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2018/05/18 18:00 更新

事件番号平成28(ワ)24747
事件名検索結果削除請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成30年1月31日
原審結果棄却
事案の概要本件は,原告が,①被告が管理運営する日本向けグーグル検索サービスにおいて,「A」で検索すると,別紙検索結果目録記載1ないし242のURL等情報(表題,URL及び抜粋)(以下「本件検索結果」という。)が表示される,②本件検索結果は,原告ないし原告の代表取締役が原告の事業として詐欺商材を販売し,詐欺行為をしているとの事実を摘示している,③②の事実摘示は原告の社会的評価を低下させるものであり,名誉毀損が成立する,④したがって,被告は,本件検索結果を削除する義務を負う,と主張して,被告に対し,人格権に基づき,日本向けグーグル検索サービスにおいて,本件検索結果の削除を求める事件である。2 本件の前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)は,以下のとおりである。⑴ 原告は,インターネット上における広告業務及び広告代理業務等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。⑵ 被告は,インターネットで検索サイト「Google」(http://www.google.co.jp)を管理,運営する米国法人である(争いのない事実)。⑶ 被告の日本向け検索サービスとしてインターネットで提供する検索サイト(以下「本件サイト」という。)において,「A」で検索すると,本件検索結果が表示される。本件検索結果は,それぞれ,「タイトル」,「引用元」及び「スニペット」(3行程度のサイトの抜粋)で構成される(甲1の1及び2,争いのない事実)。⑷ 被告が本件サイトにおいて提供する検索サービスは,本件サイトの利用者が入力した任意の文字列に応じて,一定のアルゴリズムに従い自動的かつ機械的にインターネット上にある60兆個に及ぶウェブサイトから,関連性のあるリンクのリストを作成し,瞬時に検索結果として表示するサービスである(乙11,13の2,弁論の全趣旨)。⑸ 被告は,本件検索結果につき,削除権限を有している(争いのない事実)。⑹ 原告は,被告に対し,本件検索結果について削除を求める仮処分を申し立て(東京地裁平成27年(ヨ)第3224号,同第3709号事件),東京地方裁判所は,平成28年4月11日,本件検索結果の一部について,削除を命ずる仮処分を発令した(乙1から3(枝番を含む。),弁論の全趣旨)。3 本件の争点は,以下のとおりである。⑴ 本件検索結果による事実の摘示の有無(争点1)⑵ 本件検索結果による社会的評価の低下の有無(争点2)⑶ 違法性阻却事由の有無(争点3)⑷ 本件検索結果の削除請求の可否(争点4)第3 争点に関する当事者の主張1 争点1(本件検索結果による事実の摘示の有無)及び争点2(本件検索結果による社会的評価の低下の有無)について⑴ 原告の主張ア 同定可能性「A」は,原告の商号の重要な一部であり,「B」は,原告の代表取締役であり,「C」は,同人のニックネームであり,「Aアフィリエイトセンター」は,原告の事業の名称であり,「D」は,原告の商品である。これらの属性の幾つかを知る者には,本件検索結果が原告に関するものであると同定することは可能である。イ 事実の摘示まで(数字は別紙検索結果目録記載の番号を示す)は,本件検索結果のタイトル又はスニペットとして表示された単語の一部であり,これらの単語が並列していることにより,原告ないし原告の代表取締役が原告の事業として詐欺商材を販売し,詐欺行為をしているとの事実を摘示している。A 詐欺5,6,9,11,12,25,26,29,31,32,34,35,37,38,44,45,46,47,52,55,56,58,59,63,67,73,74,79,81,83,88,98,121,124,135,172,193,195,196,198,205,237A 詐欺師10,18,71,82,84A 詐欺商材1,7,21,28,30,33,41,42,48,51,54,64Aアフィリエイトセンター 詐欺8,14,15,19,27,36,49,53,61,66,80,90,91,92,93Aアフィリエイトセンター 詐欺商材4,22,23,24,77,85B 詐欺2,3,13,17,20,40,57,60,62,65,68,69,70,72,75,78,86,87,89,100,103,107,109,110,111,112,113,116,117,118,122,123,125,126,128,130,140,141,142,143,146,147,149,151,152,153,154,156,158,159,163,164,165,166,167,168,170,171,175,176,183,184,185,186,187,188,189,190,192,194,197,199,200,201,204,207,208,211,212,213,214,215,216,217,218,219,220,221,222,223,224,225,226,227,229,230,231,232,233,234,238,239,240,241B 詐欺師16,43,50,76,94,95,96,97,99,115,139,169,191,206,242B 騙された39,105,132,179,210,235C 詐欺101,102,106,119,120,127,134,136,137,138,144,145,150,161,174,177,180,209,228,236,C 詐欺師104,108,114,129,133,148,155,160,162,173,182C 騙された131,157,178,181D 詐欺202,203ウ 社会的評価の低下上記イの摘示事実によれば,原告が詐欺行為をしているとの印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させる。⑵ 被告の主張ア 原告は,「A」という単語が「詐欺」,「詐欺師」,「詐欺商材」,「アフィリエイトセンター 詐欺」又は「アフィリエイトセンター 詐欺商材」という単語,「B」又は「C」という単語が「詐欺」,「詐欺師」又は「騙された」という単語とそれぞれ並列されて表示されていることを問題にするが,いずれも,単に単語がぶつ切りに並べられているだけであり,一般人の通常の注意と読み方を基準として,これらの表示が,原告が詐欺を行ったり,詐欺商材を売っているとの事実を摘示するものであるとはいえない。イ 別紙検索結果目録記載1,3~7,9~16,18,19,21~25,28,29,31,33,34,36~49,51,52,54~58,61,62,64,65,67~73,75~77,79~83,85,88,91,92,95,99,101~108,110~115,119~123,125~127,129,131,133~146,148~171,173~194,196~217,228~242の検索結果には,「販売」という文字すら表示されておらず,原告が情報商材を販売していると読み取られる余地はない。ウ 本件検索結果のリンク先のウェブサイトは,情報商材をレビューしているものや,そのレビューサイトを引用するものが大半であり,原告が詐欺商材を販売していると断定するものではない。例えば,別紙検索結果目録記載1,31,53,58,65,90~94,160,162の検索結果は,「詐欺?」等と断定的な表現を避けており,原告が詐欺商材を販売しているとの事実を摘示するものではない。エ 上記アからウまでのとおり,原告が主張する事実の摘示があるとは認められず,社会的評価を低下させるものであるともいえない。2 争点3(違法性阻却事由の有無)について⑴ 被告の主張ア 情報商材とは,一般に広告宣伝どおりの効能が発揮されないという点では,詐欺まがいのものである点は真実であるから,「詐欺」の重要な部分については真実であるということができる。国民生活センターに原告についての相談事例が25件もあり,その内容は,①簡単に稼げると信じて実際には稼げなかった,②稼げなかった際に返金保証すると言われたのに返金に応じもらえなかった,③原告が提供する情報商材について24時間サポートの役務提供がなかった,④覚えのない情報商材の代金を支払わされたといったものであって,これらの相談事例からすれば,原告が取り扱う情報商材が詐欺又は詐欺まがいに該当することは真実である又は真実と信じるについて相当な理由がある。イ 上記のとおり,原告が取り扱う情報商材には,詐欺又は詐欺まがいのものが含まれているところ,こうした情報は,社会一般に広く共有して,新たな被害を防止するよう消費者に警鐘を鳴らす必要がある。これらの情報が削除されてしまえば,消費者は正しい情報にアクセスすることができずに,情報商材の購入に関する判断を誤ることになり,消費者被害が拡大することになるから,本件検索結果による摘示は公共の利害に関わるものであり,公益目的を有する。ウ 以上によれば,本件検索結果による表現には違法性阻却事由が認められる。⑵ 原告の主張ア 詐欺まがいが真実であるからといって,詐欺や詐欺師であることが真実ということにはならない。原告は,アフィリエイトサービスプロバイダ(以下「ASP」という。)であり,ウェブサイトで商品を販売したい第三者に代わってアフィリエイターの募集や広告宣伝をする事業を営んでおり,原告自身が詐欺的な情報商材を販売しているわけではない。原告が販売する商品である「D」及び「アルティメットD」並びに原告のASP事業である「Eアフィリエイトセンター」について国民生活センターへの相談はない。原告が販売する商品である「D」は,アフィリエイトの方法を教える教材であり,購入者をだます目的の商品ではない。国民生活センターの相談事例25件のうち,1件は,自動車販売のE株式会社に関するものであり,その余は,原告の商品ではなく,他社が販売する商品である可能性が高い。第三者が販売する商品が詐欺まがいであったとしても,ASPの詐欺やASPの社長が詐欺師ということにはならない。したがって,本件検索結果による摘示事実は真実ではない。イ 「真実と信じるにつき相当な理由」は,違法性阻却事由ではなく責任阻却事由であるから,削除請求権を否定する根拠とはならない。3 争点4(本件検索結果の削除請求の可否)について⑴ 原告の主張ア 公共の利害に関する事実でないか,若しくは専ら公益目的を図るものでないことが明らかか,又は摘示事実が重要部分において真実でない場合において,被害の軽微性,回復容易性をも総合的に考慮し,その結果,公表の利益に対し名誉権の優越が明らかな場合には,検索結果の削除請求が認められる。イ 本件検索結果において摘示された,原告が詐欺会社であるという事実及び原告代表者が詐欺師であるという事実は,重要部分において真実ではなく,原告の社会的評価を著しく低下させるから,上記各事実の摘示による被害の程度は重大である。また,原告や原告代表者の信用が確固たるものであるとはいえないし,本件検索結果を見た者に対し,原告が幾ら本件検索結果について嘘である旨を発信したとしても,容易に信用を回復することはできないし,本件検索結果を見て原告との取引を事前に中止した者について信用を回復することは不可能であるから,被害の回復は極めて困難である。そうすると,公表する利益に比して原告の名誉権の優越は明らかであるから,被告は,本件検索結果の削除義務を負う。⑵ 被告の主張ア 被告が管理しているのは,任意の文字列に応じて検索結果を表示するプログラムであり,被告は,インターネット上に存在するウェブサイトの内容については一切関知していない。イ 特定のウェブサイトの検索結果を検索サービスから削除すれば,当該ウェブサイトへの到達が不可能となるから,当該ウェブサイト上で行われた他の表現に関する表現の自由や当該ウェブサイトから情報を取得しようとする閲覧者の知る権利を著しく制約することになる。また,当該ウェブサイト上で行われた表現に関する表現者には当該ウェブサイトの検索結果の削除について一切の手続保障がされていないから,表現者に対する表現の自由の制約も大きい。ウ 検索エンジンは,インターネットの利用が不可欠となった現代社会において,言論の自由市場を形成するために不可欠なインフラであり,表現の自由及び知る権利の保護に貢献するという公益的な役割を果たしている。エ 原告は,権利侵害表現を行った表現者又はウェブサイトの運営,管理者に責任を追及するべきである。オ 以上の各事情からすれば,検索結果の削除請求が認められるためには,当該検索結果の表示が一見して明白な権利侵害を構成する場合に限られるというべきである。本件では,本件検索結果に一見して明白な権利侵害があるとはいえないから,原告の検索結果削除請求は棄却されるべきである。第4 当裁判所の判断1 争点1(本件検索結果による事実の摘示の有無)及び争点2(本件検索結果による社会的評価の低下の有無)について⑴ 本件検索結果は,いずれも,原告名ないしは原告の代表者名と,「詐欺」,「詐欺商材」,「詐欺師」,「騙された」といった単語が「タイトル」又は「スニペット」に含まれているところ,これらは,一般人の通常の注意と読み方として,①原告ないしは原告代表者が詐欺行為をしているという事実(以下「本件摘示事実①」という。),②原告ないしは原告代表者が詐欺行為をしている可能性があるという事実(以下「本件摘示事実②」という。)を摘示しているものとみるのが相当である。なお,原告代表者を表す「C」については,原告名で検索をするような一般人を基準とすれば,原告についての知識があることが推測されるから,Cが原告代表者を表していることは容易に理解できるというべきである。⑵ 被告は,検索結果の中には断定的な表現を避けているものがあると指摘する。しかし,別紙検索結果目録記載1,31,53,58,65,90~94,160,162の検索結果は,「詐欺」又は「詐欺師」といった単語の後に「?」が付いているものの,「タイトル」又は「スニペット」の内容と合わせ読んでも,本件摘示事実①を摘示しているとしか読めなかったり,本件摘示事実②を摘示しているとしか読めなかったりするのであり,原告の主張に係る事実が全く摘示されていないという訳ではない。⑶ そして,本件摘示事実①及び②は,その内容に照らし,原告の社会的評価を低下させるということができる。2 争点4(本件検索結果の削除請求の可否)について⑴ 最高裁昭和61年6月11日大法廷判決(民集40巻4号872頁参照。以下「最高裁昭和61年判決」という。)は,裁判所の行う出版物の頒布等の事前差止めにつき,「その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価,批判等の表現行為に関するものである場合には,そのこと自体から,一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ,前示のような憲法21条1項の趣旨… ( 略 ) …に照らし,その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると,当該表現行為に対する事前差止めは,原則として許されないものといわなければならない。ただ,右のような場合においても,その表現内容が真実でなく,又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて,かつ,被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは,当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ,有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから,かかる実体的要件を具備するときに限つて,例外的に事前差止めが許されるものというべきであり,このように解しても上来説示にかかる憲法の趣旨に反するものとはいえない。」と判示する。⑵ 最高裁昭和61年判決は,公共の利害に関する事項について差止めの可否を判断した事案である。

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