事件番号平成26(う)366
事件名傷害致死被告事件
裁判所名古屋高等裁判所 第2刑事務
裁判年月日平成27年4月16日
結果破棄差戻
原審裁判所名古屋地方裁判所
原審事件番号平成25(わ)2450
事案の概要被告人A及び同Bは,共謀の上,平成25年11月23日午前6時50分頃から同日午前7時10分頃までの間,名古屋市中区(以下省略)Dビルにおいて,E(当時39歳)に対し,同人の背後からその背部付近を蹴って階段の上から落下させて転倒させ,多数回にわたってその頭部顔面や胸腹部等を殴り,蹴り付けるなどの暴行を加え,被告人Cは,同日午前7時5分頃から同日午前7時15分頃までの間,同所において,前記Eに対し,床に倒れている同人の腹部を踏み付けるなどの暴行を加えた上,同日午前7時50分頃,同所において,同人に対し,その頭部顔面を多数回にわたって蹴り付けるなどの暴行を加え,よって,前記一連の暴行により,同人に急性硬膜下血腫等の傷害を負わせ,同月24日午前3時54分頃,同市南区(以下省略)F病院において,同人を前記急性硬膜下血腫による急性脳腫脹により死亡させたが,被告人A及び同B並びに同Cのいずれの暴行に基づく傷害により前記Eを死亡させたか知ることができないものである。
判示事項二つの暴行のいずれによって傷害が発生したか認めることができないのに,一方の暴行と死亡との因果関係が認められるから刑法207条を適用する前提が欠けると原判決が判断したのは,同条の解釈適用を誤っており,両暴行の機会の同一性に関する事実の誤認もあるとされた事例
裁判要旨1 同一の被害者に対し,被告人A及びBの共謀に基づく暴行(以下「第1暴行」という。)と,両名との共謀関係が認められない被告人Cによる,第1暴行と近接した場所における約40分後の暴行(以下「第2暴行」という。)が加えられ,そのいずれかの暴行ないしそれらが相まって被害者に急性硬膜下血腫が発生し,そのため被害者が死亡したが,第1暴行と第2暴行のいずれによって急性硬膜下血腫が生じたのか特定して認めることはできない事案において,第1暴行によって既に急性硬膜下血腫の傷害が発生していたとしても,第2暴行は,これを更に悪化させたと推認できるから,いずれにしても第2暴行は,被害者死亡の結果との間に因果関係が認められ,刑法207条を適用する前提が欠けることになるとする原判決の判断は,実際に発生した傷害との因果関係について検討しないで,直ちに死亡との因果関係を問題にしている点で,暴行と傷害との因果関係が不明であることを要件とする同条の規定内容に反すると考えられ,このように解した場合,急性硬膜下血腫の傷害の発生について,結局は誰も責任を問われないことになる結果となることを看過したものでもあるから,誤っているといわざるを得ない。
2 第1暴行と第2暴行との間に時間的場所的近接性があることを認めながら,被告人Cは,当時,第1暴行の発端となった被告人Aと被害者との間のトラブルを知らず,被告人Cが第2暴行のような激しい暴行に及ぶことを被告人A及びBが予期できたとは認められないなどの理由を挙げるだけで,両暴行の機会の同一性を否定した原判決の判断は,判文の事実関係にも照らすと,証拠の内容についての理解を誤り,あるいは,証拠から認められる事実関係が機会の同一性の判断に関してどのような位置付けを占めるのかという点に関する評価を誤った結果,論理則,経験則等に照らして不合理で,是認し難い判断に至ったものといわざるを得ない。
事件番号平成26(う)366
事件名傷害致死被告事件
裁判所名古屋高等裁判所 第2刑事務
裁判年月日平成27年4月16日
結果破棄差戻
原審裁判所名古屋地方裁判所
原審事件番号平成25(わ)2450
事案の概要
被告人A及び同Bは,共謀の上,平成25年11月23日午前6時50分頃から同日午前7時10分頃までの間,名古屋市中区(以下省略)Dビルにおいて,E(当時39歳)に対し,同人の背後からその背部付近を蹴って階段の上から落下させて転倒させ,多数回にわたってその頭部顔面や胸腹部等を殴り,蹴り付けるなどの暴行を加え,被告人Cは,同日午前7時5分頃から同日午前7時15分頃までの間,同所において,前記Eに対し,床に倒れている同人の腹部を踏み付けるなどの暴行を加えた上,同日午前7時50分頃,同所において,同人に対し,その頭部顔面を多数回にわたって蹴り付けるなどの暴行を加え,よって,前記一連の暴行により,同人に急性硬膜下血腫等の傷害を負わせ,同月24日午前3時54分頃,同市南区(以下省略)F病院において,同人を前記急性硬膜下血腫による急性脳腫脹により死亡させたが,被告人A及び同B並びに同Cのいずれの暴行に基づく傷害により前記Eを死亡させたか知ることができないものである。
判示事項
二つの暴行のいずれによって傷害が発生したか認めることができないのに,一方の暴行と死亡との因果関係が認められるから刑法207条を適用する前提が欠けると原判決が判断したのは,同条の解釈適用を誤っており,両暴行の機会の同一性に関する事実の誤認もあるとされた事例
裁判要旨
1 同一の被害者に対し,被告人A及びBの共謀に基づく暴行(以下「第1暴行」という。)と,両名との共謀関係が認められない被告人Cによる,第1暴行と近接した場所における約40分後の暴行(以下「第2暴行」という。)が加えられ,そのいずれかの暴行ないしそれらが相まって被害者に急性硬膜下血腫が発生し,そのため被害者が死亡したが,第1暴行と第2暴行のいずれによって急性硬膜下血腫が生じたのか特定して認めることはできない事案において,第1暴行によって既に急性硬膜下血腫の傷害が発生していたとしても,第2暴行は,これを更に悪化させたと推認できるから,いずれにしても第2暴行は,被害者死亡の結果との間に因果関係が認められ,刑法207条を適用する前提が欠けることになるとする原判決の判断は,実際に発生した傷害との因果関係について検討しないで,直ちに死亡との因果関係を問題にしている点で,暴行と傷害との因果関係が不明であることを要件とする同条の規定内容に反すると考えられ,このように解した場合,急性硬膜下血腫の傷害の発生について,結局は誰も責任を問われないことになる結果となることを看過したものでもあるから,誤っているといわざるを得ない。
2 第1暴行と第2暴行との間に時間的場所的近接性があることを認めながら,被告人Cは,当時,第1暴行の発端となった被告人Aと被害者との間のトラブルを知らず,被告人Cが第2暴行のような激しい暴行に及ぶことを被告人A及びBが予期できたとは認められないなどの理由を挙げるだけで,両暴行の機会の同一性を否定した原判決の判断は,判文の事実関係にも照らすと,証拠の内容についての理解を誤り,あるいは,証拠から認められる事実関係が機会の同一性の判断に関してどのような位置付けを占めるのかという点に関する評価を誤った結果,論理則,経験則等に照らして不合理で,是認し難い判断に至ったものといわざるを得ない。
このエントリーをはてなブックマークに追加