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事件番号/事件名裁判年月日/裁判所判決書
[下級] [刑事] 平成30(わ)195  122Views
証拠隠滅
平成30年6月5日
福岡地方裁判所
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[下級] 平成29(行ウ)4  102ViewsMoreinfo
奨学金返還期限猶予承認処分義務付け等請求事件
平成29(行ウ)4
本件は,被告から奨学金の貸与を受けていた原告が,被告に対してその返還期限の猶予を願い出た(以下「本件願い出」という。)ところ,被告から,本件願い出には応じられない旨が記載された平成29年1月11日付け「ご回答」と題する書面(以下「本件書面」という。)の送付を受けたことから(以下,被告が本件20書面によって,本件願い出に応じられない旨回答した行為を「本件不承認」という。),本件不承認が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たることを前提に,①本件不承認の取消し及び②奨学金の返還期限を8年間猶予することの承認の義務付けを求める事案である。
事案の概要
平成30年5月29日
札幌地方裁判所
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[下級] [民事] 平成29(ネ)615  126ViewsMoreinfo
平成29(ネ)615
本件は,1審被告会社との間で,有期労働契約を締結し,同社の運営する郵便局(本件郵便局)において,所属課の上司である1審被告Yの下で郵便の集配業務に従事し,平成26年1月22日をもって退職したと主張する1審原告が,時間外労働を行ったにもかかわらず割増賃金が支払われていなかったとして,1審被告会社に対し,平成23年1月支給分から同年12月支給分までの未払賃金相当額について,不法行為に基づく損害賠償請求として合計162万2328円及び各月ごとに13万5194円に対する時間外割増賃金の支給日(毎月24日)の翌日(各月25日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(なお,予備的な主張として合計33万5220円の支払及び各月ごとに2万7935円に対する前同様の遅延損害金の支払)平成24年1月支給分から平成26年1月支給分までの未払賃金について,労働基準法37条に基づき,合計331万3157円の支払と,うち平成24年1月支給分から平成25年12月支給分までについては,それぞれ各月に支給されるべき金額に対する支給日の翌日である各月25日から上記退職日(平成26年1月22日)まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金,退職日の翌日である同月23日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)6条1項所定の年14.6%の割合による遅延損害金,うち平成26年1月支給分6万8501円については支給日の翌日である同月25日から支払済みまでの同割合による遅延損害金の支払(なお,予備的な主張として平成24年1月支給分から平成25年12月支給分までの未払賃金について,合計67万0440円の支払と各月2万7935円に対する前同様の遅延損害金の支払)1審被告会社に対し,平成25年12月16日に勤務し,翌17日から退職日の前日である平成26年1月21日までの出勤日(23日間)については,年次有給休暇を使用したとして,未払賃金22万0800円(1日分の基本給9200円の24日分)及びこれに対する平成26年1月支給分(11日分の10万1200円)については同年1月25日から,同年2月支給分(13日分の11万9600円)については同年2月25日から,それぞれ支払済みまで賃確法6条1項に基づく年14.6%の割合による遅延損害金の支払1審被告会社に対し, の331万3157円と,次有給休暇に関する違反部分である21万1600円(9200円の23日分)の合計352万4757円について労働基準法114条本文に基づく付加金の支払とこれに対する判決確定の日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払1審被告Yが,1審原告に対し,年賀はがき等の商品販売についてノルマを達成できない場合に自費による商品買取りを強要した(本件買取強要行為)ことについて,1審被告Yに対し民法709条,1審被告会社に対し民法709条又は同法715条に基づき,連帯して商品購入額相当額の損害賠償金5万円とこれに対する平成25年12月14日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払1審被告Yが,1審原告に対し,暴言を発し,暴行を加えたとして,1審被告Yに対し民法709条,1審被告会社に対し民法709条又は同法715条に基づき,連帯して慰謝料100万円とこれに対する平成25年12月14日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払1審被告会社における時給制契約社員の労働条件は,労働契約法20条で禁止される不合理な労働条件に当たり,そのような労働条件を定めていることが不法行為であるとして,1審被告会社に対し,不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料150万円(予備的に経済的損害81万4038円と慰謝料20万円の合計101万4038円)及びこれに対する毎月の損害発生日(給与支給日)の翌日(各月24日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払1審被告会社と1審被告Yの不法行為と1審原告が負担した弁護士費用に相当因果関係があるとして,1審被告会社に対し,不法行為に基づく損害賠償として77万円及びこれに対する退職日である平成26年1月22日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
事案の概要
平成30年5月24日
福岡高等裁判所 第3民事部
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[下級] [刑事] 平成30(わ)35  125Views
詐欺被告事件
平成30年5月24日
富山地方裁判所 刑事部
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[下級] [民事] 平成29(ネ)5012  142ViewsMoreinfo
平成29(ネ)5012
本件俳句)を同目録2記載の体裁で掲載せよ(第1審原告は,当審において,民法723条に基づく名誉回復措置の請求を追加した。)。第1審被告は,第1審原告に対し,195万円及びこれに対する平成26年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2 第1審被告原判決中第1審被告の敗訴部分を取り消す。第1審原告の請求をいずれも棄却する。第2 事案の概要1 本件は,第1審原告が第1審被告に対し,①かたばみ三橋俳句会(本件句会)と三橋公民館は,本件句会が三橋公民館に提出した俳句を同公民館が発行する本件たよりに掲載する合意をしたと主張し,同合意に基づき,第1審原告が詠んだ俳句(本件俳句)を本件たよりに掲載することを求めるとともに,②三橋公民館(その職員ら)が,本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことにより精神的苦痛を受けたと主張し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料200万円及びこれに対する加害行為後(本件俳句が掲載されなかった本件たよりの発行日)の平成26年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
事案の概要
平成30年5月18日
東京高等裁判所
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[下級] [刑事] 平成30(う)56  91Views
詐欺
平成30年5月18日
福岡高等裁判所 第1刑事部
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[下級] [刑事] 平成29(わ)1425  86Views
航空法違反
平成30年5月18日
東京地方裁判所 立川支部
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[下級] [刑事] 平成29(う)1349  78ViewsMoreinfo
詐欺被告事件
平成29(う)1349
イベント会社の従業員である被告人が,従前イベント会社等が使用する無線機器等に割り当てられていた周波数帯域を携帯電話に割り当てるため,他の周波数帯域の無線機器等を購入してイベント会社等に無償提供するなどの事業を行っていた団体の職員と共謀の上,同団体から無償提供用の無線機器の購入名下に約5400万円をだまし取ったとされる詐欺の事案につき,同職員との間の共謀及び故意を認めて被告人を有罪とした原判決には事実の誤認があるとしてこれを破棄し,被告人に無罪を言い渡した事例
判示事項の要旨
平成30年5月10日
大阪高等裁判所 第3刑事部
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[下級] [刑事] 平成28(わ)4190  111Views
所得税法違反被告事件
平成30年5月9日
大阪地方裁判所 第12刑事部
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[下級] [刑事] 平成29(わ)385  158ViewsMoreinfo
業務上横領被告事件
平成29(わ)385
本件で提出された証拠の中には,引出金額全額が被害金である旨をいう被害法人代表者の供述調書(甲25)や被告人の検察官調書(乙18)もあるが,これらはいずれも具体性を欠くもので,上記弁解を排斥できるほどのものではない。他に,上記弁解を排斥する適切な証拠もないから,上記事実に係る被害金額については,判示の限度で認定することとする。(法令の適用)被告人の判示各所為はいずれも刑法253条に該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第2の別表1番号2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中90日をその刑に算入することとする。(量刑の理由)本件は,公益社団法人の経理担当従業員として,同法人の預貯金管理等の業務に従事していた被告人が,3年7か月余りの間に,11回にわたって自己費消目的で預貯金を払い戻し,横領した事案である。
事案の概要
平成30年5月8日
高知地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成29(わ)2348  103ViewsMoreinfo
犯人蔵匿被告事件
平成29(わ)2348
本件とは関連性がないと主張する。しかしながら,事実認定の補足説明において摘示するとおり,当裁判所は,いずれの証拠についても関連性があると判断した。2 違法収集証拠の主張について(1) 甲2号証ないし甲59号証について弁護人は,M号室に出入りする人物を撮影した写真(甲2ないし59)について,その撮影は被撮影者のプライバシーを侵害するものであるから,本来は令状を必要とするというべきであり,令状なしで撮影された前記写真は違法収集証拠として証拠能力が否定される旨主張するので,この点について検討する。なお,前記写真は,M号室前の廊下をビデオ撮影していたものを,静止画として切り出したものであるから,以下,当該ビデオ撮影(以下「本件ビデオ撮影」という。)の適法性について検討する。関係証拠によれば,以下の事実が認められる。すなわち,捜査機関は,○○委員会(通称「●●派」。以下「●●派」という。)の活動家として把握していた被告人について,兵庫県内のホテルに虚偽の住所と氏名で宿泊したという旅館業法違反の事実を認知した。そこで,捜査機関は,前記旅館業法違反の事実の捜査として,被告人の住所について捜査した結果,被告人がM号室に居住しているのではないかとの疑いを抱くに至った。捜査機関は,被告人がM号室に居住しているか否かを確認する目的で,平成29年2月14日から,同室への出入りを目視で確認することとした。そうしたところ,同月18日には被告人が,同月19日には氏名不詳の男が,それぞれM号室に出入りするのを確認したため,引き続き被告人が同室に居住しているか否かを確認する目的で,同月26日からは,同室への出入り状況をビデオ撮影して記録に残すこととし,当該撮影は,同年5月18日まで続けられた。その撮影態様は,捜査機関が,M号室の玄関ドア付近を見通せる場所にあるマンションの一室を賃借し,望遠のビデオカメラ2台を同所に設置して,24時間態勢で,M号室の玄関ドアやその付近の共用廊下を撮影したというものである。以上の事実関係によれば,本件において撮影対象とされたのは,M号室の内部ではなく,その出入口である玄関ドア及びその付近の共用廊下にとどまっており,かつ,これらの場所は,前記Nビルの周辺の建物から視認され得る状況にある。そうすると,本件において撮影対象となった場所は,通常,人が他人から容ぼう等を観察されること自体は受忍せざるを得ない場所といえ,プライバシーの保護の合理的期待が高い場所であるとはいえない。したがって,本件ビデオ撮影は,被撮影者のプライバシーを大きく制約するものとはいえないから,本件ビデオ撮影は強制処分には当たらない。更に進んで,本件ビデオ撮影が任意捜査として適法といえるかについて検討する。捜査機関においては,被告人が虚偽の住所と氏名でビジネスホテルに宿泊した前記旅館業法違反の捜査の一環として,被告人のM号室における居住の有無及びその実態を明らかにする必要があったと認められる。そして,同室には被告人のほかに氏名不詳の男も出入りしていたところ,両名による同室の使用頻度,状況等を明らかにして被告人の居住実態を確認するためには,相当期間継続して同室の出入り状況を把握する必要があったといえる。そして,その撮影態様は,前記のとおり必ずしもプライバシーの保護の合理的期待が高いとはいえないM号室の玄関付近を撮影したにとどまる上,その撮影期間も3か月に満たず,前記捜査の目的及び必要性に照らし,不相当に長いとはいえない。以上によれば,本件ビデオ撮影は,前記捜査目的を達成するため,必要な範囲において,相当な方法によって行われたものといえ,任意捜査としても適法である。よって,本件ビデオ撮影は適法であり,弁護人の前記主張は理由がない。(2) 甲69ないし71,75及び78について弁護人は,銀行の現金自動預払機に設置された防犯カメラにより撮影された映像を切り出した写真(甲69ないし71)及び店舗内に設置された防犯カメラにより撮影された映像を切り出した写真(甲75及び78)について,いずれも被撮影者のプライバシーを侵害するものであり,その押収について本来は令状を必要とするというべきであるのに,令状なしで任意提出されたものであるから違法収集証拠である旨主張する。そこで,以下,この点について検討する。近時,防犯や犯罪発生時の証拠保全等の目的から,金融機関の現金自動預払機や小売店の店舗内に防犯カメラが設置されているところ,その必要性は明らかである上,このような防犯カメラが設置されていることは,その利用者にとっても公知の事実であって,これを受忍しているといえるから,本件において,前記防犯カメラの設置,撮影に違法な点はない。そして,捜査機関は,本件の捜査遂行上の必要から,前記各防犯カメラの画像の任意提出を受けたものであり,これ自体に何ら違法な点はない。よって,弁護人の前記主張は理由がない。(事実認定の補足説明)第1 争点等弁護人は,M号室に被告人以外の者が居住していたことは立証されておらず,仮に同室に被告人以外の者が居住していたとしても,被告人が,その者が,逮捕状が発せられ逃走中の者であるXであることを認識していたことは立証されていないのであるから,被告人には犯人蔵匿の故意がなく,無罪である旨主張する。しかしながら,当裁判所は,被告人において犯人蔵匿の故意を有し,判示認定のとおり,犯人蔵匿罪が成立すると判断したので,その理由を補足して説明する。第2 前提となる事実(以下,特に断らない限り,日付は平成29年のそれを示す。必要に応じて証人の公判供述を示す際には,速記録における丁数を用いる。)1 関係者(1) 被告人について被告人は,以前,●●派のいわゆる非公然アジトとされる場所にいたとして検挙された者であり(a証人2丁),被告人の住民登録は,東京都n区内にある●●派の拠点とされる住所でなされている(b証人18丁)。また,後記のとおり,M号室における被告人の居室からは,●●派の機関紙である「▲▲」及び●●派と関係がある団体の新聞である「△△新聞」が多数押収され,被告人は,当公判廷においても,これらの機関紙等の記載内容に沿う供述をしている。(2)XについてXは,昭和46年(1971年)11月14日に実行された凶器準備集合,公務執行妨害,傷害,現住建造物等放火及び殺人の被疑事実(以下「渋谷暴動事件」という。)により,遅くとも昭和58年5月12日には逮捕状が発付され,昭和59年10月31日には公開指名手配となり,氏名や顔写真等が掲載されたポスターが貼られるようになった。また,判示の平成29年2月26日頃から同年5月18日までの間(以下「本件期間」という。)においても,前記被疑事実に係る有効な逮捕状が発せられている状態であり,Xには懸賞金もかけられていた(甲84,85,a証人39,40丁)。(3) 氏名不詳の男(A)についてア 捜査機関は,平成29年5月18日,M号室内において,有印私文書偽造・同行使,旅館業法違反の被疑事実により,被告人を逮捕するとともに(甲60),同被疑事実に関してM号室の捜索差押えを実施した。その際,氏名不詳の男(以下「A」という。)が同室内におり,同人は,浴室において,水溶紙と思料される紙片等を浴槽に投棄していた。警察官がこれを制止しようとしたところ,Aは,同警察官に体当たりする等の暴行を加えたことから,公務執行妨害により現行犯人逮捕された(甲61)。イ その後,捜査機関は,Aの人定を明らかにするため,AのDNA型(STR型及びアメロゲニン型)と,Xの母親であるOのDNA型(STR型及びアメロゲニン型)とを鑑定した。その結果は,両者のDNA型のSTR型15座位全てにおいて,少なくとも一方のDNA型を共有しており,AとOとの間に,生物学的な親子関係が存在するとしても矛盾しないというものであった(甲92,98,c証人8丁)。さらに,捜査機関は,母系遺伝,すなわち,母親からその子どもに遺伝するミトコンドリアDNAの性質を利用して,AのミトコンドリアDNA型と前記OのミトコンドリアDNA型を,また,AのミトコンドリアDNA型とXの姉に当たるPのミトコンドリアDNA型を,それぞれ比較・鑑定した。その結果は,それぞれ塩基配列の同じ箇所に変異が認められ,AとOとの間,及び,AとPとの間に,それぞれ母系の関係性があるとして矛盾しないというものであった(甲99,101,d証人9丁)。また,捜査機関は,父系遺伝,すなわち,父親からその男性の子どもに引き継がれるY染色体STR型の性質を利用して,Xの父親の兄弟の孫に当たるQ(f証人1丁)及びXの父親の弟の息子に当たるR(g証人2丁)の各DNA型(Y染色体STR型)とAのDNA型(Y染色体STR型)とを比較・鑑定した。その結果は,Y染色体STR型16部位のうち,DYS389Ⅰ型及びDYS389Ⅱ型を除く14部位が全て一致し,AとRとの間,及び,AとQとの間に,それぞれ生物学的な親族関係が存在する可能性が否定されないというものであった(甲106,110,c証人4ないし6丁)。2 M号室について(1) M号室の管理,使用状況ア M号室は,島根県内に住所を有する「Y」名義で賃借され,同人名義の水道,電気,ガス等の各契約が締結されており,その家賃や水道光熱費は,S銀行のY名義の口座(以下「Y口座」という。)から引き落とされていた。しかしながら,前記Yが本件期間中にM号室に居住していたことはない。また,同所に住民登録している者は存在しない(甲63,67,a証人3,40ないし41丁)。イ 捜査機関は,本件期間中,M号室に出入りする人物の入退室状況を24時間態勢で視察していたところ,その間,同室に出入りしたのは,被告人とAの2人のみであった。また,本件期間中,被告人が連日ないし1日おきに短時間の外出を繰り返していたのに対し,Aが外出したのは11回のみで,それぞれ短時間の外出であった(甲2ないし59,a証人8ないし37丁)。ウ 被告人は,平成29年4月19日,S銀行T支店の現金自動預払機からY口座に27万円を入金している(甲39,67,71,a証人42ないし43丁。なお,甲69及び70も,Y口座の利用者を特定するための証拠であり,本件との関連性が認められることは明らかである。)。(2) M号室内の状況ア M号室内には6畳洋室(以下単に「6畳洋室」という。)と6畳和室(以下単に「6畳和室」という。)があり,捜査機関による同室の検証時,6畳洋室には布団が1組敷かれており,6畳和室の押入には布団が片付けられていた(甲64)。同室内には,テレビや冷蔵庫など,一通りの生活用品が揃えられていた。イ 6畳和室からは,「n区oのp丁目q番r号 U(被告人の氏名)」宛てに送付された平成29年度国保健診無料受診券や,「u(被告人の氏)」と刻した印鑑が発見された(甲64押収目録番号48,b証人11,12丁)。また,同室からは,●●派の機関紙である「▲▲」(甲86,b証人10,11丁)及び●●派と関係がある団体の新聞である「△△新聞」(b証人11丁)が多数押収されている。同新聞の記載(2016年11月7日第20号参照)と被告人の公判供述に照らせば,「△△新聞」の△△とは,渋谷暴動事件に関与したとして無期懲役判決を受けたZ氏のことを指すものと解される。また,同新聞(2016年11月21日第21号)には,「Zさんと共に決起し指名手配と闘っているXさんに,警視庁が300万円の懸賞金をかけた」との記載がある。さらに,「▲▲」第2823号には,Z氏に関する1面にわたる記事があり,その中で,「X同志に対する300万円の賞金付き指名手配」との記載がある。なお,発見された「▲▲」には,多数の箇所に線が引かれている。さらに,6畳和室において,Y口座に係る総合口座通帳のほか,現金約46万円(e証人5丁),「FOODS」等と記載された封筒(甲79),「水光熱」等と記載された封筒(甲80)及び「備品」等と記載された封筒(甲81)が発見された(甲64,b証人7丁)。ウ 6畳洋室からも,6畳和室に置かれていたのと同じ前記「▲▲」(甲86,b証人10,11丁)や前記「△△新聞」(b証人11丁)が多数押収されたほか,現金約72万円が押収された(甲64)。なお,発見された「▲▲」には,多数の箇所に線が引かれている。また,Aは,現行犯人逮捕されてM号室を退出する際,6畳洋室に掛けてあったジャンパーを取り,それを着て出て行った(e証人6丁)。第3 当裁判所の判断1 はじめに弁護人の前記第1の主張に照らせば,本件の主要な争点は,①被告人がAをM号室に居住させていたといえるか,②AがXであるといえるか,③被告人が,Xについて,殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ,逃走中の者であることを認識していたといえるか,④被告人において,AがXであると認識していたといえるかの点にある。以下,これらの点について検討する。2 ①被告人がAをM号室に居住させていたといえるか前記認定したM号室内の状況や,本件期間中に同室に出入りしたのは被告人及びAの2人のみであり,前記捜索差押え時に同室内にいたのも被告人及びAの2人のみであることなどからすれば,本件期間中,被告人及びAが,M号室に居住していたことは明らかである。そして,6畳和室及び6畳洋室にはそれぞれ布団やパソコン,テレビ等が置かれていたところ,6畳和室には被告人の国保健診無料受診券や「u(被告人の氏)」と刻した印鑑があったこと,6畳洋室にはAのジャンパーが掛けられていたことからすれば,6畳和室を被告人が,6畳洋室をAが,それぞれ使用していたと認められる。そして,Aがほとんど外出しないのに対し,被告人は,連日ないし1日おきに外出し,食料品の購入を行ったり,M号室の家賃や水道光熱費が引き落とされるY口座に入金をしたりしていること,被告人の使用する6畳和室から,「水光熱」,「FOODS」,「備品」等と書かれ,それぞれ数字が記載された封筒が発見されていることなどからすれば,専ら被告人がM号室の維持管理を担っていると認められる。そうすると,そのような立場にある被告人が,AをM号室に居住させていたものと認められる。3 ②AがXであるといえるか前記DNA型鑑定の結果によれば,AがXであると考えて矛盾はしない。これに加えて,Aが,●●派の人物である被告人と同居し,かつ,前記「△△新聞」や「▲▲」を,これに線を引くなどして熱心に読んでいることなどに照らし,Aも●●派又はこれに近い思想を持つ人物であること,Aは,前記捜索差押えの際,水溶紙と思料される紙片等を浴槽に投棄し,これを制止しようとした警察官に対し妨害行為に出て,罪証隠滅工作をしていることも考慮すると,Aは,渋谷暴動事件で逮捕状が発付され,指名手配されているXであると認められる。4 ③被告人が,Xについて,殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ,逃走中の者であることを認識していたといえるか前記第2の1(1)で認定した事実に照らせば,被告人は●●派の活動家であると認められる。そして,Xは,●●派の活動家として渋谷暴動事件に関与したとされ,指名手配中の人物であるところ,被告人は,前記「△△新聞」や「▲▲」を定期的に読んでおり,Z氏が関与したとされる渋谷暴動事件についても相応の知識を有していると認められる。さらに,前記認定のとおり,被告人が使用していた6畳和室から発見された「△△新聞」及び「▲▲」には,Z氏の記載と共にXが指名手配されている旨の記載があることも併せ鑑みれば,被告人は,Xが,渋谷暴動事件に関与し,殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ,逃走中の者であることを認識していたと認められる。5 ④被告人において,AがXであると認識していたといえるか前記認定のとおり,被告人は,東京都内に住民登録しているにもかかわらず,他人名義で賃借された広島市内のM号室に,少なくとも約82日間(本件期間)の長期間にわたり,他人であるAと同居していたものである。その上,前記のとおり,AはほとんどM号室から出ることはない一方で,専ら被告人がM号室の維持管理を担い,Aとの共同生活を維持していたことが認められる。さらに,M号室における生活資金の原資についてみると,被告人及びAが就労により収入を得ていた形跡はうかがわれない。また,M号室からはY口座に係る前記通帳以外の預金通帳等は発見されておらず,被告人又はAがそれぞれの預貯金等により生活資金を拠出していた形跡もうかがわれない。そうであるにもかかわらず,M号室には多額の現金があった上,およそ2か月に1回の頻度で,18万円ないし27万円がY口座に入金され,光熱費等の支払も滞りなくなされているのである。このような事情に加え,被告人及びA(X)がいずれも●●派の活動家であることも併せ鑑みれば,被告人及びAは,第三者から,M号室における生活資金の提供を受けていたと認められる。このように,被告人は,M号室において極めて特異な生活を送っていたといえるところ,前記諸事情に照らせば,被告人は,このような形でAと同居生活を送る理由ないし必要性やAの素性について認識していたとみるのが自然であり,被告人が,これらの点について全く認識していなかったとみるのは不自然というほかない。よって,被告人は,AがXであると認識していたと認められる。6 まとめ以上検討したところによれば,被告人において,AがXであって,同人が殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ,逃走中の者であることを認識していたと認められる。以上の認識に加え,前記認定したM号室における生活状況も考慮すると被告人は,Xが逮捕されるのを免れさせる目的で同人をM号室に匿っていたものと認められる。そして,Y名義で賃借されたM号室を被告人及びXの利用に供することを許可した人物や,M号室における生活資金を援助していた人物の存在がうかがわれることからすると,本件犯人蔵匿の犯行は,被告人が,氏名不詳者らと共謀の上,実行したものと認められる。以上によれば,判示認定のとおり,被告人には犯人蔵匿罪が成立する。(法令の適用)罰 条 刑法60条,103条刑 種 の 選 択 懲役刑を選択未決勾留日数の算入 刑法21条訴 訟 費 用 の 不 負 担 刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,●●派の活動家である被告人が,氏名不詳者らと共謀の上,同じく●●派の活動家であり,殺人等の被疑事実で逮捕状が発付されていたXを,マンションの一室に住まわせて匿ったという犯人蔵匿の事案である。
事案の概要
平成30年4月27日
大阪地方裁判所 第2刑事部
詳細/PDF
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[下級] [刑事] 平成29(う)750  100ViewsMoreinfo
殺人
平成29(う)750
本件の概要1 原判決が認定した罪となるべき事実の概要被告人は,当時7歳の男児であった被害者の母親(以下単に「母親」と言う。)から,被害者が罹患している1型糖尿病について相談を受けるや,母親及び被害者の父親(以下単に「父親」と言う。)との間でその治療を引き受けることを約し,両親(母親及び父親を指す,以下同じ。)に対し,インスリンは毒であるとして被害者に対するその投与の中止などを指示していたものであるが,被害者が定期的にインスリンを投与しなければ死亡するおそれがあることを知りながら,被告人が被害者にインスリンを投与することなく被害者の1型糖尿病の治療ができるものと母親が信じて被告人の指示に従っていることに乗じ,かつ,被害者を保護する責任を有しており,悩みながらも被告人の指示に従うことにした父親と意思を通じた上,殺意をもって,平成27年4月5日頃から同月27日までの間,栃木県内又はその周辺において,両親に対し,メール又は口頭の方法により,被害者に対するインスリンの投与の中止等の指示に従うよう命じ,両親をして,同月6日午後4時36分頃の投与を最後に,それ以降,被害者にインスリンを投与させずにこれを放置させ,よって,同月27日午前6時33分頃,同県所在の病院において,被害者を糖尿病性ケトアシドーシスを併発した1型糖尿病に基づく衰弱により死亡させて殺害した。2 本件控訴の趣意主任弁護人椎野秀之及び弁護人福田貴也の控訴趣意は,訴訟手続の法令違反,事実誤認及び理由不備の主張である。また,被告人の控訴趣意は,訴訟手続の法令違反及び事実誤認の主張と解される。第2 訴訟手続の法令違反の主張について1 この点の控訴趣意は,要するに,原審において,①原審弁護人が,録音録画記録媒体も含むことを明示して供述録取書等の類型証拠開示請求をしたのに,録音録画記録媒体及び警察官調書が開示されないまま,5名の証人に対する尋問が実施された点,②原審弁護人が,死体検案書を含むことを明示して類型証拠開示請求をしたのに,被害者の死体検案書が開示されないまま,解剖医に対する証人尋問が実施された点,③母親に対する証人尋問が実施された際に,原審裁判長が,被告人が直接尋問することを認めなかった点について,これらがいずれも判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反に該当するというものである。2 録音録画記録媒体及び警察官調書が不開示のまま証人尋問が実施された点について⑴ この点の所論は,検察官立証の中核が関係者らの証人尋問である本件において,原審における証人の中で,母親,父親,母親の母親,母親の妹,K(原判決の呼称。被告人の元交際相手である知人)の5名は,いずれも重要証人であるところ,原審検察官は,原審弁護人の録音録画記録媒体も含むことを明示したこれら5名の供述録取書等の類型証拠開示請求に対して,これら5名に関する録音録画記録媒体26枚及び父親の平成28年1月8日付け警察官調書1通が存在したのに,いずれも「不見当」として開示せず,原審において,そのまま,これら5名に対する各証人尋問が実施されたが,証人尋問より前の段階で証人予定者の録音録画記録媒体を含む供述録取書等の開示を受けて,その供述内容や他の証拠との整合性,供述相互の整合性等を検討しなければ,証言内容の信用性に関する適切な反対尋問はできないから,上記のとおり,開示されるべき証拠が開示されないまま行われた5名に対する原審における証人尋問は,反対尋問を経ていない証人尋問と同視でき,憲法37条2項及び刑訴法320条の定める伝聞証拠排除法則に違反する違法な手続であり,かつ,それらが開示されていれば重要証人の証言内容は異なったものとなった可能性が高く,重要証人の証言に依拠した原判決の内容も異なったものとなった可能性が高いから,上記手続の違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるというものである。⑵ 当審における事実の取調べの結果によれば,原審における公判前整理手続において,原審弁護人が,原審検察官が取調請求した所論指摘の5名の各供述調書の証明力を検討するために,刑訴法316条の15に基づき,原審検察官に対し,録音録画記録媒体も含むことを明示して供述録取書等の適式な証拠開示請求をしたのに対し,原審検察官は,該当する録音録画記録媒体26枚及び父親の平成28年1月8日付け警察官調書1通に関し,それらの証拠が存在するにもかかわらず,「既に開示済みの証拠を除き,該当証拠は不見当」であるとして,存在しない旨を回答し,開示しなかったことが認められる(なお,原審検察官が,上記回答後に,原審弁護人に交付した証拠一覧表においては,それらの証拠のうち,父親の警察官調書1通は記載されていたが,録音録画記録媒体26枚は記載されておらず,実際に,これらの警察官調書及び録音録画記録媒体が弁護人に開示されたのは,当審段階に至ってからである。)。関係証拠によれば,この点の不開示は,原審検察官がそれらの証拠の存在を知りつつ意図的に行ったものではないとは認められるが,刑訴法316条の15が定める類型証拠開示の制度が被告人側の防御権の実質的保障に関係する重要な制度であること及びそれらの証拠を開示することの相当性に疑問を生じさせるような事情が窺われないことからすれば,結局のところ,原審検察官は,正当な理由がないのに,法律上開示すべき証拠を開示しなかったと言う外はなく,このような原審検察官の措置を前提に上記5名の者に対する各証人尋問が実施された原審裁判所における訴訟手続には法令違反が認められる。⑶ しかしながら,他方において,上記の5名の証人尋問に先立って,それぞれの供述録取書については,所論指摘の父親の警察官調書1通を除き,原審検察官から原審弁護人に開示されており,原審における実際の反対尋問がそれらの内容を踏まえて行われたものであったことに加え,原審においてなされた母親,父親等の重要証人の各証言の内容が,関係者間でやり取りされたメール等の内容,領収書や振込み関係の書類,通話履歴といった客観的証拠との整合性等を主軸として認められる高い信用性を有するものであって,仮に未開示の上記記録媒体等の内容を踏まえて各証人の記憶の程度や供述の不合理性,他の証拠との関係等に関する別の反対尋問が行われたとしても,それによって信用性が左右され得るようなものではないことなどに照らすと,これら5名の者について行われた原審における証人尋問手続が,反対尋問を経ていない場合と同視すべき程度の瑕疵を帯びているとか,憲法37条2項に反する違憲の手続であるとは到底言い得ないし,また,上記第2の2 記載の訴訟手続の法令違反がなかったならば原判決と異なる判決がなされたであろうという蓋然性があるとは認められないから,原審裁判所のこの点に関する訴訟手続の法令違反は,判決に影響を及ぼすことが明らかなものとも言えない。3 死体検案書が不開示のまま証人尋問が実施された点について⑴ この点の所論は,本件では被害者の死亡原因,死亡に至る機序,死亡日時が争いとなっているところ,原審弁護人が類型証拠開示請求をした死体検案書が存在するのに,これが開示されないまま,司法解剖を行った医師の証人尋問が実施されたために,原審弁護人は,同解剖医の証人尋問において,死亡原因及び死亡日時が曖昧な内容となっている死体検案書の記載内容に基づいて供述の信用性を弾劾することができなかったから,この証人尋問は,反対尋問を経ていない証人尋問と同視でき,憲法37条2項及び刑訴法320条の定める伝聞証拠排除法則に違反する違法な手続であり,かつ,この手続の違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるというものである。⑵ 当審における事実の取調べの結果によれば,原審公判前整理手続において,原審弁護人が,原審検察官が取調請求した専門医の供述調書(1型糖尿病の概要及び救命可能性が認められる時点等が立証趣旨)の証明力を検討するために,刑訴法316条の15に基づき,原審検察官に対し,被害者の死体検案書等について,適式な証拠開示請求をしたのに対し,同死体検案書が存在するにもかかわらず,原審検察官は,正当な理由がなくこれを開示せず(なお,原審検察官が,意図的に開示しなかったとは認められない。),そのまま,同死体検案書を作成した解剖医に対する証人尋問が実施されたことが認められる。この点の原審裁判所の訴訟手続には,上記第2の2 に記載したところと同様に法令違反が認められる。⑶ しかしながら,原審弁護人の上記類型証拠開示請求に対し,原審検察官から,上記死体検案書を除く複数の証拠が開示されており,上記解剖医に対する原審における実際の反対尋問がそれらの内容を踏まえて行われたものであったことに加え,本件における被害者の死因及び死亡に至る機序等に関しては,原審において,上記解剖医の他に,上記の糖尿病に関する専門医及び被害者が入通院していた大学病院における1型糖尿病の主治医に対する各証人尋問も実施されていて,その点に関する上記解剖医の証言内容は,それらの立場の異なる2人の医師の証言内容と符合することによって信用性が認められるものであること,後記のとおり,死亡日時については,原判決は,これらの各医師の証言に依拠して認定しているわけではないことからすると,原審における上記解剖医の証人尋問手続が,反対尋問を経ていない場合と同視すべき程度の瑕疵を帯びているとか,憲法37条2項に反する違憲の手続であるとは到底言い得ない。そして,以上に述べたところからすれば,直接死因を「不詳」,死亡日時を「平成27年4月27日早朝(推定)」とする上記死体検案書が類型証拠開示によって開示され,それを踏まえた別の反対尋問が行われたとしても,それによって原判決と異なる判決がなされたであろうという蓋然性はなく,原審裁判所の上記第2の3⑵記載の訴訟手続の法令違反が,判決に影響を及ぼすことが明らかなものとも言えない。4 母親に対する証人尋問において,原審裁判長が,被告人の直接尋問を認めなかった点について⑴ この点の所論は,母親に対する証人尋問が実施された際,被告人の反対尋問の場面において,原審裁判長が,被告人が証人である母親に対し直接個別に質問することを全く認めず,ビデオリンク方式の下,母親のいる別室との音声を切った状態で(母親には原審裁判長と被告人とのやり取りが聞こえない状態で),被告人から全ての質問事項を包括的に聴き取った上で,その質問事項の趣旨を咀嚼して,被告人に代わって質問するという方法を採り,また,被告人の追加質問の要望を2回までしか認めなかったのは,明らかに行き過ぎであり,被告人の反対尋問権を実質的に奪うものであって,刑訴法304条及び刑訴規則199条の4に違反する違法があり,かつ,この手続の違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるというものである。⑵ そこで検討するに,既に述べているとおり,本件事案の内容は,被告人が母親らに対し1型糖尿病に罹患していた被害者へのインスリン投与の中止等の指示に従うよう命じて被害者を死亡させたというものであり,当該証人は,被害者の母親である。そして,原審記録によれば,原審検察官から,母親が,本件事件以降,精神状態が非常に不安定で医師から適応障害,うつ状態と診断され,被告人と同じ空間に存在するだけで,その精神状態が極めて不安定になることが必須であることなどを理由に,母親に対する証人尋問の際には刑訴法157条の4に基づくビデオリンク方式及び同法157条の3に基づく被告人及び傍聴人との間の遮蔽の措置を採られたい旨の申立てがあり,また,母親が本件事件について話をする際には泣き出したり,過呼吸になったりすることがあり得,証人である母親の心身の状態等を考慮し,刑訴法157条の2に基づき証人尋問の際には関係者を付き添わせることが必要かつ相当である旨の申立てもなされ,原審裁判所は,いずれの申立ても理由があるものとして,ビデオリンク方式及び遮蔽の措置を採る旨の決定並びに証人尋問の際に付添人を付する旨の決定をして(これらの決定内容は,いずれも相当である。),実際の母親に対する証人尋問は,以上の各措置等が採られた下で,まず主尋問が行われ,次に原審弁護人に先立って被告人の反対尋問の場面を迎えたものである。他方で,それまでの審理の経過において,被告人は,原審第1回公判期日の冒頭手続の際,原審裁判長の発言禁止命令を無視して,大声で不規則発言を繰り返し,起訴状朗読の手続に入る前の段階で,原審裁判長から退廷を命じられたばかりか,原審第2回公判期日の主治医に対する証人尋問の際には,途中で不規則発言を繰り返した挙句,原審主任弁護人が事件関係者に対して性犯罪を行ったという誹謗中傷発言をして,原審裁判長から退廷を命ぜられていた。また,被告人は,母親に対する証人尋問に先立って行われた,父親その他の者に対する証人尋問の際にそれぞれ直接個別に反対尋問する機会を与えられたが,いずれの機会においても,自己の主張を展開させるばかりでほとんど質問をしようとせず,原審裁判長が介入してかろうじて質問の体裁にはするものの,主尋問で証人が証言した事項と関係のない事項を取り上げようとするなど,刑訴規則に則った相当かつ適式な質問方法を採ることができていなかった。そうすると,母親に対する被告人の反対尋問の機会を迎えた際には,本件事案の性質,証人と被告人の関係,証人の精神状態等からすれば,ビデオリンク方式及び遮蔽の措置並びに付添人を付する旨の措置を採っていても,被告人が直接母親に対して事件に関する問い掛けを少し行っただけで,母親の不安定な精神症状を深刻化させるおそれが具体的に認められていたと同時に,それまでの原審公判廷における被告人の言動等から,被告人によって相当かつ適式な方法による質問が行われる見込みは極めて薄かったものであるから(そのことは,この場面で,原審裁判長が被告人の聞きたい事項を聴取しようとしたのに対して,相変わらず被告人が自己の主張のみを次々に述べる態度であったことからも疑いのないところである。),原審裁判長が,被告人の反対尋問の場面で,被告人が母親に直接個別に質問することを認めず,被告人が質問したい事項を包括的に聴き取り,それを咀嚼して証人に順次質問したことに,相当性及び必要性があったことは明らかである。また,このような方法を採ることに対して,被告人及び原審弁護人からは何の苦情や異議の申立て等もなされなかったし,原審裁判長が実際に行った質問内容は,それに先立つ被告人の発言内容と対比して,被告人の意に沿うものであったと認められ,かつ,原審裁判長は,被告人から聞き取った十数点の質問を行った後に,2回にわたる追加質問を認めているのでもあるから,実質的に見れば,被告人の反対尋問権の制約の程度は極く小さいものであったと認められる。したがって,所論指摘の原審裁判長の措置は,正当に保障される被告人の反対尋問権の行使を違法に制約したものであったとは言えず,訴訟手続の法令違反には該当しない。5 以上のとおり,原審裁判所の訴訟手続に所論が指摘する判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反は認められない。6 なお,念のために付言するに,原審記録によれば,本件では,原審裁判所における手続において,原審検察官が,主位的訴因として,被告人が両親を道具として本件殺人の犯行に及んだ旨の間接正犯を主張し,予備的訴因として,被告人が両親と共謀して本件殺人の犯行に及んだ旨の共謀共同正犯を主張したのに対し,原判決は,「主位的訴因を基にして認定した罪となるべき事実」として,上記第1の1記載のとおり,被告人について,本件被害者に対する殺人罪に関し,母親との関係では間接正犯になり,父親との関係では共謀共同正犯が成立する(ただし,父親に成立するのは保護責任者遺棄致死の限度の共同正犯)旨を判示した。この点に関し,原判決は,本件のような犯罪形態においては,間接正犯が成立する場合には,その前提として指示・命令及びこれへの追従といった共謀が内包されているから,間接正犯の訴因の縮小認定として共謀共同正犯の訴因を認定することが許容され,また,本件の訴訟経過に照らして,共謀共同正犯を認定することは,被告人及び弁護人に対する防御上の不意打ちとはならない旨を説示している。本件控訴趣意には,この点の原審裁判所の判断に関する主張はないところ,本件の事案及び訴訟経過等に照らせば,本件において,訴因変更等の格別の措置を採ることなく上記第1の1記載の事実を認定しても訴訟手続上の違法は生じないとする原判決の見解は,当裁判所としても是認できるところである。第3 事実誤認の主張について1 この点の控訴趣意は,要するに,原判決が,①母親との関係で殺人の間接正犯を認めた点,②父親との関係で共謀共同正犯の成立を認めた点,③被告人の殺意を認定した点,④誤って認定した多数の間接事実により,殺人の実行行為や殺意を推認している点について,いずれも原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるというものである。2 母親との関係で殺人の間接正犯を認めた点について⑴ 原判決の説示原判決は,この点の理由として,要旨,次のように説示する。ア 関係証拠によれば,母親は,主治医からの説明により,被害者にインスリンを投与しなければ被害者が死亡する現実的危険性を認識していたのに,被告人の指示に従って被害者にインスリンを投与しなかったことが認められる。母親が,このような行動をとった理由について検討すると,被害者が死亡するに至るまでの経緯について,母親は,①当初,被害者が1型糖尿病を発症したことに衝撃を受けたが,被害者の命を守るため,インスリンの投与を毎日続けていた,②その一方,被害者の現状と将来を悲観し,精神状態が不安定となり,医師からは治らないと言われた1型糖尿病を完治させたいとの一心から,藁をも掴む気持ちで,難病治療を標榜する被告人に被害者の治療を依頼した,③被告人からは,被害者を必ず治せる旨断言され,治療は全て被告人の言うとおりに従う旨を約束させられた上,日頃,電話やメール等により,頻繁に被告人の指示に従わなければ被害者が助からない旨の脅しめいた言動をとられていた,④被告人から,被害者の身体から緑のインスリンが出ているとして,インスリンの不投与を指示されたなどと証言する。このような母親の原審証言は,被害者が1型糖尿病と聞いた母親が失神した旨の主治医の原審証言,血糖チェック表,「願書」,カレンダー,メール等の証拠に整合し,裏付けられていることからすると,信用できる。そうすると,母親については,1型糖尿病に罹患した被害者の人生を守りたいとの一心から,被害者にとってインスリン投与が毒であると被告人から言われたことも相まって,被害者の1型糖尿病を完治させる治療の一環であると信じたからこそ,これに従い,インスリンの投与を中止したものと認められる。原審弁護人は,被告人が,母親に対し,病院へ行くのは自由だとか,被告人の治療を受けるか否かは両親の自由な判断だなどといったメールを送信していることをもって,被告人は両親の判断に委ねようとしていた旨主張する。しかしながら,被告人と母親とのメールのやり取り全体をみれば,被告人は病院へ行くことが被害者に害悪がある旨を脅しめいた言葉を交えて母親に送っているのであるから,病院へ行くのは自由だとの言葉は,被害者に害悪をもたらす病院へ行くことと,被害者を完治させるという被告人の治療とを天秤に掛けさせるものであって,むしろ,母親を自分の治療に応ずるよう仕向けたメールと認められる。イ 母親が,被害者(息子)の人生を守るため,1型糖尿病を完治させたいとの思いから,これを実現できると言う被告人を信じようとした心情は,市民感覚としても十分に理解できる。すなわち,母親は,被告人の指示に従いさえすれば,インスリンを投与しなくても,被害者の1型糖尿病が完治すると信じ込んでいた以上,その余の冷静で正常な判断が相当程度鈍った精神状況に陥っており,もはや被告人の指示以外の行動を取り難い心理状態にあったものと認められる。他方,被告人が母親を自分の意のままに動くよう強いていたことは明らかである。このような,本件当時の母親の心理状態と被告人の意図に照らせば,母親は,被害者にインスリンを投与させないとの被告人の意思を心理的抵抗なしに実現に移したものであると同時に,被告人にも利用意思があったものと認められる。ウ したがって,母親は,いわば道具であるとともに,被告人にもその旨の認識があった以上,母親との関係においては,被告人にインスリン不投与という実行行為の間接正犯が認められる。⑵ 当審の判断ア 原審記録に基づき検討すると,原判決の上記要約摘示した認定,判断に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。イ 所論は,母親は,被害者の病状と医学的治療法を正しく認識しており,また,母親と被告人とのメールのやり取りの内容によれば,原判決が実行の着手を認定した平成27年4月6日に至る過程において,母親にとって被告人は少しも疑問を述べられないほどの絶対的な存在ではなく,被告人も絶対に病院に行ってはならない旨の指導は行っておらず,同月6日以降においても,母親にとって,被告人は一切の疑念を差し挟むこともできないような絶対的存在ではなかったことなどからしても,同日頃の時点において,母親に自由意思がなく被告人の指示に機械的に従わざるを得ない状態であったと評価することはできないと主張する。しかしながら,原審記録によれば,母親は,被害者が現代医学では完治できずインスリンの投与を将来にわたって継続しなければならない1型糖尿病に罹患したことを知って衝撃を受け,藁をも掴む気持ちで,非科学的な力で難病を治癒させることを標榜していた被告人に被害者の治療を依頼して,すがっていたものであるが,平成27年4月6日に至るまでの間においても,被告人から,メール又は口頭で,頻繁に,被害者の病を治すためには,被告人の指導に全面的に従う必要があるなどと言われ,その後,インスリンは毒だから被害者へのインスリン投与は中止しなければならないなどと命じられ,病院へ行ったら3年はもたないなどと言われ,医師の指導に従うことも禁じられ,更には,父親が被告人の指導に半信半疑になると,被害者を死神の自縛(呪縛の意と解される。)から解きほぐして欲しかったら,被告人の指導に従うしかないなどと言われ,更には,被害者の症状悪化により,同年3月中旬に再入院することとなり,退院後に一時,インスリン投与を再開させると,被告人から,指導に従わなかったことを再三にわたって責め立てられた上,被害者の症状の悪化は被告人の指導を無視した結果であるなどとも言われて,同年4月6日,改めて被告人の指導に従うことを約束し,その後は,被害者を救うためには,被告人を信じてその指導に従う以外にないと一途に考えていたことが認められる。また,被告人は,同年2月初旬に一度被害者と会った以降は,被害者が重篤な状態となった同年4月26日夕方までの間,被告人の治療は神霊の世界で治すもので遠隔操作をしているという説明をし,メール等を用いて,インスリンを投与するな,医師の指導に従うな,被告人を信じなければいけないといった指示を出すだけといった対応であったのに,母親は,被告人から請求されるがままに,多数回にわたり,被告人に報酬として多額の金銭を支払い続けている。そして,同年3月中旬に被害者が再入院した際,担当医から,インスリンを投与しなければ,被害者が死ぬ危険性があることの説明を受けたにもかかわらず,その後もインスリンの不投与を続けている。加えて,母親は,一貫して被害者の快復を強く望んでいたのであるが,被害者の症状が悪化していたのに,病院の診察予定日であった同年4月22日に被害者を病院へ連れて行かず,その後,被害者が衰弱し,死亡の一,二日前に容態が深刻となった段階に至っても,被告人の指示を仰ごうとすることに必死で,最終的に駆けつけた母親の妹が被害者の容態を見て救急車を呼ぼうと言うまで,病院に連れて行こうとしていない。これらの事情によれば,同月6日の時点において,母親が被告人を妄信し,その指示に機械的に従わざるを得ない状態にあったと評価することができる。したがって,被告人に母親を道具とする間接正犯の成立を認めた原判決の認定,判断に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。3 父親との関係で共謀共同正犯の成立を認めた点について⑴ 原判決の説示原判決は,この点の理由として,要旨,次のように説示する。ア 父親は,①平成27年4月6日当時,インスリンの不投与という被告人の指示に従ったために被害者が発症当時と同様の病状となって同年3月中旬には再入院をせざるを得なかったという事実を踏まえ,血糖値の測定さえさせない被告人のやり方に疑問を持っていた,②その疑問を母親(妻)に言って話し合ってみたものの,母親から,もう一度信じて被告人の指示する治療に従って被害者の1型糖尿病を治したいなどと強く言われ,母親の一途な思いに負けて,被告人の治療には半信半疑の状態ではあったが,再びインスリンの不投与を決断した,③同時に,被告人の治療を疑っていることを被告人に見透かされれば,被告人から被害者の治療を駄目にされるのではないかとおそれたなどと証言する。このような父親の原審証言は,信用性に疑いを差し挟むべき点は見当たらず,信用できる。そうすると,父親については,被告人の治療には半信半疑ではあったものの,被告人の指示する治療に従いたいとの母親(妻)の強い思いに抗しきれず,また,被告人を疑っていることを見透かされれば被告人に被害者に対して害悪を加えられるのではないかとの思いから,インスリンの不投与という被告人の指示に従う決断をしたものと認められる。イ 以上によると,父親は,被告人の指示や言動による影響を相当程度受けてはいたものの,その程度は母親程大きくはなく,被害者にインスリンを投与するとか,被害者を病院へ連れていくといった行動をとることは不可能ではなかったと認められ,父親を道具として利用したとまで認定することには躊躇を覚える。ウ そして,関係証拠によれば,被告人は,①被害者の1型糖尿病を完治したいとの両親の依頼に応じて,その旨の契約を結び,被害者の治療を引き受けていること,②その治療に絡み数百万円に上る多額の金銭を得ていること,③母親に対し,日頃,電話やメール等で,病院の治療は害悪であるとか,インスリンは毒であると申し向けるなどして,自らの指示に従うよう積極的に働きかけていた中で,従前インスリンの投与をしていた両親に対し,インスリンの不投与を指示したことが認められる。そうすると,被害者へのインスリンの不投与の指示は,病院では行わない方法によって難病を治すことができると標榜する被告人の思いを実現しようとの積極的な働きかけの一つであったと認められる。したがって,被告人の上記指示は,被害者へのインスリンの不投与という殺人の実行行為に対して初動的かつ主導的に強い影響を与えたものとして,まさに正犯の行為と評価すべきである。また,被告人の上記指示は,母親を通じて父親に伝わり,父親がその指示に従う決断をしたのであるから,順次共謀となる。なお,父親については,殺意が認められず,保護責任者遺棄の認識・認容に止まるから,保護責任者遺棄致死の限度で共同正犯が成立する。⑵ 当審の判断ア 原審記録に基づき検討すると,原判決の上記要約摘示した認定,評価に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。イ 所論は,共謀共同正犯における「謀議」は,共同して犯罪を行う意思を形成するだけの共謀が必要であり,単なる意思の連絡又は共同犯行の認識の存在だけでは足りないと解すべきところ,父親は,少なくとも平成27年1月1日以降は,被害者が死亡するまで,一度も被告人と顔を合わせたことも,メールのやり取りをしたこともなく,また,被告人が母親を通じて父親に対し,具体的指示を行った形跡は窺われず,父親は,母親の熱意に押されて被告人の治療を受けるという母親の方針を容認したにすぎないのであって,被告人と父親の間に「単なる意思の連絡又は共同犯行の認識の存在」を超える共謀は認められないと主張する。しかしながら,被告人は,母親のみならず父親との間でも,被害者の治療を引き受ける旨の契約を結んだものである上,契約後に父親と直接話をすることはなく,メールのやり取りもなかったとはいえ,母親から被告人に伝えられた母親と父親の間のやり取りに関する事項の内容等からすれば,被害者の病状や治療に関して両親の間で日頃から意思の疎通が図られるであろう旨を十分に認識していたことは,関係証拠上容易に推認できるところである。被害者へのインスリン投与の中止という被告人の指示に反して父親がインスリンを投与したりすれば,いくら母親に指示を守らせても意味がないことからすれば,被告人は,母親に対してインスリンの投与中止等を指示したのみならず,父親に対しても,母親を介して,同様の指示をする意図を有し,その指示をしていたものと認めることができる。他方において,父親が,被害者へのインスリンの投与中止を継続するという実行行為に及んだのは,まさに被告人の母親に対する直接の指示を伝え聞いたからに外ならない。したがって,被告人に父親との間で母親を介した順次共謀による共同正犯の成立を認めた原判決の認定,判断に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。4 被告人に殺意を認定した点について原判決の説示原判決は,被告人に未必の殺意を認めた理由として,要旨,次のとおり説示する。母親やS(原判決の呼称)の原審証言等によれば,被告人は,平成26年12月末頃に被害者を治療する契約を結んだ当時から,被害者が1型糖尿病に罹患しており,定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性を認識していたと認められる。そして,母親の原審証言及び被告人と母親間でやり取りしていたメールの内容等によれば,被告人は,自らの指示により両親が被害者へのインスリン投与を中止した以降,被害者の容態が1型糖尿病発症当時と同様な状態に悪化して再入院せざるを得なくなった状況や,また,平成27年4月7日からのインスリン不投与以降,被害者の病状が再び再入院当時のような状態に悪化していく状況をいずれも認識していたにもかかわらず,被害者を病院で治療させようとせず,むしろ,自らの治療が成功しているとの態度をとり続けていたことが認められる。この点,被告人は,長年にわたってほぼ無償で,糖尿病を含む難病治療をしてきており,被害者に殺意を抱くはずがない旨を供述するが,未必の殺意を否定する理由にはならない。したがって,被告人は,定期的なインスリン投与がなければ被害者が死亡する現実的な危険性があると認識し,かつ,インスリン不投与の指示を継続し,被害者を病院に行かせようとしないなどしてその危険性が実現することを認容していたものと推認することができる。そして,この推認を覆すに足りる事情があるかどうかを検討しても,そのような事情は認められない。そうすると,被告人は,インスリン不投与による被害者の死亡を認識し認容していたもので,未必の殺意が認められる。当審の判断ア 原審記録に基づき検討すると,原判決の上記要約摘示した認定,評価に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められない。イ 所論は,まず,原判決がその認定根拠としている「願書」の記載等の点は,いずれも,平成26年12月末頃の契約当時,被告人が,被害者は定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性があることを認識していたと認定する根拠にはならず,被告人は,インスリン不投与により被害者が死亡する危険性を認識していなかったと主張する。しかしながら,母親は,原審公判廷で,平成26年12月末頃に被告人と「願書」を交わして被害者の治療に関する契約を結んだ際に,被告人に対し,1型糖尿病に罹患している被害者はインスリンを打ち続けなければ生きられないことを話したと証言しているところ,原判決は,要するに,信用できる母親の上記原審証言の外に「願書」の記載及び上記Sの原審証言等に基づき,被告人が,平成26年12月末頃には,被害者が1型糖尿病に罹患していることや1型糖尿病を罹患している者にはインスリンの投与が必要であることを認識していたという事実を認定するとともに,母親の上記原審証言に基づき,被告人がその頃から定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性についても認識していた事実を認定したものと解されるのであって,「願書」の記載等から後者の事実を推認しているわけではないから,所論の指摘は当たらない。本件では,原判決が,平成26年12月末頃の契約当時,被告人が,被害者は定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性があることを認識していたと認定した点に不合理な誤りは認められない。なお,被告人が,平成27年3月9日,母親に対し,被害者はインスリンを投与,注射しなければ生きられないなどとの記載のあるメールを送信していることからしても,遅くとも原判決が被害者の死亡につながる両親への指示を被告人が行ったとする期間の始期である同年4月5日頃に,被告人が,被害者が定期的にインスリンを投与しなければ死亡する危険性があることを,認識していたことは明らかである。ウ 次に,所論は,①原判決は,父親は被害者の死の危険を認容したことがないとして殺意を否定しているが,そうであれば,被告人は,被害者と一緒に生活していた父親と異なり,母親を通じて間接的に被害者の様子を伝え聞いていたにすぎないのであるから,被害者の死の危険に対する事実認識において,被告人の認識の程度は父親の認識の程度を上回るものではなく,また,自らの「治し」行為により被害者が治癒するものと信じていたのであるから,なおさら被害者の死の危険を認容したことがなく,殺意がないと言うべきであり,また,②原判決は,母親はインスリン不投与の指示こそが被害者の1型糖尿病を完治させる治療であると信じていたから殺意がないとしているが,そうであれば,被告人も同様に,自らの「治し」が被害者の1型糖尿病を完治させる治療であると信じていたのであるから殺意がないと言うべきであって,両親の殺意を否定しながら,被告人の殺意を肯定することは整合性を欠く判断であると主張する。しかしながら,原判決は,父親や母親は,いずれも被害者の快復を強く願い,治療のために被告人の指示に従っていたものであって,殺意が認められないことは明らかであるのに対し,被害者を治癒させることができると信じて治療していたなどという被告人の原審公判供述はおよそ信用できないと判断したものであって,このような原判決の認定,判断に論理則,経験則等に反する不合理な誤りは認められず,原判決の判断は整合性を欠くとの指摘は当たらない。エ また,所論は,被害者が平成27年2月10日頃にインスリンの投与を止めても1か月以上にわたって死亡することなく,その後の治療により回復したという事実について,被告人は同年3月下旬頃には認識していたのであるから,被告人によるインスリン不投与の指示の始期とされる同年4月5日から被害者が死亡した同月27日までの22日間において,インスリンを投与しなくても,その後適切な治療を受ければ死亡することなく回復すると考えていたと見るべきであると主張する。しかしながら,被告人と母親とのメールのやり取りによれば,被告人は,母親が被害者を病院に連れて行って医師の治療の下に置いたことを強く非難し,それを受けた母親から,改めて被告人の指導に従うことを約束する旨の返答を受けたことが明らかなのであるから,被告人が,同年4月5日以降の時点で被害者が再び医師の治療を受けることを念頭に置いていたという所論は採用できない。オ 更に,所論は,本件と同様に殺人の不真正不作為犯の成否が争いとなった事案について,東京高裁平成15年6月26日判決(高等裁判所刑事判決速報平成15年85頁)は,「殺人罪においても,具体的な動機が認定できなければ,故意が認定できないというわけではないが,少なくとも何らかの動機が合理的に想定し得るというのでなければ,行為者が殺意を有していたことには,通常合理的疑いが生じると考えられる」と判示しているところ,原判決は,被害者の死亡を容認するだけの強い動機や何らかの合理的に想定し得る動機を示すことなく被告人に殺意を認定している,また,被告人は被害者の死亡によって何ら利益を得ることができないどころか,これまで被告人の治療によって病気が治ったと信じてきた者からの信頼を失うなど多大な不利益を受ける立場にあったと主張する。しかしながら,所論が引用する上記裁判例は,当該被害者が医師による治療を打ち切れば死亡するおそれが大きいことを知りながら,病院から連れ出してホテルの一室に運び込んだ時点における殺意の有無が問題となった事案であり,被告人が,インスリンの投与をしなければ死亡することを知りながら,インスリンを投与することなく被害者の治療ができると母親が信じて被告人の指示に従っていることに乗じて,更に,母親にインスリンの投与の中止等の指示に従うように命じた本件とは事案を大きく異にする。上記裁判例の言うとおり,具体的動機が認定できなくても殺意を認定することは妨げられないのであり,また,同裁判例の表現になぞらえれば,本件は,動機の推認ができなくても合理的疑いなく未必の殺意を認定できる経過の事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
東京高等裁判所 第12刑事部
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[下級] [民事] 平成28(ネ)381  269ViewsMoreinfo
国家賠償等請求控訴事件
平成28(ネ)381
本件は,平成23年3月11日に発生した平成23年東北地方太平洋沖地震後の津波により,石巻市立大川小学校に在学していた児童74名及び教職員10名が死亡した事故に関して,死亡した児童のうち23名の父母である第1審原告らが,第1審被告市の公務員であり,第1審被告県がその給与等の費用を負担していた同小学校の教員等に児童の死亡について過失があるなどと主張して,第1審被告らに対し,国家賠償法1条1項,3条1項又は民法709条,715条1項に基づき,損害賠償として,総額22億6245万7642円(別紙2「請求額及び認容額一覧表」(以下「別表2」という。)の「原審請求額」欄に記載のとおり,第1審原告A11の請求は6245万7642円を限度とする一部請求,第1審原告A11を除くその余の第1審原告らの請求は,児童1名当たり1億円の一部請求)及びこれに対する遅延損害金(上記地震の日である平成23年3月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員)の連帯支払を求めるとともに,第1審被告市に対し,公法上の在学契約関係に基づく安全配慮義務違反等があったと主張して,債務不履行に基づき,同内容の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
事案の概要
平成30年4月26日
仙台高等裁判所 第1民事部
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[下級] [刑事] 平成29(う)1848  119Views
住居侵入,強盗殺人,死体遺棄(変更後の訴因 死体損壊,死体遺棄)
平成30年4月25日
東京高等裁判所 第3刑事部
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[下級] [民事] 平成27(ワ)224  49ViewsMoreinfo  up!
地位確認等請求事件
平成27(ワ)224
本件は,被告との間で期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」と25いう。)を締結して就労している従業員(以下「有期契約労働者」という。)である原告らが,被告と期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している従業員(以下「無期契約労働者」という。)との間に,賞与及び物価手当(以下,これらを合わせて「本件手当等」という。)の支給に関して不合理な相違が存在すると主張して,被告に対し,①当該不合理な労働条件の定めは労働契約法20条により無効であり,原告らには無期契約5労働者に関する賃金規程の規定が適用されることになるとして,当該賃金規程の規定が適用される労働契約上の地位に在ることの確認を求め(上記第1の1),②平成25年5月から平成27年4月までに支給される本件手当等については,主位的に,同条の効力により原告らに当該賃金規程の規定が適用されることを前提とした労働契約に基づく賃金請求として,予備的に,不法行為に10基づく損害賠償請求として,実際に支給された賃金との差額及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年6月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(上記第1の2及び4),③平成27年5月から平成29年10月までに支給される本件手当等について,不法行為に基づく損害賠償請求として,実際に支給された賃金との差額及びこれに15対する不法行為の日の後である平成29年10月26日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払(上記第1の3及び5)を求めた事案である。
事案の概要
平成30年4月24日
松山地方裁判所
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[下級] [民事] 平成27(ワ)225  58ViewsMoreinfo  up!
地位確認等請求事件
平成27(ワ)225
本件は,被告との間で期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して就労している従業員(以下「有期契約労働者」という。)である原告らが,被告と期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」と15いう。)を締結している従業員(以下「無期契約労働者」という。)との間に,賞与,家族手当,住宅手当及び精勤手当(以下,これらを合わせて「本件手当等」という。)の支給に関して不合理な相違が存在すると主張して,被告に対し,①当該不合理な労働条件の定めは労働契約法20条により無効であり,原告らには無期契約労働者に関する就業規則等の規定が適用されることに20なるとして,当該就業規則等の規定が適用される労働契約上の地位に在ることの確認を求め(上記第1の1),②平成25年5月から平成27年4月までに支給される本件手当等については,主位的に,同条の効力により原告らに当該就業規則等の規定が適用されることを前提とした労働契約に基づく賃金請求として,予備的に,不法行為に基づく損害賠償請求として,実際に支給された賃25金との差額及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年6月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(上記第1の2,4,6),③平成27年5月から平成29年10月までに支給される本件手当等について,不法行為に基づく損害賠償請求として,実際に支給された賃金との差額及びこれに対する不法行為の日の後である平成29年10月26日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払(上記第1の3,55,7)を求めた事案である。
事案の概要
平成30年4月24日
松山地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成28(う)1917  108Views
営利略取,逮捕監禁,強盗致死,死体遺棄,拐取者身の代金取得
平成30年4月18日
東京高等裁判所 第5刑事部
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[下級] 平成29(行コ)5  144ViewsMoreinfo
平成29(行コ)5
本件は,処分行政庁である沖縄県知事が,参加人による本件開示請求に対し,本件開示決定をしたため,被控訴人が,控訴人に対し,本件開示決定の取消しを求めた事案である。
事案の概要
平成30年4月17日
福岡高等裁判所 那覇支部
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[下級] [民事] 平成24(ワ)9644  177Views
損害賠償請求事件
平成30年4月13日
大阪地方裁判所 第25民事部
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[下級] 平成28(行ウ)107  132ViewsMoreinfo
退去強制令書発付処分取消請求事件
平成28(行ウ)107
本件は,ベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」という。)国籍を有する外国人女性である原告が,名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」という。)入国審査官から,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)24条4号ロ(不法残留)に該当する等の認定(以下「本件認定」という。)を受けた後,平成28年4月22日,口頭審理請求権を放棄する旨の意思表示をした(以下「本件口頭審理放棄」という。)ため,名古屋入管主任審査官から,同月25日付けで退去強制令書発付処分(以下「本件処分」という。)を受けたところ,本件口頭審理放棄は,原告の真意によるものではなく無効であるなどと主張して,本件処分の取消しを求めた事案である。
事案の概要
平成30年4月11日
名古屋地方裁判所 民事第9部
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