるいはA1側に移転しなかった。さらに,銀行が有していた抵当権すら被告人Y個人に移転しただけであって(甲24添付資料5〔前記マンションの平成27年2月現在の登記内容と認められる。〕参照),所有権がA1側に移転したのは,その後,関係者の投書(前記1 )によって同Xの本件簿外操作がA1側に明らかとなり,A1側が同Y経営の建設会社に送金された資金の返還を求める民事訴訟を平成27年7月に提起した後の,その和解交渉の結果にすぎない(H9,10丁)ことに照らせば,Gが当初から当該マンションを取得しようとしていたなどともいえない。なお,Hは,被告人Yの弁護人からの質問に対し,同Yは,この民事訴訟の中で当該マンションが実質的にはA1グループの所有に属すると主張していた旨述べている〔H26,27丁〕が,同弁護人が指摘する訴訟上の主張自体,本件が問題となってからのものであるから,その主張が本件における被告人らの主張と沿うからといってその主張が根拠のあるものであるとみることはできないし,前記各送金による原資で担保権実行が回避されたのに所有権移転登記等の手続においてA1グループが権利保全していない形であったことに変わりはないから,前記民事訴訟における同Yの主張によって前記結論が変わるものではない。G側に利益が還元されていないこと仔細にみても被告人Xの供述は不自然な点が多い。まず,そもそも,G証言に対する直接的な反証である被告人Xの供述は,これによっても,Gから何のためにいつまでに幾らの裏金を用意するよう指示されたのかすら明らかではなく,不自然なまでに具体性を欠いているというほかない。また,仮に被告人Xが巨額の資金を投資して,その利益をGのための裏金に当てようとしていたというのであれば,Gに利益を還元する具体的な見通し,時期,金額及び方法等についてGが関心を示し,同XとしてもGに相談するなり指示を受けるなりしたはずである。しかしながら,被告人Xの供述をみても,そのような様子はない。また,被告人Xは,海外サーキット事業に関する前記資金回収内容・方法(その内容自体の不合理性は で検討したとおり。)に関して,IがGに直接面談した上で事業説明をしたなどと述べた〔同X第11回43から50丁〕が,この供述は被告人質問段階になって突然なされたものであり,同XはこのIの訪問について同Yにも話していないというのである〔同144,145丁〕上,Iが述べ,Gが承諾したという資金手当や利益配分の内容も明らかに不十分であって〔同91から95丁,146,147丁〕,同Xのこの供述にも信用性がない。さらに,そもそも,本件において,被告人Yは同Xが送金した資金を自ら経営する建設会社の事業資金とする利益を受け,同Xも,ゴルフ場への投資に関連して,平成23年7月から平成26年12月にかけて,合計8100万円もの利益を得ていた(甲85,86,同X第11回102,103丁)上,海外サーキット事業については,その主体となり,同Yが経営するK社の株主となっている(同131丁)のに,そこにGやA1グループの名は上がっておらず,同Xの説明を前提としても,資金回収や利益配分は全くの口約束でしかない状況であり,念書等の存在すら窺われないことになる(なお,同Yは,従前A1グループ側から請け負っていた工事については契約書等がなかったという〔同Y第10回7丁,23丁〕が,ここでは海外の事業主体や投資家等を含んだ,しかも場合により1回限り〔後の契約等に影響することから正当で誠意のある対応が期待できるといったものではないもの。〕の関係が問題となるのであるから,同Yのいう従前の経緯は理由にならない。)。損失が問題視された形跡がないことさらに,送金等の後の経緯をみても,経緯は不自然である。すなわち,本件において,被告人Xは約4年半もの長期にわたり合計45億5000万円もの巨額の会社資金を社外に流出させたものの,その間,GやA1グループ側への利益の還元はなされていない上,投資した事業はいずれも失敗に終わっている。それにもかかわらず,被告人Xが,裏金作りを指示してきたワンマン経営者であるというGから,譴責・注意等を受けた様子がなんら見受けられず,むしろ,同Xは,ことごとく失敗する案件を持ち込んできた同Yに多額の資金を流し続けている。かかる経緯自体,前記送金が被告人X及び同Yの個人的・恣意的な判断によることをうかがわせるもので,Gが同Xに裏金作りを指示したりはしていないことを強く推認させるというべきである。被告人Xが早期に犯行を自認していたこと以上に加えて,被告人Xは,平成27年1月,同XがA2の資金を勝手に流用している旨の投書を受け取ったGから事情を尋ねられ,その翌々日にはGらと弁護士事務所に同道するなどし,弁護士らからの事情聴取に対して,Gの指示等はなく独断で資金を私的に流用した旨を詳細に述べて一連の事実関係を自認し,その内容を書面化することに協力し,さらにその中で事実と異なることについては訂正を求める態度も示している(甲87,H7,8丁,G17丁以下,同X第11回74,75丁,104,105丁,114丁,140丁。)。このように,極めて重い刑事処罰に直ちに繋がりかねない極めて高額の私的流用を早期に自認していたこと自体も,これまで検討してきた諸事情と整合的である。なお,甲第87号証については信用性が争われているが,証人H,同Gの証言に加え,被告人Xの公判供述によっても,同Xが本件を自認していることなど,そこに録取されているやりとりがあったことは十分信用でき,また,当初の行動(横領・背任的な内容である。)が発覚するのを恐れたため同Yの求めるまま資金を流出させたという動機・経緯(同号証19丁におけるやりとり,甲第22,51,67号証等参照)も,これまで検討してきた点と全く整合的で(同Xの個人的な利益目的がやや不明確という,これまた追及を受けている者の話としてよく理解できる点を除き)納得できる。また,被告人Xの弁護人は,同Xが前記事情聴取に際して事実関係を自認したのは,事前にGから「君を守るから回収に全力を上げろ。息子と思っていた。」等と言われ,Gの関与がなかったように装うよう依頼されたからであると主張し(弁論要旨2丁),同Xも同旨の供述をする(弁A1〔2丁〕,同X第11回104丁)。しかし,被告人Xは,その後Gが同Xのことを(会社から流出した金を隠している旨)疑っていると感じたので会社側への協力をやめた等という(弁A1〔2丁〕,同X第11回108丁,143丁)が,その際等に前記弁護士らに真実であるという内容を説明するなどのことなく,会社や弁護士らに本件の経緯(同Xにおいて真実というもの)を何ら説明等することもなく海外に移住している(同143丁)。加えて,被告人Xのいうとおり,Gが「君を守るから回収に全力を上げろ。息子と思っていた。」等と言ったとしても,それは,同Xらの送金の額からすればGがその回収を最優先するのは当然であるし,同Xを信じ切っていたGが同Xを「息子と思っていた」として資金回収を図るのもまた当然である。そして,そのようなGの心情や,このような巨額の資金流失が極めて重い刑事罰につながることについて,被告人Xにそれらが分からなかったなどとは思われないし,同Xにも家族等があることを考えるとなおさら,同Xが,前記の程度のことをGに言われたからといって,不正出金に関するGの責任を自らだけで負うなどとは全く考えられない。A1名義の借入,送金及びレターヘッドの使用についてなお,関係証拠によれば,①被告人Xは,1 ア記載のとおり,平成22年4月,A1の口座から1億円余りをシンガポール側に送金したこと,②同Xは,同月,A2名義で銀行から高額の借り入れをして判示第 1 の送金の原資としたこと(甲51),③同X及び同Yは,海外サーキット事業への投資話が持ち上がった平成21年10月頃から平成22年3月頃にかけて,当該事業を運営する海外の評議会に対し,同Yが経営し海外サーキット事業の窓口となったK社に関するA1による財務援助についての書面(サポートレター)を,A1のレターヘッドを使用し同Xが署名押印をして作成・送付するなどした(甲64。その書面自体は英語で記載され訳文も添付されていないが,書面作成にかかるメールのやり取り等,証拠において日本語で表示されている部分から前記の認定をした。)ことが認められる。これらは,海外サーキット事業につき,A1又はA2の関与を第三者に認識させるものであり,そうすると,その第三者側からGに前記関与に関する問い合わせ等が行われる可能性もあることになる。したがって,①から③の事情からは,被告人Xにおいて,両社の関与をGに知られても構わなかったことを示すものではないのか,ひいては,Gの指示ないし承諾があったことを示すものではないのかが問題となる。しかしながら,まず①及び②の送金及び融資については,相手方であるシンガポール側や銀行と応対するA1又はA2の窓口は他ならぬ被告人X本人であったのだから,直ちに両社の関与をGに知られる関係にあったとはいえない。③の書面は,その作成に関与したと認められる被告人両名において,K社を通じて海外サーキット事業に参画しようとする意図を示すものともいえ,同XらがGに秘して会社資金を無断流用したとする検察官の主張と合致しないともいえるが,同時に,海外サーキット事業にA1の名称を出すことによりひいてはA2からの送金事実を発覚させかねないものであって,Gの指示を受けて密かに裏金を作ろうとしたとする弁護人ら(特に同Xの弁護人)の主張とも整合しない。結局,Z及び被告人X以外のA1関係者がこれらに関与した形跡はないことからすると,①ないし③の事情は,同X及び同Yらにおいて,関連する送金,融資及び書面の作成がA1側に発覚することはないであろうとの期待の下になされたことを窺わせはするものの,Gの指示ないし承諾の有無という争点に関する心証形成に大きな影響を与えるものとはいえない。京都府警のGに対する事情聴取についてさらに,関係証拠によれば,海外サーキット事業に関しては,シンガポールの捜査当局が同国内の関係者につき捜査を進めていたところ,その一環として嘱託を受けた京都府警において,平成23年10月頃,Gに対する事情聴取を行ったことが認められる(G11,12丁,38から43丁,52丁,被告人Y第9回44丁以下)。その状況について,Gは,当公判廷において,捜査官からA1のレターヘッドが用いられた上記書面を示されたが,A1はそのような投資はしていないと説明したこと,事情聴取後に被告人Xを呼んで説明を求めたところ,同Xは,憤然とした様子で,上記書面の作成には関与していない,同Yが勝手に作成したのだろうなどと述べたこと,さらにその一,二日後に同Yに説明を求めたところ,同Yは,建築を進めるために勝手にやったなどと述べて丁重に詫びてきたこと,同Xの血相や同Yの申し訳なさそうに詫びる様子をみて,勝手に会社の名前を使われた程度のことであろうと考え,それ以上に,A1グループの資金が勝手に使われているのではないかなどと疑うには至らなかったことなどを証言した(同)。以上によれば,まず,Gは,被告人YらがA1の社名を海外サーキット事業に用いていることを知った後も,その資金関係等の調査・追及を行わなかったと認められる。そこで,かかる経緯が,被告人Xが供述するとおり,Gは裏金作りをするためにA1グループの資金を海外サーキット事業に用いることを認めていたのではないかとの合理的疑いをもたらすか否かが問題となる。しかしながら,Gの証言内容はこれまでの検討とよく整合しているというべきであって,被告人Xが供述する裏金づくりの枠組み自体が,Gの利益を図るためのものとしてはおよそ不合理なものであることは,京都府警の事情聴取後のGの対応によっても,なんら左右されるものではない。加えて,被告人Yは,平成19年9月頃,Gに対し,投資の話はしなかったものの海外サーキット事業を紹介するなどはしていたと認められる(同Y第9回31丁)。したがって,Gは,上記事情聴取の際に,被告人Yらが上記書面に関わる海外サーキット事業に取り組んでいたこと自体は知っていたと認められるから,このような状況のもとで,同YにおいてA1の社名を冒用したのであろうと考えたこともあながち不自然とはいえない。かかる事情に照らせば,Gが京都府警による事情聴取後も海外サーキット事業の資金関係を調査・追及しなかったことも,上記の合理的疑いをもたらすものとはいえない。被告人Xによる送金等の実行可能性について他方で,弁護人らは,本件で被告人Xらが行った送金等の総額は,一役員にすぎない同Xの独断では不可能な高額に達しており,Gの承諾があったことが示されているとも主張する。しかしながら,関係証拠によれば,A1及びA2の資金管理等を担当する役員であった被告人Xにおいては,その権限を乱用して,不正な送金等を行うとともに発覚を免れる帳簿操作をすることが可能であったと認められるから,この点に関する弁護人らの主張は前提を欠く。その他なお,被告人Xは,その公判供述や陳述(弁A1,最終陳述等)において,A1グループの体質や,Gあるいはその妻(A1副会長)の言動を種々述べるが,その内容は,本件に直結しないか,むしろ,同Xに犯行動機があったことや,Gらの信頼あるいは警戒心・注意力の不足,さらにはA1グループのワンマン体制と監査体制不足を利用して犯行に及ぶ機会が十分あったことを示すものにすぎない。小括以上のとおり,被告人Xによる判示の送金及び小切手の振出等が,Gが自由に使える裏金を作るためにGの指示を受けるなどして行われたのではないかとの合理的疑いは全く生じない。この点に関する弁護人の主張は採用できず,この指示や本件の送金手続に関して承諾していないというG証言に合理的疑いをいれるには至らない。3 被告人Yの故意及び共謀被告人Yの供述の概要被告人Yは,判示第1の送金は,A1グループが海外サーキット事業に投資するために,判示第5及び第6の送金は,A1グループが抵当権の実行が迫ったマンションを取得するために,それぞれその資金を正規に送金し,いずれについてもGの承諾があったと認識していたと弁解している(同Y第9回4丁,40丁,52から53丁,57丁)。これに対し,Gは,被告人Yに対して前記投資を承知したことも,マンション取得のための資金提供を承知したこともない旨述べている(G8から10丁,15丁,19から20丁)。被告人Xによる口止めまずは,海外サーキット事業に関する送金の状況をみると,A1グループの会社から被告人Yが経営する会社に直接送金されるのではなく,同Yが管理するD(宗教法人)名義の口座を経由し,かつ同寺が属する宗派の本山(記載略)名(同Y第9回15から17丁)を送金者名として利用するという迂遠かつかなり徹底した方法をとってまで送金の当事者・経路が隠ぺいされていることに照らせば,同Y自身も自認する(同Y第9回61丁,第10回1丁)ように,A1グループにおいて簿外処理などの何らかの方法で裏金を作ろうとしているのではないかとの認識を持つことが極めて自然であるといえる。したがって,被告人Xにおいても同Yがそのように思うことは想定できることである。そうすると,被告人Xとしては,A1グループの懇意の取引先である同Yが,当該送金の出所を,GやA1グループ関係者以外の外部の第三者に伏せることについては,それなりに期待できる状況にあったと認められる。しかしながら,既に検討したとおり,被告人Xは,同Yも関与した判示各送金を,単なる簿外処理としてのみならず,Gの指示も承諾もないまま無断で行ったと認められる。そして,被告人Yは,A1グループを得意先とする建設業者として,Gとも頻繁に接触の機会があり,同Xもその旨認識していた。そうすると,被告人Xとしては,同Yが,仕事を回してくれたことの礼などをGやA1グループ関係者に言う機会などに,当該送金の出所がA1グループであることを漏らすことがないよう口止めする必要があったのは明らかで,それにもかかわらず,単に,同Yがそのようなことを口にすることはないだろうと考えたので何の手立ても講じなかったとする同Xの供述は到底採用できない。そして,現に被告人YとGの間で当該送金にかかる話題が出た様子がないこと も併せ考えると,同Yにおいて,海外サーキット事業の当初から,同Xにそのような口止めをされていたこと,ひいては,かかる送金がGの承諾等を得ないままなされたことを認識していたことがかなり強く推認できる。先行して作成された契約書についてこれに対して,被告人Yの弁護人は,A1側から同Y側への資金提供は海外サーキット事業に関する送金が最初なのではなく,これに先行して,マレーシアが行う事業への出資やDの霊園を開発するプロジェクトへの出資があったとし,Iの投資要請もこれを背景にしているとして,検察官は同Yの刑事責任の立証に成功していない旨主張する(弁論要旨10,11丁)。この点につき,経緯をみると,被告人Yは,平成19年頃,Dの住職のPに寺の建設を持ち掛けるとともに,Dで墓地を販売する等の事業を計画している旨伝え,その後,寺の建設資金を東南アジアから送金するなどのために口座を作成してほしいと告げ,PはD名義の銀行口座を作成し,その届出印及び通帳は同Yが管理していたと認められる(甲22)。そして,同年9月25日,A2がC銀行から3億4791万1595円の融資を受けた後,それと同額をA3の口座に送金し(甲51,67),その際,被告人Xと同Yとの間で金銭消費貸借契約書(弁C3)が取り交わされたが,以後,全額返済されていないという経緯が存する。しかし,まず,当該契約書(弁C3)は,A2名義で作成されているものの,被告人Yにおいて,同XがA1グループの資金管理等の実務面を担当していると知っていたと認められることや,現に,その後はA1グループの契約書などなしにより高額の送金が繰り返され,同Yにおいてもこれを不審視したとは全く述べておらず,またその形跡もないことなどに照らせば,A2名義の書面が作成されたからといって,同Yにおいてこれが直ちにA1グループの正規の意思決定によるものであると認識したということはできない。また,A1グループによる正規の資金提供であれば仮名を使った送金手続をとるいわれのないことは前記のとおりであって,同弁護人の主張を踏まえてもその評価は変わらない。加えて,同弁護人が挙げるIの説明に関する被告人Xの供述に信用性がないこと,また,同弁護人が主張し,同Yがいう投資が,同Xがいう裏金作りに全くそぐわないことも前述のとおりであって,同弁護人のこの主張は全体として前提を欠くことにもなる。加えて,Zは,当公判廷において,平成21年4月頃,A3の事務所で,被告人Xが,同Yに対し,金銭消費貸借証書を同Yに見せながら,「これは,会社に内緒で貸してるから,早いこと返せよ」という趣旨を述べたところ,同Yは,特に驚いてる様子はなく,「分かりました,分かりました」と二,三回返事をした旨証言している(Z7,8丁)。この点につき,被告人Yの弁護人は,Zの証言内容が真実とすればA1グループがその後も同Y側に資金拠出をするはずがないなどとして,Z証言の信用性を争う。しかし,その主張は抽象的なものにとどまり,また,被告人Xにおいて,弁護士らからの追及に対し,当初の資金流出が発覚するのを恐れたため同Yの求めるまま資金を流出させことなどからして,前記主張は内容として合理性を欠くことも明らかである。そして,Zの前記証言内容はZの共犯性も直接的に裏付けるものであるところ,Zは,自身も本件の共犯者として公判中の身であり,証言当時,懲役8年の求刑(Z119丁)を受けて審理を終え判決を待つ状況にあり,相当に重い刑を受ける可能性が存する状況において,上述のとおり相応に具体的な証言をしていることに照らせば,その信用性は高いというべきである。そうすると,被告人Yの弁護人が本件と一連の関係にあると主張する霊園事業に関し,同YがA1グループの正規の投資であると思っていたと供述する点は信用性に欠け,ひいては,本件にかかる送金も同様に正規の投資であると思っていたとする点も信用性を欠く。A1名義の送金及びレターヘッドの使用について次に,被告人Xについて述べたように(前記 海外サーキット事業に関しては,平成21年10月頃から平成22年3月頃にかけてA1のレターヘッドを用いた書面が作成され,また同年4月にA1の口座から直接にシンガポール側への1億円余りの送金がなされており,これらに同Yも関与していると考えられ,このことからすると,同Yにおいて,これらの事情から,GあるいはA2が海外サーキット事業への投資を指示ないし承諾していると認識していたのではないかも問題となる。しかしながら,まず,被告人Yは,当該送金について,その直前には,海外サーキット事業における資金調達を担当していたというIが逮捕されるとの情報が同Yから同Xにもたらされ,同Yにおいては海外サーキット事業からの撤退を考えていたというのである(同Y第9回35ないし37丁)。そうすると,海外サーキット事業の要ともいうべき資金調達担当者の逮捕によって,当面の資金調達のみならず,その後の資金調達の全体,さらには海外サーキット事業自体の見通しも立たない状況となっていたのであるから,仮にA1グループが正規の投資を予定していたというのであれば,かかる重大な局面にどのように対応するかについて慎重な検討が求められ,これには相応の期間を要したであろうことが明らかである。それにもかかわらず,当該送金がその直後になされており,そのことについて被告人Yが不審視した様子も全く窺われないことに照らせば,むしろ,このような事実経過からも,同Yにおいて,当該送金はA1グループが正規に行ったものではないとの認識を有していたことが推認されるというべきである。京都府警の事情聴取を受けたGに対する対応についてまた,被告人Yは,上述した平成23年10月の京都府警によるGの事情聴取後,Gに呼び出されて説明を求められた際の状況(前記 につき,「海外の関係者とシンガポール政府の癒着等が問題となっているなどと説明すると,Gから投資は回収できるのかなどと尋ねられたので,回収してAに戻す旨を答えた,このようなやりとりからも,GはA1グループの資金が海外サーキット事業に投資されていることを認識していると思った。」などと供述する(同Y第9回44から46丁))。しかしながら,判示各送金等がGの指示や承諾を受けて行われたものではなく被告人Xが独断で行なったものであることは,同Xの弁解について検討したとおり明らかである。したがって,被告人Yが,上述したとおりGに海外サーキット事業への投資を回収してA1に戻すなどと言っていたとすれば,Gがこれを追及することなくその場が終わるとは到底考えられない。結局,Gが海外サーキット事業への投資を指示ないし承諾していることを前提とする発言をしたとか,GにおいてA1グループの資金が海外サーキット事業に投資されていることを認識していると思ったとかいう被告人Yの前記供述は,それ自体虚偽であることが明らかであり,Gが証言するとおり,同YはGに対してA1の名義を借りただけである旨を述べたと認められる。そうすると,既にみたとおり,海外サーキット事業の当初から被告人Xにおいて同YにこれがGの指示ないし承諾を受けたものではない旨の口止めがなされていたことが強く推認される状況にあったことも併せ考慮すれば,これらの送金やレターヘッドの使用によって,同Yにおいて,海外サーキット事業への送金がA1グループによる正規の投資であると認識していたと考える余地もないというべきである。マンションの強制執行に関する経緯についてまた,マンションの強制執行に関する送金(第5,第6の事実関係。1ウ,前記2 )をみると,当該マンション2棟につき,被告人Xらの行った送金を原資とする弁済により平成26年9月等に競売申立ては取り下げられたが,これによって抵当権が同Y個人に移転したものの,所有者はその後も同Yが事実上経営するOのままであり,所有権がA1グループに移転したのは,平成27年1月に判示の送金等が投書により発覚した後,同年7月にA1グループから提起された民事訴訟の和解交渉の中においてであると認められることは既にみたとおりである(2 )。しかも,このうち前記1 ウの①の物件は被告人Y自身が逮捕まで住居としていた(乙16〔同Y関係の証拠〕)ものであり,同②の物件はA3(A3’)の本店所在地である(甲16,乙17〔第5の事実関係の証拠〕。なお,①の物件は同社の旧所在地でもある〔甲15〕)。被告人Yは,当該マンションには仮差押えなどが付されており速やかに所有権移転ができなかったなどと述べるが,そもそも,A1グループが当該マンション2棟を取得するために4億円を優に超える資金を拠出したというのに,債務の弁済によって承継する抵当権が同Yに帰属した状態,さらには同Yやその経営する会社等マンション(各物件)利用者の使用・利用に関する権利関係の整理をA1グループにおいて放置するということ自体がおよそ不合理・不自然であるというほかない。結局,被告人Yの弁解にかかる資金拠出は,A1グループないしGの側からみると,当時既に破綻が必至であったA3’を救済しようとする明らかに不合理な意思決定になるのであって,あり得ない話というべきであり,ひいては,かかる資金の拠出がA1グループないしGの承諾を経たものと思っていたとの被告人Yの供述にも信用性がないというほかない。被告人Yの弁護人は,第5,第6の事実に関する検察官の主張(各冒頭陳述,論告9丁)が現実離れしているなどと主張する(弁論要旨11,12丁)。この点,検察官の主張にかかるC銀行の競売申立てに関するものを含め,第5,第6の事実に関する事実経過は大略1 ウ,エのとおりであるところ,同銀行が競売申立てをしたからとしても直ちに不正送金の事実が発覚するとはいえないことは同弁護人指摘(弁論要旨12丁)のとおりである。しかし,当時A3(A3’)が解散していたこと(甲15,16,24)や,Nあるいは被告人Yが,同銀行担当者に対して「一旦会社をきれいにするため,特別清算した。」とか,「海外からお金が入ってきて資産超過ではあるので,破産ではない。」等と説明していることも考慮すると,この競売に関連し,あるいはA3の特別清算手続(特に協定の成立過程等)や会社の継続過程において,帳簿類や同社が関与する資金等の流れを開示し,その内容の調査を受けざるを得なくなる可能性がある(検察官が論告〔9丁〕で主張する「事が大きくなれば」というのにもこのことも含まれると解する。)から,検察官の主張も現実離れとはいえない。その他これらのほか,被告人Yの弁護人は,A1のように通常の事業を行う会社において本件のように大規模の資金流出( で触れた,以前の分を含む。)がなされていることをその役職員の誰も気付かないということはあり得ないと主張する(弁論要旨12,13丁)。しかし,2 でみたように,弁護人らが主張し,証拠上もかなり明確なA1グループのワンマン体制や被告人Xに対するGらの信頼,同Xの立場や権限さらには決裁・出金のために同Xが行う作業(必要書類への押印等)の実情,Zが各犯行に際して用いたインターネットバンキングの方法等に照らすと,この主張もそれだけで説得的なものと受け止めることはできない。そして,被告人Yの弁護人が挙げる同Y関与の事業は,いずれも失敗に終わりあるいは頓挫していたのであり,資金提供をしているはずのA1グループにはそれまで長期間何ら利益や見返りが与えられていないこと(同Y第9回24,25丁,第10回9丁。前記2),それにもかかわらず同YがA1グループやGらから何ら形に残る具体的な申し入れを受けず,また自ら詳細な事業計画書の提出や社内向けプレゼンテーション等をA1グループ向けに行った記録が何ら残っていないことは,同Yにおいて,本件(第1,第5,第6)における資金提供がGやA2(A1グループ)側(同XとZを除く。)に知られずに行われていると認識していたこと,ひいては同Xとの共謀を推認するのに十分な事情というべきである。Zとの共謀についてなお,このほか,被告人Yについては,Zとの共謀も問題となり得るが,この点は同Xを介した順次共謀でも成立し得る上,Zの公判供述を始めとする関連証拠からは,同Yにおいて,A2の送金手続をZが同Xの指示に基づいて行っていること十分認識していたものと認められるから,同YとZとの共謀も優に認められる。小括以上のとおり,被告人Yにおいて,判示の各送金につき,Gの指示ないし承諾を受けたものではないとの認識を有していたと推認でき,推認を妨げる事情を挙げる同Yの供述はいずれも信用性に乏しい。第3 結論以上のとおり,判示各所為は,被告人らにおいて,A1及びA2の資金を勝手に流用して投資をし,利益を得ようとするなどの目的でなされたことが明らかで,同Xに対してGの指示ないし承諾はなされておらず,同Yもその旨を認識し,同X及びZと共謀していたと認められる(同Yに電子計算機使用詐欺の故意が認められることも同様である。)。弁護人らの主張はいずれも認められない。よって,判示のとおり認定した。(法令の適用)1 被告人Xについて同被告人の判示第1の所為は包括して刑法60条,246条の2に,判示第2,第4,第5及び第6の各所為はいずれも同法60条,246条の2に,判示第3の所為は同法60条,246条1項にそれぞれ該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役14年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中350日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して同被告人に負担させないこととする。2 被告人Yについて同被告人の判示第1の所為は包括して刑法60条,246条の2に,判示第5及び第6の各所為はいずれも同法60条,246条の2にそれぞれ該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役14年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中330日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して同被告人に負担させないこととする。(量刑の理由)本件は,被害会社の資金管理等を担当する立場にあった被告人X及び被害会社が属する会社グループの取引先建設会社を経営していた同Yが,同Xの部下であるZと共謀の上,被害会社の資金につき,同Xは45億5000万円を,同Yはそのうち33億3000万円を社外に流出させたという,電子計算機使用詐欺(同Xについてはさらに詐欺)の事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
京都地方裁判所 第1刑事部
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[行政] 平成29(行コ)334  105ViewsMoreinfo
法人税更正処分等取消控訴,同附帯控訴事件
平成29(行コ)334
本件役員退職給与の額のうち不相当に高額の部分である2億0875万2000円については損金の額に算入されないことを理由として,被控訴人に対して,所得金額2億6683万3941円,納付すべき税額7814万4200円とする更正処分(本件更正処分)及び過少申告加算税822万円の賦課決定処分(本件賦課決定処分)をした。本件は,被控訴人が,控訴人に対して,本件更正処分及び本件賦課決定処分(本件各処分)の取消しを求める事案である。
事案の概要
平成30年4月25日
東京高等裁判所
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HTML/TEXT
[下級] [刑事] 平成29(う)1848  269Views
住居侵入,強盗殺人,死体遺棄(変更後の訴因 死体損壊,死体遺棄)
平成30年4月25日
東京高等裁判所 第3刑事部
詳細/PDF
HTML/TEXT

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