事件番号 | 平成24(行ウ)288 |
---|---|
事件名 | 時効特例給付不支給処分取消請求事件 |
裁判所 | 大阪地方裁判所 |
裁判年月日 | 平成26年5月29日 |
事案の概要 | 本件は,亡夫A(以下「亡A」という。)を被保険者とする国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)による改正前の厚生年金保険法(以下「旧厚年法」という。)に基づく遺族年金について,厚生労働大臣から平成23年3月31日付けで,厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(平成19年法律第111号。以下「時効特例法」という。)1条に基づく時効特例給付を不支給とする決定(以下「本件決定」という。)を受けた原告が,被告に対し,(1) 主位的請求として,本件決定の取消しを求めるともに,(2) 第1次予備的請求(年金の支払請求)として,昭和56年4月分から平成16年3月分までの上記遺族年金は時効により消滅していないなどとして,合計3001万0058円及びうち別表1の「未支給年金額」欄記載の各金員に対する各支払期日末日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(公法上の当事者訴訟),さらに,(3) 第2次予備的請求(国家賠償請求)として,昭和56年4月分から平成16年3月分までの上記遺族年金が時効により消滅しているのであれば,被告の担当者が違法に権利行使を妨げたことが原因であるとして,合計3001万0058円及びうち別表1の「未支給年金額」欄記載の各金員に対する各支払期日末日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 |
判示事項 | 1 年金記録の統合が厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律1条にいう「記録した事項の訂正」に当たらないとされた事例 2 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金に係る支分権の消滅時効の起算点 3 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金の支払請求に対する消滅時効の主張が信義則上許されないとされた事例 |
判示事項の要旨 | 1 昭和60年法律第34号による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金について,その裁定請求時点で各支払期日から5年を経過していた部分は時効により消滅している旨の通知を受け,厚生労働大臣から,厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(時効特例法)1条に基づく時効特例給付の不支給決定を受けた原告が,被告に対し,同決定の取消し等を求めた事案につき,本件における2つの期間の年金記録の統合は,原告の遺族年金の受給権の有無及びその額に影響を与えるような年金記録の訂正には当たらず,同条にいう「記録した事項の訂正」に当たらないとして,同取消請求が棄却された事例。 2 1の事案につき,原告が被告に対してした,時効消滅したとされた部分の遺族年金の支払請求について,一担当者による不適切な取扱いを超えた社会保険事務所の組織全体により繰り返しされた不適切な取扱いの結果,遺族年金について裁定請求を行うことは極めて困難であったなどとし,被告は,原告の重要な権利に関し,違法な取扱いをし,その行使を著しく困難にさせ,これを消滅時効にかからせたという極めて例外的な場合に当たるものといえ,被告が消滅時効の主張を行うことは信義則に反し許されないとして,上記遺族年金の支払請求を認めた事例。 |
裁判要旨 | 1 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律1条にいう「記録した事項の訂正」に当たるのは,年金の受給権の有無ないし年金額に影響を及ぼす訂正に限られるから,2つの期間の年金記録が確認され,これによって新たに受給資格を満たしていることが判明した場合であっても,2つの期間の統合という年金記録の訂正自体では受給権の有無及び額に変動を及ぼさない場合には,同条にいう「記録した事項の訂正」に当たらない。 2 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金に係る支分権の消滅時効の起算点は,会計法31条2項が準用する民法166条1項によって「権利を行使することができる時」となるところ,基本権の発生後,受給権者は,裁定の請求をすることにより,いつでも支分権に基づき年金の支払を受けることができるのであるから,基本権が客観的に発生した以降の各支払期日の初日から,その支払期日に係る支分権の消滅時効が進行し,5年の経過により順次消滅する。 3 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金の支払請求について,当該受給権者が10回程度も訪れ,問い合わせや相談等を行った社会保険事務所の各担当者が適切な調査を行っておれば被保険者の年金記録が発見された蓋然性が高かったにも関わらず,これら各担当者から,その都度,当該年金記録は見当たらないとの回答を受けていたものであって,単に一担当者による不適切な取扱いを超えた社会保険事務所の組織全体により繰り返しされた不適切な取扱いと評価でき,そのため当該受給権者が裁定請求を行うことが極めて困難であったと認められ,当該受給権者の重要な権利に関し,違法な取扱いをし,その行使を著しく困難にさせた結果,これを消滅時効にかからせたという極めて例外的な場合に当たるとして,当該遺族年金の支払請求に対する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされた事例 |
事件番号 | 平成24(行ウ)288 |
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事件名 | 時効特例給付不支給処分取消請求事件 |
裁判所 | 大阪地方裁判所 |
裁判年月日 | 平成26年5月29日 |
事案の概要 |
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本件は,亡夫A(以下「亡A」という。)を被保険者とする国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)による改正前の厚生年金保険法(以下「旧厚年法」という。)に基づく遺族年金について,厚生労働大臣から平成23年3月31日付けで,厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(平成19年法律第111号。以下「時効特例法」という。)1条に基づく時効特例給付を不支給とする決定(以下「本件決定」という。)を受けた原告が,被告に対し,(1) 主位的請求として,本件決定の取消しを求めるともに,(2) 第1次予備的請求(年金の支払請求)として,昭和56年4月分から平成16年3月分までの上記遺族年金は時効により消滅していないなどとして,合計3001万0058円及びうち別表1の「未支給年金額」欄記載の各金員に対する各支払期日末日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(公法上の当事者訴訟),さらに,(3) 第2次予備的請求(国家賠償請求)として,昭和56年4月分から平成16年3月分までの上記遺族年金が時効により消滅しているのであれば,被告の担当者が違法に権利行使を妨げたことが原因であるとして,合計3001万0058円及びうち別表1の「未支給年金額」欄記載の各金員に対する各支払期日末日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 |
判示事項 |
1 年金記録の統合が厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律1条にいう「記録した事項の訂正」に当たらないとされた事例 2 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金に係る支分権の消滅時効の起算点 3 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金の支払請求に対する消滅時効の主張が信義則上許されないとされた事例 |
判示事項の要旨 |
1 昭和60年法律第34号による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金について,その裁定請求時点で各支払期日から5年を経過していた部分は時効により消滅している旨の通知を受け,厚生労働大臣から,厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(時効特例法)1条に基づく時効特例給付の不支給決定を受けた原告が,被告に対し,同決定の取消し等を求めた事案につき,本件における2つの期間の年金記録の統合は,原告の遺族年金の受給権の有無及びその額に影響を与えるような年金記録の訂正には当たらず,同条にいう「記録した事項の訂正」に当たらないとして,同取消請求が棄却された事例。 2 1の事案につき,原告が被告に対してした,時効消滅したとされた部分の遺族年金の支払請求について,一担当者による不適切な取扱いを超えた社会保険事務所の組織全体により繰り返しされた不適切な取扱いの結果,遺族年金について裁定請求を行うことは極めて困難であったなどとし,被告は,原告の重要な権利に関し,違法な取扱いをし,その行使を著しく困難にさせ,これを消滅時効にかからせたという極めて例外的な場合に当たるものといえ,被告が消滅時効の主張を行うことは信義則に反し許されないとして,上記遺族年金の支払請求を認めた事例。 |
裁判要旨 |
1 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律1条にいう「記録した事項の訂正」に当たるのは,年金の受給権の有無ないし年金額に影響を及ぼす訂正に限られるから,2つの期間の年金記録が確認され,これによって新たに受給資格を満たしていることが判明した場合であっても,2つの期間の統合という年金記録の訂正自体では受給権の有無及び額に変動を及ぼさない場合には,同条にいう「記録した事項の訂正」に当たらない。 2 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金に係る支分権の消滅時効の起算点は,会計法31条2項が準用する民法166条1項によって「権利を行使することができる時」となるところ,基本権の発生後,受給権者は,裁定の請求をすることにより,いつでも支分権に基づき年金の支払を受けることができるのであるから,基本権が客観的に発生した以降の各支払期日の初日から,その支払期日に係る支分権の消滅時効が進行し,5年の経過により順次消滅する。 3 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金の支払請求について,当該受給権者が10回程度も訪れ,問い合わせや相談等を行った社会保険事務所の各担当者が適切な調査を行っておれば被保険者の年金記録が発見された蓋然性が高かったにも関わらず,これら各担当者から,その都度,当該年金記録は見当たらないとの回答を受けていたものであって,単に一担当者による不適切な取扱いを超えた社会保険事務所の組織全体により繰り返しされた不適切な取扱いと評価でき,そのため当該受給権者が裁定請求を行うことが極めて困難であったと認められ,当該受給権者の重要な権利に関し,違法な取扱いをし,その行使を著しく困難にさせた結果,これを消滅時効にかからせたという極めて例外的な場合に当たるとして,当該遺族年金の支払請求に対する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされた事例 |