事件番号平成30(ネ)1406
事件名未払賃金等支払請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第14民事部
裁判年月日平成30年12月21日
原審裁判所大津地方裁判所 彦根支部
原審事件番号平成27(ワ)163
事案の概要本件は,一般貨物自動車運送事業等を営む被控訴人との間で,期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して被控訴人においてトラック運転手(配車ドライバー)として勤務した控訴人が,被控訴人と期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結して20いる労働者(正社員)と控訴人との間で,無事故手当,作業手当,給食手当,住宅手当,皆勤手当,通勤手当,家族手当,賞与,定期昇給及び退職金(以下「本件賃金等」という。)に相違があることは労働契約法20条(労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号。平成25年4月1日施行)2条による改正後のもの。以下同じ。)に違反しているなどと主張し25て,被控訴人に対し,ア 労働契約に基づき,控訴人が被控訴人に対し,本件賃金等に関し,正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認を求め,主位的に,被控訴人が控訴人の手取賃金として最低でも月額30万円を支払う旨約したにもかかわらず,平成23年11月10日から同25年9月10日まで,これを下回る手取賃金額しか支払わなかったとして,5労働契約に基づき,上記30万円との差額68万2578円の未払賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,予備的に,仮に上記約定が認められないとしても,手取賃金として最低でも月額30万円が支払われるものと期待させるなどした被控訴人の行為が不法行為を構成し,これにより,控訴人が上記 の差額分相当の10損害を被ったと主張して,不法行為に基づき,同額の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,ウ 主位的に,控訴人が本件賃金等に関し正社員と同一の権利を有することを前提に,労働契約に基づき,平成21年10月1日から同25年8月31日までの間に正社員に支給された無事故手当,作業手当,給食手15当,住宅手当,皆勤手当及び通勤手当(以下「本件諸手当」という。)と,同期間に控訴人に支給された本件諸手当との差額及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,予備的に,不法行為に基づき,同額の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた20事案である。
判示事項の要旨1 皆勤手当の趣旨を踏まえると,乗務員(トラック運転手)の主な業務において,契約社員(有期契約労働者)と正社員(無期契約労働者)との間で業務及び同業務に伴う責任の程度において異なるところはないことなどから,契約社員と正社員の皆勤手当の支給における相違は,労働契約法20条に定める考慮要素に照らし不合理と認められるものに当たるから,被控訴人は,民法709条に基づき,平成25年4月1日から平成27年11月30日までの32か月にわたって契約社員である控訴人に皆勤手当(月額1万円)を支給しなかったことにより,控訴人に生じた損害32万円を賠償すべき責任を負うとされた事例
2 契約社員について,遅刻及び当日欠勤のないことを考慮して翌年の時給の増額がなされ得る評価制度がとられているとしても,これよる時給増額がわずかの金額であるなど判示の事情の下においては,同制度をもって契約社員に皆勤手当を支給しないことの合理的な代償措置と位置付けることはできないとされた事例
3 正社員について,不出勤をしても事後に年次有給休暇取得の届出をすれば皆勤手当の支給要件を充たすものとする取扱いがされている場合,契約社員についても同様に皆勤手当の支給がされ得たものとして上記損害を認定すべきとされた事例
4 上記2の評価制度の下では,時給の増額分を損害から控除することはできないとされた事例
事件番号平成30(ネ)1406
事件名未払賃金等支払請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第14民事部
裁判年月日平成30年12月21日
原審裁判所大津地方裁判所 彦根支部
原審事件番号平成27(ワ)163
事案の概要
本件は,一般貨物自動車運送事業等を営む被控訴人との間で,期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して被控訴人においてトラック運転手(配車ドライバー)として勤務した控訴人が,被控訴人と期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結して20いる労働者(正社員)と控訴人との間で,無事故手当,作業手当,給食手当,住宅手当,皆勤手当,通勤手当,家族手当,賞与,定期昇給及び退職金(以下「本件賃金等」という。)に相違があることは労働契約法20条(労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号。平成25年4月1日施行)2条による改正後のもの。以下同じ。)に違反しているなどと主張し25て,被控訴人に対し,ア 労働契約に基づき,控訴人が被控訴人に対し,本件賃金等に関し,正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認を求め,主位的に,被控訴人が控訴人の手取賃金として最低でも月額30万円を支払う旨約したにもかかわらず,平成23年11月10日から同25年9月10日まで,これを下回る手取賃金額しか支払わなかったとして,5労働契約に基づき,上記30万円との差額68万2578円の未払賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,予備的に,仮に上記約定が認められないとしても,手取賃金として最低でも月額30万円が支払われるものと期待させるなどした被控訴人の行為が不法行為を構成し,これにより,控訴人が上記 の差額分相当の10損害を被ったと主張して,不法行為に基づき,同額の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,ウ 主位的に,控訴人が本件賃金等に関し正社員と同一の権利を有することを前提に,労働契約に基づき,平成21年10月1日から同25年8月31日までの間に正社員に支給された無事故手当,作業手当,給食手15当,住宅手当,皆勤手当及び通勤手当(以下「本件諸手当」という。)と,同期間に控訴人に支給された本件諸手当との差額及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,予備的に,不法行為に基づき,同額の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた20事案である。
判示事項の要旨
1 皆勤手当の趣旨を踏まえると,乗務員(トラック運転手)の主な業務において,契約社員(有期契約労働者)と正社員(無期契約労働者)との間で業務及び同業務に伴う責任の程度において異なるところはないことなどから,契約社員と正社員の皆勤手当の支給における相違は,労働契約法20条に定める考慮要素に照らし不合理と認められるものに当たるから,被控訴人は,民法709条に基づき,平成25年4月1日から平成27年11月30日までの32か月にわたって契約社員である控訴人に皆勤手当(月額1万円)を支給しなかったことにより,控訴人に生じた損害32万円を賠償すべき責任を負うとされた事例
2 契約社員について,遅刻及び当日欠勤のないことを考慮して翌年の時給の増額がなされ得る評価制度がとられているとしても,これよる時給増額がわずかの金額であるなど判示の事情の下においては,同制度をもって契約社員に皆勤手当を支給しないことの合理的な代償措置と位置付けることはできないとされた事例
3 正社員について,不出勤をしても事後に年次有給休暇取得の届出をすれば皆勤手当の支給要件を充たすものとする取扱いがされている場合,契約社員についても同様に皆勤手当の支給がされ得たものとして上記損害を認定すべきとされた事例
4 上記2の評価制度の下では,時給の増額分を損害から控除することはできないとされた事例
このエントリーをはてなブックマークに追加