事件番号平成28(ネ)987
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第4民事部
裁判年月日平成30年8月31日
結果その他
原審裁判所京都地方裁判所
原審事件番号平成23(ワ)1956
原審結果その他
事案の概要本件は,一審原告らが,自身又はその被相続人が建築作業に従事した際,石綿含有建材から発生した石綿粉じんに曝露したことにより,石綿関連疾患(石綿肺,肺がん,中皮腫,びまん性胸膜肥厚の各疾患)に罹患したこと(以下,この一審原告ら自身又はその被相続人を「被災者」という。)を前提として,一審被告国に対しては,一審被告国において,①旧労基法及び安衛法(労災保険法を含む。),②建基法2条7号ないし9号及び90条に基づいて建築作業従事者の石綿粉じん曝露による石綿関連疾患罹患を防止するための規制権限又は監督権限(以下「規制権限等」という。)を行使しなかったことが違法であると主張して,国賠法1条1項に基づき,また,一審被告企業らに対しては,一審被告企業らにおいて,被災者らが建築現場で建築作業に従事する際に石綿粉じんに曝露する相当程度以上の危険性のある石綿含有建材(一審原告らは,これを「直接曝露建材」と称する。)を製造・販売したと主張して,民法719条前段又は後段の適用若しくは類推適用(一審原告G及び同R以外の一審原告らの関係),あるいは同法709条(一審原告G及び同Rの関係)に基づき,連帯して,被災者ごとに損害賠償金3850万円(一審原告らが被災者の相続人である場合には,各自の相続分に相当する額。ただし,後記のとおり,一審原告C,同K,同R,同S及び同Uは,被災者の相続人が複数人であるが,単独で全額を請求している。)の損害賠償金及びこれに対する不法行為の後で訴状送達日の翌日である本判決別紙4「遅延損害金起算日一覧表」記載の各日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
判示事項の要旨1 建築作業従事者であった者又はその相続人である一審原告らの一審被告国に対する,一審被告国の旧労基法及び安衛法並びに建基法に基づく規制権限不行使を理由とする国賠法1条1項に基づく損害賠償請求について
(1) ①石綿吹付作業の関係では,昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までにつき,(ア)石綿吹付作業者に対する送気マスクの着用義務付け,(イ)建材メーカーに対する警告表示の義務付け及び(ウ)事業者に対する警告表示(掲示)の義務付けに係る規制権限不行使の違法性が認められ(ただし,石綿吹付作業による間接曝露(周辺作業者や後続作業者)の関係では,集じん機付き電動工具の使用義務付けを除き,②の場合と同様である。),②建設屋内での石綿切断等作業の関係では,昭和49年1月1日から平成16年9月30日までにつき,(ア)防じんマスクの着用義務付け及び集じん機付き電動工具の使用義務付け(ただし,防じんマスクの着用義務付けのみの関係では,違法時期は平成7年の特化則改正までである。),(イ)建材メーカーに対する警告表示の義務付け及び(ウ)事業者に対する警告表示(掲示)の義務付けに係る規制権限不行使の違法性が認められ,③屋外での石綿切断等作業の関係では,平成14年1月1日から平成16年9月30日までにつき,(ア)集じん機付き電動工具の使用義務付け,(イ)建材メーカーに対する警告表示の義務付け及び(ウ)事業者に対する警告表示(掲示)の義務付けに係る規制権限不行使の違法性が認められる。
(2) 一人親方等(いわゆる一人親方及び個人事業主)の就労実態や,労働安全衛生法令及びその立法経過からみると,労働者以外の者が享受する利益は,労働者が一審被告国の規制権限行使により享受する利益に伴う反射的利益(事実上の利益)にすぎないとはいえず,国賠法1条1項の適用上,法律上保護される利益に当たると解するのが相当であり,一審被告国の規制権限不行使が著しく合理性を欠く場合には,労働者ばかりではなく,一人親方等との関係でも,同条項の適用上,違法との評価を免れない。
2 建築作業従事者であった者又はその相続人である一審原告らの建材メーカーである一審被告企業らに対する,民法719条1項前段又は後段の適用若しくは類推適用並びに同法709条に基づく損害賠償請求について
(1) 一審被告企業らは,自らの製造・販売する石綿含有吹付材について,吹付工との関係で昭和47年1月1日から,建設屋内での石綿粉じん作業において使用される石綿含有建材について,同作業に従事する建築作業従事者との関係で昭和49年1月1日から,屋外での石綿切断等作業において使用される石綿含有建材について,同作業に従事する建築作業従事者との関係で平成14年1月1日から,各石綿含有建材の販売終了時まで,当該建材について適切な警告表示をすべき義務があったから,一審被告企業らに警告表示義務違反が認められる。
(2) 一審被告企業らによる石綿含有建材の製造・販売行為が加害行為に当たるというためには,それが被災者らに対する具体的危険性を有するものである必要があり,そのためには,一審被告企業らの製造・販売した石綿含有建材が,被災者らの就労した建築現場に現実に到達したことまでは必要でないが,少なくとも,被災者らの就労した建築現場に到達した(その結果,被災者らが当該建材に由来する石綿粉じんに曝露した)相当程度以上の可能性が必要であると解するのが相当である。そして,特定の企業の製造・販売した石綿含有建材が,特定の被災者が就労する建築現場に到達した相当程度以上の可能性があることが立証され,そのような立証がされた複数の企業の製造・販売した石綿含有建材に由来する石綿粉じんが共同して当該被災者に石綿関連疾患を発症させたと認められる場合には,その複数の企業は,当該被災者に対し,民法719条1項後段の類推適用により,共同不法行為責任を負う。この場合,一審原告らにおいて,他に原因者が存在しないことの主張・立証は不要である。
(判決主文で引用されている別紙3を別紙1として添付した。)