事件番号平成27(行コ)19
事件名原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件,同附帯控訴事件
裁判所広島高等裁判所 第4部
裁判年月日平成30年2月9日
結果棄却
原審裁判所広島地方裁判所
原審事件番号平成23(行ウ)2
事案の概要本件は,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)1条に定める被爆者である第1審原告X1ほか3名が,それぞれ同法11条1項の規定による認定(以下「原爆症認定」という。)の申請(以下「本件各申請」という。)をしたところ,厚生労働大臣から本件各申請を却下する旨の処分(以下「本件各却下処分」という。)を受けたため,第1審被告に対し,その取消しを求めるとともに,本件各却下処分により精神的苦痛を受けたとして,国家賠償法1条1項に基づき,それぞれ慰謝料200万円及び弁護士費用100万円並びにこれらに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日(平成23年3月1日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
判示事項の要旨被爆者援護法11条1項の規定による原爆症認定申請を却下する旨の処分に対して,その取消しと国家賠償を求めた事案であり,争点は,①原爆症認定における放射線起因性の判断基準,②原爆症認定要件該当性,③本件各却下処分についての国家賠償責任であるところ,争点①について,当該被爆者の放射線への被曝の程度と,統計学的・疫学的知見等に基づく申請疾病等と放射線被曝との関連性の有無及び程度とを中心的な考慮要素としつつ,これに当該疾病等の具体的症状やその症状の推移,その他疾病に係る病歴,当該疾病等に係る他の原因の有無及び程度等を総合的に考慮して,原子爆弾の放射線への被曝の事実が当該申請に係る疾病若しくは負傷又は治癒能力の低下を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性が認められるか否かを経験則に照らして判断するのが相当であると判示し,争点②について,控訴人X1は,放射線被曝の影響との関係を,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得る程度の高度の蓋然性があると認めることは困難であるため,白内障の放射線起因性が認められないとし,控訴人X2は,放射線の影響によって発症した面があるとする合理性,高度の蓋然性があるため,白内障の放射線起因性が認められ,控訴人X2に対する医師による定期的な経過観察は,白内障の治療のためには,悪化の状況に応じて的確に積極的な治療行為を行うために必要不可欠な行為であり,要医療性があると認められると判示し,争点③について,控訴人X1の却下処分は,原爆症の認定要件の判断に誤りはなく,国家賠償法1条における違法とも認められない,控訴人X2の却下処分は,放射線起因性に対する判断を誤ってされた違法なものであるが,同処分は,厚生労働大臣が疾病・障害認定審査会の意見を聴いた上で,その意見に従ってされたものであり,その意見が関係資料に照らして明らかに誤りであるなど,答申された意見を尊重すべきではない特段の事情が存在したとは認めるに足りる証拠はないから,国家賠償法1条における違法とは認められないと判示した。
事件番号平成27(行コ)19
事件名原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件,同附帯控訴事件
裁判所広島高等裁判所 第4部
裁判年月日平成30年2月9日
結果棄却
原審裁判所広島地方裁判所
原審事件番号平成23(行ウ)2
事案の概要
本件は,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)1条に定める被爆者である第1審原告X1ほか3名が,それぞれ同法11条1項の規定による認定(以下「原爆症認定」という。)の申請(以下「本件各申請」という。)をしたところ,厚生労働大臣から本件各申請を却下する旨の処分(以下「本件各却下処分」という。)を受けたため,第1審被告に対し,その取消しを求めるとともに,本件各却下処分により精神的苦痛を受けたとして,国家賠償法1条1項に基づき,それぞれ慰謝料200万円及び弁護士費用100万円並びにこれらに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日(平成23年3月1日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
判示事項の要旨
被爆者援護法11条1項の規定による原爆症認定申請を却下する旨の処分に対して,その取消しと国家賠償を求めた事案であり,争点は,①原爆症認定における放射線起因性の判断基準,②原爆症認定要件該当性,③本件各却下処分についての国家賠償責任であるところ,争点①について,当該被爆者の放射線への被曝の程度と,統計学的・疫学的知見等に基づく申請疾病等と放射線被曝との関連性の有無及び程度とを中心的な考慮要素としつつ,これに当該疾病等の具体的症状やその症状の推移,その他疾病に係る病歴,当該疾病等に係る他の原因の有無及び程度等を総合的に考慮して,原子爆弾の放射線への被曝の事実が当該申請に係る疾病若しくは負傷又は治癒能力の低下を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性が認められるか否かを経験則に照らして判断するのが相当であると判示し,争点②について,控訴人X1は,放射線被曝の影響との関係を,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得る程度の高度の蓋然性があると認めることは困難であるため,白内障の放射線起因性が認められないとし,控訴人X2は,放射線の影響によって発症した面があるとする合理性,高度の蓋然性があるため,白内障の放射線起因性が認められ,控訴人X2に対する医師による定期的な経過観察は,白内障の治療のためには,悪化の状況に応じて的確に積極的な治療行為を行うために必要不可欠な行為であり,要医療性があると認められると判示し,争点③について,控訴人X1の却下処分は,原爆症の認定要件の判断に誤りはなく,国家賠償法1条における違法とも認められない,控訴人X2の却下処分は,放射線起因性に対する判断を誤ってされた違法なものであるが,同処分は,厚生労働大臣が疾病・障害認定審査会の意見を聴いた上で,その意見に従ってされたものであり,その意見が関係資料に照らして明らかに誤りであるなど,答申された意見を尊重すべきではない特段の事情が存在したとは認めるに足りる証拠はないから,国家賠償法1条における違法とは認められないと判示した。
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