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カテゴリー > 総合裁判例集 (アーカイブ : 平成31年2月 ; 降順 ; 裁判年月日で整列)

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事件番号/事件名裁判年月日/裁判所判決書
[知財] 平成30(行ケ)10073  222ViewsMoreinfo
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/インクカートリッジICチップの制御方法,インクカートリッジICチップ及びインクカートリッジ)
平成30(行ケ)10073
本件は,特許出願の拒絶査定不服審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。
事案の概要
平成31年2月7日
知的財産高等裁判所
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[下級] [民事] 平成28(ワ)285  221ViewsMoreinfo
建物明渡等請求事件
平成28(ワ)285
本件は,地方公共団体であり,公営住宅の事業主体である原告が,訴外住宅・都市整備公団(後に,同公団の権利義務は都市基盤整備公団に承継され,現在は15独立行政法人都市再生機構に承継されている。)からの借上げに係る市営住宅である別紙物件目録記載の建物部分(以下「本件居室」という。)の入居者である被告に対し,⑴ⅰ 主位的には,借上期間が満了したと主張して,公営住宅法(以下,単に「法」と表現することがある。)32条1項6号及び神戸市営住宅条例(平成9年条例第12号。以下「本件条例」ともいう。)50条1項7号による建20物明渡請求権に基づき,ⅱ 予備的には,賃貸借契約の期間満了による終了によって転貸借契約も当然に終了し,若しくは解約申入れによって原被告間の転貸借契約が終了したと主張して,転貸借契約の終了による建物明渡請求権に基づき,本件居室の明渡しを求めるとともに,⑵ 借上期間満了日の翌日である平成28年1月31日から平成30年3月31日までは1か月10万2290円の割合,25同年4月1日から本件居室の明渡済みまでは1か月10万1700円の割合による賃料及び共益費(以下「賃料等」という。)相当損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成31年2月7日
神戸地方裁判所
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[下級] 平成29(行コ)254  211ViewsMoreinfo
平成29(行コ)254
本件各指定」の用語は,文脈に応じ,当審において訴えが取り下げられた製剤に係る指定を含まず,かつ,新たに訴えが追加された製剤に係る指定を含む趣旨(すなわち,最終的に本件訴訟の対象となっている製剤に関する要指導医薬品としての指定の趣旨)で用いることもある。同様に,原判決において,原判決別紙2記載の製剤に係る要指導医薬品の指定の取消しを求める訴えの略称とされている「本件取消しの訴え」及びこれらの製剤につき,店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法によって販売をすることができる権利(地位)を有することの確認を求める訴えの略称とされている「本件確認の訴え」の各用語も,文脈に応じ,当審において取り下げられた訴えを含まず,かつ,新たに追加された訴えを含む趣旨で用いることもある。)1 事案の概要本件は,平成25年法律第103号による改正後の薬事法(現行の「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)において,店舗販売業者に対し,要指導医薬品(4条5項4号(平成25年法律第84号による改正後は同項3号))の販売又は授与を行う場合には薬剤師に対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない(36条の6第1項)ものとし,上記の場合において上記の情報提供又は指導ができないときは要指導医薬品の販売又は授与をしてはならない(同条3項)ものとする各規定(本件各規定。本件各規定による上記の規制を「本件対面販売規制」という。)が設けられ,厚生労働省告示によって原判決別紙2記載の製剤が要指導医薬品として指定されたこと(本件各指定)について,インターネットを通じて店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法による医薬品の販売(郵便等販売。インターネットを通じた郵便等販売を特に「インターネット販売」という。)を行う事業者である控訴人が,本件対面販売規制は必要性及び合理性に欠ける規制であって憲法22条1項に違反するなどと主張して,①厚生労働大臣が行った原判決別紙2記載の製剤に係る要指導医薬品の指定の取消しを求める(本件取消しの訴え)とともに,②要指導医薬品である原判決別紙2記載の製剤につき,本件各規定にかかわらず郵便等販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認を求める(本件確認の訴え)事案である。
事案の概要
平成31年2月6日
東京高等裁判所
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[知財] 平成30(行ケ)10119  136Views
審決取消請求事件(商標権・行政訴訟/ブロマガ)
平成31年2月6日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成30(行ケ)10100  213Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/経皮吸収製剤,経皮吸収製剤保持シート,及び経皮吸収製剤保持用具)
平成31年2月6日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成30(行ケ)10154  164Views
審決取消請求事件(商標権・行政訴訟/コナミスポーツクラブマスターズ)
平成31年2月6日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成30(行ケ)10138  164Views
審決取消請求事件(商標権・行政訴訟/コナミスポーツクラブマスターズ)
平成31年2月6日
知的財産高等裁判所
詳細/PDF
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[知財] 平成30(行ケ)10124  236Views
審決取消請求事件(商標権・行政訴訟/CHAMPAGNE(シャンパン))
平成31年2月6日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成30(行ケ)10049  172Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/美容器)
平成31年2月6日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成30(行ケ)10048  192Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/美容器)
平成31年2月6日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成30(行ケ)10031  212Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/携帯用グリップ)
平成31年2月6日
知的財産高等裁判所
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[下級] [刑事] 平成29(わ)1647  135Views
強盗殺人,死体遺棄,電子計算機使用詐欺
平成31年2月6日
名古屋地方裁判所 刑事第2部
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[下級] [刑事] 平成28(ろ)13  174ViewsMoreinfo
運輸安全委員会設置法違反,鉄道事業法違反被告事件
平成28(ろ)13
本件の概要被告人らにかかる公訴事実は,以下のとおりである。被告会社は,北海道・・・に本店を置き,旅客鉄道事業等を営むもの,被告人bは被告会社鉄道事業本部工務部副部長兼保線課長,同c及び同dは同課担当課長であるが1 平成25年9月19日午後6時5分頃に北海道・・・x線y駅構内において発生した貨物列車脱線事故に関し,同月20日,運輸安全委員会鉄道事故調査官から運輸安全委員会設置法18条2項2号に基づき同脱線事故現場付近の事故発生日直近における軌道変位検査の結果を報告するよう求められた際,被告人b及び同dは,被告会社z支社z保線所長であったfらと共謀の上,被告会社の業務に関し,同月21日午前9時35分頃,北海道・・・y保線管理室において,前記鉄道事故調査官に対し,x線y駅構内2番線のキロ程27.068の通り一輪側の軌道変位検査結果の数値が「-75」から「-42」に書き換えられるなどした内容虚偽の軌道狂い検査表を提出し,もって虚偽の報告をした。(公訴事実第1の2)2 同日,国土交通省鉄道局長から鉄道事業法55条1項に基づき被告会社管内の本線及び副本線の軌道変位検査の結果のうち整備基準値を超過する箇所及びその測定値等を報告するよう求められた際,被告人b及び同cは,前記fらと共謀の上,被告会社の業務に関し,同月23日午後10時1分頃,北海道・・・被告会社工務部保線課において,被告会社従業員をして,東京都千代田区霞が関2丁目1番3号国土交通省鉄道局職員宛に,x線y駅構内2番線のキロ程27.068の通り一輪側の軌道変位検査結果の数値が「-75」から「-42」に書き換えられるなどした内容虚偽の整備基準値超過箇所整理表データを電子メールで送信させ,これを同職員に閲覧させ,もって虚偽の報告をした。(公訴事実第2)第2 本件の主な争点1 判示記載の日時,場所において,貨物列車脱線事故(以下,「本件事故」という。)が発生したこと,被告会社z支社z保線所長であったf(以下,「f所長」という。)及び同保線所y保線管理室施設技術係であったgが共謀の上,x線y駅構内2番線の軌道狂い検査表(以下,単に「検査表」ということがある。)のキロ程27.068の通り一輪側の軌道変位検査結果の数値を「-75」から「-42」に書き換えるなどしたこと,書き換えられた上記検査表を基に内容虚偽の整備基準値超過箇所整理表データが作成されたことなどについては,関係証拠により認められ,また,弁護人らも特に争っていない。2 本件(公訴事実第1の2,第2)の主な争点は,被告人らが,軌道狂い検査表に記載された通り変位数値が改ざんされていること(以下,単に「検査データの改ざん」ということがある。)を,少なくとも未必的に認識,認容していたか否か(以下,この争点については,「被告人らが『改ざんの認識』を有していたか」などと表記することがある。)及び被告人b,同dとf所長らとの共謀の有無(公訴事実第1の2),被告人b,同cとf所長らとの共謀の有無(公訴事実第2)である。本件争点に関する検察官及び弁護人らの主張概要は,次のとおりである。検察官の主張被告人らは保線に関する知識や経験が豊富であるところ,本件事故発生後,それぞれ本件事故現場付近の検査表を見て,通り変位が本件事故原因の要因の一つとなり得ることを認識した。また,被告人らは,同検査表に記載された正矢量の値に誤りがあることや通り変位数値が整備基準値を大幅に上回っていることなどに強い関心を有する言動をした。被告人らは,その後,数値が変更された検査表を見た際,正矢量の値が「21」から「31」と10しか変更されていないにもかかわらず,通り変位の数値が「-75」から「-42」にまで大きく減少していたなど,同検査表に記載された数値が客観的に不合理な変化をしていることに気付いた。それにもかかわらず,被告人らは数値が不合理な変化をした理由について,部下職員や現業機関である保線現場等に確認しなかった。そして,被告人らには,被告会社における過去のインシデントや事故当時の報道状況等に照らし,当局やマスコミ,ひいては一般国民からの厳しい指摘や非難を回避ないし軽減したいという上記検査表のデータ改ざんを黙認する動機が認められること,また,被告会社においては,保線現場におけるデータ改ざんを許容する雰囲気が広く醸成されており,被告人らにおいても,通り変位の数値が不自然に大きく減少したのを見て,保線現場によって同検査表の数値が改ざんされたことは想定できることも併せて考えると,被告人らは,それぞれ遅くとも下記の時期までに,同検査表の通り変位の数値が意図的に改ざんされたものであることを少なくとも未必的に認識し,認容していたといえる。すなわち,被告人dについては,軌道狂い検査表の再確認をf所長に指示し,その後の平成25年9月20日夜,通り変位数値が改ざんされた同検査表を見た時点である。被告人bについては,同日夜,被告人dに対して,通り変位数値が改ざんされた同検査表を運輸安全委員会に提出する旨を了承した時点(公訴事実第1の2),また,同月23日夜,同検査表の内容と同一であると認識した整備基準値超過箇所整理表(完成版)(以下,整備基準値超過箇所整理表については,単に「整理表」といい,整理表(完成版)については「完成版整理表」という。)について,これを国土交通省に提出することを被告人cに了承した時点(公訴事実第2)である。被告人cについては,同日夜,被告会社従業員のhに対して,通り変位数値が改ざんされた同検査表の数値に合わせた完成版整理表を作成した旨を了承した時点である。そして,改ざんされた同検査表の作成経緯やその提出が了承された経緯等を踏まえると,同検査表を運輸安全委員会に提出することについて,f所長,g,被告人d及び同bとの間に,黙示の順次共謀が成立したといえる(公訴事実第1の2)。また,改ざんされた完成版整理表の作成経緯やその提出が了承された経緯等を踏まえると,完成版整理表を国土交通省に提出することについて,f所長,g,被告人c及び同bとの間に黙示の順次共謀が成立したといえる(公訴事実第2)。弁護人らの主張被告人らは,保線に関する知識や経験が豊富であったことから,通り変位数値の改ざん前及び改ざん後の本件事故現場付近の検査表をそれぞれ目にしたが,改ざん前の同検査表には訂正されるべき誤りがあると認識し,改ざん後の同検査表は,その誤りが訂正されたことによる変化と理解した。そして,被告人らは,本件事故原因との関係で通り変位数値に関心を抱いていなかったことも踏まえると,被告人らにおいて,上記通り変位の数値の変化が客観的に説明できないことに気付かず,したがって,現業機関等に対して数値の変化の理由を確認することもなかった。また,被告人らには,改ざんを黙認する動機はなく,被告会社において,保線現場の改ざんを許容する雰囲気が広く醸成されていたこともない。さらに,被告人らが改ざんを未必的にも認識,認容していたとすれば,後に運輸安全員会に提出することが予定されていた0.5メートル間隔の軌道狂い検査表について改ざん等をしていないこと,被告人cにおいて,改ざん後の通り変位の数値が反映されていない整理表の暫定版(以下,「暫定版整理表」という。)を国土交通省に提出したことなど,合理的な説明がつかない事実が多数ある。以上からすると,被告人らは,同検査表の通り変位数値が意図的に改ざんされたものであることを未必的にも認識し,認容していたとは到底認められないことから,いずれも無罪である。第3 前提事実関係証拠によれば,以下の各事実が認められる。(各項に認定事実の根拠となる主な証拠を記載している。なお,書証については記号番号のみを,各証人及び各被告人の供述については,単に当該証人もしくは当該被告人の氏名のみ(既出の者については氏のみ)記載する。)1 被告会社の組織等被告会社及び保線部門の組織(甲17,19,乙77)被告会社は,昭和62年4月1日付けで設立され,北海道・・・に本店を置く,旅客鉄道事業,貨物鉄道事業等を目的とする株式会社である。被告会社には,支社としてα1支社,α2支社,z支社が設置されている。被告会社本社鉄道事業本部工務部には,非現業機関である保線課が置かれており,同保線課が被告会社管内の線路の保守等に関する業務全般を管理している。(以下,被告会社本社の保線課については「本社保線課」と表記することがある。)被告会社本社及び各支社の下には,現業機関である保線所が置かれており,線路,建造物及び鉄道林の保守及び施工等を担当業務としている。もっとも,各保線所の担当区域が広く,保線所単独では担当区域の線路の保守等が困難であることから,各保線所の下には保線管理室が設置されている。本社保線課の状況(甲17,証人i)本社保線課は,被告会社本社ビル内にあり,工務部副部長兼保線課長の下に,管理・保安テーブル,計画テーブル及び線路技術テーブルの3部署があり,各テーブルには統括責任者としてグループリーダーが置かれ,各グループリーダーの下にそれぞれ職員が配置されている。管理・保安テーブルは,保線課社員の統括,保線要覧の作成,部外協議,事故対応,事故防止指導等を担当する部署である。計画テーブルは,予算管理,軌道工事の発注,積算,機械の導入管理,設備投資等を担当する部署である。線路技術テーブルは,社内規定の改廃,新入社員への技術継承,用材業務,軌道管理等を担当する部署である。なお,脱線事故が発生した場合には,線路技術テーブルにおいて,脱線状況の確認をした上で,材料の復旧手配,脱線箇所の軌道構造と台帳との関係を調査することとされており,また,多くの場合に,軌道狂い検査表等のデータ収集や取りまとめを行うことと考えられていた。本件事故発生当時,被告人bが工務部副部長兼保線課長を,被告人cが保線課担当課長として管理・保安テーブルのグループリーダーを,被告人dが保線課担当課長として計画テーブルのグループリーダーをそれぞれ務め,iが保線課副課長として線路技術テーブルのグループリーダーを務めていた。被告会社z支社の組織(甲17,19)被告会社z支社には,z保線所が置かれ,その下にz保線管理室,y保線管理室,β1保線管理室,β2保線管理室が置かれていた。y保線管理室が担当する区域内の線路の保守等は,まず同管理室が担当し,z保線所は,y保線管理室を含む各保線管理室が行う線路の保守等を統括する部署である。本件事故が発生したx線y駅構内は,z支社の所管区域であり,y保線管理室が線路の保守等を担当していた。z保線所の組織(甲17)z保線所は,北海道・・・に所在し,同保線所には,z保線所長の下に,線路テーブル,管理テーブル等4部署があり,各テーブルには助役が置かれ,その下に職員が配置されていた。本件当時,f所長がz保線所長を,jが線路テーブル助役をそれぞれ務め,e1は線路テーブル施設係の立場にあった。y保線管理室の組織(甲17)y保線管理室は,北海道・・・に所在し,同管理室には,所長代理である助役以下,施設技術主任,施設技術係,施設係等の職員が配置されていた。本件当時,kが同管理室助役(所長代理)を務め,e2は同管理室施設係の立場に,gは同管理室施設技術係の立場にあった。2 被告人らについて(甲17,87)被告人b被告人bは,昭和63年に被告会社に就職後,・・・(中略)など保線担当部署を中心に勤務し,平成23年3月から工務部副部長兼保線課長として勤務していたところ,本件事故が発生した。被告人c被告人cは,平成2年に被告会社に就職後,・・・(中略)など保線担当部署を中心に勤務し,平成24年4月から本社保線課担当課長(管理・保安テーブルグループリーダー)として勤務していたところ,本件事故が発生した。なお,本件事故発生当時,被告人cは,被告人bの直属の部下であった。被告人d被告人dは,・・・(中略)など保線担当部署を中心に勤務し,平成24年6月から保線課担当課長(計画テーブルグループリーダー)として勤務していたところ,本件事故が発生した。なお,本件事故発生当時,被告人dは,被告人bの直属の部下であった。3 軌道管理等被告会社における軌道管理の状況等(甲12,13,181)被告会社においては,「線路技術心得(実施基準)」,「線路検査規程」,「軌道整備規程」といった内規により,実施すべき軌道変位(列車の繰り返し通過や自然現象により軌道の各部に生じる変位や変形)検査等が定められていた。本件事故現場である被告会社x線y駅構内2番副本線においては,軌道変位検査を年2回実施することとされていた上,軌道変位検査の結果,軌間変位(左右のレール間隔のずれ),水準変位(左右のレールの高さのずれ),高低変位(レール頭頂面の長さ方向の凹凸),通り変位(レール側面の長さ方向での左右のずれ)及び平面性変位(レールの長さ方向の2点間の水準のずれをいい,平面に対する軌道のねじれ状態を示すもの)の5項目の軌道変位の各軌道狂い値が,項目ごとに定められた整備基準値に達した場合等には,15日以内に補修することとされていた。なお,線路の曲線部分では,「C」と表記されるカント,すなわち,遠心力を相殺,軽減するために軌道に一定の傾斜がつけられていることから,決められたカント量に対する増減量が水準変位となる。また,曲線部には列車の車輪が滑らかに通過できるために,「S」と表記されるスラックにより線路の基本寸法よりも軌間が拡大されていることから,曲線部においては,軌間の実測値からスラック量を引いた数値が軌間の変位量となる。そして,「V」と表記される正矢量は,「R」と表記される曲線半径に応じて定まる数値であり,12500÷(曲線半径)により算出されるものである。正矢量は,10メートルの糸を曲線区間に張り,糸の中央からレールまでの距離を指すものである。したがって,曲線部においては,実測値から正矢量を引いた数値が,通りの変位量となる。そして,本件事故現場付近の軌間変位及び通り変位の整備基準値は,軌道変位の測定を行うことができる手押し式の装置であるトラックマスターによる測定値である静的値で,いずれも19ミリメートルであった。また,通り変位の安全限度値については,国鉄時代の鶴見事故技術調査委員会により,列車加重を加味した動的値による走行安全上の判定目標としてプラスマイナス36ミリメートルとされていた。なお,本件事故現場付近の曲線について,本件事故当時,曲線台帳上,曲線半径は400メートルとして管理されていた。また,軌道管理の状況は,軌道狂い検査表として管理されていたところ,同検査表は,仮に脱線事故が発生した場合,事故調査の重要な資料となるものであった。軌道変位検査の仕組み等(甲14ないし16,68,69,89,148)トラックマスターによる検査方法及び検査結果データの取り扱いについては,まず,トラックマスターを軌道上で走らせて物理的,機械的に測定(なお,通り変位及び高低変位については,本体側すなわち基準側のレールのみを測定し,反対側すなわち一輪側のレールはこの測定値などを元に論理的に計算される仕組みとなっている。)した実測値の元データ(2メートル弦で0.5メートル間隔で測定されたデータ)がトラックマスターに挿入されたPCカードに自動的に記録される。なお,通り変位の数値は,左右を問わず,軌間外方にでる場合を「+」,逆の場合は「-」として表示される。次に,このPCカードを被告会社備付けの各保線パソコンのトラックマスターシステムで読み取ると,10メートル弦のデータに変換されたTRDファイルが自動的に作成され,このTRDファイルと,線路別にシステムに事前登録されている基準値(スラック,カント,正矢量)の台帳データのファイルを読み込むことにより,基準値が自動的に差し引かれるなどした軌道狂い値(計算値)などがエクセルで表示される。なお,このとき,画面上の操作により,5メートル間隔(ピッチ)又は0.5メートル間隔(ピッチ)のいずれの表示にすることも可能である。(以下,0.5メートルピッチのデータは,単に「0.5メートルピッチのデータ」と表記することがある。)そして,データファイルの作成方法等により表示形式は異なるものの,前記の過程により作成したデータを印刷すると,軌道狂い検査表が紙媒体で作成される。このように,トラックマスターにより物理的,機械的に測定された元データは,その後,実測値や計算値については人為的な数値入力や変更作業を経ることなく,紙媒体としての軌道狂い検査表の作成が可能な仕組みであった。軌道変位検査の実施状況等(甲165)本件事故現場付近における本件事故直前の軌道変位検査は,平成25年6月7日,gらによってトラックマスターにより実施され,その際,gにより,その検査結果が記載された5メートルピッチの軌道狂い検査表が,軌間変位の数値が改ざんされる前の状態で作成・印刷され,y保線管理室において保管されていた。gは,印刷直前に,同検査表データの記事欄に,「R=400,C=10,S=5,V=21」などと手入力した。4 本件事故本件事故の発生(甲6ないし9,11)α3貨物駅発α4貨物ターミナル駅行き18両編成の貨物列車(以下「本件貨物列車」という。)は,同年9月19日午後6時4分,x線y駅を発車し,時速約20キロメートルで力行運転していたところ,同日午後6時5分頃,y駅構内2番線の分岐器24号手前であるキロ程27.064付近において,6両目(先頭のディーゼル機関車を含む。)の後台車左側車輪が最初に軌間内に脱線し,その後,6両目から9両目までが脱線した状態で停止し,本件事故が発生した。本件事故発生直後の対応状況等(被告人b,同c,同d)本件事故当時,出張中であった被告人b及び同cは,本件事故発生の連絡を受け,輸送障害発生時に現場情報が集約される施設指令が置かれている被告会社本社西ビル(以下,単に「西ビル」という。)の3階運行管理センターに向かった。被告人dは,当時,z方面に出張していたことから,本件事故の報告を受け,本件事故現場に向かい,同日午後7時45分頃,同現場に到着した。被告人dは,本件事故現場で脱線した車両や脱線痕などを確認し,本件貨物列車の進行方向左側の車輪が軌間内(内軌側)に脱輪していたことなどから,まくらぎや締結装置の不良が主な原因となって,軌間拡大が発生し,本件事故が発生したと考えた。そこで,被告人dは,被告人bに対して電話で,本件事故の原因等について上記のとおり伝えた。5 z保線所における軌間変位数値の改ざん状況等軌間変位数値の改ざん状況,正矢量の修正状況等(判示第1の1関係)(甲149)本件事故後,y保線管理室において,e2は,e1の指示により,キロ程27.063の軌間変位の数値が「39」であったのを「25」に改ざんして,軌道狂い検査表を作成した。(甲65のメール④添付の軌道狂い検査表。以下,「検査表①」という。検査表①のうち,測点番号5〔キロ程27.058〕ないし測点番号87〔キロ程27.099〕の軌道狂い値及び記事欄の記載を抜粋したものを別紙の別表1として末尾に添付する。)検査表①を被告人らが受け取った状況等(甲61,66,160,被告人b,同c)そして,検査表①のデータが,同日午後8時58分頃に本社保線課線路技術テーブルのlに,また,同日午後9時16分頃に西ビルの施設指令に,それぞれ送信された。西ビルにいた被告人cは,検査表①を見て,軌間変位の数値が25であることを確認し,また,通り変位の数値が大きいこと,また,記事欄の「R=400」と「V=21」に齟齬があることに気付いた。被告人cは,検査表①の右上余白に,「9:48」と記入したほか,キロ程27.063の軌間変位の数値「25」に丸印を記入し,記事欄に記載された「V=21」の「21」の下に矢印を引いて「31」と記入し,通りと高低の限界値欄にそれぞれの動的値の限界値である「27」と記入した上でこれを横線で消し,通り変位の一輪側の欄の上部に「A」と,通り変位及び高低変位の基準側の各欄の上部に「B」とそれぞれ書き込み,左側余白に線路のカーブの軌道を描くなどした。また,被告人cと被告会社鉄道事業本部専任部長のmは,検査表①に記載された通り変位の数値が大きいことについて話し合った。被告人bも検査表①を確認し,記事欄に「R=400」,「V=21」と記載された数値には齟齬があると感じた。また,被告人bは,通り変位に70台の数値を含む大きな値が並んでいること,軌間の数値が整備基準値を超過する25となっていることも確認した。本社保線課の状況等(証人i,被告人d)本社保線課にいたiは,西ビルの施設指令にいる被告人bらから,電話で複数回にわたり,検査表①の記事欄の「V=21」が間違っているのではないか,通り変位に大きな数値があるがこれは合っているのか,また,復旧に向けた軌道材料の調達状況等について問い合わせを受け,正矢量(V)の数値については現場に聞かない限り分からない,今現場に確認している旨回答した。また,iは同月20日午前0時頃,被告人cから通り変位の数値がこんなに大きいものかと聞かれたことから,正矢量が引かれていない可能性,台帳の曲線半径がそもそも間違っている可能性等,本社保線課において考えたことを伝えた。iは,本社保線課員を通じてz保線所に問い合わせた結果,通り変位の数値が大きい理由や正矢量(V)が21と記載されている理由が判明しなかったことから,同月19日夜から同月20日午前0時頃にかけて,被告人dに対し,電話で,正矢量(V)の値に疑義が生じていることから検査表の内容を確認してほしい旨伝えた。被告人dは,y保線管理室の事務室において,f所長から検査表①を受け取り,確認したところ,同検査表の記事欄には,Rが400であるにもかかわらず,Vが21ミリと記載されており誤りがあること,また軌間が25ミリと記載されていることに気付いた。そこで,被告人dは,f所長に対し,同検査表の数値に誤りがあるのではないかなどと言って,確認を指示した。検査表①のVの数値の修正等(甲66,119)その後,基準値欄が記載され,通りの基準値として「31」等と記載された軌道狂い検査表(甲65のメール⑥添付の軌道狂い検査表。以下,「検査表②」という。検査表②のうち,測点番号5〔キロ程27.058〕ないし測点番号87〔キロ程27.099〕の軌道狂い値等を抜粋したものを別紙の別表2として末尾に添付する。)が,同月20日午前1時11分頃,z保線所から本社保線課nにメール送信され,nは,検査表②を印刷した上で,iらに渡したほか,被告人bの机上にも一部置いた。そして,被告人bは,同日中に検査表②を見た。6 同月20日の状況等,通り変位数値改ざんに至る経緯等運輸安全委員会の報告要求の状況(甲20,21,142,323)oら,運輸安全委員会鉄道事故調査官(以下,「鉄道事故調査官」といい,oについては「o調査官」と表記する。)は,本件事故発生の一報を受け,同月20日朝,y保線管理室に向かった。o調査官らはy保線管理室に到着した後,同日午前9時52分頃から,被告人dを含む被告会社職員らと打ち合わせ会議(以下,「第1回打合せ会議」という。)を行った。第1回打合せ会議においては,被告会社安全推進部安全指導グループ主席であったpから本件事故の概況,今後の復旧スケジュール等が報告された。その中で,o調査官から,直近の軌道変位検査において異常が出ていたかどうか確認された際,被告人dは,もともとスラックが若干あることから正確な数字ではないが,軌間が3,4ミリ程度,基準値を超過していることのほか,通り変位にも問題がある旨伝えた。その後,鉄道事故調査官らは,本件事故現場の調査を開始し,レールの損傷状況を確認したり,また,本件貨物列車の運転士に対して聞き取り調査を行ったりした。そして,鉄道事故調査官らと被告人dを含む被告会社職員らは,同日午後3時50分頃から,y保線管理室において打合せ会議(以下,「第2回打合せ会議」という。)を行った。第2回打合せ会議において,鉄道事故調査官は,被告人dら被告会社職員に対し,報告期限を定めずに,y駅構内2番線の本件事故直近の軌道変位検査結果を報告するよう要求した。Q&Aに関する打合せ状況(甲53,103,証人q,被告人c)ア 被告会社保線課線路技術テーブル主席qは,同日,翌日の夕方に行われる予定であった本件事故に関する記者会見の想定問答用のQ&A(以下,「Q&A」という。)を作成する作業をしていた。この作業中,Q&AのA3には「軌道変位検査のうち,軌間と通りの変位量が基準値を超過している。」との記載が,Q4には「基準値と超過している数値は」との記載が,A4の「軌間」の検査結果欄には,「直線部」は「基準値内」,「曲線部 200≦R<600」は「25mm」との記載がそれぞれあり,「通り」の検査結果欄は空欄となっていた。イ qは,Q&Aを被告人b及び同cに手渡し,被告人dにメールで送信した上,同日午後2時過ぎ頃,被告人b及び同cとの間で,Q&Aについて打ち合わせた。その際,被告人bは,qに対し,本件事故現場付近の曲線半径はR400ではなく,もっときついR200程度ではないかなどと伝えたが,qから,脱線防止ガードが入っていないので250よりも大きい旨返答を受けると,それ以上の議論はなかった。さらに,この打合せの際,Q&AのQ2の「脱線した箇所はどのような軌道構造か?」と,それに対する答えとして,A2の「2番線と分岐器の間の曲線はR=400m,C=10mm,S=5mmである。」などが追加されることとなった。ウ 被告人cは,Q&Aの1枚目右上余白に「14:00」と記載し,最終ページの更Q&更Aを削除する意味のバツ印を記載するなどの手直しをし,「Q4.基準値と超過している数値は」の回答欄「A4.」の「検査結果」「通り」欄の空欄箇所に「75」と手書きで記入した。また,被告人cは,Q&Aに,通り変位の安全限度値が36ミリメートルであると記載すると,通り変位の数値が安全限度値を超えていることがマスコミに知られて騒がれるなどと考え,本社保線課管理・保安テーブル主席のrに対して,あえて書く必要はないのではないかなどと伝えた。通り変位数値の改ざん状況等(甲73,74,177,被告人d)ア 被告人dは,同日の日中,f所長から,検査表②と同じ数値が記載されており,記事欄に「R400」,「C10」,「S5」,「V31」と記載された検査表(甲57の33枚目ないし35枚目。以下「検査表②’」という。)を受け取り,その内容を見た。被告人dは,記事欄のVが31に変更されていたものの,その他の検査数値は従前のものと変わりがないように感じた。そこで,被告人dは,f所長に対し,通り変位の数値がこのままでいいのかなどと言って,同検査表の数値を再度確認するように指示した。なお,弁護人らは,かかる被告人dの発言は,検査表①を受け取った際のものである旨主張する。しかし,f所長は,下記のとおり,このやり取りの後,gに対して通り変位数値の書き換えを指示していることなどに照らせば,上記の事実が認められるのであって,この点に関する弁護人らの主張は採用できない。イ また,被告人dは,同日午後6時13分頃,i副課長と電話で,次のとおり話した。被告人dは,iから,「出すデータって,元のヤツ出すの。」,「V21って間違って,一番最初から我々が見てたヤツ。」などと尋ねられると,「いーや,あの31でもいいよ。」,「それは俺,明日まで,選ばす。」,「だからVの31のがいいんでしょ,これ。」と発言し,Vが21と記載されている検査表とVが31と記載されている検査表のどちらを運輸安全委員会に提出するのかについて話した。また,被告人dは,iから「いるいるってうるせんですよ,それ,どれ出すんだ,どれ出すんだって。」と運輸安全委員会に提出する検査表に関する被告人bの様子を聞いて,「だってどれ出すって,かえれないっしょ。」と発言した。さらに,被告人dは,「おまけにウチで言ってる25ミリだってあるし,あの75ミリもあるし。」,「これ,75ミリ何よって言われるぞ」などと発言した。その後,被告人dとiの間で,本件事故現場の復旧作業の進捗状況等の会話がなされた。7 z保線所における通り変位数値の改ざん(甲167,171)f所長は,前記被告人dの指示を受け,同日夜,y保線管理室において,gに対し,本件事故現場付近の通り変位の数値を小さく書き換えるよう指示した。gは,これに従ってキロ程27.068の通り変位の一輪側の数値を「-75」から「-42」に変更するなど,キロ程27.063からキロ程27.097までの通り変位(基準側及び一輪側)の数値を書き換えて改ざんした(甲65のメール⑦添付の軌道狂い検査表。以下,この改ざん後の検査表を「検査表③」という。検査表③のうち,測点番号5〔キロ程27.058〕ないし測点番号87〔キロ程27.099〕の軌道狂い値及び記事欄の記載を抜粋したものを別紙の別表3として末尾に添付する。)。8 通り変位の数値改ざん後の検査表を被告人らが受け取った状況等被告人dが受け取った状況等(証人q,被告人b,同d)被告人dは,同日夜,y保線管理室において,検査表③を受け取ると,同日午後7時51分頃,部下を通じて,運輸安全委員会に提出する予定のものであるとして,検査表③を本社保線課にファックス送信した。被告人dは,その頃,本社保線課にいたqに対し,電話で,運輸安全委員会に提出する検査表をファックスで送ったので被告人bに見せてほしい旨伝えた。qは,平成24年に発生したβ3線における2件の脱線事故の際,被告人bが運輸安全委員会に提出する資料に目を通していたことから,今回の事故に関しても被告人bが目を通すものと考え,検査表③を被告人bのもとへ届けた。被告人bが受け取った状況等(被告人b,同d)被告人bは,同日夜,本社保線課で検査表③を受け取り,これを見た。そして,被告人bと被告人dは,電話で,検査表③を運輸安全委員会に提出することなどについて話し,被告人bはその提出を了承した。被告人cが受け取った状況等(甲50,62,65,71,102,127)被告人bは,qに対し,西ビルの施設指令にいる被告人cに対しても検査表③を送信するよう指示した。qは,同日午後8時11分頃,タイトル欄に「運輸安全委員会提出トラマスデータ」,本文に「d担当課長から,添付ファイルを運輸安全委員会に提出する予定とのことです。」と記載して,検査表③を添付して,社内メールで西ビルの施設指令に送信した。当時,施設指令員として勤務していたsは,qから,運輸安全委員会に提出する書類をメールで送ったので,被告人cに渡すように言われたため,社内メールに添付されていた検査表③を印刷した。当時,被告人cは会議中で不在であったため,sは,印刷した検査表③の上部余白に「q主席より 運輸安全委員会に提出するトラマデータ c担当課長へ」と黄色い付箋に赤字で記載して貼付し,被告人cらが座っていたテーブルに置いた。また,sは,被告人cが検査表を混同しないように,テーブルの上に置いてあった検査表①の左上余白に赤字で「◎基データ」と赤ペンで記載した。そして,sは,被告人cに,qから送信されてきた検査表③をテーブルの上に置いた旨伝え,被告人cは,これらの検査表を見た。その後の被告人bの行動(甲55,証人q,被告人b)被告人bは,同日午後9時頃,qに対し,数値を変えておくように指示した。qは,この指示を,Q&Aの通りの検査結果欄の数値を検査表③の通り変位の最大値に変更する指示と理解して,同欄に「45」と記入した。また,被告人bは,同日夜に検査表③の写しを作成した上で,同写しに次の数値や内容等を手書きで記入した。ア 記事欄の余白に,検査表②に記載された「通りの基準値」と「通りの基準側と通り一輪側の各計算値」を元に算出した,実測値に近似する数値である「V生値」イ 記事欄の右側余白に「諸元正矢」として,事故現場の曲線半径400メートルに対する正矢量ウ 記事欄の右側余白に「現地正矢」として,事故現場の曲線半径を210メートルと仮定し,曲線の始終点が1マスずつ上にずれていると仮定した場合の正矢量エ 通り基準側と通り一輪側の計算値欄の余白に「V生値」から曲線半径を210メートルと仮定するなどした「現地正矢」を加除した数値オ 検査表右上部の余白に,「現地はR210m程度の曲線が始点側にズレて入っている。測定15が脱線開始点付近。軌間が基準値を超えている。(高低,通りも)R210としても通り変位は20~25程度のものが一部見られる。」被告人bのtへの報告状況(証人t,被告人b)被告人bは,同日夜,被告会社事業本部工務部長tに対し,検査表③(前記の「V生値」等の書き込みのないもの)を示し,同検査表③では半径が400となっているが,実際の現場の半径はもう少し小さいようである,現場の半径に合わせると通り変位の数値はこれくらいになる旨説明した上,検査表③を運輸安全委員会に提出する旨報告し,tの了承を得た。9 同月21日の状況等水準の限界値の訂正等(甲54,証人u)被告人dは,同月21日午前9時19分頃,本社保線課にいた同課管理・保安テーブル主席のuに対し,電話で検査表③の水準の限界値欄の数値を「19」から「18」に訂正して運輸安全委員会に提出する旨を伝えるとともに,そのことを被告人bに伝達するように指示した。検査表を運輸安全委員会に提出した状況等(甲6,23,証人o,被告人d)被告人dは,同日午前9時35分頃からy保線管理室において行われた打合せ会議(以下,「第3回打合せ会議」という。出席者は第1回及び第2回打合せ会議と同様であった。)に出席し,鉄道事故調査官に対し,検査表③の水準の限界値欄を18に訂正したものを,被告会社からの報告として提出した。被告人dは,その際,鉄道事故調査官に対し,本件事故現場付近の測定数値につき,通りが45,高低がマイナス23,軌間がプラス25と基準値オーバーがみられることを報告した。そして,被告人dは,軌間変位については基準値が19ミリであることから6ミリの超過であること,通りも高低も一部基準値オーバーがみられることから,あまりいい結果でない旨報告した。また,被告人dは,基準値超過の箇所がないかという問い合わせに対しては,本件事故は,軌間に動的な拡大がみられることから,軌間の数値に着目したところ,その軌間に大きな数値があった旨も報告した。また,鉄道事故調査官は,被告人dら被告会社職員に対して,本件事故現場付近の直近の検査データについて,0.5メートルピッチのものの提出を求めた。整理表作成に着手した状況等(甲24,26,27,被告人c)国土交通省は,同日午後10時50分頃,被告人c宛に「軌道の保守管理に係る緊急点検について」と題する同省鉄道局長の文書をメール送信し,被告会社に対し,報告期限を同月23日と定めた上,被告会社管内における本線及び副本線の直近の軌道変位検査結果のうち,整備基準値を超過する箇所及びその測定値等の報告を求めた。これを受けて,被告人cは,保線課職員に対し,整理表の作成を指示するなどした。10 同月23日の状況等整理表の作成状況等(甲28,被告人c)前記国土交通省からの報告要求を受け,被告会社では,本社保線課において,職員が分担して全道の整備基準値超過箇所等を確認し,国土交通省から指定された様式の表に記入していく作業が進められた。その後,被告人cは,国土交通省から作業途中の整理表を送付するよう求められたため,保線課職員に指示し,同月23日午後1時2分頃,作成途中であった暫定版整理表(y駅構内2番線のキロ程27.063の軌間変位の測定値が「25」,キロ程27.068の通り変位一輪側の測定値が「-75」などと記載されたもの)を国土交通省職員宛にメール送信した。暫定版整理表の訂正(甲77,78,119,証人h,被告人c)その後,被告人cの指示を受けて暫定版整理表の数値を再確認していたnが,同月21日に運輸安全委員会に提出済みであった検査表③と見比べたところ,y駅構内2番線の通り変位の数値に齟齬があることに気付いた。nは,暫定版整理表と齟齬があった検査表③の数値に青色マーカーで印を付けるなどした上,本社保線課線路技術テーブル主席hに上記マーキングをした検査表③を手渡し,これが運輸安全委員会に提出されたものである旨説明するとともに,暫定版整理表の数値を検査表③の数値に変更するよう依頼した。hは,nからの上記依頼が被告人cの了解を得たものであることをnに確認した上,暫定版整理表のデータのうちy駅構内2番線のキロ程27.068の通り一輪側の数値を「-75」から「-42」に書き換えるなどした。そして,hは,数値を書き換えた整理表(軌間25,通り-42などと記載された完成版整理表)及びnがマーキングした検査表③を,被告人cに見せながら,y駅構内2番線の数値は運輸安全委員会に提出した検査表③の内容に変更した旨説明した。被告人cは,hに対し,通り変位の数値が変更された理由や根拠について確認することなく,その変更を了承した。完成版整理表の提出状況等(甲30,119,証人h,被告人c,同b)被告人cは,同月23日夜,被告人bに完成版整理表を見せてその提出の了承を求めた。被告人bは,完成版整理表の内容が検査表③の内容と同一であろうと考えた上で,その提出を了承した。その後,被告人cは,tの了解も得て本社保線課に戻ると,nやhらに対し,通りの大きいところは分岐の付帯曲線で急なカーブが入っている,その場所を押さえておいた方がいい,分岐の付帯曲線に印を付けようなどと指示して,完成版整理表のうち,通り変位が非常に大きい数値となっていたy2番線,y5番線,α5の1番線及びα6の3番線の備考欄に△印を追記させるとともに,末尾に「△:現地の状況に合わせた曲線を挿入しているため,計画諸元と異なっていることから再精査します。」と追記させた。その後,被告人cは,本社保線課において同保線課職員rに指示して,同日午後10時1分頃,完成版整理表を国土交通省鉄道局の職員らに宛ててメール送信させた。11 補修実績のねつ造に至る経緯等(甲79,173,183,326,証人j,被告人c)本社保線課において,整理表の作成を進めていたが,同日,整備基準値超過箇所の超過認識日等を調べることになった。そこで,被告人cは,同日午前中,f所長に電話してトラックマスターによる検査後の整備基準値超過箇所の補修歴の確認等を指示したほか,α7保線所,α8工務所にも同様の指示をした。f所長の指示に基づいて,j,e1,vらz保線所の職員らが確認作業をしたところ,y保線管理室については,整備基準値超過箇所について過去の補修実績がなかった。そこで,f所長が,被告人cに対し,線路はよくなっているが補修実績がない旨連絡した。これに対し,被告人cは,f所長に対し,補修した実績がなければ会社が潰れる,補修したのであれば実績があるはずでそれをよく探してほしい,補修していても保線システムに入力しない場合もあるのではないか,当時,作業に当たった職員の記憶でもいいから探してみるようになどと強い口調で言った。f所長は,被告人cが暗に補修実績をねつ造するように指示しているものと理解し,j助役やe1らz保線所の職員に被告人cの発言を伝えるなどして,補修実績のねつ造を指示した。これを受けて,v,e1らが,補修実績のねつ造を行い,同月24日,本社保線課から確認のために送られていた整理表に架空の補修日等を記載するなどし,その整理表が被告人cに送付された。前記ねつ造作業を終えた後,f所長は,ねつ造した補修実績の補修日が備考欄右余白に手書きされた暫定版整理表を,被告人cにファックス送信したところ,被告人cから,「ねつ造した補修日」だけでなく,その補修日の後に行ったトラックマスターの検査日及びその測定値を記載するように指示を受けた。その後,z保線所において,暫定版整理表の備考欄に,トラックマスターの検査日(補修日〔ねつ造〕の直後に実施したことにした日)が,補修日(ねつ造)右横の余白に,補修後のトラックマスター測定値がそれぞれ手書きで記載された。そして,これらねつ造された補修実績が加筆された暫定版整理表が,被告人cら宛にメール送信された。なお,弁護人らは,被告人cは,ねつ造した補修日の後に行われた検査日や測定値の記載を指示していない旨主張する。しかし,f所長は,ねつ造した補修実績の補修日が記入された暫定版整理表を被告人cに送信していること,その後,z保線所において,上記検査日や測定値の記載がなされていることなどに照らすと,この点は被告人cの指示があったと認めるのが相当である。12 同年10月以降の状況(検査データと検査表③の通り変位数値の齟齬に関する対応状況等)(甲101,182,324,325,証人l,同j,被告人c)lは,同年10月上旬頃,事前に入手していた本件事故直近の本件事故現場付近の検査データの実測値を元に,自ら0.5メートルピッチの諸元(V,C,S)を再計算して,運輸安全委員会から提出を求められていた0.5メートルピッチの軌道変位検査データを作成していた。その際,軌間の計算値が運輸安全委員会に提出した検査表③の「25」ではなく,「24」になったため,lは,被告人cに指示を仰いだ。被告人cは,lに対し,lが作成したデータの「24」を運輸安全委員会に提出した数値である「25」に合わせるように指示したものの,具体的な方法については伝えなかった。lはこれを受け,データの実測値を変更することにより計算値を「25」に変更した。その後,lが訂正後のデータを印刷した11枚綴りの検査表を被告人dに見せたところ,被告人dは,これを十数秒程度かけて見た上で,lに対し,このデータと運輸安全委員会に提出した検査表③とを確認するように指示した。そこで,lは,検査表③を取り寄せて見比べたところ,lが作成したデータよりも検査表③に記載された通り変位の数値が小さいことに気付いたため,その旨被告人cに報告した。この報告を受けた被告人cは,lに対し,強い口調で,異なるデータが2種類存在する理由を現場に確認するよう指示し,これを受けたlは,電話でjに調査を依頼した。jは,f所長や職員から事情を聞き取ったものの,記事欄のVの値が10違うものがあったためである,シートが2枚あり,間違いというシートは本当は正解だが,間違いと書いてあったので違う方を送ったなどの回答しか得られなかった。jは,これでは説明にならないなどと考え,「体裁を整えて」という言葉を自ら付け加えた上で,「試しに演算したシートを正規なものと勘違いし,体裁を整えて保線課に送ってしまった。」旨のメモを作成し,メールでlに送信した。lは,前記メモを受け取った後,記載された理由に納得できなかったため,電話でjに確認したが,メモと同旨の説明を受けることしかできなかった。lは,その説明に完全には納得できなかったものの,その内容を被告人cに報告した。被告人cも,lの説明に完全に納得できなかったが,lに対して,国土交通省に提出した整理表は訂正しておく旨の説明をした。そして,被告人cは,検査表③が作成された経緯等についての調査指示はせず,その後,本社保線課においてこの点の調査はなされなかった。被告人cは,同月7日午後2時43分頃,電話で,国土交通省鉄道局の係長に対し,提出済みの完成版整理表について,「ちょっとVの計算を間違えたところがあって。」,「運輸安全委員会にはもう一回出し直せって,何回も差し替えたりしてたもんだから,正しいもの出し直せって言われて。」,「最終的に,今回お出ししたのが,ちっと間違っていることが分かったんですよ。」,「最大値変わるわけでもないんで。」,「1ミリ,1ミリ低かった。」などと言った。また,被告人cは,同日午後4時49分頃,電話で,同局の課長補佐に対し,「正矢量の取り扱いを誤ったところが分かりまして,省さんのまとめられた番号には影響しないんですけれども,あの最大値も変わらないんですが,測定値が変わるところが何か所かある。」などと伝えた。13 改ざん発覚経緯(甲5,340,343,証人o,同p,同l)同年11月,z保線管理室における検査データ改ざん疑惑(判示第3関係)についての報道がなされ,被告会社において,管内全域の検査データ改ざんの有無等についての調査が開始された。その中で,y保線管理室に存在したはずの本件事故現場における本件事故直近の軌道狂い検査のトラックマスター元データ(以下,「元データ」という。)については,データが上書きされるなどして既に存在しないと考えられたため,それ以上の所在調査は行われなかった。その後,同年12月2日,被告人dは,運輸安全委員会から質疑を受けた,y保線管理室に係る資料の廃棄理由等の調査のため,同管理室に赴いた。その際,lが,自主的に,保線パソコン内をみたところ,元データを発見したため,これを持ち帰った。lが持ち帰った元データを確認したところ,軌間が「39」であることに気付いた。lは,脱線事故現場であるキロ程27.063の前後約10か所の軌間の数値が不自然に変わっていることから,これらの数値が改ざんされたものであると考え,その旨被告人dに報告した。それを受けて,被告人dは,lらと共にy保線管理室に出向き,gらに聞き取り調査を実施したところ,gが軌間変位の数値を改ざんしたことを認めた。第4 判断手順以上の事実を前提に,本件各争点についての判断を示すこととする。まず,検察官は,被告人らが改ざんの認識を有していたことの前提として,検査表①に記載された非常に大きな通り変位の数値を見た被告人らにおいて,通り変位が本件事故原因の要因の1つになり得ることを認識していたと主張することから,まず,通り変位の性質,軌間拡大・事故原因との関係や,被告人らが検査表①を見た際の通り変位数値と事故原因に関する認識等についての判断を示す(判断事項1)。そして,その判断を前提に,検査表①,同②ないし②’から同③への数値の変化や本件事故以降の被告人らの言動等を踏まえて,被告人らがそれぞれ検査データの改ざんについて,少なくとも未必的に認識,認容していたと認められるかについての判断を示す(判断事項2)。第5 判断事項1について1 通り変位の性質,軌間拡大・事故原因との関係等検察官は,被告人らは通り変位が軌間拡大に影響を与えたことが本件事故の一要因であると認識していたことから,本件事故現場付近の検査表に記載された通り変位数値にも関心を抱いていた,また,被告会社において,非常に大きな通り変位の数値が把握されながら,これを放置していたことが公表されると,マスコミや世間から大きな非難を受けるため,被告人らには,かかる非難を軽減等するために通り変位数値の改ざんを容認するという動機がある旨主張している。他方,弁護人らは,軌間内脱線と通り変位との客観的な関連性は,間接的,限定的なものにとどまる,軌間内脱線事故発生時には,軌間拡大の主原因が締結装置等の不具合であることが前提となるので,通り変位数値が関心の対象となることはなく,検査表上の通り変位数値についても脱線原因との関係で注視することはない,被告人らは,検査表上の大きな通り変位数値について,曲線管理等に誤りがあり,訂正されるべきものと考えていたにすぎないなどと主張する。まず,本件事故は,線路の軌間が整備基準値を大幅に上回って拡大したことにより,軌間内に車輪が脱輪したといういわゆる軌間内脱線であることは,関係証拠上容易に認められる。以下では,専門家証人,被告会社保線課に勤務し,または勤務経験を有する従業員(以下,「保線課証人」ということがある。)等の証人らの各供述を踏まえ,①本件事故現場付近において,通り変位が生じていたことにより,どの程度軌間拡大に影響を与えたか,②本件事故原因との関係で,通り変位の影響について被告人らはどのように認識していたと認められるかを順に検討していくこととする。2 本件事故現場付近における軌間拡大に対して,通り変位が与えた影響の有無及び程度並びにこれらについての被告人らの認識この点について,検察官は,主にw1証人(本件事故当時,運輸安全委員会鉄道事故調査委員会の鉄道部会長であり,鉄道事故調査報告書〔甲9〕の作成等に関与した者)の供述に基づき,通り変位が軌間拡大に影響を与えたことが本件事故の原因の一要因である旨主張する。そこで検討すると,w1証人は,本件において軌間拡大が生じたのは,他にも原因がありうると留保を付けつつも,主に脱線箇所付近の通り変位が大きくなったことによる横圧の増大が原因である旨述べる。すなわち,脱線箇所付近の線路には大きな軌間変位と通り変位が生じており,さらにまくらぎや犬くぎといった締結装置に不具合があったこともあり,列車が当該線路を走行すると,大きな通り変位の影響で発生する横圧が増大して,軌間がさらに拡大し,本件事故につながったという。他方,γ1で保線実務を経験し,その後,γ2大学工学部教授となり,軌道変位やまくらぎの支持に関する研究といった鉄道工学等を専門とするw2証人及びγ3において長年保線業務に携わり,現在,線路の設計・施工・管理等を業とする株式会社γ4の技術顧問を務めるw3証人は,本件事故現場付近は列車が低速度で走行する駅構内の区間であることなどから,通り変位によって発生する横圧が軌間拡大に与えた影響は小さい旨述べる。もっとも,両証人も,一般的に,通り変位が大きくなると発生する横圧が増大すること,締結装置に不具合があると,列車通過時に発生する横圧が軌間拡大に影響することを否定するものではない。また,w3証人は,曲線部を列車が通過する際に生じる横圧の原因としては,列車の速度に左右される遠心力,輪軸や台車の転向に伴い生じる摩擦力(これは列車の速度には影響を受けない。)のほか,通り変位が生じている曲線部には車体が揺れ動くことによって生じる横圧,カント不足によって生じる遠心力が考えられるが,最終的に発生する横圧との関係で,これらがそれぞれどの程度寄与しているかは,カントの大小,車輪やレールの整備状態等によって変わる旨述べる。かかるw3証人の供述は,専門的知見から合理的な根拠をもって説明するものであり,信用できる。以上によれば,本件事故原因である軌間拡大の一要因として,脱線箇所付近の通り変位が増大していたことが挙げられるものの,どの程度,通り変位が軌間拡大に影響を与えたかについては,専門家それぞれの見方が異なっているといえる。以上を前提として,次に,本件事故原因との関係で軌道変位検査表を確認する際の数値確認のあり方や,本件事故後の被告人らの認識についてみていく。軌間内脱線事故が発生した際の軌道変位検査表の確認のあり方ア 本件事故直後における事故原因や,事故原因との関係で検査表①に記載された数値のうちどの数値に着目したかについて,被告人らは概ね以下のとおり述べる。被告人dは,本件事故現場が分岐器手前の列車の速度が遅い区間であること,同事故現場の状況から,事故原因が軌間拡大にあると考えた旨述べる。被告人bは,被告人dから本件事故現場の状況等の報告を受け,軌間拡大が事故原因であると考えた旨述べる。被告人cは,脱線事故では軌間拡大が原因となるものが多く,また脱線現場は列車の速度が遅い副本線であることから,検査表①を見た際には軌間の数値に着目していた旨述べる。イ この点に関して,γ5株式会社鉄道事業本部工務部保線課長を務めるw4証人は,軌間内脱線についても,事故発生直後はどこに原因があるか分からないので,軌間,水準,通り,高低及び平面性の5原則(以下,これら5つを併せて「5項目」と表記することがある。)のすべてを確認することが重要であると述べる。また,γ6鉄道本部施設部施設技術室長を務めるw5証人も,軌道管理5項目は基本的にすべてが脱線に影響し,通り変位が大きいと横圧が加わって軌間変位に影響するため,軌間内脱線の場合,軌間拡大の原因として通り変位も関係する,また,軌間拡大が事故原因である,事故現場付近は低速走行区間である旨聞いたとしても,検査表では軌道管理項目を一通り確認するなどと述べる。このように,他の鉄道会社の保線部門の責任者は,それぞれ,脱線事故が軌間内脱線であったり,軌間拡大を原因とするものであったりしても,軌間変位のみならず,通り変位を含む軌道管理項目すべてを確認することが重要であると述べている。また,検察官が主張するように,保線課証人であるq証人,m証人及びl証人はそれぞれ,通り変位が軌間内脱線に影響する旨述べ,さらにこのような知見は被告会社の研修で取り扱われ,社内教育で使用される保線技術の教材に記載されている旨述べる。ウ 他方で,保線課証人であるi証人及びu証人は,軌間拡大による脱線事故発生の際には軌間変位の数値に着目することが重要と考えている旨述べる。すなわち,i証人は,軌間内脱線であれば軌間拡大の問題になり,軌間の保持,拡大はまくらぎの状態に支配されるので,通り変位ではなくまくらぎの状態を確認する,まくらぎの状態が健全で通り変位が大きい場合には,車輪がレールの外側に飛び出す乗り上がり脱線等になるため,軌間内脱線とでは着目点が異なる旨述べる。また,u証人も,本件事故当日に検査表①を見た際,脱線事故の原因との関係では軌間の数値に着目した旨述べる。エ さらに,検察官がその主張の根拠とするq証人,m証人及びl証人の各供述を詳しくみると,むしろ被告人らの認識に沿うものといえる。すなわち,q証人は,通り変位は軌間内脱線の発生には直接影響しない旨述べた上で,通り変位が非常に大きい場合には,横圧が生じ,長い目で見れば犬くぎの支持力を弱めていく可能性があるので間接的な影響がある,このことは被告会社で使用されている社内通信教育講座保線技術という資料等に記載されている旨述べるにとどまる。さらに,q証人は,同年9月20日午前にQ&Aを作成するために検査表①を見た際には,本件事故が軌間内脱線であったことから軌間の数値に着目し,通りを含むその他の数値は目を通した程度である旨述べる。m証人は,通り変位が軌間拡大に影響するか否かについて全く影響がないとは言い切れないが,保線に関する業務に携わった経験上,通り変位が軌間拡大に影響するかについては考えたことはない旨述べる。l証人は,一般的に,締結装置が緩む原因として,曲線部等を列車が通過する際の荷重や横圧があることや,線路の継ぎ目部分で角折れが生じていた場合に列車がくり返し通過することで横圧が加わり,締結装置にダメージを与えていくことが考えられる旨述べ,また,このような知識は,研修センターでの座学や教材,現場実務で身に付けるものである旨述べる。また,l証人は,本件事故が軌間内脱線であると聞いていない状況で検査表①を見たが,軌間の数値が25と大きいがこれだけでは脱線に至らない,通り変位の数値は大きいが,経験上,副本線や側線においては,諸元に誤りがあることがそれなりにあったため,この通り数値も,位置ずれ,線形のずれなど,諸元に誤りがあり,脱線原因になるとまでは思わなかった旨述べている。このように,検察官が主張の根拠とするq証人,m証人及びl証人の各供述によっても,被告会社における研修等では,大きな通り変位があることで締結装置にダメージを与えるなどして間接的に軌間拡大に影響するという限度で取り扱われていることが認められる。すなわち,被告人bが述べるように,通り変位が大きくなることで,列車通過時に発生する横圧が増大し,それにより軌間が押し広げられる方向に力が作用するが,これにより軌間拡大が発生するということは,発生する横圧に対して軌道が有している締結力が不足していることが前提となるため,軌間拡大防止は,不良まくらぎの管理である趣旨と理解できる。この点,w1証人が,軌間拡大は締結力不足が大前提である旨述べていることとも合致する。オ 続いて,w2証人及びw3証人のこの点に関する供述をみる。w2証人は,横圧によって軌間が拡大し,その結果通り変位に影響はあるものの,まずは軌間変位の数値を確認すれば足りる旨述べる。また,w3証人も,本件事故現場を確認した者から,軌間拡大の情報が入ったことを前提とすると,検査表を見る際には軌間の数値に着目する旨述べる。さらに,w3証人は,軌間内脱線であるとしても通りの数値にも着目すべきという意見については,新人教育のテキストの内容であるとすれば理解できるが,既に事故現場の調査が行われ,まくらぎが腐食している,犬くぎが抜け上がっている,軌間内脱輪であるという情報が入れば,検査表に記載された5項目すべてを確認する必要はないと述べる。この点,検察官が指摘するように,w3証人と被告会社は現在業務上関係があること,被告会社副社長(供述当時)e12証人と同じγ3の出身であることや,w3証人の供述状況及び供述態度に照らすと,その信用性については慎重に判断すべきではある。もっとも,w3証人の上記供述箇所についてはw2証人だけでなく,qら保線課証人の前記供述とも整合している。また,w3証人は,事故現場を確認して,線形が違うことが分かったとしたら,運輸安全委員会に検査表を提出する際,通りの数値が基準値を超えていることだけを指摘して,それ以上説明しないということはありえないなどと,被告人dが第1回打合せ会議ないし第3回打合せ会議で線形が違う可能性について説明しなかったことと相反する供述もしており,必ずしも,被告人らにとって有利なことばかり供述するものではないことも踏まえると,その信用性に疑問はない。以上によれば,前記ウ及びエで検討した保線課証人らの供述は,w2及びw3両専門家証人の供述に沿うものと認められる。カ これらに加え,w5証人も述べるように,保線実務に携わる者は,大きな通り変位が生じている場合には乗り上がり脱線を想定することも踏まえると,本件事故現場に赴き,線路や車両の状態等を確認した被告人d自身や,その情報をもとに検査表を見た被告人bにおいて,本件事故原因との関係では軌間の数値に注目したというのも合理的といえる。また,被告人cにおいて,本件事故原因との関係では,軌間の数値に着目したというのも自然なものとして理解できる。キ 確かに,w1証人の供述によれば,本件事故原因との関係では通り変位が重要であるともいい得る。しかし,w1証人は,主に事故再発防止の観点から,通り変位が軌間拡大に影響を及ぼしたことが重要であると述べており,脱線事故発生を受けて,その直後,鉄道会社として,線路や車両の復旧も含めて動き出す立場とは異なる。なお,w1証人も,軌間拡大の原因に通り変位が含まれるとの留保を付けつつも,被告人らが,本件事故の原因は軌間拡大である,犬くぎの状態が悪いのではないか,まくらぎが劣化しているのではないかと考えたこと自体は基本的に間違っていないとも述べている。また,軌間内脱線であっても5項目すべてを確認すべきというw4証人及びw5証人の供述は,保線に関する教材や研修内容等に沿った尊重すべき意見ではあるが,かかる供述をもってしても,本件事故との関係で軌間変位に着目したという被告人らの考え方や供述が不合理であるとまではいえず,ましてや,両証人の供述をもって,被告人らが,本件脱線事故発生を受けて,通り変位が本件事故原因の一要因であるとして通り変位の数値に着目していたとは到底認められない。ク もっとも,本件事故発生後,被告人らはそれぞれ,検査表①に記載された通り変位数値が非常に大きいことなどに関心を示す言動をしているので,以下その点も踏まえて検討する。3 検査表①を見た際の通り変位数値等に関する被告人らの認識被告人らは,検査表①を見た際,記事欄に「R=400」,「V=21」と記載されているが,これは誤りであると考えた旨それぞれ述べる。また,被告人b及び同dは,本件事故現場付近の通り変位について,検査表①に記載された数値が非常に大きかったことから,当該箇所には,実際には,台帳で管理されているよりも小さな曲線が存在するなど,ずさんな線形管理が行われているのではないかと考えた旨述べる。そこで,被告人らが,検査表①を見た際やそれに近接する時点において,非常に大きな通り変位数値が記載されていることを把握して,何を認識したといえるかについてみていく。この点,被告会社における軌道狂い検査表の記事欄の数値は,実測値や計算値には反映されない仕組みであり,そのことを被告人らは把握していた。もっとも,同記事欄に記載された数値は,当該曲線部分の諸元の管理を表すものであることから,記事欄の数値が誤っていることは,基準値欄の登録数値も誤っている可能性を示すものといえる。そして,検査表①記載の曲線半径(R)と正矢量(V)には明らかな齟齬があり,また,正矢量は通り基準値の登録数値を算定する前提となるものである。そうすると,齟齬が生じている曲線半径と正矢量を確認することで,基準値欄の登録数値の誤りが判明し,登録数値が訂正され,その結果,通り変位の数値が訂正・変更されることもあり得るといえる。したがって,被告人らにおいて,検査表①の記事欄に記載された曲線半径と正矢量に齟齬があることに気付き,これが訂正されることによって,通り変位数値も変わる可能性があると認識したというのは自然かつ合理的といえる。続いて,被告人b及び同dが,線形管理に疑いを抱いたという点についてみる。ア まず,被告人bは,本件事故発生日である同月19日夜,iに対し,電話で,通り変位の数値が正しいものか確認していること,翌20日,qに対し,本件事故現場付近の曲線半径はR400ではなく,R200程度ではないかと話したこと,同日,検査表③の写しを作成して,R210を前提とした場合の試算を記載したこと,同日,tに実際の現場の曲線半径はR400よりも小さい可能性がある旨説明するなど,通り変位の数値に疑問を抱いた上,本件事故現場付近の曲線は,台帳に記載された曲線半径(R)よりも小さい可能性があると考えたことを前提とする行動を取っている。イ この点に関する証人らの供述をみると,w3証人を除き,w4証人及びw5証人を含む保線実務の経験を有する証人で,検査表①に記載された通り変位マイナス75のような非常に大きな数値を見たことがあると述べた者はいない。そして,m,l,i及びqの各保線課証人は,それぞれ,本件事故後に検査表①を見た際,通り変位の数値が非常に大きかったことから,Vがそもそも差し引かれていない,台帳上の曲線半径に誤りがある,台帳上の曲線半径は合っているが現場実体が違う,曲線の始終点がずれているなどの可能性を考えた旨述べる。また,l証人は,保線現場の検査データを見てきた経験上,副本線や側線において,検査表の諸元に誤りが入ることがあると述べ,u証人も,台帳登録時の諸元を入れ間違えたことがあるなどと述べる。以上の各証人の供述に照らすと,保線実務に携わる者が,検査表①を見た際,非常に大きな通り変位の数値が記載されていることに気付き,台帳で管理されているよりも小さな曲線が存在する可能性を含む種々の原因を考えて,通り変位の数値に誤りがあるのではないかと考えることが認められる。この点に関して,w4証人やw5証人は,検査表①の通り変位の数値を見て,実測値が書かれているのではないかと考える旨述べた上で,実際の線形は思い浮かばない,レールの継ぎ目箇所で角折れが生じているのではないかと思う旨それぞれ述べている。特に,w4証人は,Rが400と記載されているが,もう少し小さいのではないかと考える旨述べている。このように,w4証人及びw5証人の供述は,被告人b及び同dが述べる前記認識と矛盾するものではない。さらに,i証人及びnはそれぞれ,検査表①の大きな通り変位の数値の並びは,プラス,マイナスの符号が同じであることから,現場の曲線半径はR400ではないと考える旨述べ,w3証人も同趣旨のことを述べている。そうすると,検査表①の非常に大きな通り変位について,プラス,マイナスの符号が連続していることに着目すると,現場の曲線半径はR400よりも小さい可能性があることが具体的に想起されると認められる。ウ 以上の各証人の供述は,被告人b及び同dが前記のように考えたことと整合的である。また,被告人bは,通り基準側と通り一輪側でそれぞれプラス,マイナスの変位数値が並んでいることに気付き,この点について,基準値算定の前提となる曲線半径が現況と異なっており,それが影響して非常に大きな通り変位数値が記載されていると推測した旨述べているが,このことは,検査表①を見た後の被告人bの言動に現れているほか,各証人の前記供述に沿うものである。さらに,被告人bは,本件脱線事故現場がいわゆる付帯曲線であり,台帳諸元と現況とが違うことがそれなりにある箇所であると考えた旨,具体的な根拠も述べている。そして,被告人bは,平成19年4月にα9市内の側線において発生した脱線事故に対応した際,直近の検査表の軌間変位はプラス15であったが木まくらぎの状態が悪かったこと,通り変位がプラス42と整備基準値を超えていたこと,台帳諸元の曲線半径はR230であったが,現況はR180であったこと,同事故の原因はまくら木の不良を放置したことによる軌間拡大にあるとされたという経験があると述べるが,このことにも整合する。エ また,被告人b及び同dがそれぞれ,現況はR400よりも小さい曲線が存在する可能性があるなどと前記のように考えたことは,本件事故後に,本件事故現場の曲線半径について調査が行われたところ,曲線半径は230メートルであると推察されたことにも整合的である。オ この点,検察官は,被告人bについて,Q&A作成の際,qから曲線半径(R)は250よりも大きい旨言われるとそれ以上議論しなかったこと,Q&Aに通り変位について現況を正しく表していない旨の説明等が一切記載されなかったことを指摘し,検査表①記載の通り変位は現況を正しく表していないと考えたという被告人bの供述は信用できない,Q&A作成経緯や記載内容等を踏まえれば,被告人bは,対外的にも本件事故との関係で,通り変位の数値を公表しようと考えていたといえる旨主張する。しかし,被告人bとqがQ&Aについて打ち合わせをした時点では,検査表①と現況の違いについては,あくまで可能性の1つにすぎなかったのであるから,検察官が指摘する被告人bの上記対応等はいずれも不自然,不合理なものとはいえない。また,Q&Aに関する指摘についても,既に作成されていたQ&Aの案に軌間と通りのみが印字されており,通りの検査結果欄が空欄であったのであるから,この箇所に75と記入するように指示したにすぎないと理解できるのであって,被告人bにおいて,本件事故原因との関係で通り変位の数値に着目していたとまでは認められない。次に,検察官は,被告人dについて,当初から検査表①の通り変位は,曲線半径のずれや線形管理の問題であると認識していたと述べるが,その旨を第1回打合せ会議等で言及しておらず不自然である旨主張する。しかし,弁護人が的確に指摘するように,第1回打合せ会議のやり取りを見ると,本件事故発生を受けて,事故概況,事故現場の保全や復旧,事故原因や検査時の異常値,事故現場や車両の状況等,様々な点について,報告や質疑等が行われている。このように,本件事故現場付近の直近の検査時における異常値については,第1回打合せ会議のテーマの1つにすぎなかった。また,この時の被告人dとo調査官のやり取りをみると,被告人dが通り変位について述べたとき,o調査官は特段関心を示さなかったと窺われる。これらのことを踏まえると,第1回打合せ会議等において,被告人dが,線形管理の問題に触れなかったことが不自然であるとはいえない。その他,この点に関する検察官の主張を検討しても,前記判断には影響しない。カ 以上によれば,被告人b及び同dにおいて,検査表①に記載された通り変位の数値等を見て,現況ではより小さい曲線が存在するにもかかわらず,検査表①は,現況よりも大きな曲線半径が前提とされているなど,数値の算出根拠に誤りがあると推測したことが認められる。第6 判断事項2について1 数値の変化の合理性弁護人らも争わないように,検査表①,同②ないし②’,同③への,主に通り変位数値の変化は客観的な説明がつかないものである。すなわち,検査表①の数値が,正矢量(V)が21であるという誤った数値に基づいたものである場合,検査表①,同②ないし②’の通り数値が実測値である場合,曲線位置が誤って変位数値が算出されていた場合等に,それぞれ正しい計算や処理が行われたとしても,検査表③の数値は合理的な説明がつかない。そこで,まず,検査表①,同②ないし②’,同③を見た際,通り変位数値の変化等について,保線実務経験を有する者がどのように認識,理解するのかについてみていくこととする。2 各証人の供述w4証人w4証人は要旨次のとおり供述する。検査表①を見た時点では,通りの数値が大きく,実測値が記載されているのではないか,また,実際の曲線半径(R)は記載された数値より小さいのではないかと考えて,同検査表が正しいものかを保線現場に確認する。検査表①と同②を見比べると,BTC(緩和曲線始点)からBCC(円曲線始点)にかけて数値の逓減の仕方が違うなど計算間違いがあると考えられるので,保線現場に再確認を指示する。検査表①と同③を比べると,同③は通りの数値が全体的に小さくなっている。検査表③では,Vが「21」から「31」と10変わっており,検査表①からその10だけ数値が小さくなっている箇所があるが,そうではない箇所もあることに気付く。本件事故現場付近の曲線半径がR400ではなく,より小さい曲線半径ではないかと考えていた前提で検査表③を見たとすると,保線現場で正しく調査した結果,正しい曲線半径を基に訂正されたものが上がってきた,検査表①よりも検査表③の方が現場実態には符合していると考えることはあり得る。もっとも,保線現場に正しい曲線半径について聞いた上で検査表③の数値を確認したとすると,説明できない箇所がある。なお,各検査表を見比べなければ,数値の変化が不自然,不合理であることは分からない。自分であれば,検査表③を見た際,その正確性を確認するために,保線現場からトラックマスターに入っている生データ等を取り寄せることを考える。もっとも,生データ等を取り寄せる時間的な余裕がなければ,手元にある中で一番正しいと思われる検査表を運輸安全委員会に提出することは考えられる。w5証人w5証人は要旨次のとおり供述する。検査表①を見て,曲線半径(R)か正矢量(V)が間違っている,線路に角折れがあるなどと考える。検査表②を見ると,検査表①に記載された通り変位の「-68」が「-48」に変更されたことに気付く。検査表③を見ると,通りの「-75」が「-42」に変更された点が気になる。ただし,あくまで検査記録は1つであり,検査表が複数存在することは理解できないため,3つの検査表が出てくる理由を保線現場に確認することになる。3つの検査表を見て改ざんに気付くか否かについては,「-75」が「-42」と変更されているので,合理的な説明がなければ怪しいと感じる。もっとも,例えば,正矢量が間違っていたなどと説明を受ければ改ざんがあるとは考えない。検査表①から同③の通り変位数値を見て,検査表①では実測値が記載されていたが,その後,正矢量(V)が正しく入力されて処理され,通り変位の数値が約30ミリメートル減ったと感覚的に思うことはあり得る。保線課証人次に,本件事故後,検査表①,同②ないし②’及び同③(これらと同じ数値が記載された検査表を含む。)を見たi証人及びq証人らの供述をみる。ア i証人i証人は,前記のとおり,検査表①に記載された非常に大きな通り変位数値について,台帳の曲線半径に誤りがあるのではないかなどと考えた旨述べた上で,要旨次のとおり述べる。検査表②を見た際,nから,記事欄の正矢量(V)の数値は計算に影響しない旨聞き,検査表①も同②も正しい正矢量である31で計算されていることが分かった。通り変位が大きいという話題が出た後に検査表③が出てきたので,検査表③は正しく処理されたものとしてみることになる。検査表③の通り変位数値を見て,概ね均等に約30ほど数値が下がったことに気付き,誤った諸元が訂正された,もしくは検査表①では正矢量が引かれていなかったものが訂正されたのではないかなどと考えた。イ q証人q証人も,前記のとおり,検査表①の通り変位数値の大きさなどについて,iと同様の供述をした上で,要旨次のとおり述べる。検査表①及び同③を見て,通りの数値が小さく変更されたことに気付いた。数値が小さくなったのは,本件事故現場付近の曲線半径や差し引くべき正矢量を整理して,計算した結果であると理解した。また,y保線管理室は,線路の管理においてずさんな面があったため,検査表の計算間違い,数値の入れ違いがあってもおかしくはないと思っていた。ウ 以上のほか,nも,検査表③をみて,通り変位数値の最大値が約30小さくなっていることに気付き,正矢量である約30が差し引かれたものと思い,深くは考えなかった旨述べる。小括以上の証人等の供述によれば,保線実務に携わる者からすると,検査表①,同②ないし②’,同③に各記載の通り変位の数値が変化したことについて,各検査表を見比べれば,通り変位数値の変化が不自然,不合理であることに気付くこと,また,保線現場から合理的な説明がなければ改ざんを疑うといい得る。他方で,各検査表を確認した経緯や状況等によっては,検査表①に記載された数値の基になった諸元等の誤りや,正矢量が差し引かれていないなどの誤りがあり,その誤りが保線現場において訂正されることによって,検査表③の数値に変更されたものと理解することもあり得るといえる。そこで,本件事故直後の被告人らが置かれた状況,被告人らの各検査表の確認の経緯,状況等を踏まえて,被告人らの認識についてみていく。3 被告人bの認識検察官の主張検察官は,被告人bの改ざんの認識に関して,以下のとおり主張する。被告人bは,本件事故が軌間拡大による軌間内脱線である旨報告を受けて,検査表を早急に入手するよう指示した。また,Q&Aに,整備基準値超過箇所として「軌間」と「通り」のみが記載されている中,検査表①を見て,軌間変位のみならず,V21という記載誤りや整備基準値を大幅に上回る通り変位数値に多大な関心を有する言動を周囲に示した。一方,管理曲線と現況との違いについては,疑問を述べたものの可能性の1つにとどめた。さらに,検査表①等に記載された通り変位の最大値である「-75」を公表しようと考えてQ&Aの準備を進めるとともに,運輸安全委員会に提出すべき検査表を自分の手元に一刻も早くも届けるよう部下に執拗に催促した。被告人bは,このように待ち望んだ検査表③を受領して見た時点で,正矢量(V)が「21」から「31」に変更されたにとどまるのに,通り変位数値が「-75」から「-42」にまで大きく減少しているなど全体的に客観的な説明がつかない不合理な変化をしていることに気付いたといえる。被告人bによる各検査表の確認状況まず,本件事故発生後の被告人bの執務状況についてみた上で,各検査表の確認状況について検討する。ア 執務状況(被告人b)被告人bは,本件事故が発生した平成25年9月19日夜,西ビルにおいて本件事故現場から送られてくる資料や写真を確認するなどの情報整理や情報収集,本件事故により損傷を受けたレール,まくらぎ,分岐器等の復旧に必要な部品の確認といった復旧対応に当たったほか,iに対し,全道の整備基準値超過箇所,未補修箇所等の調査を指示をし,翌20日午前1時頃に帰宅した。同日午前11時に出社し,全道の整備基準値超過箇所等の調査結果報告を随時受け,未補修箇所については外注の施工会社にも要請するなどして,補修を指示し,その旨被告会社鉄道事業本部長にも報告した。これと並行して,復旧のための部品の在庫調査や発送する部品の一覧表作成といった復旧対応,北海道運輸局(以下,「運輸局」という。)への説明資料の作成等も行っていた。また,同日午後4時以降に4回開催された対策会議に出席したほか,同日午後9時頃,本社に戻ってきたtに対して本件事故の概況を報告し,tとプレスや運輸局に対する説明の準備のための打合せをして,翌21日午前1時頃帰宅した。同日午前5時頃に出社すると,プレス,運輸局対応についてtと打合せた。また,同日午前8時頃から本件事故現場付近で本格的な線路の復旧作業が始まったため,その進捗状況を確認しながら,列車の運行再開,開通見込みを立てるための資料を作成するなどしていた。その後,同日午前11時頃には,運輸局に行き本件事故原因等について説明を行った。同日午後には,tとプレス対応の準備を行い,同日午後4時にプレス発表をした。また,同日午後からは,本線のマヤ車検測の全道調査が行われたところ,多数の未補修箇所が報告されてきたため,外注を含む補修指示をした。そして,翌22日午前1時頃帰宅した。同日午前6時30分頃出社し,zで行われた保安監査に立ち会い,午後10時頃に本社に戻った。イ 各検査表の確認経緯,状況被告人bが各検査表を確認した経緯や状況は前記認定事実のとおりであるが,その点のみについてみると,概要は次のとおりである。検査表①について,本件事故が発生した同月19日に確認し,曲線半径と正矢量(V)に齟齬があること,通り変位に70台を含む大きな数値があることに気付いた。検査表②について,被告人bは具体的な記憶はない旨述べるものの,同月20日のうちに確認したことが関係証拠上認められる。検査表③については,同日夜,qから受け取って内容を確認し,運輸安全委員会に提出することを了承した。なお,被告人bは,検査表③については,その写しを作成して,曲線半径(R)が210メートルであることを前提とした数値等を手書きで記入し,また,tに対して,検査表③を運輸安全委員会に提出する旨伝えた。検討ア w4証人の供述によれば,検査表①の通り変位数値が非常に大きいことに関心を持ち,検査表①と検査表③を見比べて,数値の変化の仕方や変化量等を確認すれば,保線に関する知識や経験が豊富であった被告人bにおいて,検査表①から検査表③にかけて,正矢量(V)が21から31に変化したにとどまることなどから,通り変位数値の変化について合理的な説明がつかないことに気付くことができるといえる。しかし,被告人bは,本件事故当時,工務部副部長及び保線課長を務めていたところ,本件事故発生を受けて,事故情報の収集,現場の復旧作業に関する業務,全道の未補修箇所等の情報整理や補修作業指示,プレスや運輸局対応のための準備等といった多くの業務に忙殺されていた状況であった。とりわけ,被告人bが検査表③を確認した同月20日の執務状況をみると,検査表③の数値について時間的,精神的余裕をもって確認できる状況にはなかったことが窺われる。なお,被告人bは,検査表①ないし同③の各検査表を比較して検討していない旨述べるが,これを排斥する的確な証拠もない。確かに,被告人bは,検査表①に記載された非常に大きな通り変位に関心を抱いており,同月20日の夕方時点で,どの検査表を運輸安全委員会に提出するか関心を有していたこと,また,検査表③を受け取ると,その写しを作成して,本件事故現場付近の通り変位数値について自身が仮定した曲線半径や曲線の位置に基づいた計算までしている。もっとも,被告人bにおいて,通り変位が本件事故の一要因であると考えていたとまでは認められないこと,むしろ本件事故現場付近にはR400よりも半径が小さい曲線が存在しているのではないかと推測していたことも踏まえると,被告人bにおいて,各検査表を対比せず,検査表③に記載された通り変位の数値を見て,検査表①から概ね30程度小さくなったと認識し,正矢量(V)の訂正や変位数値算出の前提となる諸元の数値が見直されるなどした結果,検査表③に記載された数値になったと理解したということが不自然,不合理であるとはいえない。このような被告人bの認識は,被告人bと同様,本件事故後に各検査表を見たi証人(ただし,正矢量(V)の差し引きの点に関して,i証人の供述には自己矛盾が含まれるものの,この点に関する判断には影響しない。),q証人及びnの供述とも整合している。イ また,本社保線課における所管業務に照らすと,軌道狂い検査表の確認や取りまとめについては,担当するのであればiが責任者を務める線路技術テーブルであり,少なくとも被告人bの担当業務ではないと考えられる状況にあった。さらに,検査表の数値の算定根拠や正確性等については現業機関である保線現場の従業員でなければ確認できないことも併せて考えると,被告人bにおいて,検査表の数値の正確性や変化の理由について強い関心を抱いていたとまでは認められない。ウ そして,被告人bの担当業務や本件事故後に置かれた状況等に照らすと,被告人bが述べるように,本件事故は既に起きてしまったことであり,その原因は軌間拡大と理解したため,検査表に対する興味や関心は強いものではなく,むしろ,被告会社の他の線路の安全性について一刻も早く調査を行い,必要な補修等を行うことが重要であると考えたというのも自然である。エ 検察官の主張についての検討まず,被告人bが検査表①の通り数値に関心を抱いた点については,これまでも述べたように,記載された数値が非常に大きいことなどから現況が正しく反映されていないと推測したとして不自然,不合理な点はみられない。また,検察官は,被告人bが,検査表③の通り変位数値を試算しているが,検査表③を正しいものと考えたのであればわざわざ試算する必要がない,また,試算の結果,検査表③と整合する結果にならなかったのに,tに対して,裏付けのない説明と共に検査表③を提出する旨報告した点も指摘して,被告人bが改ざんの認識を有していた旨主張する。しかしながら,この点については,被告人bが述べるように,被告人bは,検査表③の通り変位数値は大きいが,これは依然として曲線台帳と現況とに齟齬があることが原因であり,そのことをtに理解してもらおうと考えたこと,そして,本件事故現場付近の現況はR210前後程度で,曲線が始点側にずれて入っているのであろうと推測し,その推測が正しいか否かを確認するために計算したこと,また,計算の結果,これまでの経験等に照らして想定できる大きさの通り変位数値となったことから,その旨をtに報告したにすぎないものと理解できる。このように,この点に関する検察官の主張は的を射たものではない。小括以上からすると,被告人bは,検査表①に記載された非常に大きな通り変位数値について,本件事故原因の一要因としてではなく,誤りがあるのではないかと疑ったことなどから関心を抱いたこと,その後,保線現場から正しいものとして送られてきた検査表③を見て,検査表①に記載された数値の算出根拠とされたものの誤りが訂正された結果であり,検査表③が正しい検査表であると理解したということが合理的に想定される。なお,被告人bは,同月23日に完成版整理表を確認した際には,検査表③と同じ数値が記載されているであろうと認識したにすぎないから,この時点においても,被告人bが,通り変位数値が改ざんされたものであることを未必的にも認識,認容したとは認められない。捜査段階の供述検察官は,被告人bの捜査段階における供述は,本件事故後,被告人bが通り変位数値の不合理な変化に気付いて疑問を抱いたという心理状態を端的に述べたものであると主張する。そこで検討すると,被告人bは,平成26年11月13日に,「通りの欄(狂い量)の数値が先程の表より大幅に小さい数値に変わっていました。この数値の違いについて,V21からV31に変わっただけでは説明ができないため,カーブ始点が違うあるいは曲率が違うと考えましたが,この表が正しいデータなのか疑問を抱いたと思います。」との上申書(乙2)を作成した。また,同年12月28日には,警察官の取調べに対し,「漠然とですが,小さくなった数値を見た私は,『差っ引き量が違う。』と感じました。」,「この数値の変化に私は矛盾を感じたと思います。」,「私は,dに対して『これが,本当に現場で出してきたものか?』と検査表についての質問をしました。」などと述べた。まず,上申書についてみると,これは被告人bが検査表③を見た際の認識が記されたものと理解されるが,検査表①に記載されたVが31に訂正されたこと,通り変位の数値が大幅に小さくなっていたこと,その原因としては,カーブの始点や曲率が違うなどと考えたという,被告人bの法廷における供述と矛盾しない内容が記されている。そして,同上申書には,その後に「正しいデータなのか疑問を抱いたと思います。」との記載があるが,これも被告人bの法廷における供述と矛盾するものではない。また,そもそも,かかる記載は「抱きました」から訂正され,過去の自身の内心を,当時推測したという表記となっているにすぎない。そうするとこの上申書をもって,被告人bの改ざんに対する認識を十分に推認できるものではない。次に,警察官作成の上記供述調書についても,「矛盾を感じたと思う。」旨の供述が記載されているにとどまる。さらに,上記記載に続いて,「思う,と言うのは,数値の違いに気づいた後,その理由を考えたかもしれませんし,その辺のところが,はっきりしないからです。」との記載がある。また,被告人bは,取り調べを受けた当時,検査表③を見た際の具体的な記憶があいまいであったが,断定的な表現ではないからと取調べ担当警察官から言われた,取調べが永遠に終わらないと思って,妥協して署名したというが,これをあながち排斥することはできない。これらを踏まえると,上記上申書及び供述調書をもってしても,前記判断に影響を及ぼすものではない。4 被告人dの認識検察官の主張検察官は,被告人dの改ざんの認識に関して,以下のとおり主張する。被告人dは,事故調査の重要な資料である軌道狂い検査表の軌道変位数値を事前に把握,検討して,運輸安全委員会に説明や提出をする立場にあった。そして,本件当時,現業機関の責任者であるf所長に対して,2度にわたり検査表の確認を指示し,運輸安全委員会との3度の打合せ会議にすべて出席して検査表の報告要求を受け,自ら検査結果を報告するなどしていた。そして,事故調査官から本件事故直近の異常値について尋ねられた際,軌間のみならず通りに2度も言及した一方,事故現場付近で基準値超過が認められていた高低及び水準や,事故現場付近の実際の曲線半径が台帳よりも小さい曲線であることなどには言及しなかった。また,平成25年9月20日夕方のiとの会話では,実際の曲線半径が台帳と異なる可能性については一切言及せず,検査表を見ずに記憶を基に,どちらかといえばV31の検査表を出した方がいい旨発言しつつも,軌間変位数値の最大値25ミリメートルや通り変位の最大値マイナス75ミリメートルの記載がある検査表を運輸安全委員会に提出することに懸念を示した。さらに,検査表②’の通り基準値の最大値が31に訂正されているなど基準値が明示されていたにもかかわらず,f所長及びその指示を受けたgが意図的な改ざんに及ばざるを得ないような,具体的な理由を明示しない2度目の再確認の指示をf所長に与えた。その結果,通り変位数値が大幅に小さくなった検査表③が作成され,第3回打合せ会議で検査表③について説明したが,通り変位数値を含む数値について不満を口にした。さらに,同月21日には,本件事故原因と関係が乏しい水準の限界値欄の数値を1ミリメートル訂正するにも,被告人bへの報告を経てから運輸安全委員会に提出したほど1ミリメートル単位の数値に厳格であった。以上からすると,被告人d自身が再確認の指示をして,その後作成された検査表③を受領して見た時点で,通り変位数値が大きく減少しているなど不合理な変化をしていることに気付いたといえる。被告人dによる各検査表の確認状況そこで,被告人dについても,まず,本件事故発生後の執務状況についてみた上で,各検査表を確認した経緯や状況について検討する。ア 執務状況(証人p,被告人d)被告人dは,同月19日夜に本件事故現場に行って事故状況等を確認した。そして,復旧作業の管理を担当することとなったため,クレーンの導入や設置場所の管理,部品の損傷状況や交換部品の調達状況の確認,復旧作業業者の手配等をした。さらに,西ビルや本社工務部への状況報告や情報提供,また本社からの問い合わせ対応等も行った。なお,この問い合わせ対応の一つが,iから依頼された軌道狂い検査表に記載された正矢量(V)の確認作業である。また,同日の深夜,現地に到着したpや運輸局の担当者を本件事故現場に案内し,説明を行った。また,その後,現地に到着し,現地対策本部長に就任した工務部専任部長のe13を本件事故現場に案内するなどした。その後,翌20日午前2時頃から約2時間,仮眠を取り,同日午前5時頃からは,現地対策本部の打合せ会議に出席したり現地を確認したりした。そして,同日午前9時頃から現地対策本部の打合せに出席した。また,鉄道事故調査官が到着して開催された第1回打合せ会議に出席した。その後,鉄道事故調査官を本件事故現場に案内し,午後には第2回打合せ会議に出席した。同会議後には,また別の箇所の線路等に鉄道事故調査官らを案内した。そして,同日午後6時13分頃からは前記のとおり,iと電話で会話し,同日午後7時51分頃,検査表③を入手して見た上で,これを本社に送信するように指示した。同日午後8時過ぎにはホテルに戻り,翌21日午前5時頃出勤し,本件事故現場でのトラックマスターによる検査や手検測に立ち会った。その後,第3回打合せ会議に出席して,検査表③を運輸安全委員会に提出した。イ 各検査表の確認経緯,状況及びf所長への指示状況被告人dによる各検査表の確認状況やf所長への指示内容及び状況等は前記認定事実のとおりであるが,その点のみについてみると,概要は次のとおりである。被告人dは,同月19日夜,iから検査表の正矢量(V)の値に疑義が生じている旨連絡を受けて検査表①を見た上で,f所長に対し,数値に誤りがあるのではないかと言って,検査表の確認を指示した。翌20日の日中には,検査表②’を見て,Vが31に訂正されていたものの,その他の検査数値が変わっていないように感じたため,再度確認するようf所長に指示した。被告人dは,同日午後6時13分頃から,iと電話で会話し,軌間変位の25ミリや通り変位の75ミリについて言及した。そして,同日午後7時51分頃,検査表③を確認した。検討ア 被告人dは,前記判断のとおり,検査表①の通り変位数値が本件事故原因の一要因であると考えていたとは認められない。もっとも,これを前提としても,検察官が主張するように,被告人dが,検査表①では高低変位や水準変位に基準値超過が認められていたがこれに関心を示す言動はしていない一方で,非常に大きな通り変位数値が記載されていることに強い関心を抱き,運輸安全委員会にこの通り変位数値を報告することに懸念を抱いているとも受け取れる発言をしたこと,検査表①の正矢量(V)が訂正されたにもかかわらず,検査表②’の通り変位数値が従前のものであったことから,f所長に対し,このままでいいのかなどと言って検査表の再確認をしたところ,通り変位数値が大幅に小さく変更された検査表③が送られてきたなどの事実経過は,被告人dが,通り変位数値の変化が不合理であることを認識していたことと整合的であるともいえるため,以下,詳しく検討する。イ 各検査表への関心や確認の程度検察官が主張するように,被告人dは検査表①を受け取って見て以降,被告会社内や運輸安全委員会との打合せ会議等において,軌間変位のみならず,通り変位や同数値の最大値である「-75」に言及する場面が複数回あったことに照らすと,本件事故現場付近の通り変位数値に関心を抱いていたといえる。他方,被告人dの本件事故後の執務状況をみると,検査表②’や同③を見た同月20日は,仮眠を取った状態で早朝から各種会議への出席,現地確認等の業務を行うなど,本件事故現場付近において各種対応に当たっていたp証人も述べるように非常に忙しかったといえる。そうすると,被告人dにおいて,各検査表の数値が具体的にどのように変化したかについては十分に検討できる状況にはなかったことが窺われる。また,運輸安全委員会に提出する検査表の数値の正確性等については,少なくとも被告人dの担当業務ではないと考えられる状況にあったこと,被告人dが偶然z方面に出張していたことから本件事故現場に赴き,検査表について被告会社本社と保線現場との連絡役を担ったにすぎないことなども認められる。これらを踏まえると,被告人dにおいて,各検査表に記載された通り変位を含む数値の変化について精査する意識が薄かったとしても不自然ではない。実際,被告人dは,検査表②’のうち,測点番号29(キロ程27.070)の通り一輪側の数値が検査表①から20も小さく変化しているところ,これに気付いた様子もなく,検査表①と同様の数値が並んでいるものとしてf所長に再確認の指示をしている。以上のほか,通り変位数値が非常に大きくなっている原因について,被告人dが線形管理に問題があるのではないかと考えていたことを踏まえると,被告人dは,検査表①,同②’及び同③を一通り見たものの,比較,検討するなどの精査をしていたとまでは認められない。ウ iとの電話における発言検察官は,被告人dが,iとの電話で「75ミリ何よって言われるぞ」と発言したことなどから,軌間変位数値の最大値25ミリメートルや通り変位の最大値マイナス75ミリメートルの記載がある検査表を運輸安全委員会に提出することに懸念を示したと主張する。他方,この発言について,弁護人は,被告人dは運輸局のe14課長からの指摘を懸念したものである旨主張し,被告人dも同様に述べる。そこで,被告人dとiの会話内容をみると,上記発言は運輸安全委員会に提出する検査表に関する会話の中でのものであること,また,被告人dは,検察官による取調べにおいて,かかる発言は運輸安全委員会から指摘を受ける趣旨のものであると,その理由と共に説明している。他方,被告人dは,法廷では,上記発言は,e14課長から指摘を受ける趣旨であると述べ,捜査段階の供述は,運輸局の担当者の趣旨も含むものであると述べる。しかし,運輸安全委員会と運輸局とでは組織が違うことは明らかであって,この点に関する被告人dの供述が不自然であることは否定できない。もっとも,被告人dのみならずiも法廷で,運輸安全委員会は検査表の数値について指摘することはない趣旨の供述をしている。そして,実際に,o調査官らは,第1回ないし第3回打合せ会議において,検査表の具体的な数値について被告人dが上記発言で懸念したような指摘はしていない。一方で,被告人dが述べるように,検査表③が提出された第3回打合せ会議において,e14課長は検査表③のキロ程27.087の軌間の数値変化等について被告人dら被告会社担当者に詳しく聞いている。以上からすると,被告人dの法廷供述は不自然な点があるものの,上記発言がe14課長からの指摘を念頭に置いたものであるとの被告人dの供述は排斥できない。したがって,この点に関する検察官の主張は採用できない。エ f所長に対する指示等被告人dが,検査表③に記載された通り変位数値が改ざんされたものであると少なくとも未必的には認識,認容し,検査表③を提出することを認めたとすると,被告人dからの確認指示を受けて保線現場において検査表①の数値が訂正されたが,さらに被告人dがf所長に再確認を指示したこと,これを受けてf所長がgに対して通り変位の数値の書き換えを指示したこと,その後,送られてきた検査表③の通り変位数値が,最大値で30以上も小さく変更されるなど合理的な説明がつかない数値に変更されたこと,この検査表③を運輸安全委員会に提出する予定のものであるとして本社に送信したことなどの事実経過等を説明することは可能ではある。しかし,これまで述べてきた被告人dが当時置かれた状況,検査表①に記載された通り変位数値の大きさの原因等に関する認識,検査表に記載された数値の正確性等の確認については,少なくとも被告人dの担当業務であるとまでは認められないことなどを踏まえて考えると,被告人dが検査表③に記載された数値の正確性等を精査,確認することなく,これを正しいものとして理解したことが合理的に想定される。また,被告人dの認識をこのように理解しても,f所長に対する指示等については,被告人dが,検査表①や同②’に誤りがあると考えたことから確認の指示をし,その結果,検査表③が届き,これを誤りが訂正されたものと理解したと合理的な説明をすることができる。そうすると,被告人dによるf所長への指示やその後の各検査表の数値の変化等を踏まえても,被告人dが数値変化の不合理性を認識したことを十分に推認することはできない。オ その他検察官の主張検察官は,被告人dが,f所長への指示の結果,通り変位数値がマイナス42となった検査表③についても「いい結果ではない」旨発言したことを指摘して,被告人dが,検査表③の通り変位数値に対しても関心を寄せて不満を口にしたと主張する。しかし,被告人d自身のみならず,w4証人やw5証人も述べるように,通り変位のマイナス42も整備基準値を大幅に上回る数値であることに変わりはないから,「いい結果ではない」といえ,上記発言をもって改ざんの認識を推認することはできない。また,検察官は,被告人dが水準の限界値を1ミリメートル訂正させていることを指摘して,被告人dが1ミリ単位の数値に厳格であり,検査表の数値の不合理な変化に気付いたといえる旨主張する。しかし,この点について,被告人dは,誰かが水準の限界値の記載ミスを発見して伝えてきたため,z保線所に確認するよう指示したところ正しい数値に直させただけであると述べていることからすると,かかる訂正指示をもって,被告人dが検査表①から検査表③にかけて数値が不合理な変化をしたことに気付いたとまでは認めがたい。小括以上からすると,被告人dは,検査表①に記載された非常に大きな通り変位数値について,本件事故原因の一要因としてではなく,誤りがあるのではないかと疑ったことから関心を抱いたにすぎないこと,その後,検査表②’をみたところ,正矢量(V)の数値は訂正されていたものの,従前の数値とあまり変わりがなかったように思われたことから再度確認を指示し,その後送られてきた検査表③を正しいものであるという前提で見て,検査表③を運輸安全委員会に提出することにしたとみることができる。このように理解しても,被告人dのその他の言動も含めて一連の行動や発言を合理的に説明できる。したがって,被告人dが改ざんの認識を有していたことについて合理的な疑いが残るというべきである。捜査段階の供述検察官は,被告人dが,捜査段階において,検査表③を見た際に,通り変位の数値が不揃いに小さく整理されていることに気付いた旨述べたこと,検査表③を見たbから,通り変位の数値が小さくなっているがこれで大丈夫かなどと言われた旨述べたことなどを指摘して,これらは被告人dが通り変位数値の不合理な変化に気付いて疑問を抱いた当時の心理状態を端的に述べたものであると主張する。そこで,検討すると,不揃いに小さく整理されているとは,通り変位の数値の変化が各キロ程において小さくなっているが,それが均一でないという趣旨の供述と理解できるが,被告人dは前記のとおり,検査表①の通り変位数値には曲線半径のずれなどの線形管理の問題が存在する可能性を考えていたのであるから,これらが正しく処理されて検査表③が送られてきたものと認識したことと矛盾するものではない。この点に関する検察官の主張は,検査表①もしくは同②’に記載の通り変位数値が正しく処理されて訂正されたものであれば,数値は均一に小さくなることを前提とするものと理解できるが,関係証拠を精査しても必ずしもそのようなことはいえない。その他被告人dの捜査段階の供述を検討しても,前記判断には影響しない。5 被告人cの認識検察官の主張検察官は,次の各点を指摘して,被告人cは,遅くとも同月23日夜に検査表③の数値に合わせた完成版整理表を作成した旨を了承した時点で,改ざんの認識を有していた旨主張する。ア 被告人cは,本件事故発生直後,軌道狂い検査表を早急に入手するよう指示した上,検査表①を見て,正矢量(V)が誤っていたため非常に大きな通り変位の数値が算出された可能性があることを含め,検査表①の通り変位の数値に印を付けたり,カーブを描くなどして確認,吟味した。そして,V21の記載誤りや整備基準値を大幅に上回る通り変位数値に多大な関心を抱いていることを周囲に示す言動をした。さらに,同月20日にも,基準値を超える高低及び水準には関心を寄せない一方で,Q&Aに通り変位の最大値である「75」を書き込むなど通り変位数値に着目していた反面,このような通り変位数値をマスコミに公表することによる非難を避けたいという心境であった。このように考えていた被告人cが,運輸安全委員会に提出するものとして検査表③を受領すれば,通り変位の数値を子細に検討するのが当然であり,その際,手元に「◎基データ」と記載された検査表①があったことからすると,検査表①と同③を見比べて,通り変位数値の不合理な変化に気付いたといえる。イ 加えて,被告人cは,同月23日,f所長から補修の事実がないと聞いたにもかかわらず,架空の記憶を根拠に補修実績を作り出すように指示して,暗にねつ造を示唆した。また,同日夜,完成版整理表の備考欄に△印と,末尾に「△:現地の状況に合わせた曲線を挿入しているため,計画諸元と異なっていることから再精査します。」と追記させて,当時未確認事項であったことを断定的な表現で記載させた。さらに,同年10月上旬頃,lに対し,lが作成した0.5メートルピッチの軌道変位検査データ「24」を運輸安全委員会に提出した数値である「25」に合わせるようにのみ指示した。そして,同月7日,国土交通省職員2名に対し,電話で,完成版整理表の数値について,jによる説明とは異なる内容や虚偽の説明をした。このように,被告人cは,被告会社が対外的な批判にさらされる事態を回避するために,記録のねつ造や虚偽の説明,数字のつじつま合わせをするなどして各関係者に対応していた。検査表の確認状況,整理表の作成状況(証人h,被告人c)そこで,被告人cについて,本件事故発生後の執務状況,各検査表の確認状況及び整理表の作成状況についてみる。ア 執務状況等被告人cは,同年9月19日夜,本件事故発生を受けて西ビルの施設指令に行き,運行再開に向けた復旧工事について検討を始めた。また,本件事故現場から送られてきた各種検査結果(検査表①も含む。)を見るなど本件事故に関する情報を確認,収集するなどした。同日夜は帰宅せず,施設指令に宿泊した。翌20日午前,施設指令において復旧に必要な材料の手配等,復旧工事対応をした。昼頃には本社保線課に行き,記者会見の準備やQ&A案を確認するなどした。夕方には,再び西ビルに行き,複数回開催された対策会議に出席し,検査表③を確認した上で,翌21日午前0時頃帰宅した。同日朝,西ビルに行って復旧作業の対応に当たった。同日午後5時頃に運行が再開されたため,本社保線課に戻った。イ 整理表の作成状況及び暫定版整理表の提出状況同日午後11時頃,国土交通省から,同月23日までに全道の整備基準値の超過箇所を報告するように求められ,被告人cはその取りまとめ役となった。そこで,本社保線課保管のマヤ車データを集め,また,全道からトラックマスターのデータを取り寄せたところ,マヤ車データ(チャート)は2000枚以上,トラックマスターデータは1000枚程度に及んだ。これらのデータから,手作業で超過箇所を拾い出して,指定の様式に転記する作業が必要となったため,その日は帰宅せずに,本社保線課で超過箇所の整理等に従事した。また,翌22日は昼頃から同日深夜頃まで,記者会見の準備や出席,また記者からの追加質問に対する回答等に当たった。同月23日朝までに整理表が完成せず,補修日について保線現場に確認する必要があったため,同日朝にz保線所,α7保線所及びα8工務所の各所長に電話連絡をした。同日午後1時2分頃,国土交通省職員に対し,暫定版整理表をメール送信した。その後,z保線所,α7保線所及びα8工務所に電話連絡して,暫定版整理表の欄外に補修日を記入して報告するよう指示し,同日午後3時46分に上記各所長宛に暫定版整理表をメール送信した。ウ 完成版整理表の作成状況,f所長とのやり取り同日午後5時ないし午後6時頃,f所長から電話連絡があり,補修実績はない,線路はよくなっている旨の報告を受けた。そこで,被告人cは,強い口調で補修実績について再度確認するようにf所長に指示した。そして,f所長は,z保線所の職員に補修実績のねつ造を指示した。被告人cは,同日夜,hから,完成版整理表とnがマーキングした検査表③を見せられ,暫定版整理表の数値を検査表③の数値に合わせて完成版整理表を作成した旨説明を受けた。そして,完成版整理表の提出について被告人bの了解を得た後,完成版整理表に△印やそれに関する注を追記させた。被告人cは,補修実績を整理表に記入することは困難であったことから,これを記入せずに提出することにつき国土交通省の担当者の了解を得た上で,同日午後10時頃に完成版整理表を提出した。検討ア 被告人cが改ざんの認識を有していたことを窺わせる事実被告人cは,iに電話で通り変位数値について確認するなど,同月19日夜以降,検査表①に記載された通り変位数値が非常に大きいことにつき関心を示す言動をしたこと,同月20日,空欄であったQ&Aの通り欄に「75」と手書きで記入したこと,rに対して通り変位の安全限度値をQ&Aにあえて書く必要はないのではないかと伝えたこと,また,同日夜には,テーブルに,検査表①(「◎基データ」と記載されたもの)と検査表③(運輸安全委員会に提出する旨の記載がされた付箋が貼られたもの)が置かれて各データを対比して確認できる状況にあったことが認められる。そして,被告人cは,完成版整理表のうち,暫定版整理表から変更された数値についてhから説明を受けて具体的に認識している。さらに,被告人cは,同月23日には,国土交通省に提出する整理表を作成している際,補修実績がない旨報告してきたf所長に対して,強い口調で作業員の記憶でもいいから補修実績を探すようになどと指示したこと,その後,一転して翌24日にはz保線所から非常に多数の箇所についての補修日が記載された暫定版整理表が送られてきたことも認められる。このような事実経過は,被告人cが本件事故後から通り変位数値の大きさに関心を抱く一方で,この数値を対外的に公表したくないと考えていたこと,検査表①と同③に記載された数値を比較検討して,数値の変化に合理的な理由がないものと考えたが,やむを得ないものと考えてこれを容認したこと,また,f所長に対して,暗に補修実績のねつ造を指示したという検察官の主張に整合的である。そうすると,上記事実経過は,検察官が主張する時点で,被告人cが検査表③の通り変位の数値が意図的に改ざんされたものであることを少なくとも未必的に認識,認容していたことを推認させるものということができる。イ 消極的間接事実(暫定版整理表の提出)他方で,弁護人が指摘するように,被告人cは同月20日の夜に検査表③を確認していたにもかかわらず,同月23日の昼には,通り変位数値が「-75」などと記載された暫定版整理表を国土交通省に送信している。この点,被告人cが,検査表③の通り変位数値が改ざんされているものと少なくとも未必的に認識,認容していたのであれば,国土交通省に「-75」の通り変位数値が記載されるなどした暫定版整理表を提出するとは考えにくい。被告人cが,このような暫定版整理表を同月23日の昼時点で国土交通省に提出することを指示したことは,検査表③の通り変位数値を精査するなどの意識的な確認をしていなかったことの現れとみるのが自然である。また,被告人cが,整理表作成の際に,検査表③の数値を反映させるよう,部下職員らに対して積極的に指示をしたことなども関係証拠上認められない。むしろ,整理表に検査表③の数値が反映されたのは,nが数値の食い違いに気付き,マーキングした検査表③をhに手渡し,それを基に被告人cに報告がなされたからである。暫定版整理表が国土交通省に提出されたことやその経緯は,被告人cが検査表③の通り変位数値が改ざんされていることを少なくとも未必的に認識,認容していたのであれば,合理的な説明が困難である。そして,検察官もこの点について何ら説明を試みていない。ウ その他の事実(同年10月上旬頃のlへの指示)被告人cは,検査表③を取り寄せて見て,通り変位の数値が異なる旨報告してきたlに対し,異なるデータが存在する理由を強い口調で確認するよう指示したが,被告人cが改ざんの認識を有していたのであれば,不可解な行動といえる。エ 被告人cの供述そこで,翻って被告人cの検査表①及び同③の確認状況等についてみると,改ざんの認識を有していなかったという被告人cの供述を前提にしても,合理的な説明が十分に可能である。被告人cの供述内容被告人cは,法廷で概ね次のとおり述べる。検査表①の通り変位がこれまでに見たことがないような大きな数値であり,また記事欄の正矢量(V)に明らかな誤りがあったことなどから漠然と何らかの間違いがあるのではないかと考えた。その後,主に復旧に関わる業務に従事し,その他記者会見の準備や会議への出席等に追われており,そちらに関心が集中した。特に同年9月20日から同月21日にかけては復旧対応に関する業務がピークを迎えていた。同月20日夜に検査表③を見たが,自らの担当業務と直接関係はなかったため,検査表①と比較することはできたが,そうすることはなく,誤りが修正されたものという程度の認識であった。検討被告人cは,通り変位が本件事故原因の一要因であると考えていたとは認められず,また,本件事故後,復旧作業を中心に執務を行っていたことなどを踏まえると,被告人cが,通り変位の数値が具体的にどのように変更されているのかについて強い関心を抱くことなく,自らの業務に追われ,検査表③についても検査表①と比較するなど精査することなく目を通して数値が修正されたという程度に考えたというのもあながち不自然,不合理であるとはいえない。むしろ,被告人cが述べるように,検査表①の通り変位数値はあまりにも大きく,また記事欄記載の正矢量(V)に誤りがあったことなどから,検査表③は,保線現場で各種数値を見直した結果,正しい数値に訂正されてきたものであると考え,記載された数値が一見して合理的な大きさにとどまっていたことから,改ざんされたと思わなかったというのは自然なものとして理解できる。この点については,検査表①から正矢量(V)が正しく処理されて検査表③の通り変位数値になったと感覚的に思うことはあり得るとするw5証人の供述や,各検査表を見比べなければ,数値の変化が不自然,不合理であることは分からないとするw4証人の供述と整合的である。検察官の主張検察官は,被告人cがQ&Aへの通り変位数値のみ記入したことから,同月20日時点で通り変位数値に着目していた旨主張する。しかし,そもそもQ&Aは,その案をqらが作成していたところ,被告人cはQ&Aに印字された通り変位の最大値が空欄であったため記入したにすぎないと考えられることから,この点の主張は採用できない。また,検察官は前記のとおり,㋐同月23日のf所長への補修実績の再確認の指示,㋑同日夜の完成版整理表への△印等の記入指示, 同年10月上旬頃のlへの指示, 同月7日の国交省職員に対する,完成版整理表の数値に関する説明は,いずれも被告人cが対外的な批判を回避するためには,記録のねつ造や虚偽の説明をいとわなかったことの現れである旨主張するので,以下順次検討する。まず,㋐についてみると,前記認定事実によれば,被告人cが補修実績の問い合わせをしたz,α7,α8の各所長のうち,α7及びα8から報告がなされたが,f所長は軽い感じで補修実績がない旨報告してきたことに加え,本件事故はz保線所の所管区域であり,かつ電話連絡を入れた同月23日にf所長が休暇を所得していたことなどから,腹を立てて勢い余ってきつい口調で言ったという被告人cが述べる心境は理解できる。また,職員の記憶でもいいから補修実績を探すようにとの指示内容も,そもそもf所長からは,線路はよくなっているが保線システムに実績がない旨聞いていたこと,補修実績は保線システムに入力されるが入力漏れやミスはあり得ること,補修作業については作業手帳に記入されるという被告会社の保線現場における実情も踏まえると,被告人cの上記発言が暗にねつ造を示唆したものと認めることはできない。確かに,本社保線課の課長として勤務する被告人cの地位に照らすと,上記指示は不適切な面があったことは否定できない。また,被告人cの指示を受けて,z保線所において補修実績がねつ造されたことは事実ではあるものの,これはf所長ら保線現場において,被告人cの発言を曲解して行われたものといえる。したがって,この点に関する検察官の主張は採用できない。次に,㋑についてみると,hも述べるように,かかる注の記載は,国土交通省に対し,異なる曲線が入っていた可能性があるために,再度確認して報告する趣旨と理解できるのであって,何ら不自然な点はない。この点に関する検察官の主張も採用できない。また, についても,lが計算したところ,軌間の最大値がそれまでの25ミリメートルではなく,24ミリメートルになったというが,これは,差し引くべきスラック量を導く方法が異なったことによる許容誤差であるというのであるから,この点も前記判断に影響するものではない。そして, について,被告人cは,lを通じて聞いた保線現場の説明に納得はいかなかったものの,これを国土交通省の職員にそのまま伝える訳にいかなかったことから,苦し紛れで説明したものである旨述べるが,被告人cが置かれた当時の状況も踏まえると,特に不自然なものとはいえない。以上からすると,検察官の上記各主張を踏まえても,被告人cが,被告会社が対外的な批判にさらされる事態を回避するために,記録のねつ造や虚偽の説明,数字のつじつま合わせをするなどして各関係者に対応していたとまでは認められない。小括以上によれば,被告人cについては,通り変位の数値が不合理な変化をしていることに気付いたものの,これを容認して国土交通省に報告したなどの検察官の主張と整合するともいえる事実関係は認められるものの,検察官の主張を前提とすると説明困難な客観的な事実が認められる。また,検察官の主張に整合的な事実関係も,被告人cが通り変位数値の不合理な変化を認識,認容していなかったとしても合理的な説明が可能なものである。捜査段階の供述被告人cは,捜査段階において,当時,検査表①と同③を見比べて,通り変位数値が「-75」から「-42」に変化したことについて説明がつかないと感じた旨述べている。この点について,被告人cは,法廷で,取調べを受けた時点では,2つの検査表を見た時の状況について記憶はなかったが,警察官から,検査表①から同③への数値に変わる理由について聞かれたため,正矢量(V)が10違うが計算は合わない旨答えた,さらに警察官から,各検査表を見た当時も同じように思ったのではないかと聞かれ,否定しきれなかった旨述べる。まず,被告人cが,上記のように数値の変化に合理的な理由がないと認識していたのであれば,暫定版整理表を国土交通省に提出したことについて合理的な説明は見いだしがたく,捜査段階における被告人cの供述の信用性には合理的な疑いが残る。そして,その他,被告人cの捜査段階の供述を検討しても,上記疑いは解消されない。そして,これを前提に,捜査段階の取調べに関する被告人cの上記法廷供述をみると,その内容が不自然,不合理なものとして排斥することはできない。以上から,被告人cの捜査段階の供述をもってしても前記判断には影響しない。6 本件事故後,被告人らが改ざんを未必的に認識,認容していたとすれば合理的な説明が困難な事実以上のほか,被告人らが改ざんの認識を有していたという検察官の主張を前提とすると,合理的な説明が困難な客観的事実が認められる。すなわち,被告人らは,本件事故発生後の時点において,脱線事故が発生し,運輸安全委員会が関わると,同委員会に0.5メートルピッチの検査表を提出することになると理解していた。そうすると,被告人らが,検査表③の通り変位数値が改ざんされたものであることについて,少なくとも未必的に認識し,認容していたとすると,いずれ運輸安全委員会において,検査表③と0.5メートルピッチの検査表とで記載された数値に齟齬があることが把握されることは容易に想像できたといえる。仮にそうであるとすると,被告人らにおいて,0.5メートルピッチの検査表についても検査表③の数値に合わせるように指示をするか,そこまでしなくとも,0.5メートルピッチの検査表に記載される通り変位数値について確認するなどの関心を抱いていることが窺われる言動に出てしかるべきである。しかしながら,関係証拠を精査しても被告人らにおいてそのような言動をしたことは認められない。さらに,被告人dについてみると,同年10月上旬,lから,本件事故現場付近の実測値を基に作成された0.5メートルピッチのデータを見せられた際,十数秒程度確認しただけで,同データの数値と検査表③の数値とを照合,確認するように指示しただけであった。このように,被告人dは,0.5メートルピッチの検査表には無関心であったことを窺わせる行動が認められる。検察官は,被告人らは,㋐0.5メートルピッチのデータについては思いを致さなかった可能性,㋑元データも現業機関において改ざんされていると考えた可能性や改ざんを指示していない旨言い逃れできるなどと考えていた可能性がある旨主張する。しかし,㋐の点については,検察官が被告人らについて改ざんの認識を有したとそれぞれ主張する同年9月の各時点のみならず,被告人らは,その後も0.5メートルピッチの検査表に記載される数値について何ら関心を示したり,行動を取ったりしなかったのであるから,やはり合理的な説明は見いだせない。また,㋑の点も関係証拠により認められる事実経過に照らせば,被告人らがこのように考えていたという具体的な可能性は認められない。したがって,この点に関する検察官の主張は採用できない。以上によれば,0.5メートルピッチの検査表に関する被告人らの対応は,被告人らが改ざんの認識を有していたとする検察官の主張を前提とすると説明が困難であると認められる。第7 その他検察官の主張1 改ざんの動機検察官は,被告会社における本件事故前のインシデント等により事業改善命令といった行政指導等を受けていたことや本件事故当時の報道状況等に照らし,本件事故当時,被告会社保線課幹部であった被告人らにおいて,当局やマスコミ,ひいては一般国民からの厳しい指摘や非難を回避ないし軽減したいという検査表の改ざんを黙認する動機がある旨主張する。しかし,そもそも,被告人らにおいて,検察官が主張する動機に基づいて,改ざんされた「-42」という通り変位数値を容認するとは考え難い。すなわち,被告人らが,検査表記載の数値を自ら主体的に改ざんしたり,改ざんを指示したりするのではなく,保線現場において改ざんされた数値が記載された検査表を受け取って確認し,それを鉄道事故調査官等に提出をするという立場であったという観点から検討しても,w4証人やw3証人が述べるように,改ざん後の「-42」という通り変位の数値は,脱線の可能性が大きいことに変わりはなく,世間等からの非難を回避,軽減するという点では,「-75」であったときと大きな差異はないと考えられるからである。したがって,この点を踏まえても前記判断に影響はない。2 本件事故以前,被告会社の保線管理室等でデータの書き換え等が行われていたこと関係証拠によれば,被告会社の保線関係業務に従事している社員795名(現業機関768名,本支社計画部門27名)のうち16パーセントの者が現職場又は過去の職場でデータの書き換え等を行ったことがあると回答したこと,保線管理室等44か所中33箇所で過去にデータの書き換え等が行われていたことが認められる。また,u証人を含む複数の被告会社従業員が整備基準値超過箇所の数値を整備基準値内に収める改ざん行為を実施したことがある旨述べているが,これは整備基準値超過箇所の数値を1ミリメートルないし3ミリメートル程度小さくして,整備基準値内に収めていたものを指すと認められる。さらに,関係証拠によっても,本社保線課において,保線現場で上記のようなデータの書き換えが行われることを把握していたと認めるに足りる的確な証拠はない。むしろ,u証人やi証人の供述によれば,本社保線課ではそのような情報を把握していなかったことが窺われる。また,被告人らはそれぞれ保線現場で勤務していた経験はあるものの,関係証拠を精査しても,その際に,当該現場において上記のようなデータの書き換えが行われていたとも認められない。検察官は,被告会社におけるデータ書換え等の実情を踏まえて,保線現場の改ざんを許容する雰囲気が広く醸成されている旨主張するが,関係証拠上,被告会社本社保線課において上記データの書き換え等を許容していたとは認められないばかりか,雰囲気などといった曖昧なもので,被告人らの改ざんについての認識を認めることは到底できない。第8 結論以上によれば,検察官の主張を十分に踏まえても,被告人らについては,それぞれ改ざんの認識を有していたことにつき,合理的な疑いが残る。よって,被告人らについては,それぞれその公訴事実について犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により,いずれも無罪の言渡しをする。(被告会社についての法令の適用)罰 条判示第1の行為 運輸安全委員会設置法18条2項2号,32条1号,33条判示第2の行為 鉄道事業法55条1項,70条15号,72条2号判示第3の行為 鉄道事業法56条1項,70条16号,72条2号併 合 罪 の 処 理 刑法45条前段,48条2項訴 訟 費 用 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)(被告会社についての量刑理由)本件は,北海道の鉄道事業者である被告会社において,線路の保守等を担当する現業機関である保線所及び保線管理室の所長及び職員らが,同社の管轄する駅構内において発生した本件事故の直後に,監督官庁である国土交通省及び鉄道事故等の原因究明を行う専門の調査機関である運輸安全委員会に対して,検査表に記載された本件事故現場付近の数値の一部を改ざんした検査資料を2度にわたり提出して虚偽の報告をした上,さらに,数値の一部を改ざんするなどした検査資料を保安監査員に提出するなどして,検査を忌避した事案である。
事案の概要
平成31年2月6日
札幌地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成30(ろ)836  187ViewsMoreinfo
不正競争防止法違反
平成30(ろ)836
本件は,G株式会社(以下「G」という。)の子会社としてアルミニウム等の非鉄金属及びその合金を加工した製品の製造,販売を行う被告会社が,顧客との取引に用いる書類に,販売する商品の品質について誤認させるような虚偽の表示をした不正競争防止法違反の事案である。
事案の概要
平成31年2月6日
東京簡易裁判所
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[最高裁] 平成30(行ツ)92  330ViewsMoreinfo
選挙無効請求事件
平成30(行ツ)92
本件は,東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号。以下「本件条例」という。)に基づいて平成29年7月2日に施行された東京都議会議員一般選挙(以下「本件選挙」という。)について,江東区選挙区の選挙人である上告人が,①本件条例が大島町,利島村,新島村,神津島村,三宅村,御蔵島村,八丈町,青ヶ島村及び小笠原村の区域(以下「島しょ部」という。)を合わせて1選挙区(島部選挙区)として存置したことが公職選挙法271条に,②本件条例のうち各選挙区において選挙すべき議員の数を定める規定(以下「定数配分規定」という。)が同法15条8項にそれぞれ違反するとともに,同法271条及び本件条例の定数配分規定が憲法14条1項等に違反して無効であるから,これらに基づき施行された本件選挙の江東区選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。
事案の概要
平成31年2月5日
最高裁判所第三小法廷
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[知財] [民事] 平成30(ワ)13092  206ViewsMoreinfo
プログラム著作権確認請求並びに著作権侵害差止請求事件(著作権・民事訴訟)
平成30(ワ)13092
本件は,別紙対象プログラム目録記載1及び2の各プログラムにつき著作権を有すると主張する原告らが,①主位的には上記各プログラムの全てにつき著作権を有することの確認を,予備的には上記各プログラムのうち,後記1⑵ウの登録20済みプログラムに係るものを除いた残部(以下「非登録プログラム」という。)につき著作権を有することの確認を求めるとともに(前記第1の1),②被告において被告製品を販売する行為が,原告らの上記著作権を侵害すると主張して,著作権法112条1項,2項に基づき,被告に対し,被告製品の販売差止め・廃棄等を求める(前記第1の2ないし5)事案である。
事案の概要
平成31年2月5日
東京地方裁判所
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[下級] [民事] 平成28(ワ)889  239ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件
平成28(ワ)889
本件は,防衛大学校(以下「防衛大」という。)に2学年時まで在校し,その後,退校した原告が,同校の学生であった被告らに対し,在校中,それぞれ暴行,強要,いじめ等の行為を受け,精神的苦痛を被ったとして,不法行為あるいは共同5不法行為に基づき,①被告Aに対して400万円,②被告Bに対して300万円,③被告Cに対して200万円,④被告D及び被告E(共同不法行為)に対して連帯して200万円,⑤被告Hに対して100万円,⑥被告Fに対して100万円,及び⑦被告Gに対して100万円,並びにそれぞれ不法行為の日又は不法行為の後の日(被告Aにつき平成25年6月15日(一部の不法行為の後の日),被告B10につき同年10月12日(一部の不法行為の後の日),被告C,被告D及び被告Eにつき平成26年5月9日(被告Cの最後の不法行為の日,被告D及び被告Eの不法行為の後の日),被告Hにつき同月24日(不法行為の後の日),被告F及び被告Gにつき同年7月1日(不法行為の後の日))から支払済みまで,いずれも民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
事案の概要
平成31年2月5日
福岡地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成30(ろ)837  156ViewsMoreinfo
不正競争防止法違反
平成30(ろ)837
本件は,焼結機械部品メーカーである被告会社が,不正競争防止法に違反して,顧客との取引に用いる書類に,販売する商品の品質について誤認させるような虚偽の表示をした事案である。
事案の概要
平成31年2月5日
東京簡易裁判所
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[知財] 平成30(行ケ)10054  193Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/二酸化炭素含有粘性組成物)
平成31年2月4日
知的財産高等裁判所
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[知財] 平成30(行ケ)10033  217Views
審決取消請求事件(特許権・行政訴訟/二酸化炭素含有粘性組成物)
平成31年2月4日
知的財産高等裁判所
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