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事件番号/事件名裁判年月日/裁判所判決書
[下級] [刑事] 平成29(わ)633  177ViewsMoreinfo
強盗殺人,傷害,窃盗,覚せい剤取締法違反被告事件
平成29(わ)633
本件は,被告人が,①Xと共謀して自動車を立て続けに2台窃取した事件(以下「第1事件」ということがある。),②X及びYと共謀して自動車(以下「被害車両」という。)を窃取した際,立ちふさがる被害者に被害車両を衝突させるなどして殺害したという事後強盗殺人事件(以下「第2事件」ということがある。また,事後強盗殺人の趣旨で単に強盗殺人という。),単独で③覚せい剤を使用したという事件と④当時の被告人方アパートの住人に傷害を負わせたという事件からなる事案である。
事案の概要
平成31年2月26日
千葉地方裁判所 刑事第2部
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[知財] [民事] 平成28(ワ)26612等  204ViewsMoreinfo
パブリシティ権侵害等差止等請求事件,著作権侵害差止等請求事件(その他・民事訴訟)
平成28(ワ)26612等
本件ブランドの日本における成功は,被告の努力によるものであって,原告ジルの氏名の顧客吸引力によるものではなく,原告ジ15ルの肖像等は,被告の有する商標と離れた独自の顧客吸引力は有しない。イ 被告表示1及び2は,商品等の広告として使用するものではなく,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものということはできない。被告表示1及び2は,被告ウェブサイトのCONCEPTページに掲載されていたものであるが,同ページは本件ブランドの来歴を示すものであり,原20告ジルの顧客吸引力の利用を目的とするものではない。実際に,被告表示1~4を被告ウェブサイトから削除した前後で被告の売上げに変化はないことからしても,被告表示1~4に特段の価値がないことが明らかである。なお,被告英語版ウェブサイトは,被告ウェブサイトの管理のために利用するためのものであって,広告を目的とするものではない。25(2) 争点1-2(原告らによる同意,承諾の有無等)について(被告の主張)原告らは,平成27年9月に本件仮処分を申し立てるまで,被告が被告表示1~4を使用することを許諾していた。被告は,平成9年3月の日本1号店の開店に先立ち,伊藤忠ファッションシステムを介して,原告側から,被告表示3の経歴部分のベースとなった原告ジ5ルの英文の経歴と,被告表示3の括弧で引用された2つのコメントを含む英文のコメントを,原告ジルの写真とともに受領し,これらを積極的に使用するよう伝えられた(乙80)。被告は,それ以降,被告表示1,3及び4を用いて本件ブランドの経緯の説明を行ってきた。平成14年10月18日付けの期限付き商標権譲渡契約書(甲14)及び乙107及び19の終了合意書においては,被告の広告及び販売促進活動についてトラストが承認する権利はなく,被告がトラスト等に対して将来的に支払わなければならないのは期限付き商標権譲渡契約の対価のみであることが確認されている。期限付き商標権譲渡契約の対価には,被告ウェブサイトにおいて被告表示1,3及び4を用いて本件ブランドの経緯を説明するなど,被告の広告及15び販売促進活動において原告ジルの肖像等を使用する対価や,個々の被告商品のデザインについて原告ジルが現在でも関与又は推奨していると消費者が理解するような表示をすることの対価が含まれている。また,被告表示2に関し,被告は,平成15年に,原告会社代表者である甲から同表示2に係る写真をポジフィルムとともに手交され,本件ブランドの経20緯を説明する際に使用する原告ジルの肖像写真の差替えを求められたことから,同表示を用いるようになった(甲83,乙23~25,80)。乙7及び19の終了合意後に被告表示2の写真が被告に提供されたことは,原告らが被告製造商品について原告ジルの紹介を行うことを自ら求めていたことを示している。25被告前代表者乙(以下「乙」という。)は,平成17年頃に甲に会った際,本件ブランドの日本語のウェブサイトを開設する意向であることを伝え,了承を得て,平成18年に同サイトを開設した。甲によるウェブサイト開設の了承には,被告ウェブサイトに原告ジルの経歴とコメントを掲載することについての承諾が含まれている。その後,平成19年4月13日に商標権譲渡契約が締結され,被告は,トラ5ストから,本件ブランドの関連商標をこれに関連するグッドウィルとともに譲り受けた。被告はそれ以前から被告ウェブサイトにおいて被告表示1~4を使用していたにもかかわらず,同契約の際に同各表示の使用に関する規定は何ら置かれなかったことによれば,原告らが被告表示1~4を使用することについて同意又は承諾をしていたことは明らかである。10トラストは,米国訴訟1において,被告ウェブサイト上のバナーに記載されていたヤシの木の柄の利用を問題としていたから,被告ウェブサイトを継続的に確認していたことが明らかである。にもかかわらず,原告らは,本件仮処分命令申立てに至るまで,一度も被告表示1~4を問題視したことはなかった。以上によれば,少なくとも本件仮処分命令の申立てに至るまでは,原告らは15被告による被告表示1~4の使用を許諾していたということができる。(原告らの主張)原告ジルは被告に対して被告表示1~4の使用を承諾したことはない。原告らは,被告に直接被告表示3~5を交付していないし,被告が指摘する乙7及び乙19の終了合意書は,伊藤忠ファッションシステムが契約関係から20離脱して従前の金銭支払を清算する目的で締結されたものであり,被告が指摘する条項は,原告ジルの肖像等の利用許諾とは関係がない。被告表示2に関し,甲は,原告ジル自身を紹介する目的で同表示に係る肖像写真を付与したものであり(そのため,他のマスメディアにも交付され,利用されていた(甲83)。),被告商品の広告及び販売促進のために交付したも25のではない(甲77)。そもそも,原告らが被告表示2の写真を提供した平成15年に被告ウェブサイトは存在していなかったから,被告表示1及び2を被告ウェブサイトで使用することは当事者双方とも想定していなかった。被告は,平成19年2月頃,基本合意書に基づき原告会社等と本件ブランド全体の買取りを交渉したにもかかわらず,あえて商標権譲渡契約により特定の商標権等に限定して譲り受けることにしたのであるから,原告ジルの肖像等の5利用許諾権など,それ以外のものは譲渡対象から意識的に除外されているものである。原告ジルのようなセレブリティを宣伝広告に起用する場合,多額のライセンス料を規定する契約を締結するのが一般であるから,こうした契約が締結されていないことは,原告らが被告に原告ジルの肖像等の利用を許諾していないことを示している。10そして,甲は,被告と良好な関係にあることを前提として,被告表示2の写真を被告に提供し,個人デザイナーとしての原告ジルに言及することや,個人デザイナーとしての原告ジルの経歴を公表することに使用する権原を被告に与えたにすぎない(甲77)。甲は,被告と原告らの関係が解消した後に使用する権原を付与したものではないので,被告による被告表示1及び2の使用は15その交付目的及び許諾範囲を逸脱する。被告が指摘する米国訴訟2における主張に関しては,修正サービス契約が有効であることを前提としていたため,被告による被告表示1~4の使用行為に異議を唱えることを控えていただけであって,それを黙認した事実はない。原告らは,被告各表示の使用を黙認したことはなく,継続的に被告の行為を問題20としてきた。被告は,修正サービス契約の終了によって,原告ジルが自己の肖像等を何らの関与もしていない被告商品の広告に使用することを許容する意思を有しないことを当然に知り,又は知り得べきであった。このため,仮に原告ジルによる許諾があったとしても,同契約の終了により,その許諾は終了した(甲38)。25なお,原告らは,被告に対し,商標権譲渡契約に基づく譲渡対象商標を単に商標として使用する行為につき,異議を唱えるものではない。2 争点2(品質等誤認惹起行為該当の有無)について(原告らの主張)原告ジルの氏名及び肖像写真は,日本の新聞,雑誌等に頻繁に取り上げられるなどして(甲8,10,27~34),日本でも著名であるから,被告表示1~54が被告ウェブサイトで表示されれば,消費者等は,原告ジルが被告商品のデザイン等に関与又は推奨していると認識する。また,被告表示5の内容からして,これに接した消費者等は,被告表示1~4もあいまって,原告ジルや原告会社が被告と提携関係を有しており,被告商品のデザイン等に関与又は推奨していると認識する。10被告は,平成25年2月26日をもって修正サービス契約を解除し,同日以降,原告らと被告との間には提携関係を含む何らの契約関係もないのであるから,被告表示1~5は事実に反するものである。そして,被告商品のようなブランド商品は,誰のいかなるデザイン等によるものであるか,あるいは誰に推奨されているかなどの点が,商品価値に関し極めて重要性を有するから,被告表示1~5の15意味内容が事実に反することは,被告商品の品質,内容について高い商品価値を有するものであるかのように消費者等に誤認させる表示であるといえる。したがって,被告表示1~5は,いずれも,消費者等に対し,被告商品の品質,内容について誤認させるような表示であるから,被告が被告ウェブサイトで被告商品の広告に被告表示1~4を使用し,被告商品に被告表示5を付し又は被告表20示5を付した被告商品を販売等する行為は,不競法2条1項14号の不正競争行為に該当する。(被告の主張)原告が主張する被告の行為は,不競法2条1項14号の不正競争行為に該当しない。25被告表示1の使用方法には様々な態様があり得るのであり,消費者等が同表示により原告ジルが被告商品のデザイン等に関与又は推奨していると認識するとは考えられず,CONCEPTページが本件ブランドの来歴を示すためのものにすぎないことは前記のとおりである。また,消費者等は,被告表示5により,被告商品が原告らの企画・製造でなく,被告の企画・製造に係る製品であることを正しく認識するにすぎない。5原告ジルは,我が国において著名なわけではなく,消費者等は原告らの関与・推奨があるから被告商品を購入するということはないから,被告表示1~5は,公的機関による品質・内容の保証のような場合とは異なり,消費者等に商品の品質につき誤認を生じさせるものとはいえない。3 争点3(信義則違反ないし権利濫用の成否)について10(被告の主張)修正サービス契約の解除と被告表示1~5の使用には関連性がないが,仮に何らかの関連があるとしても,被告が同契約を解除したのは,同契約に基づいて提供されるべきサンプルが原告らから提供されなかったことに起因するのであり,また,第1事件の訴訟は,インポート商品の品質が悪く,原告らが手掛けるビジ15ネスが成功していないため,原告らが被告に金銭の無心をするために提起したものであるから,原告らが同契約の終了を理由として被告表示1~5の使用の差止めや損害賠償等を求めることは,信義則に反し,権利濫用に当たる。(原告らの主張)被告は,自ら修正サービス契約を解除しておきながら,原告会社が同契約の終20了に基づく効果を主張することが信義則に反し,権利濫用に当たるなどと主張するが,失当である。原告会社は,世界20か国以上で事業を展開し,多額の売上げを上げているから,被告に金銭の無心などするはずもない。原告会社は,原告ジルが発信する各シーズンのデザイン作品を軸として,統一的なブランドイメージ戦略の下で世界各国において事業を展開しており,ブランドイメージを維持し25保護する責任を負っていることから,被告の権利侵害行為を看過することができず,やむなく本訴の提起に及んだのである。4 争点4(差止めの可否及び必要性)について(原告らの主張)(1) 営業上の利益の侵害の存否被告の不正競争行為により,原告らの営業上の利益が侵害された。5品質等誤認惹起行為により営業上の利益を侵害される者とは,当該行為者の直接の具体的な競業者に限定されず,消費者保護の観点から請求権の適切な行使を期待し得るような,同業者も含め実質的な営業上の利害関係を有する者をも広く含むと解すべきである。商品のデザインは,ファッションデザイナーにとって核となる極めて重要な10要素であり,自己がデザイン等に関与していない商品について関与したと誤解されること自体が深刻な損害であり,これにより原告らの営業上の信用は毀損(希釈化)された。とりわけ,被告が平成27年5月15日,同年8月末頃に子供服に関する被告ブランド3を含む9つのブランド事業を廃止する旨の発表をしたこと(甲2153~25,39)により,本件ブランド関連事業の縮小・廃止に原告ジル本人が関係しているかのような誤解を生ぜしめたことによる営業上の信用毀損の程度は大きかった。原告らの営業上の利益が侵害されたことは,消費者アンケート(甲130の47頁図表D11)の結果に照らしても,明らかである。(2) 差止めの必要性20被告は,本件仮処分決定後も被告表示5を商品タグに付した被告商品を店舗に陳列,販売し,また,被告を主要事業子会社とする株式会社TSI(以下「TSI」という。)は,被告表示1を表示する英語版被告ウェブサイトを継続するなど,本件仮処分決定に実質的に違背する行為を公然と行っている。また,被告は,被告表示1及び2により原告ジルのパブリシティ権を侵害したこと及25び被告表示1~5により原告らの営業上の利益を侵害する品質等誤認惹起行為を行ったことをいまだに争っているのであるから,現在においても,被告が上記各行為を行うおそれがある。(被告の主張)(1) 営業上の利益の侵害の存否品質等誤認惹起行為により営業上の利益を侵害される者であるというため5には,当該行為をする者の同業者(競争事業者)であることが必要とされるが,原告らは,トラストを介して本件ブランドに関する商標権等を被告に譲渡しており,日本において被告商品と競合する製品についての営業をしていないから,被告表示1~5により原告らの営業上の利益が侵害されることはなく,原告らの営業活動に関する経済上の社会的評価が低下したことを示す証拠もない。10被告は,原告ジルの氏名に係る商標を譲り受け,これを使用することができるのであるから,仮に被告がそれらを使用することによって被告と原告らとの結びつきに関して消費者等に誤解が生じたとしても,原告らはそのことを許容しているというべきであるから,被告表示1~5の使用によって原告らの営業上の信用が毀損されることはない。上記アンケートは,調査方法が不適切であ15るから,証拠とはなり得ない。(2) 差止めの必要性ア 被告表示5の使用等の差止請求に関し,被告は,本件執行により執行官保管されている商品タグ及び同商品タグを付した被告商品の廃棄については認諾しており,本件執行官保管に係る商品タグ以外に,被告表示5を付した20商品タグや,同商品タグを付した被告商品は存在しない。被告表示5は,平成9年頃に伊藤忠ファッションシステムを介して原告側から記載するよう求められたもので,本件仮処分申立てまでの間,原告側から修正を求められたことがなかったために継続使用していたにすぎない。被告表示5は,本来被告には不要な表示であって,既にこれを削除する対応を25取っており,被告が,コストをかけて再度被告表示5を使用することはあり得ない。このため,被告が被告表示5を継続して使用するおそれはない。イ 被告表示1の使用の差止請求に関し,被告は,被告ウェブサイトにおいて,本件ブランドの由来を説明するのに必要な範囲で同表示を使用する可能性があるものの,それ以外の態様で使用する意向はない。5原告らの前記第1の1(1)の差止請求が認容されるためには,被告ウェブサイト及び被告英語版ウェブサイトのいずれの場所に被告表示1を掲示した場合でもパブリシティ権侵害に該当することを主張立証しなければならないが,被告表示1のみでパブリシティ権侵害が生じるとはいえないことは明らかである。被告表示1のみを切り離し,そのウェブサイトにおける使用10を一律に禁止するとすれば,被告が正当に保有する商標の使用との実質的区別が困難となってしまい相当でない。(3) 請求適格原告会社は,パブリシティ権の利用許諾を受けた者にすぎないから,パブリシティ権に基づく固有の差止請求権を有しない。155 争点5(被告の故意,過失の有無)について(原告らの主張)被告は,原告ジルがデザインした高級織布を使用し,また,原告らから正式なデザインの供給や承認を受ける場合には,修正サービス契約に従い正規の適正な費用を支払う手続が必要であることを十分に認識していたにもかかわらず,原告20会社との修正サービス契約を解約することによって原告らと何ら事業上の関係がなくなった後も,被告表示1~4を被告ウェブサイトに表示して被告商品の宣伝広告を行い,また,被告表示5を被告商品に付して全国的に販売活動を展開していたのであるから,被告は,故意に又は意図的に,原告ジルのパブリシティ権を侵害し,不正競争行為を行ったことは明らかであるし,少なくとも被告に過失25が認められる。(被告の主張)否認する。修正サービス契約の解除と被告表示1~5の使用の可否とは無関係である。被告に対し被告ウェブサイト等において原告ジルの紹介をするように求め,被告表示5を商品タグに付すことを求めたのは原告らであり,被告は,本件仮処分の申立てに至るまで被告表示1~5の使用の停止を求められたことはな5かったのであるから,被告にはパブリシティ権侵害や不正競争行為についての故意はもとより過失もない。6 争点6(原告らの損害及び損害額)について(原告らの主張)(1) パブリシティ権侵害に基づく使用料相当損害10ア 損害の内容原告らは,パブリシティ権としての肖像等の利用につき許諾を与える排他的権限を有するから,被告による被告表示1及び2の無断使用により,原告ジルの肖像等のパブリシティ価値(顧客吸引力)に係る営業上の利益が害され,その使用料相当の損害を被った。15イ 使用料相当損害額の算定方法パブリシティ権侵害による損害額の算定には著作権法114条3項が類推適用され,原告らは,原告ジルのパブリシティ権を侵害したことに基づく損害賠償として,被告に対し,使用料相当損害額を請求することができる。使用料相当額の算定は,原則として侵害品の売上高に実施料率を乗じて算定20するのが相当であるので,本件における使用料相当損害額は,被告の売上高に相当使用料率を乗じて算定されるべきである。ウ 被告の売上高の対象及び期間被 告 の 「 JILLSTUART 」 ブ ラ ン ド , 「 JILLSTUART White 」 及 び「JILLSTUART/NEWYORK」ブランドに関する被告の売上高は,年間約40億円25であるから,修正サービス契約終了日である平成25年2月26日から平成28年2月5日の本件仮処分申立事件の審尋期日までの約3年間の売上高は120億円を下らず,また,被告のパブリシティ権侵害行為が一応中断された上記審尋期日から平成29年12月31日までの約2年間の売上高は,80億円を下らない。被告ウェブサイトにおける原告ジルのパブリシティによる被告商品への5広告効果は,被告ブランド1に係る商品はもちろん,被告ブランド2に係る商品や被告ブランド3に係る子供用ファッション分野の各種商品にも及び,これら全ての売上高が考慮されるべきである。また,原告ジルのパブリシティの無断使用の結果,消費者等に原告らが被告と提携しているなどの誤認が生じたことによる広告又は需要喚起の効果10は,その性質上当然に,かかる行為が一応中断された後であっても,打消し表示の効果が生じるまで,相当期間安定的に存続する。このため,売上高の対象期間には,パブリシティ権侵害行為が一応中断された後の期間も含めるべきである。エ 相当使用料率15本件においては米国におけるパブリシティ・ライセンス契約所定のロイヤリティ料率の例に徴して相当使用料率を算定するのが合理的であるところ,米国におけるセレブリティ・エンドースメント・ライセンシングにおけるロイヤリティ料率の中間値は,安定的に5%であるとされている(甲131)。そして,いわゆる侵害プレミアムを十分に考慮すべきであることや,被告の20パブリシティ権侵害行為が一応中断された後は,広告効果が時間の経過とともに漸減するとも考え得るため,パブリシティ権侵害行為が継続されていた期間における相当使用料率の半分程度をもって相当使用料率とするのが合理的であることを併せ考慮すれば,本件の相当使用料率を,平成25年2月26日から平成28年2月5日頃までの間は6%,同日頃から平成29年1252月31日までの間は3%とするのが相当である。オ 使用料相当損害額以上によれば,平成25年2月26日から平成28年2月5日頃までの期間の損害額は7億2000万円(=120億円×0.06),同日頃から平成29年12月31日までの損害額は2億4000万円(=80億円×0.03)となり,損害額合計は9億6000万円であるが,本訴では,このう5ち5億9353万9980円を請求する。この損害賠償債権は,原告らの不真正連帯債権となる。(2) 積極損害原告らは,被告のパブリシティ権侵害行為及び不正競争行為(前記のとおり,原告らには被告の不正競争行為により営業上の利益が侵害された。)により,10以下のとおり,合計3654万4020円の積極損害を被ったので,そのうち654万4020円を請求する。この損害賠償債権も,原告らの不真正連帯債権となる。ア 侵害調査費用 12万9060円(ア) 本件仮処分申立てに当たり購入した被告商品代 1万8900円(甲1158,19)(イ) 本件仮処分申立てが認容される見込みが強くなった平成27年末に,証拠の保全のために購入した被告商品代 10万7460円(甲70)(ウ) 本件仮処分決定直後に被告の遵守状況を調査した際,被告の違反行為に係る証拠の保全のために購入した被告商品代 2700円(甲88)20イ 本件執行費用 8万4000円(甲92,93)ウ 消費者アンケート調査報告費用・評価報告費用 633万0960円(甲186)(ア) 消費者アンケート調査報告費用 492万4800円(甲186)原告らは,本件訴訟において,被告の不正競争行為による原告らの営業25上の利益の侵害の発生,被告のパブリシティ権侵害行為及び不正競争行為の故意性や意図性,被告のパブリシティ権侵害における相当使用料率,原告らのパブリシティ価値の毀損や営業上の信用の毀損等について,被告が争ったため,これらを客観的かつ具体的に立証するため,消費者アンケート調査(以下「原告アンケート調査」という。甲130)を実施せざるを得なかったから,これは,被告のパブリシティ権侵害行為や不正競争行為5と相当因果関係のある積極的損害に当たる。(イ) 被告のアンケートの評価報告費用 140万6160円(甲187)原告は,原告アンケート調査に対する反対証拠として被告が提出した衣類・服飾雑貨に関するアンケート調査(以下「被告アンケート調査」という。乙78,81)に対し,更に反証するため,しかるべき調査機関の検10討を委託して評価報告書(甲158)を提出せざるを得なかったから,これも,被告のパブリシティ権侵害行為や不正競争行為と相当因果関係のある積極的損害に当たる。(3) 弁護士報酬相当額 3000万円(4) 消滅時効について15被告の消滅時効の成立の主張は争う。修正サービス契約締結終了前後において,原告らが被告表示1及び2が使用されていることを認識していたことの立証はない。なお,原告らは,予備的に,上記損害賠償債権額と同額の不当利得返還請求を主張する。20(被告の主張)(1) パブリシティ権侵害に基づく損害について全て争う。ア 損害の内容について使用料相当損害に加えてパブリシティ価値毀損による損害が認められる25ためには,使用料相当損害額では損害が填補できないといった事情が必要である。被告による被告表示1及び2の使用は,もともとは原告側が同意していたものであって,原告ジルの肖像等の顧客吸引力を毀損するような使用態様ではないから,パブリシティ価値毀損による損害は認められない。イ 使用料相当損害について被告は,本件ブランドに係る商標の商標権者であり,被告における本件ブ5ランドの売上げは,被告の商標及び被告が企業努力により築き上げたブランドを源泉としているものであって(第2乙82),原告ジルのパブリシティ権を源泉とするものではないから,無権原者による権利侵害と同視し得るものではなく,パブリシティ権侵害に基づく損害賠償額は,被告の売上高をベースとして算定すべきものではない。また,原告らが各自損害賠償請求をす10ることができる根拠も不明である。原告ジルの認知度は,東京及び名古屋で1%弱,大阪に至っては0%であること(第2乙78,81)等からして,原告ジルのパブリシティ権侵害が仮に認められたとしても,その損害額は極めて少額となる。(2) 積極的損害について15全て争う。原告らの不真正連帯債権となる根拠も不明である。ア 侵害調査費用について原告らが10点もの商品を購入する必然性はないし,原告らはこれらの商品を保有しているから,購入代金全額を損害と解すべきではない。イ 執行費用について20執行費用のうち,予納金(甲92)は,そこから実際に出費があって初めて損害となり得るものである。また,原告らは,本件仮処分命令が発令されたことから,被告が各店舗の従業員に被告表示5の除去を指示する対応を取ったことを知りながら,千葉そごうの店舗の従業員が商品の一部につき被告表示5の除去を失念したことを知り,わざわざ店舗の営業時間中に男性7名,25女性1名という構成で執行に及んだもので,必要な保全執行ではなかった。ウ 消費者アンケート調査報告費用・評価報告費用について原告ら主張のような高額なアンケート費用の請求は不相当である。(3) 弁護士報酬相当額について原告主張額は高額に過ぎ,不相当である。(4) 消滅時効5第1事件の訴え提起は平成28年8月9日であるところ,原告らは,修正サービス契約終了前後の時点において,被告が被告表示1~5を使用していることを認識していたから,損害及び加害者を知っていたということができる。そこで,平成25年8月9日以前の損害賠償債務につき,消滅時効を援用する。7 争点7(謝罪広告又は訂正広告の要否)について10(原告らの主張)被告のパブリシティ権侵害行為や不正競争行為によって毀損された原告らのパブリシティ価値や営業上の毀損の程度は深刻である上,その性質上,その損害額の正確な算定は困難であり,損害賠償のみでそれらを完全に回復させることもできない。したがって,著作権法115条の類推適用又は不競法14条に基づき,15被告に対し,損害賠償に代えて,別紙広告目録記載第1の謝罪広告を同記載第2の要領で掲載させる必要がある。仮に,謝罪広告の掲載が認められないとしても,同目録記載第3の訂正広告を同記載第4の要領で掲載させることは最低限必要である。(被告の主張)20著作権法115条は,人格的利益が侵害された場合の規定であるのに対し,原告ら主張のパブリシティ価値の毀損とは顧客吸引力を低下させることであるから,本件における原告ら主張のパブリシティ権侵害に関し,同条を類推適用すべき根拠となる事情はなく,同条類推適用により謝罪広告又は訂正広告を求める原告らの請求は失当である。25また,著作権法115条は,権利侵害に加えて社会的声望名誉が毀損された事実があって初めて適用されるものであるが,このような事実はなく,不競法14条に基づく請求については,原告らの営業上の信用が毀損されたことの立証がない。加えて,使用料相当損害に加えてパブリシティ価値毀損による損害が認められるためには,使用料相当損害額では損害が填補できないといった事情が必要であるが,本件においてそのような事情が存在するとは認められない。5さらに,被告表示1~5の使用により原告ジルのパブリシティ価値や原告らの営業上の信用が毀損されることはないこと,被告は,平成28年2月頃以降,被告表示1~4を被告ウェブサイトに表示しておらず,被告表示5を商品タグに表示してもいないこと,英語で統一された被告ウェブサイトのトップページ(乙61)に別紙広告目録記載の長文の日本語を掲示することは本件ブランドイメージ10に甚大な損害をもたらすものであることなどに照らすと,謝罪広告や訂正広告は不必要かつ不相当である。8 争点8(誤認防止表示の要否)について(原告らの主張)謝罪広告又は訂正広告がなされたとしても,こうした広告の掲載は一定期間に15限定されるから,原告らが被告と提携している等の誤認を解消し,将来的に同様の誤認を生じさせないためには,著作権法115条類推適用又は不競法14条に基づく信用回復措置として,別紙誤認防止表示目録記載第1の説明文を同記載第2の要領で表示させる必要がある。原告らのパブリシティ価値の毀損及び営業上の信用毀損の各損害を実効的に回復するためには,上記誤認を直接的に解消する20ための措置として,消費者等がアクセスする被告ウェブサイト及び被告商品の商品タグに,被告をして,誤認防止表示を行わせるのが相当である。(被告の主張)争う。前記7(被告の主張)と同様の理由により,誤認防止表示は不必要かつ不相当である。25【第2事件について】9 争点9(原告写真の著作権の所在)について(原告会社の主張)原告写真の著作権は,元々JSインターナショナルが保有し,原告会社がJSインターナショナルから譲渡を受けたものである。(1) 米国著作権法において,被用者がその職務の範囲内で職務著作物を作成した5場合,使用者(雇用主)その他当該著作物を作成させる者が著作者とみなされ,当事者間に署名した書面による反対の明示的な合意がない限り,その使用者(雇用主)等が当該著作権に含まれる全ての権利を有する(同法101条(1),201条(b))。また,特別に注文又は委託を受けた者(インディペンデント・コントラクター)が個別の契約に基づいて作成する場合,同条(2)に規定され10たカテゴリーのいずれかに使用するためのものであって,かつ,当事者が署名した書面において当該著作物を職務著作物とする旨の明示的な合意がなされている場合に職務著作物とみなされる(同法101条(2))。原告写真は,ファッションイメージ写真であり,ディレクターがフォトグラファー,モデルその他の人材を用いて創作するものである。原告写真1~4815は,JSインターナショナル(甲)の依頼により,丙 & Co.(以下「丙社」という。)の丙(以下「丙」という。)が創作したものであり,原告写真49~126は,同様に,デザイン事務所Buero New York(以下「Buero事務所」という。)に所属する丁(以下「丁」という。)が創作したものである(甲100,第2甲48,97,98)。20同法101条(1)の「被用者」は厳密な意味での雇用関係に限定されないことからすると,原告と丁及び丙との関係は同項に該当し,書面による反対の明示的な合意はないので,原告写真の著作権は原告会社に帰属し,仮に同項の要件を充足しない場合であっても,同条(2)の規定するカテゴリーの一つである補足的著作物(supplementary work)に当たるので,職務著作物として原告会25社に帰属する(第2甲69)。以上は,カメラマンとディレクターとの間の著作権の帰属についても同様であり,原告写真は職務著作物に当たるので,カメラマンに著作権が帰属することはない。本件において,丁,丙社の代表者は,いずれも,原告写真が職務著作として創作され,原告に著作権が帰属することをその陳述書等(第2甲48,50,97,98)において認めている。また,ファッション雑誌に掲載されたファ5ッションイメージ写真を用いた被告自身が行った宣伝広告(第2甲72~94)においても,JSインターナショナルの著作権表示として「©JSI○○○(発行年)」が明記されている。以上のとおり,原告写真の著作権はJSインターナショナルが元々保有していたものである。10(2) 原告会社は,JSインターナショナル,ジル・スチュアート(ジャパン)エル・エル・シー(以下「JSジャパン」という。),原告会社及び原告ジルとの間で締結された平成17年(2005年)5月16日付け契約書(第2甲47)により,本件ブランド及び個人としての原告ジルの全ての広告及び宣伝用資料についてアジア領内における全ての所有権(保有権)及び使用権を取得し15た。したがって,原告会社が原告写真の著作権を有する。(被告の主張)原告写真の著作権が原告会社に帰属することは争う。原告会社やその関係会社とディレクターの間や,ディレクターとカメラマンの20間に実質的に雇用関係があったことの証拠はなく,当事者が署名した文書によって職務著作物として扱うことに明示的に同意したことや,原告ジルのデザインに係る洋服が著作物性を有することも含め,原告写真が補足的著作物に当たることについての立証もないから,原告写真が職務著作物とは認められない。また,著作権の譲渡があったことについても具体的な主張立証はない。米国著25作権法204条(a)が定める著作権者が署名する書面(第2乙83)が提出されないことは,著作権譲渡の不存在を強く推認させる事実であるし,仮に著作権譲渡が存在したとしても,その効力は生じない。なお,被告が雑誌に掲載した写真に「©JSI」と記載があること(第2甲72~94)については,原告会社の要請に従ってそのような記載をしていたにすぎず,原告側の権利関係の確認を行っていたものではないし,原告会社が裁判上行使し得る著作権を有していることを認5めたものではない。10 争点10(原告写真の利用許諾の目的及び期間等)について(被告の主張)被告は,以下のとおり,原告会社から写真の提供を受ける際に,過去の広告の紹介等として事後的に利用することも含め,その利用について許諾を得ており,10同写真の使用許諾は,修正サービス契約の解除により終了していない。被告が平成9年の被告1号店の開店当初から,原告会社からファッションイメージ写真を年2回受領し,使用していたが,こうした写真は,各シーズンに雑誌やポスターに使用すると,その価値はほとんどなくなる。そのため,かかる写真については,過去の広告の紹介等として事後的に利用されることも含めて使用許15諾がされているということができる。平成17年9月2日締結のサービス契約3条では,同日以降の広告制作の業務の対価として,被告が原告側に年間広告制作費を支払うと明記されるにとどまり,その使用態様,期間についても同日より前に提供済みのファッションイメージ写真の取扱いについての記載はない(乙30)。20その後,被告は,甲によるコンテンツの確認を経た上で,遅くとも平成18年7月1日には過去の広告の紹介ページを含む被告ウェブサイトの一般公開をした(第2乙84)。そして,平成19年4月13日には修正サービス契約が締結されたが,同契約においても,同日以降の広告制作業務の対価として被告が原告側に金銭を支払う25と明記されているのみであり,同日より前に提供済みのファッションイメージ写真の取扱いについての記載はない(甲15)。被告は,修正サービス契約締結時においては,当事者双方が,上記金額を一時払いすることにより永久的な利用権が付与されると認識しており,実際のところ,原告会社は,被告ウェブサイトにおける被告写真の使用継続を認識しながら,我が国における裁判手続に入るまで異議を唱えていない。5こうした経緯からすれば,遅くとも,当時の被告代表者であった乙がウェブサイトの内容を事前に甲に説明し,確認を受けた時点で使用許諾が成立している。ファッションイメージ写真である原告写真の被告への利用許諾は,修正サービス契約の終了と無関係であって,それによる影響を受けるものではなく,同契約の終了によっても利用許諾を終了し得ない。10なお,万一,同契約の終了により利用許諾を終了することができるとしても,かかる許諾の撤回の通知がない限り利用許諾は終了しないから,被告が被告ウェブサイトへの被告写真の掲載を取りやめた後にされた第2事件訴状の送達によって,被告の損害賠償責任が生じることはない。(原告会社の主張)15被告は,原告写真を利用できる根拠が利用許諾であることを自認しているが,利用許諾は,期間及び目的が特定・限定されるのが通常であり,ファッションイメージ写真の本来的な用途や利用目的に照らすと,被告に対する利用許諾は,カタログや雑誌に掲載する目的で,該当するシーズンに限定するものであった。実際,修正サービス契約3条においては,ファッションイメージ写真の利用目的を20「見開き広告(雑誌)用,1ページ広告用及びポスター用に使用される」と特定し,利用期間についても該当するシーズンに限定するものと定められているし,原告らが同様に宣伝広告用写真を提供している他の企業のウェブサイト(第2甲51,52)においても,過去の写真は掲載されていない。したがって,少なくとも修正サービス契約終了後の被告ウェブサイトにおける25原告写真の利用行為は,許諾期間外及び目的外の利用である。11 争点11(信義則違反ないし権利濫用の成否)について(被告の主張)仮に原告写真の利用許諾と修正サービス契約の終了との間に何らかの関連性があるとしても,原告会社が,自ら修正サービス契約を違反して本件解除を招来したこと,本件訴訟は,原告会社が被告に金銭を無心しようとして提起したもの5であること(乙58,66~72)からして,同契約の終了を理由として原告写真の利用が許されないなどと主張することは,信義則に反し,また,権利の濫用に当たる。(原告会社の主張)ファッションイメージ写真は,非常に高い価値を有し,シーズンごとの宣伝広10告物,ファッション雑誌等に広くされて利用される著作物である。被告の行為は,このような貴重な写真を許諾の時期及び目的を超えて無断で利用するものであるから,原告会社は,著作権者として,やむなく訴訟を提起したものであり,原告会社の権利行使が信義則に反し,権利濫用に当たるなどということはない。12 争点12(差止めの必要性等)について15(原告会社の主張)たとえ被告が被告ウェブサイトから被告写真を削除したのだとしても,それは一時的な訴訟対応であり,被告が原告写真の著作権の帰属や権利侵害について強く争い続けている以上,再度利用するおそれがある。なお,被告英語版ウェブサイトについても,同サイトが被告ウェブサイトを内部から管理する目的で制作さ20れたウェブサイトである以上,同ページに被告写真が掲載されていたことが推認されるから,被告写真の使用の差止め及び削除を求める必要がある。(被告の主張)被告は,平成27年秋に,被告ウェブサイトからGALLERYページを削除したから(第2乙1),被告写真は削除されているし,被告英語版ウェブサイト25に被告写真が掲載されたと認めるに足りる証拠はないから,これらのウェブサイトから被告写真の削除を求める原告会社の請求は失当である。13 争点13(被告の故意,過失の有無)について(原告会社の主張)被告は,修正サービス契約を自ら解約し,本件ブランドのファッションイメージ写真を利用する権限がなくなったにもかかわらず,被告ウェブサイトで継続し5て表示し,被告商品の宣伝広告を行っているから,被告は,故意に原告会社の著作権を侵害しているというべきであり,少なくとも過失がある。このことは,原告側から被告にファッションイメージ写真を提供する際に必ず付されていたJSインターナショナルのコピーライト表示(第2甲48添付資料10~12,同50添付資料2,同72~94)が無断で全て除去されている(第2甲19)こ10とからも明らかである。(被告の主張)ファッション業界において過去の広告の紹介はしばしば行われるものであり,各シーズンに制作するファッションイメージ写真をシーズン終了後に過去の広告のアーカイブとしてウェブサイトに掲載することについて別途ライセンス料15の追加支払を行う実務は存在しない(乙72)。また,サービス契約や修正サービス契約には提供された広告用材料の使用期間及び使用目的を限定する規定はなく,その対価も多額である上,原告会社は,被告が被告ウェブサイトに被告写真を過去の広告の紹介として掲載していることを認識しながら,原告会社は異議を唱えてこなかった。さらに,修正サービス契約の終了とファッションイメージ20写真の利用の可否は連動せず,被告は,本件仮処分命令申立書を受領した後に被告写真の掲載を中止している。以上の事情に照らすと,被告には著作権侵害に関する故意も過失も認められない。14 争点14(原告会社の損害額)について25(原告会社の主張)(1) 利用料相当損害ア 損害の内容被告の著作権侵害により,原告写真の利用及びその許諾について排他的・独占的権利を有する原告会社には,利用料相当額の損害が発生した。被告は,各シーズンの広告用の写真はシーズン終了後には無価値となると主張する5が,被告がGALLERYページにおいて被告写真を掲載していたこと自体が,シーズン終了後の写真に価値があることを示している。イ 利用料相当損害額の算定方法原告会社と被告の間における修正サービス契約においては,利用料の算定方法として,長年にわたり,1シーズン(春夏シーズン又は秋冬シーズン),101セット当たり所定の金額の利用料(広告製作サービス業務料)が規定されていたので,使用料相当損害金は,被告写真の単位(1シーズン・1セット)当たりの相当利用料額に利用数量(シーズン数・セット数)を乗じて算出するのが相当である。修正サービス契約に定められた1シーズン・1セット当たりの利用料は,15本件解除による終了日の翌年度である平成25年度(2013年度)からは約8万9062ドル(17万8125ドル/年の半額)であり,平成27年度(2015年度)からは9万3750ドル(18万7500ドル/年の半額)である。これに侵害プレミアムを考慮すると,被告写真の単位(1シーズン・1セット)当たりの相当利用料額は,8万9062ドル(938万円)20を下らない。上記利用料は,被告商品の雑誌広告及び広告ポスターに使用する権利を付与することの対価であって,被告ウェブサイトのGALLERYページに掲載することの対価ではない。しかし,被告の侵害態様は,コピーライト表示の無断削除を伴い,パブリシティ権侵害行為や不正競争行為ともあいまった25広告戦略的なもので,故意又は意図的に消費者等への誤信を生じさせて需要を喚起しようとするものである。また,被告ウェブサイトは,誰でもアクセス可能であり,デジタルデータでの高画質による掲載により,無限に複製することが可能であった。そうすると,無断で被告商品を雑誌広告等に利用した場合と比較して,原告写真の広告的・商業的な利用の程度や利用価値の毀損(希釈化)の程度は実質的に異ならないから,原告会社の損害を算出する5に際しては,上記基準を採用すべきである。ウ 被告の利用数量(シーズン数・セット数)被告は,平成25年2月26日の修正サービス契約終了日から7シーズン,又は,少なくとも本件仮処分申立事件に係る平成28年2月5日の審尋期日までの約3年間(少なくとも6シーズン),平成9年(1997年)の春夏10シーズン用から平成24年(2012年)の春夏シーズン用までの合計33セットを被告ウェブサイトに継続的に掲載して利用していた。エ 利用料相当損害金額以上によれば,著作権侵害に係る利用料相当損害金額は,主位的には21億6678万円(=8万9062ドル(938万円)×33セット×7シー15ズン),予備的には18億5724万円(=8万9062ドル(938万円)×33セット×6シーズン)となるが,主位的請求に係る上記金額の一部である19億1350万6207円を請求する。(2) 証拠収集費用 1万5800円(甲193)原告会社は,被告が原告会社の著作権の帰属等につき争った結果,客観的か20つ具体的に立証するため,JSインターナショナルのコピーライト表示が付された原告写真を掲載した過去の被告の雑誌広告(第2甲72~94)を証拠として収集,提出せざるを得ず,その費用として1万5800円を要したが,これは,被告の著作権侵害行為と相当因果関係のある積極的損害に当たる。(3) 弁護士報酬相当額 5000万円25(4) 消滅時効について被告は消滅時効が成立すると主張するが,原告会社が,修正サービス契約締結終了前後において,被告が被告写真を使用していることを認識していなかった。なお,原告らは,予備的に,上記損害賠償債権額と同額の不当利得返還請求を主張する。5(被告の主張)全て争う。(1) 利用料相当損害についてファッションイメージ写真は撮影されたシーズンにおいて広告用材料としての価値があるのであり,シーズン終了後に過去の広告のアーカイブとしてウ10ェブサイトに掲載することにつき,別途ライセンス料の追加の支払をするような実務は存在しない(乙72)。そして,原告写真は,被告のために,年間15万ドル程度の制作費を被告が全額負担して原告側に委託して制作させたものであること,無権利者による権利侵害の事案とは異なることなどからして,シーズン終了後の利用料は,無償か,少なくとも低額(せいぜい1枚当たり数15千円~4万円程度)となるべきである。原告会社の主張によると,修正サービス契約期間中においても,被告は,新たに制作するファッションイメージ写真への対価のみならず,その当時に被告が被告ウェブサイトにおいてアーカイブ的に使用していた過去のファッションイメージ写真にも,1セットそれぞれに8万9062ドルを支払わなければ20ならなかったこととなり,不合理である。なお,修正サービス契約3条(b)は,広告用材料を被告に提供しなければならない時期を定めたものにすぎず,その使用期間を限定するものではないし,平成27年11月には被告は被告ウェブサイトからギャラリーページを取り下げている(乙87)。25(2) 証拠収集費用について原告会社から提供された原告写真にコピーライト表示は付されていなかったから,被告の雑誌広告を証拠として収集する必要はなかった。(3) 弁護士費用について原告主張の弁護士報酬相当額は高額に過ぎる。(4) 消滅時効5第2事件の訴え提起は平成28年8月9日であるところ,原告会社は,修正サービス契約終了前後の時点において,被告が被告ウェブサイトに被告写真を掲載していることを認識していたから,損害および加害者を知っていたといえる。そこで,平成25年8月9日以前の損害賠償債務につき,消滅時効を援用する。10第4 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。(1) 原告ジルは,平成5年(1993年)のニューヨーク・コレクションにおい15て正式にデビューし,同年以降,毎年ニューヨーク・コレクションに出展している。被告1号店が平成9年に開店して以降,原告ジルの氏名,肖像写真又はインタビュー写真は,日本国内のファッション誌,新聞等において,単独であるいは被告及びその他の原告らのライセンシー(株式会社コーセー,鳴海製陶株式会社等)の商品の紹介とともに,多数回にわたり,掲載されている。(甲201,27~35,83,84,113~115,162,216~470)(2) 被告は,平成9年頃,原告側から,伊藤忠ファッションシステムを介して,本件ブランドに関する事業を行うに当たって原告ジルを紹介するための資料として,原告ジルの肖像写真(被告表示2の写真とは異なるもの),被告表示3の経歴部分のベースとなった原告ジルの英文の経歴及び被告表示3で引用25されているコメント(英文)を受領したが,これらの資料を使用することについて,原告側に対価を支払うことはなかった。また,被告は,その頃から,伊藤忠ファッションシステムを介して原告側から広告宣伝用の写真素材も受領して,ライセンス料とは別に広告費用として1000万円以上の費用を原告側に支払うようになった。(乙66,80,被告代表者)(3) 被告は,被告1号店の開店後,原告側から,伊藤忠ファッションシステムを5介して,被告製造商品に被告表示5を付すように求められたため,開店当初から,被告製造商品の商品タグに被告表示5を付し,インポート商品の商品タグに「輸入品につき,サイズをご確認の上,お買い上げください。」との表示を付してこれらを販売していた。(乙80,被告代表者)(4) 甲は,平成15年頃,被告前代表者の乙に対し,原告ジルの紹介やその経歴10を公表する際に使用するためのものとして,被告表示2に係る写真及びそのポジフィルムを交付し,今後はこの写真を使用してほしいと要請した。(甲77,乙23~25,80)(5) 乙は,平成17年頃には甲にウェブサイト設立の意向を口頭で伝え,被告は,平成18年頃,甲に公開前のウェブサイトを示し,その了解を得て,被告ウェ15ブサイトを立ち上げた。被告は,被告ウェブサイトにおいて,原告ジルの紹介をするページを設けて被告表示1~4を表示するなどした。(乙80,被告代表者)(6) 本件仮処分申立てまでの間,原告側が,被告に対し,被告表示1~4の被告ウェブサイトにおける使用や,被告商品タグへの被告表示5の表示について,20パブリシティ権侵害等に当たる等,何らかの警告や指摘をしたことはなかった。(甲87,乙33,弁論の全趣旨)2 争点1(原告ジルのパブリシティ権侵害による不法行為の成否)について(1) 争点1-1(原告ジルのパブリシティ権の侵害の有無)についてア 原告ジルの肖像等の顧客吸引力の有無25(ア) 前記認定事実(上記1(1))によれば,原告ジルは,平成5年以降毎年ニューヨーク・コレクションに出展している世界的に有名なファッションデザイナーであって,原告ジルの氏名,肖像写真等が,単独又は被告や他のライセンシーの商品との関連で,我が国の新聞や雑誌等で多数回にわたり取り上げられ,服飾のみならず,化粧品,陶器,時計など多くの種類の商品が本件ブランドの商品として販売されていることに照らすと,原告ジル5の肖像等は,被告商品を含むファッション関係の商品について,その販売等を促進する顧客吸引力を有するものと認められる。したがって,原告ジルは,これらの商品に関し,その顧客吸引力を排他的に利用する権利であるパブリシティ権を有する。(イ) これに対し,被告は,被告アンケート調査の結果(乙78,81)に基10づいて原告ジルの認知度が低いと主張するが,同アンケート調査は,原告ジルの肖像写真(被告表示2の写真)のみを示して当該写真の人物の認知度を調べるものであり,同調査においてその名前まで知っている回答者が少なかったとしても,そのことをもって,原告ジルの肖像等の顧客吸引力を否定することはできない。また,同調査においても,原告ジルの名前の15付いた本件ブランドの認知度は8割を超えており,このことは原告ジルの知名度が高いことを示すものということができる。イ 被告表示1及び2の使用目的等(ア) 平成27年頃の被告ウェブサイトの構成は,前記前提事実(第2の3(5))記載のとおりであるところ,被告ウェブサイト上においては被告商品の紹20介及び販売等がされていたのであるから,被告ウェブサイトの目的が,被告商品を宣伝広告し,その販売を促進することにあるのは明らかである。そして,被告表示1及び2は,被告ウェブサイトの一部であるCONCEPTページに,被告表示3及び4とともに表示されていたものであって,同ページ自体は原告ジル個人の肖像等や言動,経歴等を紹介する内容を主25とするものではあるものの,他のウェブページと一体となって,本件ブランドのイメージを向上させ,ひいては,被告商品の宣伝広告や販売促進を企図するものであるということができる。そうすると,被告は,被告ウェブサイトにおいて,専ら原告ジルの肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的として,被告表示1及び2を被告商品の広告に使用していたと認めるのが相当である。被告英語版ウェブサイト5のCONCEPTページについても,これと同様に解することができる。(イ) これに対し,被告は,CONCEPTページは本件ブランドの来歴を示すもので,原告ジルの顧客吸引力を利用する目的のものではなく,実際のところ被告表示1~4の有無で被告の売上げに変化はないと主張する。しかし,肖像等の使用が専ら顧客吸引力の利用を目的としているかどうかは,10肖像等の使用態様,使用目的等を総合的に考慮して判断されるべきであり,前記判示の事情によれば,被告表示1~4の有無により売上げの変動が認められなかったとしても,上記結論に影響を及ぼすものではないというべきである。(2) 争点1-2(原告らによる同意,承諾の有無)について15被告は,修正サービス契約の解除(本件解除)の前後を問わず,被告が被告ウェブサイトに被告表示1~4を使用することについて原告らが同意,承諾をしていたと主張する。ア 本件解除までの間について(ア) そこで検討するに,本件においては,前記認定(上記1(2)~(4))のと20おり,①被告は,被告1号店の開店に先立ち,伊藤忠ファッションシステムを介して原告側から,被告表示3の経歴部分のベースとなった原告ジルの英文の経歴,コメント及び原告ジルの写真の交付を受けたこと,②被告の前代表者の乙は,平成15年,原告会社の代表者である甲から被告表示2の写真等を手交されたこと,③乙は平成18年に被告ウェブサイトを開25設するに先立ち,事前に甲にその内容を見せるなどして,その了承を得ていることなどの事実が認められる。これによれば,原告ジルの肖像写真,経歴,コメントなどを選定し被告に使用するように積極的に慫慂したのは原告側であり,原告らは,被告が提供した原告ジルの肖像写真等が被告商品の宣伝広告に利用されることを十分に認識し,これを承諾していたというべきである。そして,甲は被告5ウェブサイトの開設及びその内容について事前に被告側から説明を受けていたのであるから,被告表示1及び2を被告ウェブサイトに掲載することについても承諾していたものと認めるのが相当である。(イ) これに対し,原告らは,被告表示2の写真は被告商品の宣伝広告及び販売促進のために交付したものではなく,また,同写真を交付した当時被告10ウェブサイトは存在しなかったのであるから,被告ウェブサイトに被告表示1及び2を掲載することも承諾していないと主張する。しかし,前記判示のとおり,修正サービス契約の終了以前においては,被告が原告らと協力しつつ本件ブランド事業を展開していたことに照らすと,原告らが被告に原告ジルの経歴,写真等を交付したのは,被告商品15の広告や販売促進を支援し,本件ブランド事業を推進するためであったと考えるのが自然である。また,甲が被告表示2の写真を交付した平成15年には,既にウェブサイトを利用した企業等の宣伝広告が一般的になされていたのは公知の事実であるから,甲が有用な宣伝広告ツールであるウェブサイトをあえて除外又は禁止していたとは考え難く,甲が被告ウェブサ20イトの開設時に特に異議を述べていないことは前記のとおりである。したがって,原告らの主張は理由がない。イ 本件解除後について被告は,本件解除後も,原告らは被告表示1及び2の使用を許諾していたと主張する。25しかし,被告表示2が原告ジル個人の肖像写真であり,事業に利用されるものとはいえ,協力関係や取引関係にない相手に対してもその使用を無限定に許諾するとは考えにくい性質のものであることも考え併せると,原告らは,原告らと被告が本件ブランド事業を協力して推進していることを前提にして,その期間において原告ジルの肖像写真等の使用を許諾したもの,すなわち,当事者の合理的意思解釈としては,その許諾期間を原告らと被告との協5力関係又は取引関係が解消されるまでとする旨の黙示の合意があったと認めるのが相当である。前記認定のとおり,原告らと被告との間の修正サービス契約は,本件解除により平成25年2月26日をもって終了し,原告側と被告との取引関係は解消され,両者間の信頼関係も損なわれるに至っていたのであるから,被告10表示1及び2の使用許諾も本件解除により終了したものというべきである。これに対し,被告は,本件仮処分命令申立てに至るまで,原告らが被告表示1~4の使用について問題視したことはなかったことなどを指摘する。しかし,被告が本件仮処分命令の申立てに至るまで被告表示1~4の使用について異議を唱えなかったとしても,同各表示の内容及び性質に照らすと,そ15のことから直ちに本件解除後に同各表示の使用を承諾していたと推認することはできず,他に原告側が本件解除後も同各表示の使用を許諾していたことを示す証拠はない。ウ 以上によれば,被告が本件解除による修正サービス契約の終了後に被告ウェブサイトのCONCEPTページに被告表示1及び2を表示していた行20為は,原告ジルのパブリシティ権を侵害するものであるということができる。3 争点2(品質誤認惹起行為該当の有無)について(1) 被告表示1~4について前記のとおり,被告表示1~4が掲載された被告ウェブサイトのCONCEPTページは他のウェブページと一体となって,被告商品を宣伝広告等するも25のであると認められるところ,被告表示1~4の内容に照らすと,被告ウェブサイトのCONCEPTページを見た一般の消費者等は,原告ジルが被告商品のデザイン等に関与しているか,少なくとも被告商品を推奨していると認識し,理解するということができる。しかるに,本件解除以降,原告らが被告商品のデザイン等に一切関与していないことは明らかであるから,本件解除後における被告ウェブサイトにおける5被告表示1~4は,全体として,広告における商品の品質,内容を誤認させるような表示に当たるということができる。(2) 被告表示5について被告表示5の記載内容は,「この商品は,米国ジル・スチュアート社との提携により,株式会社サンエー・インターナショナルが企画・製造したものです」10というものであるから,被告商品の商品タグに付された被告表示5を見た消費者等は,当該商品が,米国ジル・スチュアート社との提携関係の下で製造等されたものと認識,理解するものということができる。しかるに,本件解除以降,被告が原告側と提携しているという事実はないから,被告商品の商品タグに付された被告表示5は,同商品の品質,内容を誤認15させるような表示に当たると認められる。(3) これに対して,被告は,CONCEPTページは本件ブランドの来歴を示すためのものにすぎず,また,被告表示1~4は,公的機関による品質・内容の保証のような場合と異なり,消費者等に商品の品質に誤認を生じさせるものではないなどと主張する。20しかし,CONCEPTページが被告商品の宣伝広告の一環をなすものであり,単に本件ブランドの来歴を示すものにすぎないということができないことは前記判示のとおりであり,被告商品のようなブランド商品において,そのデザインを誰が行っているか,また誰に推奨されているかは,消費者等が当該商品を購入する上での重要な要素であるから,この点について事実に反する表示25を行うことは商品の品質に誤認を生じさせるものであるということができる。4 争点3(信義則違反ないし権利濫用の成否)について被告は,本件解除の原因は原告らの債務不履行にあることや,原告らが被告に金銭を無心しようとして第1事件訴訟を提起したものであることなどを理由として,原告らが被告に対し差止めや損害賠償等を求めることは,信義則に反し,権利濫用に当たると主張する。5しかし,原告らがその請求に根拠がないことを認識しながら被告に金銭の支払を要求したと認めるに足りる証拠はなく,また,本件解除の原因のいかんにかかわらず,原告らが修正サービス契約の終了を前提として被告に被告表示1~5の差止めや損害賠償を求めることが信義則違反又は権利濫用に該当すると解すべき理由はない。10したがって,被告の上記主張は理由がない。5 争点4(差止めの可否及び必要性)について(1) パブリシティ権に基づく請求についてア 原告会社についてパブリシティ権は人格権に由来する権利であるから(最高裁平成21年15(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷判決・民集66巻2号89頁参照),原告ジルの肖像等の商業的利用につき独占的利用権及び許諾権を有しているにすぎない原告会社は固有の差止請求権を有しない。したがって,原告会社が原告ジルのパブリシティ権に基づき被告ウェブサイト等への被告表示1の表示の差止請求は理由がない。20イ 原告ジルについて原告ジルは,前述のとおり,人格権に由来する権利であるパブリシティ権を有するから,これを侵害する者又は侵害するおそれがある者に対して差止請求をし得ると解すべきである。そして,原告ジルは,被告に対し,被告表示1及び2の被告ウェブサイト等における表示の差止めを求めていたとこ25ろ,被告は,同表示2に関する請求は認諾したので,以下では,原告ジルの氏名を表す被告表示1の被告ウェブサイト等における表示の差止請求について検討する。この点について,原告ジルは,被告は,被告英語版ウェブサイトにおいて被告表示1の表示を継続するなどしているのであるから,差止めの必要性があると主張する。しかし,前記認定のとおり,被告は,平成28年2月頃に5は被告ウェブサイトからCONCEPTページを削除し,第1事件の訴状受領後には,被告英語版ウェブサイトについても外部から閲覧できないようにするなどの措置を講じている上,被告が被告ウェブサイト等における被告表示2~4の表示の差止請求を認諾していることや,被告が原告側から別紙商標権目録記載の商標権等を譲り受けており,原告との紛争リスクを抱えなが10らあえて同様のウェブページを再度開設する必要性に乏しいことなどを考慮すると,今後,被告が再度CONCEPTページを復活させるなどして被告表示1を表示するとは考え難い。また,被告が商標権譲渡契約に基づき原告会社等から譲り受けた「JS商標」に係る全ての権利には,「ジルスチュアート」,「JILL STUA15RT」の文字などを含む登録商標権が含まれており,被告がこれらの権利を行使することが妨げられるものではないことを考慮すると,被告が被告ウェブサイト等において被告表示1を表示したからといって,それが当然に原告ジルのパブリシティ権を侵害することになるものではない。そうすると,被告ウェブサイト等における被告表示1の表示位置や態様等を特定せずにそ20の表示の差止めを認めることは,過剰な差止めというべきである。以上のとおり,原告ジルの被告に対する被告表示1に関する差止請求は理由がない。(2) 不競法に基づく請求についてア 被告表示1について25不競法に基づく被告表示1の表示の差止請求については,上記(1)イで判示したとおり,今後,被告が再度CONCEPTページを復活させるなどして被告表示1を表示するとは考え難いことから,被告表示1を今後も継続して使用するおそれがあると認めることはできない。イ 被告表示5について不競法に基づく被告表示5の表示の差止請求については,被告が,本件執5行官保管に係る被告表示5の表示を付した商品タグの廃棄を求める部分に係る請求の認諾をしているので,その余の部分についての差止請求の可否が問題となる。この点,原告らは,本件仮処分決定後も被告が被告表示5を商品タグに付した被告商品を店舗に陳列,販売していたことを考慮すると差止めの必要が10あると主張するが,被告は,本件執行により執行官保管されている商品タグ及び同商品タグを付した被告商品の廃棄については認諾しており,本件執行官保管に係る商品タグ以外に,被告表示5を付した商品タグや,同商品タグを付した被告商品が存在するとはうかがわれない。そうすると,被告が被告表示5を今後も継続して使用するおそれはあると15いうことはできず,不競法に基づく差止請求についても理由がない。6 争点5(被告の故意,過失の有無)について被告は,故意又は過失はないと主張するが,被告は,修正サービス契約の解除後も原告らに確認するなどの必要な対応をすることなく,被告表示1~4を被告ウェブサイト等に表示して被告商品の宣伝広告を行い,また,被告表示5を被告20商品に付して販売していたのであるから,被告には,原告ジルのパブリシティ権の侵害及び不正競争行為について過失があるというべきである。7 争点6(原告らの損害額)について(1) パブリシティ権侵害に基づく使用料相当損害についてア 原告らは,被告による被告表示1及び2の使用により,使用料相当の損害25を被ったと主張し,使用料相当損害額の算定方法としては,著作権法114条3項の類推適用により,売上高に相当な実施料率を乗じる方法によることが相当であると主張する。しかし,前記判示のとおり,本件は,被告らが原告に無断で個々の商品に原告ジルの肖像等を表示するなどして被告商品を販売したという事案ではなく,原告らが,修正サービス契約の終了までの間は,被告表示1及び2を5被告ウェブサイトに掲載して使用することを許諾していたものの,同許諾は修正サービス契約の終了(平成25年2月26日)とともに終了したため,同日以降も同各表示の掲載を継続したことについてパブリシティ権侵害が成立するという事案である。
事案の概要
平成31年2月8日
東京地方裁判所
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[下級] 平成27(行ウ)130  168ViewsMoreinfo
愛知県議会議員政務活動費住民訴訟事件
平成27(行ウ)130
本件は,愛知県の住民である原告が,被告補助参加人(以下「補助参加人」という。証人としての補助参加人を指す場合も,同様である。)の支出した①平成23年度から平成24年度までの政務調査費及び②平成25年度から平成2027年度までの政務活動費(以下,これらをまとめて指す場合,「本件政務活動費等」という。)に関し,その支出の一部(合計968万0890円)が違法なものであるため,愛知県は,補助参加人に対する不当利得返還請求権を有するにもかかわらず,愛知県の執行機関である被告がその行使を怠っているとして,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,不当利得と25して,前記968万0890円の支払を補助参加人に請求することを求める住民訴訟である。
事案の概要
平成31年2月28日
名古屋地方裁判所 民事第9部
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[下級] [刑事] 平成30(ろ)838  205ViewsMoreinfo
不正競争防止法違反
平成30(ろ)838
本件は,被告会社代表者であった被告人Bが,同社従業員らと共謀して,同社が顧客から受注して製造したシリコンゴム製の半導体製造装置部品について,品質検査の数値を改ざんして,内容虚偽のデータを顧客が使用する統計的工程管理システムにアップロードし,商品の品質について誤認させる虚偽の表示をした事案である。
事案の概要
平成31年2月8日
東京簡易裁判所
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[下級] [刑事] 平成30(ろ)837  156ViewsMoreinfo
不正競争防止法違反
平成30(ろ)837
本件は,焼結機械部品メーカーである被告会社が,不正競争防止法に違反して,顧客との取引に用いる書類に,販売する商品の品質について誤認させるような虚偽の表示をした事案である。
事案の概要
平成31年2月5日
東京簡易裁判所
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[下級] [刑事] 平成30(ろ)836  187ViewsMoreinfo
不正競争防止法違反
平成30(ろ)836
本件は,G株式会社(以下「G」という。)の子会社としてアルミニウム等の非鉄金属及びその合金を加工した製品の製造,販売を行う被告会社が,顧客との取引に用いる書類に,販売する商品の品質について誤認させるような虚偽の表示をした不正競争防止法違反の事案である。
事案の概要
平成31年2月6日
東京簡易裁判所
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[下級] [刑事] 平成28(ろ)13  174ViewsMoreinfo
運輸安全委員会設置法違反,鉄道事業法違反被告事件
平成28(ろ)13
本件の概要被告人らにかかる公訴事実は,以下のとおりである。被告会社は,北海道・・・に本店を置き,旅客鉄道事業等を営むもの,被告人bは被告会社鉄道事業本部工務部副部長兼保線課長,同c及び同dは同課担当課長であるが1 平成25年9月19日午後6時5分頃に北海道・・・x線y駅構内において発生した貨物列車脱線事故に関し,同月20日,運輸安全委員会鉄道事故調査官から運輸安全委員会設置法18条2項2号に基づき同脱線事故現場付近の事故発生日直近における軌道変位検査の結果を報告するよう求められた際,被告人b及び同dは,被告会社z支社z保線所長であったfらと共謀の上,被告会社の業務に関し,同月21日午前9時35分頃,北海道・・・y保線管理室において,前記鉄道事故調査官に対し,x線y駅構内2番線のキロ程27.068の通り一輪側の軌道変位検査結果の数値が「-75」から「-42」に書き換えられるなどした内容虚偽の軌道狂い検査表を提出し,もって虚偽の報告をした。(公訴事実第1の2)2 同日,国土交通省鉄道局長から鉄道事業法55条1項に基づき被告会社管内の本線及び副本線の軌道変位検査の結果のうち整備基準値を超過する箇所及びその測定値等を報告するよう求められた際,被告人b及び同cは,前記fらと共謀の上,被告会社の業務に関し,同月23日午後10時1分頃,北海道・・・被告会社工務部保線課において,被告会社従業員をして,東京都千代田区霞が関2丁目1番3号国土交通省鉄道局職員宛に,x線y駅構内2番線のキロ程27.068の通り一輪側の軌道変位検査結果の数値が「-75」から「-42」に書き換えられるなどした内容虚偽の整備基準値超過箇所整理表データを電子メールで送信させ,これを同職員に閲覧させ,もって虚偽の報告をした。(公訴事実第2)第2 本件の主な争点1 判示記載の日時,場所において,貨物列車脱線事故(以下,「本件事故」という。)が発生したこと,被告会社z支社z保線所長であったf(以下,「f所長」という。)及び同保線所y保線管理室施設技術係であったgが共謀の上,x線y駅構内2番線の軌道狂い検査表(以下,単に「検査表」ということがある。)のキロ程27.068の通り一輪側の軌道変位検査結果の数値を「-75」から「-42」に書き換えるなどしたこと,書き換えられた上記検査表を基に内容虚偽の整備基準値超過箇所整理表データが作成されたことなどについては,関係証拠により認められ,また,弁護人らも特に争っていない。2 本件(公訴事実第1の2,第2)の主な争点は,被告人らが,軌道狂い検査表に記載された通り変位数値が改ざんされていること(以下,単に「検査データの改ざん」ということがある。)を,少なくとも未必的に認識,認容していたか否か(以下,この争点については,「被告人らが『改ざんの認識』を有していたか」などと表記することがある。)及び被告人b,同dとf所長らとの共謀の有無(公訴事実第1の2),被告人b,同cとf所長らとの共謀の有無(公訴事実第2)である。本件争点に関する検察官及び弁護人らの主張概要は,次のとおりである。検察官の主張被告人らは保線に関する知識や経験が豊富であるところ,本件事故発生後,それぞれ本件事故現場付近の検査表を見て,通り変位が本件事故原因の要因の一つとなり得ることを認識した。また,被告人らは,同検査表に記載された正矢量の値に誤りがあることや通り変位数値が整備基準値を大幅に上回っていることなどに強い関心を有する言動をした。被告人らは,その後,数値が変更された検査表を見た際,正矢量の値が「21」から「31」と10しか変更されていないにもかかわらず,通り変位の数値が「-75」から「-42」にまで大きく減少していたなど,同検査表に記載された数値が客観的に不合理な変化をしていることに気付いた。それにもかかわらず,被告人らは数値が不合理な変化をした理由について,部下職員や現業機関である保線現場等に確認しなかった。そして,被告人らには,被告会社における過去のインシデントや事故当時の報道状況等に照らし,当局やマスコミ,ひいては一般国民からの厳しい指摘や非難を回避ないし軽減したいという上記検査表のデータ改ざんを黙認する動機が認められること,また,被告会社においては,保線現場におけるデータ改ざんを許容する雰囲気が広く醸成されており,被告人らにおいても,通り変位の数値が不自然に大きく減少したのを見て,保線現場によって同検査表の数値が改ざんされたことは想定できることも併せて考えると,被告人らは,それぞれ遅くとも下記の時期までに,同検査表の通り変位の数値が意図的に改ざんされたものであることを少なくとも未必的に認識し,認容していたといえる。すなわち,被告人dについては,軌道狂い検査表の再確認をf所長に指示し,その後の平成25年9月20日夜,通り変位数値が改ざんされた同検査表を見た時点である。被告人bについては,同日夜,被告人dに対して,通り変位数値が改ざんされた同検査表を運輸安全委員会に提出する旨を了承した時点(公訴事実第1の2),また,同月23日夜,同検査表の内容と同一であると認識した整備基準値超過箇所整理表(完成版)(以下,整備基準値超過箇所整理表については,単に「整理表」といい,整理表(完成版)については「完成版整理表」という。)について,これを国土交通省に提出することを被告人cに了承した時点(公訴事実第2)である。被告人cについては,同日夜,被告会社従業員のhに対して,通り変位数値が改ざんされた同検査表の数値に合わせた完成版整理表を作成した旨を了承した時点である。そして,改ざんされた同検査表の作成経緯やその提出が了承された経緯等を踏まえると,同検査表を運輸安全委員会に提出することについて,f所長,g,被告人d及び同bとの間に,黙示の順次共謀が成立したといえる(公訴事実第1の2)。また,改ざんされた完成版整理表の作成経緯やその提出が了承された経緯等を踏まえると,完成版整理表を国土交通省に提出することについて,f所長,g,被告人c及び同bとの間に黙示の順次共謀が成立したといえる(公訴事実第2)。弁護人らの主張被告人らは,保線に関する知識や経験が豊富であったことから,通り変位数値の改ざん前及び改ざん後の本件事故現場付近の検査表をそれぞれ目にしたが,改ざん前の同検査表には訂正されるべき誤りがあると認識し,改ざん後の同検査表は,その誤りが訂正されたことによる変化と理解した。そして,被告人らは,本件事故原因との関係で通り変位数値に関心を抱いていなかったことも踏まえると,被告人らにおいて,上記通り変位の数値の変化が客観的に説明できないことに気付かず,したがって,現業機関等に対して数値の変化の理由を確認することもなかった。また,被告人らには,改ざんを黙認する動機はなく,被告会社において,保線現場の改ざんを許容する雰囲気が広く醸成されていたこともない。さらに,被告人らが改ざんを未必的にも認識,認容していたとすれば,後に運輸安全員会に提出することが予定されていた0.5メートル間隔の軌道狂い検査表について改ざん等をしていないこと,被告人cにおいて,改ざん後の通り変位の数値が反映されていない整理表の暫定版(以下,「暫定版整理表」という。)を国土交通省に提出したことなど,合理的な説明がつかない事実が多数ある。以上からすると,被告人らは,同検査表の通り変位数値が意図的に改ざんされたものであることを未必的にも認識し,認容していたとは到底認められないことから,いずれも無罪である。第3 前提事実関係証拠によれば,以下の各事実が認められる。(各項に認定事実の根拠となる主な証拠を記載している。なお,書証については記号番号のみを,各証人及び各被告人の供述については,単に当該証人もしくは当該被告人の氏名のみ(既出の者については氏のみ)記載する。)1 被告会社の組織等被告会社及び保線部門の組織(甲17,19,乙77)被告会社は,昭和62年4月1日付けで設立され,北海道・・・に本店を置く,旅客鉄道事業,貨物鉄道事業等を目的とする株式会社である。被告会社には,支社としてα1支社,α2支社,z支社が設置されている。被告会社本社鉄道事業本部工務部には,非現業機関である保線課が置かれており,同保線課が被告会社管内の線路の保守等に関する業務全般を管理している。(以下,被告会社本社の保線課については「本社保線課」と表記することがある。)被告会社本社及び各支社の下には,現業機関である保線所が置かれており,線路,建造物及び鉄道林の保守及び施工等を担当業務としている。もっとも,各保線所の担当区域が広く,保線所単独では担当区域の線路の保守等が困難であることから,各保線所の下には保線管理室が設置されている。本社保線課の状況(甲17,証人i)本社保線課は,被告会社本社ビル内にあり,工務部副部長兼保線課長の下に,管理・保安テーブル,計画テーブル及び線路技術テーブルの3部署があり,各テーブルには統括責任者としてグループリーダーが置かれ,各グループリーダーの下にそれぞれ職員が配置されている。管理・保安テーブルは,保線課社員の統括,保線要覧の作成,部外協議,事故対応,事故防止指導等を担当する部署である。計画テーブルは,予算管理,軌道工事の発注,積算,機械の導入管理,設備投資等を担当する部署である。線路技術テーブルは,社内規定の改廃,新入社員への技術継承,用材業務,軌道管理等を担当する部署である。なお,脱線事故が発生した場合には,線路技術テーブルにおいて,脱線状況の確認をした上で,材料の復旧手配,脱線箇所の軌道構造と台帳との関係を調査することとされており,また,多くの場合に,軌道狂い検査表等のデータ収集や取りまとめを行うことと考えられていた。本件事故発生当時,被告人bが工務部副部長兼保線課長を,被告人cが保線課担当課長として管理・保安テーブルのグループリーダーを,被告人dが保線課担当課長として計画テーブルのグループリーダーをそれぞれ務め,iが保線課副課長として線路技術テーブルのグループリーダーを務めていた。被告会社z支社の組織(甲17,19)被告会社z支社には,z保線所が置かれ,その下にz保線管理室,y保線管理室,β1保線管理室,β2保線管理室が置かれていた。y保線管理室が担当する区域内の線路の保守等は,まず同管理室が担当し,z保線所は,y保線管理室を含む各保線管理室が行う線路の保守等を統括する部署である。本件事故が発生したx線y駅構内は,z支社の所管区域であり,y保線管理室が線路の保守等を担当していた。z保線所の組織(甲17)z保線所は,北海道・・・に所在し,同保線所には,z保線所長の下に,線路テーブル,管理テーブル等4部署があり,各テーブルには助役が置かれ,その下に職員が配置されていた。本件当時,f所長がz保線所長を,jが線路テーブル助役をそれぞれ務め,e1は線路テーブル施設係の立場にあった。y保線管理室の組織(甲17)y保線管理室は,北海道・・・に所在し,同管理室には,所長代理である助役以下,施設技術主任,施設技術係,施設係等の職員が配置されていた。本件当時,kが同管理室助役(所長代理)を務め,e2は同管理室施設係の立場に,gは同管理室施設技術係の立場にあった。2 被告人らについて(甲17,87)被告人b被告人bは,昭和63年に被告会社に就職後,・・・(中略)など保線担当部署を中心に勤務し,平成23年3月から工務部副部長兼保線課長として勤務していたところ,本件事故が発生した。被告人c被告人cは,平成2年に被告会社に就職後,・・・(中略)など保線担当部署を中心に勤務し,平成24年4月から本社保線課担当課長(管理・保安テーブルグループリーダー)として勤務していたところ,本件事故が発生した。なお,本件事故発生当時,被告人cは,被告人bの直属の部下であった。被告人d被告人dは,・・・(中略)など保線担当部署を中心に勤務し,平成24年6月から保線課担当課長(計画テーブルグループリーダー)として勤務していたところ,本件事故が発生した。なお,本件事故発生当時,被告人dは,被告人bの直属の部下であった。3 軌道管理等被告会社における軌道管理の状況等(甲12,13,181)被告会社においては,「線路技術心得(実施基準)」,「線路検査規程」,「軌道整備規程」といった内規により,実施すべき軌道変位(列車の繰り返し通過や自然現象により軌道の各部に生じる変位や変形)検査等が定められていた。本件事故現場である被告会社x線y駅構内2番副本線においては,軌道変位検査を年2回実施することとされていた上,軌道変位検査の結果,軌間変位(左右のレール間隔のずれ),水準変位(左右のレールの高さのずれ),高低変位(レール頭頂面の長さ方向の凹凸),通り変位(レール側面の長さ方向での左右のずれ)及び平面性変位(レールの長さ方向の2点間の水準のずれをいい,平面に対する軌道のねじれ状態を示すもの)の5項目の軌道変位の各軌道狂い値が,項目ごとに定められた整備基準値に達した場合等には,15日以内に補修することとされていた。なお,線路の曲線部分では,「C」と表記されるカント,すなわち,遠心力を相殺,軽減するために軌道に一定の傾斜がつけられていることから,決められたカント量に対する増減量が水準変位となる。また,曲線部には列車の車輪が滑らかに通過できるために,「S」と表記されるスラックにより線路の基本寸法よりも軌間が拡大されていることから,曲線部においては,軌間の実測値からスラック量を引いた数値が軌間の変位量となる。そして,「V」と表記される正矢量は,「R」と表記される曲線半径に応じて定まる数値であり,12500÷(曲線半径)により算出されるものである。正矢量は,10メートルの糸を曲線区間に張り,糸の中央からレールまでの距離を指すものである。したがって,曲線部においては,実測値から正矢量を引いた数値が,通りの変位量となる。そして,本件事故現場付近の軌間変位及び通り変位の整備基準値は,軌道変位の測定を行うことができる手押し式の装置であるトラックマスターによる測定値である静的値で,いずれも19ミリメートルであった。また,通り変位の安全限度値については,国鉄時代の鶴見事故技術調査委員会により,列車加重を加味した動的値による走行安全上の判定目標としてプラスマイナス36ミリメートルとされていた。なお,本件事故現場付近の曲線について,本件事故当時,曲線台帳上,曲線半径は400メートルとして管理されていた。また,軌道管理の状況は,軌道狂い検査表として管理されていたところ,同検査表は,仮に脱線事故が発生した場合,事故調査の重要な資料となるものであった。軌道変位検査の仕組み等(甲14ないし16,68,69,89,148)トラックマスターによる検査方法及び検査結果データの取り扱いについては,まず,トラックマスターを軌道上で走らせて物理的,機械的に測定(なお,通り変位及び高低変位については,本体側すなわち基準側のレールのみを測定し,反対側すなわち一輪側のレールはこの測定値などを元に論理的に計算される仕組みとなっている。)した実測値の元データ(2メートル弦で0.5メートル間隔で測定されたデータ)がトラックマスターに挿入されたPCカードに自動的に記録される。なお,通り変位の数値は,左右を問わず,軌間外方にでる場合を「+」,逆の場合は「-」として表示される。次に,このPCカードを被告会社備付けの各保線パソコンのトラックマスターシステムで読み取ると,10メートル弦のデータに変換されたTRDファイルが自動的に作成され,このTRDファイルと,線路別にシステムに事前登録されている基準値(スラック,カント,正矢量)の台帳データのファイルを読み込むことにより,基準値が自動的に差し引かれるなどした軌道狂い値(計算値)などがエクセルで表示される。なお,このとき,画面上の操作により,5メートル間隔(ピッチ)又は0.5メートル間隔(ピッチ)のいずれの表示にすることも可能である。(以下,0.5メートルピッチのデータは,単に「0.5メートルピッチのデータ」と表記することがある。)そして,データファイルの作成方法等により表示形式は異なるものの,前記の過程により作成したデータを印刷すると,軌道狂い検査表が紙媒体で作成される。このように,トラックマスターにより物理的,機械的に測定された元データは,その後,実測値や計算値については人為的な数値入力や変更作業を経ることなく,紙媒体としての軌道狂い検査表の作成が可能な仕組みであった。軌道変位検査の実施状況等(甲165)本件事故現場付近における本件事故直前の軌道変位検査は,平成25年6月7日,gらによってトラックマスターにより実施され,その際,gにより,その検査結果が記載された5メートルピッチの軌道狂い検査表が,軌間変位の数値が改ざんされる前の状態で作成・印刷され,y保線管理室において保管されていた。gは,印刷直前に,同検査表データの記事欄に,「R=400,C=10,S=5,V=21」などと手入力した。4 本件事故本件事故の発生(甲6ないし9,11)α3貨物駅発α4貨物ターミナル駅行き18両編成の貨物列車(以下「本件貨物列車」という。)は,同年9月19日午後6時4分,x線y駅を発車し,時速約20キロメートルで力行運転していたところ,同日午後6時5分頃,y駅構内2番線の分岐器24号手前であるキロ程27.064付近において,6両目(先頭のディーゼル機関車を含む。)の後台車左側車輪が最初に軌間内に脱線し,その後,6両目から9両目までが脱線した状態で停止し,本件事故が発生した。本件事故発生直後の対応状況等(被告人b,同c,同d)本件事故当時,出張中であった被告人b及び同cは,本件事故発生の連絡を受け,輸送障害発生時に現場情報が集約される施設指令が置かれている被告会社本社西ビル(以下,単に「西ビル」という。)の3階運行管理センターに向かった。被告人dは,当時,z方面に出張していたことから,本件事故の報告を受け,本件事故現場に向かい,同日午後7時45分頃,同現場に到着した。被告人dは,本件事故現場で脱線した車両や脱線痕などを確認し,本件貨物列車の進行方向左側の車輪が軌間内(内軌側)に脱輪していたことなどから,まくらぎや締結装置の不良が主な原因となって,軌間拡大が発生し,本件事故が発生したと考えた。そこで,被告人dは,被告人bに対して電話で,本件事故の原因等について上記のとおり伝えた。5 z保線所における軌間変位数値の改ざん状況等軌間変位数値の改ざん状況,正矢量の修正状況等(判示第1の1関係)(甲149)本件事故後,y保線管理室において,e2は,e1の指示により,キロ程27.063の軌間変位の数値が「39」であったのを「25」に改ざんして,軌道狂い検査表を作成した。(甲65のメール④添付の軌道狂い検査表。以下,「検査表①」という。検査表①のうち,測点番号5〔キロ程27.058〕ないし測点番号87〔キロ程27.099〕の軌道狂い値及び記事欄の記載を抜粋したものを別紙の別表1として末尾に添付する。)検査表①を被告人らが受け取った状況等(甲61,66,160,被告人b,同c)そして,検査表①のデータが,同日午後8時58分頃に本社保線課線路技術テーブルのlに,また,同日午後9時16分頃に西ビルの施設指令に,それぞれ送信された。西ビルにいた被告人cは,検査表①を見て,軌間変位の数値が25であることを確認し,また,通り変位の数値が大きいこと,また,記事欄の「R=400」と「V=21」に齟齬があることに気付いた。被告人cは,検査表①の右上余白に,「9:48」と記入したほか,キロ程27.063の軌間変位の数値「25」に丸印を記入し,記事欄に記載された「V=21」の「21」の下に矢印を引いて「31」と記入し,通りと高低の限界値欄にそれぞれの動的値の限界値である「27」と記入した上でこれを横線で消し,通り変位の一輪側の欄の上部に「A」と,通り変位及び高低変位の基準側の各欄の上部に「B」とそれぞれ書き込み,左側余白に線路のカーブの軌道を描くなどした。また,被告人cと被告会社鉄道事業本部専任部長のmは,検査表①に記載された通り変位の数値が大きいことについて話し合った。被告人bも検査表①を確認し,記事欄に「R=400」,「V=21」と記載された数値には齟齬があると感じた。また,被告人bは,通り変位に70台の数値を含む大きな値が並んでいること,軌間の数値が整備基準値を超過する25となっていることも確認した。本社保線課の状況等(証人i,被告人d)本社保線課にいたiは,西ビルの施設指令にいる被告人bらから,電話で複数回にわたり,検査表①の記事欄の「V=21」が間違っているのではないか,通り変位に大きな数値があるがこれは合っているのか,また,復旧に向けた軌道材料の調達状況等について問い合わせを受け,正矢量(V)の数値については現場に聞かない限り分からない,今現場に確認している旨回答した。また,iは同月20日午前0時頃,被告人cから通り変位の数値がこんなに大きいものかと聞かれたことから,正矢量が引かれていない可能性,台帳の曲線半径がそもそも間違っている可能性等,本社保線課において考えたことを伝えた。iは,本社保線課員を通じてz保線所に問い合わせた結果,通り変位の数値が大きい理由や正矢量(V)が21と記載されている理由が判明しなかったことから,同月19日夜から同月20日午前0時頃にかけて,被告人dに対し,電話で,正矢量(V)の値に疑義が生じていることから検査表の内容を確認してほしい旨伝えた。被告人dは,y保線管理室の事務室において,f所長から検査表①を受け取り,確認したところ,同検査表の記事欄には,Rが400であるにもかかわらず,Vが21ミリと記載されており誤りがあること,また軌間が25ミリと記載されていることに気付いた。そこで,被告人dは,f所長に対し,同検査表の数値に誤りがあるのではないかなどと言って,確認を指示した。検査表①のVの数値の修正等(甲66,119)その後,基準値欄が記載され,通りの基準値として「31」等と記載された軌道狂い検査表(甲65のメール⑥添付の軌道狂い検査表。以下,「検査表②」という。検査表②のうち,測点番号5〔キロ程27.058〕ないし測点番号87〔キロ程27.099〕の軌道狂い値等を抜粋したものを別紙の別表2として末尾に添付する。)が,同月20日午前1時11分頃,z保線所から本社保線課nにメール送信され,nは,検査表②を印刷した上で,iらに渡したほか,被告人bの机上にも一部置いた。そして,被告人bは,同日中に検査表②を見た。6 同月20日の状況等,通り変位数値改ざんに至る経緯等運輸安全委員会の報告要求の状況(甲20,21,142,323)oら,運輸安全委員会鉄道事故調査官(以下,「鉄道事故調査官」といい,oについては「o調査官」と表記する。)は,本件事故発生の一報を受け,同月20日朝,y保線管理室に向かった。o調査官らはy保線管理室に到着した後,同日午前9時52分頃から,被告人dを含む被告会社職員らと打ち合わせ会議(以下,「第1回打合せ会議」という。)を行った。第1回打合せ会議においては,被告会社安全推進部安全指導グループ主席であったpから本件事故の概況,今後の復旧スケジュール等が報告された。その中で,o調査官から,直近の軌道変位検査において異常が出ていたかどうか確認された際,被告人dは,もともとスラックが若干あることから正確な数字ではないが,軌間が3,4ミリ程度,基準値を超過していることのほか,通り変位にも問題がある旨伝えた。その後,鉄道事故調査官らは,本件事故現場の調査を開始し,レールの損傷状況を確認したり,また,本件貨物列車の運転士に対して聞き取り調査を行ったりした。そして,鉄道事故調査官らと被告人dを含む被告会社職員らは,同日午後3時50分頃から,y保線管理室において打合せ会議(以下,「第2回打合せ会議」という。)を行った。第2回打合せ会議において,鉄道事故調査官は,被告人dら被告会社職員に対し,報告期限を定めずに,y駅構内2番線の本件事故直近の軌道変位検査結果を報告するよう要求した。Q&Aに関する打合せ状況(甲53,103,証人q,被告人c)ア 被告会社保線課線路技術テーブル主席qは,同日,翌日の夕方に行われる予定であった本件事故に関する記者会見の想定問答用のQ&A(以下,「Q&A」という。)を作成する作業をしていた。この作業中,Q&AのA3には「軌道変位検査のうち,軌間と通りの変位量が基準値を超過している。」との記載が,Q4には「基準値と超過している数値は」との記載が,A4の「軌間」の検査結果欄には,「直線部」は「基準値内」,「曲線部 200≦R<600」は「25mm」との記載がそれぞれあり,「通り」の検査結果欄は空欄となっていた。イ qは,Q&Aを被告人b及び同cに手渡し,被告人dにメールで送信した上,同日午後2時過ぎ頃,被告人b及び同cとの間で,Q&Aについて打ち合わせた。その際,被告人bは,qに対し,本件事故現場付近の曲線半径はR400ではなく,もっときついR200程度ではないかなどと伝えたが,qから,脱線防止ガードが入っていないので250よりも大きい旨返答を受けると,それ以上の議論はなかった。さらに,この打合せの際,Q&AのQ2の「脱線した箇所はどのような軌道構造か?」と,それに対する答えとして,A2の「2番線と分岐器の間の曲線はR=400m,C=10mm,S=5mmである。」などが追加されることとなった。ウ 被告人cは,Q&Aの1枚目右上余白に「14:00」と記載し,最終ページの更Q&更Aを削除する意味のバツ印を記載するなどの手直しをし,「Q4.基準値と超過している数値は」の回答欄「A4.」の「検査結果」「通り」欄の空欄箇所に「75」と手書きで記入した。また,被告人cは,Q&Aに,通り変位の安全限度値が36ミリメートルであると記載すると,通り変位の数値が安全限度値を超えていることがマスコミに知られて騒がれるなどと考え,本社保線課管理・保安テーブル主席のrに対して,あえて書く必要はないのではないかなどと伝えた。通り変位数値の改ざん状況等(甲73,74,177,被告人d)ア 被告人dは,同日の日中,f所長から,検査表②と同じ数値が記載されており,記事欄に「R400」,「C10」,「S5」,「V31」と記載された検査表(甲57の33枚目ないし35枚目。以下「検査表②’」という。)を受け取り,その内容を見た。被告人dは,記事欄のVが31に変更されていたものの,その他の検査数値は従前のものと変わりがないように感じた。そこで,被告人dは,f所長に対し,通り変位の数値がこのままでいいのかなどと言って,同検査表の数値を再度確認するように指示した。なお,弁護人らは,かかる被告人dの発言は,検査表①を受け取った際のものである旨主張する。しかし,f所長は,下記のとおり,このやり取りの後,gに対して通り変位数値の書き換えを指示していることなどに照らせば,上記の事実が認められるのであって,この点に関する弁護人らの主張は採用できない。イ また,被告人dは,同日午後6時13分頃,i副課長と電話で,次のとおり話した。被告人dは,iから,「出すデータって,元のヤツ出すの。」,「V21って間違って,一番最初から我々が見てたヤツ。」などと尋ねられると,「いーや,あの31でもいいよ。」,「それは俺,明日まで,選ばす。」,「だからVの31のがいいんでしょ,これ。」と発言し,Vが21と記載されている検査表とVが31と記載されている検査表のどちらを運輸安全委員会に提出するのかについて話した。また,被告人dは,iから「いるいるってうるせんですよ,それ,どれ出すんだ,どれ出すんだって。」と運輸安全委員会に提出する検査表に関する被告人bの様子を聞いて,「だってどれ出すって,かえれないっしょ。」と発言した。さらに,被告人dは,「おまけにウチで言ってる25ミリだってあるし,あの75ミリもあるし。」,「これ,75ミリ何よって言われるぞ」などと発言した。その後,被告人dとiの間で,本件事故現場の復旧作業の進捗状況等の会話がなされた。7 z保線所における通り変位数値の改ざん(甲167,171)f所長は,前記被告人dの指示を受け,同日夜,y保線管理室において,gに対し,本件事故現場付近の通り変位の数値を小さく書き換えるよう指示した。gは,これに従ってキロ程27.068の通り変位の一輪側の数値を「-75」から「-42」に変更するなど,キロ程27.063からキロ程27.097までの通り変位(基準側及び一輪側)の数値を書き換えて改ざんした(甲65のメール⑦添付の軌道狂い検査表。以下,この改ざん後の検査表を「検査表③」という。検査表③のうち,測点番号5〔キロ程27.058〕ないし測点番号87〔キロ程27.099〕の軌道狂い値及び記事欄の記載を抜粋したものを別紙の別表3として末尾に添付する。)。8 通り変位の数値改ざん後の検査表を被告人らが受け取った状況等被告人dが受け取った状況等(証人q,被告人b,同d)被告人dは,同日夜,y保線管理室において,検査表③を受け取ると,同日午後7時51分頃,部下を通じて,運輸安全委員会に提出する予定のものであるとして,検査表③を本社保線課にファックス送信した。被告人dは,その頃,本社保線課にいたqに対し,電話で,運輸安全委員会に提出する検査表をファックスで送ったので被告人bに見せてほしい旨伝えた。qは,平成24年に発生したβ3線における2件の脱線事故の際,被告人bが運輸安全委員会に提出する資料に目を通していたことから,今回の事故に関しても被告人bが目を通すものと考え,検査表③を被告人bのもとへ届けた。被告人bが受け取った状況等(被告人b,同d)被告人bは,同日夜,本社保線課で検査表③を受け取り,これを見た。そして,被告人bと被告人dは,電話で,検査表③を運輸安全委員会に提出することなどについて話し,被告人bはその提出を了承した。被告人cが受け取った状況等(甲50,62,65,71,102,127)被告人bは,qに対し,西ビルの施設指令にいる被告人cに対しても検査表③を送信するよう指示した。qは,同日午後8時11分頃,タイトル欄に「運輸安全委員会提出トラマスデータ」,本文に「d担当課長から,添付ファイルを運輸安全委員会に提出する予定とのことです。」と記載して,検査表③を添付して,社内メールで西ビルの施設指令に送信した。当時,施設指令員として勤務していたsは,qから,運輸安全委員会に提出する書類をメールで送ったので,被告人cに渡すように言われたため,社内メールに添付されていた検査表③を印刷した。当時,被告人cは会議中で不在であったため,sは,印刷した検査表③の上部余白に「q主席より 運輸安全委員会に提出するトラマデータ c担当課長へ」と黄色い付箋に赤字で記載して貼付し,被告人cらが座っていたテーブルに置いた。また,sは,被告人cが検査表を混同しないように,テーブルの上に置いてあった検査表①の左上余白に赤字で「◎基データ」と赤ペンで記載した。そして,sは,被告人cに,qから送信されてきた検査表③をテーブルの上に置いた旨伝え,被告人cは,これらの検査表を見た。その後の被告人bの行動(甲55,証人q,被告人b)被告人bは,同日午後9時頃,qに対し,数値を変えておくように指示した。qは,この指示を,Q&Aの通りの検査結果欄の数値を検査表③の通り変位の最大値に変更する指示と理解して,同欄に「45」と記入した。また,被告人bは,同日夜に検査表③の写しを作成した上で,同写しに次の数値や内容等を手書きで記入した。ア 記事欄の余白に,検査表②に記載された「通りの基準値」と「通りの基準側と通り一輪側の各計算値」を元に算出した,実測値に近似する数値である「V生値」イ 記事欄の右側余白に「諸元正矢」として,事故現場の曲線半径400メートルに対する正矢量ウ 記事欄の右側余白に「現地正矢」として,事故現場の曲線半径を210メートルと仮定し,曲線の始終点が1マスずつ上にずれていると仮定した場合の正矢量エ 通り基準側と通り一輪側の計算値欄の余白に「V生値」から曲線半径を210メートルと仮定するなどした「現地正矢」を加除した数値オ 検査表右上部の余白に,「現地はR210m程度の曲線が始点側にズレて入っている。測定15が脱線開始点付近。軌間が基準値を超えている。(高低,通りも)R210としても通り変位は20~25程度のものが一部見られる。」被告人bのtへの報告状況(証人t,被告人b)被告人bは,同日夜,被告会社事業本部工務部長tに対し,検査表③(前記の「V生値」等の書き込みのないもの)を示し,同検査表③では半径が400となっているが,実際の現場の半径はもう少し小さいようである,現場の半径に合わせると通り変位の数値はこれくらいになる旨説明した上,検査表③を運輸安全委員会に提出する旨報告し,tの了承を得た。9 同月21日の状況等水準の限界値の訂正等(甲54,証人u)被告人dは,同月21日午前9時19分頃,本社保線課にいた同課管理・保安テーブル主席のuに対し,電話で検査表③の水準の限界値欄の数値を「19」から「18」に訂正して運輸安全委員会に提出する旨を伝えるとともに,そのことを被告人bに伝達するように指示した。検査表を運輸安全委員会に提出した状況等(甲6,23,証人o,被告人d)被告人dは,同日午前9時35分頃からy保線管理室において行われた打合せ会議(以下,「第3回打合せ会議」という。出席者は第1回及び第2回打合せ会議と同様であった。)に出席し,鉄道事故調査官に対し,検査表③の水準の限界値欄を18に訂正したものを,被告会社からの報告として提出した。被告人dは,その際,鉄道事故調査官に対し,本件事故現場付近の測定数値につき,通りが45,高低がマイナス23,軌間がプラス25と基準値オーバーがみられることを報告した。そして,被告人dは,軌間変位については基準値が19ミリであることから6ミリの超過であること,通りも高低も一部基準値オーバーがみられることから,あまりいい結果でない旨報告した。また,被告人dは,基準値超過の箇所がないかという問い合わせに対しては,本件事故は,軌間に動的な拡大がみられることから,軌間の数値に着目したところ,その軌間に大きな数値があった旨も報告した。また,鉄道事故調査官は,被告人dら被告会社職員に対して,本件事故現場付近の直近の検査データについて,0.5メートルピッチのものの提出を求めた。整理表作成に着手した状況等(甲24,26,27,被告人c)国土交通省は,同日午後10時50分頃,被告人c宛に「軌道の保守管理に係る緊急点検について」と題する同省鉄道局長の文書をメール送信し,被告会社に対し,報告期限を同月23日と定めた上,被告会社管内における本線及び副本線の直近の軌道変位検査結果のうち,整備基準値を超過する箇所及びその測定値等の報告を求めた。これを受けて,被告人cは,保線課職員に対し,整理表の作成を指示するなどした。10 同月23日の状況等整理表の作成状況等(甲28,被告人c)前記国土交通省からの報告要求を受け,被告会社では,本社保線課において,職員が分担して全道の整備基準値超過箇所等を確認し,国土交通省から指定された様式の表に記入していく作業が進められた。その後,被告人cは,国土交通省から作業途中の整理表を送付するよう求められたため,保線課職員に指示し,同月23日午後1時2分頃,作成途中であった暫定版整理表(y駅構内2番線のキロ程27.063の軌間変位の測定値が「25」,キロ程27.068の通り変位一輪側の測定値が「-75」などと記載されたもの)を国土交通省職員宛にメール送信した。暫定版整理表の訂正(甲77,78,119,証人h,被告人c)その後,被告人cの指示を受けて暫定版整理表の数値を再確認していたnが,同月21日に運輸安全委員会に提出済みであった検査表③と見比べたところ,y駅構内2番線の通り変位の数値に齟齬があることに気付いた。nは,暫定版整理表と齟齬があった検査表③の数値に青色マーカーで印を付けるなどした上,本社保線課線路技術テーブル主席hに上記マーキングをした検査表③を手渡し,これが運輸安全委員会に提出されたものである旨説明するとともに,暫定版整理表の数値を検査表③の数値に変更するよう依頼した。hは,nからの上記依頼が被告人cの了解を得たものであることをnに確認した上,暫定版整理表のデータのうちy駅構内2番線のキロ程27.068の通り一輪側の数値を「-75」から「-42」に書き換えるなどした。そして,hは,数値を書き換えた整理表(軌間25,通り-42などと記載された完成版整理表)及びnがマーキングした検査表③を,被告人cに見せながら,y駅構内2番線の数値は運輸安全委員会に提出した検査表③の内容に変更した旨説明した。被告人cは,hに対し,通り変位の数値が変更された理由や根拠について確認することなく,その変更を了承した。完成版整理表の提出状況等(甲30,119,証人h,被告人c,同b)被告人cは,同月23日夜,被告人bに完成版整理表を見せてその提出の了承を求めた。被告人bは,完成版整理表の内容が検査表③の内容と同一であろうと考えた上で,その提出を了承した。その後,被告人cは,tの了解も得て本社保線課に戻ると,nやhらに対し,通りの大きいところは分岐の付帯曲線で急なカーブが入っている,その場所を押さえておいた方がいい,分岐の付帯曲線に印を付けようなどと指示して,完成版整理表のうち,通り変位が非常に大きい数値となっていたy2番線,y5番線,α5の1番線及びα6の3番線の備考欄に△印を追記させるとともに,末尾に「△:現地の状況に合わせた曲線を挿入しているため,計画諸元と異なっていることから再精査します。」と追記させた。その後,被告人cは,本社保線課において同保線課職員rに指示して,同日午後10時1分頃,完成版整理表を国土交通省鉄道局の職員らに宛ててメール送信させた。11 補修実績のねつ造に至る経緯等(甲79,173,183,326,証人j,被告人c)本社保線課において,整理表の作成を進めていたが,同日,整備基準値超過箇所の超過認識日等を調べることになった。そこで,被告人cは,同日午前中,f所長に電話してトラックマスターによる検査後の整備基準値超過箇所の補修歴の確認等を指示したほか,α7保線所,α8工務所にも同様の指示をした。f所長の指示に基づいて,j,e1,vらz保線所の職員らが確認作業をしたところ,y保線管理室については,整備基準値超過箇所について過去の補修実績がなかった。そこで,f所長が,被告人cに対し,線路はよくなっているが補修実績がない旨連絡した。これに対し,被告人cは,f所長に対し,補修した実績がなければ会社が潰れる,補修したのであれば実績があるはずでそれをよく探してほしい,補修していても保線システムに入力しない場合もあるのではないか,当時,作業に当たった職員の記憶でもいいから探してみるようになどと強い口調で言った。f所長は,被告人cが暗に補修実績をねつ造するように指示しているものと理解し,j助役やe1らz保線所の職員に被告人cの発言を伝えるなどして,補修実績のねつ造を指示した。これを受けて,v,e1らが,補修実績のねつ造を行い,同月24日,本社保線課から確認のために送られていた整理表に架空の補修日等を記載するなどし,その整理表が被告人cに送付された。前記ねつ造作業を終えた後,f所長は,ねつ造した補修実績の補修日が備考欄右余白に手書きされた暫定版整理表を,被告人cにファックス送信したところ,被告人cから,「ねつ造した補修日」だけでなく,その補修日の後に行ったトラックマスターの検査日及びその測定値を記載するように指示を受けた。その後,z保線所において,暫定版整理表の備考欄に,トラックマスターの検査日(補修日〔ねつ造〕の直後に実施したことにした日)が,補修日(ねつ造)右横の余白に,補修後のトラックマスター測定値がそれぞれ手書きで記載された。そして,これらねつ造された補修実績が加筆された暫定版整理表が,被告人cら宛にメール送信された。なお,弁護人らは,被告人cは,ねつ造した補修日の後に行われた検査日や測定値の記載を指示していない旨主張する。しかし,f所長は,ねつ造した補修実績の補修日が記入された暫定版整理表を被告人cに送信していること,その後,z保線所において,上記検査日や測定値の記載がなされていることなどに照らすと,この点は被告人cの指示があったと認めるのが相当である。12 同年10月以降の状況(検査データと検査表③の通り変位数値の齟齬に関する対応状況等)(甲101,182,324,325,証人l,同j,被告人c)lは,同年10月上旬頃,事前に入手していた本件事故直近の本件事故現場付近の検査データの実測値を元に,自ら0.5メートルピッチの諸元(V,C,S)を再計算して,運輸安全委員会から提出を求められていた0.5メートルピッチの軌道変位検査データを作成していた。その際,軌間の計算値が運輸安全委員会に提出した検査表③の「25」ではなく,「24」になったため,lは,被告人cに指示を仰いだ。被告人cは,lに対し,lが作成したデータの「24」を運輸安全委員会に提出した数値である「25」に合わせるように指示したものの,具体的な方法については伝えなかった。lはこれを受け,データの実測値を変更することにより計算値を「25」に変更した。その後,lが訂正後のデータを印刷した11枚綴りの検査表を被告人dに見せたところ,被告人dは,これを十数秒程度かけて見た上で,lに対し,このデータと運輸安全委員会に提出した検査表③とを確認するように指示した。そこで,lは,検査表③を取り寄せて見比べたところ,lが作成したデータよりも検査表③に記載された通り変位の数値が小さいことに気付いたため,その旨被告人cに報告した。この報告を受けた被告人cは,lに対し,強い口調で,異なるデータが2種類存在する理由を現場に確認するよう指示し,これを受けたlは,電話でjに調査を依頼した。jは,f所長や職員から事情を聞き取ったものの,記事欄のVの値が10違うものがあったためである,シートが2枚あり,間違いというシートは本当は正解だが,間違いと書いてあったので違う方を送ったなどの回答しか得られなかった。jは,これでは説明にならないなどと考え,「体裁を整えて」という言葉を自ら付け加えた上で,「試しに演算したシートを正規なものと勘違いし,体裁を整えて保線課に送ってしまった。」旨のメモを作成し,メールでlに送信した。lは,前記メモを受け取った後,記載された理由に納得できなかったため,電話でjに確認したが,メモと同旨の説明を受けることしかできなかった。lは,その説明に完全には納得できなかったものの,その内容を被告人cに報告した。被告人cも,lの説明に完全に納得できなかったが,lに対して,国土交通省に提出した整理表は訂正しておく旨の説明をした。そして,被告人cは,検査表③が作成された経緯等についての調査指示はせず,その後,本社保線課においてこの点の調査はなされなかった。被告人cは,同月7日午後2時43分頃,電話で,国土交通省鉄道局の係長に対し,提出済みの完成版整理表について,「ちょっとVの計算を間違えたところがあって。」,「運輸安全委員会にはもう一回出し直せって,何回も差し替えたりしてたもんだから,正しいもの出し直せって言われて。」,「最終的に,今回お出ししたのが,ちっと間違っていることが分かったんですよ。」,「最大値変わるわけでもないんで。」,「1ミリ,1ミリ低かった。」などと言った。また,被告人cは,同日午後4時49分頃,電話で,同局の課長補佐に対し,「正矢量の取り扱いを誤ったところが分かりまして,省さんのまとめられた番号には影響しないんですけれども,あの最大値も変わらないんですが,測定値が変わるところが何か所かある。」などと伝えた。13 改ざん発覚経緯(甲5,340,343,証人o,同p,同l)同年11月,z保線管理室における検査データ改ざん疑惑(判示第3関係)についての報道がなされ,被告会社において,管内全域の検査データ改ざんの有無等についての調査が開始された。その中で,y保線管理室に存在したはずの本件事故現場における本件事故直近の軌道狂い検査のトラックマスター元データ(以下,「元データ」という。)については,データが上書きされるなどして既に存在しないと考えられたため,それ以上の所在調査は行われなかった。その後,同年12月2日,被告人dは,運輸安全委員会から質疑を受けた,y保線管理室に係る資料の廃棄理由等の調査のため,同管理室に赴いた。その際,lが,自主的に,保線パソコン内をみたところ,元データを発見したため,これを持ち帰った。lが持ち帰った元データを確認したところ,軌間が「39」であることに気付いた。lは,脱線事故現場であるキロ程27.063の前後約10か所の軌間の数値が不自然に変わっていることから,これらの数値が改ざんされたものであると考え,その旨被告人dに報告した。それを受けて,被告人dは,lらと共にy保線管理室に出向き,gらに聞き取り調査を実施したところ,gが軌間変位の数値を改ざんしたことを認めた。第4 判断手順以上の事実を前提に,本件各争点についての判断を示すこととする。まず,検察官は,被告人らが改ざんの認識を有していたことの前提として,検査表①に記載された非常に大きな通り変位の数値を見た被告人らにおいて,通り変位が本件事故原因の要因の1つになり得ることを認識していたと主張することから,まず,通り変位の性質,軌間拡大・事故原因との関係や,被告人らが検査表①を見た際の通り変位数値と事故原因に関する認識等についての判断を示す(判断事項1)。そして,その判断を前提に,検査表①,同②ないし②’から同③への数値の変化や本件事故以降の被告人らの言動等を踏まえて,被告人らがそれぞれ検査データの改ざんについて,少なくとも未必的に認識,認容していたと認められるかについての判断を示す(判断事項2)。第5 判断事項1について1 通り変位の性質,軌間拡大・事故原因との関係等検察官は,被告人らは通り変位が軌間拡大に影響を与えたことが本件事故の一要因であると認識していたことから,本件事故現場付近の検査表に記載された通り変位数値にも関心を抱いていた,また,被告会社において,非常に大きな通り変位の数値が把握されながら,これを放置していたことが公表されると,マスコミや世間から大きな非難を受けるため,被告人らには,かかる非難を軽減等するために通り変位数値の改ざんを容認するという動機がある旨主張している。他方,弁護人らは,軌間内脱線と通り変位との客観的な関連性は,間接的,限定的なものにとどまる,軌間内脱線事故発生時には,軌間拡大の主原因が締結装置等の不具合であることが前提となるので,通り変位数値が関心の対象となることはなく,検査表上の通り変位数値についても脱線原因との関係で注視することはない,被告人らは,検査表上の大きな通り変位数値について,曲線管理等に誤りがあり,訂正されるべきものと考えていたにすぎないなどと主張する。まず,本件事故は,線路の軌間が整備基準値を大幅に上回って拡大したことにより,軌間内に車輪が脱輪したといういわゆる軌間内脱線であることは,関係証拠上容易に認められる。以下では,専門家証人,被告会社保線課に勤務し,または勤務経験を有する従業員(以下,「保線課証人」ということがある。)等の証人らの各供述を踏まえ,①本件事故現場付近において,通り変位が生じていたことにより,どの程度軌間拡大に影響を与えたか,②本件事故原因との関係で,通り変位の影響について被告人らはどのように認識していたと認められるかを順に検討していくこととする。2 本件事故現場付近における軌間拡大に対して,通り変位が与えた影響の有無及び程度並びにこれらについての被告人らの認識この点について,検察官は,主にw1証人(本件事故当時,運輸安全委員会鉄道事故調査委員会の鉄道部会長であり,鉄道事故調査報告書〔甲9〕の作成等に関与した者)の供述に基づき,通り変位が軌間拡大に影響を与えたことが本件事故の原因の一要因である旨主張する。そこで検討すると,w1証人は,本件において軌間拡大が生じたのは,他にも原因がありうると留保を付けつつも,主に脱線箇所付近の通り変位が大きくなったことによる横圧の増大が原因である旨述べる。すなわち,脱線箇所付近の線路には大きな軌間変位と通り変位が生じており,さらにまくらぎや犬くぎといった締結装置に不具合があったこともあり,列車が当該線路を走行すると,大きな通り変位の影響で発生する横圧が増大して,軌間がさらに拡大し,本件事故につながったという。他方,γ1で保線実務を経験し,その後,γ2大学工学部教授となり,軌道変位やまくらぎの支持に関する研究といった鉄道工学等を専門とするw2証人及びγ3において長年保線業務に携わり,現在,線路の設計・施工・管理等を業とする株式会社γ4の技術顧問を務めるw3証人は,本件事故現場付近は列車が低速度で走行する駅構内の区間であることなどから,通り変位によって発生する横圧が軌間拡大に与えた影響は小さい旨述べる。もっとも,両証人も,一般的に,通り変位が大きくなると発生する横圧が増大すること,締結装置に不具合があると,列車通過時に発生する横圧が軌間拡大に影響することを否定するものではない。また,w3証人は,曲線部を列車が通過する際に生じる横圧の原因としては,列車の速度に左右される遠心力,輪軸や台車の転向に伴い生じる摩擦力(これは列車の速度には影響を受けない。)のほか,通り変位が生じている曲線部には車体が揺れ動くことによって生じる横圧,カント不足によって生じる遠心力が考えられるが,最終的に発生する横圧との関係で,これらがそれぞれどの程度寄与しているかは,カントの大小,車輪やレールの整備状態等によって変わる旨述べる。かかるw3証人の供述は,専門的知見から合理的な根拠をもって説明するものであり,信用できる。以上によれば,本件事故原因である軌間拡大の一要因として,脱線箇所付近の通り変位が増大していたことが挙げられるものの,どの程度,通り変位が軌間拡大に影響を与えたかについては,専門家それぞれの見方が異なっているといえる。以上を前提として,次に,本件事故原因との関係で軌道変位検査表を確認する際の数値確認のあり方や,本件事故後の被告人らの認識についてみていく。軌間内脱線事故が発生した際の軌道変位検査表の確認のあり方ア 本件事故直後における事故原因や,事故原因との関係で検査表①に記載された数値のうちどの数値に着目したかについて,被告人らは概ね以下のとおり述べる。被告人dは,本件事故現場が分岐器手前の列車の速度が遅い区間であること,同事故現場の状況から,事故原因が軌間拡大にあると考えた旨述べる。被告人bは,被告人dから本件事故現場の状況等の報告を受け,軌間拡大が事故原因であると考えた旨述べる。被告人cは,脱線事故では軌間拡大が原因となるものが多く,また脱線現場は列車の速度が遅い副本線であることから,検査表①を見た際には軌間の数値に着目していた旨述べる。イ この点に関して,γ5株式会社鉄道事業本部工務部保線課長を務めるw4証人は,軌間内脱線についても,事故発生直後はどこに原因があるか分からないので,軌間,水準,通り,高低及び平面性の5原則(以下,これら5つを併せて「5項目」と表記することがある。)のすべてを確認することが重要であると述べる。また,γ6鉄道本部施設部施設技術室長を務めるw5証人も,軌道管理5項目は基本的にすべてが脱線に影響し,通り変位が大きいと横圧が加わって軌間変位に影響するため,軌間内脱線の場合,軌間拡大の原因として通り変位も関係する,また,軌間拡大が事故原因である,事故現場付近は低速走行区間である旨聞いたとしても,検査表では軌道管理項目を一通り確認するなどと述べる。このように,他の鉄道会社の保線部門の責任者は,それぞれ,脱線事故が軌間内脱線であったり,軌間拡大を原因とするものであったりしても,軌間変位のみならず,通り変位を含む軌道管理項目すべてを確認することが重要であると述べている。また,検察官が主張するように,保線課証人であるq証人,m証人及びl証人はそれぞれ,通り変位が軌間内脱線に影響する旨述べ,さらにこのような知見は被告会社の研修で取り扱われ,社内教育で使用される保線技術の教材に記載されている旨述べる。ウ 他方で,保線課証人であるi証人及びu証人は,軌間拡大による脱線事故発生の際には軌間変位の数値に着目することが重要と考えている旨述べる。すなわち,i証人は,軌間内脱線であれば軌間拡大の問題になり,軌間の保持,拡大はまくらぎの状態に支配されるので,通り変位ではなくまくらぎの状態を確認する,まくらぎの状態が健全で通り変位が大きい場合には,車輪がレールの外側に飛び出す乗り上がり脱線等になるため,軌間内脱線とでは着目点が異なる旨述べる。また,u証人も,本件事故当日に検査表①を見た際,脱線事故の原因との関係では軌間の数値に着目した旨述べる。エ さらに,検察官がその主張の根拠とするq証人,m証人及びl証人の各供述を詳しくみると,むしろ被告人らの認識に沿うものといえる。すなわち,q証人は,通り変位は軌間内脱線の発生には直接影響しない旨述べた上で,通り変位が非常に大きい場合には,横圧が生じ,長い目で見れば犬くぎの支持力を弱めていく可能性があるので間接的な影響がある,このことは被告会社で使用されている社内通信教育講座保線技術という資料等に記載されている旨述べるにとどまる。さらに,q証人は,同年9月20日午前にQ&Aを作成するために検査表①を見た際には,本件事故が軌間内脱線であったことから軌間の数値に着目し,通りを含むその他の数値は目を通した程度である旨述べる。m証人は,通り変位が軌間拡大に影響するか否かについて全く影響がないとは言い切れないが,保線に関する業務に携わった経験上,通り変位が軌間拡大に影響するかについては考えたことはない旨述べる。l証人は,一般的に,締結装置が緩む原因として,曲線部等を列車が通過する際の荷重や横圧があることや,線路の継ぎ目部分で角折れが生じていた場合に列車がくり返し通過することで横圧が加わり,締結装置にダメージを与えていくことが考えられる旨述べ,また,このような知識は,研修センターでの座学や教材,現場実務で身に付けるものである旨述べる。また,l証人は,本件事故が軌間内脱線であると聞いていない状況で検査表①を見たが,軌間の数値が25と大きいがこれだけでは脱線に至らない,通り変位の数値は大きいが,経験上,副本線や側線においては,諸元に誤りがあることがそれなりにあったため,この通り数値も,位置ずれ,線形のずれなど,諸元に誤りがあり,脱線原因になるとまでは思わなかった旨述べている。このように,検察官が主張の根拠とするq証人,m証人及びl証人の各供述によっても,被告会社における研修等では,大きな通り変位があることで締結装置にダメージを与えるなどして間接的に軌間拡大に影響するという限度で取り扱われていることが認められる。すなわち,被告人bが述べるように,通り変位が大きくなることで,列車通過時に発生する横圧が増大し,それにより軌間が押し広げられる方向に力が作用するが,これにより軌間拡大が発生するということは,発生する横圧に対して軌道が有している締結力が不足していることが前提となるため,軌間拡大防止は,不良まくらぎの管理である趣旨と理解できる。この点,w1証人が,軌間拡大は締結力不足が大前提である旨述べていることとも合致する。オ 続いて,w2証人及びw3証人のこの点に関する供述をみる。w2証人は,横圧によって軌間が拡大し,その結果通り変位に影響はあるものの,まずは軌間変位の数値を確認すれば足りる旨述べる。また,w3証人も,本件事故現場を確認した者から,軌間拡大の情報が入ったことを前提とすると,検査表を見る際には軌間の数値に着目する旨述べる。さらに,w3証人は,軌間内脱線であるとしても通りの数値にも着目すべきという意見については,新人教育のテキストの内容であるとすれば理解できるが,既に事故現場の調査が行われ,まくらぎが腐食している,犬くぎが抜け上がっている,軌間内脱輪であるという情報が入れば,検査表に記載された5項目すべてを確認する必要はないと述べる。この点,検察官が指摘するように,w3証人と被告会社は現在業務上関係があること,被告会社副社長(供述当時)e12証人と同じγ3の出身であることや,w3証人の供述状況及び供述態度に照らすと,その信用性については慎重に判断すべきではある。もっとも,w3証人の上記供述箇所についてはw2証人だけでなく,qら保線課証人の前記供述とも整合している。また,w3証人は,事故現場を確認して,線形が違うことが分かったとしたら,運輸安全委員会に検査表を提出する際,通りの数値が基準値を超えていることだけを指摘して,それ以上説明しないということはありえないなどと,被告人dが第1回打合せ会議ないし第3回打合せ会議で線形が違う可能性について説明しなかったことと相反する供述もしており,必ずしも,被告人らにとって有利なことばかり供述するものではないことも踏まえると,その信用性に疑問はない。以上によれば,前記ウ及びエで検討した保線課証人らの供述は,w2及びw3両専門家証人の供述に沿うものと認められる。カ これらに加え,w5証人も述べるように,保線実務に携わる者は,大きな通り変位が生じている場合には乗り上がり脱線を想定することも踏まえると,本件事故現場に赴き,線路や車両の状態等を確認した被告人d自身や,その情報をもとに検査表を見た被告人bにおいて,本件事故原因との関係では軌間の数値に注目したというのも合理的といえる。また,被告人cにおいて,本件事故原因との関係では,軌間の数値に着目したというのも自然なものとして理解できる。キ 確かに,w1証人の供述によれば,本件事故原因との関係では通り変位が重要であるともいい得る。しかし,w1証人は,主に事故再発防止の観点から,通り変位が軌間拡大に影響を及ぼしたことが重要であると述べており,脱線事故発生を受けて,その直後,鉄道会社として,線路や車両の復旧も含めて動き出す立場とは異なる。なお,w1証人も,軌間拡大の原因に通り変位が含まれるとの留保を付けつつも,被告人らが,本件事故の原因は軌間拡大である,犬くぎの状態が悪いのではないか,まくらぎが劣化しているのではないかと考えたこと自体は基本的に間違っていないとも述べている。また,軌間内脱線であっても5項目すべてを確認すべきというw4証人及びw5証人の供述は,保線に関する教材や研修内容等に沿った尊重すべき意見ではあるが,かかる供述をもってしても,本件事故との関係で軌間変位に着目したという被告人らの考え方や供述が不合理であるとまではいえず,ましてや,両証人の供述をもって,被告人らが,本件脱線事故発生を受けて,通り変位が本件事故原因の一要因であるとして通り変位の数値に着目していたとは到底認められない。ク もっとも,本件事故発生後,被告人らはそれぞれ,検査表①に記載された通り変位数値が非常に大きいことなどに関心を示す言動をしているので,以下その点も踏まえて検討する。3 検査表①を見た際の通り変位数値等に関する被告人らの認識被告人らは,検査表①を見た際,記事欄に「R=400」,「V=21」と記載されているが,これは誤りであると考えた旨それぞれ述べる。また,被告人b及び同dは,本件事故現場付近の通り変位について,検査表①に記載された数値が非常に大きかったことから,当該箇所には,実際には,台帳で管理されているよりも小さな曲線が存在するなど,ずさんな線形管理が行われているのではないかと考えた旨述べる。そこで,被告人らが,検査表①を見た際やそれに近接する時点において,非常に大きな通り変位数値が記載されていることを把握して,何を認識したといえるかについてみていく。この点,被告会社における軌道狂い検査表の記事欄の数値は,実測値や計算値には反映されない仕組みであり,そのことを被告人らは把握していた。もっとも,同記事欄に記載された数値は,当該曲線部分の諸元の管理を表すものであることから,記事欄の数値が誤っていることは,基準値欄の登録数値も誤っている可能性を示すものといえる。そして,検査表①記載の曲線半径(R)と正矢量(V)には明らかな齟齬があり,また,正矢量は通り基準値の登録数値を算定する前提となるものである。そうすると,齟齬が生じている曲線半径と正矢量を確認することで,基準値欄の登録数値の誤りが判明し,登録数値が訂正され,その結果,通り変位の数値が訂正・変更されることもあり得るといえる。したがって,被告人らにおいて,検査表①の記事欄に記載された曲線半径と正矢量に齟齬があることに気付き,これが訂正されることによって,通り変位数値も変わる可能性があると認識したというのは自然かつ合理的といえる。続いて,被告人b及び同dが,線形管理に疑いを抱いたという点についてみる。ア まず,被告人bは,本件事故発生日である同月19日夜,iに対し,電話で,通り変位の数値が正しいものか確認していること,翌20日,qに対し,本件事故現場付近の曲線半径はR400ではなく,R200程度ではないかと話したこと,同日,検査表③の写しを作成して,R210を前提とした場合の試算を記載したこと,同日,tに実際の現場の曲線半径はR400よりも小さい可能性がある旨説明するなど,通り変位の数値に疑問を抱いた上,本件事故現場付近の曲線は,台帳に記載された曲線半径(R)よりも小さい可能性があると考えたことを前提とする行動を取っている。イ この点に関する証人らの供述をみると,w3証人を除き,w4証人及びw5証人を含む保線実務の経験を有する証人で,検査表①に記載された通り変位マイナス75のような非常に大きな数値を見たことがあると述べた者はいない。そして,m,l,i及びqの各保線課証人は,それぞれ,本件事故後に検査表①を見た際,通り変位の数値が非常に大きかったことから,Vがそもそも差し引かれていない,台帳上の曲線半径に誤りがある,台帳上の曲線半径は合っているが現場実体が違う,曲線の始終点がずれているなどの可能性を考えた旨述べる。また,l証人は,保線現場の検査データを見てきた経験上,副本線や側線において,検査表の諸元に誤りが入ることがあると述べ,u証人も,台帳登録時の諸元を入れ間違えたことがあるなどと述べる。以上の各証人の供述に照らすと,保線実務に携わる者が,検査表①を見た際,非常に大きな通り変位の数値が記載されていることに気付き,台帳で管理されているよりも小さな曲線が存在する可能性を含む種々の原因を考えて,通り変位の数値に誤りがあるのではないかと考えることが認められる。この点に関して,w4証人やw5証人は,検査表①の通り変位の数値を見て,実測値が書かれているのではないかと考える旨述べた上で,実際の線形は思い浮かばない,レールの継ぎ目箇所で角折れが生じているのではないかと思う旨それぞれ述べている。特に,w4証人は,Rが400と記載されているが,もう少し小さいのではないかと考える旨述べている。このように,w4証人及びw5証人の供述は,被告人b及び同dが述べる前記認識と矛盾するものではない。さらに,i証人及びnはそれぞれ,検査表①の大きな通り変位の数値の並びは,プラス,マイナスの符号が同じであることから,現場の曲線半径はR400ではないと考える旨述べ,w3証人も同趣旨のことを述べている。そうすると,検査表①の非常に大きな通り変位について,プラス,マイナスの符号が連続していることに着目すると,現場の曲線半径はR400よりも小さい可能性があることが具体的に想起されると認められる。ウ 以上の各証人の供述は,被告人b及び同dが前記のように考えたことと整合的である。また,被告人bは,通り基準側と通り一輪側でそれぞれプラス,マイナスの変位数値が並んでいることに気付き,この点について,基準値算定の前提となる曲線半径が現況と異なっており,それが影響して非常に大きな通り変位数値が記載されていると推測した旨述べているが,このことは,検査表①を見た後の被告人bの言動に現れているほか,各証人の前記供述に沿うものである。さらに,被告人bは,本件脱線事故現場がいわゆる付帯曲線であり,台帳諸元と現況とが違うことがそれなりにある箇所であると考えた旨,具体的な根拠も述べている。そして,被告人bは,平成19年4月にα9市内の側線において発生した脱線事故に対応した際,直近の検査表の軌間変位はプラス15であったが木まくらぎの状態が悪かったこと,通り変位がプラス42と整備基準値を超えていたこと,台帳諸元の曲線半径はR230であったが,現況はR180であったこと,同事故の原因はまくら木の不良を放置したことによる軌間拡大にあるとされたという経験があると述べるが,このことにも整合する。エ また,被告人b及び同dがそれぞれ,現況はR400よりも小さい曲線が存在する可能性があるなどと前記のように考えたことは,本件事故後に,本件事故現場の曲線半径について調査が行われたところ,曲線半径は230メートルであると推察されたことにも整合的である。オ この点,検察官は,被告人bについて,Q&A作成の際,qから曲線半径(R)は250よりも大きい旨言われるとそれ以上議論しなかったこと,Q&Aに通り変位について現況を正しく表していない旨の説明等が一切記載されなかったことを指摘し,検査表①記載の通り変位は現況を正しく表していないと考えたという被告人bの供述は信用できない,Q&A作成経緯や記載内容等を踏まえれば,被告人bは,対外的にも本件事故との関係で,通り変位の数値を公表しようと考えていたといえる旨主張する。しかし,被告人bとqがQ&Aについて打ち合わせをした時点では,検査表①と現況の違いについては,あくまで可能性の1つにすぎなかったのであるから,検察官が指摘する被告人bの上記対応等はいずれも不自然,不合理なものとはいえない。また,Q&Aに関する指摘についても,既に作成されていたQ&Aの案に軌間と通りのみが印字されており,通りの検査結果欄が空欄であったのであるから,この箇所に75と記入するように指示したにすぎないと理解できるのであって,被告人bにおいて,本件事故原因との関係で通り変位の数値に着目していたとまでは認められない。次に,検察官は,被告人dについて,当初から検査表①の通り変位は,曲線半径のずれや線形管理の問題であると認識していたと述べるが,その旨を第1回打合せ会議等で言及しておらず不自然である旨主張する。しかし,弁護人が的確に指摘するように,第1回打合せ会議のやり取りを見ると,本件事故発生を受けて,事故概況,事故現場の保全や復旧,事故原因や検査時の異常値,事故現場や車両の状況等,様々な点について,報告や質疑等が行われている。このように,本件事故現場付近の直近の検査時における異常値については,第1回打合せ会議のテーマの1つにすぎなかった。また,この時の被告人dとo調査官のやり取りをみると,被告人dが通り変位について述べたとき,o調査官は特段関心を示さなかったと窺われる。これらのことを踏まえると,第1回打合せ会議等において,被告人dが,線形管理の問題に触れなかったことが不自然であるとはいえない。その他,この点に関する検察官の主張を検討しても,前記判断には影響しない。カ 以上によれば,被告人b及び同dにおいて,検査表①に記載された通り変位の数値等を見て,現況ではより小さい曲線が存在するにもかかわらず,検査表①は,現況よりも大きな曲線半径が前提とされているなど,数値の算出根拠に誤りがあると推測したことが認められる。第6 判断事項2について1 数値の変化の合理性弁護人らも争わないように,検査表①,同②ないし②’,同③への,主に通り変位数値の変化は客観的な説明がつかないものである。すなわち,検査表①の数値が,正矢量(V)が21であるという誤った数値に基づいたものである場合,検査表①,同②ないし②’の通り数値が実測値である場合,曲線位置が誤って変位数値が算出されていた場合等に,それぞれ正しい計算や処理が行われたとしても,検査表③の数値は合理的な説明がつかない。そこで,まず,検査表①,同②ないし②’,同③を見た際,通り変位数値の変化等について,保線実務経験を有する者がどのように認識,理解するのかについてみていくこととする。2 各証人の供述w4証人w4証人は要旨次のとおり供述する。検査表①を見た時点では,通りの数値が大きく,実測値が記載されているのではないか,また,実際の曲線半径(R)は記載された数値より小さいのではないかと考えて,同検査表が正しいものかを保線現場に確認する。検査表①と同②を見比べると,BTC(緩和曲線始点)からBCC(円曲線始点)にかけて数値の逓減の仕方が違うなど計算間違いがあると考えられるので,保線現場に再確認を指示する。検査表①と同③を比べると,同③は通りの数値が全体的に小さくなっている。検査表③では,Vが「21」から「31」と10変わっており,検査表①からその10だけ数値が小さくなっている箇所があるが,そうではない箇所もあることに気付く。本件事故現場付近の曲線半径がR400ではなく,より小さい曲線半径ではないかと考えていた前提で検査表③を見たとすると,保線現場で正しく調査した結果,正しい曲線半径を基に訂正されたものが上がってきた,検査表①よりも検査表③の方が現場実態には符合していると考えることはあり得る。もっとも,保線現場に正しい曲線半径について聞いた上で検査表③の数値を確認したとすると,説明できない箇所がある。なお,各検査表を見比べなければ,数値の変化が不自然,不合理であることは分からない。自分であれば,検査表③を見た際,その正確性を確認するために,保線現場からトラックマスターに入っている生データ等を取り寄せることを考える。もっとも,生データ等を取り寄せる時間的な余裕がなければ,手元にある中で一番正しいと思われる検査表を運輸安全委員会に提出することは考えられる。w5証人w5証人は要旨次のとおり供述する。検査表①を見て,曲線半径(R)か正矢量(V)が間違っている,線路に角折れがあるなどと考える。検査表②を見ると,検査表①に記載された通り変位の「-68」が「-48」に変更されたことに気付く。検査表③を見ると,通りの「-75」が「-42」に変更された点が気になる。ただし,あくまで検査記録は1つであり,検査表が複数存在することは理解できないため,3つの検査表が出てくる理由を保線現場に確認することになる。3つの検査表を見て改ざんに気付くか否かについては,「-75」が「-42」と変更されているので,合理的な説明がなければ怪しいと感じる。もっとも,例えば,正矢量が間違っていたなどと説明を受ければ改ざんがあるとは考えない。検査表①から同③の通り変位数値を見て,検査表①では実測値が記載されていたが,その後,正矢量(V)が正しく入力されて処理され,通り変位の数値が約30ミリメートル減ったと感覚的に思うことはあり得る。保線課証人次に,本件事故後,検査表①,同②ないし②’及び同③(これらと同じ数値が記載された検査表を含む。)を見たi証人及びq証人らの供述をみる。ア i証人i証人は,前記のとおり,検査表①に記載された非常に大きな通り変位数値について,台帳の曲線半径に誤りがあるのではないかなどと考えた旨述べた上で,要旨次のとおり述べる。検査表②を見た際,nから,記事欄の正矢量(V)の数値は計算に影響しない旨聞き,検査表①も同②も正しい正矢量である31で計算されていることが分かった。通り変位が大きいという話題が出た後に検査表③が出てきたので,検査表③は正しく処理されたものとしてみることになる。検査表③の通り変位数値を見て,概ね均等に約30ほど数値が下がったことに気付き,誤った諸元が訂正された,もしくは検査表①では正矢量が引かれていなかったものが訂正されたのではないかなどと考えた。イ q証人q証人も,前記のとおり,検査表①の通り変位数値の大きさなどについて,iと同様の供述をした上で,要旨次のとおり述べる。検査表①及び同③を見て,通りの数値が小さく変更されたことに気付いた。数値が小さくなったのは,本件事故現場付近の曲線半径や差し引くべき正矢量を整理して,計算した結果であると理解した。また,y保線管理室は,線路の管理においてずさんな面があったため,検査表の計算間違い,数値の入れ違いがあってもおかしくはないと思っていた。ウ 以上のほか,nも,検査表③をみて,通り変位数値の最大値が約30小さくなっていることに気付き,正矢量である約30が差し引かれたものと思い,深くは考えなかった旨述べる。小括以上の証人等の供述によれば,保線実務に携わる者からすると,検査表①,同②ないし②’,同③に各記載の通り変位の数値が変化したことについて,各検査表を見比べれば,通り変位数値の変化が不自然,不合理であることに気付くこと,また,保線現場から合理的な説明がなければ改ざんを疑うといい得る。他方で,各検査表を確認した経緯や状況等によっては,検査表①に記載された数値の基になった諸元等の誤りや,正矢量が差し引かれていないなどの誤りがあり,その誤りが保線現場において訂正されることによって,検査表③の数値に変更されたものと理解することもあり得るといえる。そこで,本件事故直後の被告人らが置かれた状況,被告人らの各検査表の確認の経緯,状況等を踏まえて,被告人らの認識についてみていく。3 被告人bの認識検察官の主張検察官は,被告人bの改ざんの認識に関して,以下のとおり主張する。被告人bは,本件事故が軌間拡大による軌間内脱線である旨報告を受けて,検査表を早急に入手するよう指示した。また,Q&Aに,整備基準値超過箇所として「軌間」と「通り」のみが記載されている中,検査表①を見て,軌間変位のみならず,V21という記載誤りや整備基準値を大幅に上回る通り変位数値に多大な関心を有する言動を周囲に示した。一方,管理曲線と現況との違いについては,疑問を述べたものの可能性の1つにとどめた。さらに,検査表①等に記載された通り変位の最大値である「-75」を公表しようと考えてQ&Aの準備を進めるとともに,運輸安全委員会に提出すべき検査表を自分の手元に一刻も早くも届けるよう部下に執拗に催促した。被告人bは,このように待ち望んだ検査表③を受領して見た時点で,正矢量(V)が「21」から「31」に変更されたにとどまるのに,通り変位数値が「-75」から「-42」にまで大きく減少しているなど全体的に客観的な説明がつかない不合理な変化をしていることに気付いたといえる。被告人bによる各検査表の確認状況まず,本件事故発生後の被告人bの執務状況についてみた上で,各検査表の確認状況について検討する。ア 執務状況(被告人b)被告人bは,本件事故が発生した平成25年9月19日夜,西ビルにおいて本件事故現場から送られてくる資料や写真を確認するなどの情報整理や情報収集,本件事故により損傷を受けたレール,まくらぎ,分岐器等の復旧に必要な部品の確認といった復旧対応に当たったほか,iに対し,全道の整備基準値超過箇所,未補修箇所等の調査を指示をし,翌20日午前1時頃に帰宅した。同日午前11時に出社し,全道の整備基準値超過箇所等の調査結果報告を随時受け,未補修箇所については外注の施工会社にも要請するなどして,補修を指示し,その旨被告会社鉄道事業本部長にも報告した。これと並行して,復旧のための部品の在庫調査や発送する部品の一覧表作成といった復旧対応,北海道運輸局(以下,「運輸局」という。)への説明資料の作成等も行っていた。また,同日午後4時以降に4回開催された対策会議に出席したほか,同日午後9時頃,本社に戻ってきたtに対して本件事故の概況を報告し,tとプレスや運輸局に対する説明の準備のための打合せをして,翌21日午前1時頃帰宅した。同日午前5時頃に出社すると,プレス,運輸局対応についてtと打合せた。また,同日午前8時頃から本件事故現場付近で本格的な線路の復旧作業が始まったため,その進捗状況を確認しながら,列車の運行再開,開通見込みを立てるための資料を作成するなどしていた。その後,同日午前11時頃には,運輸局に行き本件事故原因等について説明を行った。同日午後には,tとプレス対応の準備を行い,同日午後4時にプレス発表をした。また,同日午後からは,本線のマヤ車検測の全道調査が行われたところ,多数の未補修箇所が報告されてきたため,外注を含む補修指示をした。そして,翌22日午前1時頃帰宅した。同日午前6時30分頃出社し,zで行われた保安監査に立ち会い,午後10時頃に本社に戻った。イ 各検査表の確認経緯,状況被告人bが各検査表を確認した経緯や状況は前記認定事実のとおりであるが,その点のみについてみると,概要は次のとおりである。検査表①について,本件事故が発生した同月19日に確認し,曲線半径と正矢量(V)に齟齬があること,通り変位に70台を含む大きな数値があることに気付いた。検査表②について,被告人bは具体的な記憶はない旨述べるものの,同月20日のうちに確認したことが関係証拠上認められる。検査表③については,同日夜,qから受け取って内容を確認し,運輸安全委員会に提出することを了承した。なお,被告人bは,検査表③については,その写しを作成して,曲線半径(R)が210メートルであることを前提とした数値等を手書きで記入し,また,tに対して,検査表③を運輸安全委員会に提出する旨伝えた。検討ア w4証人の供述によれば,検査表①の通り変位数値が非常に大きいことに関心を持ち,検査表①と検査表③を見比べて,数値の変化の仕方や変化量等を確認すれば,保線に関する知識や経験が豊富であった被告人bにおいて,検査表①から検査表③にかけて,正矢量(V)が21から31に変化したにとどまることなどから,通り変位数値の変化について合理的な説明がつかないことに気付くことができるといえる。しかし,被告人bは,本件事故当時,工務部副部長及び保線課長を務めていたところ,本件事故発生を受けて,事故情報の収集,現場の復旧作業に関する業務,全道の未補修箇所等の情報整理や補修作業指示,プレスや運輸局対応のための準備等といった多くの業務に忙殺されていた状況であった。とりわけ,被告人bが検査表③を確認した同月20日の執務状況をみると,検査表③の数値について時間的,精神的余裕をもって確認できる状況にはなかったことが窺われる。なお,被告人bは,検査表①ないし同③の各検査表を比較して検討していない旨述べるが,これを排斥する的確な証拠もない。確かに,被告人bは,検査表①に記載された非常に大きな通り変位に関心を抱いており,同月20日の夕方時点で,どの検査表を運輸安全委員会に提出するか関心を有していたこと,また,検査表③を受け取ると,その写しを作成して,本件事故現場付近の通り変位数値について自身が仮定した曲線半径や曲線の位置に基づいた計算までしている。もっとも,被告人bにおいて,通り変位が本件事故の一要因であると考えていたとまでは認められないこと,むしろ本件事故現場付近にはR400よりも半径が小さい曲線が存在しているのではないかと推測していたことも踏まえると,被告人bにおいて,各検査表を対比せず,検査表③に記載された通り変位の数値を見て,検査表①から概ね30程度小さくなったと認識し,正矢量(V)の訂正や変位数値算出の前提となる諸元の数値が見直されるなどした結果,検査表③に記載された数値になったと理解したということが不自然,不合理であるとはいえない。このような被告人bの認識は,被告人bと同様,本件事故後に各検査表を見たi証人(ただし,正矢量(V)の差し引きの点に関して,i証人の供述には自己矛盾が含まれるものの,この点に関する判断には影響しない。),q証人及びnの供述とも整合している。イ また,本社保線課における所管業務に照らすと,軌道狂い検査表の確認や取りまとめについては,担当するのであればiが責任者を務める線路技術テーブルであり,少なくとも被告人bの担当業務ではないと考えられる状況にあった。さらに,検査表の数値の算定根拠や正確性等については現業機関である保線現場の従業員でなければ確認できないことも併せて考えると,被告人bにおいて,検査表の数値の正確性や変化の理由について強い関心を抱いていたとまでは認められない。ウ そして,被告人bの担当業務や本件事故後に置かれた状況等に照らすと,被告人bが述べるように,本件事故は既に起きてしまったことであり,その原因は軌間拡大と理解したため,検査表に対する興味や関心は強いものではなく,むしろ,被告会社の他の線路の安全性について一刻も早く調査を行い,必要な補修等を行うことが重要であると考えたというのも自然である。エ 検察官の主張についての検討まず,被告人bが検査表①の通り数値に関心を抱いた点については,これまでも述べたように,記載された数値が非常に大きいことなどから現況が正しく反映されていないと推測したとして不自然,不合理な点はみられない。また,検察官は,被告人bが,検査表③の通り変位数値を試算しているが,検査表③を正しいものと考えたのであればわざわざ試算する必要がない,また,試算の結果,検査表③と整合する結果にならなかったのに,tに対して,裏付けのない説明と共に検査表③を提出する旨報告した点も指摘して,被告人bが改ざんの認識を有していた旨主張する。しかしながら,この点については,被告人bが述べるように,被告人bは,検査表③の通り変位数値は大きいが,これは依然として曲線台帳と現況とに齟齬があることが原因であり,そのことをtに理解してもらおうと考えたこと,そして,本件事故現場付近の現況はR210前後程度で,曲線が始点側にずれて入っているのであろうと推測し,その推測が正しいか否かを確認するために計算したこと,また,計算の結果,これまでの経験等に照らして想定できる大きさの通り変位数値となったことから,その旨をtに報告したにすぎないものと理解できる。このように,この点に関する検察官の主張は的を射たものではない。小括以上からすると,被告人bは,検査表①に記載された非常に大きな通り変位数値について,本件事故原因の一要因としてではなく,誤りがあるのではないかと疑ったことなどから関心を抱いたこと,その後,保線現場から正しいものとして送られてきた検査表③を見て,検査表①に記載された数値の算出根拠とされたものの誤りが訂正された結果であり,検査表③が正しい検査表であると理解したということが合理的に想定される。なお,被告人bは,同月23日に完成版整理表を確認した際には,検査表③と同じ数値が記載されているであろうと認識したにすぎないから,この時点においても,被告人bが,通り変位数値が改ざんされたものであることを未必的にも認識,認容したとは認められない。捜査段階の供述検察官は,被告人bの捜査段階における供述は,本件事故後,被告人bが通り変位数値の不合理な変化に気付いて疑問を抱いたという心理状態を端的に述べたものであると主張する。そこで検討すると,被告人bは,平成26年11月13日に,「通りの欄(狂い量)の数値が先程の表より大幅に小さい数値に変わっていました。この数値の違いについて,V21からV31に変わっただけでは説明ができないため,カーブ始点が違うあるいは曲率が違うと考えましたが,この表が正しいデータなのか疑問を抱いたと思います。」との上申書(乙2)を作成した。また,同年12月28日には,警察官の取調べに対し,「漠然とですが,小さくなった数値を見た私は,『差っ引き量が違う。』と感じました。」,「この数値の変化に私は矛盾を感じたと思います。」,「私は,dに対して『これが,本当に現場で出してきたものか?』と検査表についての質問をしました。」などと述べた。まず,上申書についてみると,これは被告人bが検査表③を見た際の認識が記されたものと理解されるが,検査表①に記載されたVが31に訂正されたこと,通り変位の数値が大幅に小さくなっていたこと,その原因としては,カーブの始点や曲率が違うなどと考えたという,被告人bの法廷における供述と矛盾しない内容が記されている。そして,同上申書には,その後に「正しいデータなのか疑問を抱いたと思います。」との記載があるが,これも被告人bの法廷における供述と矛盾するものではない。また,そもそも,かかる記載は「抱きました」から訂正され,過去の自身の内心を,当時推測したという表記となっているにすぎない。そうするとこの上申書をもって,被告人bの改ざんに対する認識を十分に推認できるものではない。次に,警察官作成の上記供述調書についても,「矛盾を感じたと思う。」旨の供述が記載されているにとどまる。さらに,上記記載に続いて,「思う,と言うのは,数値の違いに気づいた後,その理由を考えたかもしれませんし,その辺のところが,はっきりしないからです。」との記載がある。また,被告人bは,取り調べを受けた当時,検査表③を見た際の具体的な記憶があいまいであったが,断定的な表現ではないからと取調べ担当警察官から言われた,取調べが永遠に終わらないと思って,妥協して署名したというが,これをあながち排斥することはできない。これらを踏まえると,上記上申書及び供述調書をもってしても,前記判断に影響を及ぼすものではない。4 被告人dの認識検察官の主張検察官は,被告人dの改ざんの認識に関して,以下のとおり主張する。被告人dは,事故調査の重要な資料である軌道狂い検査表の軌道変位数値を事前に把握,検討して,運輸安全委員会に説明や提出をする立場にあった。そして,本件当時,現業機関の責任者であるf所長に対して,2度にわたり検査表の確認を指示し,運輸安全委員会との3度の打合せ会議にすべて出席して検査表の報告要求を受け,自ら検査結果を報告するなどしていた。そして,事故調査官から本件事故直近の異常値について尋ねられた際,軌間のみならず通りに2度も言及した一方,事故現場付近で基準値超過が認められていた高低及び水準や,事故現場付近の実際の曲線半径が台帳よりも小さい曲線であることなどには言及しなかった。また,平成25年9月20日夕方のiとの会話では,実際の曲線半径が台帳と異なる可能性については一切言及せず,検査表を見ずに記憶を基に,どちらかといえばV31の検査表を出した方がいい旨発言しつつも,軌間変位数値の最大値25ミリメートルや通り変位の最大値マイナス75ミリメートルの記載がある検査表を運輸安全委員会に提出することに懸念を示した。さらに,検査表②’の通り基準値の最大値が31に訂正されているなど基準値が明示されていたにもかかわらず,f所長及びその指示を受けたgが意図的な改ざんに及ばざるを得ないような,具体的な理由を明示しない2度目の再確認の指示をf所長に与えた。その結果,通り変位数値が大幅に小さくなった検査表③が作成され,第3回打合せ会議で検査表③について説明したが,通り変位数値を含む数値について不満を口にした。さらに,同月21日には,本件事故原因と関係が乏しい水準の限界値欄の数値を1ミリメートル訂正するにも,被告人bへの報告を経てから運輸安全委員会に提出したほど1ミリメートル単位の数値に厳格であった。以上からすると,被告人d自身が再確認の指示をして,その後作成された検査表③を受領して見た時点で,通り変位数値が大きく減少しているなど不合理な変化をしていることに気付いたといえる。被告人dによる各検査表の確認状況そこで,被告人dについても,まず,本件事故発生後の執務状況についてみた上で,各検査表を確認した経緯や状況について検討する。ア 執務状況(証人p,被告人d)被告人dは,同月19日夜に本件事故現場に行って事故状況等を確認した。そして,復旧作業の管理を担当することとなったため,クレーンの導入や設置場所の管理,部品の損傷状況や交換部品の調達状況の確認,復旧作業業者の手配等をした。さらに,西ビルや本社工務部への状況報告や情報提供,また本社からの問い合わせ対応等も行った。なお,この問い合わせ対応の一つが,iから依頼された軌道狂い検査表に記載された正矢量(V)の確認作業である。また,同日の深夜,現地に到着したpや運輸局の担当者を本件事故現場に案内し,説明を行った。また,その後,現地に到着し,現地対策本部長に就任した工務部専任部長のe13を本件事故現場に案内するなどした。その後,翌20日午前2時頃から約2時間,仮眠を取り,同日午前5時頃からは,現地対策本部の打合せ会議に出席したり現地を確認したりした。そして,同日午前9時頃から現地対策本部の打合せに出席した。また,鉄道事故調査官が到着して開催された第1回打合せ会議に出席した。その後,鉄道事故調査官を本件事故現場に案内し,午後には第2回打合せ会議に出席した。同会議後には,また別の箇所の線路等に鉄道事故調査官らを案内した。そして,同日午後6時13分頃からは前記のとおり,iと電話で会話し,同日午後7時51分頃,検査表③を入手して見た上で,これを本社に送信するように指示した。同日午後8時過ぎにはホテルに戻り,翌21日午前5時頃出勤し,本件事故現場でのトラックマスターによる検査や手検測に立ち会った。その後,第3回打合せ会議に出席して,検査表③を運輸安全委員会に提出した。イ 各検査表の確認経緯,状況及びf所長への指示状況被告人dによる各検査表の確認状況やf所長への指示内容及び状況等は前記認定事実のとおりであるが,その点のみについてみると,概要は次のとおりである。被告人dは,同月19日夜,iから検査表の正矢量(V)の値に疑義が生じている旨連絡を受けて検査表①を見た上で,f所長に対し,数値に誤りがあるのではないかと言って,検査表の確認を指示した。翌20日の日中には,検査表②’を見て,Vが31に訂正されていたものの,その他の検査数値が変わっていないように感じたため,再度確認するようf所長に指示した。被告人dは,同日午後6時13分頃から,iと電話で会話し,軌間変位の25ミリや通り変位の75ミリについて言及した。そして,同日午後7時51分頃,検査表③を確認した。検討ア 被告人dは,前記判断のとおり,検査表①の通り変位数値が本件事故原因の一要因であると考えていたとは認められない。もっとも,これを前提としても,検察官が主張するように,被告人dが,検査表①では高低変位や水準変位に基準値超過が認められていたがこれに関心を示す言動はしていない一方で,非常に大きな通り変位数値が記載されていることに強い関心を抱き,運輸安全委員会にこの通り変位数値を報告することに懸念を抱いているとも受け取れる発言をしたこと,検査表①の正矢量(V)が訂正されたにもかかわらず,検査表②’の通り変位数値が従前のものであったことから,f所長に対し,このままでいいのかなどと言って検査表の再確認をしたところ,通り変位数値が大幅に小さく変更された検査表③が送られてきたなどの事実経過は,被告人dが,通り変位数値の変化が不合理であることを認識していたことと整合的であるともいえるため,以下,詳しく検討する。イ 各検査表への関心や確認の程度検察官が主張するように,被告人dは検査表①を受け取って見て以降,被告会社内や運輸安全委員会との打合せ会議等において,軌間変位のみならず,通り変位や同数値の最大値である「-75」に言及する場面が複数回あったことに照らすと,本件事故現場付近の通り変位数値に関心を抱いていたといえる。他方,被告人dの本件事故後の執務状況をみると,検査表②’や同③を見た同月20日は,仮眠を取った状態で早朝から各種会議への出席,現地確認等の業務を行うなど,本件事故現場付近において各種対応に当たっていたp証人も述べるように非常に忙しかったといえる。そうすると,被告人dにおいて,各検査表の数値が具体的にどのように変化したかについては十分に検討できる状況にはなかったことが窺われる。また,運輸安全委員会に提出する検査表の数値の正確性等については,少なくとも被告人dの担当業務ではないと考えられる状況にあったこと,被告人dが偶然z方面に出張していたことから本件事故現場に赴き,検査表について被告会社本社と保線現場との連絡役を担ったにすぎないことなども認められる。これらを踏まえると,被告人dにおいて,各検査表に記載された通り変位を含む数値の変化について精査する意識が薄かったとしても不自然ではない。実際,被告人dは,検査表②’のうち,測点番号29(キロ程27.070)の通り一輪側の数値が検査表①から20も小さく変化しているところ,これに気付いた様子もなく,検査表①と同様の数値が並んでいるものとしてf所長に再確認の指示をしている。以上のほか,通り変位数値が非常に大きくなっている原因について,被告人dが線形管理に問題があるのではないかと考えていたことを踏まえると,被告人dは,検査表①,同②’及び同③を一通り見たものの,比較,検討するなどの精査をしていたとまでは認められない。ウ iとの電話における発言検察官は,被告人dが,iとの電話で「75ミリ何よって言われるぞ」と発言したことなどから,軌間変位数値の最大値25ミリメートルや通り変位の最大値マイナス75ミリメートルの記載がある検査表を運輸安全委員会に提出することに懸念を示したと主張する。他方,この発言について,弁護人は,被告人dは運輸局のe14課長からの指摘を懸念したものである旨主張し,被告人dも同様に述べる。そこで,被告人dとiの会話内容をみると,上記発言は運輸安全委員会に提出する検査表に関する会話の中でのものであること,また,被告人dは,検察官による取調べにおいて,かかる発言は運輸安全委員会から指摘を受ける趣旨のものであると,その理由と共に説明している。他方,被告人dは,法廷では,上記発言は,e14課長から指摘を受ける趣旨であると述べ,捜査段階の供述は,運輸局の担当者の趣旨も含むものであると述べる。しかし,運輸安全委員会と運輸局とでは組織が違うことは明らかであって,この点に関する被告人dの供述が不自然であることは否定できない。もっとも,被告人dのみならずiも法廷で,運輸安全委員会は検査表の数値について指摘することはない趣旨の供述をしている。そして,実際に,o調査官らは,第1回ないし第3回打合せ会議において,検査表の具体的な数値について被告人dが上記発言で懸念したような指摘はしていない。一方で,被告人dが述べるように,検査表③が提出された第3回打合せ会議において,e14課長は検査表③のキロ程27.087の軌間の数値変化等について被告人dら被告会社担当者に詳しく聞いている。以上からすると,被告人dの法廷供述は不自然な点があるものの,上記発言がe14課長からの指摘を念頭に置いたものであるとの被告人dの供述は排斥できない。したがって,この点に関する検察官の主張は採用できない。エ f所長に対する指示等被告人dが,検査表③に記載された通り変位数値が改ざんされたものであると少なくとも未必的には認識,認容し,検査表③を提出することを認めたとすると,被告人dからの確認指示を受けて保線現場において検査表①の数値が訂正されたが,さらに被告人dがf所長に再確認を指示したこと,これを受けてf所長がgに対して通り変位の数値の書き換えを指示したこと,その後,送られてきた検査表③の通り変位数値が,最大値で30以上も小さく変更されるなど合理的な説明がつかない数値に変更されたこと,この検査表③を運輸安全委員会に提出する予定のものであるとして本社に送信したことなどの事実経過等を説明することは可能ではある。しかし,これまで述べてきた被告人dが当時置かれた状況,検査表①に記載された通り変位数値の大きさの原因等に関する認識,検査表に記載された数値の正確性等の確認については,少なくとも被告人dの担当業務であるとまでは認められないことなどを踏まえて考えると,被告人dが検査表③に記載された数値の正確性等を精査,確認することなく,これを正しいものとして理解したことが合理的に想定される。また,被告人dの認識をこのように理解しても,f所長に対する指示等については,被告人dが,検査表①や同②’に誤りがあると考えたことから確認の指示をし,その結果,検査表③が届き,これを誤りが訂正されたものと理解したと合理的な説明をすることができる。そうすると,被告人dによるf所長への指示やその後の各検査表の数値の変化等を踏まえても,被告人dが数値変化の不合理性を認識したことを十分に推認することはできない。オ その他検察官の主張検察官は,被告人dが,f所長への指示の結果,通り変位数値がマイナス42となった検査表③についても「いい結果ではない」旨発言したことを指摘して,被告人dが,検査表③の通り変位数値に対しても関心を寄せて不満を口にしたと主張する。しかし,被告人d自身のみならず,w4証人やw5証人も述べるように,通り変位のマイナス42も整備基準値を大幅に上回る数値であることに変わりはないから,「いい結果ではない」といえ,上記発言をもって改ざんの認識を推認することはできない。また,検察官は,被告人dが水準の限界値を1ミリメートル訂正させていることを指摘して,被告人dが1ミリ単位の数値に厳格であり,検査表の数値の不合理な変化に気付いたといえる旨主張する。しかし,この点について,被告人dは,誰かが水準の限界値の記載ミスを発見して伝えてきたため,z保線所に確認するよう指示したところ正しい数値に直させただけであると述べていることからすると,かかる訂正指示をもって,被告人dが検査表①から検査表③にかけて数値が不合理な変化をしたことに気付いたとまでは認めがたい。小括以上からすると,被告人dは,検査表①に記載された非常に大きな通り変位数値について,本件事故原因の一要因としてではなく,誤りがあるのではないかと疑ったことから関心を抱いたにすぎないこと,その後,検査表②’をみたところ,正矢量(V)の数値は訂正されていたものの,従前の数値とあまり変わりがなかったように思われたことから再度確認を指示し,その後送られてきた検査表③を正しいものであるという前提で見て,検査表③を運輸安全委員会に提出することにしたとみることができる。このように理解しても,被告人dのその他の言動も含めて一連の行動や発言を合理的に説明できる。したがって,被告人dが改ざんの認識を有していたことについて合理的な疑いが残るというべきである。捜査段階の供述検察官は,被告人dが,捜査段階において,検査表③を見た際に,通り変位の数値が不揃いに小さく整理されていることに気付いた旨述べたこと,検査表③を見たbから,通り変位の数値が小さくなっているがこれで大丈夫かなどと言われた旨述べたことなどを指摘して,これらは被告人dが通り変位数値の不合理な変化に気付いて疑問を抱いた当時の心理状態を端的に述べたものであると主張する。そこで,検討すると,不揃いに小さく整理されているとは,通り変位の数値の変化が各キロ程において小さくなっているが,それが均一でないという趣旨の供述と理解できるが,被告人dは前記のとおり,検査表①の通り変位数値には曲線半径のずれなどの線形管理の問題が存在する可能性を考えていたのであるから,これらが正しく処理されて検査表③が送られてきたものと認識したことと矛盾するものではない。この点に関する検察官の主張は,検査表①もしくは同②’に記載の通り変位数値が正しく処理されて訂正されたものであれば,数値は均一に小さくなることを前提とするものと理解できるが,関係証拠を精査しても必ずしもそのようなことはいえない。その他被告人dの捜査段階の供述を検討しても,前記判断には影響しない。5 被告人cの認識検察官の主張検察官は,次の各点を指摘して,被告人cは,遅くとも同月23日夜に検査表③の数値に合わせた完成版整理表を作成した旨を了承した時点で,改ざんの認識を有していた旨主張する。ア 被告人cは,本件事故発生直後,軌道狂い検査表を早急に入手するよう指示した上,検査表①を見て,正矢量(V)が誤っていたため非常に大きな通り変位の数値が算出された可能性があることを含め,検査表①の通り変位の数値に印を付けたり,カーブを描くなどして確認,吟味した。そして,V21の記載誤りや整備基準値を大幅に上回る通り変位数値に多大な関心を抱いていることを周囲に示す言動をした。さらに,同月20日にも,基準値を超える高低及び水準には関心を寄せない一方で,Q&Aに通り変位の最大値である「75」を書き込むなど通り変位数値に着目していた反面,このような通り変位数値をマスコミに公表することによる非難を避けたいという心境であった。このように考えていた被告人cが,運輸安全委員会に提出するものとして検査表③を受領すれば,通り変位の数値を子細に検討するのが当然であり,その際,手元に「◎基データ」と記載された検査表①があったことからすると,検査表①と同③を見比べて,通り変位数値の不合理な変化に気付いたといえる。イ 加えて,被告人cは,同月23日,f所長から補修の事実がないと聞いたにもかかわらず,架空の記憶を根拠に補修実績を作り出すように指示して,暗にねつ造を示唆した。また,同日夜,完成版整理表の備考欄に△印と,末尾に「△:現地の状況に合わせた曲線を挿入しているため,計画諸元と異なっていることから再精査します。」と追記させて,当時未確認事項であったことを断定的な表現で記載させた。さらに,同年10月上旬頃,lに対し,lが作成した0.5メートルピッチの軌道変位検査データ「24」を運輸安全委員会に提出した数値である「25」に合わせるようにのみ指示した。そして,同月7日,国土交通省職員2名に対し,電話で,完成版整理表の数値について,jによる説明とは異なる内容や虚偽の説明をした。このように,被告人cは,被告会社が対外的な批判にさらされる事態を回避するために,記録のねつ造や虚偽の説明,数字のつじつま合わせをするなどして各関係者に対応していた。検査表の確認状況,整理表の作成状況(証人h,被告人c)そこで,被告人cについて,本件事故発生後の執務状況,各検査表の確認状況及び整理表の作成状況についてみる。ア 執務状況等被告人cは,同年9月19日夜,本件事故発生を受けて西ビルの施設指令に行き,運行再開に向けた復旧工事について検討を始めた。また,本件事故現場から送られてきた各種検査結果(検査表①も含む。)を見るなど本件事故に関する情報を確認,収集するなどした。同日夜は帰宅せず,施設指令に宿泊した。翌20日午前,施設指令において復旧に必要な材料の手配等,復旧工事対応をした。昼頃には本社保線課に行き,記者会見の準備やQ&A案を確認するなどした。夕方には,再び西ビルに行き,複数回開催された対策会議に出席し,検査表③を確認した上で,翌21日午前0時頃帰宅した。同日朝,西ビルに行って復旧作業の対応に当たった。同日午後5時頃に運行が再開されたため,本社保線課に戻った。イ 整理表の作成状況及び暫定版整理表の提出状況同日午後11時頃,国土交通省から,同月23日までに全道の整備基準値の超過箇所を報告するように求められ,被告人cはその取りまとめ役となった。そこで,本社保線課保管のマヤ車データを集め,また,全道からトラックマスターのデータを取り寄せたところ,マヤ車データ(チャート)は2000枚以上,トラックマスターデータは1000枚程度に及んだ。これらのデータから,手作業で超過箇所を拾い出して,指定の様式に転記する作業が必要となったため,その日は帰宅せずに,本社保線課で超過箇所の整理等に従事した。また,翌22日は昼頃から同日深夜頃まで,記者会見の準備や出席,また記者からの追加質問に対する回答等に当たった。同月23日朝までに整理表が完成せず,補修日について保線現場に確認する必要があったため,同日朝にz保線所,α7保線所及びα8工務所の各所長に電話連絡をした。同日午後1時2分頃,国土交通省職員に対し,暫定版整理表をメール送信した。その後,z保線所,α7保線所及びα8工務所に電話連絡して,暫定版整理表の欄外に補修日を記入して報告するよう指示し,同日午後3時46分に上記各所長宛に暫定版整理表をメール送信した。ウ 完成版整理表の作成状況,f所長とのやり取り同日午後5時ないし午後6時頃,f所長から電話連絡があり,補修実績はない,線路はよくなっている旨の報告を受けた。そこで,被告人cは,強い口調で補修実績について再度確認するようにf所長に指示した。そして,f所長は,z保線所の職員に補修実績のねつ造を指示した。被告人cは,同日夜,hから,完成版整理表とnがマーキングした検査表③を見せられ,暫定版整理表の数値を検査表③の数値に合わせて完成版整理表を作成した旨説明を受けた。そして,完成版整理表の提出について被告人bの了解を得た後,完成版整理表に△印やそれに関する注を追記させた。被告人cは,補修実績を整理表に記入することは困難であったことから,これを記入せずに提出することにつき国土交通省の担当者の了解を得た上で,同日午後10時頃に完成版整理表を提出した。検討ア 被告人cが改ざんの認識を有していたことを窺わせる事実被告人cは,iに電話で通り変位数値について確認するなど,同月19日夜以降,検査表①に記載された通り変位数値が非常に大きいことにつき関心を示す言動をしたこと,同月20日,空欄であったQ&Aの通り欄に「75」と手書きで記入したこと,rに対して通り変位の安全限度値をQ&Aにあえて書く必要はないのではないかと伝えたこと,また,同日夜には,テーブルに,検査表①(「◎基データ」と記載されたもの)と検査表③(運輸安全委員会に提出する旨の記載がされた付箋が貼られたもの)が置かれて各データを対比して確認できる状況にあったことが認められる。そして,被告人cは,完成版整理表のうち,暫定版整理表から変更された数値についてhから説明を受けて具体的に認識している。さらに,被告人cは,同月23日には,国土交通省に提出する整理表を作成している際,補修実績がない旨報告してきたf所長に対して,強い口調で作業員の記憶でもいいから補修実績を探すようになどと指示したこと,その後,一転して翌24日にはz保線所から非常に多数の箇所についての補修日が記載された暫定版整理表が送られてきたことも認められる。このような事実経過は,被告人cが本件事故後から通り変位数値の大きさに関心を抱く一方で,この数値を対外的に公表したくないと考えていたこと,検査表①と同③に記載された数値を比較検討して,数値の変化に合理的な理由がないものと考えたが,やむを得ないものと考えてこれを容認したこと,また,f所長に対して,暗に補修実績のねつ造を指示したという検察官の主張に整合的である。そうすると,上記事実経過は,検察官が主張する時点で,被告人cが検査表③の通り変位の数値が意図的に改ざんされたものであることを少なくとも未必的に認識,認容していたことを推認させるものということができる。イ 消極的間接事実(暫定版整理表の提出)他方で,弁護人が指摘するように,被告人cは同月20日の夜に検査表③を確認していたにもかかわらず,同月23日の昼には,通り変位数値が「-75」などと記載された暫定版整理表を国土交通省に送信している。この点,被告人cが,検査表③の通り変位数値が改ざんされているものと少なくとも未必的に認識,認容していたのであれば,国土交通省に「-75」の通り変位数値が記載されるなどした暫定版整理表を提出するとは考えにくい。被告人cが,このような暫定版整理表を同月23日の昼時点で国土交通省に提出することを指示したことは,検査表③の通り変位数値を精査するなどの意識的な確認をしていなかったことの現れとみるのが自然である。また,被告人cが,整理表作成の際に,検査表③の数値を反映させるよう,部下職員らに対して積極的に指示をしたことなども関係証拠上認められない。むしろ,整理表に検査表③の数値が反映されたのは,nが数値の食い違いに気付き,マーキングした検査表③をhに手渡し,それを基に被告人cに報告がなされたからである。暫定版整理表が国土交通省に提出されたことやその経緯は,被告人cが検査表③の通り変位数値が改ざんされていることを少なくとも未必的に認識,認容していたのであれば,合理的な説明が困難である。そして,検察官もこの点について何ら説明を試みていない。ウ その他の事実(同年10月上旬頃のlへの指示)被告人cは,検査表③を取り寄せて見て,通り変位の数値が異なる旨報告してきたlに対し,異なるデータが存在する理由を強い口調で確認するよう指示したが,被告人cが改ざんの認識を有していたのであれば,不可解な行動といえる。エ 被告人cの供述そこで,翻って被告人cの検査表①及び同③の確認状況等についてみると,改ざんの認識を有していなかったという被告人cの供述を前提にしても,合理的な説明が十分に可能である。被告人cの供述内容被告人cは,法廷で概ね次のとおり述べる。検査表①の通り変位がこれまでに見たことがないような大きな数値であり,また記事欄の正矢量(V)に明らかな誤りがあったことなどから漠然と何らかの間違いがあるのではないかと考えた。その後,主に復旧に関わる業務に従事し,その他記者会見の準備や会議への出席等に追われており,そちらに関心が集中した。特に同年9月20日から同月21日にかけては復旧対応に関する業務がピークを迎えていた。同月20日夜に検査表③を見たが,自らの担当業務と直接関係はなかったため,検査表①と比較することはできたが,そうすることはなく,誤りが修正されたものという程度の認識であった。検討被告人cは,通り変位が本件事故原因の一要因であると考えていたとは認められず,また,本件事故後,復旧作業を中心に執務を行っていたことなどを踏まえると,被告人cが,通り変位の数値が具体的にどのように変更されているのかについて強い関心を抱くことなく,自らの業務に追われ,検査表③についても検査表①と比較するなど精査することなく目を通して数値が修正されたという程度に考えたというのもあながち不自然,不合理であるとはいえない。むしろ,被告人cが述べるように,検査表①の通り変位数値はあまりにも大きく,また記事欄記載の正矢量(V)に誤りがあったことなどから,検査表③は,保線現場で各種数値を見直した結果,正しい数値に訂正されてきたものであると考え,記載された数値が一見して合理的な大きさにとどまっていたことから,改ざんされたと思わなかったというのは自然なものとして理解できる。この点については,検査表①から正矢量(V)が正しく処理されて検査表③の通り変位数値になったと感覚的に思うことはあり得るとするw5証人の供述や,各検査表を見比べなければ,数値の変化が不自然,不合理であることは分からないとするw4証人の供述と整合的である。検察官の主張検察官は,被告人cがQ&Aへの通り変位数値のみ記入したことから,同月20日時点で通り変位数値に着目していた旨主張する。しかし,そもそもQ&Aは,その案をqらが作成していたところ,被告人cはQ&Aに印字された通り変位の最大値が空欄であったため記入したにすぎないと考えられることから,この点の主張は採用できない。また,検察官は前記のとおり,㋐同月23日のf所長への補修実績の再確認の指示,㋑同日夜の完成版整理表への△印等の記入指示, 同年10月上旬頃のlへの指示, 同月7日の国交省職員に対する,完成版整理表の数値に関する説明は,いずれも被告人cが対外的な批判を回避するためには,記録のねつ造や虚偽の説明をいとわなかったことの現れである旨主張するので,以下順次検討する。まず,㋐についてみると,前記認定事実によれば,被告人cが補修実績の問い合わせをしたz,α7,α8の各所長のうち,α7及びα8から報告がなされたが,f所長は軽い感じで補修実績がない旨報告してきたことに加え,本件事故はz保線所の所管区域であり,かつ電話連絡を入れた同月23日にf所長が休暇を所得していたことなどから,腹を立てて勢い余ってきつい口調で言ったという被告人cが述べる心境は理解できる。また,職員の記憶でもいいから補修実績を探すようにとの指示内容も,そもそもf所長からは,線路はよくなっているが保線システムに実績がない旨聞いていたこと,補修実績は保線システムに入力されるが入力漏れやミスはあり得ること,補修作業については作業手帳に記入されるという被告会社の保線現場における実情も踏まえると,被告人cの上記発言が暗にねつ造を示唆したものと認めることはできない。確かに,本社保線課の課長として勤務する被告人cの地位に照らすと,上記指示は不適切な面があったことは否定できない。また,被告人cの指示を受けて,z保線所において補修実績がねつ造されたことは事実ではあるものの,これはf所長ら保線現場において,被告人cの発言を曲解して行われたものといえる。したがって,この点に関する検察官の主張は採用できない。次に,㋑についてみると,hも述べるように,かかる注の記載は,国土交通省に対し,異なる曲線が入っていた可能性があるために,再度確認して報告する趣旨と理解できるのであって,何ら不自然な点はない。この点に関する検察官の主張も採用できない。また, についても,lが計算したところ,軌間の最大値がそれまでの25ミリメートルではなく,24ミリメートルになったというが,これは,差し引くべきスラック量を導く方法が異なったことによる許容誤差であるというのであるから,この点も前記判断に影響するものではない。そして, について,被告人cは,lを通じて聞いた保線現場の説明に納得はいかなかったものの,これを国土交通省の職員にそのまま伝える訳にいかなかったことから,苦し紛れで説明したものである旨述べるが,被告人cが置かれた当時の状況も踏まえると,特に不自然なものとはいえない。以上からすると,検察官の上記各主張を踏まえても,被告人cが,被告会社が対外的な批判にさらされる事態を回避するために,記録のねつ造や虚偽の説明,数字のつじつま合わせをするなどして各関係者に対応していたとまでは認められない。小括以上によれば,被告人cについては,通り変位の数値が不合理な変化をしていることに気付いたものの,これを容認して国土交通省に報告したなどの検察官の主張と整合するともいえる事実関係は認められるものの,検察官の主張を前提とすると説明困難な客観的な事実が認められる。また,検察官の主張に整合的な事実関係も,被告人cが通り変位数値の不合理な変化を認識,認容していなかったとしても合理的な説明が可能なものである。捜査段階の供述被告人cは,捜査段階において,当時,検査表①と同③を見比べて,通り変位数値が「-75」から「-42」に変化したことについて説明がつかないと感じた旨述べている。この点について,被告人cは,法廷で,取調べを受けた時点では,2つの検査表を見た時の状況について記憶はなかったが,警察官から,検査表①から同③への数値に変わる理由について聞かれたため,正矢量(V)が10違うが計算は合わない旨答えた,さらに警察官から,各検査表を見た当時も同じように思ったのではないかと聞かれ,否定しきれなかった旨述べる。まず,被告人cが,上記のように数値の変化に合理的な理由がないと認識していたのであれば,暫定版整理表を国土交通省に提出したことについて合理的な説明は見いだしがたく,捜査段階における被告人cの供述の信用性には合理的な疑いが残る。そして,その他,被告人cの捜査段階の供述を検討しても,上記疑いは解消されない。そして,これを前提に,捜査段階の取調べに関する被告人cの上記法廷供述をみると,その内容が不自然,不合理なものとして排斥することはできない。以上から,被告人cの捜査段階の供述をもってしても前記判断には影響しない。6 本件事故後,被告人らが改ざんを未必的に認識,認容していたとすれば合理的な説明が困難な事実以上のほか,被告人らが改ざんの認識を有していたという検察官の主張を前提とすると,合理的な説明が困難な客観的事実が認められる。すなわち,被告人らは,本件事故発生後の時点において,脱線事故が発生し,運輸安全委員会が関わると,同委員会に0.5メートルピッチの検査表を提出することになると理解していた。そうすると,被告人らが,検査表③の通り変位数値が改ざんされたものであることについて,少なくとも未必的に認識し,認容していたとすると,いずれ運輸安全委員会において,検査表③と0.5メートルピッチの検査表とで記載された数値に齟齬があることが把握されることは容易に想像できたといえる。仮にそうであるとすると,被告人らにおいて,0.5メートルピッチの検査表についても検査表③の数値に合わせるように指示をするか,そこまでしなくとも,0.5メートルピッチの検査表に記載される通り変位数値について確認するなどの関心を抱いていることが窺われる言動に出てしかるべきである。しかしながら,関係証拠を精査しても被告人らにおいてそのような言動をしたことは認められない。さらに,被告人dについてみると,同年10月上旬,lから,本件事故現場付近の実測値を基に作成された0.5メートルピッチのデータを見せられた際,十数秒程度確認しただけで,同データの数値と検査表③の数値とを照合,確認するように指示しただけであった。このように,被告人dは,0.5メートルピッチの検査表には無関心であったことを窺わせる行動が認められる。検察官は,被告人らは,㋐0.5メートルピッチのデータについては思いを致さなかった可能性,㋑元データも現業機関において改ざんされていると考えた可能性や改ざんを指示していない旨言い逃れできるなどと考えていた可能性がある旨主張する。しかし,㋐の点については,検察官が被告人らについて改ざんの認識を有したとそれぞれ主張する同年9月の各時点のみならず,被告人らは,その後も0.5メートルピッチの検査表に記載される数値について何ら関心を示したり,行動を取ったりしなかったのであるから,やはり合理的な説明は見いだせない。また,㋑の点も関係証拠により認められる事実経過に照らせば,被告人らがこのように考えていたという具体的な可能性は認められない。したがって,この点に関する検察官の主張は採用できない。以上によれば,0.5メートルピッチの検査表に関する被告人らの対応は,被告人らが改ざんの認識を有していたとする検察官の主張を前提とすると説明が困難であると認められる。第7 その他検察官の主張1 改ざんの動機検察官は,被告会社における本件事故前のインシデント等により事業改善命令といった行政指導等を受けていたことや本件事故当時の報道状況等に照らし,本件事故当時,被告会社保線課幹部であった被告人らにおいて,当局やマスコミ,ひいては一般国民からの厳しい指摘や非難を回避ないし軽減したいという検査表の改ざんを黙認する動機がある旨主張する。しかし,そもそも,被告人らにおいて,検察官が主張する動機に基づいて,改ざんされた「-42」という通り変位数値を容認するとは考え難い。すなわち,被告人らが,検査表記載の数値を自ら主体的に改ざんしたり,改ざんを指示したりするのではなく,保線現場において改ざんされた数値が記載された検査表を受け取って確認し,それを鉄道事故調査官等に提出をするという立場であったという観点から検討しても,w4証人やw3証人が述べるように,改ざん後の「-42」という通り変位の数値は,脱線の可能性が大きいことに変わりはなく,世間等からの非難を回避,軽減するという点では,「-75」であったときと大きな差異はないと考えられるからである。したがって,この点を踏まえても前記判断に影響はない。2 本件事故以前,被告会社の保線管理室等でデータの書き換え等が行われていたこと関係証拠によれば,被告会社の保線関係業務に従事している社員795名(現業機関768名,本支社計画部門27名)のうち16パーセントの者が現職場又は過去の職場でデータの書き換え等を行ったことがあると回答したこと,保線管理室等44か所中33箇所で過去にデータの書き換え等が行われていたことが認められる。また,u証人を含む複数の被告会社従業員が整備基準値超過箇所の数値を整備基準値内に収める改ざん行為を実施したことがある旨述べているが,これは整備基準値超過箇所の数値を1ミリメートルないし3ミリメートル程度小さくして,整備基準値内に収めていたものを指すと認められる。さらに,関係証拠によっても,本社保線課において,保線現場で上記のようなデータの書き換えが行われることを把握していたと認めるに足りる的確な証拠はない。むしろ,u証人やi証人の供述によれば,本社保線課ではそのような情報を把握していなかったことが窺われる。また,被告人らはそれぞれ保線現場で勤務していた経験はあるものの,関係証拠を精査しても,その際に,当該現場において上記のようなデータの書き換えが行われていたとも認められない。検察官は,被告会社におけるデータ書換え等の実情を踏まえて,保線現場の改ざんを許容する雰囲気が広く醸成されている旨主張するが,関係証拠上,被告会社本社保線課において上記データの書き換え等を許容していたとは認められないばかりか,雰囲気などといった曖昧なもので,被告人らの改ざんについての認識を認めることは到底できない。第8 結論以上によれば,検察官の主張を十分に踏まえても,被告人らについては,それぞれ改ざんの認識を有していたことにつき,合理的な疑いが残る。よって,被告人らについては,それぞれその公訴事実について犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により,いずれも無罪の言渡しをする。(被告会社についての法令の適用)罰 条判示第1の行為 運輸安全委員会設置法18条2項2号,32条1号,33条判示第2の行為 鉄道事業法55条1項,70条15号,72条2号判示第3の行為 鉄道事業法56条1項,70条16号,72条2号併 合 罪 の 処 理 刑法45条前段,48条2項訴 訟 費 用 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)(被告会社についての量刑理由)本件は,北海道の鉄道事業者である被告会社において,線路の保守等を担当する現業機関である保線所及び保線管理室の所長及び職員らが,同社の管轄する駅構内において発生した本件事故の直後に,監督官庁である国土交通省及び鉄道事故等の原因究明を行う専門の調査機関である運輸安全委員会に対して,検査表に記載された本件事故現場付近の数値の一部を改ざんした検査資料を2度にわたり提出して虚偽の報告をした上,さらに,数値の一部を改ざんするなどした検査資料を保安監査員に提出するなどして,検査を忌避した事案である。
事案の概要
平成31年2月6日
札幌地方裁判所
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[知財] [民事] 平成28(ワ)5544  202ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件(不正競争・民事訴訟)
平成28(ワ)5544
本件は,原告が,被告らに対し,次の各請求をした事案である。
事案の概要
平成31年2月21日
大阪地方裁判所
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[下級] 平成29(行コ)315  205ViewsMoreinfo
平成29(行コ)315
本件は,処分行政庁が,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(以下「団体規制法」という。)5条4項及び5項に基づき,麻原彰晃こと10松本智津夫(以下「松本」という。)を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体(以下「本団体」という。)に対してした原判決別紙2決定目録記載の公安調査庁長官の観察に付する処分の期間更新等に係る決定(以下「本件更新決定」という。)について,被控訴人が,控訴人に対15し,主位的に,本件更新決定が被控訴人に対しては存在しないことの確認を,予備的に,本件更新決定のうち被控訴人を対象とした部分の取消しを求めた事案である。
事案の概要
平成31年2月28日
東京高等裁判所
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[下級] [民事] 平成29(ネ)1842  155ViewsMoreinfo
平成29(ネ)1842
本件は,第1審被告の契約社員として期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して東京地下鉄株式会社(以下「東京メトロ」という。)の駅構内の売店で販売業務に従事している第1審原告X1並びに同業務にかつて従事していた控訴人X2,控訴人X3及び控訴人X4(以下,この3名を併せて「控訴人ら」といい,第1審原告X1と併せて「第1審原告ら」という。)が,期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を第1審被告と締結している労働者(以下「正社員」という。)のうち上記売店業務に従事している者と第1審原告らとの間で,①本給及び資格手当,②住宅手当,③賞与,④退職金,⑤褒賞並びに⑥早出残業手当(以下,これらを併せて「本件賃金等」という。)に相違があることは労働契約法20条(労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)2条による改正後のもの。以下同じ。)又は公序良俗に違反していると主張して,第1審被告に対し,不法行為又は債務不履行に基づき,平成23年5月20日から各退職日(ただし,第1審原告X1においては平成28年9月20日)までの間に正社員であれば支給されたであろう本件賃金等の一部(控訴人らにおいては上記①から⑤まで,第1審原告X1においては上記①から③まで,⑤及び⑥。以下,これらを総称して「本件諸手当」という。)と同期間に第1審原告らに支給された本件諸手当との差額に相当する損害金,慰謝料及び弁護士費用の合計額(内訳は原判決別紙請求債権目録記載のとおり)並びに本件諸手当のうち褒賞を除く部分(上記①から④まで及び⑥)に対応する損害金に対する各支払期日から,慰謝料及び弁護士費用に対する訴え提起の日である平成26年5月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
事案の概要
平成31年2月20日
東京高等裁判所
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[下級] [民事] 平成29(ネ)574  80ViewsMoreinfo
違約金等支払請求控訴事件
平成29(ネ)574
本件は,控訴人が,被控訴人との間で,被控訴人及び a 株式会社(以下「a」という。)が名古屋市α区β丁目γ番地δ他に建設中のビル(以下「本件ビル」という。)に係る定期建物賃貸借契約を締結するための予約契約(以下「本件予約契約」という。)を締結して,予約金8億3099万5620円(以下「本件予約金」という。)を被控訴人に預託したところ,①被控訴人の債務不履行を理由に本件予約契約を解除した(主位的主張),②瑕疵担保責任を理由に本件予約契約を解除した(予備的主張),③本件予約契約で合意された約定解除(解約)権を行使した(更なる予備的主張),と主張して,被控訴人に対し,不当利得返還請求権に基づき,本件予約金8億3099万5620円の返還並びに同額に対する予約金交付の日である平成25年2月20日から解除の日である平成27年2月9日まで商事法定利率年6%の割合による法定利息(民法545条2項。ただし,上記③の更なる予備的主張による場合は請求しない。)及び同月10日から支払済みまで年18.25%の割合による約定遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成31年2月7日
名古屋高等裁判所 民事第4部
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[知財] 平成29(行ケ)10236等  109Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/フルオレン誘導体の結晶多形体およびその製造方法)
平成31年2月14日
知的財産高等裁判所
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[知財] [民事] 平成29(ワ)15776  127ViewsMoreinfo
商標権侵害行為差止等請求事件(商標権・民事訴訟)
平成29(ワ)15776
本件は,別紙原告商標権目録記載の商標(以下「原告商標」という。)の商標権(以下「原告商標権」という。)を有する原告が,別紙被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)に付された別紙被告標章目録記載の被告標章1(1)及び 1(2)並びに被告標章2(以下,被告標章1(1)及び(2)を併せて「被告標章1」といい,これらと被告標章2を併せて「被告各標章」という。)15が原告商標と類似することから,被告が被告商品を販売等する行為は,原告商標権を侵害すると主張して,被告に対し,商標法36条1項に基づき,被告各標章を付した腕時計(主位的請求)又は被告商品(予備的請求)の販売等の差止めを求めるとともに,民法709条,商標法38条3項に基づき,損害賠償金55万3486円(実施料相当額5万3486円及び弁護士費用50万円の20合計額)及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年3月1日(被告商品販売終了日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成31年2月22日
東京地方裁判所
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[知財] [民事] 平成29(ワ)27741  170ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件(著作権・民事訴訟)
平成29(ワ)27741
本件は,原告が,自ら制作した別紙・タイプフェイス目録1及び2記載の各タイプフェイス(以下「本件タイプフェイス」という。)につき著作権を有するところ,被告において配給上映した映画の予告編やパンフレット,ポスター,ポストカード,Tシャツ等に本件タイプフェイスの一部の文字を無断で利用したことが,25上記著作権(支分権としては複製権の主張と解される。)の侵害に当たると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金400万円(966万2000円の一部請求)及びこれに対する不法行為後の平成29年1月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成31年2月28日
東京地方裁判所
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[下級] 平成27(行ウ)250  104ViewsMoreinfo
原爆症認定申請却下処分取消等請求事件
平成27(行ウ)250
本件は,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)1条の被爆者である原告らが,厚生労働大臣に対し,被爆者援護法11条1項の規定による厚生労働大臣の認定(以下「原爆症認定」という。)の申請をしたが,同大臣がこれらの申請をいずれも却下したため,被告を相手に,同各却下処分の取消しを求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づき,それぞれ100万円及びこれに対する平成27年8月28日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成31年2月28日
大阪地方裁判所 第7民事部
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[下級] [刑事] 平成29(わ)1647  134Views
強盗殺人,死体遺棄,電子計算機使用詐欺
平成31年2月6日
名古屋地方裁判所 刑事第2部
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[下級] [民事] 平成26(ワ)3241  129Views
損害賠償請求事件
平成31年2月22日
名古屋地方裁判所 民事第4部
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[下級] [刑事] 平成30(わ)481  113ViewsMoreinfo
住居侵入,強盗致傷被告事件
平成30(わ)481
数名が共謀して強盗を企て,実行犯が民家に侵入し,家人に傷害を負わせた住居侵入,強盗致傷被告事件において,弁護人は,実行犯ではない被告人について,共犯者と共謀しておらず無罪である旨主張したが,共同正犯の成立が認められた事案。
判示事項の要旨
平成31年2月22日
札幌地方裁判所
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[下級] [民事] 平成29(ワ)429  120ViewsMoreinfo
地位確認等請求事件
平成29(ワ)429
本件は,被告が設置し,運営するa大学(以下「被告大学」という。)の特別任用教員(以下「特任教員」という。)として雇用する旨の有期労働契約(以下「本件労働契約」という。)を被告と締結し,6回にわたって本件労働契約を更新された後,平成29年3月31日をもってその更新を拒絶された原告が,同拒絶は労働契約法19条2号に違反すると主張して,被告に対し,労働契約15上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,同年4月1日から本判決の確定に至るまで,毎月21日限り,賃金月額38万1000円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
事案の概要
平成31年2月13日
札幌地方裁判所
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[下級] [民事] 平成24(ワ)121  182ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件
平成24(ワ)121
本件は,中学2年生で自殺した亡Xの両親である原告らが,亡Xの自殺の原因は,同学年の生徒であった被告A1,被告B1及び被告C1(以下,被告A1,被告B1及び被告C1を合わせて「被告少年ら」という。)から受けたいじめにあるとして,被告少年らの親又はその配偶者である被告A2,被告A3,被告B2,被告B3,被告C2及び被告C3(以下,被告少年らの親又はその配偶者であるこれらの被告6名を合わせて「被告父母ら」という。)に対し,被告少年らに責任能力がなかったことを理由に民法714条1項に基づき,又は被告父母らに監督義務の懈怠があったことを理由に同法709条に基づき,連帯して(同法719条),原告ら各自が亡Xから相続した死亡逸失利益及び慰謝料並びに原告ら固有の慰謝料等の合計額3859万8578円から大津市負担部分を除いた1929万9289円及びこれに対する亡Xの死亡日の翌日である平成23年10月12日(以下,年の記載のない月日の記載は平成23年のものとする。)から支払済みまで同法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める(被告父母らに対する同法714条1項に基づく請求と同法709条に基づく請求は選択的併合と解される。)とともに,被告少年らに対し,責任能力があった場合には,同条に基づき,監督義務の懈怠を理由に損害賠償責任(同条)を負うとされる被告父母らと連帯して(同法719条),上記金員の支払をそれぞれ求める事案である。
事案の概要
平成31年2月19日
大津地方裁判所
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