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事件番号/事件名裁判年月日/裁判所判決書
[下級] [刑事] 平成27(わ)581  164ViewsMoreinfo
死体損壊,死体遺棄,強盗殺人被告事件
平成27(わ)581
被告人2名の強盗殺人等被告事件(否認)において,被告人の一方に無期懲役,他方に懲役30年を言い渡した事例
判示事項の要旨
平成28年6月24日
札幌地方裁判所
詳細/PDF
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[下級] [民事] 平成27(ワ)1306  285ViewsMoreinfo
自動車引渡請求事件
平成27(ワ)1306
本件は,訴外札幌トヨタ自動車株式会社(以下「販売会社」という。)が,訴外A(以下「本件破産者」という。)に対し,別紙物件目録記載の自動車(以下「本件自動車」という。)を割賦販売した際に,その割賦金等債権の担保として本件自動車の所有権を留保したところ(以下「本件留保所有権」という。),本件破産者が割賦金等の支払を遅滞したため,本件破産者の委託を受けて販売会社との間で前記割賦金等の支払債務を連帯保証した原告が,保証債務の履行として販売会社に前記割賦金等の残額を弁済し,法定代位により本件留保所有権を取得したと主張して,本件破産者の破産管財人である被告に対し,本件留保所有権に基づき,破産法65条の別除権行使として本件自動車の引渡しを求めた事案である。
事案の概要
平成28年5月30日
札幌地方裁判所
詳細/PDF
HTML/TEXT
[下級] [刑事] 平成26(わ)81  151ViewsMoreinfo
業務上過失致死傷(認定罪名:業務上過失致死)
平成26(わ)81
本件遊泳場所付近の加茂川は川幅が10m以上あり,その河床は岩や石が散開して平らではなく,こけが生えており,他方で,同被告人らが引率する園児は,いずれも年齢5歳から6歳で,その行動を統制することが容易ではない年齢である上,その遊泳能力も未熟であった。以上の事情の下において,被告人 a と同様の,園児らを引率して前記河川で園児らを遊泳させる幼稚園園長の立場にあった者にとって,同日,加茂川では増水の可能性があることを予見でき,かつ,増水等危難が起きた場合には,園児らを安全に退避させることが著しく困難な状況になることを予見することが可能であった。したがって,前記立場にある被告人 a としては,自ら,あるいは同幼稚園主任教諭b又は同幼稚園年長組担任教諭cに指示するなどして,あらかじめ,河川での遊泳に伴う危険性について十分な知識を習得し,当日の注意報等の確認のみならず,当日の遊泳開始直前までの降水量等を,本件遊泳場所付近のみならず,その上流域についても確認し,増水等危難が生じる可能性を十分に考慮し,遊泳を実施する際は,ライフジャケットを準備して園児らに適切に装着させるなど,園児らの水難事故を未然に防ぐための計画及びその準備を整えるべき業務上の注意義務があった。しかるに,被告人 a は,これを怠り,あらかじめ,河川での遊泳に伴う危険性について十分な知識を習得せず,前記加茂川上流域における断続的な降雨や当日の雷注意報,大雨洪水注意報等をいずれも十分に調査せずにそれらを認識せず,西条市街地及び本件遊泳場所付近で降雨があったことを認識しながら,加茂川の増水の可能性を予見せず,増水等危難は生じないものと軽信し,本件遊泳を実施した際,ライフジャケットを準備せず園児らに適切に装着させなかった過失により,同日午後3時38分頃,本件遊泳場所において,折からの上流における降雨等により加茂川の水位が突如上昇したこと(以下「本件増水」という。)により,同河川内を水から出るため移動中であったA(当時5歳)をして,増水した同河川の水流により下流に押し流されさせ,よって,同日午後4時24分頃,Aを同河川内で溺死させた。(証拠の標目の要旨)※括弧内の甲・弁の番号は,証拠等関係カードにおける検察官・弁護人請求の証拠番号を示す。被告人3名の当公判廷における供述証人B,同C,同D,同E,同F,同G,同H,同I,同J,同K及び同Lの当公判廷における供述H(甲14。不同意部分を除く。)及びM(甲94。不同意部分を除く。)の検察官に対する供述調書司法警察員作成の実況見分調書(甲1,58,71。甲1は不同意部分を除く。)検察官(甲17。不同意部分を除く。),検察事務官(甲32,84)及び司法警察員(甲2,15)作成の捜査報告書住友共同電力株式会社総務環境部長(甲5)及び横浜地方法務局横須賀支局長(甲57)作成の捜査関係事項照会回答書松山地方気象台長作成の捜査関係事項照会書(回答)(甲7,11,80。甲11は添付書面部分に限る。)黒瀬ダム管理事務所長作成の「捜査関係事項照会書について」と題する書面(甲9)司法警察員作成の写真撮影状況報告書(甲59)検察官作成の捜査関係事項照会書謄本(甲95)一般財団法人日本気象協会管理課長作成の「平成28年2月5日付けで,」から始まる書面(甲96。不同意部分を除く。)水辺の安全ハンドブック(写し)(甲93)報告書(弁4,5)(争点に対する判断)訴因変更後の本件公訴事実の要旨は別紙1(添付省略)のとおりである。当裁判所は,被告人 a についてはAの死亡結果と因果関係のある過失が認められるが,ほか2名の傷害結果と同過失との因果関係はなく,被告人b及び同cについては過失が認められないと判断したので,以下,過失判断の前提となる事実関係について検討し(第1,2),この事実関係及び当事者の主張(第3)を踏まえて,予見可能性の有無を検討し(第4),これらを前提として,どのような根拠により検察官主張のうちどの範囲で結果回避義務が認められるかを判断し(第5),各被告人ごとの過失の有無を判断する(第6,7)。第1 前提となる事実関係関係各証拠によれば,次の事実が認定できる(概ね争いがないか,証拠から容易に認定できる。以下,付記した証拠のうち,氏又は氏名及び数字は,供述調書の頁数を指し,被告人c①は第6回公判におけるもの被告人c②は第7回公判におけるものを指す。)。1 被告人らの立場等被告人aは,本件幼稚園教諭,同主任教諭を務めた後,平成18年8月から本件当日の平成24年7月20日を含む同年9月19日までの間(以下,日付は特に断らない限り,平成24年のそれを指す。),本件幼稚園の園長であり,同幼稚園の園務全体を統括する責任者として他の教諭を指揮監督する立場にあり,被告人bは,本件当時,本件幼稚園の主任教諭として,他の教諭に対して指導・助言し,園長を補佐する立場(被告人a1),被告人cは本件当時,年長組の担任教諭であった。また,本件当時,同幼稚園には,幼稚園教諭としての経験の長い順に,N,L,O(パート),K,P(パート)の5名の教諭が在籍し(被告人b4),年長の園児は31名,全児童で100名前後であった。なお,本件幼稚園にはインターネットに接続されたパソコンが1台あり,主に被告人bが使用していた(被告人b6,7)。2 本件遊泳場所付近の状況加茂川は,石鎚山系から山間部を,概ね南方から北方に向けて流れる河川であり,乙は,その右岸(上流から下流を見て右側を「右岸」,左側を「左岸」という。)に面しており,そのやや上流で複数の支流が交わっている(甲1,2)。その流域は石鎚山頂付近を含む山間部で,乙付近での流域面積は約83.86㎢である(甲14〔資料1の3枚目〕)。なお,乙付近より上流域に細野測水所があり,そのやや下流には兎之山発電所維持放流設備及び本流取水堰堤(以下「本件固定堰」という。兎之山発電所に通じる取水口の取水量は最大毎秒3.0㎥)が設置され,維持放流として毎秒0.056㎥が流出されている(弁5)。本件遊泳場所(その状況は,概ね別紙2現場見取図第4図〔甲1添付のもの,添付省略〕のとおりであるが,本件増水前の川幅は同図面よりも狭い。)は,乙西側の加茂川内であり,同所付近の川幅は十数mある。その右岸には,西向きに下る法面に石積みされた護岸堤防があり,南北に2か所,石段が設置され(以下,南寄りのものを「上流側石段」,北寄りのものを「下流側石段」という。),これが乙から加茂川に入る際の経路となっている(甲1)。その左岸には,主要地方道に沿って設置されたコンクリート擁壁との間に河川敷(高水敷)が広がっているところ,河川敷は平坦でなく,河川側から擁壁側にかけて徐々に高くなっており,その高低差は2m以上ある(甲71)。増水していない状態の同所付近の加茂川の水深は,左岸側が浅く,乙側に向けて徐々に深くなっており,右岸沿いは,上流側石段を下りた辺りで2m弱であり,そこから下流側石段に向かって徐々に浅くなってゆき,下流側石段下付近では,大人のくるぶしから膝下程度となっている。また,水流は,右岸側が速く,左岸側が緩やかであり,上流側石段付近の上流側と下流側石段付近の下流側はやや水流が速いものの,両石段の間の流れは全体的に緩やかで,河川敷に近いところは,ほとんど流れがない。両石段の間の河床は,下流側石段下付近には,こけの生えた大きな石が幾つかあって滑りやすい一方,河川敷側は砂利で埋められている。(D2から6)3 一般的な気象情報等気象庁の地方機関で愛媛県を管轄する松山地方気象台は,県内の天気予報,注意報・警報を発表するなどの予報業務や,その前提となるデータ観測等の観測業務などの業務を行っている(E1,2)。天気予報は,県内を東予(四国中央市,新居浜市,西条市,越智郡上島町,今治市),中予,南予の3地方に区分して午前5時,午前11時,午後5時に定期的に発表し,注意報・警報は随時発表していた(E29,31)。降水量の観測等としては,全国約1300か所地点に設置された地域気象観測システム(通称アメダス)において転倒ます型雨量計により0.5mm単位で実測し,それをデータベース化(表示時刻前1時間の降水量)したもの(E3,4),全国約20か所に設置し全国をカバーする気象レーダーによる観測結果から雨粒と推定されるものを選別し,その時刻の雨の強度(その雨雲による1時間当たりの雨量)として1km四方のマス目ごとに表示しデータベース化したもの(E5から8),観測時刻前1時間に積算されたレーダーの強度とアメダス等全国約1万か所の雨量計で実測した降雨量を比較して実際の値に補正した解析雨量を1km四方のマス目ごとに表示しデータベース化したもの(E9から12)などがある。気象庁が開設するホームページには上記気象情報が誰でも無料で閲覧できるよう公開されており,①天気予報は発表時刻になると最新の情報が閲覧でき,②アメダスによる降水量のデータは1時間ごとの値が約10分の時間差で,③気象レーダーによる雨雲のデータは5分ごとの値が約二,三分の時間差で,④解析雨量は30分ごとの値が約20分の時間差で,それぞれ更新されて閲覧できるほか,②は過去のデータも閲覧でき,③④は二,三時間前までのものが閲覧できた。なお,NHKのニュースの際に放送される天気予報においては気象台発表の予報が用いられていた(E18,19)。本件当時,一般財団法人日本気象協会のウェブ・サイトである「tenki.jp」では,気象庁から入手するデータを使用し,アメダスによる降水量(過去12時間から現在まで)については1時間に1回自動更新し,気象レーダーによる雨雲の動き(過去2時間から6時間先の予測まで)については10分間に1回自動更新し,誰でも無料で閲覧することができた(I5,7,甲17)。第2 本件事実経過関係各証拠によれば,次の1ないし4の各事実を認めることができる。1 本件お泊り保育の準備状況,被告人らの役割等本件幼稚園では,平成4年から,乙でお泊り保育を実施しており,その際には,本件遊泳場所において園児らによる川遊びを実施していた(被告人a2)。お泊り保育の準備については,例年,年長園児の担任教諭が担当しており,平成24年度は被告人cが4回目の担当となった。担当者の役割や権限等については明確な定めがなく,スケジュールの作成,保護者への配布文書等の作成,バスの手配,乙との連絡調整,食事の手配や買出し等の準備といったことを担当していた(被告人c①5,8,同a3,同b11)。また,主任教諭は,本件お泊り保育の準備に当たり,担当者に助言するなどの立場にあった(被告人b80,同a22)。お泊り保育の実施についての決定権限は園長にあり,本件以前にお泊り保育や遊泳(水遊び)を中止した際は,園長が主任教諭と相談した上で中止を決定していた(被告人b8,9)。被告人cは,4月上旬に乙に下見に行き,同所までの経路や施設を確認したほか,本件遊泳場所の様子を下流側石段の上から見てこれまでとほぼ変わっていないことを確認した。被告人cは,同月中に,前年度までの例に倣って本件お泊り保育のスケジュールを作り始め,被告人bと話し合いながら案を考えた上,5月頃から週1回程度開かれる職員会議(パート職員以外の教諭及び園長である被告人aが出席)において検討し,最終的には被告人aの了解を得て決定されてゆき,6月19日までに遊泳(水遊び)を含め例年とほぼ同様の活動内容のスケジュールが決定された。被告人cは,これを乙のスタッフに電話で伝え,7月3日にはこれを記載した資料を保護者への説明会で配布した。また,7月14日の職員会議において,例年どおり,本件遊泳場所を前提に(被告人c①4,同②36),本件遊泳中の各職員の役割等について,被告人aが下流側,被告人cが上流側に立ち,その間で園児らを遊泳させ,他の教諭は園児らを見守ることが決定された。なお,年長園児らの約半数は,浮き具なしでは泳げなかった(被告人a36,同c②37)。一方,雨天等の場合はお泊り保育自体あるいはその一部である遊泳(水遊び)や山登りが実施できないため,被告人らにおいても本件当日の天候を気にしていたが,これを確認する担当者や確認方法は決められず,各々が各自で天気予報等を見るにとどまっていた。なお,お泊り保育2日目の山登りの際,石鎚登山ロープウェイで成就社に園児らを引率する予定であったため,被告人cが,本件の約1週間前にインターネットで山の降水量を確認しようとしたこと,石鎚登山ロープウェイの従業員に山の状態を確認したこと(被告人c②57),その後7月19日に乙に電話をして現地の天候や川の様子を聞き,問題ないとの返答を得たこと(被告人c①5から13,同②1から7,31から33,同b9ないし19),被告人bが,7月18日に加茂川上流域にある成就社のアメダスのデータを閲覧したこと(被告人b57,79)があったが,その他に被告人らが本件当日及びその数日前からの加茂川上流域の降水量を確認したことはない。前記一連の職員会議において,川における危険について調査するか否か,川遊びについて増水が起きた場合にどう対応するか,緊急時の退避方法をどうするか,ライフジャケットは持っていった方がよいか,当日の上流域の天候の確認の要否及び確認方法などの話題が出たことはなかった(被告人a4,同b17)。2 本件当日の天候等7月20日,県内は大気が非常に不安定になっていたため,松山地方気象台により県内全域に雷注意報(落雷や急な強い雨に注意を呼び掛ける内容)が発令され,同日午後2時5分から同日午後5時10分までの間,上浮穴郡久万高原町及び伊予郡砥部町に大雨洪水注意報が発令されていた(甲80,E15ないし17,20)。また,同日の東予地方の天気について,午前5時発表の天気予報では「曇り時々雨ところにより雷を伴う」(時々雨とは,5時から24時までの4分の1以上2分の1未満の時間が1時間に1mm以上の雨と予想される場合を指す。)であり,1時間に1mm以上の降水確率は6時から12時が50%,12時から18時が60%,午前11時発表の天気予報では「曇り昼過ぎから夕方雨ところにより雷を伴う」,12時から18時の降水確率が50%と予報されていた(E16,17)。本件当日,本件遊泳場所よりも上流にある石鎚山周辺の加茂川上流域で降雨があり,石鎚山頂周辺では強い雨が降った時間帯もあった。すなわち,本件当日午前10時頃から午後1時30分頃までの間,石鎚山周辺の加茂川上流域付近において,解析雨量で1時間に1mmから30mm程度の降雨(甲84,E12から14)があり,石鎚山成就社(気象庁設置アメダス)では午前9時から午前10時に2.0mm,午前10時から午前11時に3.5mm,午前11時から午後零時に0.5mm,午後零時から午後1時に2.5mm(甲7)の,大平(黒瀬ダム管理事務所設置雨量計)では午後零時から午後1時に1mm(甲9)の,東之川(同事務所設置雨量計)では午前10時から午前11時に3mm,午後零時から午後1時に1mm(甲9)の降雨があった(おおよその位置関係は別紙3「各地点の位置関係」〔甲2添付のもの,添付省略〕のとおりである。)。なお,気象庁においては,1時間の雨量が10mmから20mmを「やや強い雨」(傘をさしていても地面からの跳ね返りで足下がぬれる程度の強さ),20mmから30mmを「強い雨」(土砂降り)と表現している(E14,15)。また,気象台の基準によれば,乙付近の西条市の山地においては,1時間に40mm以上の降雨が予想される場合に大雨洪水注意報が発令される(E20,33)。本件当日の午前中,西条市内にある本件幼稚園付近において十数分程度の降雨があった(被告人c②9)ほか,昼前頃には乙付近においてもまとまった降雨があった(D8,C1)が,その後,被告人らが本件幼稚園から乙に移動する間を通じて晴れており,本件遊泳当時,本件遊泳場所上空は晴れていた(甲15,32)。なお,本件遊泳場所からは,石鎚山山頂を見通すことができない(被告人a7)。3 本件当日の本件お泊り保育及び川遊びの状況本件当日,午後1時過ぎに園児らは本件幼稚園を出発し,同日午後2時23分頃,乙に到着した(被告人b20,甲15)。その頃,同所付近の地面は一部ぬれ(甲15写真番号31),水たまりがあった(被告人c②11)。同日午後2時45分過ぎ頃,園児ら31名は下流側石段から加茂川に入り,水面を横断して河川敷に移動した。同日下見をしたKが川遊びの場所として上流側石段寄りの左岸側がよいと提案したため,一同は移動したが,最終的には本件遊泳場所に引き返し,同日午後3時頃,本件遊泳場所で本件遊泳(川遊び)を開始し,被告人ら8名の教諭が監視をしていた。同日午後3時29分頃,被告人bがすいか割りの準備のために川から上がり,下流側石段を通って乙に向かった。その後,被告人cは,川の中や河川敷で遊んでいた園児らに対し,上がるよう声をかけた(被告人c②14から18)。4 本件増水及び事故発生一方,午前中からの前記降雨等により加茂川の流量は増加し始めており(前日までの降雨の影響は不明である。),本件遊泳場所付近より約2.9km上流にある細野測水所(位置関係は別紙3のとおり)において,加茂川の流量は,本件当日零時から7時10分まで毎秒0.35㎥,7時20分から14時20分まで毎秒0.31㎥であったが,14時30分には毎秒0.57㎥,同40分には毎秒6.67㎥,同50分から15時には7.44㎥,15時10分から同20分には8.25㎥に増加していた(甲2,5)。引率教諭及び園児らは,被告人cの声掛けに応じて,下流側石段に向けて皆ばらばらに加茂川を南西方向から北東方向に斜めに横断し始めていたところ,被告人c,K,Lが上流で茶色の濁水が流れていることを視認した。被告人aが下流側石段を数段上った時,その高さまで水かさが増していたため,川の方を振り返り,Nが連れていた園児らを川から引き上げた。被告人cとPは,園児らを連れ,水から上がるため下流側石段に向かい川の中を移動していた。川幅の中央付近にいたLが水量の増加を察知し,後続の者に河川敷に戻るよう合図をして引き返し,Kも園児らを伴い左岸の河川敷に引き返した。間もなく,被告人cの膝辺りから腰ぐらいまで一気に水かさが増し,同日午後3時38分頃,被告人cと一緒にいたA,Q,Rほか1名は,増水した濁流により流された(K19から26,L11から17,被告人a14から16,被告人c②18から22等)。5 本件濁りの有無及び状況検察官は,Sの供述等に依拠し,同日午後3時10分頃,本件遊泳場所付近において,加茂川の水に濁りがあった旨主張し,弁護人らはこれを争う。Sは,「15時頃から川遊びを始めたところ,15分前後で川底がぼやけて見える程度の白っぽい色で川が濁り出した。川の中にいたのは30分ぐらいで,水かさが増えた気がしたので川から上がった」旨供述する。しかし,その警察官に対する供述調書(弁18)においては,「川で遊び始めて30分くらい経った時,透明だった川の水が少し茶色っぽく濁ったのが分かった。その直後か,少し後だったかはっきりしないが,水位が上がった」旨供述し,また,その検察官に対する供述調書(弁19)では,「川に入って遊び始めてから20分くらい経過した後,それまで透明で綺麗だった川の水が,突然,茶色く濁り始めた。その後,突然川の水かさが増えた」旨供述しており,川の水が濁り始めた時間と同人の行動や増水との繋がりや濁りの色などの重要な点で公判供述と齟齬している。また,本件当日14時59分撮影の写真(甲32写真番号10)による加茂川の水の色と比較すれば,Sが濁ってきたと気付いた時の川の色だと述べる同日15時10分撮影の写真(甲32写真番号39,40)による加茂川の水はやや白っぽい色と見られるが,同日15時3分から6分にかけて撮影された写真(甲15写真番号56ないし59)と比較してより白っぽい色と判断できるまでの違いは見られない。さらに,その後の同日15時16分に撮影された写真(甲15写真番号71及び甲32写真番号41)では,上記各写真よりも川底の石の形状がよく見えており,各写真における加茂川の水の色の違いの有無や,濁りの状況及び原因については不明というほかない。したがって,Sの上記供述の信用性は高いとはいえず,本件当日の写真とS供述を併せ考慮しても,加茂川の濁りの発生時点,範囲及び色等の具体的な状況は不明であり,結局,同日午後3時10分頃,本件遊泳場所付近の加茂川において水の濁りが発生していたと認めることはできない。第3 過失に関する当事者の主張等1 検察官の主張の骨子検察官は,本件お泊まり保育開始前の計画準備段階において,①本件遊泳場所付近において急激な増水を典型例とする河川の変化(増水等危難)が起こり得る類型的可能性があること,当該場所で園児らを遊泳させている際にこれが起きた場合には,園児らを安全に退避させることが著しく困難な状況となり,これにより園児らの生命・身体に重大な危険が及ぶことの蓋然性が高いことの予見が可能であった(以下「計画準備のための予見可能性」という。)上,本件遊泳開始時点において,②客観的に,増水発生の確率・頻度に関して,増水が生じる相当程度の蓋然性があると判断できるから,被告人らは,本件遊泳中に,園児らの生命・身体に害を及ぼす程度の増水が生じることを具体的に予見し得た(以下「遊泳中止のための予見可能性」という。)として,③本件遊泳を中止すべき義務(以下「遊泳中止義務」という。)を負い,④仮に実施するとしても,契約に伴う園児の生命・身体の安全を確保ないしこれに配慮すべき義務及び社会生活上,河川に幼児を引率する者の負うべき安全配慮に関する条理に基づき,被告人らが,本件幼稚園における業務として,ライフジャケット,浮き輪等の用具を準備し,遊泳開始前に装着させる義務(以下「ライフジャケット等装着義務」という。検察官は,平成27年5月7日付け「求釈明に対する回答書(3)」において,公訴事実記載の「準備し」は遊泳開始前に適切に装着させておけば結果回避が可能であるという趣旨であると釈明した。)や,あらかじめ,本件遊泳場所付近を実地調査し,有事の退避方法・経路・場所等を十分に検討・確認し,その情報を引率者及び園児全員に対して周知し,実際に増水等危難が発生した場合には,各園児や各引率者にあらかじめ定めた退避方法等に従って速やかに退避させる義務(以下「退避計画義務」といい,④の各義務を併せて「計画準備義務」という。)を負う旨主張する(本件の事実関係の下では③④の両義務は併存も競合もせず,一方を主位的訴因,他方を予備的訴因として構成すべきと解されるが,審判対象としての特定は十分である。)。2 弁護人らの主張の骨子被告人3名の弁護人らは,予見の対象は一般的な「降雨による増水」ではなく,本件遊泳開始後に,本件遊泳場所を突然襲った「急激な増水」でなければならないが,①本件のような「急激な増水」は専門家にとっても予見が不可能ないし著しく困難であり,幼稚園教諭である被告人らには,その予見はおよそ不可能である,②急激な増水についての具体的な予見可能性がない場合にも「計画準備のための予見可能性」により過失を認めるのは,抽象的な危惧感を前提に予見可能性を認める議論であって失当である,③予見可能性がない以上,遊泳中止義務はないし,④退避計画義務には本件死傷結果の回避可能性がなく,⑤ライフジャケット等装着義務は法令上も条理上も認められない旨主張する。第4 予見可能性について1 増水等が起きた場合の危険性の予見について前記認定事実によれば,本件お泊り保育では,例年どおり,園児を下流側石段を通って加茂川に出入りさせる上,上流側石段と下流側石段の間で川遊びを行うことが予定されていた。そして,被告人らは,これまでの乙におけるお泊り保育の経験等により,前記認定の本件遊泳場所付近の加茂川の河床の状況を知っており,園児らが迅速に移動して川から上がることが困難な箇所があることを認識していた。また,8名の教諭で,5歳から6歳の園児31名を引率する予定であり,園児らの年齢からして行動を統制することが容易ではなく,約半数は浮き具を着けなければ泳げなかった。このことは,本件計画段階において被告人らも認識し又は認識できた。したがって,本件遊泳場所で園児らを遊泳させている際に,ある程度の増水等危難が生じた場合には,園児らを安全に退避させることが著しく困難な状況となり,これにより園児らの生命・身体に重大な危険が及ぶ蓋然性が高いことを容易に予見できた。2 増水等の予見可能性の有無及び内容について前記第1の各事実及び上記1を踏まえ,予見可能性について検討する。まず,本件お泊り保育開始前の計画準備段階における計画準備のための予見可能性について検討する。ア 加茂川の流域には石鎚山付近の山間部が含まれ,本件遊泳場所は複数の支流が交わった場所付近に位置しているところ,これは地図を見れば容易に知ることができる。そして,河川が降雨によって増水することは一般に知られており,被告人3名もこのことを認識していた(被告人a5,同b56,72,同c②46,52)。イ 次に,河川の状況は,周りの環境や気象条件等の影響によって変化しやすく,水量は上流域での降雨に影響され,遊泳場所付近が晴れていたとしても,上流域での降雨により遊泳場所付近で増水が起こることがある(G3から5)。このことは一般的にもある程度知られていると思われる。さらに,本件お泊り保育の準備を行う時点において,公益財団法人河川財団(当時財団法人河川環境管理財団)子どもの水辺サポートセンターがインターネットで公開している「水辺の安全ハンドブック」(当時は2008年版。甲93)には,「今いる場所が晴れていても,上流の雨で一気に増水する可能性がある。急に濁りがでたり枝が流れてきたら注意。」(8頁),「テレビやラジオ,新聞の他,最近ではインターネットや携帯サイトからは狭い地域の天気予報をリアルタイムで手軽に入手できます。これらの情報を活用し,活動する川での天候の変化等を予測できるよう心がけましょう。」,「突然の雷雨など,事前に予測できない気象変化もあります。活動中にも観天望気や気象情報をできるだけ入手し,悪天候が予測できたら,中止又は予定を変更する勇気を持ちましょう」(12頁),「川では今いる場所で雨が降っていなくても,上流で雨が降っていたりダムの放流などの影響で,水嵩が急に増えることがあります。上流側に雨雲が見えたり,雷鳴が聞こえたりした時はもちろんのこと,普段流れてこないペットボトルや流木,落ち葉などが流れてきたり,水が冷たく感じたり,水位が急に低くなった時には迷わず川から離れましょう。」(14頁)との記載があった(G11から14,17)。これが検索エンジンでどの程度上位に表示されるかは不明であるが,法人や情報の性質から,適切な語により検索すれば,同情報に接することは困難でないと推認できる。インターネットを利用できる環境にある一般人が河川の安全について調査すれば,同情報あるいはこれと同様の情報をさほど困難なく知ることができ,被告人らも本件幼稚園のパソコン等により知ることができた。ウ したがって,お泊まり保育開始前の計画準備段階(計画準備義務を履行することが可能な時期)において,被告人らと同様の立場にある一般人であれば,本件遊泳場所付近において,同所付近が晴れていても,上流域の降雨によっては,本件遊泳場所付近において増水するなどの河川の変化(増水等危難)が生じ,水量・流速が増す類型的危険性があることを予見することができた。これは単なる危惧感ではなく,具体的な根拠を伴う危険の予見というべきである。したがって,被告人らは,本件遊泳中に急激な増水を典型例とする河川の変化(増水等危難)が生じた場合,園児らを安全に退避させることが著しく困難な状況となり,これにより園児らの生命・身体に重大な危険が及ぶ蓋然性が高いことを予見できるから,計画準備のための予見可能性については,優に認めることができる。次に, 本件遊泳開始時まで継続したか否か,同開始時に遊泳中止のための予見可能性が認められるかを検討する。ア 前記第2の2のとおりの本件当日の東予地方の天気予報,特に降水確率が60ないし50%であったことや,県内全域に雷注意報が,午後2時5分には久万高原町等に大雨洪水注意報が発令されていたことについては,気象庁のホームページで常に確認することができ,ある程度は新聞やニュース中の天気予報でも知ることができた。そして,本件当日の午前中,本件お泊り保育に出発する前に,本件幼稚園周辺で降雨があり,被告人b及び被告人cはその事実を認識していたし,被告人らが乙に到着した際も地面が一部ぬれ,水たまりがあったから,これらを契機に,被告人らは,本件遊泳開始に先立ち,前記天気予報等を確認した上,又は直ちに,加茂川上流域の降雨について調査することができた。イ 次に,気象庁のホームページを閲覧すれば,本件当日,石鎚山頂付近において1時間に1mmから30mm程度の降雨があったこと,例えば,気象庁のホームページ内の「愛媛県内の気象レーダー画像(石鎚山付近)」(甲11の別紙6,7。ただしホームページにより閲覧した場合には画像枠内に同書面よりも広範囲の地域が含まれるものとなる。)を閲覧すれば,本件当日午前10時の気象レーダーによる雨量を示す画像には,画像の中央付近,すなわち石鎚山に近い位置に40mmを越える地点を含む部分があり,同日11時の画像においても同所付近には強い降雨があることを認識することができた。また,「tenki.jp」のウェブサイト中「愛媛(松山)の過去の天気」(甲17別紙資料10)の画像を閲覧することにより,石鎚山付近に降雨(25mmを示すものが含まれる)があり,本件当日午前9時,10時,11時までの各1時間の雨量(気象レーダー)について,その頃から各2時間後までの間であれば,その状況を知ることができた。そして,被告人らは,本件お泊り保育に出発する前までは本件幼稚園にあったパソコンを用いて知ることができ,その後も引率者の一人であるOがスマートフォンを所持していたから,本件遊泳開始時までに,これらを閲覧して知ることができた(被告人b7)。なお,気象レーダー及び解析雨量のデータベースについては過去2時間程度のものしか閲覧することができないが,適時に調査すれば閲覧できる以上,予見可能性の判断に際しては,全時間帯のデータを利用できるものとして考慮されるのは当然である。ウ 以上によれば,被告人らは,上流域の天候を調査すれば,本件遊泳開始時までに,本件遊泳場所の上流域において,少なくとも前記イ程度の降雨があったことを知ることができた(ただし本件遊泳場所上流の加茂川流域内における正確な降水量までは知ることができなかった)と認められる。また,前記 のとおり,被告人らは,本件お泊り保育の計画準備段階から,本件遊泳場所の上流域における天候について調査し,増水等が発生する危険性を予見すべき義務を負っていたことも明らかである。したがって,園児らに死傷結果を及ぼすような増水等危難の予見可能性は,計画準備義務を何ら果たしていない状況及び ア・イの事情の下では,高まりこそすれ消滅することはなかったと認められる。この点,弁護人らは,乙の従業員らを含め誰も本件増水を予想していなかったことを指摘し,どこに,どれだけ雨が降れば急激な増水となるか,その基本データはどこかにあったのかと疑問を呈し,気象や防災,水文学の専門家でない幼稚園教諭である被告人らには急激な増水は予見できなかったと主張する。しかし,通常人において,前記イ程度の本件当日の石鎚山頂付近での降雨を認識した場合,加茂川の変化を何ら気にすることなく,何ら安全配慮のための準備をすることなく園児らを遊泳させても安全であると認識するのが通常であるとは到底思われないし,降雨が認識可能であり判断基底に含まれることは前記のとおりであるから,本件遊泳場所の上空が晴れていたことや乙従業員も増水を予見せず,何ら注意喚起がなかったことなどの事情を踏まえても,前記予見可能性が失われることはなく,弁護人ら指摘の点は,計画準備のための予見可能性を否定するものではないというべきである。しかしながら,前記認識可能な天気予報の内容,降雨状況や本件当日の上流域の天候に照らせば,被告人らと同様の立場にある一般人がこれらを調査し認識したとしても,本件遊泳場所付近において,予定していた本件遊泳時間中に,どのような態様の増水が,どの程度の蓋然性(確率)で生じるかについてまで明確に予測することは困難であって(専門家についても本件後に加茂川での降雨による増水の到達時刻等を解析したものは証拠として提出されているが,本件当時に解析されていたとの証拠はない。),通常人であれば遊泳すること自体を直ちに断念するような,気付いてからでは退避できない態様の増水(本件増水は,本件濁りが認められない以上,このような態様の増水であったと認められる。)が相当程度に高い蓋然性で発生するといった予見は不可能であったというべきである。そして,お泊り保育やそれに伴う遊泳には,園児らにとって相応の教育的な意義があることも否定できない。そうすると,危険を許容できる程度まで減少させるための措置を義務付けることはあり得るとしても(抽象的には種々想定できるが,検察官が計画準備義務以外には主張しないので具体的な検討はしない。),この程度の予見可能性に基づいて,直ちに遊泳中止を義務付けることは困難であるというべきであり,検察官が主張するような,遊泳中止のための予見可能性を認めることはできない。3 予見可能性に関する弁護人らのその他の主張について予見の対象について,弁護人らは,遊泳開始時までに「降雨による増水」が認められれば被告人らは本件遊泳を実施することはなく,本件は本件遊泳開始後,急激な増水があったためであるから,本件のような「急激な増水」についての具体的な予見可能性が必要であり,これがない場合に予見可能性を肯定すれば,その内実は抽象的な危惧感を前提に予見可能性を認めるものであって失当である旨主張する。これは,増水が急激でなければ特段の措置がなくとも増水に気付いてから園児らを退避させることができたことを暗黙の前提に,それができないような急激な増水が因果関係の基本的な部分として予見できることが必要であるとの主張とも考えられる。しかしながら,業務上過失致死傷罪における予見の対象は死傷の結果であり,注意義務が問題とされる時点によって,その時点において認識可能な結果発生の危険の内容・性質(危険性の結果への実現過程を含む)には差があり,現に結果を発生させた事象が発生する蓋然性の高さを予見可能性の有無・程度として捉えるならば,問題とする時点によってこれに差があることは当然であるし,想定される結果回避措置との関係においても,求められる予見可能性の内容や程度には差があるというべきである。そして,園児らを安全に退避させることが相応に困難になるような河川の変化(増水等危難)が予見可能であれば,それに備えた計画準備を行った上で遊泳を実施することが期待できるのであるから,計画準備義務との関係では,弁護人らの主張するような「急激な増水」は予見の対象とならないというべきである。弁護人らの主張は採用できない。また,本件増水と本件固定堰との関係について,弁護人らは,本件増水の原因が,加茂川上流域で降った雨にあるとしつつ,本件固定堰があり,ここに越流が生じて本件増水に至ったことで本件遊泳場所付近における流水量増加の程度が急激なものになったと主張する。本件固定堰の構造上,流量が大きく増加している時点で上流からの流水が堰を越えることになった場合,大きな流量の水が下流に向かうこととなるため,越流が生じる時点の流量の如何により,本件遊泳場所付近における流水量増加の程度が左右されることは否定できない(H44,45)。しかしながら, し,本件増水の原因が加茂川上流域で降った雨にあると認められる以上,本件固定堰の影響は前記2の予見可能な危険の範囲内にあるというべきであるから,予見可能性の有無は左右されない(なお,本件固定堰は従前から設置されており,本件遊泳場所付近における増水は,本件固定堰より上流域からの増水である限り本件固定堰を越流するという過程を経て生じることになるから,当然に予見可能な経過であるし,本件増水をなしたピーク流量伝播過程において本件固定堰が及ぼした影響が大きいとは認められない〔H39〕。)。第5 結果回避義務について本件事実関係及び前記予見可能性を前提として,被告人らが,業務として,計画準備義務を負うか否かを検討する。(なお,想定できる結果回避措置は複数あり得るが,予見可能な危険性を回避できるのであれば,どの措置を選択しても差し支えない。例えば,数日前から当日直前までの降水量等を,当該遊泳場所のみならずその上流域についても詳細に確認し,降雨がなく,降水確率も極めて低いなど,計画準備のための予見可能性が現実化しない事実関係が確認できた場合にのみ遊泳を実施し,それが確認できない場合には遊泳を実施しないことも結果を回避するための合理的な方法の一つとして想定できる。しかし,無視できる程度に危険を低下させるより小さな義務付けがあり得る場合,遊泳中止まで義務付けることはできないと解される。)1 結果回避義務の根拠本件幼稚園は,年長園児31名の保護者から登園契約により委任(準委任契約と考えられる)を受けて幼児を保育しており,かかる契約に付随して,幼児の生命身体に対する安全を確保すべき義務がある。そして,本件お泊り保育の川遊びは,本件幼稚園の園外活動として行われる以上,その活動の際にも同様の安全を確保すべき義務がある。なお,幼稚園の園外保育において遊泳を行う場合の安全措置に関するガイドライン等の主張立証はなく,結果回避義務の具体的内容は,上記契約関係から直ちに導くことはできないため,予見可能な危険との関係で,条理上義務付けることのできる内容を検討する。2 計画準備義務についてまず,前記内容の増水等危難の予見可能性が認められる以上,本件遊泳場所での川遊びを実施する際,かかる危険を防止するための措置に思い至るため,あらかじめ河川での遊泳に伴う危険性について十分な知識を習得する義務を負うというべきである。次に,水難事故防止にライフジャケットが有効であることは常識に属する上,前記「水辺の安全ハンドブック」には「一見穏やかに見える流れも,川底の影響で流水は一定ではない。川の事故の約90%はこの穏やかな流れで発生している。近寄るときはライフジャケットを必ず着用するぐらいの心構えを。」(8頁),「服装&装備」として「水に入る場合 ・ライフジャケット:必ず着用する。体重の10%の浮力を持つものが適当。」(11頁)との記載があり,通常人においてこれを着想する契機がある。そして,園児らがライフジャケットを適切に装着していれば,頭部等が水面上に浮上した状態を維持することができ,溺死や溺水による傷害を防ぐことができる蓋然性が高いと認められるから,園児らの溺水による死傷結果についての結果回避可能性はあると認められる(G10,11)。ただし,園児らがライフジャケットを適切に装着していた場合であっても,増水に流されるなどする際,河床や河川内の岩石等に接触することなどにより軽微な傷害結果を負うことはあり得る。したがって,かかる傷害の回避可能性には疑いが残るから,この義務は,かかる機序による傷害を防止するために義務付けられるものではないというべきである。また,本件当時,財団法人河川環境管理財団(当時)の子どもの水辺サポートセンターでは,ライフジャケットの貸出業務を行っていたこと,適切なライフジャケットの装着方法を園児に指導すること自体は比較的短期間で習得可能であり,そのような者を確保した上で,同センターに申し込めば,僅かな送料負担のみで園児の人数分のライフジャケットを調達することができたと認められる(G15,16。このことは同センターのホームページを通して知ることができた。なお,通常の浮き輪等の利用は,増水等危難に対する結果回避措置として社会通念上相当とは認めがたい。)。そうすると,これを義務付けたとしても,前記の類型的危険性に比して過大とはいえない。以上によれば,本件幼稚園としては,前記計画準備のための予見可能性がある以上,増水による危険を防止できる措置として,ライフジャケットを準備し,その予見可能性がより高まっていた以上,本件遊泳を実施するに際し,ライフジャケットを園児らに適切に装着させる義務(以下「ライフジャケット準備装着義務」という。)を負っていたというべきである。これに対し,弁護人らは,河川法では,自己責任の下で自由使用の原則があるためライフジャケットの着用義務を法的に定めることはできない旨主張する。しかしながら,河川は,自然公物たる公共用物であり,河川法の自由使用は私人と行政法上の公物管理責任との関係についての概念であって,河川の利用者の自由な使用に伴う危険について,契約等に基づき保護者から委任を受けて幼児の保育を行う者が,その河川での活動に際し,前記危険を回避するために私法上又は刑法上の注意義務を負うこととは何ら齟齬しない。また,弁護人らは,一般人や他の幼稚園においても,川遊びの際ライフジャケットを装着させておらず,条理・社会通念上,その装着が義務付けられるものではないとも主張する。この点,一般人が自己又は法定代理人の判断としてライフジャケットを装着せずに川遊びをする場合,その危険を自ら引き受けることが許されるのは当然であり,本件と比較する対象とならない(お泊り保育の参加に当たり,保護者らが「同意書」〔被告人c①別紙1〕を提出しているとしても,その記載や事前の説明内容に照らし,園児や保護者らはその危険を引き受けていない。)。そして,情報環境が相当程度整備されている近年においては,ライフジャケットの装着をいとうのであれば,上流域の天候等を直前まで調査し,降雨がある場合には念のため遊泳を中止するなど,他の選択肢が複数あり得ることは前述のとおりであり,ライフジャケットの装着が社会的な共通認識とはいえないことは,これを義務付けることの障害にならないというべきである。また,既知の危険であるが発生確率がそれほど高くない場合において,回避措置をとらない者が多いことを理由として,安全配慮の義務を負う者が結果回避義務を免れることもない。次に,退避計画義務について検討する。ア 前記のとおり,本件当日午後3時10分頃,本件遊泳場所付近の加茂川の濁りが発生したとは認められないところ,その他に退避行動をとる契機となる予兆について検察官は具体的に主張立証しない。イ したがって,河川の濁りの変化等を感知して,水の濁り等の増水の予兆が認められた場合には直ちに遊泳を中止して退避する義務,園児の遊泳範囲を園児であっても有事に迅速な移動が可能な水深の浅い範囲に限定させる義務,あらかじめ,本件遊泳場所付近を実地調査し,有事の避難方法・経路・場所等を十分に検討・確認し,その情報を引率者及び園児全員に対して周知し,実際に増水等危難が発生した場合には,各園児や各引率者にあらかじめ定めた退避方法等に従って速やかに退避させる義務については,仮にそれを履行したとしても,園児らが本件増水により流されることとなった疑いを否定できず,結果回避可能性があったと認めることはできない。(本件と異なり,退避計画義務を履行して結果発生の危険性を相応に低下させていたが,増水が特に「急激」であったことにより奏功せず,園児が流され死傷した事案であれば,過失責任を問うためには「急激な増水」であることといった,現に予見していた事情を基礎に含めた上で,予見した危険を越える危険性の予見可能が問題となる。)ウ 以上のとおり,検察官の主張する退避計画義務については結果回避可能性がなく,その違反による過失を認めることはできないというべきである。第6 各被告人の注意義務の有無1 被告人cについて前記認定事実によれば,被告人cは,本件お泊り保育の担当者であり,その具体的計画を立案するに当たり,園児らの安全に配慮して計画を立案すべき注意義務を負っていたというべきである。しかしながら,前記事実関係に照らせば,お泊り保育の担当者が分掌していた職務内容は,飽くまでも,例年どおりの枠組みの中で,お泊り保育を実施することを前提として,その活動細目の決定や準備に関するものに限られており,その余の事項については,本件幼稚園の園務全体を統括する園長である被告人aを含む教諭らが構成する職員会議において検討され,決まっていくことが予定されていた。そして,従前,お泊り保育や遊泳を中止する際の決定は園長が主任教諭に相談して判断しており,その前提情報でもある上流等の天候について調査すべき役割を被告人cが分担したといった事情は見当たらない。したがって,被告人cには,退避計画義務のような個々の活動の実施細目に当たるものでない限り,例年の安全配慮とは異なる安全面の検討を行うべき職務は分担されていなかったと認められる。そして,実際,被告人a自身,被告人cが例年どおりに計画準備を進めるだけであることを認識していたのであり,ライフジャケットを準備することが決まれば担当するのは被告人cであると述べながらも,そのような決定はなかった,最終的な判断は被告人aにあると述べ,被告人cがかかる職務上の義務を負うことを否定している(被告人a84)。また,本件事実関係の下においては,被告人aと被告人cとの間には安全配慮に関する前提事実について情報格差もなかったと認められる。そうすると,被告人cは,職員会議における被告人aの決定に対して更に安全配慮についての進言をすべき義務もなかったというべきである。2 被告人aについて前記1によれば,被告人aは,ライフジャケット準備装着義務を内容として含む安全配慮義務の職務,権限を本件幼稚園の教諭らに委ねていなかったこととなるから,本件幼稚園において,この義務を負うのは被告人aであるというべきである。実質的に見ても,これまでも,お泊り保育や遊泳の中止を決定していたのは園長であり,上流域の降雨により本件お泊り保育や本件遊泳を実施するか否かの決定に影響があることからして,明確に分掌されていない以上,その判断の基礎とすべき情報の収集は園長の職務というべきである。3 被告人bについて被告人aが前記義務を他の教諭に分掌させていなかったことは前記のとおりであり,被告人bには,被告人cに対する助言等の義務はない。また,被告人bは,主任教諭として,被告人aを補佐する立場にあったと認められるが,本件お泊り保育の計画準備の内容は,園長である被告人aを含め他の教諭が出席する職員会議の了解を経て決定され,被告人aと被告人bとの間に情報格差はないこと,その他,主任教諭が本件お泊り保育に関し具体的にいかなる事務を分掌していたかを明確に示す証拠もないことに照らすと,被告人bが被告人aに対し,ライフジャケット準備装着義務に関し進言する義務を負っていたと認めるには合理的な疑いがあるというべきである。第7 注意義務違反と本件死傷との因果関係等被告人aがライフジャケット準備装着義務を怠ったことは明らかであるところ,本件事実経過の下において,被告人aがAにライフジャケットを適切に装着させる義務を果たしていなかったことにより,本件増水により同児童が流され,溺死したと認められるから,被告人aの過失と同児童の死亡との間に因果関係があることは明らかである。一方,ライフジャケット準備装着義務は溺水以外の機序による傷害を回避するために課されるものではなく,これを適切に装着していた場合であっても,増水により流される際,河床や河川内の岩石等に接触することなどにより全治約1週間程度の頭部皮下血腫や左肘擦過傷等といった比較的軽微な傷害が生じることは十分にあり得ることから,Q及びRが負った各傷害については,被告人aの上記義務違反により生じたと認めるには合理的な疑いが残る。よって,前記2名の傷害に関し,被告人aに業務上過失致傷罪は成立しない。第8 結論以上のとおりであるから,被告人aには,ライフジャケット準備装着義務違反によりAを死亡させた業務上過失致死罪が成立する。他方,被告人aについて,ライフジャケット準備装着義務以外の義務違反による過失責任に係る点及びライフジャケット準備装着義務違反の過失により「Q(当時6歳)及びR(当時6歳)をして,増水した同河川の水流により下流に押し流されさせ,よって,その頃,前記Qに加療約1週間を要する頭部皮下血腫等の傷害を,前記Rに加療約1週間を要する左肘擦過傷の傷害を各負わせた」点については,犯罪の証明がないこととなるが,これらの点は,Aを死亡させた業務上過失致死罪と1個の行為によるものとして1罪の関係にあるから,主文において無罪の言渡しをしない。被告人b及び被告人cについては,本件公訴事実について犯罪の証明がないこととなるから,刑事訴訟法336条により,いずれも無罪の言渡しをする。(法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,幼稚園のお泊り保育の川遊びにおいて,増水により被害園児が流され溺死した事案である。
事案の概要
平成28年5月30日
松山地方裁判所
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[下級] [民事] 平成27(ネ)157  307ViewsMoreinfo
損害賠償請求控訴事件
平成27(ネ)157
本件は,被控訴人が,札幌市豊平区所在の全天候型多目的施設である「札幌ドーム」(以下「本件ドーム」という。)において平成22年8月21日に行われたプロ野球の試合(以下「本件試合」という。)を1塁側内野自由席18番通路10列30番の座席(以下「本件座席」という。)で観戦中に,打者の打ったファウルボールが被控訴人の顔面に直撃して右眼球破裂等の傷害を負った事故(以下「本件事故」という。)について,本件ドームには通常有すべき安全性を備えていない瑕疵があった,控訴人らは観客をファウルボールから保護するための安全設備の設置及び安全対策を怠ったなどと主張して,①本件試合を主催し,本件ドームを占有していた控訴人ファイターズに対しては,(a)工作物責任(民法717条1項),(b)不法行為(民法709条)又は(c)債務不履行(野球観戦契約上の安全配慮義務違反)に基づき,②指定管理者として本件ドームを占有していた控訴人札幌ドームに対しては,(d)工作物責任(民法717条1項)又は(e)不法行為(民法709条)に基づき,③本件ドームを所有していた控訴人札幌市(以下「控訴人市」という。)に対しては,(f)営造物責任(国家賠償法2条1項)又は(g)不法行為(民法709条)に基づき,損害賠償金4659万5884円及びこれに対する平成22年8月21日(本件事故の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
事案の概要
平成28年5月20日
札幌高等裁判所 第2民事部
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[下級] [刑事] 平成27(わ)881  166Views
爆発物取締罰則違反,建造物損壊
平成28年5月17日
神戸地方裁判所 第2刑事部
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[下級] [刑事] 平成27(わ)970  237Views
窃盗
平成28年4月12日
神戸地方裁判所 第2刑事部
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[下級] [民事] 平成25(ワ)4400  94ViewsMoreinfo  up!
残業代支払等請求事件
平成25(ワ)4400
本件は,平成23年4月1日から平成24年8月20日まで,正社員として被告に勤務していた原告が,被告に対し,[請求1]在職期間中の割増賃金279万2229円及びこれに対する催告日の翌日である平成25年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金の支払及び[請求2]上記割増賃金について付加金211万0486円(ただし,原告が訴えを提起した平成25年10月5日の2年前以降に支払期日が到来する平成23年9月分を始期とする。)及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
事案の概要
平成28年3月30日
名古屋地方裁判所 民事第1部
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[下級] [民事] 平成26(ワ)1954  204Views
平成28年3月29日
福岡地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成25(た)1  111ViewsMoreinfo
再審請求事件
平成25(た)1
北海道庁に時限式消火器爆弾を設置して爆発させ,2名を殺害し81名を負傷させたとして,爆発物取締罰則違反,殺人,殺人未遂罪により死刑判決を受けた受刑者からの再審請求について,新たに提出された証拠には明白性が認められないとして,これを棄却した事例(道庁爆破事件第2次再審請求)
判示事項の要旨
平成28年3月28日
札幌地方裁判所
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[下級] [民事] 平成27(ワ)1715  223ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件
平成27(ワ)1715
本件は,平成25年8月11日に,訴外Aに暴行を加え,傷害を負わせたとの傷害事件の被疑者として警察官から取調べを受けた原告が,同事件の捜査を担当した警察官らが違法な捜査を行ったと主張して,被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき慰謝料200万円及びこれに対する平成25年11月7日(最終行為日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成28年3月25日
大阪地方裁判所 第16民事部
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[下級] [刑事] 平成27(わ)51  336ViewsMoreinfo
業務上横領被告事件
平成27(わ)51
本件は,被告人が当時勤務していたB農業協同組合(以下「農協」という。)において,何者かが,農協が貯金口座の管理等のために設置していた「ジャステム」と呼ばれる農協オンラインシステムの端末機(以下「ジャステム」という。)を操作して,顧客に無断で定期貯金口座の解約処理を行い,各貯金口座の払戻額に相当する金員合計1161万7851円を着服したとされる事案である(以下別表番号に応じて「第1事件」ないし「第12事件」といい,12件全てを「本件横領事件」と総称する。また,本件横領事件で解約された各定期貯金口座については,各事件の呼称に応じて「第1口座」ないし「第12口座」という。)。本件の争点は,被告人が本件横領事件の犯人であると認められるか,である。当裁判所は,被告人が本件横領事件の犯人であると認めたので,以下その理由を説明する。第2 前提事実(本件各証拠によれば,以下の事実が認められる。)1 金融係について本件横領事件当時,農協で貯金口座に関する窓口業務やジャステムでの入力処理等の事務を担当していた農協管理部金融係(以下「金融係」という。)に勤務していたのは,管理部次長兼金融係長のD,被告人,E(及びF(被告人,E,Fの3名をまとめて「金融係職員」という。)の4名であり,被告人及びEは,主に農協の貯金の受入れ,払戻し,貯金口座の開設,解約,現金出納等の貯金業務を,Fは,主に組合員農家の資金決済等を行う組合員勘定取引に関する業務(以下「組勘業務」という。)をそれぞれ担当しており,Dは,金融係職員の上司としての決裁業務のほか,組合員に対する融資に関する業務等に従事していた。2 犯人の口座解約態様定期貯金口座を解約するには,定期貯金証書(以下「証書」という。)に同口座を解約した旨の印字をし,同証書を回収する必要がある。しかし,本件横領事件の各口座名義人は,本件横領事件発覚当時,自己名義の証書を所持しており(甲32~35,証人G),また,同人らが所持する各証書には解約した旨の印字はなかった(甲46~57)。それにもかかわらず,本件横領事件に係る定期貯金口座は既に解約され,払戻額に相当する金額がいわゆるオートキャッシャー(以下「AC」という。なお,操作端末は2台あり,E机上のメインターミナルを「ACメイン」,被告人机上のサブターミナルを「ACサブ」という。)に入力されて出金された履歴(甲75)があった。そうすると,犯人は,証書が手元にない状態で,ジャステムを操作して定期貯金口座を解約し,ジャステムにより算出された払戻金をACを使用して出金し横領したものと認定できる。第3 金融係職員以外の者が本件横領事件を実行することは困難であること1 本件横領事件は全て農協の営業時間内に行われているところ,犯行に使用されたジャステム及びACが設置されていた金融係の座席付近には,営業時間中には少なくとも金融係職員のうち1名が在席していた。そして,ジャステムやACを日常的に使用するのは金融係職員3名だけであり,Dを含むそれ以外の農協職員が業務としてジャステムを使用すること自体がほとんどなかったのであるから,金融係職員以外の者にとって,ジャステムを操作した上でACを使用して現金を出金する本件各犯行は,発覚する可能性が非常に高い行為であり,事実上不可能又は極めて困難なものというべきである。2 弁護人は,Dが被告人ら金融係職員を騙し同人らに定期貯金口座を解約させた可能性を主張する。しかし,被告人ら金融係職員において,名義人の押印のある解約申込書を確認しないまま,Dに言われるがままに解約手続に応じること自体が想定し難い上,被告人の述べるところによっても,被告人は,少なくとも証書が確認できない限り,解約手続をしなかったというのであり,本件各犯行時には真正の証書が使用されていないことを考慮すると,Dが金融係職員を騙して不正に解約させたとは考えられない。この点,弁護人は,Dがジャステムの研修モードを使用して虚偽の証書を作成して本件犯行に及んだ可能性も主張するが,研修モードで作成した証書は,発行農協名の記載が一見して研修モードと分かるものであり,農協名義の証書を偽造することは相当困難であると考えられるから,Dが証書を偽造し,その偽造した証書を利用して,被告人ら金融係職員に指示して犯行を行ったとは考えられない。第4 被告人による罪証隠滅行為等1 第6事件について(1) 関係証拠によれば,次の事実が認められる。平成22年3月9日,Gは農協を訪れ,第6口座を含むGの夫であるH名義の定期貯金口座に係る証書3通を持参し,3口座を1つにまとめたい旨を申し出た。被告人は,窓口でこの対応をした際,第6口座が既にジャステム上解約されているにもかかわらず,その事実を上司であるDにも顧客であるGにも告げないまま,Gが持参した各証書に係る口座のうち解約されていない2口座のみを1口座にとりまとめる(旧口座を解約し,その解約金を原資として新たな定期貯金口座を開設する)処理を行い,さらに,Gに第6口座の元利金を交付した事実がないのに,第6口座に係る証書の「この貯金の元利金を確かに受取りました」と書かれた欄にH名義の署名押印をさせ,同証書をGから回収した(被告人供述,証人I,証人G,証人D,甲51,甲75,弁8)。(2) 弁護人の主張について弁護人は,被告人は同日,Gに対して第6口座が解約済みであることを伝えており,仮に伝えていなかったとしても,それはDの指示によるものであった可能性がある旨を主張する。しかし,被告人がGに解約済み口座の存在を伝えた事実や,被告人がDにGの持参した証書が解約済みであることを報告したり,Dが被告人にその対応を指示したりした事実をうかがわせる事情は本件証拠上見当たらない(被告人がGの窓口対応中に席を離れた様子が撮影された防犯カメラ画像があるものの,それ自体としてDへの報告等があったことをうかがわせるようなものではなく,被告人自身もDに報告したりDから指示を受けたことを記憶していない。)。また,同年6月にGが解約済みの第11口座の証書を所持していることが判明した際のDの対応とも大きく異なるものであって,Dが被告人に対してそのような窓口対応を指示したとは考え難い。そもそも,顧客が持参した証書について,それが解約済みであることを知らせないまま,同証書に元利金受取済みである旨の署名押印をさせてこれを回収することは,金融機関の窓口対応として考え難い極めて不自然なものである。したがって,弁護人の前記主張は採用することができない。(3) 犯人性について前記のとおり,被告人の前記窓口対応は,通常考えられない不自然なものであり,被告人がわざわざそのような行為を行った理由としては,既に第6口座が解約された事実の隠ぺい以外には考えられない。したがって,当該事実は,被告人が犯人でなければ説明が困難な行動であるといえる。2 第11事件について(1) 関係証拠によれば,次の事実が認められる。平成22年6月17日,Gらが来所した際,第11口座が既に解約されているにもかかわらず,Gらが証書を所持していたことが発覚した。このことを知ったDは,金融係職員にその調査を命じた。この命令により,被告人及びFが調査をしたところ,①入力伝票つづりを調べた結果,第11口座の解約に該当する仕訳通番(営業日ごとにジャステムでの入力順に付される番号)の部分には,口座解約に係る入力伝票(解約申込書)ではなく,「39」と記載された為替区分票(仕訳通番末尾「39」に対応する為替伝票は存在しない)がつづられていることを被告人及びFが発見したが,これをDには報告しなかった。また,金融係職員3名は,前記為替区分票について内緒にすることにした。②翌18日,被告人又はFが,前記口座に係る旧証書を発見した。この旧証書に解約された旨の印字はなく,表面には赤い文字で「移行切替」という記載があった。③被告人は,同日営業終了後,何かを切って貼る作業をしており,Fが理由を尋ねると,「移行切替だと困る」「汚損破損という名目に変えないとならない」等と言っており,作業の後,Eに対して「こうしたから内緒だよ」と言いながら第11口座の再発行登録票をコピーした紙を見せてきた。④翌週21日,Dの指示により,被告人が前記入力伝票つづりをDに持参しようとした際,Eが「この紙入ってたらやばいんじゃないの」と被告人及びFに対し声をかけた。被告人は,入力伝票つづりにつづられた状態の前記為替区分票を同入力伝票つづりから抜き取り,Fが前記為替区分票をシュレッダーにかけ廃棄した。⑤前記旧証書は,その後,見つかっていない。(2) E及びFの各証言の信用性前記事実について,被告人は,前記のような調査をしたことさえも記憶が希薄であると供述し,前記①~④の事実を否定している。しかしながら,6月17日,Gらから証書を見せられ,ジャステム上のデータと食い違いがあることが判明したことは明らかであり,そのような状況に置かれたDの行動として,部下に調査を命じたことは自然である。そして,E及びFが前記①~④を供述しているところ,実際に,再発行理由の部分が「再発行理由 2汚損破損」と改ざんされた形跡のある再発行登録票の写しが存在し(甲81),また,両名の供述内容は自らの不利益事実を含むものである。弁護人は,前記③の点の両名の供述につき,被告人の別の作業と混同している可能性があると主張するが,この点に関するE及びFの各証言は,両名が見聞きした被告人の言動等を具体的に述べるものであって,被告人が別の文書を作成する作業と混同しているとは考えられない。したがって,前記①~④についてのE及びFの供述は信用できる。(3) 犯人性についてア 解約処理済みである旨の記載がなく,「移行切替」の記載がある旧証書及び再発行登録票の存在は,旧証書による解約の可能性がないこと,ひいては第11口座の解約が異常な経緯でなされた可能性を強く示すものであり,顧客が第11口座の証書を持参し,これがジャステムの記録上解約済みであったことなどからDが旧証書を探すよう指示したなどの経緯や,被告人の金融係としての経験等からすれば,被告人においては,前記旧証書や再発行登録票が見つかったことの意味を十分理解できたと考えられる。そして,被告人が再発行登録票の再発行理由を改ざんしたコピーを作成した理由は,旧証書の存在や第11口座の解約が不審なものであることを隠ぺいすること以外に考え難いから,当該事実は,被告人が事件に深く関与していることを強く推認させるものであり,被告人が犯人でなければ説明することが困難である。イ 前記為替区分票は,第11口座の解約申込書の代わりにつづられていた上,対応する為替伝票も存在しない明らかに不審な帳票であって,金融係職員3名が,この存在を上司に報告しないままこれを廃棄したことは,少なくともこの3名のうち誰かが第11事件に深く関与していることを強く示唆するものであるということができる。この点,金融係職員3名で話し合って為替区分票の存在を秘匿したものであり,被告人の行為は,金融係職員が何らかのミスをしたと考え,これを隠ぺいしようとしたに過ぎない可能性も考えられないではない。しかし,被告人が,単に上司に怒られないように為替区分票の発見を隠そうとしたのであれば,F及びEが隠ぺいの事実を供述した時点以降は,被告人が隠ぺいの事実を供述しない理由はなくなったといえる。ところが,被告人は,公判に至っても,非常に印象的な出来事である第11口座に関する調査自体も記憶がないなどと供述しているのであって,被告人が隠ぺいの事実を認めないのは,金融係職員のミスを隠ぺいするということとは別の理由が存在するとしか考えられず,その理由としては,被告人が犯人であること以外は想像し難い。3 J名義の定期貯金口座に関する処理についてなお,被告人がJ名義の定期貯金を開設し,ジャステムで同口座の開設日を遡及させる処理を行った事実が,罪証隠滅の準備行為である疑いは相当あるものの,被告人が供述するように,別の意図で(交際相手に受け取ってもらうために)開設日を遡及させることも十分にあり得るといえる。第5 各犯行前後におけるジャステム操作等による推認について1 第1事件(1) 本件犯行に近接するジャステム操作等についてア 犯人は,平成21年5月26日午前10時30分(ただし,ジャステムの入力処理を完了した時刻。以下ジャステムの入力時刻について同じ。),第1口座につき,ジャステムで解約処理(仕訳通番末尾032)を行った(甲75) 。イ 同日午前10時31分,仕訳通番末尾033(入金),034(定期積金口座開設)の各処理がジャステムに入力されており,前記各取引(受付・伝票作成等の各処理をいう。以下同じ。)は被告人が担当した(甲58,証人E,証人F)。ウ 同日午前10時35分から41分までの間に,仕訳通番末尾035~042(貯金払戻し)の各処理がジャステムに入力されており,前記各取引はEが担当した(甲58,証人E,証人F)。エ 犯人は,同日午前10時37分頃から40分頃までの間(ただし,ACサブの表示時刻は午前10時19分)に,第1事件に係る出金をACサブを使用して行った(甲10,76,証人E)。なお,ACサブの時刻表示の誤差について,検察官は約18分遅れであると主張するが,当該誤差は本件の約10か月前に撮影された防犯カメラ画像等からの推測によるものである上,ジャステムやACサブの記録時刻が分単位でありそれぞれ1分間の幅があることなどからすれば,ACサブの表示時刻から認定し得る実際の出金処理時刻は概ね前記程度の幅があるものと認められる。(2) 犯人性についてア 前記(1)ウ,エの各事実によれば,Eは,犯人が第1事件に係る出金を行った時間帯を含む約6分の間に,8件のジャステム入力を連続して行っており,ジャステム入力の所要時間等を考慮すれば,Eが前記出金を行った可能性は低いと認められる。イ 金融係において,入力伝票の担当者が当該伝票の取引に係るジャステム入力を行うことが通常であったことからすれば,この各取引の担当者である被告人が同処理のジャステム入力を行った可能性が高い上,前記アのとおり,Eが第1事件の出金を行った可能性は低く,前記(1)アのジャステム入力もEが行ったものとは考え難いところ,仕訳通番末尾033,034のジャステム入力(以下仕訳通番の末尾3桁の番号を記載して「入力033」などという。)を被告人自身が行わずに組勘業務担当のFに依頼したとも考え難いから,これらのジャステム入力は被告人が行ったと認められる。そして,1個の取引に係るジャステム入力には数十秒程度の時間がかかると推察されるところ, 入力033と入力034が,第1事件の解約手続に係る入力032の後に開始され,2分以内(ジャステムの記録時刻が1分単位であることからすれば,1秒~1分59秒。以下同じ。)に完了している。このように,前記(1)ア,イの各ジャステム入力は,短時間で連続して行われたものであることからすれば,同一人が行った可能性が非常に高いと認められる。したがって,被告人が前記(1)アの解約処理を行った犯人であることが相当強く推認できる。ウ 前記ア,イを総合すると,被告人が犯人であると認められる。2 第2事件(1) 本件犯行に近接するジャステム操作等についてア 平成21年6月1日午後2時40分,入力128(為替取引)の処理が行われており,前記取引は被告人が担当した(甲77,証人E,証人F)。イ 犯人は,同日午後2時41分,第2口座につき,ジャステムで解約処理(入力129)を行った(甲75)。(2) 犯人性について前記(1)アの取引の担当者であった被告人が同処理のジャステム入力を行った可能性が高い上,入力128が,第2事件の解約手続に係る入力129の前に開始され,2分以内に完了している。このように,前記(1)ア,イの各ジャステム入力は,短時間で連続して行われたものであることからすれば,同一人が行った可能性が相当高いと認められる。したがって,被告人が前記 イの解約処理を行った犯人であることが相当程度推認できる。3 第4事件(1) 本件犯行に近接するジャステム操作等についてア 犯人は,平成21年6月22日午後3時17分,第4口座につき,ジャステムで解約処理(入力126)を行った(甲75)。イ 同日午後3時18分,入力127(払戻し),入力128(振込)の各処理が行われており,前記各取引は被告人が担当した(甲61,証人E,証人F)。この時間は,Eが早退した後であることからすると,これらのジャステム入力を被告人自身が行わずに組勘業務担当のFに依頼することは考え難く,これらのジャステム入力は被告人が行ったと認められる。(2) 犯人性について入力127,128のジャステム入力は被告人が行ったと認められるところ,入力127,128が,第1事件の解約手続に係る入力126の後に開始され,2分以内に2件の処理が完了している。このように,前記(1)ア,イの各ジャステム入力は,短時間で連続して行われたものであることからすれば,同一人が行った可能性が非常に高いと認められる。したがって,被告人が前記(1)アの解約処理を行った犯人であることを認定できる。4 第5事件(1) 本件犯行に近接するジャステム操作等についてア 犯人は,平成21年7月1日午後3時45分,第5口座につき,ジャステムで解約処理(入力137)を行った(甲75)。イ 同日午後3時46分,入力138(単一仕訳・連動仕訳入力票),入力139~142(払戻し)の各処理が行われており,前記各取引は被告人が担当した(甲62,証人E,証人F)。ウ 入力137と入力138の間で,ジャステム操作に必要なオペレータカードがF名義から被告人名義に交換されていることや,入力138以降が農協内部の処理に係る伝票に関するものであって急務とは考え難いことからすれば,被告人がそれまでジャステムを操作していた者に入力138~142を依頼したとは考え難く,入力138~142は被告人がジャステム入力を行ったものと認められる。(2) 犯人性について入力138~142が,第5事件の解約手続に係る入力137の後に開始され,この5件のジャステム入力が2分以内に完了している。このように,前記(1)ア,イの各ジャステム入力は,短時間で6件連続して行われたものであることからすれば,同一人,すなわち被告人が行ったと認められる。5 第8事件(1) 本件犯行に近接するジャステム操作等についてア 犯人は,平成21年7月16日午後1時06分,第8口座につき,ジャステムで解約処理(入力065)を行った(甲75)。イ 同時刻,入力066(取引承認票)の処理が行われており,同取引は被告人が担当した(甲65,証人E,証人F)。取引承認票の処理は,内部の経理処理に関するものであって急務とは考え難いことからすれば,被告人がそれまでジャステムを操作していた者に入力066を依頼したとは考え難く,被告人がジャステム入力を行ったものと認められる。(2) 犯人性について入力066が,第8事件の解約手続に係る入力065の後に開始され,1分以内に完了している。このように,前記(1)ア,イの各ジャステム入力は,ごく短時間で連続して行われたものであることからすれば,別人が行ったとは考え難く,被告人が前記(1)アの解約処理を行ったと認められる。6 第12事件平成21年11月25日午後3時47分(ACサブの表示時刻)に,ACサブを使用した3件の同時処理(連続して入力し,一括処理するもの)が行われており,その内訳は,最初の2件は「現金票・日計貸方入力票」及び「現金票」による入金,ついで第12事件に係る出金というものであった。この「現金票・日計貸方入力票」及び「現金票」の記載及び被告人の机上に設置されたACサブが使用されていることからすると,この入金を扱ったのは被告人であると認められる(甲75,76)。この3件の入出金は同時処理されており,犯人が,出金のみを他の金融係職員に依頼することは考え難いから,第12事件に係る出金をした者は被告人であると認定できる。7 他事件についての検察官の主張(1) 検察官は,第3,6,9事件について,被告人が各犯行に係る解約処理の直前にジャステム入力を行っており,これらが各犯行に係る解約処理と同一人により連続して行われたものと推認されると主張するが,被告人が各犯行前のジャステム操作をしてから犯人が定期貯金口座の解約処理を完了するまで,第3事件については,少なくとも1分間以上(最大で2分59秒間),第6,9事件については,少なくとも2分間以上(最大で3分59秒間)の時間があり,被告人による各ジャステム操作の後,他の金融係職員が各解約処理を行った可能性が十分考えられる。したがって,第3,6,9事件に関する検察官の前記主張は採用することができない。(2) 検察官は,第5,10事件について,犯人がACメインを使用して出金をしている時間に,Eがジャステムで払戻請求書の処理をしていたため,犯人としてACから出金することは不可能であると主張する。しかし,同主張の前提となるACメインからの出金時刻(表示時刻の誤差を修正した時刻)自体が,不確実な推測の下に算出されたものであって,数分程度の幅が容易に想定できるものであるから,検察官の前記主張は前提を欠き,採用することができない。第6 小括以上のとおり,第1,4,5,6,8,11,12事件については,被告人が犯人であると認定でき,第2事件については,被告人が犯人であることが相当程度推認できる。第7 第2,3,7,9,10事件について1 第2事件についてそもそも,ジャステムの記録等から,被告人が犯人であることが相当程度推認できることに加え,第1,2,4事件は同一の名義人に係る定期貯金口座を解約した横領事件であり,第1と第2の事件の期間が短いこと,犯行を行う可能性があるのは金融係職員だけであることも併せ考慮すると,被告人が犯人であると認めることができる。2 第7,9事件について前記のとおり,第8事件は被告人が行ったと認定することができる。そして,第7~9事件は,約2週間という短期間のうちに同一の方法によって同一の名義人に係る定期貯金口座が解約され横領されたものである上,本件犯行を行う可能性があるのは金融係職員だけであること,第7事件のときは,第8事件と同様に,Eが出張中であることなどを考慮すると,第7,9事件も,被告人が行ったと認めることができる。3 第3,10事件について前記のとおり,農協において無断で定期貯金口座が解約され横領された事件の12件のうち10件が被告人による犯行であること,本件各犯行が農協の金融係職員以外による可能性はないこと,半年という期間で合計12回の横領がなされていること,第3,10事件は同一の名義人に係る定期貯金口座を解約したものであることを考慮すると,第3,10事件についても,その他の事件と同一犯による犯行であると強く推認することができ,他方で,第3,10事件についても,被告人以外の犯行を疑わせる具体的な事情が見当たらないことも併せると,第3,10事件についても,被告人が犯人であると認定することができる。(法令の適用)罰 条 いずれも刑法253条併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い別表番号3の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入 刑法21条訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,当時勤務していた農協において,約半年の間に顧客に無断で定期貯金合計12口座の解約処理を行い合計1161万7851円を横領したという業務上横領の事案である。
事案の概要
平成28年3月25日
旭川地方裁判所
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[下級] [民事] 平成25(ワ)822  343ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件
平成25(ワ)822
本件は,平成23年3月11日午後2時46分に発生した「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(以下,この地震を「本件地震」といい,本件地震及びその余震による震災(東日本大震災)を「本件震災」という。)に伴う津波(以下「本件津波」という。)に襲われて死亡した原告Bの母D,原告Cの母E及び原告Aの子Fの各相続人である原告らが,東松島市立野蒜小学校(以下「本件小学校」という。)を設置し運営するとともに災害時の避難場所に指定していた地方公共団体である被告に対し,本件小学校の校長G(以下「本件校長」という。)が,本件津波に関する情報収集を懈怠し,本件小学校に避難したD及びEを本件小学校の校舎(以下「本件校舎」という。)の2階以上に避難誘導しなかったという過失によって,D及びEが本件小学校の体育館(以下「本件体育館」という。)において本件津波に襲われて死亡し,また,本件小学校に避難した同校在籍の児童であるFを災害時に児童(F)の引渡しを受ける責任者として登録されていた者以外の者に引渡後の安全を確認せずに引き渡したという過失によって,Fが本件小学校よりも海側の場所で本件津波に襲われて死亡したとして,それぞれ,国家賠償法1条1項に基づき,上記3名から相続した各損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成28年3月24日
仙台地方裁判所 第3民事部
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[下級] [民事] 平成25(ワ)2188  190ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件
平成25(ワ)2188
本件は,東日本大震災に伴い福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)から放射性物質が放出される事故により福島県内における5店舗の閉店等を余儀なくされた原告が,福島第一原発を設置,運転していた被告に対し,原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下「原賠法」という。)3条1項本文に基づき,原子力損害として,①休業損害7077万3163円,②9年分(上記事故の10年後まで)の逸失利益10億0608万2962円,③違約金損害7195万1734円,④有形固定資産の損害4808万1616円及び弁護士費用5000万円の合計12億4688万9475円及びこれに対する上記事故発生日である平成23年3月11日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
事案の概要
平成28年3月18日
札幌地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成27(わ)1051  286ViewsMoreinfo
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反
平成27(わ)1051
本件では,被告人が被害者に対して客観的にわいせつな行為をしたこと及びその際に自分がそのような行為をしていることを認識していたことは証拠上明らかである。よって,被告人には強制わいせつ罪が成立する。【法令の適用】1 被告人の各行為は次の刑罰法規に当たる。第1の1の行為 刑法176条後段第1の2の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条3項前段,2項第1の3の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条2項後段第2の行為 犯罪による収益の移転防止に関する法律27条2項後段,1項2 定められた刑のうち,第1の2及び3並びに第2の罪について懲役刑をそれぞれ選択する。3 以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い第1の1の罪の刑に法定の加重をする。4 これにより導き出された刑期の範囲内で,主文のとおり刑を定める。5 被告人は審理中に身柄を拘束されていたから,刑法21条を適用して主文のとおり未決勾留日数の一部を刑に算入する。6 訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。【量刑の理由】本件強制わいせつの犯行は,親密な関係性及び性的行為の意味を理解していない未熟さにつけこみ,拒否することができない被害者に対し,わいせつ性が非常に高い行為をしたものであって,その犯行態様は悪質で,被害は重大である。また,本件児童ポルノの製造・提供の犯行は,わいせつ性が非常に高いものを含み,被害者の顔が鮮明に映っている多数の画像データを製造し,送信したものであって,データ流出の可能性等も考えれば,その犯情は重い。生活費に困窮して金を得るために行ったというその動機も,被告人自身が保護すべき立場にある被害者を商品として扱ったものであって,性的意図が認定できないことを考慮しても,強い非難に値する。そうすると,被告人の刑事責任は重く,過去の量刑傾向も踏まえて検討すると,本件は実刑が相当な事案である。
事案の概要
平成28年3月18日
神戸地方裁判所 第2刑事部
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[下級] 平成27(行コ)32  123ViewsMoreinfo
退去強制令書発付処分等取消請求控訴事件
平成27(行コ)32
本件は,中華人民共和国(以下「中国」という。)国籍を有する外国人である控訴人が,名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」という。)入国審査官から,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)24条4号ヌに定める退去強制事由(売春関係業務従事)に該当する旨の認定を受けた後,名古屋入管特別審理官から,上記認定に誤りがない旨の判定を受けたため,入管法49条1項に基づき,法務大臣に対して異議の申出をしたところ,法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入管局長から,平成26年1月27日付けで控訴人の異議の申出には理由がないとの裁決(以下「本件裁決」という。)を受け,引き続き,名古屋入管主任審査官から,同日付けで退去強制令書発付処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,本件裁決及び本件処分の各取消しを求めるとともに,本件裁決後に日本人男性と婚姻したことを理由として,名古屋入管局長に対して控訴人の在留を特別に許可することの義務付けを求めた(以下,この義務付けを求める訴えを「本件義務付けの訴え」という。)事案である。
事案の概要
平成28年3月16日
名古屋高等裁判所 民事第4部
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[下級] [民事] 平成27(ワ)3109  173ViewsMoreinfo
損害賠償等請求事件
平成27(ワ)3109
本件は,前大阪市長である被告Aが,公衆の面前において,平成23年に実施された大阪市長選挙の際,当時大阪市長であった原告が集票目的で大阪市内の町内会に100万円を配布するという公職選挙法に違反する行為をしたなどと受け取られるような発言を複数回行い,被告らが,これらの発言を録画した動画を動画投稿サイトにおいて公開したことなどにより,原告の名誉が棄損されたと主張して,a被告Aに対しては不法行為(民法709条,710条)による損害賠償請求権に基づき,被告維新の会に対しては団体の代表者の不法行為(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条の類推適用)による損害賠償請求権に基づき,1100万円(慰謝料1000万円と弁護士費用100万円)の一部である1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年4月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うこと(請求1),b被告らに対し,人格権による妨害排除請求権に基づき,前記各動画を削除すること(請求2,3),c被告らに対し,人格権による妨害予防請求権に基づき,前記動画を閲覧できないようにすること(請求4)及び前記動画を頒布しないこと(請求6),d被告Aに対し,人格権による妨害予防請求権に基づき,今後前記発言を不特定多数人に対して行わないこと(請求5),e被告らに対し,民法723条に基づき,謝罪広告を掲載すること(請求7)を求める事案である。
事案の概要
平成28年3月15日
大阪地方裁判所 第20民事部
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[下級] [刑事] 平成27(わ)638  442ViewsMoreinfo
傷害致死被告事件
平成27(わ)638
少年である被告人が,当時13歳の被害者に対して殺意を有していた少年及び傷害の犯意を有していた少年と傷害の限度で共謀の上,被害者の頸部をカッターナイフで切り付ける等して傷害を負わせて死亡させたという事案について,弁護人の少年法55条による移送の主張を排斥し,懲役4年以上6年6月以下の不定期刑を言い渡した事例
判示事項の要旨
平成28年3月14日
横浜地方裁判所 第5刑事部
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[下級] [刑事] 平成26(わ)396  163ViewsMoreinfo
住居侵入,激発物破裂,建造物侵入,現住建造物等放火,現住建造物等放火未遂,窃盗被告事件
平成26(わ)396
カセットガスボンベを破裂させるなどした5件の激発物破裂,現住建造物等放火等の公訴事実について,犯行声明文の作成に使用された道具が被告人方から押収されたことや,被告人の作成したメモに犯人しか知り得ない事実が記載されていたことなどの間接事実から,被告人が犯人であると認定した事例
判示事項の要旨
平成28年3月11日
札幌地方裁判所
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[下級] [知財] [民事] 平成27(ワ)12416  262ViewsMoreinfo
特許権侵害差止請求事件(特許権・民事訴訟/オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用)
平成27(ワ)12416
本件は,発明の名称を「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」とする特許権を有する原告が,被告に対し,被告による別紙被告製品目録記載1~3のオキサリプラチン製剤(以下「被告製品」と総称する。)の生産等が特許権侵害に当たると主張して,特許法100条1項及び2項に基づく被告製品の生産等の差止め及び廃棄を求める事案である。
事案の概要
平成28年3月3日
東京地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成25(た)2  251ViewsMoreinfo
平成25(た)2
ロシア人である請求人のけん銃加重所持事犯の再審請求事件において,確定審で偽証したことを認めた元警察官の新供述等を基に,本件けん銃等は違法なおとり捜査によって収集された証拠能力を欠くものであるなどとして,刑訴法435条6号に基づき再審開始決定をした事例
判示事項の要旨
平成28年3月3日
札幌地方裁判所
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