事件番号平成26(行コ)158
事件名各法人税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成23年(行ウ)第698号等)
裁判所東京高等裁判所
裁判年月日平成27年1月15日
事案の概要本件分割は適格分割(同条12号の11)に該当しない分割(非適格分割)であり,資産調整勘定の金額(法62条の8第1項参照)が生じたとして,法62条の8第1項,4項及び5項に基づき,控訴人の①平成21年2月2日から同年3月31日までの事業年度,②同年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度,③同年4月1日から平成23年3月31日までの事業年度及び④同年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度に係る各法人税の確定申告に当たり,資産調整勘定の金額からそれぞれ所定の金額を減額し,損金の額に算入した。(2) これに対し,四谷税務署長は,控訴人が,本件分割の時点で本件譲渡1が見込まれていたものとして本件分割を非適格分割とし,これにより資産及び負債等の移転を受けたものとして資産調整勘定の金額を生じさせたことは,法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの。以下「施行令」という。)4条の2第6項1号(法2条12号の11イに規定する「政令で定める関係」を定めたもの)に規定する要件を形式的に満たさないこととすることにより本件分割を非適格分割とし,控訴人に資産調整勘定の金額を生じさせてこれを減額して損金の額に算入することを目的とした異常ないし変則的なものであり,これを容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるとして,法132条の2の規定に基づき,本件分割の時点で本件譲渡1が見込まれることなく,適格分割となる本件分割により控訴人が資産及び負債等の移転を受けたものとし,資産調整勘定の金額は生じなかったこととして,控訴人の所得金額を計算し,上記各事業年度の法人税につき更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下,「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。(3) 本件は,控訴人が,本件各更正処分等は法132条の2の否認の要件が満たされていなかったにもかかわらずされた違法なものであると主張して,四谷税務署長が所属する被控訴人を被告として,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の取消しを求めた事案である。
判示事項1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義
2 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」の意義
3 適格分割に関する要件(法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)2条12号の11の規定に基づき定められた法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)4条の2第6項1号に規定する「当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれている場合」という要件)を形式的には充足せず非適格分割となるように計画された新設分割が同法132条の2にいう「その法人の行為(中略)で,これを容認した場合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当し,同条の規定に基づき否認することができるとされた事例
裁判要旨1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,①同法132条と同様に,取引が経済的取引として不合理・不自然である場合のほか,②組織再編成に係る行為の一部が,組織再編成に係る個別規定の要件を形式的には充足し,当該行為を含む一連の組織再編成に係る税負担を減少させる効果を有するものの,当該効果を容認することが組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるものも含む。
2 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」とは,法人税につき更正又は決定を受ける法人の行為又は計算のほか,当該法人以外の法人であって同条各号に掲げられているものの行為又は計算も含む。
3 適格分割に関する要件(法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)2条12号の11の規定に基づき定められた法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)4条の2第6項1号に規定する「当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれている場合」という要件)を形式的には充足せず非適格分割となるように計画された新設分割であっても,一連の組織再編成の計画を全体としてみると,「移転資産に対する支配」が継続しているか否かの指標とされる「当事者間の完全支配関係」が一時的に切断されるが短期間のうちに復活することが予定されており,実質的にみて,分割会社による「移転資産に対する支配」が継続する内容の分割であると評価されること,分割の態様が,分割承継法人にとって,事業上の必要性よりも,企業グループ全体での租税回避の目的を優先したものであると評価されること,一連の組織再編成の計画において当該新設分割に引き続いて行われることが予定されていた行為(分割法人が保有する分割承継法人の発行済株式全部の譲渡)はその事業上の必要性が極めて希薄であったこと,一連の組織再編成に関与する法人において当該新設分割が非適格分割とは認められない可能性が相当程度あることを認識していたことなど判示の事情の下においては,同号による税負担減少効果を容認することは,上記各条項が設けられた趣旨・目的に反することが明らかであるから,当該新設分割は,同法132条の2にいう「その法人の行為(中略)で,これを容認した場合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当し,同条の規定に基づき否認することができる。
事件番号平成26(行コ)158
事件名各法人税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成23年(行ウ)第698号等)
裁判所東京高等裁判所
裁判年月日平成27年1月15日
事案の概要
本件分割は適格分割(同条12号の11)に該当しない分割(非適格分割)であり,資産調整勘定の金額(法62条の8第1項参照)が生じたとして,法62条の8第1項,4項及び5項に基づき,控訴人の①平成21年2月2日から同年3月31日までの事業年度,②同年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度,③同年4月1日から平成23年3月31日までの事業年度及び④同年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度に係る各法人税の確定申告に当たり,資産調整勘定の金額からそれぞれ所定の金額を減額し,損金の額に算入した。(2) これに対し,四谷税務署長は,控訴人が,本件分割の時点で本件譲渡1が見込まれていたものとして本件分割を非適格分割とし,これにより資産及び負債等の移転を受けたものとして資産調整勘定の金額を生じさせたことは,法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの。以下「施行令」という。)4条の2第6項1号(法2条12号の11イに規定する「政令で定める関係」を定めたもの)に規定する要件を形式的に満たさないこととすることにより本件分割を非適格分割とし,控訴人に資産調整勘定の金額を生じさせてこれを減額して損金の額に算入することを目的とした異常ないし変則的なものであり,これを容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるとして,法132条の2の規定に基づき,本件分割の時点で本件譲渡1が見込まれることなく,適格分割となる本件分割により控訴人が資産及び負債等の移転を受けたものとし,資産調整勘定の金額は生じなかったこととして,控訴人の所得金額を計算し,上記各事業年度の法人税につき更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下,「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。(3) 本件は,控訴人が,本件各更正処分等は法132条の2の否認の要件が満たされていなかったにもかかわらずされた違法なものであると主張して,四谷税務署長が所属する被控訴人を被告として,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の取消しを求めた事案である。
判示事項
1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義
2 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」の意義
3 適格分割に関する要件(法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)2条12号の11の規定に基づき定められた法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)4条の2第6項1号に規定する「当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれている場合」という要件)を形式的には充足せず非適格分割となるように計画された新設分割が同法132条の2にいう「その法人の行為(中略)で,これを容認した場合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当し,同条の規定に基づき否認することができるとされた事例
裁判要旨
1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,①同法132条と同様に,取引が経済的取引として不合理・不自然である場合のほか,②組織再編成に係る行為の一部が,組織再編成に係る個別規定の要件を形式的には充足し,当該行為を含む一連の組織再編成に係る税負担を減少させる効果を有するものの,当該効果を容認することが組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるものも含む。
2 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」とは,法人税につき更正又は決定を受ける法人の行為又は計算のほか,当該法人以外の法人であって同条各号に掲げられているものの行為又は計算も含む。
3 適格分割に関する要件(法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)2条12号の11の規定に基づき定められた法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)4条の2第6項1号に規定する「当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれている場合」という要件)を形式的には充足せず非適格分割となるように計画された新設分割であっても,一連の組織再編成の計画を全体としてみると,「移転資産に対する支配」が継続しているか否かの指標とされる「当事者間の完全支配関係」が一時的に切断されるが短期間のうちに復活することが予定されており,実質的にみて,分割会社による「移転資産に対する支配」が継続する内容の分割であると評価されること,分割の態様が,分割承継法人にとって,事業上の必要性よりも,企業グループ全体での租税回避の目的を優先したものであると評価されること,一連の組織再編成の計画において当該新設分割に引き続いて行われることが予定されていた行為(分割法人が保有する分割承継法人の発行済株式全部の譲渡)はその事業上の必要性が極めて希薄であったこと,一連の組織再編成に関与する法人において当該新設分割が非適格分割とは認められない可能性が相当程度あることを認識していたことなど判示の事情の下においては,同号による税負担減少効果を容認することは,上記各条項が設けられた趣旨・目的に反することが明らかであるから,当該新設分割は,同法132条の2にいう「その法人の行為(中略)で,これを容認した場合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当し,同条の規定に基づき否認することができる。
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