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事件番号/事件名裁判年月日/裁判所判決書
[最高裁] [刑事] 令和2(し)78  124ViewsMoreinfo
検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
令和2(し)78
申立人の記名のみがあり署名押印がいずれもない申立書による特別抗告の申立てが無効とされた事例
判示事項
令和2年3月23日
最高裁判所第三小法廷
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[下級] [刑事] 平成30(う)337  79ViewsMoreinfo
業務上横領,殺人
平成30(う)337
本件各控訴の趣意及び各答弁弁護人の控訴の趣意は主任弁護人松井仁,弁護人黒原智宏共同作成の控訴趣意書に,これに対する答弁は検察官森真己子作成の弁論要旨(第2)に,検察官の控訴の趣意は検察官奥野博作成の控訴趣意書に,これに対する答弁は主任弁護人松井仁,弁護人黒原智宏共同作成の答弁書にそれぞれ記載されたとおりであるから,これらを引用する。弁護人の論旨は,原判示第1の殺人についての事実誤認の主張であり,検察官の論旨は,原判決が被告人を無期懲役に処したことについての量刑不当の主張である。第2 弁護人の原判示第1の殺人に関する事実誤認の主張について論旨は,被告人は,原判示第1の殺人の被害者両名を殺害した犯人ではないから,被告人を犯人である旨認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある,というのである。そこで記録を調査し,当審における事実取調べの結果及び当審弁護人作成の弁論要旨も併せて検討する。1 原判決の要旨原判決が認定した殺人の罪となるべき事実の要旨は,次のとおりである。すなわち,被告人は,以前に金銭を借り入れていた被害男性(当時76歳)から,その返済等を執拗に請求され,被告人が経営していたA社の残土処分場での不法投棄を告発するなどと脅されたため,このままでは事業が継続できなくなるなどと考え,被害男性及び同人に同行してくる被害女性(当時48歳)を殺害しようと決意した。そこで,被告人は,平成26年8月15日午後3時頃から同日午後6時15分頃までの間,佐賀市 a 町大字 b 字 c の同社の敷地で,被害者両名が乗った軽自動車のルーフに,自ら運転する油圧ショベルのスケルトンバケットを振り落とし,そのスケルトンバケットとキャタピラーで同車を挟み込み,同車を穴へと引きずった後,同車を深さ約5mの穴に落とし,その上から油圧ショベルで土砂をかけるなどして埋め,被害者両名を窒息等により死亡させて殺害した,というものである。そして,被告人を犯人と認めた原判決の補足説明の要旨は,次のように理解することができる。遺体の状況等からの殺害態様の推認被害女性の遺体は,現場敷地内の穴の地下約5m付近にルーフを下にして埋められていた軽自動車のドアロックされた運転席から,シートベルトを着用していた状態で発見され,被害男性の遺体も軽自動車の近くに埋められていた。そして,被害者両名の遺体の状況,軽自動車のルーフや運転席ドア等の損傷状況からすると,犯人は,A社にあった油圧ショベルの1台を操作し,被害者両名が乗車して停車していた軽自動車の運転席ドア等に油圧ショベルに装着されたスケルトンバケットを振り下ろして攻撃したほか,その爪で運転席ドア等を突き刺した上でスケルトンバケットとキャタピラーで軽自動車を挟み込んで穴の方向に引きずり,深さ約5mの穴に落としたと認めることができる。なお,被害男性がどのようにして車外に出たのかは不明であるが,いずれにしろ,犯人は,油圧ショベルで土砂をかけるなどして軽自動車と被害男性を埋めたと認めることができる。このような加害行為が,被害者両名を死亡させる危険性の高い行為であることは明らかであるから,犯人に被害者両名を殺害する目的があったことは間違いないが,医学的に被害者両名の死因及び死亡時期を確定することはできない。したがって,犯人が被害者両名を生き埋めにして殺害したとまでは認定できないが,上記のような殺害行為によって被害者両名が死亡したことは明らかであり,殺害行為の内容を踏まえると,死因によって刑の軽重に差はないから,死因を精密に特定して認定する必要はない。犯行の日時場所等からの犯人性の推認犯行現場は,被告人が経営していたA社の事務所の敷地であり,その事務所の鍵は従業員らが管理し,上記油圧ショベルの1本しかない鍵は事務所内に保管されていた。そうすると,A社に関係のない者が,敷地内に入り込んで犯行を準備し,実行したとは考え難く,犯人が自分の領域を犯行場所に選んだと考えると,犯人は,A社の幹部であると推認できる。被告人は,A社の経営者として犯行場所を管理する責任者であり,その敷地内で自由に穴を掘り,自由に重機を使用し,自由に埋める場所を利用することができるから,そのような犯人像にきれいに当てはまる。また,被告人は,A社の事務所の鍵を所持し,重機の運転も上手であり,被害者両名が以前に現場を訪れた際と同じような場所に車を停めることを予想し,その付近に置いた油圧ショベルに乗り込んで待ち伏せた上で,到着してすぐの被害者両名を車ごと攻撃することも容易であった。このような事情は,被告人の犯人性を一定程度まで推認させる。ところで,被害者両名は,犯行日と認められる平成26年8月15日の午後3時にA社の事務所に呼び出され,同日午後1時半に被害者両名が乗車した軽自動車が最寄りの高速道路出口を通過し,油圧ショベルが同日午後3時頃から午後6時15分頃まで稼働していたことからすると,犯行は同日午後3時頃から午後6時15分頃までの間に行われたと推認できる。そして,当日A社はお盆休みで休業し,被告人以外の従業員は誰も出勤していないが,被告人の携帯電話の接続基地局の記録によると,被告人は,犯行時間帯に犯行場所近くにいたと認められる。そうすると,A社の関係者の中では,被告人だけが犯行を行うことが可能であり,かつ,容易であったということができ,これらの事情は,被告人の犯人性を更に強く推認させる。犯行前の被告人の行動からの犯人性の推認被害男性のペン型ボイスレコーダーに録音されていたデータ等によれば,同月8日に被害者両名を犯行時刻頃にA社の事務所に呼び出したのは,被告人であると認められるが,この事実のみから直ちに被告人を犯人と認めることはできない。しかし,被告人は,その際,被害者両名に対し,1200万円を返済できると嘘を言って,わざわざ被告人以外に誰もいない時期に呼び出している。また,被告人は,同月12日には従業員に油圧ショベルの先端をスケルトンバケットに取り替えさせて現場敷地に移動させ,翌13日には別の従業員に被害者両名が埋められていた現場敷地の穴を掘らせ,その穴に取引先が持ってくる廃棄物を埋めると説明したのに,同月18日には取引先が廃棄物を持ってこなかったと発言している。このような被告人の言動は,被害者両名を犯行時刻頃に犯行現場に確実に呼び寄せ,犯行を準備したものとみることができ,被告人の犯人性を強く推認させる。犯行後の被告人の行動からの犯人性の推認被告人は,同月17日に油圧ショベルを犯行現場から別の場所に移動させ,同月18日以降に埋めた穴付近を整地し,同月21日以降に従業員に取引先の残土を犯行現場に運ばせて埋めた穴付近に積ませ,同月23日に油圧ショベルのスケルトンバケットを取り替えさせている。このように,犯行の2日後に油圧ショベルを移動させ,その後にスケルトンバケットを取り替えさせたのは,凶器をできるだけ現場から遠ざけようとしたと考えるのが自然である。また,穴の上を整地して残土を置いたのは,穴があったことを分からなくなるようにした上で掘り返されることを防ぐためにしたと考えるのが自然である。したがって,これらの被告人の行動は,犯行の隠ぺい工作とみることができ,被告人の犯人性を強く推認させる。動機について被害男性は,当時,被告人に対し,多額の金銭の返済等を何度も執拗に迫り,その際にA社が不法投棄していたことを告発することをちらつかせて脅し,その土地を3000万円という法外な金額で買い取るように求めていた。被告人は,同年6月に被害男性に200万円を返済したが,その後,十分な資金を準備できずに追い込まれていた。このような状況からすると,被告人が,被害男性から不法投棄を通報されるなどしてA社の事業が継続できなくなることを恐れ,被害男性の殺害を決意したとしても不思議ではない。また,被害女性は,同年8月までに何度も被害男性と一緒にA社の事務所を訪れて事情を知っていたから,被害男性と一緒に殺害するしかないと考えたとしても不思議ではない。被告人には,被害者両名を殺害する十分な動機があったということができる。総合評価被告人に,上記のような犯人性を強く推認させる複数の事情が存在することは,被告人以外の者が犯人であったならば合理的に説明することができない。したがって,被告人が犯人であることは,合理的疑いを容れない程度に立証されているということができる。2 原判決の認定,判断に対する当裁判所の判断原判決が,犯行態様を した上で,上記情を総合して被告人を犯人であると認定した点に論理則,経験則等に違反する点は見当たらない。以下所論に鑑み,補足して説明する。原判決が指摘する事情は被告人の犯人性を推認させるものではないという所論について所論は,原判決が犯行の準備として指摘するものは,いずれもA社の通常の業務として行われたものにすぎない,といい,被告人も,当審公判において,これに沿う供述をする。すなわち,被告人は,産業廃棄物業者のBから,お盆休み中に産業廃棄物を持って来ると連絡を受けたので,平成26年8月12日に従業員に指示して油圧ショベルをA社の事務所前に移動させ,翌13日に本件現場に穴を掘らせ,同月15日の夕方に現場を訪れたところ,穴が埋まっていたのでBが産業廃棄物を持ち込んだと思った。Bは,同年9月に産業廃棄物を持ち込んだ代金を持ってきた,というのである。しかし,Bは,当審公判において,お盆休みに現場に産業廃棄物を持ち込んだことはないと明確に供述し,その供述に不自然,不合理な点はうかがえない。この点,所論は,上記のBの当審供述について,①日記や手控えといった客観的証拠による裏付がなく,絶対にお盆に残土を持ち込んでいないとはいえないと供述するなど記憶の確度も低い,②廃棄物処理法違反罪による摘発をしない代わりに捜査機関の意図を汲んだ供述をする合意に基づき供述した可能性がある,③被告人が平成26年のお盆直前に毎日のようにBに電話し,相互に頻繁に残土等の持ち込みに関する通話をしていたことからすれば,お盆の時期に残土を持ち込む依頼をしていたと考えるのが自然である,という。しかし,①の点については,そのようなささいな点をもって,犯行当時に現場敷地に残土を持ち込んだ覚えがない旨のBの当審供述の信用性を動揺させることはできない。また,②の点については,そのような可能性を具体的に示す事情は全く見当たらないし,③の点については,通話の時期から直ちに持ち込んだ時期が決まるものではないから,それらの点が,Bの上記当審供述の信用性に影響を与えることはない。なお,被告人の当審供述によれば,Bが犯人である疑いが生じるが,そもそもBには被害者両名と接点が全くなく,Bが殺人の犯行に関与したことをうかがわせる証拠も全く見当たらない。そうすると,Bが当日現場敷地に産業廃棄物を持ち込んだ旨の被告人の当審供述は信用できないから,被告人が従業員に命じて油圧ショベルを移動させたり現場に穴を掘らせたりしたことは,原判決が指摘するとおり,A社の通常業務ではなく,殺人の犯行準備であるとみるのが自然である。所論は,原判決が犯行の隠ぺい工作として指摘するものは,いずれもA社の通常の業務として行われたものにすぎない,という。すなわち,油圧ショベルは,もともとあった場所に戻したにすぎず,埋めた穴付近を整地したのは,雨で荒れた現場付近を整地したにすぎず,取引先の残土を埋めた穴の付近に積ませたのは,引き取りに来る他の業者がすぐに作業ができるようにしただけである,というのである。しかし,関係証拠によれば,被害者両名が埋められていた穴の上にはスケルトンバケットによる痕跡があり,A社の事務所付近のアスファルト舗装部分には油圧ショベルで被害者両名が乗車する軽自動車を引きずった際に削られてできたと考えられる痕跡があったというのであるから,犯人からすれば,それらの痕跡を隠ぺいする必要があったということができる。そうすると,油圧ショベルの移動はともかく,被告人が,犯行から短期間のうちに自ら穴付近を油圧ショベルでならし,従業員に命じてその付近一帯に残土を積み上げさせたことは,A社の通常業務というより,原判決が指摘するとおり,犯行の隠ぺい行為とみるのが自然である。被告人を犯人と認定することには合理的疑いがあるという所論について所論は,仮に被告人が真犯人であれば,被害男性を殺害する場所に,いつ第三者が訪れるかもしれないA社の事務所周辺を選ぶはずがなく,上記の犯行の準備や隠ぺいを従業員に命じて行うはずもない,という。しかし,お盆休み中のA社の事務所付近で殺害すれば,他人に犯行を目撃されるおそれは低いから,前記の犯行前に被告人が従業員に命じて現場に穴を掘らせるなどした行動は,A社の通常の業務を装ったものとみることができる。所論指摘の点は,いずれも,被告人が真犯人であっても何ら不自然,不合理ではない。被告人以外に真犯人がいる合理的疑いがあるという所論について所論は,1人で重機に乗って被害者両名が乗車する軽自動車を待ち構えて攻撃するという犯行は極めて成功率が低いと考えられることに加えて,被害男性については,軽自動車の外で,油圧ショベルのスケルトンバケット以外の外力を用いて肋骨多発骨折により殺害された後に埋められたとみるのが合理的である一方で,被害女性については,軽自動車の運転席に座っているところを重機で攻撃されたことにより死亡したとはいい切れないことからすると,本件殺人は,被告人とは無関係の複数人によって行われたと考えるのが自然である,という。しかし,被害者両名の死因が不明であるからといって,直ちに被害者両名が殺害後に埋められたという合理的疑いが生じるとはいえない。また,被告人の重機の運転技能が高いことがうかがわれること,被告人にとって事務所を訪れたことがある被害者両名の行動は予測可能であったと考えられることに加えて,当日の降雨の影響にも照らすと,被告人が1人で重機を運転して軽自動車を攻撃することが極めて困難であったとは限らない。したがって,所論指摘の点から,殺人が複数人によって行われたとみるのが自然であるとはいえず,その他記録を検討しても,本件殺人に複数人が関与していた合理的疑いが生じるとはいえない。所論は,被害男性は,多くの者に高額の融資をしていたから,被告人以外の者からも恨みを買っていた可能性があり,その中に,被害男性が当日被告人からまとまった金を回収するという情報を得て被害男性の殺害を決意した真犯人がいる合理的疑いがあるとか,当日,現場入口にはチェーンがかけられておらず,油圧ショベルのキーも差し込まれたままであったから,被告人以外の者による犯行も可能であった,などという。しかし,原判決が指摘するとおり,被告人が,犯行時間帯に犯行場所近くにいたと認められる一方で,被告人以外に殺人の実行犯がいることをうかがわせる証拠は全く見当たらない。所論は,抽象的可能性を主張するものにすぎない。被告人には被害者両名を殺害する動機がないという所論について所論は,被告人は,①平成26年8月11日にCから1000万円の融資について承諾を得ていた上,②同年9月にはA社の産業廃棄物処分用地を太陽光発電用地として売却することによって約1270万円を得る予定であったほか,③A社の売上もあったから,借金返済に窮して被害男性を殺害する動機はない,という。しかし,①に関する被告人の当審供述によれば,被告人が被害男性に犯行当日に支払うことを約束した金額は1200万円であるから,Cにそれに足りない金額の融資を申し込んだというのはいかにも不自然であり,支払期日の前日に被告人からCに融資を受けることを撤回する旨連絡したというのも唐突である上,被告人方の固定電話の通話料金明細内訳書(当審検甲15)に記録がないという点で不合理である。なお,通話記録の点について,弁護人は,被告人とCのどちらからの電話であったかという,ささいな記憶違いにすぎない,というが,被告人は,当審公判において,自宅の固定電話からCの携帯電話にかけたと明確に供述しているから,ささいな記憶違いとみることはできない。したがって,この点に関する被告人の当審供述は疑わしいといわざるを得ない。次に,②の点に関する被告人の当審供述は,被告人はその売買によって288万円を得ることになっていたにすぎない旨のDの原審供述と反するものであり,Dの供述が,同人の日記や契約書,Eの原審供述によって裏付けられているとみることができることからすると,疑わしいといわざるを得ない。さらに,③A社の売上については,所論は,被告人の子であり,平成27年2月にA社の事業を継承したEが,原審公判において,犯行当時のA社の売上げから考えて,被害男性の要求金額は5年以内に返済可能であった旨供述したことを根拠としているが,同人の供述は,被告人をかばうためのものであり,格別の裏付けもないから,直ちに採用することのできないものである。したがって,被告人の当審供述によっても,当時,被告人が被害男性に対する借金返済に窮していたという原判決の認定は動かない。所論は,被告人が被害男性から産業廃棄物の不法投棄について追及されていたことは殺害の動機にはならない,という。しかし,被害男性が,当時,産業廃棄物の不法投棄を理由に被告人を追及していたことは原判決が認定するとおりであり,そのことが動機の一部になったとしても不自然ではない。3 犯行時に現場にいなかったという被告人の当審供述について被告人の当審供述の概要被告人は,原審公判においては黙秘を貫いていたが,当審公判において,犯行当日の行動等について,次のとおり供述し,犯行が行われたとされる午後3時過ぎから午後7時前頃までの間は現場にいなかったと供述する。すなわち,被告人は,当日,土砂降りの雨の中,午後0時頃,いったんA社の事務所へ行き,午後0時3分頃,被害男性に対し,お金ができていないので今日の面談はキャンセルする旨電話をし,周辺のA社の土地全体を見回り,午後3時7分頃,被害男性に対し,面談のキャンセルを確認する電話をかけた。しかし,その電話は留守番電話に切り替わったが,被告人は,被害男性は来ないと思ったので,その後,その場を離れてお盆の墓参りと入院中の母親の見舞い等を済ませ,午後7時頃,再びA社の事務所に戻ったから,犯行時間帯には現場にいなかった,というのである。被告人の当審供述の信用性の検討当審弁護人は,被告人の当審供述は,①当日佐賀市内は朝から昼にかけて大雨が降り,昼過ぎからやや小雨になったという降雨の状況,当日午後0時57分に被告人の携帯電話からFへの発信記録,当日正午から午後0時15分までの間と午後3時から午後3時15分までの間に油圧ショベルが稼働した記録と整合する,②弁護人が同じ雨天の日に被告人が供述する行程の走行実験と所要時間の点で整合するなどと主張する。しかし,①の点については,いずれも,犯行時間帯に現場にいなかった旨の被告人の当審供述を直接裏付けるものではなく,むしろ油圧ショベルの稼働記録については,原判決が指摘するとおり,犯行時刻頃に現場に立ち寄ったと考えられる人物が被告人だけであるという間接事実と相俟って,被告人の犯人性を推認させる事情である。また,②については,被告人が供述する行程を裏付ける証拠は全く提出されていないから,単に所要時間が整合したからといって,供述が裏付けられたとはいえず,かえって被告人の日記帳の翌8月16日の欄には(当審検甲19),昨日雨だったので墓参りに行くことができなかった旨の記載がある。この点,被告人は,書き間違えである旨供述し,弁護人は,日記の記載は厳密なものではなく,前日に念入りな墓参りができなかったという感情を記載したものとみるべきである,と主張する。しかし,同月13日から16日までの日記の記載は,犯行当日である同月15日を除き,被告人の当審供述と概ね合致しているから,被告人がその日の行動をその都度記載したものとみるのが自然であり,当日の行動に関する被告人の当審供述が,被告人の日記と食い違うことに変わりはない。その他,被告人の当審供述は,前記のとおりBの当審供述と大きく食い違う上,当日は雨が降ってA社の土地の状態が心配になって見回っていたというのに,再び事務所に戻った際に当日Bが穴に産業廃棄物を埋めたか否かを確認しなかったなど,不自然,不合理な点がある。したがって,被告人の当審供述をもって,被告人が犯行時間帯に現場にいなかったという合理的疑いが生じるとはいえない。4 結論そのほか所論が主張するところを検討しても,原判決の認定に論理則,経験則に反するところはなく,所論のいうような事実誤認はない。論旨は理由がない。第3 検察官の量刑不当の主張について1 始めに論旨は要するに,本件殺人の特筆すべき態様の悪質性,高い計画性,動機の悪質性,そして被害者2名の命を奪ったという結果の重大性等に鑑みれば,被告人の刑事責任は誠に重大であり,その一方で,被告人には,死刑を回避するのもやむを得ないと評価すべき特段の事情も認められないから,死刑判決を回避し,被告人を無期懲役に処した原判決の量刑は明らかに軽すぎて不当であり,被告人を死刑に処するべきである,というのである。そこで記録を調査し,当審における事実取調べの結果並びに検察官作成の弁論要旨(第3)をも併せて検討する。本件は,被告人が,①殺意をもって,油圧ショベルのスケルトンバケットを被害者両名が乗った軽自動車のルーフに振り落とし,同車を深さ約5mの穴に落とし,その上から油圧ショベルで土砂をかけるなどして埋め,被害者両名を窒息等により死亡させて殺害し,②取引先会社からリース契約をして借り受けた敷鉄板12枚を業務上預かり保管中に,うち2枚(価格合計約32万0800円相当)を別の会社に売却するために引き渡して横領した,という事案である。
事案の概要
令和2年3月18日
福岡高等裁判所 第1刑事部
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[下級] [刑事] 令和1(わ)1008  up!
著作権法違反
令和2年3月18日
福岡地方裁判所 第2刑事部
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[下級] [刑事] 平成31(う)54  up!
傷害致死
令和2年3月13日
大阪高等裁判所 第2刑事部
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[最高裁] [刑事] 平成30(あ)1757  334ViewsMoreinfo
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,徳島県青少年健全育成条例違反,東京都青少年の健全な育成に関する条例違反被告事件
平成30(あ)1757
強制わいせつ罪等を非親告罪とした「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)の経過措置を定めた同法附則2条2項と憲法39条
判示事項
令和2年3月10日
最高裁判所第三小法廷
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[下級] [刑事] 平成30(わ)2034  73Views
住居侵入,窃盗未遂
令和2年3月10日
大阪地方裁判所 第11刑事部
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[下級] [刑事] 平成30(わ)183  75Views
過失運転致死傷被告事件
令和2年3月5日
前橋地方裁判所 刑事第2部
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[下級] [刑事] 平成30(わ)293  159Views
死体損壊,死体遺棄,殺人
令和2年3月3日
大津地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成29(わ)689  113ViewsMoreinfo
国家賠償請求事件
平成29(わ)689
本件は,ハンセン病病歴者である原告らが,昭和27年に熊本県菊池郡(当時)で発生した殺人事件(いわゆる菊池事件)に関し,同事件の被告人(以下「本件10被告人」という。)がハンセン病患者であることを理由に裁判所法69条2項に基づき裁判所以外のハンセン病療養所等の施設内で審理が行われたことなどについて,ハンセン病患者であることを理由とする差別であり本件被告人の人格権を侵害するものとして憲法14条1項,13条に違反し,裁判の公開原則を定めた同法37条1項,82条1項にも違反しているほか,本件被告人に無罪を言い15渡すべき証拠があり,これらはいずれも刑事訴訟上の再審事由に当たるところ,検察官が再審請求権限を行使しなかったことがハンセン病病歴者に対する被害回復義務を怠ったものとして原告らとの関係で国家賠償法上違法であると主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,それぞれ10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成29年9月22日から支払済みまで民法20所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
令和2年2月26日
熊本地方裁判所 民事3部
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[最高裁] [刑事] 令和1(し)807  223ViewsMoreinfo
控訴取下げの効力に関する決定に対する特別抗告事件
令和1(し)807
高等裁判所がした控訴取下げを無効と認め訴訟手続を再開・続行する旨の決定に対する不服申立ての可否
判示事項
令和2年2月25日
最高裁判所第三小法廷
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[下級] [刑事] 令和1(う)284  96Views
覚せい剤取締法違反被告事件
令和2年2月25日
名古屋高等裁判所 刑事第1部
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[下級] [刑事] 平成31(わ)1103  67ViewsMoreinfo
入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害,加重収賄,収賄
平成31(わ)1103
本件は,大阪市職員として道路,公園施設等の電気工事の設計,積算等の職務に従事していた被告人が,飲食接待を受けるなどして懇意な関係にあった,電気工事の施工等を事業内容とする会社の実質的経営者(以下「本件業者」という。)に対し,①同市発注の電気工事合計29件につき,その入札に先立ち,入札における秘密事項であり,最低制限価格帯の算出根拠となる直接工事費等を教示した官製談合防止法違反及び公契約関係競売入札妨害,②うち27件の入札に関する情報の不正教示の謝礼として,本件業者から14回にわたり現金を収受した加重収賄,③平素の入札に関する有利かつ便宜な取り計らいについての見返りの趣旨で,本件業者から16回にわたり現金,自動車等を収受した単純収賄からなる事案である。
事案の概要
令和2年2月21日
大阪地方裁判所 第6刑事部
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[下級] [刑事] 令和1(わ)886  62ViewsMoreinfo
公職選挙法違反被告事件
令和1(わ)886
被告人らが,選挙期間前に,4回にわたって会合を開催し,合計144名の選挙人に対し,約23万円分の飲食の供応接待をした事案について,立候補予定者であった被告人Aを懲役10月に,被告人Aの選挙運動者であった被告人B,同C及び同Dをそれぞれ懲役6月に処し,被告人4名に対し,5年間,それぞれその刑の執行を猶予した事例
判示事項の要旨
令和2年2月19日
札幌地方裁判所
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[下級] [刑事] 令和1(う)368  70Views
殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人未遂,公務執行妨害被告事件
令和2年2月17日
名古屋高等裁判所 刑事第2部
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[下級] [刑事] 令和1(わ)237  75Views
過失運転致死傷,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反,脅迫,強要未遂被告事件
令和2年2月17日
大津地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成31(う)159  96Views
過失運転致死傷被告事件
令和2年2月14日
福岡高等裁判所 第2刑事部
詳細/PDF
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[下級] [刑事] 平成31(う)595  62Views
強盗殺人,傷害,窃盗,覚せい剤取締法違反
令和2年2月13日
東京高等裁判所 第4刑事部
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[下級] [刑事] 平成30(わ)37  88ViewsMoreinfo
傷害致死,傷害
平成30(わ)37
本件についての犯罪事実を立証することは禁止されていると弁護人がいうところが,本件に妥当するとはいえず,検察官による各傷害の追起訴に,弁護人のいうような目的を見いだすことはできないのであって,弁護人の主張は採用できない。【補足説明等】第1 共謀があったか1 弁護人は,いずれの事件との関係でも,被告人とAやB(以下「Aら」ともいう。)との間に共謀はなかった旨主張するが,当裁判所はこれを認めたので,以下,補足して説明する。2 関係証拠によれば,以下の事実が認められる(なお,以下の日付はいずれも平成29年である。)。被告人は,10月下旬頃,C及びDと判示の被告人方で3人で暮らしていたが,出会い系アプリを通じてAと知り合い,LINEでのやりとりなどを経て交際を開始し,11月5日,被告人方を訪れたAと初めて対面した。同月11日,Aは,内妻の弟であったBとともに,勤務していた会社を無断でやめ,被告人方で,被告人,C及びDの5人で同居生活を始めた。被告人方には,キッチン,風呂及びトイレのほか,6畳和室及び4畳半和室の2部屋があり,被告人らは,同居開始後,主に6畳和室で過ごし,日中は,6畳和室で各人がゲームをしたり,近くのスーパーに買い物に行くなどして過ごしていた。C及びDは,箕面市内の保育所に通っていたが,Dについては同月16日,Cについては同月22日を最後に,保育所に通わなくなった。12月9日,保育所の職員が被告人方を訪問し,Dの左頬に青あざを発見したのに対し,被告人は階段から落ちた旨説明した。また,被告人は,同職員に対し,同月11日からC及びDの通所を再開すると説明したが,同日以降も2人を通わせなかった。11月下旬ないし12月初め頃,被告人は,Aらに対し,CやDを「叱って」「怒って」と求めたり,「しばいて」と言うこともあり,これを受けて,Aは11月下旬ないし12月初め頃から,Bは12月に入って以降,C及びDに対し,暴行を加えるようになった。12月中旬頃から,Aらの暴行は,エスカレートし,Aらは,C及びDに対し,拳骨や平手で,頭,頬,腹,尻,背中等を殴る,たたく,蹴るなどし,各人に皮下出血を生じさせた。Aは,C及びDに対し,自身の腹の上に乗せてその両脇腹を殴る,頭や耳,尻等を噛むといった暴行を加えたり,Dに対してはカーペットクリーナーで腕や足等をたたくなどの暴行を加えることもあった。さらに,Aらは,CやDに対し,陰茎を強く引っ張ったり,四つんばいの姿勢から片足を上げさせる格好をさせ,我慢できず体勢を崩すと腹を殴るなどの暴行を加えたり,おむつの状況をチェックした際にCやDが嘘をつくと,暴行を加えたりすることもあった。Aらによる暴行は,6畳和室で加えられることが多かったが,同室にいた被告人はこれらを制止しなかった。また,被告人がAらの暴行につき警察に通報をしたり,同じ市内に住み,頻繁に会っていた父親や,能勢町に住み,米の援助等をしてくれていた伯母といった親族に助けを求めることもなかった。被告人は,同月18日,Aらが仕事に行っている間に,6畳和室においてカラオケを歌いながら,携帯電話機で動画を撮影した。この際,被告人は,Dに対し,大声を上げながら飛び掛かり,手で複数回その身体をたたき,その身体の近くに複数回足を振り落とし「覚えとけよ,パパ帰ってきたら知らないから」「怒られるぞ」「知らないぞ,知らないぞ」「さぁしばく時間が来たぞ」「終わったからしばき倒そうかな」等と言った。イ 同月19日,被告人方集合住宅のエレベーター内に,被告人,C及びDが乗り込んだ際,被告人がDの顔面に向けて持っていた手提げかばんをぶつけようとし,Dが床に倒れ込むことがあった。同月22日,被告人は以前から連絡をとっていた知人男性に対し,LINEで,左目周辺に皮下出血があるCの画像を送信したり,「Cの顔みてびっくりせんとってね笑」「こんなふうになってるから笑」「殴られた笑」「居候から笑」等のメッセージを送信したりした。同月24日,被告人ら5人がスーパーへ向かうため前記エレベーターに乗った際,AがDを蹴ったが,被告人は携帯電話機を操作し続けていた。その後一旦帰宅した被告人とC及びDは,同日午後3時56分頃,被告人の父親と外食へ出かけた。被告人の父親はCの左目周辺に皮下出血があるのを見たため,どうしたのか被告人に尋ねると,被告人は風呂場で転んだ旨答えた。Cは体調が悪かったため,被告人の父親がCを病院に連れていくよう促したが,被告人はCを病院へ連れていかなかった。被告人,C及びDは,同日午後5時23分頃帰宅した。イ 同日午後10時46分,被告人はLINEのタイムライン上に「C死にかけ。やばい。」と投稿し,知人に対し,同日午後11時3分にはLINEで「Cがしにそーでやばいけんね。」,同月25日午前1時33分には「彼氏に殴られてぐたーってしてる。」と送信した。また,別の知人に対しても,「友達に殴られてぐたーってしてる。」と送信した。ウ 被告人は,同日午前2時11分頃,110番通報をして,Cの心臓が止まっている旨を申告した。また,被告人は,Aらに対し,逃げるよう促し,同日午前2時17分頃,AとBは前後して被告人方から立ち去った。同日午前2時20分頃,救急隊員らが被告人方に到着し,Cは大阪府内の病院へ救急搬送された。被告人は,被告人方に駆けつけた警察官から,Cの顔や体にあざがある理由について尋ねられると,お風呂で転んだり,弟と喧嘩したりしたときにできた傷であるなどと供述した。3 共謀関係を基礎付ける主たる事実関係について被告人自身によるC及びDに対する暴行A及びBは,公判廷で,被告人と同居して以降Cが死亡するまでの間,被告人は,毎日,C及びDに対し,殴る,蹴る,たたくなどの暴行を加え,特にDに対しては,離婚した前夫に顔が似ているとして嫌い,首を絞めるなどの暴行を加えていた旨供述する。本件事案の内容等からすれば,Aらが被告人に殊更不利な供述をするおそれがあるといえ,また公判での供述内容に従前供述されていなかったものも含まれているものとみられることなどからすると,それらの供述の信用性は慎重に吟味しなければならず,Aらの供述をそのまま信用することには躊躇を覚えざるを得ない。もっとも,12月18日のカラオケ時の動画や,同月19日のエレベーター内の防犯カメラ映像によれば,被告人が,C及びDに対し,同人らが何らかの悪さをしたともうかがわれないのに,その身体をたたいたり,手提げかばんをぶつけようとしていることが認められ,これに加え,後の検討結果等にも照らすと,被告人が,Aらが被告人と同居して以降,しばしば,CやDに対し,傷害の結果を生じさせたとは認められない程度の暴行を加えていたとする程度では信用できる。AらがC及びDに暴行を加え始めたきっかけ及びその後の経緯ア 公判廷で,Aらは,11月末から12月初頭にかけて,被告人からCやDを「しばいて」「どついて」と言われるようになり,更にAは,被告人から,AらがC及びDを甘やかすので言うことを聞かない,C及びDの親になるのであれば暴力を振るうよう求められたことがあり,これをきっかけに暴力を振るい始めた旨述べ,Bも,被告人自身や被告人から暴力を振るうよう求められたAに指示されるなどしたために,12月に入って以降,C及びDに暴力を振るうようになった旨供述し,更に,Aらは,暴力がエスカレートした同月中旬以降も,被告人は度々「しばいて」「たたいて」等と言っていた旨供述する。この点,AやBと被告人との関係性等からして,Aらが,被告人の実子であるC及びDに対し,被告人の関与なく自発的に暴行を加えるようになったとは考え難い。また,同月18日のカラオケ時の動画内で,被告人が「覚えとけよ,パパ帰ってきたら知らないから」「怒られるぞ」等と発言している点も,当時,被告人がAらに対してC及びDに暴行を加えることを求めていたことと沿うものである。この点に関するAらの前記供述は,内容が合理的であり,他の事実関係とも整合することから信用でき,被告人が「しばいて」等と求めたことがAらの暴行のきっかけとなったこと,Aらの暴行が始まり,それがエスカレートした後にも,被告人がAらに対し「しばいて」等と言っていたことが認められる。イ これに対し,被告人は,11月下旬頃から12月上旬頃にかけて,C及びDが悪さをした際に,Aらに対し,「しばいて」等と述べたことはあるが,それは手で軽く頭をたたくなど,しつけの範囲にとどまるものを求めた趣旨にすぎず,その範囲を超えてあざができるような暴行を加えた場合には止めるよう求めていた,Aらの暴行がエスカレートした後は,Aの存在が怖くて止めることができず,母親として子供たちが怪我をしてほしくないとも思っていたことから,「しばいて」等とも言っていないなどと公判廷で供述する。しかしながら,同月18日のカラオケ時の動画における被告人の発言は,Aに暴行を加えることを求めることを前提としたものであり,「しばく」という言葉を用いていると認められる上,同月22日には知人男性とのLINEで,Cの傷ついた姿を笑いものにするかのような内容のやりとりをしていることなどからしても,被告人が,Aらの暴行を容認していたことは明らかであり,前記供述はこれにそぐわない。また,被告人が,A以外の男性とLINEで親密なやりとりを継続したり,他県で就職しようとしたAに対し怒りを爆発させ,結局Aがそこでの就職を断念したことなどに照らすと,Aの暴行を止められなかったとの供述も不合理である。さらに,被告人は,前記カラオケ時の動画はCらの様子を撮影しておくようAから命令されたため逆らいきれずに撮影した旨述べるが,他方で撮影した動画を結局Aには見せていないとも述べており,不可解である。加えて,被告人が,自身の父親や伯母に助けを求めることは容易であったのに格別相談もしておらず,自宅を訪れた保育所の職員に虚偽の説明をしていること,自ら,C及びDに暴行を加えていたと認められることなども踏まえると,被告人の前記供述は信用できないというほかない。被告人がAらの暴行を止めなかった点についてア 12月中旬以降,AらのC及びDに対する暴行がエスカレートし,Cらの身体に皮下出血等も生じていたが,被告人はこのようなAらの暴行を目の当たりにしながらこれを制止していない。弁護人は,その理由として,被告人が本件当時,複雑性PTSDに罹患しており,暴力を目にした際には遷延性解離や感情麻痺の状態に陥り,適切な判断や制止ができなくなっていたからである旨主張し,被告人も,Aらの激しい暴力を目の当たりにすると現実感がなくなってしまい,身体が動かなくなったなどと公判廷でこれに沿う供述をする。イ 精神医学を専門とするE医師は,被告人は,幼少時に祖母からの虐待を,小中学校時代に繰り返しレイプされるといった性暴力を,後には交際相手から激しい暴力を受けるなど,持続的なトラウマ体験を受けてきたことや,リストカットや処方薬,アルコールの大量使用等の暴力的暴発,自己破壊的行動等の自己組織化の障害がみられることから,本件当時,複雑性PTSDに罹患していたといえ,そのために,Aらによるひどい暴力を目の当たりにすることで判断停止状態となり,Aらの暴行を阻止しようと思っても阻止できなかった旨供述する。しかしながら,このようなE医師の見解は,基本的に被告人の供述内容に依拠して示されたものと認められ,判断の前提資料が十分であったのか疑問がある。また,被告人がトラウマ体験として述べる出来事自体がにわかに信用し難い内容で,被告人の生活歴ともそぐわない上,数百回のリストカットをしたが痕跡が残っていないなど,E医師が自己組織化の障害を裏付ける要素として挙げる事実関係にも疑問があるというほかない。さらに,E医師によっても,複雑性PTSDに罹患している者は暴力を非常に嫌がるため,普通は自ら暴力行為に及ぶことはない旨述べているところ,前述のとおり,本件当時,被告人は自らC及びDに対してしばしば暴行を加えていたことや暴行を容認する態度を示していたと認められることなど,関係証拠により認められる事実関係とE医師の医学的見解の内容とも矛盾が生じている。E医師の前記見解は,その前提とする事実関係等に疑問があり,採用することができない。ウ このような判断は,精神医学を専門とするF医師が,前記カラオケ時の動画やエレベーター内の防犯カメラ映像等から認められる被告人の言動に照らし,本件当時,被告人に複雑性PTSD等の精神障害があったとも,Aらの暴力を止められない精神状態にあったともいえない旨供述するところと整合する。弁護人は,F医師が複雑性PTSDをPTSDと連続性を有する疾患であると説明するが,これは複雑性PTSDの概念を十分理解しないものであるとか,被告人と面談することなく意見を述べている点をもって,その供述の信用性は低いなどと主張するが,それらがF医師の供述内容の本質的な部分の信用性に疑いを差し挟むような事情とはみられず,同主張は採用できない。エ 以上によれば,被告人が,Aらの暴行を目の当たりにした際,精神疾患のために制止できなかったとはいえず,かえって,知人男性とのLINEのやりとりや,カラオケ時の動画,C及びDの身体に見られた多数の皮下出血の存在等に照らせば,被告人は,Aらの暴行を認識していただけでなく,Aらが暴行を加えることにつき,明確に容認していたと認められる。4 以上を踏まえ,被告人とAらとの間に本件各犯行に係る共謀があったといえるかにつき,検討する。Aらは,12月以降,被告人から「しばいて」等と言われた際,C及びDに対して,その身体をたたく,殴るなどの暴行を加えるようになり,また,同月中旬以降は,被告人から「しばいて」等と求められなくても自らの判断でも暴行を加えるようになり,暴行の程度もエスカレートし,身体に皮下出血が生じるほどのものがあったこと,その延長で,Aらの一方又は双方が腹部に加えた暴行が致命傷となってCが死亡するに至ったこと,対して,被告人もこのようなAらの暴行を目にしながら制止してこなかったことが認められる。当初の被告人の「しばいて」という発言は,個々の場面を超えて,Aらに対し,C及びDに暴行を加えることを求めた趣旨かは判然としないが,このような被告人の言動こそが,Aらが子供たちに暴行を加え始める発端となったものである。また,同月中旬以降,Aらは,C及びDに対して激しい暴行を加えるようになったが,被告人はこのような状況を目の当たりにしながらも,これを放置し,かえって皮下出血の生じたCの姿を笑いものにするかのような画像を他人に送信するなど,そのような状態を容認していたばかりでなく,自らもC及びDに暴行を加えることがあり,Aらに対して「しばいて」等と求めるなど,暴行を助長する態度も示していた。そして,本件当時の被告人,C及びD,Aらの関係性,立場も併せみれば,被告人の言動や存在が不可欠の要素となって本件の一連の犯行が実現したというべきである。被告人は,C及びDとともに被告人方での共同生活を送る中で,C及びDに対して暴行を加えることについて,Aらによる暴行がエスカレートした12月中旬頃にはAらとの間に共謀関係を形成していたといえ,その後判示の各犯行の場面で,C,D,被告人,Aらが生活空間を異にしていたとみるべきこともない。被告人は,判示のいずれの犯行との関係でもそれぞれ共同正犯としての責めを負う。第2 判示第1の傷害について関係証拠によれば,Cの身体には,致命傷となった中心に蒼白部のある腹部正中の皮膚変色部を除き,顔面,胸部,腹部,側腰部,背部,臀部,両上下肢に打撲による皮膚変色,表皮剥脱等が多数認められるところ,G医師によれば,解剖時に見られたこれらの傷は12月中旬以降に生じたものとみてよい旨述べていること,同じ頃からエスカレートしたAらによる暴行の内容,このような多数の傷が自分で転んだり,打ち付けたりした際に生じたとは考え難いことなどを併せみれば,Cに見られた傷害は,おおむね,12月中旬頃から同月24日午後3時56分頃までの間に,被告人方におけるAらの暴行によって生じたものと認められる。もっとも,同日午後5時23分頃以降も,AらはCに対して種々の暴行を加えていたとみられることからすれば,解剖時にCに見られた傷害の中には前記時刻の後に生じた傷害が含まれている可能性を排斥できない。また,共謀がないところで生じた傷害が含まれている可能性もある。とはいえ,共謀が認められる判示第1の日時にそれらの傷害のうちの一部は確実に生じたものといえるから,結局,判示第1の事実のとおり認定した。第3 弁護人は,傷害致死の実行行為の時期について疑問をいれる主張もするが,G医師の証言を始めとする関係証拠によれば,判示第2の日時のとおり認められることが明らかである。第4 また,既に示したところでも明らかなように,判示の各事実について,しつけなどとして犯罪の違法性を阻却すべきものはないと認められる。【法令の適用】罰 条判示第1及び第3の所為 いずれも包括して刑法60条,204条判示第2の所為 刑法60条,205条刑 種 の 選 択判示第1及び第3の罪 いずれも懲役刑を選択併 合 罪 の 処 理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入 刑法21条訴 訟 費 用 の 処 理 刑事訴訟法181条1項ただし書判示第1の事実と判示第3の事実については,それぞれ共通するといえる動機から共通ないし類似する態様の暴行を反復継続して各被害者の身体に傷害を負わせたというものであるから,それぞれ包括一罪として評価される。また,判示第1の傷害と判示第2の傷害致死は,別の機会にされた犯行であると区別でき,侵害された法益も同一でないことなどからすれば,併合罪の関係にある(なお,弁護人は,判示第1の傷害と判示第2の傷害致死とが包括一罪となるのであれば,判示第2の事実に係る起訴の後にされた判示第1の事実に係る起訴は二重起訴に当たり,公訴棄却されるべきである旨主張するが,仮に包括一罪と評価されるにしても,訴因変更の手続によるべきところをより慎重な起訴の手続を選択したにすぎないと解され,いずれにしても同主張は採用できない。)。【量刑の理由】本件は,当時4歳及び当時2歳の子供たちの母親である被告人と,その交際相手及びその知人の男性の2名が,被告人方において同居生活を送る中,互いに意を通じ合い,判示の傷害,傷害致死に及んだ児童虐待の事案である。
事案の概要
令和2年2月12日
大阪地方裁判所 第6刑事部
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不正指令電磁的記録保管
令和2年2月7日
東京高等裁判所 第11刑事部
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令和2年2月7日
東京地方裁判所 立川支部
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